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特開2017-210090車両シート用スライドレールおよびスライドシートの給電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-210090(P2017-210090A)
(43)【公開日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】車両シート用スライドレールおよびスライドシートの給電装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/44 20060101AFI20171102BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20171102BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20171102BHJP
【FI】
   B60N2/44
   B60N2/06
   H02J50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-104144(P2016-104144)
(22)【出願日】2016年5月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592259510
【氏名又は名称】竹内工業株式會社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】櫂作 哲也
(72)【発明者】
【氏名】八木橋 啓
(72)【発明者】
【氏名】中川 重保
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB03
3B087BC05
3B087BC08
3B087DE08
3B087DE09
(57)【要約】
【課題】簡素な構造で、シート本体のスライド位置によることなく安定した電力伝送効率が得られる車両シート用スライドレールおよびスライドシートの給電装置を提供する。
【解決手段】スライドレール12は車両前後方向に延びるロアレール20およびアッパレール30を有し、それらロアレール20およびアッパレール30は車両前後方向に相対移動可能に連結されている。給電装置の送電コイルを内蔵した送電ユニット40は、車両前後方向に延びる形状でロアレール20に一体に設けられている。給電装置の受電コイルを内蔵した受電ユニット50は、車両前後方向に延びる形状でアッパレール30に一体に設けられている。受電ユニット50の対向面(下面)と送電ユニット40の対向面(上面)とが平行に延びている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる形状のロアレールと、
前記長手方向に延びる形状で、前記ロアレールに対して前記長手方向に相対移動可能に連結されたアッパレールと、
非接触での給電を行う給電装置における送電を行う送電部と、
前記給電装置における受電を行う受電部と、を備え、
前記送電部は、前記長手方向に延びる形状で前記ロアレールに一体に設けられており、
前記受電部は、その前記送電部に対向する面と前記送電部における前記受電部に対向する面とが平行に延びるとともに前記長手方向に延びる形状で、前記アッパレールに一体に設けられている
車両シート用スライドレール。
【請求項2】
請求項1に記載の車両シート用スライドレールにおいて、
前記送電部および前記受電部は、前記ロアレールおよび前記アッパレールによって囲まれた部分の内部に配置されている
ことを特徴とする車両シート用スライドレール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両シート用スライドレールにおいて、
前記送電部は送電用のコイルであり、
前記受電部は受電用のコイルであり、
前記送電用のコイルおよび前記受電用のコイルは、それらの開口部が対向する位置に配置されている
ことを特徴とする車両シート用スライドレール。
【請求項4】
請求項3に記載の車両シート用スライドレールにおいて、
前記送電用のコイルは、前記長手方向に並ぶ複数のコイルからなる
ことを特徴とする車両シート用スライドレール。
【請求項5】
請求項4に記載の車両シート用スライドレールにおいて、
前記アッパレールは、車両シートの下部に一体に取り付けられるものであり、
前記複数のコイルは、前記車両シートの下方に位置しているコイルのみ送電するものである
ことを特徴とする車両シート用スライドレール。
【請求項6】
請求項5に記載の車両シート用スライドレールにおいて、
前記複数のコイルは、その前記長手方向の長さが、前記車両シートの下端部の前記長手方向における長さ以下である
ことを特徴とする車両シート用スライドレール。
【請求項7】
請求項4に記載の車両シート用スライドレールにおいて、
