特開2017-209684(P2017-209684A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017209684-溶鋼の連続鋳造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-209684(P2017-209684A)
(43)【公開日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】溶鋼の連続鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/00 20060101AFI20171102BHJP
   B22D 11/16 20060101ALI20171102BHJP
   B22D 11/22 20060101ALI20171102BHJP
【FI】
   B22D11/00 A
   B22D11/16 104P
   B22D11/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-102359(P2016-102359)
(22)【出願日】2016年5月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】田島 恭平
(72)【発明者】
【氏名】近藤 泰光
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 信輔
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004KA14
4E004MC02
4E004MD10
4E004NA01
4E004NC04
(57)【要約】
【課題】硫黄含有率が高い溶鋼の連続鋳造において、連続鋳造機内への酸化スケ−ルの落下堆積によるマシントラブルの発生を防止すると共に、従来に比べて鋳片表面の割れを抑制する。
【解決手段】硫黄を0.20〜0.80質量%含有する溶鋼19を連続鋳造する方法であって、連続鋳造鋳型15直下0mの位置をA、連続鋳造鋳型15直下から鋳片20に沿って下流側に2mの位置をB、連続鋳造鋳型15直下から鋳片20に沿って下流側に4mの位置をCとし、AからBの範囲において鋳片20を冷却する水量を鋳片20の単位面積当たり200L(リットル)以上とし、BからCの範囲において鋳片20を冷却する水量を鋳片20の単位面積当たり130L(リットル)以上とし、Cから鋳片20の曲げ戻しを行う矯正部18までの範囲において鋳片20に供給する平均水量を鋳片20の単位面積当たり0.6L(リットル)/min以下とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄を0.20〜0.80質量%含有する溶鋼を連続鋳造する方法であって、
連続鋳造鋳型直下0mの位置をA、連続鋳造鋳型直下から鋳片に沿って下流側に2mの位置をB、連続鋳造鋳型直下から鋳片に沿って下流側に4mの位置をCとし、
前記Aから前記Bの範囲において鋳片を冷却する水量を鋳片の単位面積当たり200L(リットル)以上とし、
前記Bから前記Cの範囲において鋳片を冷却する水量を鋳片の単位面積当たり130L(リットル)以上とし、
前記Cから鋳片の曲げ戻しを行う矯正部までの範囲において鋳片に供給する平均水量を鋳片の単位面積当たり0.6L(リットル)/min以下とすることを特徴とする溶鋼の連続鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼の連続鋳造方法に関し、詳細には、硫黄含有率が高い溶鋼の連続鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫黄系快削鋼など硫黄含有率が高い鋼の被削性(切削加工するときの削られやすさ)は、鋼材中に生成されるMnS系介在物の粒子サイズに依存し、MnS系介在物の粒子サイズが大きいほど、被削性が向上することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、連続鋳造法により硫黄系快削鋼を製造するにあたり、連続鋳造機の2次冷却帯における比水量を0.5L(リットル)/kg以下とすることにより、MnS系介在物の成長を促進させる方法が開示されている。
特許文献1によれば、連続鋳造法により硫黄系快削鋼を製造する際に、凝固過程及びその後の冷却過程にある鋳片内各部位の冷却速度を低下させることによって硫黄系快削鋼内のMnS系介在物を大型化することが可能であるとされている。
【0004】
また、特許文献2では、連続鋳造法により硫黄含有量0.08〜0.40%の硫黄系快削鋼を製造するに際し、鋳型へ注入する溶鋼のトータル酸素量を250ppm以上にして鋳造し、且つ、鋳片が凝固する際、鋳片幅中央の断面内の鋳片表面と断面中央の中間点において、液相線温度〜1400℃の温度区間の平均冷却速度を50℃/分以下とする方法が開示されている。
