特開2017-209920(P2017-209920A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-209920(P2017-209920A)
(43)【公開日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂製多層シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20171102BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20171102BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20171102BHJP
   C08K 13/00 20060101ALI20171102BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20171102BHJP
【FI】
   B32B27/18 A
   C08L69/00
   C08K3/00
   C08K13/00
   B32B27/36 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-105922(P2016-105922)
(22)【出願日】2016年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(72)【発明者】
【氏名】永野 圭哉
(72)【発明者】
【氏名】谷村 博之
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AA00B
4F100AA17B
4F100AA19B
4F100AA21B
4F100AA22B
4F100AA23B
4F100AA24B
4F100AA25B
4F100AA29B
4F100AA31B
4F100AA33B
4F100AH02A
4F100AH02B
4F100AH03A
4F100AH07A
4F100AH10B
4F100AK45A
4F100AK45B
4F100AL05A
4F100AL05B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA06B
4F100CA07A
4F100CA07B
4F100CA13B
4F100GB01
4F100GB07
4F100GB08
4F100GB31
4F100GB32
4F100JD10B
4F100JJ03
4F100JK01
4F100JL09
4F100JN01
4F100JN06B
4F100YY00A
4F100YY00B
4J002CG001
4J002CG011
4J002DE096
4J002DE097
4J002DE106
4J002DE116
4J002DE126
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE186
4J002DE187
4J002DK007
4J002EW068
4J002EW088
4J002EW118
4J002FD078
4J002FD096
4J002FD097
4J002FD206
4J002FD207
4J002GA00
4J002GL00
4J002GN00
(57)【要約】
【構成】 ポリカーボネート樹脂(A)と近赤外線反射顔料(B)と無機系近赤外線吸収剤(C)と酸化防止剤(D)とを含むコア層であって、該近赤外線反射顔料(B)が、クロム、鉄等から選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む複合酸化物顔料であり、該近赤外線反射顔料(B)の量が該ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.01〜20重量部であり、該無機系近赤外線吸収剤(C)が、該ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.001〜2重量部であるコア層と、その一方の表面が該コア層に密着配置されたキャップ層を備えることを特徴とする、ポリカーボネート樹脂製多層シート。
【効果】 本発明のポリカーボネート樹脂製多層シートは、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐熱性、機械物性等を損なうことなく、特別な工程が不要なため安価で、日射反射性、可視光透過性、日射透過性および耐候性に優れる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)と近赤外線反射顔料(B)と無機系近赤外線吸収剤(C)と酸化防止剤(D)とを含むコア層であって、該近赤外線反射顔料(B)が、クロム、鉄、コバルト、チタン、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、およびニッケルから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む複合酸化物顔料であり、該近赤外線反射顔料(B)の量が該ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.01〜20重量部であり、該無機系近赤外線吸収剤(C)が、該ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.001〜2重量部であるコア層と、ポリカーボネート樹脂(A)と紫外線吸収剤(E)とを含みその一方の表面が該コア層に密着配置されたキャップ層であって、該紫外線吸収剤(E)が、ベンゾトリアゾール、トリアジン、シアノアクリレートまたはこれらの一種以上を含む組合せであるキャップ層を備えることを特徴とする、ポリカーボネート樹脂製多層シート。
【請求項2】
前記近赤外線反射顔料(B)の平均粒径が2μm以下である、請求項1記載のポリカーボネート樹脂製多層シート。
【請求項3】
前記無機系近赤外線吸収剤(C)が、分光光度計で測定した近赤外線吸収極大ピークが950〜1300nmの範囲にある六ホウ化物および/またはタングステン系酸化物である、請求項1記載のポリカーボネート樹脂製多層シート。
【請求項4】
前記酸化防止剤(D)が、以下の一般式(1)で表される環状亜リン酸エステル系酸化防止剤である、請求項1記載のポリカーボネート樹脂製多層シート。
一般式(1):
(1)
(式中、R1、R2、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基を表し、R3は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは単結合、硫黄原子もしくは−CHR6基(R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)を表す。Aは炭素数1〜8のアルキレン基または*−COR7基(R7は単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を、*は酸素側の結合手であることを示す。)を表す。Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、もう一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【請求項5】
