【解決手段】成形金型のキャビティ内で加熱加圧して当該キャビティの形状に熱硬化させる樹脂(R)を被供給物としてのワーク(W)にセットする樹脂セット方法では、まず、ワーク(W)上に樹脂(R)を供給する。次いで、開いた状態のチャンバ(11)にワーク(W)をセットする。次いで、チャンバ(11)を閉じた状態とし、チャンバ(11)の内部(11a)を減圧する。次いで、チャンバ(11)の内部(11a)の圧力を上昇させる。その後、チャンバ(11)を開いた状態とし、ワーク(W)を取り出す。
請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂セット方法によって前記樹脂が供給された前記被供給物を前記成形金型に搬入し、前記成形金型のキャビティ内で前記樹脂を加熱加圧して熱硬化させることを特徴とする樹脂成形方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、型開きした状態の成形金型にセットされたワーク上にシート樹脂を供給すると、ヒータによって予め成形温度に設定された成形金型の輻射熱によってシート樹脂が軟化してしまう。このため、例えば、凹凸部を有するワークとして複数のチップ部品が実装された基板を用いる場合、チップ部品を覆うシート樹脂と基板との間にエアを巻き込んだ状態のままシート樹脂が軟化するおそれがある。この場合、成形品の樹脂成形部にエア混入によるボイドが発生してしまうおそれがある。
【0005】
本発明の一目的は、樹脂セットにおいてエアが混入するのを抑制することのできる技術を提供することにある。本発明の一目的および他の目的ならびに新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0007】
本発明の一解決手段に係る樹脂セット方法は、成形金型のキャビティ内で加熱加圧して当該キャビティの形状に熱硬化させる樹脂を被供給物にセットする樹脂セット方法において、(a)被供給物上に樹脂を供給する工程と、(b)前記(a)工程の後、開いた状態のチャンバに前記ワークをセットする工程と、(c)前記(b)工程の後、前記チャンバを閉じた状態とし、前記チャンバの内部を減圧する工程と、(d)前記(c)工程の後、前記チャンバの内部の圧力を上昇させる工程と、(e)前記(d)工程の後、前記チャンバを開いた状態とし、前記被供給物を取り出す工程と、を含むことを特徴とする。前記被供給物は、ワークであることがより好ましい。また、前記被供給物は、リリースフィルムであることがより好ましい。これによれば、被供給物であるリリースフィルム又はワークと樹脂との隙間を低減することができ、未充填などの不具合を防止した成形をすることができる。
【0008】
ここで、前記(a)工程では、凹凸部を有する被供給物上に、前記凹凸部を覆うように樹脂を供給し、前記(d)工程では、前記樹脂を前記被供給物の前記凹凸部に沿わせることがより好ましい。これによれば、凹凸部と樹脂との隙間の発生を防止することができる。
【0009】
また、前記(c)工程では、前記樹脂を加熱しながら前記チャンバの内部を減圧することがより好ましい。これによれば、軟化した状態の樹脂で被供給物を覆うことができる。
【0010】
また、前記(c)工程の後、前記樹脂を冷却することがより好ましい。これによれば、樹脂が反応してしまうのを抑制することができる。
【0011】
また、前記(a)工程では、前記樹脂としてシート樹脂が用いられることがより好ましい。これによれば、樹脂を均一に供給した状態とすることができる。
【0012】
前記樹脂セット方法によって前記樹脂が供給された前記被供給物を成形金型に搬入し、前記成形金型のキャビティ内で前記樹脂を加熱加圧して熱硬化させることがより好ましい。これによれば、成形品の樹脂成形部において、エア混入によるボイドの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。本発明の解決手段によれば、樹脂セットにおいてエアが混入するのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0016】
本発明の実施形態に係る樹脂セット装置10およびこれを備える樹脂成形装置50について、
図1〜
図9を参照して説明する。
図1〜
図5は、動作中の樹脂セット装置10を説明するための図である。
図6〜
図9は、動作中の樹脂成形装置50の要部を説明するための図である。本実施形態では、樹脂Rが供給される被供給物としてワークWを用いる。
【0017】
まず、樹脂セット装置10の構成について説明する。樹脂セット装置10は、
