水処理システム1は、硬水軟化装置3と、逆浸透膜モジュール10と、供給水W14を逆浸透膜モジュール10に供給する供給水ラインL1と、逆浸透膜モジュール10に接続され、濃縮水W30が流通する濃縮水ラインL3と、濃縮水(濃縮排水W50)を濃縮水ラインL3から系外に排出する濃縮排水ラインL5と、供給水(循環水W40)を濃縮水ラインL3から供給水ラインL1に返送する循環水ラインL4と、供給水が流通するラインL1、L3、L4のうちの一つ以上にスケール分散剤を添加する分散剤添加装置5と、硬度検出手段Sが検出する硬度及び腐食速度検出手段16が検出する腐食速度に基づいて、分散剤添加装置5を制御する分散剤添加制御部30と、を備える。
前記分散剤添加制御部は、前記腐食速度検出手段で検出される腐食速度が所定の腐食速度閾値を下回る場合には、前記硬度検出手段が供給水の硬度を検出するように前記硬度検出手段を制御し、前記硬度検出手段で検出される硬度が所定の硬度閾値を上回る場合には、前記分散剤添加装置を制御する、請求項1〜4のいずれかに記載の水処理システム。
前記分散剤添加制御部は、前記硬度検出手段で検出される硬度と、前記腐食速度検出手段で検出される腐食速度と、シリカ濃度とに基づいて、前記供給水が流通するラインに添加されるスケール分散剤の添加量を調整するように前記分散剤添加装置を制御する請求項1〜5のいずれかに記載の水処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の水処理システム1の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の水処理システム1の全体構成図である。
【0023】
図1に示すように、水処理システム1は、水源2と、硬水軟化装置3と、硬度検出手段としての硬度センサSと、分散剤添加装置5と、pH調整剤添加装置7と、加圧ポンプ8と、インバータ9と、逆浸透膜モジュールとしてのRO膜モジュール10と、定流量弁14と、比例制御排水弁15と、腐食速度検出手段としての腐食速度センサ16と、シリカ濃度検出手段としてのシリカ濃度センサ17と、水温検出手段としての水温計18と、流量センサFMと、制御部30と、を備える。なお、制御部30と被制御対象機器との電気的接続線の図示については、省略している。
【0024】
水処理システム1は、供給水ラインL1と、透過水ラインL2と、濃縮水ラインL3と、循環水ラインL4と、濃縮排水ラインL5と、を備える。「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、その由来(出所)やその水質によらず、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3又は循環水ラインL4を流通する水を、「供給水」ともいい、濃縮水ラインL3、循環水ラインL4又は濃縮排水ラインL5を流通する水を、「濃縮水」ともいう。
【0025】
供給水ラインL1は、供給水W14を硬水軟化装置3からRO膜モジュール10に向けて供給するラインである。供給水ラインL1は、上流側から下流側に向けて、第1供給水ラインL11と、第2供給水ラインL12とを有する。
【0026】
第1供給水ラインL11の上流側の端部は、原水W11の水源2に接続されている。第1供給水ラインL11の下流側の端部は、接続部J2において、第2供給水ラインL12及び循環水ラインL4に接続されている。第1供給水ラインL11には、上流側から下流側に向けて、硬水軟化装置3と、硬度センサSと、分散剤添加装置5の分散剤添加位置J1と、pH調整剤添加装置7とが設けられる。
【0027】
硬水軟化装置3は、原水W11から供給水としての軟水W12を製造する装置である。詳細には、硬水軟化装置3は、原水W11に含まれる硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)を、陽イオン交換樹脂床(図示しない)においてナトリウムイオン(又はカリウムイオン)に置換して軟水W12を製造する設備である。硬水軟化装置3は、第1供給水ラインL11に設けられる。第1供給水ラインL11における硬水軟化装置3の上流側には、原水W11が流通し、第1供給水ラインL11における硬水軟化装置3の下流側には、軟水W12が流通する。なお、その由来(出所)やその水質(ナトリウムイオン濃度等)によらず、硬水軟化装置3よりも下流側の供給水ラインL1を流通する水を「軟水W12」ともいう。
【0028】