前記酸化防止剤(D)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.01〜0.5重量部である、請求項1記載のポリカーボネート樹脂製多層シート。
【請求項6】
一般式(1)で表される環状亜リン酸エステル系酸化防止剤が、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンである、請求項1記載のポリカーボネート樹脂製多層シート。
【請求項7】
前記紫外線吸収剤(E)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して1〜20重量部である、請求項1記載のポリカーボネート樹脂製多層シート。
【請求項8】
前記キャップ層の厚さが、10〜200μmである、請求項1記載のポリカーボネート樹脂製多層シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光透過性、日射反射性、日射透過性および耐候性に優れるポリカーボネート樹脂製多層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形品に赤外線や近赤外線などの熱線を反射させる特性、すなわち日射反射性を付与する場合には、酸化チタン、雲母、酸化アルミニウムなどのフィラーを成形品の表面に薄く積層する方法(特許文献1、特許文献2)、顔料を溶剤に分散させた塗料を成形品の表面に塗布する方法が知られている(特許文献3)。
【0003】
また、他の方法として成形品の表面に金属蒸着や金属層を積層するなどの二次加工を施す方法も利用されてきた(特許文献4)。
【0004】
しかしながら、フィラーを用いる特許文献1や特許文献2の場合には、良好なフィラー分散性を得るのが難しいため成形品の外観が損なわれることがあった。また、顔料を分散させた塗料を塗布する特許文献3の場合には、有機溶剤を用いる必要があるため環境に負荷が掛かる場合があった。さらに、金属蒸着等を行う特許文献4の場合には、金属蒸着等のための特別な工程が必要であるためコスト上昇の要因となる場合があった。また、ポリカーボネート樹脂に無機系近赤外線吸収剤を添加する特許文献5の場合には、近赤外線を吸収するためテラスの屋根材等の多層シートに用いた場合、テラス内部の温度を上昇させるとの問題があった。
【0005】
このように特許文献1〜5に記載の従来技術は、いずれも良好な外観で日射反射性を備える安価材料としての要求を充分に満足し得るものではなかった。また、近年、インテリア、エクステリア、車両用部材向け材料として、上記の日射反射性に加え、可視光透過性及び日射透過性にも優れる材料の強い要求があるが、これら従来技術は、当該要求を充分に満足し得るものでもなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−13987号公報
【特許文献2】特開平6−144874号公報
【特許文献3】米国特許第6174360号
【特許文献4】特開2010−64295号公報
【特許文献5】特許4839005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリカーボネート樹脂が本来有する、耐熱性、機械物性等を損なうことなく、特別な工程が不要なため安価で、可視光透過性、日射反射性、日射透過性および耐候性に優れるポリカーボネート樹脂製多層シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明者らは、ポリカーボネート樹脂に近赤外線反射顔料と無機系近赤外線吸収剤と酸化防止剤とを必須成分として特定割合配合したポリカーボネート樹脂組成物をコア層とし、そのコア層にポリカーボネート樹脂と紫外線吸収剤を含むキャップ層とを密着配置した多層シートが、驚くべきことに、ポリカーボネート樹脂が本来有する良好な機械物性を損なうことなく、特別な工程が不要なため安価で、日射反射性、可視光透過性、日射透過性および耐候性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明のポリカーボネート樹脂製多層シートは、ポリカーボネート樹脂(A)と近赤外線反射顔料(B)と無機系近赤外線吸収剤(C)と酸化防止剤(D)とを含むコア層であって、該近赤外線反射顔料(B)が、クロム、鉄、コバルト、チタン、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、およびニッケルから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む複合酸化物顔料であり、該近赤外線反射顔料(B)の量が該ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.01〜20重量部であり、該無機系近赤外線吸収剤(C)が、該ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.001〜2重量部であるコア層と、ポリカーボネート樹脂(A)と紫外線吸収剤(E)とを含みその一方の表面が該コア層に密着配置されたキャップ層であって、該紫外線吸収剤(E)が、ベンゾトリアゾール、トリアジン、シアノアクリレート又はこれらの一種以上を含む組合せであるキャップ層を備えることを特徴とする、ポリカーボネート樹脂製多層シートを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリカーボネート樹脂製多層シートは、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐熱性、機械物性等を損なうことなく、特別な工程が不要なため安価で、可視光透過性、日射反射性、日射透過性および耐候性に極めて優れる。すなわち、本発明によれば、近赤外線反射顔料と無機系近赤外線吸収剤との併用により透明性(可視光透過性)と熱線カット率(日射反射性および日射透過性)を向上させることができる。このような本発明のポリカーボネート樹脂製多層シートは、インテリア、エクステリア、建装材、産業資材、農業資材、車両用部材、船舶用部材、および航空機用部材等の様々な用途の樹脂製多層シートとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、発明者らは、当業者が本開示を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
(実施の形態)
実施の形態に係るポリカーボネート樹脂製多層シートは、ポリカーボネート樹脂(A)と近赤外線反射顔料(B)と無機系近赤外線吸収剤(C)と酸化防止剤(D)とを含むコア層であって、該近赤外線反射顔料(B)がクロム、鉄、コバルト、チタン、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、およびニッケルから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む複合酸化物顔料であり、該近赤外線反射顔料(B)の量が、該ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.01〜20重量部であるコア層であり、該無機系近赤外線吸収剤(C)が、該ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.001〜2重量部であるコア層と、ポリカーボネート樹脂(A)と紫外線吸収剤(E)とを含みその一方の表面が該コア層に密着配置されたキャップ層であって、該紫外線吸収剤(E)が、ベンゾトリアゾール、トリアジン、シアノアクリレート又はこれらの1種以上を含む組合せであるキャップ層を備えるものである。
