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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-20959(P2017-20959A)
(43)【公開日】2017年1月26日
(54)【発明の名称】三次元計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/02 20060101AFI20170105BHJP
   G01B 11/25 20060101ALI20170105BHJP
【FI】
   G01B11/02 H
   G01B11/25 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-140225(P2015-140225)
(22)【出願日】2015年7月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】大山 剛
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】間宮 高弘
(72)【発明者】
【氏名】石垣 裕之
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA24
2F065AA53
2F065CC26
2F065DD06
2F065DD14
2F065FF04
2F065FF44
2F065HH06
2F065HH07
2F065HH14
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065LL41
2F065QQ23
2F065QQ24
2F065QQ26
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】位相シフト法を利用した三次元計測を行うにあたり、より高精度な計測をより短時間で実現することのできる三次元計測装置を提供する。
【解決手段】基板検査装置1は、プリント基板2に対し所定の光パターンを照射する2つの照明装置4A,4Bと、光パターンの照射された部分を撮像するカメラ5と、各種画像処理や演算処理等を行う制御装置6とを備えている。そして、第1照射装置4Aの第1光パターンの下で第1撮像処理を実行した後、第1液晶格子4Abの切替処理の完了を待つことなく、第2照射装置4Bの第2光パターンの下で第2撮像処理を実行可能とする。第2光パターンに係る計測では、所定の撮像条件により定まるゲイン及びオフセットの関係と、画像データ上の各画素の輝度値から定まるゲイン又はオフセットの値とを利用して、2通りに位相変化させた第2光パターンの下で撮像した2通りの画像データを基に位相シフト法により高さ計測を行う。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の光を発する第1光源、及び、該第1光源からの光を縞状の光強度分布を有する第1光パターンに変換する第1格子を有し、該第1光パターンを第1位置から被計測物に対し照射可能な第1照射手段と、
前記第1格子の移送又は切替を制御し、前記第1照射手段から照射する前記第1光パターンの位相を第1所定数通りに変化させる第1格子制御手段と、
所定の光を発する第2光源、及び、該第2光源からの光を縞状の光強度分布を有する第2光パターンに変換する第2格子を有し、該第2光パターンを前記第1位置とは異なる第2位置から被計測物に対し照射可能な第2照射手段と、
前記第2格子の移送又は切替を制御し、前記第2照射手段から照射する前記第2光パターンの位相を前記第1所定数通りよりも少ない第2所定数通りに変化させる第2格子制御手段と、
前記第1光パターン又は第2光パターンの照射された前記被計測物からの反射光を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像データを基に位相シフト法により前記被計測物の三次元計測を実行可能な画像処理手段とを備え、
前記第1所定数通りに位相変化させた前記第1光パターンを照射して行われる前記第1所定数回の撮像処理のうちの1回分である第1撮像処理、又は、前記第2所定数通りに位相変化させた前記第2光パターンを照射して行われる前記第2所定数回の撮像処理のうちの1回分である第2撮像処理のうちの一方の撮像処理を実行した後、該一方の撮像処理に係る前記第1格子又は前記第2格子の移送又は切替処理の完了を待つことなく、前記両撮像処理のうちの他方の撮像処理を実行可能な構成であって、
前記画像処理手段は、
前記第1所定数回の第1撮像処理により取得した前記第1所定数通りの画像データを基に前記被計測物の三次元計測を実行可能な第1計測手段と、
前記第2所定数回の第2撮像処理により取得した前記第2所定数通りの画像データを基に、所定の撮像条件により定まるゲイン及びオフセットの関係と、前記画像データ上の各画素の輝度値から定まる該画素に係るゲイン又はオフセットの値とを利用して、前記被計測物の三次元計測を実行可能な第2計測手段と、
前記両光パターンのうちの一方の光パターンの照射により計測可能な領域に関しては、前記両計測手段のうち該一方の光パターンに係る計測手段の計測結果を該領域に係る計測値として取得し、かつ、該一方の光パターンの照射により計測困難な領域に関しては、前記両光パターンのうちの他方の光パターンに係る計測手段の計測結果を該領域に係る計測値として取得する計測値取得手段とを備えていることを特徴とする三次元計測装置。
【請求項2】
前記ゲイン及びオフセットの関係は、前記ゲインと前記オフセットとが相互に一義的に定まる関係であることを特徴とする請求項1に記載の三次元計測装置。
【請求項3】
前記ゲイン及びオフセットの関係は、前記ゲインと前記オフセットとが比例関係であることを特徴とする請求項1に記載の三次元計測装置。
【請求項4】
前記第2所定数が2の場合において、
2通りに位相変化させた前記第2光パターンの相対位相関係をそれぞれ0、γとしたときの2通りの画像データの各画素の輝度値をそれぞれV0、V1とした場合に、
前記第2計測手段は、三次元計測を行うに際し、
下記式(1)、(2)、(3)の関係を満たす位相θを算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の三次元計測装置。
0=Asinθ+B ・・・(1)
1=Asin(θ+γ)+B ・・・(2)
A=KB ・・・(3)
但し、γ≠0、A:ゲイン、B:オフセット、K:比例定数。
【請求項5】
γ=180°としたことを特徴とする請求項4に記載の三次元計測装置。
【請求項6】
γ=90°としたことを特徴とする請求項4に記載の三次元計測装置。
【請求項7】
予めキャリブレーションにより算出した前記ゲイン及びオフセットの関係を記憶する記憶手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の三次元計測装置。
【請求項8】
前記第1所定数回の第1撮像処理により取得した前記第1所定数通りの画像データを基に、前記ゲイン及びオフセットの関係を把握する関係把握手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の三次元計測装置。
【請求項9】
前記第2所定数回の第2撮像処理により取得した前記第2所定数通りの画像データを基に、前記ゲイン及びオフセットの関係を把握する関係把握手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の三次元計測装置。
【請求項10】
前記計測値取得手段は、前記第1光パターンの照射により計測可能な領域に関しては、前記第1計測手段の計測結果を該領域に係る計測値として取得し、かつ、該第1光パターンの照射により計測困難な領域に関しては、他方の第2光パターンに係る第2計測手段の計測結果を該領域に係る計測値として取得することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の三次元計測装置。
【請求項11】
前記第1撮像処理の終了と同時に、該第1撮像処理に係る前記第1格子の移送又は切替処理を開始可能とすると共に、
前記第1格子の移送又は切替処理の終了と同時に、前記第1撮像処理を開始可能とし、
前記第1格子の移送又は切替処理の実行中に、前記第2撮像処理を実行可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の三次元計測装置。
【請求項12】
少なくとも前記第2格子の移送又は切替処理を、前記第1格子の移送又は切替処理と同時に行うことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の三次元計測装置。
【請求項13】
前記被計測物が、プリント基板に印刷されたクリーム半田、又は、ウエハ基板に形成された半田バンプであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の三次元計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフト法を利用して三次元計測を行う三次元計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板上に電子部品を実装する場合、まずプリント基板上に配設された所定の電極パターン上にクリーム半田が印刷される。次に、該クリーム半田の粘性に基づいてプリント基板上に電子部品が仮止めされる。その後、前記プリント基板がリフロー炉へ導かれ、所定のリフロー工程を経ることで半田付けが行われる。昨今では、リフロー炉に導かれる前段階においてクリーム半田の印刷状態を検査する必要があり、かかる検査に際して三次元計測装置が用いられることがある。
【0003】
近年、光を用いたいわゆる非接触式の三次元計測装置が種々提案されており、例えば位相シフト法を用いた三次元計測装置に関する技術が提案されている。
【0004】
該位相シフト法を利用した三次元計測装置においては、所定の光を発する光源と、該光源からの光を正弦波状(縞状)の光強度分布を有する光パターンに変換する格子との組み合わせからなる照射手段により、光パターンを被計測物(この場合クリーム半田)に照射する。そして、基板上の点を真上に配置した撮像手段を用いて観測する。撮像手段としては、レンズ及び撮像素子等からなるCCDカメラ等が用いられる。
