【解決手段】樹脂成形金型(10)は、キャビティ(C)と、キャビティ(C)に通じるシャットオフベント(26)と、シャットオフベント(26)に進退動可能なシャットオフピン(40)と、シャットオフベント(26)に対してシャットオフピン(40)を離隔させるリターンスプリング(41)と、リターンスプリング(41)に抗してシャットオフピン(40)にエア圧を掛けるエア供給路(42)と、シャットオフベント(26)よりもキャビティ(C)側でキャビティ(C)に通じるオーバーフローキャビティ(25)と、を備える。
オーバーフローキャビティを介してキャビティに通じるシャットオフベントから、シャットオフピンをリターンスプリングによって退避させた状態で、前記シャットオフベントを介して前記キャビティのエアを吸引して排出しながら、前記キャビティに樹脂を充填していく工程と、
前記リターンスプリングに抗して前記シャットオフピンにエア圧を掛け、前記シャットオフピンを前記シャットオフベントに進出させて前記シャットオフベントを閉塞した状態で、前記キャビティで充填された前記樹脂を保圧しながら熱硬化させる工程と、
を含むことを特徴とする樹脂成形方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0016】
(実施形態1)
本実施形態における樹脂成形金型10について、
図1〜
図6を参照して説明する。
図1〜
図4は、樹脂成形金型10の模式的断面図であり、樹脂成形金型10の動作順に示している。
図5および
図6は、樹脂成形金型10を構成する各部の平面配置の例を示している。なお、
図1などでは、説明を明解にするために、実際には同一の断面に現れない構成(例えば、エア供給路42)も合わせて示している。
【0017】
樹脂成形金型10は、型開閉可能な一対の金型(上型11および下型12)を備える。樹脂成形金型10は、例えば、樹脂成形装置のプレス部に設けられ、固定プラテンに対して、電動モータ駆動のトグルリンクによって可動プラテンを進退動させる公知のプレス機構(型開閉機構)によって、型開閉が行われる。例えば、上型11を固定型とし、下型12を可動型とした場合、上型11は固定プラテン、下型12は可動プラテンに固定して組み付けられる。
【0018】
樹脂成形金型10は、型閉じしてワークWがクランプされた状態で形成されるキャビティC(
図2参照)を備える。この樹脂成形金型10は、プランジャP(先端面の位置Pt)によって送り出されてキャビティCに充填された樹脂Rを、所定条件(保圧、温度、時間など)で熱硬化させて成形する。本実施形態では、ワークWとして、例えば、基板101(例えば、配線基板)上にマトリクス状に複数のチップ部品102(例えば、半導体チップ)がフリップチップ実装されたものを用いる。また、樹脂Rとして、例えば、タブレット状に形成されたエポキシ系などの熱硬化性樹脂を用いる。なお、
図1〜
図4では、プランジャPより右側の構成を省略して示している。
【0019】
樹脂成形金型10の上型11(一方の金型)は、上型ベース13と、上型チェイス14と、上型インサート15と、を備え、これらが組み付けられて構成される。この上型11は上方で図示しない固定プラテンに組み付けられる。上型ベース13の下面には上型チェイス14が組み付けられる。この上型チェイス14の下面には凹部14aが形成されており、この凹部14aに上型インサート15が収容されて組み付けられる。ここで、上型チェイス14の下面と上型インサート15の下面は面一となって、上型11のパーティング面11aを構成する。
【0020】
樹脂成形金型10の下型12(他方の金型)は、下型チェイス16と、下型インサート17と、ワークサポートブロック20と、ポット21と、を備え、これらが組み付けられて構成される。下型12は下方で図示しない可動プラテンに組み付けられる。下型チェイス16の上面には凹部16aが形成されており、この凹部16aに下型インサート17が収容されて組み付けられる。ここで、下型チェイス16の上面と下型インサート17の上面は面一となって、下型12のパーティング面12aを構成する。
【0021】