前記複数のコイルは、前記受電用のコイルに正対しているコイルのみ送電するものである
ことを特徴とする車両シート用スライドレール。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の車両シート用スライドレールにおいて、
前記複数のコイルは、その巻線における前記長手方向に延びる部分が一辺になる四角形のコイルである
ことを特徴とする車両シート用スライドレール。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両シート用スライドレールを備える車両に適用され、前記ロアレールは車体に固定されて、前記アッパレールは車両シートに固定され、前記送電部および前記受電部を利用して前記車体から前記車両シートへの非接触での給電を行う
スライドシートの給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体から車両シートへの非接触での給電を行う車両シート用スライドレールおよびスライドシートの給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の給電装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の給電装置は電磁誘導方式のものであり、送電コイルを有する送電ユニットと受電コイルを有する受電ユニットとを備えている。送電コイルは車体と車両シートとの間に設けられたスライドレールに上方に突出する状態で一体に設けられており、受電コイルは車両シートに下方に突出する状態で一体に設けられている。そして、送電コイルと受電コイルとの間に生じる電磁誘導現象を利用して、車体に設けられた電源回路から車両シートに設けられた電装品への非接触での給電が行われる。
【0003】
電磁誘導方式の給電装置では、送電コイルと受電コイルとの距離が遠くなるに連れて、電力の伝送効率が低くなる。特許文献1の給電装置では、車両シートがスライドすると、コイル間の距離が変化する。そのため、コイル間の距離を検出するとともに、その検出した距離に応じて給電装置の作動状態(詳しくは、コイルに並列接続されたキャパシタの容量)が可変制御される。これにより、コイル間の距離の変化に伴う電力伝送効率の低下が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−162609号公報(明細書の段落[0058]、図面の[図7])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の給電装置は、コイル間距離の変化に伴う電力伝送効率の低下が抑えられるものの、これを実現するための構成が複雑であるために、装置自体が複雑なものになってしまう。また、電磁誘導方式の給電装置は、その特性上、コイル間の距離が近い場合にしか高効率での給電を行うことはできない。そのため、シートスライド量が大きい車両用スライドシートに適用する場合、給電装置の作動状態を可変制御するようにしたところで、低い効率での給電しか行えなくなり、場合によっては給電そのものを行えなくなってしまう。
【0006】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構造で、シート本体のスライド位置によることなく安定した電力伝送効率が得られる車両シート用スライドレールおよびスライドシートの給電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための車両シート用スライドレールは、長手方向に延びる形状のロアレールと、前記長手方向に延びる形状で、前記ロアレールに対して前記長手方向に相対移動可能に連結されたアッパレールと、非接触での給電を行う給電装置における送電を行う送電部と、前記給電装置における受電を行う受電部と、を備える。そして、前記送電部は、前記長手方向に延びる形状で前記ロアレールに一体に設けられており、前記受電部は、その前記送電部に対向する面と前記送電部における前記受電部に対向する面とが平行に延びるとともに前記長手方向に延びる形状で、前記アッパレールに一体に設けられている。
【0008】
上記構成によれば、車両シートのスライド位置を変更するべくロアレールとアッパレールとが長手方向に相対移動した場合には、ロアレールに一体の送電部とアッパレールに一体の受電部とが、距離をほぼ一定に保ちつつ長手方向に相対移動するようになる。そのため、送電部と受電部との距離が近い状態、すなわち非接触での給電を行う際に高効率での電力伝送が可能な状態を保ちつつ送電部から受電部への電力の伝送を行うことができる。したがって、車両シートのスライド位置によることなく安定した電力伝送効率を得ることができる。しかも、高い電力伝送効率を維持するために、送電部および受電部の形状と配置とを定めればよく、特段の構成が不要であるため、車両シート用スライドレールを簡素な構造にすることができる。
【0009】