硬度検出手段としての硬度センサSは、供給水の硬度を検出する装置である。詳細には、硬度センサSは、硬水軟化装置3よりも下流側の第1供給水ラインL11を流通する軟水W12の硬度(例えば、前段に設置された硬水軟化装置3の硬度リーク量)を検出硬度として検出する装置である。より詳細には、硬度センサSは、硬水軟化装置3と分散剤添加装置5との間を流通する軟水W12の硬度を測定する。硬度センサSは、制御部30と電気的に接続されている。硬度センサSで測定(検出)された軟水W12の硬度は、制御部30へ検出信号として送信される。
【0029】
分散剤添加位置J1は、第1供給水ラインL11の途中に配置される。分散剤添加位置J1において、分散剤添加装置5と第1供給水ラインL11とが接続されている。
【0030】
分散剤添加装置5は、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3及び循環水ラインL4のうちの一つ以上の供給水が流通するラインにスケール分散剤を添加する装置である。本実施形態においては、分散剤添加装置5は、供給水ラインL1(第1供給水ラインL11)を流通する供給水(軟水W12)にスケール分散剤を添加することにより、供給水W13を得る装置である。分散剤添加装置5が分散剤添加位置J1において軟水W12にスケール分散剤を添加することにより、供給水W13は得られる。分散剤添加装置5は、制御部30と電気的に接続されている。なお、供給水W13に対するスケール分散剤の添加量や供給水W13の水質によらず、分散剤添加位置J1よりも下流側の供給水ラインL1(第1供給水ラインL11)を流通する水を「供給水W13」ともいう。
【0031】
本実施形態においては、分散剤添加装置5は、RO膜モジュール10におけるスケールの析出を抑制するために、スケール分散剤を添加する。また、RO膜モジュール10において、逆浸透膜の表面に炭酸カルシウム系スケールが付着することを効果的に抑制可能なことから、スケール分散剤の例として、ポリカルボン酸とホスホン酸とを含む、濃度が33〜37質量%の水溶液であるBWA WATER ADDITIVES社の商品名「フロコン260」を挙げることができる。
【0032】
pH調整剤添加装置7は、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3及び循環水ラインL4のうちの一つ以上の供給水が流通するラインにpH調整剤を添加する装置である。本実施形態においては、pH調整剤添加装置7は、供給水ラインL1(第1供給水ラインL11)を流通する供給水(供給水W12)にpH調整剤を添加する。pH調整剤添加装置7は、制御部30と電気的に接続されている。
【0033】
第2供給水ラインL12の上流側の端部は、接続部J2に接続されている。第2供給水ラインL12の下流側の端部は、RO膜モジュール10の一次側入口ポートに接続されている。第2供給水ラインL12には、加圧ポンプ8が設けられる。
【0034】
加圧ポンプ8は、供給水W14を吸入し、RO膜モジュール10に向けて圧送(吐出)する装置である。加圧ポンプ8には、インバータ9から周波数が変換された駆動電力が供給される。加圧ポンプ8は、供給(入力)された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0035】
供給水W14は、加圧ポンプ8を介してRO膜モジュール10に供給される。また、供給水W14は、供給水W13及び循環水W40(後述)からなる。なお、第2供給水ラインL12を流通してRO膜モジュール10に供給される水を「供給水W14」ともいう。
【0036】
インバータ9は、加圧ポンプ8に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。インバータ9は、制御部30と電気的に接続されている。インバータ9には、制御部30から指令信号が入力される。インバータ9は、制御部30により入力された指令信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を加圧ポンプ8に出力する。
【0037】
逆浸透膜モジュールとしてのRO膜モジュール10は、供給水W14を透過水W20と濃縮水W30とに分離する設備である。詳細には、RO膜モジュール10は、加圧ポンプ8から吐出された供給水W14を、溶存塩類が除去された透過水W20と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W30とに膜分離処理する設備である。RO膜モジュール10は、単一又は複数のRO膜エレメント(図示せず)を備える。RO膜モジュール10は、これらRO膜エレメントにより供給水W14を膜分離処理し、透過水W20と濃縮水W30とを製造する。
【0038】
