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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-209903(P2017-209903A)
(43)【公開日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】樹脂供給方法および樹脂供給装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/42 20060101AFI20171102BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20171102BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20171102BHJP
【FI】
   B29C39/42
   H01L21/56 E
   B29C39/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-105543(P2016-105543)
(22)【出願日】2016年5月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中沢 英明
(72)【発明者】
【氏名】村松 吉和
(72)【発明者】
【氏名】池田 正信
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 雅彦
【テーマコード(参考)】
4F204
5F061
【Fターム(参考)】
4F204AA33
4F204AA36
4F204AA39
4F204AC05
4F204AD02
4F204AD19
4F204AH37
4F204AM32
4F204AR15
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB17
4F204FF01
4F204FF47
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
5F061AA01
5F061BA07
5F061CA04
5F061DB00
5F061DE06
(57)【要約】
【課題】樹脂内におけるエアの抱え込みなどの不具合を防止することのできる技術を提供する。
【解決手段】チャンバ(30)の内部(30a)を真空引きする。次いで、真空状態となったチャンバ(30)の内部(30a)でノズル(22)から被供給物であるワーク(W)へ液状樹脂(R)を吐出する。次いで、液状樹脂(R)の吐出を停止し、チャンバ(30)の内部(30a)の真空引きを停止した後に、チャンバ(30)の内部(30a)でノズル(22)を往復動させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)チャンバの内部を真空引きする工程と、
(b)真空状態となった前記チャンバの前記内部でノズルから被供給物へ液状樹脂を吐出する工程と、
(c)前記液状樹脂の吐出を停止し、前記チャンバの前記内部の真空引きを停止した後に、前記チャンバの前記内部で前記ノズルの液切りをする工程と、
を含むことを特徴とする樹脂供給方法。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂供給方法において、
前記(c)工程では、前記液状樹脂の吐出を停止し、前記チャンバの前記内部の真空引きを停止した後に、前記チャンバの前記内部で前記ノズルを往復動させることを特徴とする樹脂供給方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の樹脂供給方法において、
前記(b)工程では、前記チャンバの前記内部に設けられた重量計によって前記液状樹脂の重量を計測しながら、前記液状樹脂を吐出することを特徴とする樹脂供給方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂供給方法において、
前記(b)工程では、前記被供給物に平行して前記ノズルを移動させながら前記液状樹脂を吐出することを特徴とする樹脂供給方法。
【請求項5】
(a)チャンバの内部でノズルから被供給物へ液状樹脂を吐出する工程と、
(b)前記チャンバの前記内部を真空引きする工程と、
(c)前記液状樹脂の吐出を停止し、前記チャンバの前記内部の真空引きを停止した後に、前記チャンバの前記内部で前記ノズルの液切りをする工程と、
を含むことを特徴とする樹脂供給方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂供給方法を用いて前記被供給物に前記液状樹脂を供給する工程と、
前記被供給物を用いてモールド金型で加熱加圧して所定の形状に樹脂封止する工程と、
を含むことを特徴とする樹脂封止方法。
【請求項7】
被供給物が内部にセットされるチャンバと、
前記被供給物に向けて液状樹脂を吐出するノズルを有し、前記ノズルが前記チャンバの前記内部に設けられる吐出部と、
前記チャンバの前記内部を真空引きする真空部と、
前記ノズルを往復動させるノズル昇降駆動部と、
前記吐出部、前記真空部、および前記ノズル昇降駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記吐出部からの前記液状樹脂の吐出が停止され、前記真空部による真空引きが停止された状態において、前記制御部によって前記ノズルを往復動させるよう前記ノズル昇降駆動部が制御されることを特徴とする樹脂供給装置。
【請求項8】
請求項7記載の樹脂供給装置において、
前記被供給物がセットされるよう前記チャンバの前記内部に設けられ、吐出される前記液状樹脂の重量を計測する重量計を更に備えることを特徴とする樹脂供給装置。