【0014】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体である。代表例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。また、本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)として、2,2―ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、分岐剤およびホスゲンから製造された分岐状ポリカーボネート樹脂や、植物由来のイソソルバイド(イソソルビド)が主原料のバイオポリカーボネート樹脂等も挙げられる。上記のポリカーボネート樹脂を単独または2種以上混合して使用してもよい。
【0015】
前記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられ、これらは単独でまたは2種類以上を混合して使用される。これらの他にも、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4´−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0016】
さらに、前記ジヒドロキシジアリール化合物と、例えば以下に示す3価以上のフェノール化合物とを混合して使用してもよい。
【0017】
前記3価以上のフェノール化合物としては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−[4,4−(4,4´−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン等が挙げられる。
【0018】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、特に制限はないが、シートにする際の成形加工性、機械物性の面より通常10000〜100000であり、好ましくは15000〜35000、特に好ましくは18000〜30000の範囲である。また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。また、予め分子量の異なるポリカーボネート樹脂を2種以上準備しておき、それらをブレンドして所望の分子量に調整しても何ら差し支えない。
【0019】
本発明にて使用される近赤外線反射顔料(B)は、特に限定されるものでもないが、クロム、鉄、コバルト、チタン、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、およびニッケルから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む複合酸化物顔料が好ましく用いられる。当該複合酸化物顔料としては、クロム、鉄、およびコバルトから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む黒色系顔料、亜鉛、鉄、チタン、アンチモン、およびニッケルから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む黄色系顔料、チタン、アンチモン、クロム、鉄、アルミニウム、および亜鉛から選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む茶色系顔料、コバルト、ニッケル、亜鉛、およびチタンから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む緑色系顔料、ならびにコバルトおよびアルミニウムを含む青色系顔料などが挙げられる。
【0020】
クロム、鉄、およびコバルトから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む黒色系複合酸化物顔料としては、例えば、Cr:Fe:CoO、Cr:Fe、(Co,Fe)(Fe,Cr)の組成式で表される化合物が挙げられる。具体的に入手可能な商品としては、42−703A(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、42−706A(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、42−707A(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、42−708A(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株)))、Black27(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、Black3500(複合酸化物顔料、アサヒ化成工業製)等が挙げられる。
【0021】
また、亜鉛、鉄、チタン、アンチモン、およびニッケルから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む黄色系複合酸化物顔料としては、(Zn,Fe)Fe、(Ti,Sb,Ni)Oの組成式で表される化合物が挙げられる。具体的に入手可能な商品としては、Yellow119(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、Yellow53(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、Yellow5150(複合酸化物顔料、アサヒ化成工業製)等が挙げられる。
【0022】
さらに、チタン、アンチモン、クロム、鉄、アルミニウム、および亜鉛から選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む茶色系複合酸化物顔料としては、(Ti,Sb,Cr)O、FeTiO:Al、(Zn,Fe)(Fe,Cr)の組成式で表される化合物が挙げられる。具体的に入手可能な商品としては、Brown24(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、Brown48(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、Brown33(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))等が挙げられる。
【0023】
コバルト、ニッケル、亜鉛、およびチタンから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む緑色系複合酸化物顔料としては、(Co,Ni,Zn)TiO等が挙げられる。具体的に入手可能な商品としては、Green50(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))等が挙げられる。
【0024】