透過水ラインL2は、RO膜モジュール10で分離された透過水W20を送出するラインである。透過水ラインL2の上流側の端部は、RO膜モジュール10の二次側ポートに接続されている。透過水ラインL2の下流側の端部は、貯留タンク(図示せず)に接続されている。透過水ラインL2には、流量センサFMが設けられる。
【0039】
流量センサFMは、透過水ラインL2を流通する透過水W20の流量を検出する機器である。流量センサFMは、制御部30と電気的に接続されている。流量センサFMで検出された透過水W20の流量(以下、「検出流量値」ともいう)は、制御部30にパルス信号として送信される。
【0040】
濃縮水ラインL3は、RO膜モジュール10で分離された濃縮水W30が流通するラインである。濃縮水ラインL3の上流側の端部は、RO膜モジュール10の一次側出口ポートに接続されている。また、濃縮水ラインL3の下流側は、接続部J3において、循環水ラインL4及び濃縮排水ラインL5に分岐している。
【0041】
循環水ラインL4は、濃縮水ラインL3に接続され、供給水としての濃縮水(循環水W40)を供給水ラインL1に返送するラインである。本実施形態においては、循環水ラインL4は、濃縮水ラインL3を流通する濃縮水W30を循環水W40として、供給水ラインL1における加圧ポンプ8よりも上流側に返送(循環)させるラインである。循環水ラインL4の上流側の端部は、接続部J3において濃縮水ラインL3に接続されている。また、循環水ラインL4の下流側の端部は、接続部J2において、供給水ラインL1に接続されている。接続部J2は、分散剤添加位置J1と加圧ポンプ8との間に配置されている。循環水ラインL4には、上流側から下流側に向けて、定流量弁14と、腐食速度センサ16と、シリカ濃度センサ17と、水温計18と、が設けられる。
【0042】
定流量弁14は、循環水ラインL4を流通する循環水W40の流量を所定の一定流量値に保持するように調節する機器である。定流量弁14において保持される「一定流量値」とは、一定流量値に幅がある概念であり、定流量弁における目標流量値のみに限られない。例えば、定流量機構の特性(例えば、材質や構造に起因する温度特性等)を考慮して、定流量弁における目標流量値に対して、±10%程度の調節誤差を有するものを含む。定流量弁14は、補助動力や外部操作を必要とせずに一定流量値を保持するものであり、例えば、水ガバナの名称で呼ばれるものが挙げられる。なお、定流量弁14は、補助動力や外部操作により動作して、一定流量値を保持するものでもよい。
【0043】
腐食速度検出手段としての腐食速度センサ16は、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3、循環水ラインL4及び濃縮排水ラインL5のうちの一つ以上のラインの腐食速度を分極抵抗法で検出する機器である。本実施形態においては、腐食速度センサ16は、循環水ラインL4の腐食速度を検出する。腐食速度センサ16が循環水ラインL4の腐食速度を分極抵抗法で検出することにより、ラインの腐食速度は連続的に検出される。腐食速度センサ16は、制御部30と電気的に接続されている。後述するように、制御部30は、腐食速度センサ16で連続的に検出される腐食速度に基づいて、分散剤添加制御を実行する。
【0044】
腐食速度センサ16は、所定の間隔を空けて設置されている一対の電極(図示せず)を備えている。本実施形態においては、一対の電極は、鉄(Fe)製の電極である。腐食速度センサ16は、ラインを流通する水(本実施形態においては、循環水ラインL4を流通する循環水W40)に一対の電極を浸し、電極間に電圧を印加することで、分極抵抗(腐食反応抵抗、電荷移動抵抗)を測定し、ライン(配管)の腐食速度を算出する。
【0045】
腐食速度センサ16が検出するライン(配管)の腐食速度と供給水に含まれるスケール成分との関係について説明する。一般に、スケールの要因となる硬度やシリカ等のスケール成分が多くなり、金属表面のスケール化が進行すると、腐食は抑制されていく傾向がある。このことから、腐食速度が低下した場合には、水質がスケール傾向のある水質へと変化したことを意味することが多い。反対に、腐食速度が増加した場合には、水質がスケール傾向の低い水質に変化したことを意味することが多い。そのため、腐食速度センサ16の検出する腐食速度は、供給水のスケール傾向を推定する指標となる。
【0046】
シリカ濃度センサ17は、供給水又は濃縮排水のシリカ濃度を検出する機器である。本実施形態においては、シリカ濃度センサ17は、供給水としての循環水W40のシリカ濃度を定期的に自動検出する。シリカ濃度の測定においては、定期的に供給水を採取して水分析を行ってもよいが、省力化及び迅速な水質管理のため、例えば公開特許公報2015−83945記載のシリカ濃度測定装置にて、定期的に自動測定することがより望ましい。