図1などに示すように、樹脂RおよびワークW(被供給物)が載置されるチャンバ11を備える。チャンバ11は、一対のチャンバ部(一方を上チャンバ部12、他方を下チャンバ部13とする)を備えて開閉可能に構成される。ワークWは下チャンバ部13の表面13a(セット面)にセットされる。
【0018】
この樹脂セット装置10は、図示しない制御部によって昇降部が制御される。この制御部は、CPU(中央演算処理装置)と、ROM、RAMなどの記憶部とを備えて構成されるコンピュータであり、記憶部に記録された各種制御プログラムをCPUが読み出して実行することで、樹脂セット装置10を構成する各部の構成要素の動作を制御する。なお、本実施形態では、樹脂セット装置10を備える樹脂成形装置50が制御部を備えているものとして説明するが、樹脂セット装置10が単独で制御部を備えてもよい。
【0019】
これら上チャンバ部12および下チャンバ部13は、チャンバ11内における任意の圧力状態に耐える例えば金属等の材質により構成される。チャンバ11が閉じられた状態となると、凹部を有する上チャンバ部12と下チャンバ部13とが接することで、チャンバ11の内部11a(閉塞状態となる)が形成される(
図2参照)。同図では図示しないが上チャンバ部12と下チャンバ部13との間には適宜のシール機構を設けることができる。
【0020】
また、樹脂セット装置10は、チャンバ11の内部11aをエア吸引して減圧状態を形成する減圧部14(例えば真空ポンプ)を備える。減圧部14は、チャンバ11の内部11aが形成された状態において、上チャンバ部12に設けられたエア路15を介して内部11aをエア吸引して減圧状態を形成する。なお、この減圧部14は制御部によって制御される。
【0021】
また、樹脂セット装置10は、チャンバ11を加熱する加熱部16を備える。加熱部16(例えばカートリッジヒータ)は、下チャンバ部13の表面13aと平行に延在するように複数設けられる。また、樹脂セット装置10は、チャンバ11を冷却する冷却部17を備える。冷却部17(例えば冷媒が循環する冷却管)は、下チャンバ部13の表面13aと平行に延在するように複数設けられる。これにより、表面13aにセットされたワークWの樹脂Rを加熱したり、冷却したりすることができる。なお、これら加熱部16および冷却部17は制御部によって制御される。なお、加熱部16および冷却部17は、上チャンバ部12に設けてもよいし、上チャンバ部12と下チャンバ部13の両方に設けてもよい。
【0022】
ここで、
図2に示すように加熱部16より表面13a側に冷却部17を設けることができる。これにより、下チャンバ部13の表面13aに対して加熱部16からの熱を遮るように冷却部17を作動させることができる。例えば、表面13aにセットされたワークWの樹脂Rが加熱された状態から冷却された状態へ素早く移行させることができる。
【0023】
次に、
図6以降に示す樹脂成形装置50の構成について説明する。樹脂成形装置50は、公知の型開閉機構によって開閉可能に構成される成形金型60を含むプレス部を備える。この成形金型60は、プレス部により開閉される一対の金型(一方を上型61、他方を下型62とする)を備えて構成される。
【0024】
また、自動機としての樹脂成形装置50では、プレス部が図示しない供給部及び収納部と共に設けられる。供給部では、ワークW(ここでは被成形品である)や樹脂Rをプレス部へ供給する準備、処理がされる。この供給部に樹脂セット装置10が設けられる。また、収納部では、樹脂成形されたワークW(ここでは成形品である)を収納する準備、処理がされる。また、供給部、プレス部、収納部間のワークWや樹脂Rの搬送には、プレス部への搬入を行うローダ(図示せず)と、プレス部からの搬出を行うアンローダ(図示せず)が用いられ、これらは公知の機構で構成される。なお、型開閉機構、ローダおよびアンローダは制御部によって制御される。このように、後述するような搬送時における理由から樹脂セット装置10と樹脂成形装置50とを一体的に供えた構成とするのが好ましいが、これらを別体的に設けてもよい。
【0025】
上型61は、上クランパ63と、キャビティ駒64と、上ベース65とを備え、これら金型ブロック(例えば合金工具鋼から構成される)が組み付けられて構成されている。上クランパ63には、厚み方向に貫通孔63aが形成されており、この貫通孔63aには、キャビティ駒64が設けられる。キャビティ駒64は、上ベース65に固定して支持されている。本実施形態では、上型61がキャビティ凹部67を備えるが、キャビティ凹部67の側部が上クランパ63で構成され、キャビティ凹部67の奥部がキャビティ駒64で構成される。また、上型61は、上クランパ63と上ベース65との間に設けられる弾性部材66(例えばバネ)を備える。この弾性部材66を介して上クランパ63が上ベース65に組み付けられ、型開閉方向に往復動可能に構成される。なお、成形金型60が型閉じした状態ではキャビティ凹部67が閉塞してキャビティCを構成する(