また、下型チェイス16および下型インサート17を貫通するようポット21が組み付けられる。このポット21には、公知のトランスファ機構によって進退動可能なプランジャPが挿入して組み付けられる。また、下型インサート17には貫通孔17aが形成されており、この貫通孔17a内の下型チェイス16の露出面にワークサポートブロック20が組み付けられる。これにより、下型12のパーティング面12aにはワークWがセットされる段差部(窪み部)が形成され、ワークサポートブロック20の上面にワークWがセットされる。このワークサポートブロック20によれば、ワークWの基板101の表面と下型12のパーティング面12aが面一となるように調整することができる。
【0022】
また、樹脂成形金型10は、リリースフィルムFを備える。本実施形態では、上型11のパーティング面11aにリリースフィルムFが貼り付くよう設けられる。リリースフィルムFは、上型チェイス14と上型インサート15との隙間や図示しないエア吸引路を利用した公知の吸引機構によって上型11のパーティング面11aに貼り付けられる(吸着保持される)。樹脂成形金型10では、リリースフィルムFが設けられない構成とすることもできるが、リリースフィルムFを介することで、上型11から容易にワークW(成形品)を取り出すことができる。リリースフィルムFは、上型11のパーティング面11aから容易に剥離するものであって、耐熱性、柔軟性、伸展性を有するフィルム材から構成される。リリースフィルムFとしては、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジンなどが好適に用いられる。
【0023】
また、樹脂成形金型10は、金型内部(上型11と下型12との間の空間)を気密状態(チャンバ)とするためのシール部28(例えばOリング)を備える。本実施形態では、下型12のパーティング面12aの外周部に形成された周溝にシール部28が嵌め込まれる。これにより、シール部28は、型閉じの際に上型11のパーティング面11aの外周部と、下型12のパーティング面12aの外周部とで押し潰されることによってキャビティCなどを含む金型内部を気密する。
【0024】
ここで、樹脂成形金型10は、型閉じした状態では、カル22と、ランナ・ゲート23と、キャビティCと、エアベント24と、を備え、これらが通じて構成される(
図2参照)。カル22は、ポット21と対向して上型11のパーティング面11aに形成された金型カル22a(窪み)で構成される(
図1参照)。カル22に接続するランナ・ゲート23は、上型11のパーティング面11aに形成された金型ランナ・ゲート23a(溝)で構成される(
図1参照)。ランナ・ゲート23に接続するキャビティCは、上型11のパーティング面11aに形成された金型キャビティCa(窪み)で構成される(
図1参照)。キャビティCに接続するエアベント24は、上型11のパーティング面11aに形成された金型エアベント24a(溝)で構成される(
図1参照)。
【0025】
また、樹脂成形金型10は、型閉じした状態では、エアベント24に接続してキャビティCに通じるオーバーフローキャビティ25を備える(
図2参照)。すなわち、エアベント24は、オーバーフローキャビティ25よりもキャビティC側でキャビティCに通じている。オーバーフローキャビティ25は、上型11のパーティング面11aに形成された金型オーバーフローキャビティ25a(窪み)および下型12のパーティング面11aに形成された金型オーバーフローキャビティ25b(窪み)で構成される(
図1参照)。オーバーフローキャビティ25を設けることで、エアと共に樹脂RをキャビティCから溢れさせることができる。すなわち、キャビティCからエアを排出させやすくすることができる。
【0026】
なお、キャビティCとオーバーフローキャビティ25との間にエアベント24が設けられる構成とすることにより、キャビティC内における樹脂圧を高め易く、オーバーフローキャビティ25への樹脂Rの流入量を調整しやすいため、より好ましいが必ずしも設けなくてもよい。この場合、例えばキャビティCとオーバーフローキャビティ25とが連通した構成とすることができる。具体的には、キャビティCにおいてチップ部品102が搭載された領域(成形品領域)の下流位置にオーバーフローキャビティ25に相当する領域を設けることができる。この場合、成形品領域を通過したアウトガスやエアが樹脂Rと共にオーバーフローキャビティ25に押し流されることで、成形品領域においてこれらを排除することができる。
【0027】