【0005】
上記構成の下、撮像手段により撮像された画像データ上の各画素の光の強度(輝度)Iは下式(U1)で与えられる。
【0006】
I=f・sinφ+e ・・(U1)
但し、f:ゲイン、e:オフセット、φ:光パターンの位相。
【0007】
ここで、上記格子を移送又は切換制御することにより、光パターンの位相を例えば4段階(φ+0、φ+90°、φ+180°、φ+270°)に変化させ、これらに対応する強度分布I0、I1、I2、I3をもつ画像データを取り込み、下記式(U2)に基づいてf(ゲイン)とe(オフセット)をキャンセルし、位相φを求める。
【0008】
φ=tan-1[(I1−I3)/(I2−I0)] ・・(U2)
そして、この位相φを用いて、三角測量の原理に基づき被計測物上の各座標(X,Y)における高さ(Z)が求められる。
【0009】
しかしながら、上記照射手段を1箇所だけに設けた構成では、被計測物上に光パターンが照射されない影の部分が生じ得るため、該影部分の適正な計測が行えないおそれがある。
【0010】
これに鑑み、従来より、計測精度の向上等を図るため、光パターンを2方向から照射し計測を行う技術が知られている。さらに、近年では、計測時間の短縮化等を図るため、第1照射手段から第1光パターンを照射して行われる複数回の撮像処理のうちの1回分である第1撮像処理を行った後、第2照射手段から第2光パターンを照射して行われる複数回の撮像処理のうちの1回分である第2撮像処理を行い、両撮像処理の終了後に、両照射手段の移送又は切替処理を同時に行う技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2013−124937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記のとおり、位相シフト法を利用した従来の三次元計測装置においては、照射する光パターンの位相を4段階(又は3段階)に変化させ、4通り(又は3通り)の画像を撮像する必要がある。従って、2方向から光パターンを照射する場合には、1つの計測対象範囲に関しそれぞれ4回(又は3回)ずつ、計8回(又は6回)の撮像が必要となり、撮像時間が増大するおそれがあった。
【0013】
通常、カメラ等による撮像は、強い照明の下でより短時間に行う方が機械的振動の影響が小さくなることから、比較的短時間(例えば2msec)で行われる。一方、照射手段における格子の移送は、振動等を避けるため比較的長い時間(例えば20msec)をかけて行われる。また、格子として液晶格子等を用いた場合でも、その切替制御には上記同様、比較的長い時間を要する。
【0014】
従って、上記特許文献1の構成の下、所定の計測対象範囲につき、2つの光パターンの下で撮像する回数を合計8回(各光パターンにつき4回ずつ)、1回の撮像にかかる時間をそれぞれ[2msec]、1回の格子の移送等にかかる時間をそれぞれ[20msec]と仮定した場合には、図10に示すように、所定の計測対象範囲に係る全ての撮像処理(最後の撮像処理)が終了するまでに必要な時間は、〔第1撮像処理に要する時間[2ms]×4回〕+〔第2撮像処理に要する時間[2ms]×4回〕+〔第1格子及び第2格子の移送等に要する時間[20ms]×3回〕=合計[76msec]となる。
【0015】
また、一枚のプリント基板上に計測対象範囲が多数設定されているような場合には、該一枚のプリント基板の計測に要する時間はさらにその数倍となる。そのため、計測時間のさらなる短縮化が求められる。
【0016】
尚、上記課題は、必ずしもプリント基板上に印刷されたクリーム半田等の高さ計測に限らず、他の三次元計測装置の分野においても内在するものである。
【0017】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、位相シフト法を利用した三次元計測を行うにあたり、より高精度な計測をより短時間で実現することのできる三次元計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0019】
手段1.所定の光を発する第1光源、及び、該第1光源からの光を縞状の光強度分布を有する第1光パターンに変換する第1格子を有し、該第1光パターンを第1位置から被計測物に対し照射可能な第1照射手段と、
前記第1格子の移送又は切替を制御し、前記第1照射手段から照射する前記第1光パターンの位相を第1所定数(例えば「3」又は「4」)通りに変化させる第1格子制御手段と、
所定の光を発する第2光源、及び、該第2光源からの光を縞状の光強度分布を有する第2光パターンに変換する第2格子を有し、該第2光パターンを前記第1位置とは異なる第2位置から被計測物に対し照射可能な第2照射手段と、
前記第2格子の移送又は切替を制御し、前記第2照射手段から照射する前記第2光パターンの位相を前記第1所定数通りよりも少ない第2所定数(例えば「2」又は「3」)通りに変化させる第2格子制御手段と、
前記第1光パターン又は第2光パターンの照射された前記被計測物からの反射光を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像データを基に位相シフト法により前記被計測物の三次元計測を実行可能な画像処理手段とを備え、
前記第1所定数通りに位相変化させた前記第1光パターンを照射して行われる前記第1所定数回の撮像処理のうちの1回分である第1撮像処理、又は、前記第2所定数通りに位相変化させた前記第2光パターンを照射して行われる前記第2所定数回の撮像処理のうちの1回分である第2撮像処理のうちの一方の撮像処理を実行した後、該一方の撮像処理に係る前記第1格子又は前記第2格子の移送又は切替処理の完了を待つことなく(移送又は切替処理の開始前を含む)、前記両撮像処理のうちの他方の撮像処理を実行可能な構成であって、
前記画像処理手段は、
前記第1所定数回の第1撮像処理により取得した前記第1所定数通りの画像データを基に前記被計測物の三次元計測を実行可能な第1計測手段と、
前記第2所定数回の第2撮像処理により取得した前記第2所定数通りの画像データを基に、所定の撮像条件により定まるゲイン及びオフセットの関係と、前記画像データ上の各画素の輝度値から定まる該画素に係るゲイン又はオフセットの値とを利用して、前記被計測物の三次元計測を実行可能な第2計測手段と、
前記両光パターンのうちの一方の光パターン(例えば第1光パターン)の照射により計測可能な領域に関しては、前記両計測手段のうち該一方の光パターンに係る計測手段の計測結果(例えば第1計測手段の計測結果)を該領域に係る計測値として取得し、かつ、該一方の光パターンの照射により計測困難な領域(輝度の不足した領域あるいは適切な高さデータが得られない領域など)に関しては、前記両光パターンのうちの他方の光パターン(例えば第2光パターン)に係る計測手段の計測結果(例えば第2計測手段の計測結果)を該領域に係る計測値として取得する計測値取得手段とを備えていることを特徴とする三次元計測装置。
【0020】
上記手段1によれば、光パターンを2方向から照射することにより、被計測物に光パターンが照射されない影の部分が生じないようにすることができる。そして、両光パターンのうち、例えば第1光パターンの照射により計測可能な領域に関しては、該第1光パターンに係る第1計測手段の計測結果を該領域に係る計測値として取得する一方、該第1光パターンの照射により計測困難な領域に関しては、他方の第2光パターンに係る第2計測手段の計測結果を該領域に係る計測値として取得することにより、データの欠落部分のない計測データを取得することができる。結果として、計測精度の向上を図ることができる。
【0021】
さらに、本手段では、第1光パターンの下での1回分の第1撮像処理、又は、第2光パターンの下での1回分の第2撮像処理のうちの一方の撮像処理(例えば第1撮像処理)を実行した後、該一方の撮像処理に係る格子の移送等の完了を待つことなく、前記両撮像処理のうちの他方の撮像処理(例えば第2撮像処理)を実行可能な構成となっている。
【0022】
このように、一方の格子の移送等の完了を待つことなく、他方の格子の下での撮像、ひいては該撮像後の格子の移送等を行うことで、比較的長い時間を要する2つの格子の移送処理を一部で重複して行うことが可能となる。結果として、所定の計測対象範囲に係る全ての撮像処理(最後の撮像処理)が終了するまでに必要な時間を短縮することができる。
【0023】
加えて、本手段では、第2光パターンの照射に基づく計測を行う際には、所定の撮像条件により定まるゲインA及びオフセットBの関係〔例えばA=K(比例定数)×B〕と、画像データ上の各画素(x,y)の輝度値V(x,y)から定まる、該画素(x,y)に係るゲインA(x,y)又はオフセットB(x,y)の値とを利用して、被計測物の三次元計測を行う構成となっている。
【0024】
つまり、少なくとも2通りに位相変化させた第2光パターンの下で撮像された少なくとも2通りの画像データを取得しさえすれば、位相シフト法による三次元計測が可能となる。結果として、第2光パターンの下で撮像すべき画像数(撮像回数)が、第1光パターンの下で撮像すべき画像数より少なくて済む。
【0025】
例えば4通り(又は3通り)に位相変化させた第1光パターンの照射に基づき4通り(又は3通り)の画像を撮像すると共に、2通りに位相変化させた第2光パターンの照射に基づき2通りの画像を撮像する場合には、撮像回数が計6回(又は5回)となり、撮像時間が減少する。
【0026】
従って、従来技術に比べ、総合的な撮像回数が少なくて済み、撮像時間を短縮することができる。結果として、より高精度な計測をより短時間で実現することが可能となる。
【0027】
尚、光源から照射された光は、まず格子を通過する際に減衰され、次に被計測物にて反射する際に減衰され、最後に撮像手段においてA/D変換(アナログ−デジタル変換)される際に減衰された上で、画像データの各画素の輝度値として取得される。
【0028】
従って、撮像手段により撮像された画像データの各画素の輝度値は、光源の明るさ(輝度)、光源から照射された光が格子を通過する際の減衰率、光が被計測物にて反射する際の反射率、撮像手段においてA/D変換(アナログ−デジタル変換)される際の変換効率等を掛け合わせることにより表現することができる。
