特開2017-209735(P2017-209735A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-209735(P2017-209735A)
(43)【公開日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】処理器具
(51)【国際特許分類】
   B24C 1/06 20060101AFI20171102BHJP
   B65G 65/40 20060101ALI20171102BHJP
   B65G 11/16 20060101ALI20171102BHJP
   A47J 37/10 20060101ALI20171102BHJP
   A47J 36/02 20060101ALI20171102BHJP
【FI】
   B24C1/06
   B65G65/40 B
   B65G11/16 Z
   A47J37/10
   A47J36/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-102187(P2016-102187)
(22)【出願日】2016年5月23日
(71)【出願人】
【識別番号】506146909
【氏名又は名称】株式会社不二WPC
(71)【出願人】
【識別番号】511241583
【氏名又は名称】株式会社フリクション
(74)【代理人】
【識別番号】100134212
【弁理士】
【氏名又は名称】提中 清彦
(72)【発明者】
【氏名】下平 英二
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 正夫
(72)【発明者】
【氏名】草野 勝彦
【テーマコード(参考)】
3F011
3F075
4B055
4B059
【Fターム(参考)】
3F011AA07
3F011BA02
3F011BB08
3F011BC03
3F075AA08
3F075BA01
3F075BB01
3F075CA09
4B055BA56
4B055CA13
4B055CB03
4B059BB02
(57)【要約】
【課題】 比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、剥離等による異物の混入のおそれがなく、被処理物が付着し難い処理器具を提供する。
【解決手段】 本発明は、ホッパー1の収容部10の内周面11(少なくとも被処理物と接触する領域)に、WPC処理により微小凹部を複数形成した。これにより、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、剥離等による異物の混入のおそれがなく、被処理物が付着し難い処理器具を提供することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物と接触する金属製の処理器具であって、
少なくとも被処理物と接触する領域に、WPC処理により微小凹部を複数形成したことを特徴とする処理器具。
【請求項2】
前記微小凹部は、球面状に陥没した凹部であり、入口径がφ5〜φ100μm、深さが0.5〜3μmであることを特徴とする請求項1に記載の処理器具。
【請求項3】
前記処理器具が、被処理物を収容するホッパーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の処理器具。
【請求項4】
前記処理器具が、被処理物を滑落させるシュートであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の処理器具。
【請求項5】
前記処理器具が、フライパン或いは鍋であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の処理器具。
【請求項6】
前記被処理物が、食品或いは薬品であることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1つに記載の処理器具。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の被処理物の加工等の各種の処理に供せられる処理器具に関し、より詳しくは食品加工や食品生産ライン等において被処理物に接触して利用される金属製の処理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
粉状、粒状或いはペースト状の薬品、食品、インスタントコーヒーなどの嗜好品などの加工(生産)ラインなどにおいては、例えば、粉状、粒状或いはペースト状の物質(薬、食材など。以下、被加工物、被処理物とも称する)をホッパーに貯留しておいて、粉状或いは粒状の物質をホッパーから取り出して秤量(所定量に調量)しつつ下流工程にて他の物質と混合したり、或いは袋詰めしたりするなどの各種の処理が行われている。