図7参照)。なお、このような成形金型60においては、キャビティ凹部67の金型面を被覆することで樹脂Rと型面との接触を防止して離型を促進し、摺動部分からの樹脂漏れを防止するリリースフィルムを用いることができる。
【0026】
また、上型61は、上クランパ63の貫通孔63aの内周面とキャビティ駒64の外周面との間に設けられるシール部材70(例えばOリング)を備える。また、樹脂成形装置50は、キャビティCをエア吸引して真空状態を形成する真空部71(例えば真空ポンプ)を備える。真空部71は、型閉じによってキャビティCが形成された状態において、上型61の上クランパ63に設けられたエア路72を介してキャビティCをエア吸引して真空状態を形成する。また、樹脂成形装置50は、上型61を加熱する加熱部68を備える。加熱部68(例えばカートリッジヒータ)は、キャビティ駒64の下面(キャビティ凹部67の奥面)と平行に延在するように複数設けられる。なお、真空部71および加熱部68は制御部によって制御される。
【0027】
下型62は、下クランパ73と、インサート74と、下ベース75とを備え、これら金型ブロックが組み付けられて構成されている。下クランパ73には、厚み方向に貫通孔73aが形成されており、この貫通孔73aには、インサート74が設けられる。インサート74は、下ベース75に固定して支持されている。この下型62では、インサート74の上面にワークWがセットされる。また、下型62は、下クランパ73と下ベース75との間に設けられる弾性部材76(例えばバネ)を備える。この弾性部材76を介して下クランパ73が下ベース75に組み付けられ、型開閉方向に往復動可能に構成される。
【0028】
また、下型62は、下クランパ73の貫通孔73aの内周面とインサート74の外周面との間に設けられるシール部材79(例えばOリング)を備える。また、下型62は、下クランパ73の上面に設けられ、型閉じの際に上型61の上クランパ63の下面に接するシール部材80(例えばOリング)を備える。また、樹脂成形装置50は、キャビティCをエア吸引して真空状態とさせる真空部81(例えば真空ポンプ)を備える。真空部81は、型閉じによってキャビティCが形成された状態において、下型62の下クランパ73に設けられたエア路82を介してキャビティCをエア吸引して真空状態を形成する。また、樹脂成形装置50は、下型62を加熱する加熱部78を備える。加熱部78(例えばカートリッジヒータ)は、インサート74の上面と平行に延在するように複数設けられる。なお、真空部81および加熱部78は制御部によって制御される。
【0029】
次に、樹脂セット方法(樹脂セット装置10の動作方法)について説明する。まず、ワークW上に樹脂Rを供給(搭載)した後、
図1に示すように、開いた状態のチャンバ11に樹脂Rが供給されたワークWをセットする。チャンバ11へのワークWのセットは、ローダによって行われる。
【0030】
樹脂RがセットされるワークWとして、例えば、複数のチップ部品100(半導体チップなど)が微細なバンプによりフリップチップ実装された基板101(例えば、配線構造が形成されたテンポラリキャリア、配線基板、ウェハなど)を用いる。このようなワークWでは、チップ部品100と基板101との間には、狭隘な箇所(バンプ高さ分や狭ピッチのバンプ間のギャップ)が形成されることとなる。この場合、ワークWは、基板101上に複数のチップ部品100が実装されることで凹凸部102を有していることとなる。本実施形態では、凹凸部102を有するワークW上に、凹凸部102を覆うように樹脂Rを供給している。また、樹脂Rとしてはシート樹脂(シート状のエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂)を用いる。シート樹脂によれば、ワークWの大きさが大判(例えば12インチのウェハレベルや、例えば1辺の長さが300mmを超えるような大型のパネル状のもの)であってもワークWを覆うことで均一に供給した状態とすることができる。
【0031】