上記車両シート用スライドレールにおいて、前記送電部および前記受電部は、前記ロアレールおよび前記アッパレールによって囲まれた部分の内部に配置されていることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、ロアレールおよびアッパレールにより、ノイズに対するシールド効果を得ることができる。そのため、給電装置による電力伝送に伴って発生するノイズがスライドレールの外部に漏れ出して外部機器に悪影響を及ぼすことや、外部のノイズがスライドレール内に侵入して給電装置による電力伝送に悪影響を及ぼすことを抑えることができる。
【0011】
上記車両シート用スライドレールにおいて、前記送電部は送電用のコイルであり、前記受電部は受電用のコイルであり、前記送電用のコイルおよび前記受電用のコイルは、それらの開口部が対向する位置に配置されていることが好ましい。
【0012】
送電用のコイルと受電用のコイルとを利用して電力を伝送する方式の給電装置は、それらコイルの距離が遠くなると、電力の伝送効率が大きく低下してしまう。上記構成によれば、コイル間の距離をほぼ一定に保つことができるため、車両シートのスライド位置によることなく安定した電力伝送効率を得ることができる。
【0013】
上記車両シート用スライドレールにおいて、前記送電用のコイルは、製造方法やシートスライド量、製造コスト、給電効率などを考慮して、一体の1つのコイルを採用したり複数のコイルを採用したりすることができる。シートスライド量が大きい車両シート用スライドレールにおいては、複数のコイルを採用して各コイルへの通電の有無を制御することにより、送電部からの送電を行う範囲を細かく設定することができる。そのため、不要な部分における送電を停止することができ、送電部からの送電を効率よく行うことができる。こうした場合には、前記送電用のコイルは、前記長手方向に並ぶ複数のコイルからなることが好ましい。
【0014】
上記車両シート用スライドレールにおいて、前記アッパレールは、車両シートの下部に一体に取り付けられるものであり、前記複数のコイルは、前記車両シートの下方に位置しているコイルのみ送電するものであることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、送電用のコイルから出力される電磁波が、車両シートが位置している部分以外の部分に漏洩することを抑えることができる。そのため、車両シート以外の部分に位置する電装品に対して上記電磁波が悪影響を及ぼすことを抑えることができる。
【0016】
上記車両シート用スライドレールにおいて、前記複数のコイルは、その前記長手方向の長さが、前記車両シートの下端部の前記長手方向における長さ以下であることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、通電されている送電用のコイルが車両シートの下部からはみ出すことを抑えることができるため、車両シートが位置している部分以外の部分への上記電磁波の漏洩を好適に抑えることができる。
【0018】
上記車両シート用スライドレールにおいて、前記複数のコイルは、前記受電用のコイルに正対しているコイルのみ送電するものであることが好ましい。
上記構成によれば、受電用のコイルによる高効率での受電が可能な位置にある送電用のコイルからのみ送電を行うことができるため、給電装置による給電を効率よく行うことができる。
【0019】
上記車両シート用スライドレールにおいて、前記複数のコイルは、その巻線における前記長手方向に延びる部分が一辺になる四角形のコイルであることが好ましい。
上記構成によれば、楕円形状や長穴形状のコイルを使用する場合と比較して、隣り合う送電用コイルの隙間を小さくすることができる。これにより、受電用コイルが送電用コイルの繋ぎ目に位置するときに、楕円形状や長穴形状のコイルを使用する場合と比較して、受電用コイルの開口部に正対する送電コイルの開口部の総面積を大きくすることができる。そのため、受電用コイルが送電用コイルの繋ぎ目に位置するときに、繋ぎ目以外の部分に位置するときと比較して、電力伝送効率が低くなることを抑えることができる。
【0020】
前記課題を解決するためのスライドシートの給電装置は、前記車両シート用スライドレールを備える車両に適用され、前記ロアレールは車体に固定されて、前記アッパレールは車両シートに固定され、前記送電部および前記受電部を利用して前記車体から前記車両シートへの非接触での給電を行う。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡素な構造で、シート本体のスライド位置によることなく安定した電力伝送効率が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】スライドレールおよび給電装置の一実施形態が適用される車両の概略構成を示す略図。
図2】スライドレールの分解斜視図。
図3】スライドレールの断面図。
図4】送電ユニットの(a)は平面図、(b)は側面図。
図5】受電ユニットの(a)は平面図、(b)は側面図。