【0003】
しかしながら、被加工物によっては相互に或いは接触している部分(ホッパー内壁など)に付着し易いものがあり、このような付着し易い被加工物の場合、例えば、ホッパー内にて貯留されている被加工物の内側が空洞となる現象(いわゆるアーチング現象)が生じるなどして、ホッパー内下方にあるスクリュウコンベア等へ被加工物が供給されなくなり、下流工程への被加工物の供給搬送に支障を来たすといった問題があった。
【0004】
このようなことから、従来は、ホッパー内に撹拌手段を設ける必要があったり、ホッパー内壁に被加工物が付着してアーチ状に成長してしまわないように、ホッパー内壁面にテフロン(登録商標)コーティング等を施して被加工物が付着し難くするようなことなどが行われてきた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−273318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ホッパー内に撹拌手段を設ける場合には設備が高度化・複雑化してコストが増大すると共に振動騒音等の問題があると共に、軸受など部品要素が増えることから異物が被加工物(被処理物)に混入するおそれが高まるといった実情がある。
【0007】
また、特許文献1に記載されているように、ホッパーの内壁等にテフロンコーティングを施す場合には、ホッパーの母材である金属材料の表面に、母材とは異なる物質を成膜することになるため、なんらかの衝撃や劣化等によって、コーティング層が母材から剥離してしまって被加工物に混入してしまうことが懸念され、このような剥離等の心配のない技術が求められているといった実情がある。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、剥離等による異物の混入のおそれがなく、被処理物が付着し難い処理器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本発明に係る処理器具は、
被処理物と接触する金属製の処理器具であって、
少なくとも被処理物と接触する領域に、WPC処理により微小凹部を複数形成したことを特徴とする。
【0010】
本発明において、前記微小凹部は、球面状に陥没した凹部であり、入口径がφ5μm〜φ100μm、深さが0.5〜3μmであることを特徴とすることができる。
【0011】
本発明において、前記処理器具が、被処理物を収容するホッパーであることを特徴とすることができる。
【0012】
本発明において、前記処理器具が、被処理物を滑落させるシュートであることを特徴とすることができる。
【0013】
本発明において、前記処理器具が、フライパン或いは鍋であることを特徴とすることができる。
【0014】
本発明において、前記被処理物が、食品或いは薬品であることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、剥離等による異物の混入のおそれがなく、被処理物が付着し難い処理器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1に係る処理器具(被処理物を上方開口から搬入して一時的に収容しつつ下方開口から搬出するホッパー)の一例の全体構成を示す断面図である。
図2】WPC処理により金属製品に形成される複数の微小ディンプル(微小凹部)の一例を概略的に示す斜視図である。
図3】本発明の実施例2に係る処理器具(シュート)の一例の全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る一実施の形態を、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
本実施の形態の実施例1に係る加工器具(処理器具)(処理:加工以外の搬送、収容、滑落等を含む概念)の一例としては、図1に示すように、例えば、粉状、粒状或いはペースト状の物質(被加工物、被処理物)を収容する容器であるホッパー1の収容部10の内周面11に、テフロンコーティング等に代えて、WPC処理を行い微小ディンプル(球面状に陥没した無数の微小凹部、微小凹凸)を形成する(図2参照)。なお、ホッパー1は、被加工物(被処理物)を上方開口から搬入して一時的に貯留しつつ下方開口から搬出する器具(処理器具)である。
【0019】
ここで、WPC(Wide Peening and Cleaning)処理とは、「微粒子ピーニング」、「精密ショットピーニング」、「FPB(Fine Particle Bombarding)」などと称される表面処理で、金属製品の表面に、目的に応じた材質の微粒子を圧縮性の気体に混合して高速衝突させる表面改質処理である。