【請求項9】
請求項7または8記載の樹脂供給装置において、
前記チャンバは、一方および他方のチャンバ部と、前記一方のチャンバ部と前記他方のチャンバ部との間をシールするシール部と、を備えて開閉可能に構成され、
前記吐出部が前記一方のチャンバ部に設けられ、
前記他方のチャンバ部に対して前記一方のチャンバ部を進退動および平行移動させるチャンバ駆動部を更に備えることを特徴とする樹脂供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂供給技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012−126075号公報(以下「特許文献1」という)には、液状樹脂供給装置が記載されている。この液状樹脂供給装置は、シリンジに充填された液状樹脂をチューブノズルからワークに吐出して供給するものである。
【0003】
特開2007−111862号公報(以下「特許文献2」という)には、真空ディスペンス装置が記載されている。この真空ディスペンス装置は、被塗布品を真空室内に配置し、真空環境下において液状樹脂を供給するものである。また、この真空ディスペンス装置には、ノズルからの液垂れによる装置汚れを防止するために、真空チャンバの外部に液垂れ受け容器が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−126075号公報
【特許文献2】特開2007−111862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被供給物(例えば、ワークやフィルム)に対して樹脂成形を行うにあたり、特許文献1に記載の液状樹脂供給装置を用いて被供給物上に液状樹脂を供給することができる。しかしながら、例えば被供給物として複数のチップ部品(チップ状の電子部品)が実装された基板であるワークに液状樹脂を供給すると、複数のチップ部品を覆う液状樹脂がしずく状の塊となる場合がある。この場合、基板と液状樹脂との間にエアが残ってしまい、結果として成形品には未充填が発生しやすくなる問題がある。更に、ワークとして基板上にフリップチップ接続されたチップ部品では、いわゆるアンダーフィルが適切に行われないおそれがある。
【0006】
そこで、液状樹脂の供給について、特許文献1に記載の技術のように大気雰囲気下ではなく、特許文献2に記載の技術のように真空雰囲気下で行い、残留エアを除去することが考えられる。しかしながら、特許文献2に記載の技術は、真空チャンバを大気開放した後、ノズル下に液垂れ容器を移動させる構成であるため(特にその明細書段落[0026]参照)、ワーク上の液状樹脂にホコリが付着するおそれがある。
【0007】
本発明の一目的は、樹脂内におけるエアの抱え込みなどの不具合を防止することのできる技術を提供することにある。本発明の一目的および他の目的ならびに新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
本発明の一解決手段に係る樹脂供給方法は、(a)チャンバの内部を真空引きする工程と、(b)真空状態となった前記チャンバの前記内部でノズルから被供給物へ液状樹脂を吐出する工程と、(c)前記液状樹脂の吐出を停止し、前記チャンバの前記内部の真空引きを停止した後に、前記チャンバの前記内部で前記ノズルの液切りをする工程と、を含むことを特徴とする。前記(c)工程では、前記液状樹脂の吐出を停止し、前記チャンバの前記内部の真空引きを停止した後に、前記チャンバの前記内部で前記ノズルを往復動させることがより好ましい。これによれば、樹脂内におけるエアの抱え込みなどの不具合を防止することができる。
【0010】
ここで、前記(b)工程では、前記チャンバの前記内部に設けられた重量計によって前記液状樹脂の重量を計測しながら、前記液状樹脂を吐出することがより好ましい。これによれば、液状樹脂の重量を正確に計測することができる。
【0011】
また、前記(b)工程では、前記被供給物に平行して前記ノズルを移動させながら前記液状樹脂を吐出することがより好ましい。これによれば、任意の吐出位置において被供給物の表面内に液状樹脂を供給することができる。
【0012】
本発明の他の解決手段に係る樹脂供給方法は、(a)チャンバの内部でノズルから被供給物へ液状樹脂を吐出する工程と、(b)前記チャンバの前記内部を真空引きする工程と、(c)前記液状樹脂の吐出を停止し、前記チャンバの前記内部の真空引きを停止した後に、前記チャンバの前記内部で前記ノズルの液切りをする工程と、を含むことを特徴とする。これによれば、樹脂内におけるエアの抱え込みなどの不具合を防止することができる。
【0013】
本発明の一解決手段に係る樹脂封止方法は、前述したいずれかの樹脂供給方法を用いて前記被供給物に前記液状樹脂を供給する工程と、前記被供給物を用いてモールド金型で加熱加圧して所定の形状に樹脂封止する工程と、を含むことを特徴とする。これによれば、エアの抱え込みによるボイドや未充填を防止した高品質な樹脂封止をすることができる。
【0014】
本発明の一解決手段に係る樹脂供給装置は、被供給物が内部にセットされるチャンバと、前記被供給物に向けて液状樹脂を吐出するノズルを有し、前記ノズルが前記チャンバの前記内部に設けられる吐出部と、前記チャンバの前記内部を真空引きする真空部と、前記ノズルを往復動させるノズル昇降駆動部と、前記吐出部、前記真空部、および前記ノズル昇降駆動部を制御する制御部と、を備え、前記吐出部からの前記液状樹脂の吐出が停止され、前記真空部による真空引きが停止された状態において、前記制御部によって前記ノズルを往復動させるよう前記ノズル昇降駆動部が制御されることを特徴とする。これによれば、チャンバの内部において、吐出された液状樹脂を液切りして被供給物から切り離すことができる。