【0047】
水温計18は、供給水又は濃縮排水の水温を検出する機器である。本実施形態においては、水温計18は、供給水としての循環水W40の水温を定期的に自動検出する。
【0048】
濃縮排水ラインL5は、濃縮水ラインL3に接続され、濃縮排水W50としての濃縮水を系外へ排出するラインである。本実施形態においては、濃縮排水ラインL5は、接続部J3において濃縮水ラインL3に接続され、RO膜モジュール10で分離された濃縮水W30を、濃縮排水W50として装置外(系外)に排出するラインである。濃縮排水ラインL5には、比例制御排水弁15が設けられる。
【0049】
比例制御排水弁15は、濃縮排水ラインL5から装置外に排出される濃縮排水W50の流量を調節する弁である。比例制御排水弁15は、制御部30と電気的に接続されている。比例制御排水弁15の弁開度は、制御部30から送信される駆動信号により制御される。制御部30から電流値信号(例えば、4〜20mA)を比例制御排水弁15に送信して、弁開度を制御することにより、濃縮排水W50の排水流量を調節することができる。
【0050】
制御部30は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(図示せず)により構成される。制御部30において、マイクロプロセッサのCPUは、メモリから読み出した所定のプログラムに従って、水処理システム1に係る各種の制御を実行する。以下、制御部30の機能の一部について説明する。
【0051】
制御部30は、透過水W20の流量が予め設定された目標流量値となるように、透過水W20の検出流量値(系内の物理量)をフィードバック値として、加圧ポンプ8を駆動するための駆動周波数を演算し、駆動周波数の演算値に対応する指令信号(電流値信号又は電圧値信号)をインバータ9に出力する(以下、「流量フィードバック水量制御」ともいう)流量制御部として機能する。なお、流量フィードバック水量制御における駆動周波数の演算には、例えば、速度形デジタルPIDアルゴリズムを用いることができる。
【0052】
また、制御部30は、硬度センサSで検出される硬度及び腐食速度センサ16で検出される腐食速度等に基づいて、供給水が流通するライン(供給水ラインL1)に添加されるスケール分散剤の添加量を調整するように分散剤添加装置5を制御する分散剤添加制御部として機能する(以下、制御部30が、腐食速度センサ16で検出される腐食速度等に基づいて、供給水が流通するラインに添加されるスケール分散剤の添加量を調整するように分散剤添加装置5を制御することを「分散剤添加制御」ともいう)。
【0053】
例えば、分散剤添加制御部としての制御部30は、下記の(1)〜(3)のいずれかに基づいて、供給水が流通するラインに添加されるスケール分散剤の添加量を調整するように分散剤添加装置5を制御する。
(1)硬度センサSで検出される硬度及び腐食速度センサ16で検出される腐食速度
(2)硬度センサSで検出される硬度と、腐食速度センサ16で検出される腐食速度と、シリカ濃度
(3)硬度センサSで検出される硬度と、腐食速度センサ16で検出される腐食速度と、水温計18で検出される水温
【0054】
制御部30は、腐食速度に基づいて供給水のpHを調整するようにpH調整剤添加装置7を制御するpH調整剤添加制御部として機能する。制御部30は、pH調整剤添加装置7におけるpH調整剤の添加量を、分散剤添加装置5におけるスケール分散剤の添加量と同様の制御フロー(後述)によって調整してもよく、異なる制御フローによって調整してもよい。
【0055】
分散剤添加制御部としての制御部30が硬度センサSで検出される硬度及び腐食速度センサ16で検出される腐食速度に基づいて供給水が流通するラインに添加されるスケール分散剤の添加量を調整する一例について説明する。
図2は、制御部30が分散剤添加制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートによる制御においては、RO膜モジュール10は、供給水W14を透過水W20及び濃縮水W30に分離する動作を実行している。
【0056】
図2に示すステップST101において、制御部30は、腐食速度検出手段としての腐食速度センサ16で検出された循環水ラインL4の腐食速度(以下「腐食速度値CR」ともいう)を取得する。本実施形態においては、制御部30は、連続的に検出された腐食速度値CRのうち最新の腐食速度値CRを取得する。
【0057】