図6】給電装置の構造を示すブロック図。
図7】各送電コイルと受電コイルとの相対移動位置の一例を示す側面図。
図8】各送電コイルと受電コイルとの相対移動位置の他の例を示す側面図。
図9】変形例の送電コイルの(a)は平面図、(b)は側面断面図。
図10】変形例の送電ユニットの内部構造を示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、車両シート用スライドレールおよびスライドシートの給電装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両10は乗員が着座するシート11を有している。このシート11は、スライドレール12を介して車体13に取り付けられており、車両前後方向Lにおけるスライド位置を変更可能になっている。
【0024】
車体13には、シート11のスライド位置を検出するためのシート位置センサ15と、各種の電装品に電力を供給する電源回路16とが設けられている。また、シート11には、乗員の着座の有無を検出するための着座センサ17と、シートベルト装着の有無を検出するためのシートベルトセンサ18とが設けられている。また車両10には、車体13の電源回路16からシート11の着座センサ17やシートベルトセンサ18に対して、非接触での給電を行う給電装置19が設けられている。
【0025】
以下、給電装置19の構造を、スライドレール12の構造とともに詳しく説明する。
図2および図3に示すように、スライドレール12は、車体13(図1参照)に固定されたロアレール20と、シート11(図1参照)の下部に固定されたアッパレール30とを有している。これらロアレール20およびアッパレール30は、金属板によって形成されており、長手方向(車両前後方向L)において相対移動可能に連結されている。
【0026】
ロアレール20は、車両前後方向Lに延びる底壁部21を有している。この底壁部21の車両幅方向Wにおける中央部分は、車両下方側に突出するように湾曲した凸部22になっている。この凸部22の車両上方側の面は車両前後方向Lに延びる凹溝23になっており、凸部22の車両下方側の面には固定用のボルト24が立設されている。
【0027】
また、底壁部21の車両幅方向Wにおける両端には、それぞれ外壁部25が立設されている。これら外壁部25の車両上方側の端部には、それぞれ車両幅方向Wの内側に折り返された折り返し部26が延設されている。各折り返し部26にはそれぞれ、車両上下方向Hに延びる貫通孔であるロック孔27が、車両前後方向Lにおいて等間隔で並ぶように複数設けられている。
【0028】
ロアレール20には給電装置19の送電ユニット40が取り付けられている。この送電ユニット40は、送電用のコイルを内蔵したコイル部43と同コイルの作動を制御する制御部44とが一体形成されたものである。
【0029】
コイル部43は、ロアレール20の凹溝23内に収まる平板形状に形成されている。詳しくは、コイル部43の幅(車両幅方向Wの長さ)は凹溝23の幅よりも若干短く、同コイル部43の車両前後方向Lの長さはロアレール20の長手方向における長さと略等しく、コイル部43の厚さ(車両上下方向Hの長さ)は凹溝23の深さよりも若干短い。そして、コイル部43の全体が凹溝23の内部に収容された状態で同コイル部43がロアレール20に固定されることにより、送電ユニット40がロアレール20に一体に設けられている。このようにして送電ユニット40がロアレール20に固定されることにより、制御部44はスライドレール12の一端から同スライドレール12の外部に突出した状態になっている(図1参照)。
【0030】
図4(a)および図4(b)に示すように、コイル部43は、複数(本実施形態では3つ)の送電コイル41(41A,41B,41C)を内蔵している。これら送電コイル41は、その軸線が車両上下方向Hに延びるように配置されている。また、各送電コイル41は、巻線の車両前後方向Lに延びる部分が一辺になる長方形のコイルであり、車両前後方向Lに並んだ状態で配置されている。各送電コイル41の車両前後方向Lの長さは、シート11(図1参照)の下端部の車両前後方向Lにおける長さよりも短くなっている。なお本実施形態では、送電コイル41が送電を行う送電部に相当する。
【0031】
コイル部43は、各送電コイル41の配設部分の車両下方側全体を覆う形状の電磁シールドシート45を内蔵している。この電磁シールドシート45を設けることにより、金属板からなるロアレール20の影響によって各送電コイル41の発生磁界が不要に変形することが抑えられている。そして、このコイル部43は、複数の送電コイル41および電磁シールドシート45を樹脂材料によってコーティングすることによって一体に形成されている。
【0032】
図2および図3に示すように、アッパレール30は、車両下方側の部分がロアレール20に連結される連結部31になっており、車両上方側の部分がシート11(図1参照)が固定される固定部32になっている。
【0033】