【0015】
ここで、前記被供給物がセットされるよう前記チャンバの前記内部に設けられ、吐出される前記液状樹脂の重量を計測する重量計を更に備えることがより好ましい。これによれば、液状樹脂の重量を正確に計測することができる。
【0016】
また、前記チャンバは、一方および他方のチャンバ部と、前記一方のチャンバ部と前記他方のチャンバ部との間をシールするシール部と、を備えて開閉可能に構成され、前記吐出部が前記一方のチャンバ部に設けられ、前記他方のチャンバ部に対して前記一方のチャンバ部を進退動および平行移動させるチャンバ駆動部を更に備えることがより好ましい。これによれば、任意の吐出位置において被供給物の表面内に液状樹脂を供給することができる。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。本発明の解決手段によれば、樹脂内におけるエアの抱え込みなどの不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂供給装置を説明するための図である。
図2図1に続く動作に係る樹脂供給装置を説明するための図である。
図3図2に続く動作に係る樹脂供給装置を説明するための図である。
図4図3に続く動作に係る樹脂供給装置を説明するための図である。
図5図4に続く動作に係る樹脂供給装置を説明するための図である。
図6図5に続く動作に係る樹脂供給装置を説明するための図である。
図7図6に続く動作に係る樹脂供給装置を説明するための図である。
図8図7に続く動作に係る樹脂供給装置を説明するための図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る樹脂供給装置を説明するための図である。
図10図9に続く動作に係る樹脂供給装置を説明するための図である。
図11図10に続く動作に係る樹脂供給装置を説明するための図である。
図12図11に続く動作に係る樹脂供給装置を説明するための図である。
図13図12に続く動作に係る樹脂供給装置を説明するための図である。
図14図13に続く動作に係る樹脂供給装置を説明するための図である。
図15図14に続く動作に係る樹脂供給装置を説明するための図である。
図16】液状樹脂が供給された被供給物の平面図である。
図17】液状樹脂が供給された被供給物の側面図である。
図18】シリンジの構造の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0020】
(実施形態1)
本発明の実施形態に係る樹脂供給装置10について、図1図8を参照して説明する。図1図8は、樹脂供給動作に係る樹脂供給装置10を説明するための図である。なお、樹脂供給装置10は、3次元(XYZ)直交座標系にあるものとして説明し、図中の上下方向(鉛直方向)がZ軸に沿う方向に対応し、水平方向がX軸およびY軸に沿う方向となる。
【0021】
本実施形態では、液状樹脂Rが供給される被供給物としてワークWを用いる。このワークWは、直径12インチ(約30cm)の丸型の金属製(SUS等)のキャリアプレートに熱剥離性を有する粘着シート(粘着テープ)が貼着され、該粘着シートに複数の半導体チップが行列状に粘着されたものである。このようなワークW上に液状樹脂Rが供給され、E−WLP(Embedded Wafer Level Package)、eWLB(embededd Wafer Lebel BGA)と呼ばれる樹脂成形がなされる。また、液状樹脂Rとして、例えば、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂が用いられる。
【0022】
樹脂供給装置10は、制御部11を備える。この制御部11は、CPU(中央演算処理装置)と、ROM、RAMなどの記憶部とを備え、記憶部に記録された各種制御プログラムをCPUが読み出して実行することで、樹脂供給装置10を構成する各部の動作を制御する。この各部が動作することが樹脂供給装置10の動作となる。
【0023】
また、樹脂供給装置10は、液状樹脂Rを吐出して供給する吐出部20を備える。吐出部20は、液状樹脂Rが貯留されるシリンジ21と、シリンジ21の先端に設けられるノズル22と、シリンジ21内に挿入され、液状樹脂Rを押し付け可能なプランジャ23と、を備える。また、吐出部20は、例えば弾性体で構成された管状のノズル22を摘むように設けられ、図示しない駆動機構により開閉してノズル22の開閉を行うピンチバルブ24を備える。なお、ノズル22において、ノズル22の開閉(換言すれば、液状樹脂の通過の可否)を任意に切り替え可能であれば、上述したように弾性体で構成されたノズル22を摘むことでノズル22の開閉を行うピンチバルブ24を用いなくてもよい。例えば、ノズル先端にシャッタを備えた構成や開閉弁を備えた構成としてもよい。
【0024】
吐出部20は、図示しない駆動機構によりピンチバルブ24を開閉しプランジャ23が下動してシリンジ21内の液状樹脂Rを押し出す方向に流動させることでノズル22から液状樹脂Rを吐出する。他方、吐出部20は、プランジャ23の下動が停止すると共にピンチバルブ24が閉じられてノズル22より液状樹脂Rの吐出を停止する。
【0025】
また、樹脂供給装置10は、ワークW(被供給物)が内部30aにセットされるチャンバ30を備える。チャンバ30は、一対のチャンバ部31、32(一方を上チャンバ部31、他方を下チャンバ部32とする)を備えて開閉可能に構成される。また、樹脂供給装置10は、上チャンバ部31と下チャンバ部32との間をシールするシール部33(例えばOリング)を備える。これにより、チャンバ30が閉じられた状態となると、上チャンバ部31と下チャンバ部32とがシール部33を介して接するような状態となり、チャンバ30の内部30aが形成される(閉鎖状態となる)。なお、チャンバ30には、その内部の温度を任意に調整する温度調節部(不図示)が設けられている。また、下チャンバ部32は、例えば装置筐体のテーブル部分として構成されてもよいし、板状の部材が装置筐体に固定された構成としてもよい。