また、樹脂成形金型10は、型閉じした状態では、オーバーフローキャビティ25に接続してキャビティCに通じるシャットオフベント26を備える(
図2参照)。シャットオフベント26は、上型11のパーティング面11aに形成された金型シャットオフベント26a(溝)で構成される(
図1参照)。
【0028】
本実施形態では、エアベント24の延在方向と交差するエアベント24の高さ(深さ)よりも、シャットオフベント26の延在方向と交差するシャットオフベント26の高さ(深さ)が高い(深い)。このエアベント24により、樹脂成形後において、キャビティCで熱硬化された樹脂Rが、エアベント24で熱硬化された不要な樹脂Rと分離することが容易となる。また、エアベント24の他に、エアベント24よりもエア抵抗の低いシャットオフベント26を設けることで、エアの排出効率を高めることができる。
【0029】
そして、このようなシャットオフベント26よりもキャビティC側にオーバーフローキャビティ25が設けられている。キャビティCから樹脂Rが流れ出てきたとしても、オーバーフローキャビティ25で樹脂Rを留めておくことで後述のシャットオフピン40を可動させるタイミングの調整をし易くする(ある程度遅くする)ことができる。また、流動方向における断面積の小さなエアベント24を介して樹脂Rを流してオーバーフローキャビティ25に流し込んでいるために、オーバーフローキャビティ25への流入時間を長くしてシャットオフピン40を可動させるタイミングの調整をし易くすることができる。
【0030】
また、樹脂成形金型10は、型閉じした状態(
図2参照)では、シャットオフベント26に接続してキャビティCに通じる吸引チャンバ27を備える。吸引チャンバ27は、上型11のパーティング面11aに形成された金型吸引チャンバ27a(窪み)および下型12のパーティング面11aに形成された金型吸引チャンバ27b(窪み)で構成される(
図1参照)。
【0031】
また、樹脂成形金型10は、下型12のパーティング面12aでシャットオフベント26に連結するように開口するエア吸引路30を備える。エア吸引路30は、一端が金型吸引チャンバ27bの奥面で開口し、他端が金型外部に開口するよう下型12に設けられ、金型外部に設けられる減圧機構31(例えば真空ポンプを備える)に接続される(
図1参照)。この減圧機構31の駆動によって、エア吸引路30は、キャビティCなどを含む金型内部からエアを吸引して排出する。この際、大容積の吸引チャンバ27を介することで、エアの流動抵抗を低減したり、リリースフィルムFによるエア吸引路30の閉塞を防止したりしてエアの排出を効果的に行うことができ、エアの排出効率を高めることができる。
【0032】
また、樹脂成形金型10は、エア吸引路30が開口する位置(吸引チャンバ27内)に所定の隙間を空けて重なるように設けられるフィルムサポートブロック32を備える。このフィルムサポートブロック32は、エア吸引路30によって金型内部のエアが吸引、排出される際に、リリースフィルムFがフィルムサポートブロック32に支持されることで、エア吸引路30に吸い込まれないようにするために設けられる。また、フィルムサポートブロック32は、例えば複数の足部により吸引チャンバ27内で所定の位置に支持されてシャットオフベント26とエア吸引路30とを通じる空間32aを有することで、エアの排出が妨げられるのを防止している。
【0033】
また、樹脂成形金型10は、シャットオフベント26に進退動可能なシャットオフピン40(可動ピン)を備える。そして、樹脂成形金型10は、リターンスプリング41(内蔵スプリング)と、エア供給路42と、を備え、シャットオフピン40をエア圧で進退動可能な構造(エア圧可動式構造)としている。このシャットオフピン40によれば、成形過程で樹脂Rから発生するアウトガスおよびエアを容易に排出することができる。
【0034】
リターンスプリング41は、シャットオフベント26に対してシャットオフピン40を離隔させる。また、エア供給路42は、リターンスプリング41に抗してシャットオフピン40にエア圧を掛ける。これにより、シャットオフベント26が開放した状態では、シャットオフベント26の直上のシャットオフピン40はリターンスプリング41によって押し上げられる。他方、シャットオフベント26が閉塞した状態では、シャットオフベント26の直上のシャットオフピン40はエア圧(給気)により押し下げられる。このようなエア圧可動式のシャットオフピン40を用いることで、アクチュエータなどのような機構と比べて、樹脂成形金型10を簡易化、小型化することができる。