特許文献2によれば、凝固する際の酸素量を高めることはMnSの大型化のみならず、MnS中のFe含有量を減少させる効果を有し、その両方の効果により成品の被削性を大幅に改善でき、さらに鋳片が凝固する際の液相線温度〜1400℃の温度区間の冷却速度を減少することにより、MnS成長の律速段階であるMnの固相内拡散が促進されMnSの成長を促すことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平3−46219号公報
【特許文献2】特開平5−77012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
硫黄を0.20〜0.80質量%含有する鋼は、温度が低下するにつれて脆化が顕著となる。具体的には、鋳片の表面温度が1000℃以下になると鋳片の脆化が生じ、900℃以下で鋳片の脆化が顕著となる。垂直曲げ型若しくは湾曲型の連続鋳造機では、湾曲した鋳片を真っ直ぐにする曲げ戻し矯正が必要となるが、曲げ戻し矯正時の鋳片温度が脆化温度域の場合、鋳片表面に割れが発生する。そのため、2次冷却水量を低減し、鋳片の表面温度を脆化温度域よりも高温に保持することが行われている。
【0007】
2次冷却水量を低減すると、鋳片の表面温度が高温に保たれ、鋳片の表面割れは防止できるが、鋳片表面の高温化と、2次冷却水量の低減による大気接触面積の増大により、鋳片表面の酸化が促進され、酸化スケールの生成量が増加する。特許文献1や特許文献2記載の技術では2次冷却水量を抑制しているため、酸化スケールが大量に発生する。
【0008】
一般に、酸化スケールの生成量が増加しても、鋳片に酸化スケールが密着しているため、鋳片から酸化スケールが容易に剥離することはないが、硫黄を0.20〜0.80質量%含有する溶鋼の場合、以下の現象が起きることを本発明者らは発見した。即ち、硫黄を0.20〜0.80質量%含有する溶鋼の場合、鋳片と酸化スケールの界面において、硫黄が濃化して鉄と硫黄の二元系共晶化合物が生成する。鉄と硫黄の二元系共晶化合物の共晶温度は900〜1000℃の温度域に存在し、鋳片の表面温度が共晶温度以上であると、共晶化合物は溶融して融液となり、酸化スケールは鋳片から容易に剥離する。多量の酸化スケールが鋳片から剥離して落下すると、落下した酸化スケールが連続鋳造機内に堆積して鋳造ロールへの噛み込み等が発生し、鋳片品質の劣化が生じる。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、硫黄含有率が高い溶鋼の連続鋳造において、連続鋳造機内への酸化スケ−ルの落下堆積によるマシントラブルの発生を防止すると共に、従来に比べて鋳片表面の割れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、硫黄を0.20〜0.80質量%含有する溶鋼を連続鋳造する方法であって、
連続鋳造鋳型直下0mの位置をA、連続鋳造鋳型直下から鋳片に沿って下流側に2mの位置をB、連続鋳造鋳型直下から鋳片に沿って下流側に4mの位置をCとし、
前記Aから前記Bの範囲において鋳片を冷却する水量を鋳片の単位面積当たり200L(リットル)以上とし、
前記Bから前記Cの範囲において鋳片を冷却する水量を鋳片の単位面積当たり130L(リットル)以上とし、
前記Cから鋳片の曲げ戻しを行う矯正部までの範囲において鋳片に供給する平均水量を鋳片の単位面積当たり0.6L(リットル)/min以下とすることを特徴としている。
【0011】
前述したように、硫黄を0.20〜0.80質量%含有する溶鋼を連続鋳造する際に鋳片表面に生成する酸化スケールは、鋳片の表面温度が共晶温度(例えば900〜1000℃)以上であると、鋳片と酸化スケールの界面に生成した融液によって鋳片から容易に剥離落下する。
【0012】
連続鋳造機において酸化スケールが剥離落下しやすい領域はBからCの範囲である。本発明では、鋳片がBを通過するまでに、鋳片の表面温度が共晶温度未満となるように鋳片を冷却し、BからCの範囲において鋳片の表面温度が共晶温度未満を維持するように鋳片を冷却する。これにより、BからCの範囲における融液及び酸化スケールの生成を抑制して、酸化スケールの落下堆積によるマシントラブルの発生を防止する。
【0013】
AからBの範囲の水量は、鋳片がBを通過するまでに、鋳片の表面温度を共晶温度未満に冷却できる水量であればよく、AからBの範囲を通過する鋳片に供給する水量を、鋳片の単位面積当たり200L(リットル)以上とすれば、鋳片がBを通過するまでに、鋳片の表面温度を共晶温度未満とすることができる。
また、BからCの範囲の水量は、この間において鋳片の表面温度を共晶温度未満に維持できる水量であればよく、この間を通過する鋳片に供給する水量を、鋳片の単位面積当たり130L(リットル)以上とすれば、BからCの範囲において鋳片の表面温度を共晶温度未満に維持することができる。
【0014】