コバルト、およびアルミニウムを含む青色系複合酸化物顔料としては、CoAl等の組成式で表される化合物が挙げられる。具体的に入手可能な商品としては、Blue28(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))等が挙げられる。
【0025】
これらの複合酸化物顔料の中でも、クロム、鉄、およびコバルトから選ばれた少なくとも2種以上の元素を含む黒色系複合酸化物顔料(例えば、Cr:Fe:CoO、Cr:Fe、(Co,Fe)(Fe,Cr)の組成式で表される化合物)である42−703A(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、42−706A(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、42−707A(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))、42−708A(複合酸化物顔料、東罐マテリアル・テクノロジー(株))が、得られるシートの透明性の観点から好ましく用いられる。
【0026】
本発明にて使用される近赤外線反射顔料(B)の量は、ポリカーボネート樹脂100重量あたり、0.01重量部〜20重量部であり、好ましくは0.05〜15重量部である。近赤外線反射顔料(B)の量が0.01重量部よりも少ないと、得られる樹脂シートの日射反射性が十分に得られない場合があり、近赤外線反射顔料(B)の量が20重量部より多い場合は、ポリカーボネート樹脂が分子量低下を起こし、成形加工が困難になるので好ましくない。
【0027】
本発明にて使用される近赤外線反射顔料(B)の平均粒径は、特に制限はないが、2μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下である。平均粒径が2μmより大きいと、得られる樹脂シートの可視光透過性が悪化する場合がある。
【0028】
本発明にて使用される近赤外線反射顔料(B)は、ポリカーボネート樹脂(A)へ配合する際、近赤外線反射顔料(B)を高濃度に含有するマスターバッチを作製し希釈して用いてもよい。この近赤外線反射顔料(B)のマスターバッチへの配合量は、通常0.01〜20重量部であり、好ましくは1〜10重量部であり、更に好ましくは1〜5重量部である。このマスターバッチのベースとなるビヒクル(マトリクス樹脂)としては、特に限定は無く、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル樹脂が挙げられ、好ましくはポリカーボネート樹脂である。
【0029】
本発明にて使用される近赤外線反射顔料(B)を使用する際、ポリカーボネート樹脂多層シートの色相調整に限界がある場合には、赤外線透過性粉体を用いることもできる。
【0030】
このような赤外線透過粉体としては、特に制限がなく、一般的な無機顔料や有機顔料が用いられるが、無機顔料としてはチタンホワイト、有機顔料としてはペリレン系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、銅フタロシアニン系(ブルー)顔料、ベンズイミダゾロン系顔料等が好適である。無機系顔料のチタンホワイトとして、具体的に市販にて入手可能な商品としては、タイピユアR706(酸化チタン、デュポン製)、TITANIX JR−1000(酸化チタン、テイカ(株)製)、PCF105(酸化チタン、石原産業(株)製)等が挙げられる。
【0031】
上記の有機顔料であるペリレン系顔料としては、具体的に市販にて入手可能な商品としては、Lumogen Black FK4280(BASFジャパン(株)製)、Lumogen Black FK4281(BASFジャパン(株)製)、Paliogen Black S0084(BASFジャパン(株)製)、Paliogen Black L0086(BASFジャパン(株)製)が挙げられる。ベンズイミダゾロン系顔料としては、SYMULERFAST YELLOW4192(DIC(株)製)、CHOMOFINE YELLOW2080(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW2081(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW2085(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW3700LD(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW3701(大日本精化工業(株)製)が、商業的に入手可能である。アゾ系顔料としては、SYMULERFAST YELLOW10GH(DIC(株)製)、SYMULERFAST YELLOW8GTF(DIC(株)製)、CHOMOFINEYELLOW5910(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW2700L(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW2054(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW2700(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW2035(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOWA−3(大日本精化工業(株)製)が、商業的に入手可能である。キナクリドン系顔料としては、SYMULERSUPER RED7100Y(DIC(株)製)、SYMULERSUPER MAGENTAR(DIC(株)製)、SYMULERSUPER MAGENTARH(DIC(株)製)、CHOMOFINE RED6820(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE RED6821(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE RED6830(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE MAGENTA6891N(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE MAGENTA6887(大日本精化工業(株)製)が、商業的に入手可能である。銅フタロシアニン系(ブルー)顔料としては、SYMULERBULERS(DIC(株)製)、SYMULERBULERSK(DIC(株)製)、SYMULERBULE5380(DIC(株)製)、SYMULERBULE5485(DIC(株)製)、CHOMOFINE BULES−2100(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE4927B(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE4940(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE4930PK(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE4982(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE4966(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE5191(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE5192(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE5195N(大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE5165(銅フタロシアニンブルー顔料、大日本精化工業(株)製)等が挙げられる。