【0029】
例えば、光源(均一光)の明るさ:L
格子の透過率:G=αsinθ+β
α,βは任意の定数。
【0030】
被計測物上の座標 (x,y)における反射率:R(x,y)
撮像手段(撮像素子)の各画素の変換効率:E
被計測物上の座標(x,y)に対応する画像上の画素の輝度値:V(x,y)
被計測物上の座標(x,y)における光パターンのゲイン:A(x,y)
被計測物上の座標(x,y)における光パターンのオフセット:B(x,y)
とした場合には、下記式(F1)で表すことができる。
【0031】
【数1】
【0032】
ここで、ゲインA(x,y)は、「sinθ=1」の光による輝度値V(x,y)MAXと、「sinθ=−1」の光による輝度値V(x,y)MINとの差から表すことができるので、
例えば、格子がθ=0の時の透過率(=平均透過率):Gθ=0
格子がθ=π/2の時の透過率(=最大透過率):Gθ=π/2
格子がθ=−π/2の時の透過率(=最小透過率):Gθ=-π/2
とした場合には、下記式(F2)で表すことができる。
【0033】
【数2】
【0034】
また、オフセットB(x,y)は、「sinθ=0」の光における輝度値V(x,y)であって、「sinθ=1」の光による輝度値V(x,y) MAXと、「sinθ=−1」の光による輝度値V(x,y) MINとの平均値であるので、下記式(F3)で表すことができる。
【0035】
【数3】
【0036】
つまり、輝度値の最大値V(x,y)MAX、最小値V(x,y)MIN、平均値V(x,y)AVはそれぞれ下記式(F4)、(F5)、(F6)で表すことができ、図4のグラフに示すような関係となる。
【0037】
【数4】
【0038】
図4から見てとれるように、所定の座標(x,y)における輝度値の最大値V(x,y)MAXと輝度値の最少値V(x,y)MINの平均値V(x,y)AVがオフセットB(x,y)となり、該オフセットB(x,y)と最大値V(x,y)MAXとの差、及び、該オフセットB(x,y)と最少値V(x,y)MINとの差がそれぞれゲインA(x,y)となる。
【0039】
また、輝度値V(x,y)は、光源の明るさL又は反射率R(x,y)に比例して変化するため、例えば反射率Rが半分となる座標位置では、ゲインAやオフセットBの値も半分となる。
【0040】
次に上記式(F2)、(F3)を下記式(F2´)、(F3´)とした上で、両者を合わせて整理すると、下記式(F7)が導き出せる。
【0041】
【数5】
【0042】
さらに、上記式(F7)をA(x,y)について解くと、下記式(F8)となり、図5に示すグラフのように表すことができる。
【0043】
【数6】
【0044】
つまり、光源の明るさL又は反射率R(x,y)の一方を固定して他方を変化させた場合には、オフセットB(x,y)が増減すると共に、該オフセットB(x,y)に比例してゲインA(x,y)も増減することとなる。かかる式(F8)により、ゲインA又はオフセットBの一方が分かれば、他方を求めることができる。ここで、比例定数Kは、光源の明るさLや反射率Rとは無関係に、格子の透過率Gにより定まる。つまり、下記の手段2,3のように換言することができる。
【0045】
尚、上記特許文献1に記載されているように、互いに波長成分(RGB成分)の異なる2つの光パターンを同時に照射し、これらが照射された被計測物からの反射光を各光成分毎に分離して撮像可能な構成とすれば、第1撮像処理と第2撮像処理とを同時に行うことができ、計測時間をさらに短縮することは可能となるが、かかる構成では、上記各光成分毎に分離して撮像可能なカメラとして、例えば各波長域に対応する複数のダイクロイックミラー及び撮像部を備えたカラーカメラや、各画素毎に撮像可能な波長域が異なる単板式カラーカメラ等を用いる必要があり、計測装置が非常に高価になるおそれがある。また、RGB各成分の光パターンごとに被計測物での反射率などが異なるため、被計測物の色の種類によっては、各光パターンによって計測精度が異なってくるおそれがある。
【0046】
手段2.前記ゲイン及びオフセットの関係は、前記ゲインと前記オフセットとが相互に一義的に定まる関係であることを特徴とする手段1に記載の三次元計測装置。
【0047】
ゲインAとオフセットBとが相互に一義的に定まる関係であれば、例えばゲインAとオフセットBとの関係を表した数表やテーブルデータを作成することにより、ゲインAからオフセットB、或いは、オフセットBからゲインAを求めることが可能となる。
【0048】
手段3.前記ゲイン及びオフセットの関係は、前記ゲインと前記オフセットとが比例関係であることを特徴とする手段1に記載の三次元計測装置。
【0049】
ゲインとオフセットとが比例関係であれば、例えばA=K×B+C〔但し、C:カメラの暗電流(オフセット)〕のような関係式で表すことができ、ゲインAからオフセットB、或いは、オフセットBからゲインAを求めることが可能となる。ひいては下記の手段4のような構成とすることができる。
【0050】
手段4.前記第2所定数が2の場合において、
2通りに位相変化させた前記第2光パターンの相対位相関係をそれぞれ0、γとしたときの2通りの画像データの各画素の輝度値をそれぞれV0、V1とした場合に、
前記第2計測手段は、三次元計測を行うに際し、
下記式(1)、(2)、(3)の関係を満たす位相θを算出することを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の三次元計測装置。
【0051】
0=Asinθ+B ・・・(1)
1=Asin(θ+γ)+B ・・・(2)
A=KB ・・・(3)
但し、γ≠0、A:ゲイン、B:オフセット、K:比例定数。
【0052】
上記手段4によれば、上記式(3)を上記式(1)に代入することにより、下記式(4)を導き出すことができる。
【0053】
0=KBsinθ+B ・・・(4)
これをオフセットBについて解くと、下記式(5)を導き出すことができる。
【0054】
B=V0/(Ksinθ+1) ・・・(5)
また、上記式(3)を上記式(2)に代入することにより、下記式(6)を導き出すことができる。
【0055】
1=KBsin(θ+γ)+B ・・・(6)
上記式(6)を上記式(5)に代入し、下記[数7]に示すように整理していくと、下記式(7)を導き出すことができる。
【0056】
【数7】
【0057】
ここで、「V0cosγ−V1=a」、「V0sinγ=b」、「(V0−V1)/K=c」と置くと、上記式(7)は下記式(8)のように表すことができる。
【0058】
asinθ+bcosθ+c=0 ・・・(8)
ここで、下記[数8]に示すように、上記式(8)を位相θについて解いていくと、下記[数9]に示す下記式(9)を導き出すことができる。
【0059】
【数8】
【0060】
【数9】
【0061】
従って、上記手段4における『下記式(1)、(2)、(3)の関係を満たす位相θを算出すること』とあるのは、『下記式(9)に基づき位相θを算出すること』と換言することができる。勿論、位相θを得るアルゴリズムは、上記式(9)に限定されるものではなく、上記式(1)、(2)、(3)の関係を満たすものであれば、他の構成を採用してもよい。
【0062】
尚、上述したカメラの暗電流C等を考慮すれば、計測精度のさらなる向上を図ることができる。
【0063】
手段5.γ=180°としたことを特徴とする手段4に記載の三次元計測装置。
【0064】
上記手段5によれば、位相が180°異なる2通りの第2光パターンの下で2回の撮像を行うこととなる。
【0065】
上記式(2)においてγ=180°とすることで下記式(10)が導き出される。
【0066】
1=Asin(θ+180°)+B
=−Asinθ+B ・・・(10)
そして、上記式(1),(10)から下記式(11)を導き出すことができ、これをオフセットBについて解くと、下記式(12)を導き出すことができる。
【0067】
0+V1=2B ・・・(11)
B=(V0+V1)/2 ・・・(12)
さらに、上記式(12)を上記式(3)に代入することにより、下記式(13)を導き出すことができる。
【0068】
A=KB
=K(V0+V1)/2 ・・・(13)
また、上記式(1)を「sinθ」について整理すると、下記式(1´)のようになる。
【0069】
sinθ=(V0−B)/A ・・・(1´)
そして、上記式(1´)に、上記式(12),(13)を代入することにより、下記式(14)を導き出すことができる。
【0070】
sinθ={V0−(V0+V1)/2}/{K(V0+V1)/2}
=(V0−V1)/K(V0+V1) ・・・(14)
ここで、上記式(14)を位相θについて解くと、下記式(15)を導き出すことができる。
【0071】
θ=sin-1[(V0−V1)/K(V0+V1)] ・・・(15)
つまり、位相θは、既知の輝度値V0,V1及び定数Kにより特定することができる。
【0072】
このように、上記手段5によれば、比較的簡単な演算式に基づいて位相θを求めることができ、被計測物の三次元計測を行うに際し、さらなる処理の高速化が可能となる。
【0073】
手段6.γ=90°としたことを特徴とする手段4に記載の三次元計測装置。
【0074】
上記手段6によれば、位相が90°異なる2通りの第2光パターンの下で2回の撮像を行うこととなる。
【0075】
上記式(2)においてγ=90°とすることで下記式(16)が導き出される。
【0076】
1=Asin(θ+90°)+B
=Acosθ+B ・・・(16)
上記式(16)を「cosθ」について整理すると、下記式(17)のようになる。
【0077】
cosθ=(V1−B)/A ・・・(17)
また、上記式(1)を「sinθ」について整理すると、上述したように下記式(1´)のようになる。
【0078】
sinθ=(V0−B)/A ・・・(1´)
次に上記式(1´)、(17)を下記式(18)に代入すると下記式(19)のようになり、さらにこれを整理することで、下記式(20)が導き出される。
【0079】
sin2θ+cos2θ=1 ・・・(18)
{(V0−B)/A}2+{(V1−B)/A}2=1 ・・・(19)
(V0−B)2+(V1−B)2=A2 ・・・(20)
そして、上記式(20)に対し上記式(3)を代入すると下記式(21)のようになり、さらにこれを整理することで、下記式(22)が導き出される。