一方、Cから矯正部までの範囲では、鋳片の曲げ戻し矯正時における鋳片の脆化度合を軽減して鋳片の表面割れを抑制することを目的とする。そのため、Cから矯正部までの範囲において鋳片表面を均一に復熱させ、鋳片表面を脆化温度を超える温度とする。従って、Cから矯正部までの範囲において鋳片に供給する水量は、この間に亘って鋳片表面温度の復熱を促す程度の量であることが望ましく、Cから矯正部までの範囲において鋳片に供給する平均水量を鋳片の単位面積当たり0.6L(リットル)/min以下とすればよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る溶鋼の連続鋳造方法では、硫黄を0.20〜0.80質量%含有する溶鋼を連続鋳造する際に、酸化スケールが剥離落下しやすい領域における鋳片の表面温度を、融液が生成される共晶温度未満とすることにより、融液及び酸化スケールの生成量を抑制して酸化スケ−ルの落下堆積によるマシントラブルの発生を防止すると共に、連続鋳造鋳型直下から鋳片に沿って下流側に4mの位置から矯正部までの範囲において鋳片表面を均一に復熱させることにより、鋳片の表面割れを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態に係る溶鋼の連続鋳造方法に使用される垂直曲げ型連続鋳造機の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
【0018】
本発明の一実施の形態に係る溶鋼の連続鋳造方法に使用される連続鋳造機10の模式図を図1に示す。連続鋳造機10では、精錬が終了した溶鋼19から鋳片20が連続的に製造され、所定の長さに切断される。
精錬が終了した溶鋼19は、連続鋳造機10の最上部に配置された取鍋11に貯留された後、取鍋11の底部に設けられたノズル孔(図示省略)に装着されたロングノズル12を介して、取鍋11の下方に配置されたタンディッシュ13内に注入される。タンディッシュ13内に注入された溶鋼19は、タンディッシュ13内で介在物が除去された後、タンディッシュ13の底部に設けられたノズル孔(図示省略)に装着された浸漬ノズル14を介して、タンディッシュ13の下方に配置された連続鋳造鋳型15(以下では、単に「鋳型」と呼ぶ。)内に注入される。鋳型15は常時、水冷されており、鋳型15に流入した溶鋼19は鋳型15に接触して急冷され、微細なチル晶からなる薄い凝固殻を形成する。
【0019】
鋳型15の下方には、サポートロール、ガイドロール、及びピンチロールからなる複数対の鋳造ロール16が鋳造経路に沿って配置されている。本実施の形態における連続鋳造機10の方式は垂直曲げ型であり、鋳型15に続く鋳造経路は、下流側に向かって、鋳片20が鉛直下方に移動する垂直部と、鋳片20を円弧状に湾曲させる円弧部と、円弧状となった鋳片20を真っ直ぐにする矯正部18とを備えている。
また、鋳造方向に隣接する鋳造ロール16の間隙には、水スプレーノズルなどの冷却ノズル17を有する2次冷却帯が配置されている。
【0020】
未凝固溶鋼を内蔵したまま鋳型15を出た鋳片20は、冷却ノズル17で水冷されつつ、鋳造ロール16により下方に搬送された後、鋳片切断機(図示省略)により所定の長さに切断される。
【0021】
次に、上記構成を有する連続鋳造機10を用いて、本実施の形態に係る溶鋼の連続鋳造方法について説明する。
【0022】
対象とする溶鋼19は、硫黄を0.20〜0.80質量%含有する溶鋼である。
硫黄を0.20〜0.80質量%含有する溶鋼の場合、鋳片と酸化スケールの界面において、硫黄が濃化して鉄と硫黄の二元系共晶化合物が生成し、鋳片の表面温度が共晶温度(例えば900〜1000℃)以上であると、共晶化合物は溶融して融液となる。
【0023】
本実施の形態では、2次冷却帯において鋳片20に供給する水量を以下のように設定する。なお、以降の説明では、便宜上、鋳型15直下0mの位置をA、鋳型15直下から鋳片20に沿って下流側に2mの位置をB、鋳型15直下から鋳片20に沿って下流側に4mの位置をCとする(図1参照)。
【0024】
[A〜Bの範囲]
鋳片20を冷却する水量を鋳片20の単位面積当たり200L(リットル)以上とする。
鋳型15直下の鋳片20の表面温度は1200〜1300℃程度であり、地鉄が酸化され酸化スケールが生成する。生成する酸化スケールは上述した二元系共晶化合物を含み、二元系共晶化合物は共晶温度以上で溶融して融液となる。
A〜Bの範囲において上記水量で鋳片20を冷却することにより、鋳片20の表面温度は速やかに共晶温度未満となり、融液及び酸化スケールの生成量を抑制することができる。
【0025】
水量の上限値は特に規定しないが、一般的な連続鋳造機における冷却水の供給量を踏まえると、鋳片20の単位面積当たり400L(リットル)程度である。
一方、鋳片20に供給する水量が鋳片20の単位面積当たり200L(リットル)未満であると、鋳片20の表面温度が共晶温度未満に低下しない領域が発生する。その結果、融液が生成する部分が生じ、酸化スケールの剥離落下を抑制できないことがある。