【0032】
本発明にて使用される無機系近赤外線吸収剤(C)は、太陽光線の熱線を効率良くカットするため、吸収極大ピークが950nm〜1300nmにある必要がある。この条件を満たす無機系近赤外線吸収剤としては、六ホウ化物(XB)が挙げられる。ここで、XBにおけるXとしては、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、Sr及びCaから選ばれる少なくとも一種である。具体的に入手可能な商品としては、六ホウ化物(LaB)20質量%、ZrO及びアクリル系分散剤の混合物 KHDS−06(無機系近赤外線吸収剤、住友金属鉱山株式会社)等が挙げられる。また、六ホウ化物(XB)とは別種の無機系近赤外線吸収剤であるタングステン系金属酸化物(X(WO)も使用して良い。ここで、(X(WO)におけるXとしては、K、Rb、Cs、Tlから選ばれる少なくとも一種である。具体的に入手可能な商品としては、酸化セシウムタングステン(Cs(WO)20質量%、トルエンおよび有機分散剤の混合物 YMDS−874(無機系近赤外線吸収剤、住友金属鉱山製)が挙げられる。
【0033】
本発明にて使用される無機系近赤外線吸収剤(C)の量は、ポリカーボネート樹脂100重量あたり、0.001〜2重量部であり、好ましくは0.01〜1重量部であり、更に好ましくは0.02〜0.5重量部である。無機系近赤外線吸収剤(C)の量が0.001重量部よりも少ないと、得られる樹脂シートの日射透過性が不十分であり、無機系近赤外線吸収剤(C)の量が2重量部より多い場合は、透過率低下とコストアップに繋がるので好ましくない。
【0034】
本発明にて使用される無機系近赤外線吸収剤(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)へ配合する際、無機系近赤外線吸収剤(C)を含有するマスターバッチを作製し希釈して用いてもよい。この無機系近赤外線吸収剤(C)のマスターバッチへの配合量は、通常0.001〜2重量部であり、好ましくは0.1〜1.5重量部であり、更に好ましくは0.5〜1.0重量部である。このマスターバッチのベースとなるビヒクル(マトリクス樹脂)としては、特に限定無く、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル樹脂が挙げられ、好ましくはポリカーボネート樹脂である。
【0035】
本発明にて使用される酸化防止剤(D)としては、リン系酸化防止剤が好ましく用いられる。リン系酸化防止剤としては、下記一般式(1)で表される環状亜リン酸エステル系酸化防止剤が特に好ましい。
一般式(1):
【0036】
【化1】
(式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基を表し、R3は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは単結合、硫黄原子もしくは−CHR6基(R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。)を表す。Aは炭素数1〜8のアルキレン基または*−COR7基(R7は単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を、*は酸素側の結合手であることを示す。)を表す。Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、もう一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【0037】
一般式(1)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。
【0038】
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0039】
前記R、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基または炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましい。特に、R及びRは、それぞれ独立して、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基等のt−アルキル基、シクロヘキシル基または1−メチルシクロヘキシル基であることが好ましい。特に、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基、t−ブチル基またはt−ペンチル基であることがさらに好ましい。
【0040】
前記Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0041】
一般式(1)において、Rは、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがさらに好ましい。
【0042】
一般式(1)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR−で表される基を示す。ここで、式:−CHR−中のRは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基及び炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれ前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基およびシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xは、単結合、メチレン基、またはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等で置換されたメチレン基であることが好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
【0043】
一般式(1)において、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基または式:*−COR−で表される基を示す。炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、式:*−COR−におけるRは、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示す。Rを示す炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、前記Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。Rは、単結合またはエチレン基であることが好ましい。また、式:*−COR−における*は、酸素側の結合手であり、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