【0080】
(V0−B)2+(V1−B)2=K22 ・・・(21)
(2−K2)B2−2(V0+V1)B+V0212=0 ・・・(22)
ここで、上記式(22)をオフセットBについて解くと、下記式(23)を導き出すことができる。
【0081】
【数10】
【0082】
つまり、オフセットBは、既知の輝度値V0,V1及び定数Kにより特定することができる。
【0083】
また、下記式(24)に上記式(1´)、(17)を代入すると下記式(25)のようになり、さらにこれを整理することで、下記式(26)が導き出される。
【0084】
tanθ=sinθ/cosθ ・・・(24)
={(V0−B)/A}/{(V1−B)/A} ・・・(25)
=(V0−B)/(V1−B) ・・・(26)
そして、上記式(26)を位相θについて解くと、下記式(27)を導き出すことができる。
【0085】
θ=tan-1{(V0−B)/(V1−B)} ・・(27)
つまり、位相θは、上記式(23)を用いることにより、既知の輝度値V0,V1及び定数Kにより特定することができる。
【0086】
このように、上記手段6によれば、「tan-1」を用いた演算式に基づいて位相θを求めることができるため、−180°〜180°の360°の範囲で高さ計測可能となり、計測レンジをより大きくすることができる。
【0087】
手段7.予めキャリブレーションにより算出した前記ゲイン及びオフセットの関係を記憶する記憶手段を備えていることを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載の三次元計測装置。
【0088】
例えば基準板に対し3通り又は4通りに位相変化させた光パターンを照射し、これらの下で撮像した3通り又は4通りの画像データに基づき各画素におけるゲインA及びオフセットBを特定し、上記式(3)から定数Kを決定しておく。これにより、上記手段7によれば、各画素においてより精度の良い高さ計測を行うことができる。
【0089】
手段8.前記第1所定数回の第1撮像処理により取得した前記第1所定数通りの画像データを基に、前記ゲイン及びオフセットの関係を把握する関係把握手段を備えたことを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載の三次元計測装置。
【0090】
上記手段8によれば、上記手段7と同様の作用効果が奏される。上述したとおり、ゲインA及びオフセットBの関係(比例定数K)は、光源の明るさLや反射率Rとは無関係に、格子の透過率Gにより定まる。そのため、第1格子と第2格子が同一のものであれば、第1照射手段に係るゲイン及びオフセットの関係と、第2照射手段に係るゲイン及びオフセットの関係は同じものとなる。これを利用することにより、上記手段7のようなキャリブレーションの手間を省略することができ、さらなる計測時間の短縮化を図ることができる。
【0091】
手段9.前記第2所定数回の第2撮像処理により取得した前記第2所定数通りの画像データを基に、前記ゲイン及びオフセットの関係を把握する関係把握手段を備えたことを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載の三次元計測装置。
【0092】
例えば上記式(12)等を用いて画像データの全画素についてオフセットBを求め、その中でオフセットBの値が一致する画素の輝度値Vを抽出し、そのヒストグラムを作成する。そして、そのヒストグラムから輝度値の最大値VMAXと最小値VMINを決定する。
【0093】
上述したとおり、輝度値の最大値VMAXと最少値VMINの平均値がオフセットBとなり、最大値VMAXと最少値VMINの差の半分がゲインAとなる。これを基に、上記式(3)から定数Kを決定することができる。これにより、上記手段9によれば、上記手段7のようなキャリブレーションの手間を省略することができ、さらなる計測時間の短縮化を図ることができる。
【0094】
手段10.前記計測値取得手段は、前記第1光パターンの照射により計測可能な領域に関しては、前記第1計測手段の計測結果を該領域に係る計測値として取得し、かつ、該第1光パターンの照射により計測困難な領域に関しては、他方の第2光パターンに係る第2計測手段の計測結果を該領域に係る計測値として取得することを特徴とする手段1乃至9のいずれかに記載の三次元計測装置。
【0095】
第1撮像処理の実行回数は、第2撮像処理の実行回数よりも多く、これに基づく第1計測手段の計測結果は、第2計測手段の計測よりも計測精度が高くなる。これを踏まえ、上記手段10によれば、計測精度の高い第1計測手段の計測結果を主として用いる一方、一部のデータ欠落部分に関しては、第2計測手段の計測結果を用いることで、全体としては計測精度が高くかつデータの欠落部分が少ない計測データを取得することができる。
【0096】
手段11.前記第1撮像処理の終了と同時に、該第1撮像処理に係る前記第1格子の移送又は切替処理を開始可能とすると共に、
前記第1格子の移送又は切替処理の終了と同時に、前記第1撮像処理を開始可能とし、
前記第1格子の移送又は切替処理の実行中に、前記第2撮像処理を実行可能に構成されていることを特徴とする手段1乃至10のいずれかに記載の三次元計測装置。
【0097】
上記手段11によれば、所定の計測対象範囲に係る全ての第1撮像処理を最短で終了することができる。また、第2撮像処理の実行回数は第1撮像処理の実行回数よりも少ないため、第1格子の移送又は切替処理の実行中(第1撮像処理と第1撮像処理との間)に第2撮像処理を実行する構成とすることにより、所定の計測対象範囲に係る全ての第1撮像処理が終了するまでの間に、全ての第2撮像処理も終了させることができる。結果として、上記手段1等の作用効果をさらに高め、計測時間のさらなる短縮化を図ることができる。
【0098】
手段12.少なくとも前記第2格子の移送又は切替処理を、前記第1格子の移送又は切替処理と同時に行うことを特徴とする手段1乃至11のいずれかに記載の三次元計測装置。
【0099】
仮に両照射手段のうちの一方の照射手段の格子を移送等する間に、他方の照射手段から光パターンを照射して撮像を行う構成となっている場合には、アクチュエータ等により格子を移送する際の機械的振動や、格子を構成する液晶シャッタ等を切替制御する際に発生し得る電気的ノイズの影響を受け、計測誤差等が生じるおそれもある。
【0100】
これに対し、本手段12によれば、第1撮像処理の実行中に、第2照射手段の第2格子の移送等が行われないため、第1計測手段に係る計測精度の低下抑制を図ることができる。
【0101】
尚、上記手段12の構成の下では、第1照射手段の第1格子の移送又は切替処理中に第2撮像処理が行われ得るが、上述したように、第2計測手段による計測は、もともと第1計測手段による計測よりも計測精度が低いことから、仮に上記計測誤差等が発生した場合でも、計測結果に与える影響は、第1計測手段の計測結果に与える影響よりも小さくなる。
【0102】
特に、上記手段10,11の構成の下では、第2計測手段の計測結果が、第1計測手段の計測結果のデータ欠落部分を補完する補完データとなるため、計測精度が低下しても、計測データ全体に与える影響は極めて小さい。
【0103】
手段13.前記被計測物が、プリント基板に印刷されたクリーム半田、又は、ウエハ基板に形成された半田バンプであることを特徴とする手段1乃至12のいずれかに記載の三次元計測装置。
【0104】
上記手段13によれば、プリント基板に印刷されたクリーム半田、又は、ウエハ基板に形成された半田バンプの高さ計測等を行うことができる。ひいては、クリーム半田又は半田バンプの検査において、その計測値に基づいてクリーム半田又は半田バンプの良否判定を行うことができる。従って、かかる検査において、上記各手段の作用効果が奏されることとなり、精度よく良否判定を行うことができる。結果として、半田印刷検査装置又は半田バンプ検査装置における検査精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1】基板検査装置を模式的に示す概略斜視図である。
図2】基板検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】カメラ及び照明装置の処理動作を説明するためのタイミングチャートである。
図4】光源の明るさ又は反射率と輝度値との関係を示すグラフである。
図5】ゲインとオフセットの関係を示すグラフである。
図6】各データ区間に含まれる輝度値の数の分布を表した分布表である。
図7】各データ区間に含まれる輝度値の数の分布を表したヒストグラムである。
図8】別の実施形態におけるカメラ及び照明装置の処理動作を説明するためのタイミングチャートである。
図9】(a)〜(c)は、カメラの露光及びデータ転送に係る処理動作を説明するためのタイミングチャートである。
図10】従来のカメラ及び照明装置の処理動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0106】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態における三次元計測装置を具備する基板検査装置1を模式的に示す概略構成図である。同図に示すように、基板検査装置1は、被計測物としてのクリーム半田が印刷されてなるプリント基板2を載置するための載置台3と、プリント基板2の表面に対し斜め上方から所定の光パターンを照射するための2つの照明装置(第1照射手段としての第1照明装置4A、及び、第2照射手段としての第2照明装置4B)と、プリント基板2上の光パターンの照射された部分を撮像するための撮像手段としてのカメラ5と、基板検査装置1内における各種制御や画像処理、演算処理を実施するための制御装置6とを備えている。
【0107】
載置台3には、モータ15,16が設けられており、該モータ15,16が制御装置6により駆動制御されることによって、載置台3上に載置されたプリント基板2が任意の方向(X軸方向及びY軸方向)へスライドさせられるようになっている。
【0108】
第1照明装置4Aは、所定の光を発する第1光源4Aaと、該第1光源4Aaからの光を正弦波状(縞状)の光強度分布を有する第1光パターンに変換するための第1格子を形成する第1液晶格子4Abとを備えており、プリント基板2に対し、斜め上方から複数通りに(本実施形態では4分の1ピッチずつ)位相変化する縞状の第1光パターンを照射可能となっている。ここで、第1液晶格子4Abにおける格子態様を切替制御する機構が第1格子制御手段に相当する。