【0020】
WPC処理においては、WPC処理対象物の最表面で急熱・急冷が繰り返される一方で、材料表面の局所領域に多方向・多段・非同期の強加工が導入されることにより、微細で靭性に富む緻密な組織が形成され、高硬度化して表面を強化すると同時に、表面性状を微小ディンプルへ変化させることによって摩擦摩耗特性を向上させることができる、という作用効果が従来より知られている。
【0021】
また、例えば、摺動部(カム、カムフォロワ−、歯車の歯面、内燃機関のピストンスカート部の外周面など)にWPC処理を施すことで、このWPC処理により形成される微小ディンプルが多数の微小油溜まりとしての機能を奏することができるので、初期馴染み性、耐摩耗性、耐スカッフ性等の改善を図ることができる、といった作用効果が従来より知られている。
【0022】
これに対して、今般、本発明者等は、種々の実験研究・試行を通じて、WPC処理により金属表面に微小ディンプルを形成すると、上述したような従来知られていたWPC処理による奏せられる作用効果とは異質で顕著な作用効果があるという知見を得た。
【0023】
すなわち、WPC処理により加工用器具(処理器具)の表面に微小ディンプルを形成すると、粉状、粒状或いはペースト状等の被加工物(被処理物)は、加工用器具(処理器具)の表面に形成された凸部とまず接触し凹部は被加工物から離れるような状態となるため、全体としての接触面積が減るため付着力が小さくなり、以って被加工物(被処理物)は加工器具(処理器具)の表面に付着し難くなるといった作用効果(特性)があるという知見を得た。
【0024】
また、被加工物(被処理物)が加工用器具(処理器具)の表面に付着したとしても、被加工物(被処理物)同士が付着しあって内側へ向かって成長(長さ方向への成長)及び横方向へ成長(太さ方向への成長)しようとしても、凸部の周囲には凹部があるため、加工用器具(処理器具)の表面の横方向への成長(太さ方向への成長)が難しくなると同時に、それゆえに、被加工物(被処理物)が付着して長さ方向に成長しようとしても重量を支え切れなくなって脱落することとなって付着物の成長を抑制することができる、といった作用効果(特性)、延いては、アーチ状に成長して内側が空洞となるといった現象(いわゆるアーチング現象)が発生し難くなる、といった作用効果(特性)があるという知見を得た。
【0025】
本発明者等は、かかる知見に基づいて、被加工物(被処理物)が接触する加工用器具(処理器具)の表面に微小ディンプル(微小凹部、微小凹凸)を形成することで、被加工物(被処理物)が付着し難くして、従来におけるテフロンコーティング層等の脱落による異物混入等の問題を回避しながら、加工ライン或いは生産ラインの他、家庭用調理等における被加工物(被処理物)の加工用器具(処理器具)への付着の問題を解消できるようにした。
【0026】
このため、実施例1では、図1に示すような金属製ホッパー1の被加工物(被処理物)が接触する収容部10の内周面11に、WPC処理により、微小ディンプル(微小凹部)を多数形成した(図2参照)。
【0027】
なお、実施例1において、図2に示す微小ディンプル(微小凹部)100のサイズとしては、入口径φ5〜φ100μm程度(好ましくは、φ10〜30μm程度)、深さで0.5〜3μm(好ましくは、1〜2μm程度)とすることができる。
【0028】
なお、WPC処理としては、例えば、特許第5341971号に記載されている金属製品の熱処理方法(WPC処理)を適用することができる。
具体的には、下記のような噴射装置からショット(微小粒径サイズの小さい玉)を噴射してWPC処理対象に衝突させることにより行う。
【0029】
〔噴射装置〕
本発明に係るWPC処理は、既知のブラスト装置によりショットを噴射して金属製品の表面に衝突させる。
【0030】
例えば、空気式のブラスト装置としては各種の型式のものを使用することができるが,例えばショットの投入されたタンク内に圧縮空気を供給し,該圧縮空気により搬送されたショットを別途与えられた圧縮空気の空気流に乗せてブラストガンより噴射する直圧式のブラスト装置,タンクから落下したショットを圧縮空気に乗せて噴射する重力式のブラスト装置,圧縮空気の噴射により生じた負圧によりショットを吸引して圧縮空気と共に噴射するサクション式のブラスト装置等の各種のブラスト装置を使用することができる。
【0031】
〔ショット〕
本発明において使用されるショットは、WPC処理対象の金属製品に対し同等以上の硬度を有し、JIS研磨材粒度が♯100〜♯800(平均粒径:149μm〜200μm)の範囲で目的に応じて近似粒度3種以上を混合したビーズ(アルミナシリカビーズ、ハイスビーズなど)を使用する。近似粒度とは,上記範囲内の粒度を言う。