ここで、シート樹脂である樹脂Rは、例えば保護シートで保護したものを用いることができる。この場合、片面が保護シートで保護されたものを用いるときには、その保護シートをワークWの反対側に配置して、保護シートと共にワークWにセットすることもできる。この場合、保護シートにより樹脂Rの劣化や汚れ等を防止できる。この際には、樹脂RをワークWにセットした後に、保護シートを剥離すればよい。また、シート樹脂である樹脂Rを複数枚重ねて用いてもよい。また、樹脂Rは、ワークW上に任意の面積を有するシート樹脂(樹脂R)を複数枚並べて用いてもよい。
【0032】
続いて、
図2に示すように、チャンバ11を閉じた状態とし、チャンバ11の内部11aを減圧状態とする。このとき、樹脂Rを加熱しながらチャンバ11の内部11aを減圧する。具体的には、昇降部によって下チャンバ部13に対して上チャンバ部12を近づけていく。このとき、減圧部14によってエア吸引を開始しておくことで、内部11aが形成されて直ぐに減圧することができる。また、加熱部16によりチャンバ11の内部11aを加熱しておくことで、ワークWと樹脂Rを加熱し、樹脂Rを軟化させることができる。ここで、ワークWが載置される下チャンバ部13に加熱部16が設けられることで、ワークWを熱伝導により直接加熱して速やかに加熱することができる。このように、加熱部16によってワークW上の樹脂Rが加熱されていることにより、樹脂成形装置50における加熱時間を短縮化して成形時間を短縮することができる。なお、下チャンバ部13を加熱しておくことで、その輻射熱によって上チャンバ部12を含むチャンバ11全体を加熱し、樹脂Rを上面からも加熱し軟化させ易くすることができる。
【0033】
これにより、減圧されたチャンバ11内において軟化した状態(柔らかい状態)の樹脂RでワークWを覆った状態とすることができる。この場合、
図2に示すように、例えばワークWの外周等において樹脂Rが基板101に密着した状態とすることもでき、樹脂Rと基板101とに挟まれた空間が減圧された状態となる。この際に、適宜に減圧と加熱を行った後、内部11aの減圧状態において樹脂Rの架橋反応が進行しすぎないように加熱部16は所定のタイミングで停止してもよい。なお、樹脂Rとして用いるシート樹脂が大気雰囲気下において柔らかい状態であれば、加熱部16で加熱しなくともよい。
【0034】
続いて、
図3に示すように、チャンバ11を閉じた状態において、チャンバ11の内部11aの圧力を上昇させる。具体的には、減圧部14を停止しチャンバ11を開放することによって、チャンバ11の内部11aが大気開放されればよい。ここで、チャンバ11の内部11aの圧力を上昇させる場合には、大気開放する方法のみならず、
図2を参照して説明した減圧状態の内部11aの圧力より高くするために、減圧状態を解除したり、積極的に加圧したりすることが含まれる。このようにチャンバ11の内部11aの圧力が相対的に高くなることで樹脂RがワークW側に押し付けられる。また、この際にワークWと樹脂Rとの隙間を低減することができる。本実施形態では、凹凸部102に沿うように樹脂RをワークWに密着させることができる。これによれば、凹凸部102と樹脂Rとの隙間の発生を防止することができる。
【0035】
なお、エア路15に減圧部14とは別に加圧部(例えばコンプレッサ)を接続しておき、減圧部14を停止した後、加圧部によってチャンバ11の内部11aの圧力を高くすることもできる。また、エア路15に流量計も接続しておき、流量計で計測しながらチャンバ11の内部11aの圧力を調整することもできる。
【0036】
続いて、
図4に示すように、チャンバ11を閉じた状態において、ワークWおよび樹脂Rを冷却することも可能である。具体的には、冷却部17によって下チャンバ部13を冷却することで、この表面13a上にあるワークWの樹脂Rが冷却され、樹脂Rが熱を有していても架橋反応が進行するのを抑制することができ、ワークWと樹脂Rとを成形金型60に搬送するための猶予が確保できる。なお、樹脂Rを加熱して軟化させてワークWを覆った後であれば、冷却部17によって樹脂Rを冷却してもよい。
【0037】
続いて、
図5に示すように、チャンバ11を開いた状態とする。その後、ローダによってチャンバ11からワークWを取り出す。このような樹脂セット方法によれば、ワークWと樹脂Rとの間からエアを除去した状態でワークWに樹脂Rをセットすることができる。すなわち、樹脂セットにおいてエアが混入するのを抑制することができる。換言すれば、樹脂セットにおいてワークWと樹脂Rとの間に空気が含まれていない状態とすることができる。同図に示すように、チップ部品100と基板101との間には樹脂Rで充填されていない空間が存在することも考えられる。しかしながら、この領域を減圧させたうえで溶融した樹脂Rで覆っているため、チップ部品100下における空間から大気に含まれる成分(空気や水蒸気)を除去した状態を維持することが可能となる。