【0035】
シャットオフピン40は、通常シャットオフベント26から退避している状態とし、エア圧が掛けられることでシャットオフベント26へ進出している状態となる。シャットオフピン40がシャットオフベント26から退避している状態では、シャットオフベント26を介してエアの排出効率を高めることができる(
図2参照)。また、シャットオフピン40がシャットオフベント26に進出している状態(閉塞した状態)では、樹脂Rが必要以上に流れ出てしまうのを防止することができる(
図4参照)。
【0036】
ここで、エア圧可動式のシャットオフピン40のより具体的な構成について説明する。シャットオフピン40は、先端部40aと、中途部40bと、後端部40cと、を備える(
図1参照)。これら先端部40a、中途部40bおよび後端部40cは、軸を共通にしてこの順で径が拡がり、段付き状に形成されている。このシャットオフピン40は、シャットオフベント26に先端部40aが臨むように上型11のピン室43に設けられる。このピン室43は、先端部40aの径に合わせた第1室43aと、中途部40bの径に合わせた第2室43bと、後端部40cの径に合わせた第3室43cと、を備える。このため、ピン室43も段付き状に形成されている。
【0037】
第2室43bでは、第3室43c側に中途部40bが設けられ、中途部40bを付勢するように第1室43a側にリターンスプリング41が設けられる。このリターンスプリング41により、シャットオフベント26に対してシャットオフピン40が離隔(付勢)されている。また、第3室43cでは、後端部40cが設けられ、シャットオフピン40のストローク量が確保される。すなわち、リターンスプリング41は、シャットオフピン40のストローク量の範囲で伸縮する。
【0038】
そして、エア供給路42は、一端が第3室43cで開口し、他端が金型外部に開口するよう上型11に設けられ、金型外部に設けられる加圧機構44(例えばコンプレッサを備える)に接続される。このエア供給路42により、リターンスプリング41に抗してシャットオフピン40の後端部40cにエア圧が掛けられる。また、樹脂成形金型10は、シャットオフピン40とピン室43との間をシールするピンシール部45(例えばOリング)を備えることが好ましい。ピンシール部45は、例えば、後端部40cの外周に嵌め込むように設けられる。なお、加圧機構44は、例えば、樹脂成形金型10が工場内に配置される場合、その工場内でエアガン用に設けられるコンプレッサを用いることもできる。
【0039】
ところで、本実施形態では、
図5および
図6に示すように、一つのキャビティCに対して、複数のプランジャP、ポット21、カル22、ランナ・ゲート23、エアベント24、オーバーフローキャビティ25、シャットオフベント26、吸引チャンバ27およびエア吸引路30が設けられる。そして、キャビティCに通じる複数のシャットオフベント26に対応してシャットオフピン40が複数設けられる。
【0040】
図5に示す構成では、複数のシャットオフピン40に一括してエア圧が掛かるようエア供給路42が共通して設けられる。これによれば、複数のシャットオフピン40を同時に可動させることができる。また、エア供給路42の引き回しの構成が簡易化、小型化となる。
【0041】
また、
図6に示す構成では、複数のシャットオフピン40のそれぞれに個別にエア圧が掛かるようエア供給路42が複数設けられる。これによれば、樹脂Rの流れに応じて制御するよう、シャットオフタイミング(エアの注入タイミング)をずらすことができる。例えば、樹脂Rが早く到達するエアベント24に対応するシャットオフベント26を先に閉塞し、樹脂Rが遅れて到達するエアベント24に対応するシャットオフピン26を後に閉塞することができる。したがって、キャビティC全体から効率良くエアを排出することができる。
【0042】
次に、本実施形態における樹脂成形方法について、樹脂成形金型10を用いて説明する。まず、型開きした状態(上型11と下型12とを遠ざけた状態)において、ワークW、樹脂RおよびリリースフィルムFを金型内部にセットする(