ステップST102において、制御部30は、硬度センサSによって検出硬度を取得するか否かを判定する。具体的には、制御部30は、腐食速度値CRが腐食速度閾値TCRを下回る(腐食速度値CR≦腐食速度閾値TCR)か否かを判定する。
【0058】
腐食速度閾値TCRは、硬度センサSによって検出硬度を取得するか否かを判定するための閾値として、制御部30のメモリに記録されている。腐食速度閾値TCRは、腐食速度センサ16が設置されるラインを流通する液体の水質等によって適宜に設定されてもよい。腐食速度閾値TCRは、0〜22mddの範囲で設定されることが好ましい。更に、腐食速度閾値TCRは、0〜10mddの範囲で設定されることがより好ましい。本実施形態においては、ノイズが0.0〜0.8mddの範囲で発生するため、腐食速度閾値TCRは、1.0mddに設定されている。
【0059】
ステップST102において、腐食速度値CR≦腐食速度閾値TCRである(YES)場合には、処理は、ステップST103に移行する。腐食速度値CR>腐食速度閾値TCRである(NO)場合には、処理はステップST101に戻る。
【0060】
ステップST103において、分散剤添加制御部としての制御部30は、硬度センサSが検出硬度(以下、「硬度値M」ともいう)を取得するように硬度センサSを制御する。
【0061】
ステップST104において、制御部30は、硬度値Mに基づいて、供給水(例えば、軟水W12)がスケール生成傾向範囲内か否かを判定する。具体的には、制御部30は、硬度値Mが硬度閾値TMを上回る(硬度値M≧硬度閾値TM)か否かを判定する。この硬度閾値TMは、供給水(例えば、軟水W12)がスケール生成傾向範囲内か否かを判定するための閾値として、制御部30のメモリに記録されている。
【0062】
ステップST104において、硬度値M≧硬度閾値TMである(YES)場合には、処理は、ステップST105へ移行する。硬度値M<硬度閾値TMである(NO)場合には、処理はステップST101に戻る。
【0063】
ステップST105において、分散剤添加制御部としての制御部30は、腐食速度値CRに基づいて、分散剤添加装置5によって添加されるスケール分散剤の添加量を調整する。本実施形態においては、制御部30は、設定された添加量のスケール分散剤を追加して添加するように、分散剤添加装置5を制御する。スケール分散剤の添加量が調整されることにより、本フローチャートの処理は、終了する。
【0064】
本実施形態の水処理システム1によれば、例えば、以下に示す効果が奏される。
水処理システム1は、原水W11から供給水としての軟水W12を製造する硬水軟化装置3と、供給水W14を透過水W20と濃縮水W30とに分離する逆浸透膜モジュールとしてのRO膜モジュール10と、供給水W14を硬水軟化装置3からRO膜モジュール10に向けて供給する供給水ラインL1と、RO膜モジュール10で分離された濃縮水W30が流通する濃縮水ラインL3と、濃縮水ラインL3に接続され、濃縮排水W50としての濃縮水を系外へ排出する濃縮排水ラインL5と、濃縮水ラインL3に接続され、供給水としての濃縮水(循環水W40)を供給水ラインL1に返送する循環水ラインL4と、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3及び循環水ラインL4のうちの一つ以上の供給水が流通するラインにスケール分散剤を添加する分散剤添加装置5と、供給水の硬度を検出する硬度検出手段としての硬度センサSと、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3、循環水ラインL4及び濃縮排水ラインL5のうちの一つ以上のラインの腐食速度を分極抵抗法で検出する腐食速度検出手段としての腐食速度センサ16と、硬度センサSで検出される硬度及び腐食速度センサ16で検出される腐食速度に基づいて、供給水が流通するライン(供給水ラインL1、濃縮水ラインL3及び循環水ラインL4)に添加されるスケール分散剤の添加量を調整するように分散剤添加装置5を制御する分散剤添加制御部としての制御部30と、を備える。
【0065】
そのため、分散剤添加制御部としての制御部30は、硬度センサSで検出される硬度及び分極抵抗法によって連続的に検出される腐食速度値CRに基づいて、硬度漏れをすばやく検知し、供給水(例えば、軟水W12)に添加されるスケール分散剤の添加量を調整するように分散剤添加装置5を制御できる。これによれば、連続的に供給水の水質を検出し、スケール析出を抑制することができる。
【0066】
また、分散剤添加装置5は、供給水ラインL1(第1供給水ラインL11)を流通する供給水(軟水W12)にスケール分散剤を添加する。そのため、供給水がRO膜モジュール10に供給されるまでの流通過程において、スケール分散剤が原水W11(供給水)に効率よく添加される。これによれば、RO膜の表面にスケールが析出することを抑制することができる。