【0109】
同様に、第2照明装置4Bは、所定の光を発する第2光源4Baと、該第2光源4Baからの光を正弦波状(縞状)の光強度分布を有する第2光パターンに変換するための第2格子を形成する第2液晶格子4Bbとを備えており、プリント基板2に対し、斜め上方から複数通りに(本実施形態では2分の1ピッチずつ)位相変化する縞状の第2光パターンを照射可能となっている。ここで、第2液晶格子4Bbにおける格子態様を切替制御する機構が第2格子制御手段に相当する。
【0110】
より詳しくは、各照明装置4A,4Bにおいて、光源4Aa,4Baから発せられた光は光ファイバーにより一対の集光レンズに導かれ、そこで平行光にされる。その平行光が、液晶格子4Ab,4Bbを介して投影レンズに導かれる。そして、投影レンズからプリント基板2に対し縞状の光パターンが照射される。
【0111】
液晶格子4Ab,4Bbは、一対の透明基板間に液晶層が形成されると共に、一方の透明基板上に配置された共通電極と、これと対向するように他方の透明基板上に複数並設された帯状電極とを備え、駆動回路により、各帯状電極にそれぞれ接続されたスイッチング素子(薄膜トランジスタ等)をオンオフ制御し、各帯状電極に印加される電圧を制御することにより、各帯状電極に対応する各格子ラインの光透過率が切替えられ、光透過率の高い「明部」と、光透過率の低い「暗部」とからなる縞状の格子パターンを形成する。そして、液晶格子4Ab,4Bbを介してプリント基板2上に照射される光は、回折作用に起因したボケ等により、正弦波状の光強度分布を有する光パターンとなる。
【0112】
尚、本実施形態において、各照明装置4A,4Bは、各光パターンが、矩形状のプリント基板2の一対の辺と平行にX軸方向に沿って照射されるよう設定されている。つまり、光パターンの縞が、X軸方向に直交し、かつ、Y軸方向に平行に照射される。
【0113】
また、各照明装置4A,4Bは、カメラ5の撮像方向である略鉛直方向(Z軸方向)に沿って視た平面視(X−Y平面)において、プリント基板2を挟んで相対向する位置に配置されている。ここで、第1照明装置4Aが配置された位置が本実施形態における第1位置に相当し、第2照明装置4Bが配置された位置が第2位置に相当する。
【0114】
カメラ5は、レンズや撮像素子等からなる。撮像素子としては、CMOSセンサを採用している。勿論、撮像素子はこれに限定されるものではなく、例えばCCDセンサ等を採用してもよい。カメラ5によって撮像された画像データは、該カメラ5内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で制御装置6に入力され、後述する画像データ記憶装置24に記憶される。そして、制御装置6は、該画像データを基に、後述するような画像処理や検査処理等を実施する。かかる意味で、制御装置6は本実施形態における画像処理手段を構成する。
【0115】
次に、制御装置6の電気的構成について説明する。図2に示すように、制御装置6は、基板検査装置1全体の制御を司るCPU及び入出力インターフェース21(以下、「CPU等21」という)、キーボードやマウス、あるいは、タッチパネルで構成される「入力手段」としての入力装置22、CRTや液晶などの表示画面を有する「表示手段」としての表示装置23、カメラ5により撮像された画像データを記憶するための画像データ記憶装置24、各種演算結果を記憶するための演算結果記憶装置25、各種情報を予め記憶しておく設定データ記憶装置26を備えている。なお、これら各装置22〜26は、CPU等21に対し電気的に接続されている。
【0116】
次に、基板検査装置1よるプリント基板2の検査手順について詳しく説明する。はじめに、光パターンのばらつき(位相分布)を把握するためのキャリブレーションを行う。
【0117】
液晶格子4Ab,4Bbでは、各帯状電極に接続された各トランジスタの特性(オフセットやゲイン等)のばらつきにより、上記各帯状電極に印加される電圧にもばらつきが生じるため、同じ「明部」や「暗部」であっても、各帯状電極に対応する各ラインごとに光透過率(輝度レベル)がばらつくこととなる。その結果、被計測物上に照射される光パターンも正弦波状の理想的な光強度分布とならず、三次元計測結果に誤差が生じるおそれがある。
【0118】
そこで、予め光パターンのばらつき(位相分布)を把握しておく、いわゆるキャリブレーション等が行われる。
【0119】
キャリブレーションの手順としては、まずプリント基板2とは別に、高さ位置0、かつ、平面をなす基準面を用意する。基準面は、計測対象たるクリーム半田と同一色となっている。すなわち、クリーム半田と光パターンの反射率が等しくなっている。
【0120】
続いて上記基準面に対し光パターンを照射すると共に、これをカメラ5により撮像することで、各座標の輝度値を含んだ画像データを得る。本実施形態では、キャリブレーションを行う際には、光パターンの位相を90°ずつシフトさせ、各光パターンの下で撮像された4通りの画像データを取得する。
【0121】
そして、制御装置6は、上記4通りの画像データから各画素(座標)における光パターンの位相θを算出し、これをキャリブレーションデータとして設定データ記憶装置26に記憶する。
【0122】
さらに本実施形態では、第2液晶格子4Bbに関して、上記4通りの画像データから各画素における光パターンのゲインA及びオフセットB、並びに両者の関係を特定し、これをキャリブレーションデータとして設定データ記憶装置26に記憶する。従って、設定データ記憶装置26が本実施形態における記憶手段を構成する。
【0123】
ここで、ゲインA及びオフセットBを算出する手順についてより詳しく説明する。4通りの画像データの各画素における輝度値(V0,V1,V2,V3)と、ゲインA及びオフセットBとの関係は、下記式(H1)、(H2)、(H3)、(H4)により表すことができる。
【0124】
【数11】
【0125】
そして、4通りの画像データの輝度値(V0,V1,V2,V3)を加算し、上記式(H1)、(H2)、(H3)、(H4)を下記[数12]に示すように整理すると、下記式(H5)を導き出すことができる。
【0126】
【数12】
【0127】
また、上記式(H1)、(H3)から、下記式(H6)を導き出すことができる。
【0128】
【数13】
【0129】
また、上記式(H2)、(H4)から、下記式(H7)を導き出すことができる。
【0130】
【数14】
【0131】
そして、下記[数15]に示すように、上記式(H6)、(H7)を下記式(H8)に代入し、整理していくと、下記式(H9)を導き出すことができる。
【0132】
【数15】
【0133】
さらに、上記式(H5)、(H9)から導き出された下記式(H10)を基にゲインA及びオフセットBの比例定数Kを算出する。
【0134】
【数16】
【0135】
そして、上記のように算出された各画素における光パターンのゲインA、オフセットB、及び、比例定数Kをキャリブレーションデータとして設定データ記憶装置26に記憶する。勿論、比例定数Kのみをキャリブレーションデータとして記憶する構成としてもよい。
【0136】
次に、各検査エリアごとに行われる検査ルーチンについて、図3のタイミングチャートを参照して詳しく説明する。この検査ルーチンは、制御装置6(CPU等21)にて実行されるものである。
【0137】
制御装置6は、まずモータ15,16を駆動制御してプリント基板2を移動させ、カメラ5の視野をプリント基板2上の所定の検査エリア(計測対象範囲)に合わせる。なお、検査エリアは、カメラ5の視野の大きさを1単位としてプリント基板2の表面を予め分割しておいた中の1つのエリアである。
【0138】
続いて、制御装置6は、両照明装置4A,4Bの液晶格子4Ab,4Bbを切替制御し、該両液晶格子4Ab,4Bbに形成される第1格子及び第2格子の位置を所定の基準位置(位相「0°」の位置)に設定する。
【0139】
液晶格子4Ab,4Bbの切換設定が完了すると、制御装置6は、所定のタイミングTa1にて、位相「0°」の第1光パターンの下で1回目の第1撮像処理を開始する。具体的には、第1照明装置4Aの第1光源4Aaを発光させ、第1光パターンの照射を開始すると共に、カメラ5を駆動制御して、該第1光パターンが照射された検査エリア部分の撮像を開始する。かかる第1撮像処理の手順は、後述する2〜4回目の第1撮像処理においても同様である。
【0140】
そして、制御装置6は、撮像開始から所定時間(本実施形態では2msec)経過後のタイミングTa2において、1回目の第1撮像処理を終了する。つまり、第1光パターンの照射を終了すると共に、該第1光パターンに係る1回目の撮像を終了する。ここで、カメラ5により撮像された画像データは、画像データ記憶装置24へ転送され記憶される(以下同様)。
【0141】
同時に、制御装置6は、タイミングTa2にて第1照明装置4Aの第1液晶格子4Abの切替処理を開始する。具体的には、第1液晶格子4Abに形成される第1格子の位置を基準位置(位相「0°」の位置)から、第1光パターンの位相が4分の1ピッチずれる位相「90°」の位置へ切替える処理を開始する。
【0142】
次に、制御装置6は、第1液晶格子4Abの切換途中であるタイミングTa3にて、位相「0°」の第2光パターンの下で1回目の第2撮像処理を開始する。具体的には、第2照明装置4Bの第2光源4Baを発光させ、第2光パターンの照射を開始すると共に、カメラ5を駆動制御して、該第2光パターンが照射された検査エリア部分の撮像を開始する。かかる第2撮像処理の手順は、後述する2回目の第2撮像処理においても同様である。
【0143】
そして、制御装置6は、撮像開始から所定時間(本実施形態では2msec)経過後のタイミングTa4において、1回目の第2撮像処理を終了する。つまり、第2光パターンの照射を終了すると共に、該第2光パターンに係る1回目の撮像を終了する。
【0144】
次に、制御装置6は、第1液晶格子4Abの切替処理の開始(タイミングTa2)から所定時間(本実施形態では20msec)経過後のタイミングTa5において、該切替処理を終了する。
【0145】