【0044】
一般式(1)において、YおよびZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α−メチルベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R、R、RおよびRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
【0045】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。これらの中でも、特に光学特性が求められる分野に、得られるポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合には、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが好適であり、例えば、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標)として商業的に入手可能である。
【0046】
本発明にて使用される酸化防止剤(D)としては、環状亜リン酸エステル系酸化防止剤の他にも例えば、一般式(2)や一般式(3)で表される亜リン酸エステル系酸化防止剤、または一般式(4)で表されるリン酸エステル系酸化防止剤も好適に用いることができる。これらの酸化防止剤を併用してもよい。
一般式(2):
【0047】
【化2】
(式中、R8は、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す。)
【0048】
前記一般式(2)において、R8は、炭素数1〜20のアルキル基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
【0049】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルフォスファイト、トリクレジルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製のイルガフォス168(「イルガフォス」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)として商業的に入手可能である。
一般式(3):
【0050】
【化3】
(式中、R9およびR10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、bおよびcは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)
【0051】
前記一般式(3)において、R9およびR10は、炭素数1〜20のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよいアリール基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基であることが好ましい。
【0052】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(オクタデシロキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられ、例えば、(株)ADEKA製のアデカスタブPEP−36A、アデカスタブPEP−8(「アデカスタブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。これらの中でも3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカンが好適である。
【0053】
一般式(4):
【化4】
(式中、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示す。)
【0054】
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、[1,1´−ビフェニル]−4,4´−ジイルビス[ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)フォスフィン]等が挙げられ、例えば、BASF社製のイルガフォスP−EPQ(商品名)、クラリアントジャパン(株)製のサンドスタブP−EPQ(商品名)が商業的に入手可能である。
【0055】
一般式(5):
【化5】
【0056】
一般式(5)で表される化合物としては、例えばビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト等が挙げられ、DOVER CHEMICAL社のDoverphos S9228(商品名)が商業的に入手可能である。
【0057】
本発明にて使用される酸化防止剤(D)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜0.5重量部であり、さらに0.05〜0.2重量部であることが好ましい。酸化防止剤(D)の量が0.01重量部未満の場合は、光線透過率および色相の向上効果が不充分である。逆に酸化防止剤(D)の量が0.5重量部を超える場合も、光線透過率および色相の向上効果が不充分である。
【0058】
さらに本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤や樹脂を配合することができる。例えば、紫外線吸収剤、熱安定剤、導電性フィラー、無機フィラー、充填材、離型剤、帯電防止剤、軟化材、展着剤(流動パラフィン、エポキシ大豆油等)、難燃剤、難燃助剤、ゴム、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0059】
本発明のコア層に使用されるポリカーボネート樹脂組成物の製造方法には特に限定がなく、ポリカーボネート樹脂(A)、近赤外線反射顔料(B)、無機系近赤外線吸収剤(C)、および酸化防止剤(D)、並びに必要に応じて前記各種添加剤やポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等について、各成分の種類および量を適宜調整し、これらを、例えばタンブラー、リボンブレンダー等の公知の混合機にて混合する方法や、押出機にて溶融混練する方法が挙げられる。
【0060】
実施の形態に係る多層シートのキャップ層には、紫外線吸収剤(E)が必須成分としてポリカーボネート樹脂に配合されている。このように、ポリカーボネート樹脂(A)と近赤外線反射顔料(B)と無機系近赤外線吸収剤(C)と酸化防止剤(D)からなるコア層に紫外線吸収剤(E)が必須成分として配合されたポリカーボネート樹脂組成物をキャップ層に積層することにより、ポリカーボネート樹脂(A)が本来有する機械的強度等の特性や得られる多層シートの外観を損なうことなく、日射反射性、日射透過性および耐候性に優れた多層シートを得ることができる。
【0061】