連結部31は、車両幅方向Wにおいて対向する一対の内側壁33とそれら内側壁33を間に挟む位置に配置される一対の外側壁34とを有して、断面略W字形状で車両前後方向Lに延びている。一対の外側壁34の一方(図2の手前側)には1つのローラ35が回転可能な状態で取り付けられており、他方(図2の奥側)には2つのローラ35が車両前後方向Lに並ぶ位置に回転可能な状態で取り付けられている。また各外側壁34の車両幅方向Wにおける外方側の面には外方に向けて突出する形状の摺動部36が2つずつ取り付けられている。
【0034】
そして、連結部31の外壁部25、ローラ35および摺動部36は、ロアレール20の底壁部21と外壁部25と折り返し部26とによって囲まれた空間S(図3)の内部に配置される。そのため、各ローラ35がロアレール20の折り返し部26や底壁部21に当接することにより、同ロアレール20に対するアッパレール30の車両上下方向Hの相対移動が規制される。また、各摺動部36がロアレール20の外壁部25の内面に摺接することにより、ロアレール20に対するアッパレール30の車両幅方向Wの相対移動が規制される。そして、各ローラ35がロアレール20の底壁部21に摺接して転動することにより、ロアレール20とアッパレール30との車両前後方向Lにおける相対移動が円滑になされるようになる。
【0035】
固定部32は、連結部31の各内側壁33と一体に形成されている。この固定部32には回動操作可能なレバー37が取り付けられている。このレバー37の先端には、車両前後方向Lにおいて等間隔で並ぶように、ロアレール20のロック孔27に対応する形状の係止凸部38(図2)が複数(本実施形態では3つ)設けられている。そして、レバー37の係止凸部38がロアレール20のロック孔27に侵入して係合した状態になると、ロアレール20に対するアッパレール30の車両前後方向Lへの相対移動が規制されて、シート11のスライド位置が固定される。一方、乗員の操作によってレバー37が回動して、同レバー37の係止凸部38がロアレール20のロック孔27から脱出した状態になると、上記相対移動の規制が解除されて、シート11のスライド位置を変更可能な状態になる。
【0036】
アッパレール30には給電装置19の受電ユニット50が取り付けられている。この受電ユニット50は、受電用のコイルを内蔵したコイル部53と、同コイルにおいて発生する電力を直流電力に変換する変換回路を内蔵した変換部55とが一体に形成されたものである。
【0037】
コイル部53は、その幅(車両幅方向Wの長さ)および厚さ(車両上下方向Hの長さ)が、送電ユニット40のコイル部43の幅および厚さと略同一の平板形状に形成されている。また変換部55は、コイル部53の車両幅方向Wの中央部分における同コイル部53よりも車両上方側の位置に配置されている。これらコイル部53および変換部55からなる受電ユニット50は、断面T字形状で車両前後方向Lに延びている。
【0038】
この受電ユニット50は、変換部55がアッパレール30の各内側壁33の間に配置されるとともに、コイル部53がアッパレール30の連結部31よりも車両下方側に配置される態様で、アッパレール30の連結部31の車両下方側の端部に固定されている。また受電ユニット50は、そのコイル部53の下面と送電ユニット40のコイル部43の上面とが略一定の距離を保ちつつ平行に延びるように配置されている。
【0039】
図5(a)および図5(b)に示すように、コイル部53は、1つの受電コイル51を内蔵している。この受電コイル51としては、送電ユニット40の各送電コイル41と同一形状のコイルが採用されている。受電コイル51は、その軸線が車両上下方向Hに延びるように配置されている。また受電コイル51は、送電ユニット40と受電ユニット50とが相対移動した場合であっても、各送電コイル41のうちのいずれかの車両上方側の開口部と受電コイル51の車両下方側の開口部とが対向するようになる位置に配置される。変換回路54は受電コイル51よりも車両上方側の位置に配置されている。なお本実施形態では、受電コイル51が、給電装置19における受電を行う受電部に相当する。受電ユニット50は、受電コイル51と変換回路54との間において、同受電コイル51の配設部分の車両上方側全体を覆う形状の電磁シールドシート56を有している。この電磁シールドシート56を設けることにより、金属板からなるアッパレール30の影響によって受電コイル51に伝わる磁界が不要に変形することが抑えられている。そして、受電ユニット50は、受電コイル51、変換回路54、および電磁シールドシート56を樹脂材料によってコーティングすることによって一体に形成されている。
【0040】
次に、給電装置19の回路構造を説明する。
図6に示すように、送電ユニット40の制御部44には、電源回路16が接続されており、この電源回路16から直流電力が供給されている。また制御部44には、シート位置センサ15が接続されており、同センサ15の検出信号が取り込まれている。さらに制御部44には送電ユニット40の各送電コイル41A,41B,41Cが接続されており、この制御部44から各送電コイル41A,41B,41Cに対して送電に適した交流電流を印加することが可能になっている。また、受電ユニット50の受電コイル51には、変換回路54を介して、着座センサ17およびシートベルトセンサ18が接続されている。