【0067】
また、腐食速度検出手段としての腐食速度センサ16は、濃縮水ラインL3、循環水ラインL4又は濃縮排水ラインL5の腐食速度を検出する。濃縮水ラインL3、循環水ラインL4又は濃縮排水ラインL5には、RO膜モジュール10によって分離された濃縮水(濃縮水W30、循環水W40、濃縮排水W50)が流通するため、供給水ラインL1と比較して、濃縮水ラインL3、循環水ラインL4又は濃縮排水ラインL5のスケールリスクは、高くなる。腐食速度センサ16は、スケールリスクが高いラインについて腐食速度を検出するため、水処理システム1全体としてのスケールリスクをより正確に検出できる。
【0068】
また、硬度検出手段としての硬度センサSは、供給水ラインL1を流通する供給水としての軟水W12の硬度を検出する。そのため、硬度センサSは、軟水W12の硬度の変化をより正確に検出できる。
【0069】
また、分散剤添加制御部としての制御部30は、腐食速度センサ16で検出される腐食速度が所定の腐食速度閾値を下回る場合には、硬度センサSが供給水(例えば、軟水W12)の硬度を検出するように硬度センサSを制御し、硬度センサSで検出される硬度が所定の硬度閾値を上回る場合には、分散剤添加装置5を制御する。腐食速度センサ16によって連続的に腐食速度が検出されることにより、連続的に供給水の水質を検出することが容易になる。すなわち、万一硬度漏れが起こった際に迅速な一次検知ができる。
【0070】
そのため、硬度センサSとして、試薬を添加して比色で硬度を定量するタイプの硬度センサを用いた場合であっても、1次スクリーニングとして腐食速度センサ16で連続的に水質を検出することで、硬度センサSの測定頻度を(本実施形態においては、例えば、腐食速度値CRが低くなったときだけに)落とすことができる。これによれば、硬度センサS単独で水質を検出する場合と比べて、腐食速度センサ16を併用することによって経済的に硬度漏れを検出する管理を実現できる。
【0071】
また、分散剤添加制御部としての制御部30は、硬度センサSで検出される硬度と、腐食速度センサ16で検出される腐食速度と、シリカ濃度とに基づいて、供給水が流通するラインに添加されるスケール分散剤の添加量を調整するように分散剤添加装置5を制御する。腐食速度センサ16により、硬度やシリカ濃度といった全てのスケールの析出傾向の合算値として腐食速度が検出される。また、腐食速度及びシリカ濃度が検出されることで、シリカ系のスケールの析出傾向と、それ以外(主に炭酸カルシウム系のスケール)の析出傾向とを区別できる。シリカ系のスケールの析出傾向と、それ以外(主に炭酸カルシウム系のスケール)の析出傾向とを別々に管理することにより、精度良くスケール析出を抑制できる。
【0072】
また、水処理システム1は、供給水又は濃縮排水W50のシリカ濃度を定期的に自動検出するシリカ濃度センサ17を更に備え、分散剤添加制御部としての制御部30は、硬度センサSで検出される硬度と、腐食速度センサ16で検出される腐食速度と、シリカ濃度センサ17で検出されるシリカ濃度とに基づいて、供給水が流通するラインに添加されるスケール分散剤の添加量を調整するように分散剤添加装置5を制御する。そのため、省力化及び迅速な水質管理により、精度よくスケール析出を抑制することができる。
【0073】
また、水処理システム1は、供給水又は濃縮排水W50の水温を検出する水温計18を更に備え、分散剤添加制御部としての制御部30は、硬度センサSで検出される硬度と、腐食速度センサ16で検出される腐食速度と、水温計18で検出される水温とに基づいて、供給水が流通するラインに添加されるスケール分散剤の添加量を調整するように分散剤添加装置5を制御する。硬度やシリカといった多くのスケール成分において、スケール成分の水溶解度は水温によって大きく影響を受ける。そのため、硬度センサSで検出される硬度と、腐食速度センサ16で検出される腐食速度と、水温とに基づいて、精度よくスケール析出を抑制することができる。
【0074】
また、水処理システム1は、供給水が流通するラインにpH調整剤を添加するpH調整剤添加装置7と、腐食速度に基づいて供給水のpHを調整するようにpH調整剤添加装置7を制御するpH調整剤添加制御部としての制御部30を更に備える。硬度やシリカといった多くのスケール成分において、スケール成分の水溶解度はpHによって大きく影響を受ける。そのため、供給水のpHを調整し、精度よくスケール析出を抑制することができる。
【0075】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0076】