【0026】
[B〜Cの範囲]
鋳片20を冷却する水量を鋳片20の単位面積当たり130L(リットル)以上とする。
垂直曲げ型や湾曲型の連続鋳造機は、A〜Cの範囲において鋳片が鉛直若しくは概ね鉛直となるため、B〜Cの範囲において酸化スケールが剥離落下しやすい。多量の酸化スケールが剥離落下した場合、落下した酸化スケールが連続鋳造機内に堆積して鋳造ロールへの酸化スケールの噛み込みが発生する。そのため、B〜Cの範囲において鋳片20の表面温度を融液の生成が抑制される温度に維持する必要がある。
B〜Cの範囲において上記水量で鋳片20を冷却することにより、鋳片20の表面温度の上昇(復熱)が抑制され、鋳片20の表面温度を、融液の生成が抑制される温度(例えば1000℃未満さらには900℃未満)に維持することができる。
【0027】
水量の上限値は特に規定しないが、一般的な連続鋳造機における冷却水の供給量を踏まえると、鋳片20の単位面積当たり400L(リットル)程度である。
一方、鋳片20に供給する水量が鋳片20の単位面積当たり130L(リットル)未満であると、鋳片20の表面温度が上昇して融液が生成され、酸化スケールの剥離落下を抑制することができない。
【0028】
[C〜矯正部18までの範囲]
C〜矯正部18までの範囲において鋳片20に供給する平均水量を鋳片20の単位面積当たり0.6L(リットル)/min以下とする。
垂直曲げ型や湾曲型の連続鋳造機では、湾曲した鋳片20を矯正部18で真っ直ぐに曲げ戻す必要がある。その際、鋳片20の表面温度が脆化温度域にあると、鋳片に表面割れが発生し、品質異常が発生するおそれがある。硫黄を0.20〜0.80質量%含有する溶鋼19の場合、鋳片20の表面温度が1000℃以下になると鋳片20の脆化が生じ、900℃以下で鋳片20の脆化が顕著となる。
そのため、C〜矯正部18までの範囲において鋳片表面を均一に復熱させ、鋳片表面を脆化温度を超える温度とする。
【0029】
C〜矯正部18までの範囲において鋳片20に供給する平均水量を上記水量とすることにより、鋳片表面を均一に復熱させ、鋳片20の曲げ戻し矯正時における脆化度合を軽減することができる。その結果、鋳片20の顕著な表面割れを抑制して、工業的に採用可能な割れ発生頻度に低減することができる。
【0030】
なお、C〜矯正部18までの範囲において鋳片20に供給する平均水量の下限値はゼロL(リットル)である。即ち、水を供給しなくてもよい。
一方、鋳片20に供給する平均水量を鋳片20の単位面積当たり0.6L(リットル)/min超とすると、鋳片20から抜熱が発生し、矯正部18における鋳片20の表面割れが顕著となる。
【0031】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、連続鋳造機の方式を垂直曲げ型としているが、湾曲型でも良い。
【実施例】
【0032】
本発明の効果について検証するために実施した検証試験について説明する。
使用する連続鋳造機は垂直曲げ型とし、A〜Bの範囲、B〜Cの範囲、及びC〜矯正部までの範囲における各水量(水温:20〜30℃)をパラメータとして、硫黄を0.40〜0.50質量%含有する快削鋼を製造した。試験結果の一覧を表1に示す。
【0033】
なお、試験結果は、連続鋳造機内への酸化スケールの堆積の程度、及び鋳片の表面割れの程度によって評価した。具体的には以下のように評価した。
酸化スケールについては、鋳型直下から下流側4m付近に存在する幅10cmのチャンネル(連続鋳造機のフレーム)上への酸化スケールの落下状況を評価し、チャンネルの全面に酸化スケールが落下している場合を×(不可)、酸化スケールがチャンネルに落下していないか、酸化スケールが落下していてもチャンネル全面を覆っていない場合を○(良)とした。
また、鋳片の表面割れについては、鋳片を分塊圧延した後の鋼片の表面検査によって評価した。鋼片1本当たりの表面疵の個数が従来例のバラツキ範囲を超える場合を×(不可)、従来例と同程度以下の場合を○(良)とした。
【0034】
【表1】
【0035】
同表より以下のことがわかる。
・A〜Bの範囲における水量が200L/m以上且つB〜Cの範囲における水量が130L/m以上であった実施例及び比較例3は、酸化スケールの堆積が少なかったが、この条件を満足しなかった比較例1、2、及び従来例は酸化スケールの堆積が多かった。
・C〜矯正部までの範囲における平均水量が0.6L/(m・min)以下であった実施例及び比較例1、2は表面割れが従来例と同程度以下であったが、この条件を満足しなかった比較例3は表面割れが従来例より悪かった。
【符号の説明】
【0036】
10:連続鋳造機、11:取鍋、12:ロングノズル、13:タンディッシュ、14:浸漬ノズル、15:鋳型(連続鋳造鋳型)、16:鋳造ロール、17:冷却ノズル、18:矯正部、19:溶鋼、20:鋳片
図1