【0041】
給電装置19による給電は、基本的には、次のようにして行われる。運転スイッチが操作されて車両10の運転が開始されると、送電ユニット40の制御部44から送電コイル41A,41B,41Cに交流電流が印加される。このとき、送電コイル41A,41B,41Cの何れかと受電コイル51とが結合されて、送電コイル41A,41B,41Cに印加されている交流電流が受電コイル51に伝わる。こうして受電コイル51に伝わった交流電流は、受電ユニット50の変換回路54によって直流電流(直流電力)に変換されて、着座センサ17およびシートベルトセンサ18に供給される。このように給電装置19では、送電コイル41A,41B,41Cおよび受電コイル51を利用して非接触での給電を行われる。
【0042】
送電用のコイルと受電用のコイルとを利用して電力を伝送する方式の給電装置は、それらコイルの距離が遠くなると、電力の伝送効率が大きく低下してしまう。
本実施形態の給電装置19では、シート11のスライド位置を変更するべくロアレール20とアッパレール30とが車両前後方向Lに相対移動した場合に、ロアレール20一体の送電コイル41A,41B,41Cとアッパレール30一体の受電コイル51とが車両上下方向Hにおける距離をほぼ一定に保ちつつ車両前後方向Lに相対移動する。そして、送電コイル41A,41B,41Cおよび受電コイル51は、それらコイルが相対移動した場合であっても、各送電コイル41A,41B,41Cのうちのいずれかの車両上方側の開口部と受電コイル51の車両下方側の開口部とが対向するようになる位置に配置されている。
【0043】
そのため、送電コイル41A,41B,41Cと受電コイル51との車両上下方向Hにおける距離が近い状態、すなわち非接触での給電を行う際に高効率での電力伝送が可能な状態を保ちつつ送電ユニット40から受電ユニット50への電力の伝送を行うことができる。したがって、シート11のスライド位置によることなく安定した電力伝送効率を得ることができる。しかも、高い電力伝送効率を維持するために、各送電コイル41A,41B,41Cおよび受電コイル51の形状と配置とを定めればよく、特段の構成(例えばコイルに並列接続されたキャパシタの容量を可変制御する構成など)が不要であるため、給電装置19を簡素な構造にすることができる。
【0044】
また給電装置19では、車両前後方向Lにおいて並ぶ3つの送電コイル41の全てに交流電流を印加するのではなく、シート11のスライド位置に応じて、それら送電コイル41のうちの1つまたは2つに選択的に交流電流が印加されるようになっている。そのため、3つの送電コイル41A,41B,41Cへの交流電流の印加の有無を各別に制御することにより、送電ユニット40からの送電を行う範囲を細かく設定することができる。これにより、送電が不要な部分に位置する送電コイル41への交流電流の印加を停止して同送電コイル41からの送電を停止することができるため、送電ユニット40からの送電を効率よく行うことができる。
【0045】
具体的には、図7に示すように、3つの送電コイル41(41A,41B,41C)のうちの1つのみが受電コイル51に正対しているときには、その正対している送電コイル(図7に示す例では送電コイル41B)のみに交流電力が印加され、それ以外の送電コイル(図7に示す例では送電コイル41A,41C)には交流電力は印加されない。
【0046】
また図8に示すように、3つの送電コイル41A,41B,41Cのうちの2つに受電コイル51に正対しているときには、それら正対している送電コイル(図7に示す例では送電コイル41A,41B)に交流電力が印加され、残りの送電コイル(図7に示す例では送電コイル41C)には交流電力は印加されない。
【0047】
このように給電装置19では、3つの送電コイル41A,41B,41Cのうちの受電コイル51に正対しているコイルにのみ交流電流が印加される。これにより、受電コイル51による高効率での受電が可能な位置にある送電コイル41からのみ送電を行うことができるため、給電装置19による給電を効率よく行うことができる。
【0048】
また、図4(a)に示すように、3つの送電コイル41A,41B,41Cは、その巻線の車両前後方向Lに延びる部分が一辺になる長方形のコイルであるため、楕円形状や長穴形状のコイルを使用する場合と比較して、隣り合う送電コイル41A,41B,41Cの隙間を小さくすることができる。そのため、受電コイル51が送電コイル41A,41B,41Cの繋ぎ目に位置するとき(例えば図8に示す状態)には、楕円形状や長穴形状のコイルを使用する場合と比較して、受電コイル51の開口部に正対する送電コイル41A,41B,41Cの開口部の総面積を大きくすることができる。したがって、受電コイル51が送電コイル41A,41B,41Cの繋ぎ目に位置するときに、繋ぎ目以外の部分に位置するとき(図7に示す状態)と比較して、電力伝送効率が低くなることを抑えることができる。