第1液晶格子4Abの切替処理の完了と同時に、制御装置6は、タイミングTa5にて位相「90°」の第1光パターンの下で2回目の第1撮像処理を開始し、撮像開始から所定時間(本実施形態では2msec)経過後のタイミングTa6において、2回目の第1撮像処理を終了する。
【0146】
2回目の第1撮像処理の終了と同時に、制御装置6は、タイミングTa6にて両照明装置4A,4Bの液晶格子4Ab,4Bbの切替処理を開始する。具体的には、第1照明装置4Aの第1液晶格子4Abに形成される第1格子の位置を位相「90°」の位置から、第1光パターンの位相が4分の1ピッチずれる位相「180°」の位置へ切替える処理を開始する。また、第2照明装置4Bの第2液晶格子4Bbに形成される第2格子の位置を基準位置(位相「0°」の位置)から、第2光パターンの位相が2分の1ピッチずれる位相「180°」の位置へ切替える処理を開始する。
【0147】
液晶格子4Ab,4Bbの切替処理の完了と同時に、制御装置6は、タイミングTa7にて位相「180°」の第1光パターンの下で3回目の第1撮像処理を開始し、撮像開始から所定時間(本実施形態では2msec)経過後のタイミングTa8において、3回目の第1撮像処理を終了する。
【0148】
同時に、制御装置6は、タイミングTa8にて第1照明装置4Aの第1液晶格子4Abの切替処理を開始する。具体的には、第1液晶格子4Abに形成される第1格子の位置を位相「180°」の位置から、第1光パターンの位相が4分の1ピッチずれる位相「270°」の位置へ切替える処理を開始する。
【0149】
次に、制御装置6は、第1液晶格子4Abの切換途中であるタイミングTa9にて、位相「180°」の第2光パターンの下で2回目の第2撮像処理を開始する。そして、制御装置6は、撮像開始から所定時間(本実施形態では2msec)経過後のタイミングTa10において、2回目の第2撮像処理を終了する。
【0150】
次に、制御装置6は、第1液晶格子4Abの切替処理の開始(タイミングTa8)から所定時間(本実施形態では20msec)経過後のタイミングTa11において、該切替処理を終了する。
【0151】
第1液晶格子4Abの切替処理の完了と同時に、制御装置6は、タイミングTa12にて位相「270°」の第1光パターンの下で4回目の第1撮像処理を開始し、撮像開始から所定時間(本実施形態では2msec)経過後のタイミングTa12において、4回目の第1撮像処理を終了する。
【0152】
このように、上記一連の撮像処理を行うことにより、4通りに位相変化させた第1光パターンの下で撮像された4画面分の画像データ、及び、2通りに位相変化させた第2光パターンの下で撮像された2画面分の画像データの合計6画面分の画像データが取得される。
【0153】
そして、制御装置6は、まず第1光パターンの下で取得した4通りの画像データを基に、位相シフト法により高さ計測(三次元計測)を行う第1計測処理を実行する。かかる第1計測処理を実行する機能により本実施形態における第1計測手段が構成される。
【0154】
詳しくは、制御装置6は、位相シフト法により、上記4通りの画像データ(各画素の輝度値)から各画素に係る第1光パターンの位相θ1を算出する。
【0155】
ここで、上記4通りの画像データの各画素に係る輝度値V10,V11,V12,V13は、下記式(H1´)、(H2´)、(H3´)、(H4´)により表すことができる。
【0156】
【数17】
【0157】
上記式(H1´)、(H2´)、(H3´)、(H4´)を位相θ1について解くと、下記式(H11)を導き出すことができる。
【0158】
【数18】
【0159】
続いて、制御装置6は、上記のように算出された各画素の位相θ1と、上記設定データ記憶装置26に記憶したキャリブレーションデータ(キャリブレーションに基づく各画素の位相)とを比較して、同一の位相を有する画素のズレ量を算出し、三角測量の原理に基づき、検査エリアの各画素(x,y)に係る高さデータ(z)を算出し、かかる高さデータ(z)を演算結果記憶装置25に記憶する。
【0160】
例えば、被計測画素(x,y)における実測値(位相)が「10°」であった場合、該「10°」の値が、キャリブレーションにより記憶したデータ上のどの位置にあるかを検出する。ここで、被計測画素(x,y)よりも3画素隣りに「10°」が存在していれば、それは光パターンの縞が3画素ずれたことを意味する。そして、光パターンの照射角度と、光パターンの縞のズレ量を基に、三角測量の原理により、被計測画素(x,y)の高さデータ(z)を求めることができる。
【0161】
但し、上記第1計測処理により得られた計測データのうち、第1光パターンが十分に照射されず該第1計測処理により計測困難な領域(画素)に関しては、データの欠落部分となる。
【0162】
続いて、制御装置6は、上記データの欠落部分を補完する処理を実行する。具体的には、まず上記第1計測処理の計測結果を基に、該第1計測処理により計測困難であった領域(データの欠落部分)を特定する。次に、かかる領域に関して、第2光パターンの下で取得した上記2通りの画像データを基に、位相シフト法により高さ計測(三次元計測)を行う第2計測処理を実行する。かかる第2計測処理を実行する機能により本実施形態における第2計測手段が構成される。
【0163】
詳しくは、制御装置6は、位相シフト法により、上記2通りの画像データ(各画素の輝度値)と、上記設定データ記憶装置26に記憶したキャリブレーションデータ(キャリブレーションに基づく各画素の比例定数K)とを基に、各画素に係る第2光パターンの位相θ2を算出する。
【0164】
ここで、上記2通りの画像データの各画素に係る輝度値V20,V21とした場合、各画素に係る第2光パターンの位相θ2は、上記式(15)に基づき、下記式(H12)により表すことができる。
【0165】
θ2=sin-1[(V20−V21)/K(V20+V21)] ・・・(H12)
但し、K:比例定数。
【0166】
続いて、制御装置6は、上記第1計測処理と同様、上記のように算出された各画素の位相θ2と、上記設定データ記憶装置26に記憶したキャリブレーションデータ(キャリブレーションに基づく各画素の位相)とを比較して、同一の位相を有する画素のズレ量を算出し、三角測量の原理に基づき、検査エリアの各画素(x,y)に係る高さデータ(z)を算出し、かかる高さデータ(z)を演算結果記憶装置25に記憶する。
【0167】
そして、上記第2計測処理の終了後、制御装置6は、上記第1計測処理により得られた計測データ(計測値)と、第2計測処理により得られた計測データ(計測値)とを合成する合成処理を行う。これにより、第1計測処理により得られた計測データのデータ欠落部分が補完された、所定の検査エリア全域の各画素について漏れのない計測データが完成する。従って、かかる合成処理により、本実施形態における計測値取得手段が構成される。
【0168】
次に、制御装置6は、このように得られた所定の検査エリアの計測データに基づいて、基準面より高くなったクリーム半田の印刷範囲を検出し、この範囲内での各部位の高さを積分することにより、印刷されたクリーム半田の量を算出する。
【0169】
続けて、制御装置6は、このようにして求めたクリーム半田の位置、面積、高さ又は量等のデータを、予め設定データ記憶装置26に記憶されている基準データと比較判定し、この比較結果が許容範囲内にあるか否かによって、その検査エリアにおけるクリーム半田の印刷状態の良否を判定する。
【0170】
かかる処理が行われている間に、制御装置6は、モータ15,16を駆動制御してプリント基板2を次の検査エリアへと移動せしめ、以降、上記一連の処理が、全ての検査エリアで繰り返し行われることで、プリント基板2全体の検査が終了する。
【0171】
以上詳述したように、本実施形態によれば、光パターンを2方向から照射することにより、プリント基板2に光パターンが照射されない影の部分が生じないようにすることができる。そして、両光パターンのうち、第1光パターンの照射により計測可能な領域に関しては、該第1光パターンに係る計測精度の高い第1計測処理の計測結果を該領域に係る計測値として取得する一方、該第1光パターンの照射により計測困難な領域に関しては、他方の第2光パターンに係る第2計測処理の計測結果を該領域に係る計測値として取得することにより、全体としては計測精度が高くかつデータの欠落部分のない計測データを取得することができる。結果として、計測精度の向上を図ることができる。
【0172】
また、本実施形態では、第2光パターンの照射に基づく計測を行う際には、所定の撮像条件により定まるゲインA及びオフセットBの関係〔例えばA=K(比例定数)×B〕と、画像データ上の各画素(x,y)の輝度値V(x,y)から定まる、該画素(x,y)に係るゲインA(x,y)又はオフセットB(x,y)の値とを利用することにより、2通りに位相変化させた光パターンの下で撮像した2通りの画像データを基に位相シフト法により高さ計測を行うことができる。
【0173】
これにより、本実施形態においては、所定の検査エリアにつき、4通りに位相変化させた第1光パターンの下で4回の第1撮像処理を実行し、2通りに位相変化させた第2光パターンの下で2回の第2撮像処理を実行すればよいため、撮像回数が計6回となる。従って、各光パターンにつき4回ずつ計8回の撮像を必要とする従来技術に比べて、全体の撮像回数が少なくて済み、撮像時間を短縮することができる。結果として、より高精度な計測をより短時間で実現することが可能となる。
【0174】
さらに、本実施形態では、第1光パターンの下での1回分の第1撮像処理を実行した後、第1照明装置4Aの第1液晶格子4Abの切替処理の途中で、第2光パターンの下での1回分の第2撮像処理を実行可能な構成となっている。
【0175】
これにより、所定の検査エリアに係る全ての撮像処理(最後の撮像処理)が終了するまでに必要な時間を短縮することができる。例えば、本実施形態において、所定の検査エリアに係る全ての撮像処理を終了するまでに必要な時間は、〔第1撮像処理に要する時間[2ms]×4回〕+〔第1液晶格子4Abの切替処理に要する時間[20ms]×3回〕=合計[68msec]となる。
【0176】