例えば、硬度センサSが、供給水ラインL1(第1供給水ラインL11)の軟水W12の硬度を検出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、硬度センサSが硬度を検出するラインは、第2供給水ラインL12、濃縮水ラインL3、循環水ラインL4又は濃縮排水ラインL5のいずれか一つ、又は、第1供給水ラインL11及びこれらのラインの二つ以上であってもよい。
【0077】
また、分散剤添加装置5は、供給水ラインL1(詳細には、第1供給水ラインL11)に配置される分散剤添加位置J1において、分散剤を添加する例について説明したが、これに限定されない。例えば、分散剤添加装置5は、濃縮水ラインL3又は循環水ラインL4に分散剤を添加してもよい。更に、分散剤添加装置5は、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3及び循環水ラインL4のうちの二つ以上のラインにスケール分散剤を添加してもよい。
【0078】
また、腐食速度センサ16が、循環水ラインL4の腐食速度を分極抵抗法で検出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、腐食速度センサ16が腐食速度を検出するラインは、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3又は濃縮排水ラインL5であってもよい。更に、腐食速度センサ16が腐食速度を検出するラインは、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3、循環水ラインL4及び濃縮排水ラインL5のうちの二つ以上のラインであってもよい。
【0079】
また、分散剤添加制御部としての制御部30は、腐食速度値CRが、腐食速度閾値TCR以下である(腐食速度値CR≦腐食速度閾値TCR)場合に、硬度センサSが検出硬度を取得するように、硬度センサSを制御する例について説明した。しかし、制御部30が検出硬度を取得するのは、腐食速度値CRが、腐食速度閾値TCR以下である(腐食速度値CR≦腐食速度閾値TCR)場合に限定されない。腐食速度値CRが腐食速度閾値TCR以上の場合であっても、制御部30は、検出硬度を取得してもよい。例えば、さまざまな水質値(例えば、水温、シリカ濃度等)に基づいて決定される閾値Tと、対応する分散剤添加量のテーブルを用意し、このテーブルに従って腐食速度閾値TCRやスケール分散剤の添加量を決定することができる。
【0080】
また、比例制御排水弁15の弁開度を制御することにより、濃縮排水W50の排水流量を調節する例について説明した。これに限らず、複数の排水バルブを並列に設けた構成とし、排水バルブの開弁数を増減することにより、濃縮排水W50の排水流量を段階的に調節するように制御してもよい。これによれば、濃縮排水W50の排水流量を調節することができる。
【0081】
また、腐食速度センサ16に備えられる一対の電極は、鉄(Fe)製の電極である例について説明したが、これに限定されない。例えば、腐食速度センサ16に備えられる一対の電極は、銅(Cu)製の電極であってもよい。鉄(Fe)製の一対の電極又は銅(Cu)製の一対の電極が、適宜に選択されて用いられることが望ましく、より詳細には、一対の電極は、供給水の水質に合わせて適宜に選択されて用いられることが望ましい。
【0082】
また、銅(Cu)製の一対の電極を備えた腐食速度センサと、鉄(Fe)製の一対の電極を備えた腐食速度センサとが併用して用いられてもよい。この場合、制御部30は、銅(Cu)製の腐食速度センサによって検出される銅センサ腐食速度と、鉄(Fe)製の腐食速度センサによって検出される鉄センサ腐食速度のうち、低い値を示した腐食速度に基づいて、分散剤添加制御を実行してもよい。
【0083】
また、スケール分散剤の例として、ポリカルボン酸とホスホン酸とを含む、濃度が33〜37質量%の水溶液であるBWA WATER ADDITIVES社の商品名「フロコン260」を挙げて説明した。しかし、スケール分散剤の例は、「フロコン260」に限定されない。水処理システム1に用いられるスケール分散剤は、水溶性のものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アクリル酸系ポリマー、メタクリル酸系ポリマー及びマレイン酸系ポリマー等のポリカルボン酸、ポリスルホン酸並びにホスホン酸等であってもよい。これらのスケール分散剤は、二種以上のものが併用されてもよい。また、スケール分散剤は、通常、水溶液として用いられるものであってもよい。