【0026】
後述するが、チャンバ30の内部30a(図3参照)にセットされたワークWに向けてノズル22から液状樹脂Rが吐出される。このため、樹脂供給装置10では、上チャンバ部31に吐出部20が設けられるよう構成される。具体的には、樹脂供給装置10では、チャンバ30の外部でシリンジ21が保持された状態で、上チャンバ部31を貫通してノズル22がチャンバ30の内部30aに設けられるよう構成される。そこで、樹脂供給装置10は、吐出保持部34と、シール部35、36(例えばOリング)とを備える。吐出保持部34は、ノズル22を貫通させた状態でシリンジ21を保持するものである。また、吐出保持部34は、上チャンバ部31が有する貫通突起部31aを覆うように貫通突起部31aの開口の蓋部として設けられる。シール部35は、シリンジ21と吐出保持部34との間をシールしている。シール部36は、上チャンバ部31の貫通突起部31aと吐出保持部34との間をシールしている。これにより、チャンバ30が閉じて形成された内部30aにノズル22が設けられる。
【0027】
また、樹脂供給装置10は、ノズル22から吐出される液状樹脂Rの重量を計測する重量計40を備える。重量計40は、ワークWがセットされるようチャンバ30の内部30aに設けられる。この場合、図1に示すように下チャンバ部32には、表面32aから窪む窪み部32bを設けることができる。窪み部32bには重量計40が固定された状態で設けられる。この重量計40では、ワークWがセットされた状態で、ワークWに吐出される液状樹脂Rの重量が計測される。これによれば、チャンバ30の内部30aにおいて、ワークWに供給される液状樹脂Rの重量を重量計40が安定的に計測することができ、正確に計測することができる。なお、重量計40が制御部11と電気的に接続され、制御部11によって重量計40の計測データが処理される。
【0028】
また、樹脂供給装置10は、チャンバ30の内部30aを真空引きして真空状態(あるいは減圧状態)とさせる真空部41(例えば真空ポンプ)を備える。真空部41は、チャンバ30の内部30aが閉鎖状態において、下チャンバ部32に形成されたエア路42を介して内部30aを真空引きして真空状態を形成する。このようなチャンバ30内で樹脂供給することができるので、樹脂内におけるエアの抱え込みなどの不具合を防止することができる。なお、真空部41が制御部11と電気的に接続され、制御部11によって真空部41が制御される。
【0029】
また、樹脂供給装置10は、チャンバ30の開閉を行うチャンバ駆動部50を備える。チャンバ駆動部50は、下チャンバ部32に対して上チャンバ部31をZ軸に沿う方向に進退動させる(近づけたり、遠ざけたりさせる)ことで、チャンバ30の開閉を行う。チャンバ駆動部50は、保持部51と、第1レール52と、第1スライダ53と、第1モータ54と、を備える。
【0030】
チャンバ駆動部50では、保持部51が柱状に構成され、下チャンバ部32の表面32a上に起立するよう設けられる。この保持部51には上下方向(Z軸に沿う方向、鉛直方向)に延びる第1レール52が設けられる。この第1レール52上をスライド可能に第1スライダ53が設けられる。この第1スライダ53は第1モータ54の駆動によって第1レール52上をスライドする。そして、本実施形態では、第1スライダ53に上チャンバ部31が設けられ、第1スライダ53が上下方向にスライドすることで、下チャンバ部32に対して上チャンバ部31が進退動(上下動)するよう構成される。なお、第1モータ54が制御部11と電気的に接続され、制御部11によってチャンバ駆動部50が制御される。なお、以下の説明において、チャンバ駆動部50の他にも複数の駆動部を同様の構成で形成する例について説明するが、これらは図示するような構成のみならず、リンク構造を用いた多間接ロボットなど任意の移動構造を備えたものとすることが可能である。
【0031】
また、樹脂供給装置10は、ノズル22を往復動させるノズル昇降駆動部70を備える。ノズル昇降駆動部70は、チャンバ30の内部30aで吐出部20のノズル22を昇降方向において往復動させる。ノズル昇降駆動部70は、第2レール72と、第2スライダ73と、第2モータ74と、を備える。
【0032】
ノズル昇降駆動部70では、第2レール72が上下方向に延び、上チャンバ部31と共にチャンバ駆動部50の第1スライダ53に設けられる。すなわち、第1スライダ53に対して第2レール72および上チャンバ部31は一緒に保持される。この第2レール72上をスライド可能に第2スライダ73が設けられる。この第2スライダ73は第2モータ74の駆動によって第2レール72上をスライドする。この第2スライダ73には吐出保持部34が設けられる。本実施形態では、第2スライダ73が上下方向にスライドすることで、吐出保持部34を介して吐出部20のノズル22を往復動(昇降)させる。後述するが、液状樹脂Rを吐出したノズル22を往復動させることで、液状樹脂Rを液切りすることができる。なお、第2モータ74が制御部11と電気的に接続され、制御部11によってノズル昇降駆動部70が制御される。
【0033】
ここで、液状樹脂Rの液切りとは、液状樹脂Rをノズル22から下方に吐出してワークWに供給するときに、粘度の高い液状樹脂Rがその自重によってノズル22から切り離されず引き伸ばされた状態(ドローリング状態)となった場合に、ノズル22から切り離すことをいう。以下の実施形態においては、液状樹脂Rを吐出し終わったノズル22を昇降することでワークWとの距離の伸縮を繰り返し、ノズル22から切り離す方法を想定している。ただし、液切りの手法としてはこれに限らず、ノズル22の先端から物理的に切り取るような手法でもよい。