加えて、本実施形態では、少なくとも所定の検査エリアに係るデータ取得が行われている間(上記一連の撮像処理が行われている間)、プリント基板2が停止されており、カメラ5とプリント基板2との位置関係が固定されている。つまり、撮像中におけるカメラ5とプリント基板2との位置関係が変化しないため、検査エリアの狭小化等を防止することができる。結果として、本実施形態のように多数の検査エリアが設定されるプリント基板2の計測において、計測時間の短縮化を図ることができる。
【0177】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。尚、第1実施形態と同一構成部分については、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0178】
上記第1実施形態では、各画素における光パターンのゲインA及びオフセットBの関係(比例定数K)を、予めキャリブレーションにより求める構成となっているが、これに代えて、第2実施形態では、第2光パターンのゲインA及びオフセットBの関係(比例定数K)を、実測時に撮像した前記2通りに位相変化させた第2光パターンの下で撮像した2通りの画像データを基に求める構成となっている。
【0179】
その手順としては、まず上記式(12)を用いて画像データの全画素についてオフセットBを求める。次に、その中でオフセットBの値が一致する画素の輝度値V(=Asinθ+B)を抽出し、そのヒストグラムを作成する。その一例を図6,7の表に示す。但し、図6,7はゲインAを「1」、オフセットBを「0」とした場合を例示している。図6は、輝度値Vを「0.1」幅のデータ区間に区切って、そのデータ区間に含まれる輝度値の数を表した分布表であり、図7は、それをプロットしたヒストグラムである。
【0180】
そして、このヒストグラムを基に輝度値の最大値VMAXと最小値VMINを決定する。「sinθ」の特性を利用することにより、上記ヒストグラムにおいて発生する2つのピークをそれぞれ輝度値の最大値VMAXと最小値VMINとして決定することができる。図6,7に示す例では、輝度値Vが「−1.0〜−0.9」及び「0.9〜1.0」のデータ区間に入る輝度値Vの個数がそれぞれ「51」となり、ここが2つのピークとなる。
【0181】
続いて、輝度値の最大値VMAXと最少値VMINを基にゲインA及びオフセットBを算出する。上述したとおり、輝度値の最大値VMAXと最少値VMINの平均値がオフセットBとなり、最大値VMAXと最少値VMINの差の半分がゲインAとなる。つまり、図7に示すように、2つのピークの中間値がオフセットBとなり、2つのピークの幅の半分がゲインAとなる。
【0182】
このようにして得たゲインAとオフセットBの値を基に比例定数Kを決定することができる〔上記式(3)参照〕。従って、比例定数Kを決定する上記一連の処理機能により本実施形態における関係把握手段が構成される。
【0183】
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。また、上記第1実施形態のようなキャリブレーションの手間を省略することができ、さらなる計測時間の短縮化を図ることができる。
【0184】
尚、本実施形態では、位相が180°異なる2通りの第2光パターンの下で撮像された2通りの画像データを基に、画像データの全画素について比例定数K等を求める構成となっているが、これに限らず、例えば位相が90°異なる2通りの第2光パターンの下で撮像された2通りの画像データを基に比例定数K等を求める構成としてもよい。また、画像データの全画素ではなく、被計測画素の周辺など画像データの一部の範囲において、比例定数K等を求める構成としてもよい。
【0185】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態について図面を参照しつつ説明する。尚、第1実施形態と同一構成部分については、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0186】
本実施形態では、各検査エリアごとに行われる検査ルーチンが上記第1実施形態と異なる。本実施形態に係る検査ルーチンについて、図8のタイミングチャートを参照して詳しく説明する。
【0187】
制御装置6は、まずモータ15,16を駆動制御してプリント基板2を移動させ、カメラ5の視野をプリント基板2上の所定の検査エリア(計測対象範囲)に合わせる。
【0188】
続いて、制御装置6は、両照明装置4A,4Bの液晶格子4Ab,4Bbを切替制御し、該両液晶格子4Ab,4Bbに形成される第1格子及び第2格子の位置を所定の基準位置(位相「0°」の位置)に設定する。
【0189】
液晶格子4Ab,4Bbの切換設定が完了すると、制御装置6は、所定のタイミングTb1にて、位相「0°」の第2光パターンの下で1回目の第2撮像処理を開始し、所定時間(本実施形態では2msec)経過後のタイミングTb2において、1回目の第2撮像処理を終了する。
【0190】
かかる第2撮像処理の終了と同時に、制御装置6は、タイミングTb2にて、位相「0°」の第1光パターンの下で1回目の第1撮像処理を開始し、所定時間(本実施形態では2msec)経過後のタイミングTb3において、1回目の第1撮像処理を終了する。
【0191】
かかる第1撮像処理の終了と同時に、制御装置6は、タイミングTb3にて両照明装置4A,4Bの液晶格子4Ab,4Bbの切替処理を開始する。具体的には、第1照明装置4Aの第1液晶格子4Abに形成される第1格子の位置を基準位置(位相「0°」の位置)から、第1光パターンの位相が4分の1ピッチずれる位相「90°」の位置へ切替える処理を開始する。また、第2照明装置4Bの第2液晶格子4Bbに形成される第2格子の位置を基準位置(位相「0°」の位置)から、第2光パターンの位相が2分の1ピッチずれる位相「180°」の位置へ切替える処理を開始する。
【0192】
次に、制御装置6は、液晶格子4Ab,4Bbの切替処理の開始(タイミングTb3)から所定時間(本実施形態では20msec)経過後のタイミングTb4において、該切替処理を終了する。
【0193】
液晶格子4Ab,4Bbの切替処理の完了と同時に、制御装置6は、タイミングTb4にて位相「90°」の第1光パターンの下で2回目の第1撮像処理を開始し、撮像開始から所定時間(本実施形態では2msec)経過後のタイミングTb5において、2回目の第1撮像処理を終了する。
【0194】
同時に、制御装置6は、タイミングTb5にて第1照明装置4Aの第1液晶格子4Abの切替処理を開始する。具体的には、第1照明装置4Aの第1液晶格子4Abに形成される第1格子の位置を位相「90°」の位置から、第1光パターンの位相が4分の1ピッチずれる位相「180°」の位置へ切替える処理を開始する。
【0195】
次に、制御装置6は、第1液晶格子4Abの切替処理の開始(タイミングTb5)から所定時間(本実施形態では20msec)経過後のタイミングTb6において、該切替処理を終了する。
【0196】
第1液晶格子4Abの切替処理の完了と同時に、制御装置6は、タイミングTb6にて位相「180°」の第1光パターンの下で3回目の第1撮像処理を開始し、撮像開始から所定時間(本実施形態では2msec)経過後のタイミングTb7において、3回目の第1撮像処理を終了する。
【0197】
同時に、制御装置6は、タイミングTb7にて第1照明装置4Aの第1液晶格子4Abの切替処理を開始する。具体的には、第1照明装置4Aの第1液晶格子4Abに形成される第1格子の位置を位相「180°」の位置から、第1光パターンの位相が4分の1ピッチずれる位相「270°」の位置へ切替える処理を開始する。
【0198】
次に、制御装置6は、第1液晶格子4Abの切替処理の開始(タイミングTb7)から所定時間(本実施形態では20msec)経過後のタイミングTb8において、該切替処理を終了する。
【0199】
第1液晶格子4Abの切替処理の完了と同時に、制御装置6は、タイミングTb8にて位相「270°」の第1光パターンの下で4回目の第1撮像処理を開始し、撮像開始から所定時間(本実施形態では2msec)経過後のタイミングTb9において、4回目の第1撮像処理を終了する。
【0200】
かかる第1撮像処理の終了と同時に、制御装置6は、タイミングTb9にて、位相「180°」の第2光パターンの下で2回目の第2撮像処理を開始し、所定時間(本実施形態では2msec)経過後のタイミングTb10において、2回目の第2撮像処理を終了する。
【0201】
このように、上記一連の撮像処理を行うことにより、4通りに位相変化させた第1光パターンの下で撮像された4画面分の画像データ、及び、2通りに位相変化させた第2光パターンの下で撮像された2画面分の画像データの合計6画面分の画像データが取得される。
【0202】
以上詳述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様に、所定の検査エリアに係る全ての撮像処理(最後の撮像処理)が終了するまでに必要な時間を短縮することができる。例えば、本実施形態において、所定の検査エリアに係る全ての撮像処理を終了するまでに必要な時間は、〔第1撮像処理に要する時間[2ms]×4回〕+〔第1液晶格子4Abの切替処理に要する時間[20ms]×3回〕+〔第2撮像処理に要する時間[2ms]×2回〕=合計[72msec]となる。
【0203】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0204】
(a)上記実施形態では、三次元計測装置を、プリント基板2に印刷形成されたクリーム半田の高さを計測する基板検査装置1に具体化したが、これに限らず、例えば基板上に印刷された半田バンプや、基板上に実装された電子部品など、他のものの高さを計測する構成に具体化してもよい。
【0205】
(b)上記実施形態では、光源4Aa,4Baからの光を縞状の光パターンに変換するための格子を、液晶格子4Ab,4Bbにより構成すると共に、これを切替制御することにより、光パターンの位相をシフトさせる構成となっている。これに限らず、例えば格子部材をピエゾアクチュエータ等の移送手段により移送させ、光パターンの位相をシフトさせる構成としてもよい。
【0206】
(c)上記実施形態では、第1計測処理において、位相が90°ずつ異なる4通りの第1光パターンの下で撮像された4通りの画像データを基に、位相シフト法により三次元計測を行う構成となっているが、これに限らず、例えば位相が120°ずつ異なる3通りの第1光パターンの下で撮像された3通りの画像データを基に三次元計測を行う構成としてもよい。つまり、第1光パターンの下での撮像回数である「第1所定数」は、少なくとも位相シフト法により三次元計測を実行可能な数であれば良い。