図1参照)。ワークWは、チップ部品102を金型キャビティCaに向けて下型12のワークサポートブロック20上にセットされる。樹脂Rは、プランジャPが退避した状態で下型12のポット21内にセットされる。リリースフィルムFは、上型11のパーティング面11aに貼り付けられるようにセットされる。
【0043】
その後、上型11と下型12とを近づけていくと、
図1に示すように、リリースフィルムFを介して上型11のパーティング面11aと下型12のシール部28が接する(脱気開始位置)。これにより、金型内部にチャンバが形成される。この際、予め減圧機構31を駆動させてエア吸引路30を介してエアを吸引しておけば、金型内部にチャンバが形成された時点で、脱気が開始される。
【0044】
続いて、上型11と下型12とを更に近づけていくと、
図2に示すように、樹脂成形金型10が型閉じした状態となる。これにより、ポット21、カル22、ランナ・ゲート23、キャビティC、エアベント24、オーバーフローキャビティ25、シャットオフベント26および吸引チャンバ27の空間が通じるように形成される。そして、継続して減圧機構31を駆動させてエア吸引路30を介してキャビティCのエアを吸引して排出する(金型内部が更に減圧される)。ここで、シャットオフピン40をリターンスプリング41によってシャットオフベント26から退避させた状態(開放した状態)で、シャットオフベント26を介してキャビティCのエアを吸引して排出している。したがって、キャビティC内のエアが効率良く排出される。
【0045】
ところで、下型12のエア吸引路30からエアが吸引されると、上型12側に設けられているリリースフィルムFまでも吸引されるおそれがある。そこで、フィルムサポートブロック32をエア吸引路30が開口する位置に設けておくことで、エア吸引路30の開口にフィルムが貼り付いて塞がれ、エアを吸引(すなわち減圧)できなくなるのを防止している。なお、
図2では、リリースフィルムFがフィルムサポートブロック32と接して支持されている状態を示している。
【0046】
続いて、継続してキャビティCのエアを吸引して排出しながら、プランジャPをカル22側へ進出させてキャビティCに樹脂Rを充填していく(
図3参照)。これよれば、
図1および
図2に示す金型内部からのエア排出だけでなく、成形過程で樹脂Rから発生するアウトガスおよびエアを十分に排出することができる。
【0047】
続いて、
図3に示すように、例えばキャビティCにおける樹脂Rの充填が完了したところでリターンスプリング41に抗してエア供給路42からシャットオフピン40にエア圧を掛け、シャットオフピン40をシャットオフベント26に進出させてシャットオフベント26を閉塞する。エア圧を掛け始めるトリガは、例えば、キャビティCからエアベント24へ樹脂Rが流れ出すプランジャPの位置Ptから判定することができる。なお、シャットオフベント26の閉塞に係るトリガは後述する実施形態において示すような手法を含め任意の手法を用いることができる。そして、更にプランジャPをカル22側へ進出させた場合において、キャビティCに充填されて流れ出た樹脂Rはオーバーフローキャビティ25に充填される。更に、樹脂Rがオーバーフローキャビティ25から流れ出てシャットオフベント26に流れ込もうとしてもシャットオフピン40で堰き止めることができる(
図4参照)。すなわち、吸引チャンバ27やエア吸引路30側へ樹脂Rが必要以上に流れ出てしまうのを防止することができる。
【0048】
続いて、
図4に示すように、シャットオフベント26を閉塞した状態で、キャビティCで充填された樹脂Rを保圧しながら所定時間熱硬化させる。その後、型開きされて、成形品としてのワークWが取り出される。前述したように、成形過程で樹脂Rから発生するアウトガスおよびエアがキャビティCから十分に排出されるので、成形品の成形品質を向上させることができる。このため、基板101上にフリップチップ実装された複数のチップ部品102から構成されるワークWであっても、モールドアンダーフィルを行うことができ、未充填などの成形不良の発生を防止することができる。
【0049】
(実施形態2)
本実施形態における樹脂成形金型10Aについて、実施形態1と相違する点を中心に、
図7〜
図11を参照して説明する。
図7〜
図10は、樹脂成形金型10Aの模式的断面図であり、樹脂成形金型10Aの動作順に示している。