【0034】
また、樹脂供給装置10の吐出部20は、プランジャ23を往復動させる吐出駆動部80を備える。吐出駆動部80は、第3レール82と、第3スライダ83と、第3モータ84と、を備える。
【0035】
吐出駆動部80では、第3レール82が上下方向に延び、第2スライダ73に設けられる。この第3レール82上をスライド可能に第3スライダ83が設けられる。この第3スライダ83は第3モータ84の駆動によって第3レール82上をスライドする。この第3スライダ83にプランジャ23が設けられ、第3スライダ83が上下方向にスライドすることでプランジャ23を往復動させる。本実施形態では、シリンジ21内にプランジャ23が挿入されており、シリンジ21内で貯留されている液状樹脂Rをプランジャ23が押圧することで、シリンジ21の先端に設けられたノズル22から液状樹脂Rが吐出される。なお、第3モータ84が制御部11と電気的に接続され、制御部11によって吐出部20の吐出駆動部80が制御される。
【0036】
樹脂供給装置10では、吐出部20からの液状樹脂Rの吐出が停止され、真空部41による真空引きが停止された状態において、制御部11によって、チャンバ30の内部30aでノズル22を往復動させるようノズル昇降駆動部70が制御される。これによれば、チャンバ30の内部30aにおいて、吐出された液状樹脂Rを液切りしてワークWから切り離すことができる。閉鎖された空間内(内部30a)で液切りが行われることによりホコリなどの巻き込みなどを防止することができる。
【0037】
次に、本発明の実施形態に係る樹脂供給装置10の動作方法、すなわち、樹脂供給方法について説明する。
【0038】
図1に示す樹脂供給装置10は、ワークWが供給される前の状態である。ここでは、チャンバ30は開いている。また、シリンジ21のノズル22はピンチバルブ24によって閉じられており、プランジャ23は上方で待機している。このようにチャンバ30が開いている状態で、搬送装置(例えばローダ)によってワークWが搬送されて、図2に示すように、樹脂供給装置10にワークWが供給される。本実施形態では、重量計40にワークWがセットされる。
【0039】
続いて、図3に示すように、閉鎖状態となるようにチャンバ30の内部30aを形成し、チャンバ30の内部30aに対して真空引きを開始する。ここでは、制御部11によって真空部41およびチャンバ駆動部50が制御される。具体的には、チャンバ駆動部50の第1モータ54の駆動により、上チャンバ部31が設けられる第1スライダ53が第1レール52上を下降していくことで、シール部33を介して上チャンバ部31と下チャンバ部32とが接するような状態となる。これにより、閉鎖状態となったチャンバ30の内部30aが形成される。そして、真空部41の駆動により、ワークWがセットされたチャンバ30の内部30aを真空状態とする。なお、この真空状態とする動作の前に、又は、並行して、チャンバ30の内部の温度を所定の値となるように温度調節部を制御するのが好ましい。この場合、装置全体でなくチャンバ30だけを所定の温度にすればよいため、速やかに温度調整が行える。
【0040】
続いて、図4に示すように、真空状態のチャンバ30の内部30aでノズル22からワークWへ液状樹脂Rを吐出する。ここでは、制御部11によって吐出部20(吐出駆動部80)および真空部41が制御される。具体的には、真空部41の駆動によりチャンバ30の内部30aを引き続き真空状態とする。そして、吐出部20の第3モータ84の駆動により、プランジャ23が設けられる第3スライダ83が第3レール82上を下降していく。この場合、プランジャ23がシリンジ21内の液状樹脂Rを押圧し、図示しない駆動機構によりピンチバルブ24を開放することでノズル22から液状樹脂Rを吐出する。
【0041】
この際、チャンバ30の内部30aに設けられた重量計40によって液状樹脂Rの重量を計測しながら、液状樹脂Rが吐出される。制御部11は、重量計40の計測データを処理し、例えば液状樹脂Rの重量が所定値に達した場合に、液状樹脂Rの吐出を停止させることができる。また、上述したように温度調節部によりチャンバ30の内部30aが所定の温度となっていれば、液状樹脂Rの吐出や重量の計測を正確に行うことができ、液状樹脂Rをより適切に供給することができる。
【0042】
続いて、液状樹脂Rの吐出を停止し、チャンバ30の内部30aの真空引きを停止した後、図5および図6に示すように、チャンバ30の内部30aでノズル22を往復動させる。ここでは、制御部11によって吐出部20、真空部41およびノズル昇降駆動部70が制御される。具体的には、吐出部20の第3モータ84の停止によりプランジャ23の下動を停止すると共にピンチバルブ24が閉じられてノズル22より液状樹脂Rの吐出を停止する。次いで、真空部41による真空引きの停止によりチャンバ30の内部30aの真空状態を解除する。これにより、例えばワークW上に供給された液状樹脂Rの下方において、液状樹脂Rの充填ができていない空間がある場合(換言すればエアの抱え込みが発生する場合)に、その隙間に対して液状樹脂Rを周囲の雰囲気の圧力で充填することが可能となる。
【0043】
次いで、ノズル昇降駆動部70の第2モータ74の駆動により吐出部20のノズル22を上動させる(図5参照)。次いで、ノズル昇降駆動部70の第2モータ74の駆動により吐出部20のノズル22を下動させる(図6参照)。そして、吐出部20のノズル22の往復動(昇降)を所定回繰り返す液切り動作が行われる。チャンバ30の内部30aの真空状態を解除しているが、チャンバ30の閉塞状態を維持しながら、吐出保持部34を昇降させることができる。