本発明のポリカーボネート樹脂製多層シートのキャップ層に使用される紫外線吸収剤(E)としては、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系、サリシレート系、オキザニリド系、およびベンゾフェノン系の紫外線吸収剤が好ましく用いられる。特に、一般式(6)、一般式(7)で表されるベンゾトリアゾール系化合物、一般式(8)で表されるトリアジン系化合物、および/または一般式(9)で表されるシアノアクリレート系化合物からなる紫外線吸収剤が好ましい。
一般式(6):
【0062】
【化6】
一般式(7):
【0063】
【化7】
一般式(8):
【0064】
【化8】
一般式(9):
【0065】
【化9】
【0066】
本発明のポリカーボネート樹脂製多層シートのキャップ層に使用される紫外線吸収剤(E)の分子量は、400以上のものが好ましい。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、例えばBASF社製TINUVIN234或いはADEKA社製LA31が商業的に入手可能であり、トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えばBASF社製TINUVIN1577FFが商業的に入手可能であり、シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えばBASF社製UVINUL3030が商業的に入手可能である。
【0067】
本発明のポリカーボネート樹脂製多層シートのキャップ層に使用される紫外線吸収剤(E)の配合量は、ポリカーボネート樹脂組成物に対して1〜20重量部である。より好ましくは、2〜10重量部の範囲である。1重量部未満では多層シートの耐候性が不足し、20重量部を超えるとポリカーボネート樹脂組成物の造粒加工が困難になり樹脂組成物のペレットを得ることができなくなることから好ましくない。
【0068】
本発明のポリカーボネート樹脂製多層シートのキャップ層に使用されるポリカーボネート樹脂組成物において、実用上、耐候性以外に要求される性能により、公知の各種添加剤、ポリマーなどを必要に応じて添加することができる。例えば、鮮やかな色調を得るために、ベンゾオキサゾール系の蛍光増白剤およびこれらを併用して添加してもよい。
【0069】
本発明のポリカーボネート樹脂製多層シートのキャップ層に使用されるポリカーボネート樹脂組成物には、上記以外の公知の添加剤、例えばフェノール系またはリン系熱安定剤[2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、4,4′−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2−メチレンビス−(4−エチル−6−t−メチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、4,4′−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)等]、滑剤[パラフィンワックス、n−ブチルステアレート、合成蜜蝋、天然蜜蝋、グリセリンモノエステル、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、ペンタエリスリトールテトラステアレート等]、着色剤[例えば酸化チタン、カーボンブラック、染料]、充填剤[炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ガラス繊維、ガラス球、ガラスフレーク、カーボン繊維、タルク、マイカ、各種ウィスカー類等]、流動性改良剤、展着剤[エポキシ化大豆油、流動パラフィン等]、さらには他の熱可塑性樹脂や各種耐衝撃改良剤(ポリブタジエン、ポリアクリル酸エステル、エチレン・プロピレン系ゴム等のゴムに、メタアクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル等の化合物をグラフト重合してなるゴム強化樹脂等が例示される。)を必要に応じて添加することができる。
【0070】
本発明のポリカーボネート樹脂製多層シートのキャップ層に使用されるポリカーボネート樹脂の実施の形態および順序には何ら制限はない。例えば、ポリカーボネート樹脂、紫外線吸収剤(E)を任意の配合量で計量し、タンブラー、リボブレンダー、高速ミキサー等により一括混合した後、混合物を通常の単軸押出機または2軸押出機を用いて溶融混練し、ペレット化させる方法、あるいは、個々の成分を一部または全てを別々に計量し、複数の供給装置から押出機内へ投入し、溶融混合する方法、さらには、ポリカーボネート樹脂及び紫外線吸収剤を高濃度に配合し、一旦溶融混合してペレット化し、マスターバッチとした後、当該マスターバッチとポリカーボネート樹脂を所望の比率により混合することもできる。そして、これらの成分を溶融混合する際の、押出機へ投入する位置、押出温度、スクリュウ回転数、供給量など、状況に応じて任意の条件が選択され、ペレット化することができる。
【0071】
本発明のポリカーボネート樹脂製多層シートの製造方法としては、コア層およびキャップ層に使用される樹脂組成物をそれぞれ別の単軸または二軸押出機を用いて溶融混錬し、それぞれの溶融物を共押出用ダイのコア層フィードブロックおよびキャップ層フィードブロックにそれぞれ供給し積層させる、いわゆる共押出法、あるいはコア層およびキャップ層の板状成形品を熱プレスにより積層する方法、表層をフィルム化してラミネーションする方法等が挙げられる。なかでも共押出法が製造効率の面で優れるため好適に用いられる。
【0072】
本発明のポリカーボネート樹脂製多層シートのコア層およびキャップ層の厚みは、特に制限されるものでは無いが、得られた多層シートの剛性および耐候性の発揮等を考慮すれば、コア層として0.3〜10mm、キャップ層として10〜200μmが好ましく、さらに好ましくはコア層として0.6〜5.0mm、キャップ層として20〜100μmの範囲である。
【0073】
本発明の多層シートの成形する温度は、通常、220〜380℃であり、250℃〜320℃が好ましい。
【実施例】
【0074】
以下に、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」および「%」はそれぞれ重量基準である。
【0075】
原料として以下のものを使用した。
1.ポリカーボネート樹脂(A):
住化スタイロン ポリカーボネート(株)製 カリバー200―13
粘度平均分子量(Mv):20700 (以下、PCと略記)
【0076】
2.近赤外線反射顔料(B):
黒色複合酸化物顔料
(組成式:Cr:Fe:CoO、Cr:Fe、(Co,Fe)
(Fe,Cr)
東罐マテリアル・テクノロジー(株)社製 42―707A
平均粒径:0.9μm (以下、化合物Bと略記)
【0077】
3.無機系近赤外線吸収剤(C):
住友金属鉱山(株)製 KHDS−06(以下、化合物C−1と略記)
六ホウ化物(LaB)20質量%、ZrO及びアクリル系分散剤の混合物
住友金属鉱山(株)製 YMDS−874(以下、化合物C−2と略記)
酸化セシウムタングステン(Cs(WO)20質量%、トルエンおよび有機分散剤の混合物
【0078】
4.酸化防止剤(D):
環状亜リン酸エステル系酸化防止剤
以下の式で表される、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン
【化10】
住友化学(株)製 スミライザーGP (以下、AOと略記)