【0049】
図7および図8に示すように、給電装置19では、上述したように各送電コイル41A,41B,41Cに交流電流を印加することにより、シート11の下方に位置している送電コイルのみに交流電流が印加されるようになる。しかも、各送電コイル41A,41B,41Cの車両前後方向Lの長さがシート11の下端部の車両前後方向Lの長さよりも短い。そのため、各送電コイルの車両前後方向Lの長さがシート11の下端部の車両前後方向Lの長さ以上の装置と比較して、交流電流が印加されている送電コイル41A,41B,41Cがシート11の下部からはみ出すことが抑えられる。したがって、交流電力の印加によって送電コイル41A,41B,41Cから出力される電磁波がシート11が位置している部分以外の部分に漏洩することが抑えられるため、その電磁波がシート11以外の部分に設けられた電装品に悪影響を及ぼすことを抑えることができる。
【0050】
図2および図3に示すように、本実施形態では、送電ユニット40のコイル部43(各送電コイル41)および受電ユニット50のコイル部43(受電コイル51)が、ロアレール20およびアッパレール30によって囲まれた部分の内部に配置されている。ロアレール20およびアッパレール30は金属板によって形成されているため、それらロアレール20およびアッパレール30により、ノイズに対するシールド効果を得ることができる。そのため、給電装置19による電力伝送に伴って発生する電磁波がスライドレール12の外部に漏れ出して外部機器に悪影響を及ぼすことや、外部のノイズがスライドレール12内に侵入して給電装置19による電力伝送に悪影響を及ぼすことを抑えることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)送電ユニット40は車両前後方向Lに延びる形状でロアレール20に一体に設けられており、受電ユニット50は、受電コイル51の車両下方側の開口部と送電ユニット40の送電コイル41の車両上方側の開口部とが対向するように、車両前後方向Lに延びる形状でアッパレール30に一体に設けられている。そのため、簡素な構造で、シート11のスライド位置によることなく安定した電力伝送効率を得ることができる。
【0052】
(2)各送電コイル41および受電コイル51が、ロアレール20およびアッパレール30によって囲まれた部分の内部に配置されている。そのため、給電装置19による電力伝送に伴って発生する電磁波がスライドレール12の外部に漏れ出して外部機器に悪影響を及ぼすことや、外部のノイズがスライドレール12内に侵入して給電装置19による電力伝送に悪影響を及ぼすことを抑えることができる。
【0053】
(3)給電装置19は車両前後方向Lに並ぶ3つの送電コイル41を有している。そのため、送電が不要な部分に位置する送電コイル41への交流電流の印加を停止して同送電コイル41からの送電を停止することができ、送電ユニット40からの送電を効率よく行うことができる。
【0054】
(4)シート11の下方に位置している送電コイル41のみに交流電流が印加される。そのため、シート11以外の部分に位置する電装品に対して、交流電力の印加によって送電コイル41から出力される電磁波が悪影響を及ぼすことを抑えることができる。
【0055】
(5)各送電コイル41の車両前後方向Lの長さがシート11の下端部の車両前後方向Lの長さよりも短くなっている。そのため、上記電磁波がシート11以外の部分に位置する電装品に悪影響を及ぼすことを好適に抑えることができる。
【0056】
(6)3つの送電コイル41のうちの受電コイル51に正対しているコイルにのみ交流電流が印加されるために、給電装置19による給電を効率よく行うことができる。
(7)3つの送電コイル41を、その巻線における車両前後方向Lに延びる部分が一辺になる長方形のコイルにした。そのため、受電コイル51が各送電コイル41の繋ぎ目に位置するときに、繋ぎ目以外の部分に位置するときと比較して、電力伝送効率が低くなることを抑えることができる。
【0057】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・送電ユニット40の電磁シールドシート45を省略したり、受電ユニット50の電磁シールドシート56を省略したりしてもよい。
【0058】
・送電ユニット40のコイル部43と制御部44とを別体にしてもよい。この場合には、制御部44を、ロアレール20に取り付けることの他、車体13に取り付けるようにしてもよい。
【0059】
・受電ユニット50のコイル部53と変換部55とを別体にしてもよい。この場合には、変換部55を、アッパレール30に取り付けることの他、シート11に取り付けることもできる。
【0060】