【0044】
本実施形態では、ノズル22の往復動作は、チャンバ30を閉じて内部30aが形成されたままの状態(閉鎖状態)で行われる。上チャンバ部31を動かさずに、上チャンバ部31の貫通突起部31aをガイド部として用いて吐出保持部34が往復動されることで、閉鎖された空間を維持しながら吐出保持部34で保持されるノズル22が往復動される。このように、閉塞された内部30aで液状樹脂Rの液切りが行われる。これに対し、例えば、上チャンバ部31ごと昇降させることで、ノズル22を昇降させて液切り動作を行うことも可能である。しかし、このような動作を行うには昇降させる構成部材が大きくなる。また、上チャンバ部31が上下動することで、ワークW周囲の雰囲気が流動することになり、周囲に粉塵が存在するときには液状樹脂Rに付着してしまう可能性も考えられる。このような理由から、本実施形態に示すように上チャンバ部31と吐出保持部34との間にシール部36を設け、ノズル22を有するシリンジ21を昇降させる構成とするのが好ましい。このように、エアの抱え込みを解消しながら粉塵の付着を防止することができる。図7に示す樹脂供給装置10は、液状樹脂Rが液切りされた状態である。
【0045】
続いて、制御部11によってチャンバ駆動部50が制御され、図8に示すように、チャンバ30を開いて、液状樹脂Rが供給されたワークWを大気開放させる。ここでも、液状樹脂Rの周囲から大気圧が加えられることで、ワークW上における液状樹脂Rの充填が促進される。例えば、ワークWとして基板やウェハ上にチップ部材がフリップチップ接続により搭載されているときには、チップと基板等を接続する多数のバンプの間に液状樹脂Rを充填することができる。また、フリップチップ接続を行わない場合にも、ワークWにおいて基板等の上に搭載されたチップの側面と基板等の平面とで構成される角部分における空間には液状樹脂Rが十分に行き渡らない(充填されない)部分が生じる可能性が考えられる。そのような部分(空間)を含むように液状樹脂Rが供給されることで、エアを抱き込んだ状態となることも考えられる。しかしながら、真空状態(減圧雰囲気下)で供給された液状樹脂Rの周囲から大気圧が加えられることで、このようなエアの抱え込み(液状樹脂Rのない領域)を潰し込むことができる。
【0046】
具体的には、チャンバ駆動部50の第1モータ54の駆動により、上チャンバ部31が設けられる第1スライダ53が第1レール52上を上昇していくことで、上チャンバ部31と下チャンバ部32とが離れてチャンバ30が開いた状態となる。その後、搬送装置(例えばローダ)によって液状樹脂Rが供給されたワークWが取り出されて搬送される。
【0047】
次いで、例えばモールド装置内に本実施形態における樹脂供給装置10と図示しないモールド金型を設け、このモールド金型においてワークW上に供給された液状樹脂Rが減圧雰囲気下において加熱加圧されて所定の形状に樹脂封止される。これによれば、エアの抱え込みによるボイドや未充填を防止した高品質な樹脂封止をすることができる。この場合、上述したようにエアの抱え込みなどの不具合を防止しながら液状樹脂RをワークWに供給しているので、未充填を防止した樹脂封止を行うことができる。なお、本実施形態では、被供給物としてワークWに適用した場合について説明したが、ワークWとは別にモールド金型に供給されるリリースフィルムを被供給物として液状樹脂Rを供給することもできる。
【0048】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る樹脂供給装置10Aについて、図9図17を参照して説明する。図9図15は、樹脂供給動作に係る樹脂供給装置10Aを説明するための図である。図16および図17は、それぞれ液状樹脂が供給された被供給物であるワークWの平面図および側面図である。本実施形態では、前記実施形態1に係るチャンバ駆動部50の構成と相違するため、以下ではこの点を中心に説明する。
【0049】
本実施形態に係る樹脂供給装置10Aは、平面方向における任意の位置でチャンバ30を構成し開閉を行うチャンバ駆動部50Aを備える。すなわち、チャンバ駆動部50Aは、シリンジ21(ノズル22)を含む上チャンバ部31を図9におけるX方向又はY方向に移動可能に構成される。また、チャンバ駆動部50Aは、下チャンバ部32に対して上チャンバ部31を進退動させることで、チャンバ30の開閉を行う。このような構造により、チャンバ30を構成した状態(例えば減圧した状態)で、ワークWに対してシリンジ21のノズル22部分をXY方向における任意の位置に移動可能に構成される。
【0050】
具体的には、チャンバ駆動部50Aは、保持部51と、第1レール52と、第1スライダ53と、第1モータ54と、上ベース部60と、第4レール61と、第4スライダ62と、第4モータ63と、第5レール64と、第5スライダ65と、第5モータ66と、を備える。また、チャンバ駆動部50Aでは、上ベース部60が動かないように装置筐体に固定されている。この上ベース部60の下面にはY軸に沿う方向に延びる第4レール61が設けられる。この第4レール61上をスライド可能に第4スライダ62が設けられる。この第4スライダ62は第4モータ63の駆動によって第4レール61上をスライドする。また、第4スライダ62にはX軸に沿う方向に延びる第5レール64が設けられる。この第5レール64上をスライド可能に第5スライダ65が設けられる。この第5スライダ65は第5モータ66の駆動によって第5レール64上をスライドする。そして、この第5スライダ65に保持部51が吊り下げられるよう設けられる。
【0051】