図11は、樹脂成形金型10Aを構成する各部の平面配置の例を示している。
【0050】
樹脂成形金型10Aでは、いわゆるトランスファ機構(実施形態1参照)を有する構成ではなく、プレス機構によって型締めのみならずプランジャPの進退動作を可能に構成されている。具体的には、樹脂成形金型10Aの下型12は、下型チェイス16、下型インサート17、ワークサポートブロック20と、ポット21と、下型ベース50と、スプリング51と、プランジャPと、を備えて、これらが組み付けられて構成される。下型ベース50は下方で図示しない可動プラテンに組み付けられる。この下型ベース50の上面にはプランジャPが組み付けられる。また、下型チェイス16に組み付けられているポット21にプランジャPが挿入されるように、下型ベース50の上面には複数のスプリング51を介して下型チェイス16が組み付けられる。これにより、プランジャPは、プレス機構による型開閉動作(スプリング51の動作)によってポット21内で相対的に進退動する。
【0051】
また、樹脂成形金型10Aは、上型11と下型12との間に設けられる中間型52を備える。中間型52は、貫通孔52a、52b、52c、52dを有し、型閉じした状態でカル22、キャビティC、オーバーフローキャビティ25および吸引チャンバ27を構成する(
図8参照)。中間型52を設けることで、ワークWとしてウエハ101のようにその外周端の断面がR状に面取りされているもの(
図7等参照)を用いたとしても樹脂漏れを防止して成形することができる。なお、ワークWとしてのウエハ101には、複数のチップ部品102がフリップチップ実装されたものを用いることができる。また、本実施形態に示すように外径円形のワークWとしては、ウエハのみならず、複数のチップ部品102や電子部品等が搭載された金属板のようなテンポラリキャリアなどを用いることもできる。もちろん、本実施形態において樹脂成形金型10Aとして示す構成において、ワークWは外形円形以外のものを用いることもできる。また、ウエハ101とチップ部品102との間はバンプで接続されるが、アンダーフィル材により充填されていてもよく、この装置内で樹脂Rでアンダーフィルしてもよい。
【0052】
樹脂成形金型10Aにおいて、カル22は、ポット21と対向して上型11のパーティング面11aに形成された金型カル22aと中間型52の貫通孔52aで構成される。また、キャビティCは、中間型52の貫通孔52bで外周を囲われて構成される。型閉じした状態では、貫通孔52bの縁(中間型52)の外側にウエハ101の外周部が配置されるような大きさの中間型52を用いる。これによれば、型閉じした状態では、貫通孔52bでのウエハ101の外周部が押さえ付けられる。ところで、中間型52を用いない金型では、ポット21から樹脂RをキャビティCに流入させるためにウエハ101の外周部を樹脂Rが通過することになるが、中間型52を用いることで、ウエハ101の外周部を樹脂Rが通過しないため、ウエハ101の外周部における樹脂Rの漏出を防止することができる。また、オーバーフローキャビティ25は、上型11のパーティング面11aに形成された金型オーバーフローキャビティ25aおよび中間型52の貫通孔52cで構成される。また、吸引チャンバ27は、上型11のパーティング面11aに形成された金型吸引チャンバ27aおよび中間型52の貫通孔52dで構成される。このため、中間型52を用いることで、オーバーフローキャビティ25に樹脂Rを送り出す際にウエハ101の外周部を樹脂Rが通過しないため、ウエハ101の外周部における樹脂Rの漏出を防止することができる。このように、ウエハ101の外周における樹脂Rの漏出を防止することができる。
【0053】
また、樹脂成形金型10Aは、キャビティCに充填される樹脂Rを検出するセンサ53と、センサ53による樹脂Rの検出をトリガとしてシャットオフピン40にエア圧が掛かるよう制御する制御部54と、を備える。センサ53としては、例えば、赤外線を検出光とするファイバーセンサ(光ファイバ)を用いることができる。このファイバーセンサの一端(先端)は、エアベント24に臨むよう設けられる。これによれば、例えば、エアベント24に流れ出してくる樹脂Rから放出される赤外線を検出してシャットオフベント26を閉塞させることもできる。なお、センサ53としては、温度センサや圧力センサなどを用いることができる。