・受電ユニット50から直流電力を供給する電装品としては、シート11に取り付けられた電装品であればよく、乗員の手元を照らすランプ(例えば読書灯)などを採用することもできる。
【0061】
・全ての送電コイル41に交流電流を常時印加するようにしてもよい。この場合には、交流電流を印加する状態と印加しない状態とを送電コイル41毎に切り替えるための構成や、シート位置センサ15を省略することができる。
【0062】
図9(a)および図9(b)に示すように、隣り合う送電コイル61の隙間Gが大きい給電装置においては、各送電コイル61の形状を、上記隙間Gに隣接する端部62が同端部62以外の部分よりも車両上方側(受電コイル63側)に突出する形状にしてもよい。
【0063】
上記給電装置では、シート11がスライドして上記隙間Gを含む部分に受電コイル63の開口部が対向するようになると、その隙間Gの分だけ送電コイル61の開口部と受電コイル63の開口部とが対向する面積が小さくなって、電力伝送効率の低下を招くおそれがある。上記給電装置によれば、そうしたスライド位置になったときに、そうでないときと比較して、送電コイル61(詳しくは、その端部62)と受電コイル63との距離が近くなるため、単位面積当たりの電力伝送効率が高くなる。そのため、シート11のスライド位置の変化に伴う電力伝送効率の変化を抑えることができる。
【0064】
図10に示すように、隣り合う送電コイル71の隙間Gが大きい給電装置においては、その隙間Gに磁性材料(フェライト)からなる磁性部72を配置するようにしてもよい。こうした給電装置では、隣り合う送電コイル71の隙間Gがあるとはいえ、その隙間Gに配置された磁性部72により、隙間Gの磁束密度が他の部分の磁束密度よりも低くなることが抑えられる。そのため、シート11のスライド位置の変化に伴う電力伝送効率の変化を抑えることができる。
【0065】
・ロアレール20の一端から他端まで延びる1つの送電コイルを設けるようにしてもよい。こうした給電装置によれば、同装置を簡素な構造にすることができる。しかも、コイルの巻線の量を少なくすることができるため、装置の軽量化を図ることもできる。また、2つの送電コイルを長手方向に並ぶように設けたり、4つ以上の送電コイルを長手方向に並ぶように設けたりすることも可能である。要は、製造方法やシートスライド量、製造コスト、給電効率などを考慮して、送電コイルの数や形状を定めればよい。
【0066】
・給電装置の送電ユニットおよび受電ユニットを、スライドレール12の外部に配置してもよい。こうした給電装置は、具体的には、次のように構成することができる。給電装置は、ロアレール20に一体に設けられて同ロアレール20と平行に延びる第1部材と、アッパレール30に一体に設けられて上記第1部材と平行に延びる第2部材とを備える。第1部材における上記第2部材との対向面には、車両前後方向Lに延びるように送電ユニットが取り付けられる。また、第2部材における上記第1部材との対向面には、車両前後方向Lに延びるように受電ユニットが取り付けられる。第1部材(送電ユニット)と第2部材(受電ユニット)とは、互いの距離を一定に保ちつつ、車両前後方向Lにおいて相対移動可能な形状に形成されている。
【0067】
・上記実施形態のスライドレールおよび給電装置は、電磁誘導方式の給電装置が設けられた車両の他、磁界共鳴方式の給電装置が設けられた車両や、直流共鳴方式の給電装置が設けられた車両にも適用することができる。また上記実施形態のスライドレールおよび給電装置は、送電用のコイルおよび受電用のコイルを利用する方式の給電装置が設けられた車両に限らず、送電用の電極と受電用の電極との間に発生する電界を利用する電界結合方式の給電装置が設けられた車両にも適用することができる。こうした構成では、送電用の電極が送電部に相当し、受電用の電極が受電部に相当する。その他、送信用のアンテナと受信用のアンテナとの間での電磁波の送受信を利用する電波方式の給電装置が設けられた車両にも、上記実施形態のスライドレールおよび給電装置は適用可能である。こうした構成では、電磁波を送信する送信用のアンテナが送電部に相当し、電磁波を受信する受信アンテナが受信部に相当する。
【符号の説明】
【0068】
10…車両、11…シート、12…スライドレール、13…車体、15…シート位置センサ、16…電源回路、17…着座センサ、18…シートベルトセンサ、19…給電装置、20…ロアレール、21…底壁部、22…凸部、23…凹溝、24…ボルト、25…外壁部、26…折り返し部、27…ロック孔、30…アッパレール、31…連結部、32…固定部、33…内側壁、34…外側壁、35…ローラ、36…摺動部、37…レバー、38…係止凸部、40…送電ユニット、41,41A,41B,41C,61,71…送電コイル、43…コイル部、44…制御部、45…電磁シールドシート、50…受電ユニット、51,63…受電コイル、53…コイル部、54…変換回路、55…変換部、56…電磁シールドシート、62…端部、72…磁性部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10