この保持部51には、Z軸に沿う方向に延びる第1レール52が設けられ、この第1レール52上を第1モータ54によってスライド可能に第1スライダ53が設けられる。そして、第1スライダ53上に上チャンバ部31が設けられる。したがって、上チャンバ部31はチャンバ駆動部50Aによって3軸(XYZ)に沿う方向に可動することができる。すなわち、チャンバ駆動部50Aは下チャンバ部32に対して上チャンバ部31を進退動(Z軸に沿う方向へ移動)および平行移動(X軸およびY軸に沿う方向へ移動)をさせることができる。このため、樹脂供給装置10Aでは、チャンバ駆動部50Aによってチャンバ30を閉じた状態としたまま上チャンバ部31を平行移動させることができる。
【0052】
そして、前記実施形態1で説明したように上チャンバ部31には吐出部20が設けられる。このため、樹脂供給装置10Aでは、チャンバ30を閉じた状態としたまま、吐出部20を平行移動させながらノズル22から液状樹脂Rを吐出させることができる。これによれば、前述の実施形態における効果のみならず、任意の吐出位置においてワークWの表面内に液状樹脂Rを供給することができる(図16および図17参照)。
【0053】
次に、本発明の実施形態に係る樹脂供給装置10Aの動作方法、すなわち、樹脂供給方法について説明する。
【0054】
図9に示す樹脂供給装置10は、チャンバ30が開いた状態でワークWが供給された後の状態である。ここでは、シリンジ21のノズル22はピンチバルブ24によって閉じられており、プランジャ23は上方で待機している。また、重量計40にワークWがセットされている。
【0055】
続いて、図10に示すように、閉鎖状態となるようにチャンバ30の内部30aを形成し、チャンバ30の内部30aに対して真空引きを開始する。ここでは、制御部11によって真空部41およびチャンバ駆動部50Aが制御される。具体的には、チャンバ駆動部50Aの第1モータ54の駆動により、上チャンバ部31が設けられる第1スライダ53が第1レール52上を下降していくことで、シール部33を介して上チャンバ部31と下チャンバ部32とが接するような状態となる。これにより、閉鎖状態となったチャンバ30の内部30aが形成される。そして、真空部41の駆動により、ワークWがセットされたチャンバ30の内部30aを真空状態とする。
【0056】
続いて、図11に示すように、ノズル22がワークWの表面に対して所定位置(吐出開始位置)となるように下チャンバ部32に対して上チャンバ部31を平行移動させる。ここでは、制御部11によって真空部41およびチャンバ駆動部50Aが制御される。具体的には、真空部41の駆動によりチャンバ30の内部30aを引き続き真空状態とする。そして、チャンバ駆動部50Aの第4モータ63または第5モータ66の少なくとも一方の駆動により第4スライダ62または第5スライダ65の少なくとも一方がスライドし、上チャンバ部31が下チャンバ部32に対して平行移動する。これにより、ノズル22がワークWの表面に対して所定位置まで平行移動することができる。
【0057】
続いて、チャンバ30が閉じた状態でワークWに平行してノズル22を移動させながら液状樹脂Rを吐出する。ここでは、制御部11によって吐出部20(吐出駆動部80)、真空部41、およびチャンバ駆動部50Aが制御される。ワークWに対する液状樹脂Rの吐出(供給)は、ワークWの表面全体に行うことができるが、本実施形態では、図16および図17に示すように、ワークWの表面中央部(最大供給エリア90)に対して行っている。例えば、図16に示すように、渦巻き状または複数同心円状に液状樹脂Rを供給することができる。樹脂供給装置10Aでは、チャンバ30の内部30aを構成する上チャンバ部31と共にノズル22を移動させる構成であるため、ワークWの表面中央部に対して液状樹脂Rを供給することでチャンバサイズの大型化を防止することができる。また、チャンバサイズの大型化を防止することで、真空引きの時間を短くすることができる。また、渦巻き状または複数の同心円状に液状樹脂Rを供給することで、供給される液状樹脂Rの高さの低減を達成することができる。
【0058】
具体的には、真空部41の駆動によりチャンバ30の内部30aを引き続き真空状態とする。次いで、図12に示すように、吐出部20の第3モータ84の駆動によりプランジャ23を下降させて、シリンジ21内の液状樹脂Rをノズル22から吐出する。次いで、図13に示すように、チャンバ駆動部50Aにより上チャンバ部31を下チャンバ部32に対して平行移動させながら、液状樹脂Rをノズル22から吐出させる。最終的には、図14に示すように、ワークWの中心までノズル22を平行移動させて、液状樹脂Rを吐出することで、ワークWに渦巻き状に液状樹脂Rを供給することができる。この際、チャンバ30の内部30aに設けられた重量計40によって液状樹脂Rの重量を計測しながら、液状樹脂Rが吐出される。
【0059】
もちろん、ワークWの全面に対して渦巻き状等で液状樹脂Rを供給して、ワークW上における樹脂の供給量を均一化させてもよい。この場合、上述した図に示すような有底筒状の上チャンバ部31を平板状とし、平板状の下チャンバ部32を有底筒状とすることができる。このような構造により構成されるチャンバでは、上述した構成と同様の効果を得られるうえ、ノズル22の移動領域を大きくしても、チャンバサイズは大きくならないため、より好ましい。
【0060】
なお、ワークW上において液状樹脂Rを供給する形状については、上述したように渦巻き状や同心円状の他にも、任意の形状に供給することができる。例えば、ワークW上において多点状や格子状、さらに、複数線を並べた形状、若しくは、放射線状といった任意の形状に供給することができる。
【0061】
また、ワークW上において供給された液状樹脂Rの撮像する撮像装置を備えてもよい。この場合、例えば上チャンバ部31に透光性を有する材質により構成された撮像用の窓部を設け、撮像部(カメラ)や照明部によりワークW上において供給された液状樹脂Rの形状を撮像し、供給状態の確認を行えるようにするのが好ましい。