【0032】
上記のような噴射装置により、ショット(群)を圧縮空気と混合し、噴射圧力0.3〜0.6MPa、噴射速度100〜200m/秒、噴射距離100mm〜250mmで、0.1〜1秒の間欠噴射をする。すなわち、0、1〜1秒の噴射を、好ましくは、0.5秒〜5秒の間隔をおいて反復噴射して、WPC処理対象(加工用器具、処理器具)の表面に、直径φ5〜φ100μm程度(好ましくは、φ10〜30μm程度)、深さで0.5〜3μm(好ましくは、1〜2μm程度)の無数の微小ディンプル(球面状に陥没した無数の微小凹部)を形成する。
【0033】
このようなWPC処理により、食品等の加工或いは生産ラインにおいて被加工物(被処理物)を貯留するホッパー1の内周面11(被加工物(被処理物)と接触する領域)に微小ディンプルを形成することで、ホッパー1の内周面に被加工物(被処理物)が付着することを抑制することができる。
【0034】
従って、従来のようにホッパー1の内周面11に被加工物(被処理物)が付着してしまうことで、下流工程への被加工物の供給不良等の発生を抑制することができる。また、従来のようなテフロンコーティングのようなコーティング層がないため、剥離等による異物混入などの発生のおそれを回避することができる。
【0035】
なお、ホッパー1に限らず、例えばホッパー1の下部に設置されて被加工物を下流工程へと搬送するスクリュウコンベアのスクリュウ表面(被加工物と接触する領域)にWPC処理により微小凹部(微小凹凸)を形成することで、被加工物が付着することを抑制することができ、下流工程への搬送不良等を抑制することができる。
【0036】
また、例えば、図3に示すように、スクリュウコンベア等により搬送された被加工物を計量装置等へ滑落させるためのシュート20(滑り台状の要素)などの表面(被加工物と接触する領域)21にWPC処理により微小凹部(微小凹凸)を形成することで、被加工物が付着することを抑制することができる。
【0037】
すなわち、実施例1によれば、食品等の加工或いは生産ラインにおいて被加工物(被処理物)と接触する加工用器具(処理器具)の表面(被加工物(被処理物)と接触する領域)に微小ディンプルを形成することで、テフロンコーティング層等の剥離等による異物混入などの発生のおそれを回避しながら、被加工物(被処理物)が加工器具に付着することを抑制することができ、下流工程への被加工物(被処理物)の供給不良等の発生を抑制することができ、生産能率の向上に貢献することができる。
【0038】
なお、ホッパー等の生産ライン用加工用器具(処理器具)は、鉄、アルミ、チタン等の金属製(合金製)とすることができ、鉄の場合には、スチール(SS400など)のほか、ステンレス製とすることができ、特に非磁性のオーステナイト系のステンレス(SUS303、304、316など)とすることができる。
【実施例2】
【0039】
実施例1では、食品等の加工或いは生産ラインに利用されている加工用器具(処理器具)を対象としたが、実施例2では、家庭用の加工用器具(処理器具、調理器具)に適用した場合の一例を示す。
【0040】
実施例2では、例えば、鍋やフライパン(アルミ、鉄、ステンレス、チタン製など)の調理面(内周面)に、WPC処理により、直径φ5〜φ100μm程度(好ましくは、φ10〜30μm程度)、深さで0.5〜3μm(好ましくは、1〜2μm程度)の無数の微小ディンプル(球面状に陥没した無数の微小凹部)を形成する。WPC処理方法としては、実施例1と同様とすることができる。
【0041】
実施例2によれば、テフロンコーティング層等の剥離等による異物混入などの発生を回避しながら、鍋やフライパン等に食品等が付着することが抑制することができ、以って焦げ付きなどを抑制することができ、延いては洗いが楽になると共に鍋やフライパン等を清潔に保つことができる。
【0042】
上述した本実施の形態では、実施例1にて本発明に係る処理器具としてホッパー、スクリュウコンベア、シュートを例示し、実施例2にて本発明に係る処理器具としてフライパン、鍋等を例示して説明したが、本発明に係る処理器具はこれらに限定されるものではなく、計量カップ、シャッター、搬送コンベア、運搬用コンテナ、運搬用バケット等の他、加工、搬送、滑落、調理、計量等の各種の処理を行う際に、被処理物が処理器具に付着することが好ましくないとされるすべての処理器具に適用できるものである。
【0043】
本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 ホッパー
10 収容部
11 内周面(被処理物と接触する領域)
20 シュート
21 表面(被処理物と接触する領域)
100 微小ディンプル(球面状に陥没した凹部)
図1
図2
図3