【0079】
5.紫外線吸収剤(E):
5−1.ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
以下の式で表される、2−[2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−[1,1,3,3−テトラメチルブチル]フェノール
ADEKA社製 LA−31(以下、UVA−1と略記)
【化11】
【0080】
5−2.ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
以下の式で表される、2,4―ビス[1―メチル−1−フェニルエチル]−6−[2H―ベンゾトリアゾール−2−イル]フェノール
BASF社製 TINUVIN234(以下、UVA−2と略記)
【化12】
【0081】
5−3.トリアジン系紫外線吸収剤
以下の式で表される、2−[4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−[ヘキシロキシ]フェノール
BASF社製 TINUVIN1577(以下、UVA−3と略記)
【化13】
【0082】
実施例1〜6、比較例1〜4
(a)コア層およびキャップ層の樹脂組成物ペレットの作成
前述の各種原料を表1、表2に示す配合比率にて、それぞれタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機TEX−30α(日本製鋼所社製TEX30α)を用いて、溶融温度260℃にて溶融混練しペレットを得た。
【0083】
(b)共押出法による加工
得られたキャップ層用樹脂組成物のペレットを125℃×2時間の乾燥条件にて、熱風循環式乾燥機(タバイ社製PERFECT OVEN PV−330)を用いて事前乾燥を行った。併せて、コア層用ポリカーボネート樹脂組成物のペレットも同じ条件にて事前乾燥を行った。事前乾燥を行なったコア層用ポリカーボネート樹脂のペレットを、コア層用押出機(田辺プラスチック社製VS40単軸押出機)を用いて、260℃の条件下で溶融混錬し、共押出用ダイのコア層フィードブロックに供給した。また、同時に、事前乾燥したキャップ層用樹脂組成物のペレットを、キャップ層用押出機(プラ技研社PEX-25-24型単軸押出機)を用いて260℃の条件下で溶融混錬してキャップ層フィードに供給し、ロール温度130℃にて多層シート(250mm×300mm×0.80mm)を作成し、これらのシート中央部から試験片(63mm×63mm×0.80mm)を切り出した。なお、キャップ層およびコア層の厚みは、それぞれ 30μm、0.77mmに設定した。
【0084】
(c)日射反射率の測定(単位:%)
(b)で得られた各シートを分光光度計(日立ハイテクサイエンス(株)製 UH−4150形分光光度計)を用いてD65光源で300nm〜2500nmの波長範囲において1nm間隔で反射率を測定して、得られた反射率の値を用い、JIS K5675−2011に準じて日射反射率を算出した。測定に際しては積分球側面の試料ホルダーを使用して白色板を外し、試験片を固定して測定を行った。表1、表2に測定で得られた日射反射率の測定値を示した。この日射反射率の値は、本発明のシートの日射反射率を表す値であり、値が大きいほど、近赤外線領域の反射性が良好であることを意味する。なお、日射反射率が8%以上を良好とした。
【0085】
(d)可視光透過率の測定(単位:%)
(b)で得られた各シートを分光光度計(日立ハイテクサイエンス(株)製 UH−4150形分光光度計)を用いてD65光源で380nm〜780nmの波長範囲において1nm間隔で透過率を測定して、得られた透過率の値を用い、JIS R3106−1998に準じて可視光透過率を算出した。表1、表2に測定で得られた可視光透過率の測定値を示した。この可視光透過率の値は、本発明のシートの可視光透過性を表す値であり、大きい値ほど透明性が良好であり、肉眼で見た際、向こう側が見えやすいことを意味する。なお、可視光透過率が40%以上を良好とした。
【0086】
(e)日射透過率の測定(単位:%)
(b)で得られた各シートを分光光度計(日立ハイテクサイエンス(株)製 UH−4150形分光光度計)を用いてD65光源で300nm〜2500nmの波長範囲において1nm間隔で透過率を測定して、得られた透過率の値を用い、JIS K5675−2011に準じて日射透過率を算出した。測定に際しては積分球前面の試料ホルダーを使い試験片を固定して測定を行った。表1、表2に測定で得られた日射透過率の測定値を示した。この日射透過率の値は、本発明のシートの日射透過率を表す値であり、値が小さいほど近赤外線領域の熱線カット性が良好であることを意味する。なお、日射透過率が60%未満を良好とした。
【0087】
(e)耐候性能の測定
得られた各試験片を促進耐候試験機キセノンウェザーメーター(スガ試験機社製SX−75)の中に設置し、600時間照射を行った。その後、照射前後の試験片をスペクトロフォトメータ(村上色彩技術研究所製CMS−35SP)により、色差(ΔE)を測定した。△Eとは照射前後の色の違いの程度を表し、△Eが小さい程、変色は小さく耐光性に優れている。△Eの評価基準としては、△Eの値が3.0未満であるものを合格(○)、3.0以上であるものを不良(×)とした。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
表1で示した通り、ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の要件を満足する場合(実施例1〜8)は、いずれの押出シートも良好な日射反射率、可視光透過率、日射吸収率および日射透過性を示した。
【0091】
一方、表2に示す通り、本発明の構成を満足しない場合(比較例1〜4)には、いずれの場合にも欠点を有していた。
【0092】
比較例1は、無機系近赤外線吸収剤(C)の配合量が少なかったことにより、日射透過率が劣っていた。
【0093】
比較例2は、近赤外線反射顔料(B)を配合しなかったことにより、日射反射率が劣っていた。
【0094】
比較例3は、キャップ層の紫外線吸収剤(E)の配合量が少なかったことにより、耐候性能が劣っていた。
【0095】
比較例4は、近赤外線反射顔料(B)の配合量が規定量より多い場合であり、基材の溶融粘度が低下し、成形中積層体の基材が冷却ロールから離型し難かったため、良好な外観を持つ積層体を成形することができなかった。
【0096】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明を提供した。
【0097】
したがって、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0098】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のポリカーボネート樹脂製多層シートは、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐熱性、機械物性等を損なうことなく、特別な工程が不要なため安価で、日射反射性、可視光透過性および日射透過性に優れる。このため、インテリア、エクステリア、建装材、産業資材、農業資材、車両用部材、船舶用部材、航空機用部材等の様々な用途の樹脂シートとして好適に用いることができ極めて産業上の利用価値は高い。