【0054】
本実施形態では、ワークWとしてウエハ101を用いており、これに合わせてキャビティCの平面視形状が円形状となっている(
図11参照)。
図11に示すように、一つのキャビティCに対して、複数のプランジャP、ポット21、カル22、ランナ・ゲート23、エアベント24、オーバーフローキャビティ25、シャットオフベント26、吸引チャンバ27およびエア吸引路30が取り囲むように設けられる。キャビティCに通じる複数のエアベント24に対応してセンサ53が複数設けられる。そして、キャビティCに通じる複数のシャットオフベント26に対応してシャットオフピン40が複数設けられる。
【0055】
図11に示す構成では、複数のシャットオフピン40のそれぞれに個別にエア圧が掛かるようエア供給路42が複数設けられる。これによれば、樹脂Rの流れに応じて制御するよう、シャットオフタイミング(エアの注入タイミング)をずらすことができる。したがって、キャビティC全体から効率良くエアを排出することができる。例えば、平面視円形のキャビティCに沿って設けられるシャットオフベント26は、ポットPとの距離が異なるため、樹脂Rが到達するまでの時間が相違することになる。このため、シャットオフタイミングを別々のタイミングとして設定することができるようにしておくことが好ましい。
【0056】
次に、本実施形態における樹脂成形方法について、樹脂成形金型10Aを用いて説明する。まず、型開きした状態(上型11と下型12とを遠ざけた状態)において、ワークW、樹脂R、リリースフィルムFおよび中間型52を金型内部にセットする(
図7参照)。中間型52は、ワークWがワークサポートブロック20上にセットされた後、貫通孔52a、52b、52c、53dが所定位置にくるように下型12のパーティング面12a上にセットされる。これにより、例えば、貫通孔52b内にワークWのチップ部品102が収められる。その後、上型11と下型12とを近づけていくと、
図7に示すように、リリースフィルムFを介して上型11のパーティング面11aと下型12のシール部28が接する(脱気開始位置)。これにより金型内部にチャンバが形成され、脱気が開始される。
【0057】
続いて、上型11と下型12とを更に近づけていくと、
図8に示すように、樹脂成形金型10Aが型閉じした状態となる。この際、シャットオフピン40を退避させた状態で、継続してキャビティCのエアを吸引して排出しているので、キャビティC内のエアが効率良く排出される。
【0058】
続いて、継続してキャビティCのエアを吸引して排出しながら、上型11と下型12とを更に近づけ(スプリング51が縮む)、プランジャPをカル22側へ進出させてキャビティCに樹脂Rを充填していく(
図9参照)。これよれば、
図7および
図8に示す金型内部からのエア排出だけでなく、成形過程で樹脂Rから発生するアウトガスおよびエアを十分に排出することができる。
【0059】
続いて、
図9に示すように、例えば、加熱された樹脂Rの流出による赤外線をセンサ53で検出し、オーバーフローキャビティ25に樹脂Rが流入し始めた時点でシャットオフベント26を閉塞する。具体的には、制御部54は、センサ53で樹脂Rが検出されたことをトリガとして、シャットオフピン40にエア圧を掛けるよう加圧機構44を制御する。そして、上型11と下型12とを更に近づけ(スプリング51が更に縮む)、プランジャPをカル22側へ進出させた場合でも、キャビティCを充填して流れ出た樹脂Rをシャットオフピン40で堰き止めることができる(
図10参照)。すなわち、吸引チャンバ27やエア吸引路30側へ樹脂Rが必要以上に流れ出てしまうのを防止することができる。また、各シャットオフベント26はポットPとの距離が異なり樹脂Rが到達するまでの時間が相違することになるため、樹脂Rが到達するタイミングに合わせシャットオフさせるように制御することにより、不要に樹脂Rが流れ出てしまうのを防止することができる。
【0060】
続いて、
図10に示すように、シャットオフベント26を閉塞した状態で、キャビティCで充填された樹脂Rを保圧しながら所定時間熱硬化させる。その後、型開きされて、成形品としてのワークWが取り出される。前述したように、成形過程で樹脂Rから発生するアウトガスおよびエアがキャビティCから十分に排出されるので、成形品の成形品質を向上させることができる。