【0062】
続いて、前記実施形態で図5および図6を参照して説明したように、液状樹脂Rの吐出を停止し、チャンバ30の内部30aの真空引きを停止した後、チャンバ30の内部30aでノズル22を往復動させる。これにより、内部30aで液状樹脂Rの液切りを行うことができる。閉鎖された空間内(内部30a)で液切りが行われることによりホコリなどの巻き込みなどを防止することができる。
【0063】
続いて、図15に示すように、チャンバ30を開いて、液状樹脂Rが供給されたワークWを大気開放させる。ここでは、制御部11によってチャンバ駆動部50Aが制御される。具体的には、チャンバ駆動部50Aの第1モータ54の駆動により、上チャンバ部31が設けられる第1スライダ53が第1レール52上を上昇していくことで、上チャンバ部31と下チャンバ部32とが離れてチャンバ30が開いた状態となる。その後、搬送装置(例えばローダ)によって液状樹脂Rが供給されたワークWが取り出されて搬送される。
【0064】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0065】
例えば、ワークとして基板上にフリップチップ接続されたチップ部品を用いる場合、基板に液状樹脂を供給する際に、基板とチップ部品との間を減圧した状態とすることができる。このため、例えば圧縮成形において、その基板とチップ部品との間に樹脂が充填されやすくなり、いわゆるアンダーフィルを適切に行うことができる。
【0066】
また、上述した実施形態では真空状態(減圧雰囲気下)で液状樹脂Rを供給する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、上述した実施形態に示す樹脂供給装置によれば、チャンバの内部でノズルから被供給物へ液状樹脂を吐出(供給)した後で真空状態(減圧雰囲気下)としてエアを排出して、樹脂内におけるエアの抱え込みなどの不具合を防止することもできる。
【0067】
また、チャンバ30の内部30aが高い真空度となるように減圧されることにより、シリンジ21に貯留された液状樹脂Rがピンチバルブ24でノズル22を閉塞してもチャンバ30の内部30aに吐出されてしまうような場合も考えられる。このような場合には、液状樹脂Rをシリンジ21内に引き戻す構成とすることが好ましい。これにより、液状樹脂Rが意図せず吐出してしまうのを防止することができる。例えば、図18に示すように、シリンジ21内部において液状樹脂Rの無い空間(上側の空間)を減圧することでチャンバ30における減圧によって液状樹脂Rを引き出そうとする力と均衡させることもできる。
【0068】
具体的には、図18に示すように、プランジャシャフト23aとプランジャシール部23bとを備えたプランジャ23とすることができる。プランジャシャフト23aは、先端が拡径し、シリンジ21に設けられたシリンジ蓋部21aを押圧し液状樹脂Rを吐出する。プランジャシール部23bは、プランジャシャフト23aが中央に差し込まれる環状の構造を有しており、筒状のシリンジ本体21bと組み合わされることで、シリンジ本体21b内においてシリンジ蓋部21aとの空間を所定の密閉空間とする。また、プランジャシール部23bは、シリンジ本体21bの縁部とのシール性を確保するためのシール23b1、プランジャシャフト23aとのシール性を維持するためのシール23b2、及び、シリンジ本体21bの内部をエア吸引するための吸引路23b3を備える。これにより、シリンジ21の内部において、シリンジ蓋部21a、シリンジ本体21b、プランジャシャフト23a、及び、プランジャシール部23bにより環状の密閉空間が形成される。このような密閉空間が形成された状態において、プランジャシール部23bに設けられた吸引路23b3を介し図示しない配管や真空ポンプによりエア吸引することで、この空間を減圧してシリンジ蓋部21aを引き戻し、液状樹脂Rをシリンジ21内に戻す力を加えることができる。
【0069】
なお、シリンジ21は、シリンジ本体21bとシリンジ蓋部21aとで液状樹脂Rを貯留した状態で装置内に供給される。このため、例えば図1に示すような位置に未使用のシリンジ21がセットされた状態において、プランジャ23を下降させてプランジャシャフト23aの先端をシリンジ本体21bに挿入する。また、この際にプランジャシール部23bでシリンジ本体21bの上端の開口部を閉塞させ、適宜な樹脂の吐出を行った後に液状樹脂Rをシリンジ21内に戻す力を加えることができる。これによれば、液状樹脂Rの意図しない吐出を防止できるほか、意図しない吐出が無い場合でも液状樹脂Rをシリンジ21内に戻す力を利用することで液切りすることもできる。
【0070】
また、液状樹脂Rをシリンジ21内に引き戻す構成としては、上述したような減圧による方法のみならず、シリンジ蓋部21aを機械的に引き戻す構成とすることもできる。この場合、プランジャシャフト23aの先端をシリンジ蓋部21aに対して螺合や嵌合などにより任意に係合させる構成とすることで、プランジャシャフト23aでシリンジ蓋部21aを直接引き戻すこともできる。例えば、プランジャシャフト23aの先端を雄ねじを設けると共にシリンジ蓋部21aの主面に雌ねじを設けることで、これらを螺合させることができる。もちろん、任意に係合が可能であればこのような構成に限らず、プランジャシャフト23aの先端をT字状とし、シリンジ蓋部21aに適宜に設けた溝部に回転させて係合させるなどとしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
22 ノズル
30 チャンバ
30a 内部
R 液状樹脂
W ワーク(被供給物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18