【0207】
(d)上記実施形態では、第2計測処理において、位相が180°異なる2通りの光パターンの下で撮像された2通りの画像データを基に三次元計測を行う構成となっている。これに代えて、例えば位相が90°異なる2通りの光パターンの下で撮像された2通りの画像データを基に三次元計測を行う構成としてもよい。かかる場合、上記式(23),(27)を用いることにより、2通りの画像データ上の各画素における輝度値V20,V21と、既知の比例定数Kを利用して、各画素における第2光パターンの位相θ2を算出することができる。
【0208】
かかる構成によれば、「tan-1」を用いた演算式に基づいて位相θ2を求めることができるため、−180°〜180°の360°の範囲で高さ計測可能となり、計測レンジをより大きくすることができる。
【0209】
勿論、この他にも、上記式(1)、(2)、(3)の関係を満たすものであれば、他の構成を採用してもよい。位相θ2を得る一般式としては、上記式(9)が一例に挙げられる〔[数9]参照〕。
【0210】
(e)上記実施形態では、第2計測処理において、位相が異なる2通りの光パターンの下で撮像された2通りの画像データを基に三次元計測を行う構成となっているが、第2光パターンの下での撮像回数は、これに限定されるものではない。つまり、第2光パターンの下での撮像回数である「第2所定数」は、少なくとも第1光パターンの下での撮像回数である「第1所定数」よりも少ない数であれば良い。例えば第1光パターンによる計測時において、4通りの位相の第1光パターンの下で撮像された4通りの画像データを基に高さ計測を行う構成となっている場合には、第2光パターンによる計測時において、3通りの位相の第2光パターンの下で撮像された3通りの画像データを基に、ゲインAとオフセットBとの関係(比例定数K)を利用して高さ計測を行う構成としてもよい。かかる場合においても、従来に比べれば、比較的簡単な演算式に基づいて第2光パターンの位相θ2を求めることができ、処理の高速化が可能となる。
【0211】
(f)上記第1実施形態では、位相が90°異なる4通りの光パターンの下で撮像された4通りの画像データを基にキャリブレーションを行う構成となっているが、これに限らず、例えば位相の異なる3通りの光パターンの下で撮像された3通りの画像データを基にキャリブレーションを行う構成としてもよい。
【0212】
また、キャリブレーションを行う際に、光源の輝度を変えて複数回行う構成としてもよい。かかる構成とすれば、下記式(28)に示すようなカメラ5の暗電流(オフセット)Cまで求めることができる。
【0213】
A=KB+C ・・・(28)
但し、A:ゲイン、B:オフセット、C:カメラの暗電流(オフセット)、K:比例定数。
【0214】
あるいは、ゲインAとオフセットBとの関係は、式として求めることなく、ゲインAとオフセットBとの関係を表した数表やテーブルデータを作成することにより、ゲインAからオフセットBあるいはオフセットBからゲインAを求めることが可能に構成しても良い。
【0215】
また、キャリブレーションに代えて、第1計測処理において用いる上記4通りの第1光パターンの下で撮像された4通りの画像データを利用してゲインAとオフセットBとの関係(比例定数K)を求めても良い。従って、かかる処理を行う機能により本実施形態における関係把握手段が構成されることとなる。
【0216】
(g)第1撮像処理及び第2撮像処理の実行順序や、液晶格子4Ab,4Bbの切替処理の実行タイミングなど、検査ルーチンは上記第1実施形態(図3参照)や第3実施形態(図8参照)に限定されるものではなく、第1撮像処理や第2撮像処理の実行回数等に応じて種々の組み合わせが可能である。
【0217】
例えば上記第1実施形態では、1回目の第2撮像処理が終了した後、所定時間経過後(例えば11msec後)に両液晶格子4Ab,4Bbの切替処理を同時に開始する構成となっているが、これに限らず、例えば第2撮像処理の終了と同時に又は所定時間経過後(例えば4msec後)に第2液晶格子4Bbの切替処理を単独で開始する構成としてもよい。つまり、第1液晶格子4Abの切替処理と第2液晶格子4Bbの切替処理の一部が重複して行われると共に、第2液晶格子4Bbの切替処理中に2回目の第1撮像処理が行われる構成としてもよい。但し、第1計測処理の計測精度の低下抑制を図る上では、上記第1実施形態のように、第2液晶格子4Bbの切替処理が、第1液晶格子4Abの切替処理と同時に行われることが好ましい。
【0218】
(h)上記実施形態では、計測精度の高い第1計測処理の計測結果を主として用いる一方、一部のデータ欠落部分に関しては、第2計測処理の計測結果で補完することで、全体としては計測精度が高くかつデータの欠落部分が少ない計測データを取得する構成となっているが、これに限らず、第2計測処理の計測結果を主として用いる一方、一部のデータ欠落部分に関して、第1計測処理の計測結果で補完する構成としてもよい。
【0219】
また、上記実施形態では、第1計測処理により計測困難であった領域に関してのみ、第2計測処理を実行する構成となっているが、これに限らず、所定の検査エリアのうち、第2光パターンの下で取得した2通りの画像データを基に三次元計測可能な領域すべてにおいて第2計測処理を実行し、そこから第1計測処理により計測困難であった領域に対応するデータを抽出する構成としてもよい。
【0220】
(i)上記実施形態では、カメラ5の撮像処理について「撮像」としか記載していないが、より詳しくは、実質的な撮像にあたる露光処理と、撮像したデータの転送処理とに分けられる。
【0221】
従って、カメラ5として、一般のCCDカメラ等を用いた場合には、露光中にデータ転送を行うことができないため、上記第3実施形態のように第1撮像処理及び第2撮像処理を連続して行う場合には、図9(a)に示す例のように、露光処理とデータ転送処理とを交互に繰り返すこととなる。
【0222】
これに対し、カメラ5として、CMOSカメラや、データ転送中に露光可能な機能を持ったCCDカメラ等を用いた場合には、露光処理とデータ転送処理とを一部で重複して行うことができるため、撮像時間ひいては計測時間の短縮化を図ることができる。
【0223】
具体的に、露光時間が転送時間よりも短く設定されている場合には、図9(b)に示す例のように、第1の露光により取得した第1のデータ転送中に、第2の露光が終了しないぎりぎりのタイミングで、該第2の露光を開始すれば、第1の露光により取得したデータの消失を防止しつつ、第1撮像処理及び第2撮像処理に要する撮像時間を極力短くすることができる。
【0224】
一方、露光時間が転送時間よりも長く設定されている場合には、図9(c)に示す例のように、第1の露光の終了直後に第2の露光を開始すれば、第1撮像処理及び第2撮像処理に要する撮像時間を極力短くすることができる。
【0225】
(j)上記実施形態では、照明装置4A,4Bが、カメラ5の撮像方向である略鉛直方向(Z軸方向)に沿って視た平面視(X−Y平面)において、プリント基板2を挟んで相対向する位置に、プリント基板2を中心に平面視等間隔で配置されている。これに限らず、照明装置4A,4Bの配置は、各光パターンが照射されない影の部分が生じないよう、プリント基板2の構成等に応じて任意に設定可能である。
【0226】
例えば上記実施形態では、各光パターンが、矩形状のプリント基板2の一対の辺と平行にX軸方向に沿って照射される。つまり、光パターンの縞が、X軸方向に直交し、かつ、Y軸方向に平行に照射される構成となっている。これに限らず、例えば光パターンの縞が、矩形状のプリント基板2やカメラ5の撮像視野(検査エリア)の各辺に対し斜め(例えば平面視斜め45度)に交差するように照射される構成としてもよい。
【0227】
(k)上記実施形態では、各光パターンの周期(縞ピッチ)について特に言及していないが、各光パターンの周期を異ならせた構成としてもよい。例えば第1光パターンを第1周期(例えば600μm)の光パターンとすると共に、第2光パターンを前記第1周期よりも長い第2周期(例えば800μm)の光パターンとしてもよい。このように周期の短い第1光パターンと、周期の長い第2光パターンとを組合わせて計測を行うようにすれば、長い周期の第2光パターンを利用するメリットである計測可能な高さレンジを大きくできること、及び、周期の短い第1光パターンを利用するメリットである分解能の高い高精度な計測を実現できることの双方の効果を得ることができる。結果として、広ダイナミックレンジで高分解能の計測を行うことができ、より高精度な計測を実現することができる。
【0228】
ここで、1種類1方向のみならず、同種(同周期)の光パターンを複数方向から照射する構成としてもよい。例えば、上記実施形態のように相対向して配置される第1照明装置4A及び第2照明装置4Bを2組備え、該4つの照明装置4A,4Bを、プリント基板2を中心に90°間隔で配置した構成としてもよい。
【0229】
但し、かかる構成では、第1光パターン又は第2光パターンのいずれか一方しか照射されない領域が生じてしまうおそれもある。
【0230】
これに対し、例えば第1照明装置4A及び第2照明装置4Bをそれぞれ2つずつ備えると共に、該第1照明装置4A及び第2照明装置4Bがプリント基板2を中心に90°間隔で交互に配置される構成、つまり2つの第1照明装置4Aが相対向するように配置されると共に、2つの第2照明装置4Bが相対向するように配置された構成としてもよい。
【0231】
かかる構成により、第1光パターン又は第2光パターンのいずれか一方しか照射されない領域が生じる割合を極力減らすことができる。結果として、より精度の高い計測を行うことができる。
【符号の説明】
【0232】
1…基板検査装置、2…プリント基板、4A…第1照明装置、4Aa…第1光源、4Ab…第1液晶格子、4B…第2照明装置、4Ba…第2光源、4Bb…第2液晶格子、5…カメラ、6…制御装置、24…画像データ記憶装置、25…演算結果記憶装置、26…設定データ記憶装置、A…ゲイン、B…オフセット、K…比例定数。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10