【0038】
次に、樹脂成形方法(樹脂成形装置50の動作方法)について説明する。まず、前述した樹脂セット方法によって樹脂Rが供給されたワークWを、
図6に示すように、成形金型60に搬入する。具体的には、ローダによって樹脂セット装置10から型開きした成形金型60へワークWを搬送して、下クランパ73の上面にセットする。この場合、上述の通り、冷却部17により樹脂Rが冷却されていれば、所定の温度になることで硬化が進行する熱硬化性樹脂を用いていても、搬送中に硬化が進行してしまって成形金型60において加熱加圧したときに流動し難くなるというような状態となることを防止できる。
【0039】
続いて、
図7に示すように、成形金型60を型閉じしていき、成形金型60のキャビティCを減圧(真空)状態とする。具体的には、型開閉機構によって下型62に対して上型61を近づけていく。これにより、キャビティCに樹脂Rが収容される。このとき、真空部71によってエア吸引を開始しておくことで、キャビティCが形成されて直ぐに減圧して真空状態とすることができる。
【0040】
続いて、所定の成形圧となるまで、
図8に示すように、更に成形金型60を型閉じて圧縮成形を行う。このとき、加熱部78によって成形金型60は成形温度に加熱されているので、樹脂Rは成形金型60によって加熱、加圧される。この場合、ワークWでは、チップ部品100と基板101との間には、狭隘な箇所(バンプ高さ分や狭ピッチのバンプ間のギャップ)が形成されている。このような狭隘な箇所があっても、上述したように、チップ部品100下における空間から大気に含まれる成分(空気や水蒸気)が除去されているため、未充填なく充填することができ、ボイドの発生を抑制してアンダーフィルを行うことができる。その後必要十分な加熱加圧を行い、成形金型60のキャビティCの形状に樹脂Rを熱硬化して完了させる。
【0041】
続いて、
図9に示すように、成形金型60を型開きした状態とし、成形金型60からワークW(成形品)を搬出する。具体的には、型開閉機構によって下型62に対して上型61を遠ざけていく。アンローダによって型開きした成形金型60からワークWが取り出され、収納部に搬出される。
【0042】
本実施形態では、樹脂成形前に前述の樹脂セット方法によってワークWと樹脂Rとの間にエアが混入するのを抑制している。このため、ワークW(成形品)の樹脂成形部において、エア混入によるボイドの発生を抑制することができる。また、ワークWでは、チップ部品100と基板101との狭隘な箇所があっても、エアの混入が抑制され(大気に含まれる空気や水蒸気等が除去され)ているため、ボイドの発生を抑制してアンダーフィルを確実に行うことができる。
【0043】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0044】
前記実施形態では、ワークを覆う樹脂として、シート樹脂を用いた場合について説明した。これに限らず、樹脂として顆粒樹脂を用い、加熱、溶融して表面張力によって一体化した状態(均された状態)でワークを覆うようにすることもできる。これによれば、顆粒樹脂間からエアを取り除いてワークを樹脂で覆うことができる。また、顆粒樹脂を予め加圧してシート状に形成してシート樹脂として用いることもできる。
【0045】
また、前記実施形態では、被供給物の一例としてのワークとして複数のチップ部品がフリップチップ実装された基板を用いた場合について説明した。これに限らず、ワークとして平坦な放熱板やシールド板などを用いてもよく、さらにこれらが熱伝導や電導のための凹凸部を有するものであってもよい。さらに、ワークとしては、チップを設けずバンプのみを搭載したウェハであってもよいし、リング部材の片面に粘着フィルムを貼り付け、粘着フィルムにチップ部材などを貼り付けた構成とすることもできる。これらの場合においてもワークとシート樹脂との隙間の発生を防止し、隙間があったとしても大気に含まれる空気や水蒸気等を除去して未充填を防止することができる。
【0046】
さらに、被供給物は、リリースフィルムであってもよい。この場合、例えば
図6に示した樹脂成形装置50を上下反転したような構成として、リリースフィルムを下型に供給する構成が考えられる。この場合には、リリースフィルム上にシート樹脂である樹脂Rをセットしたうえで、樹脂成形装置50に搬入し別途搬入するワークWを樹脂成形することが考えられる。この場合にも、リリースフィルムと樹脂Rとの間に隙間にエアが挟み込まれていても除去することができるため、残エアが膨張して成形品に跡が残るような成形における不具合の発生を防止することができる。