【課題】吐出部材内に2液を混合する部位を設けなくても、それぞれ別々に吐出された2種の吐出物が吐出後に互いに接触し、自動的に吐出物が混ざり合う利便性の高い2液式エアゾール製品を提供する。
【解決手段】油性溶媒と第1の界面活性剤とを含む油性原液と、第1の噴射剤とを含む油性エアゾール組成物が充填された第1のエアゾール容器と、水と第2の界面活性剤とを含む水性原液と、第2の噴射剤とを含む水性エアゾール組成物が充填された第2のエアゾール容器と、両エアゾール組成物を吐出するための吐出部材とを備え、第1の噴射剤および第2の噴射剤は、少なくともいずれか一方が液化ガスであり、吐出部材は、両エアゾール組成物が互いに接触するよう吐出するノズルを備える2液式エアゾール製品。
前記ノズルは、前記油性エアゾール組成物と前記水性エアゾール組成物とを略平行に吐出し、前記油性エアゾール組成物と前記水性エアゾール組成物とを互いに接触するよう吐出するノズルである、請求項1記載の2液式エアゾール製品。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[2液式エアゾール製品]
本発明の一実施形態の2液式エアゾール製品について詳細に説明する。
図1は、本実施形態の2液式エアゾール製品1の模式的な断面図である。本実施形態の2液式エアゾール製品1は、油性エアゾール組成物A1が充填された第1のエアゾール容器21と、水性エアゾール組成物A2が充填された第2のエアゾール容器22と、それぞれのエアゾール容器の開口部に固着されるエアゾールバルブ(第1のエアゾールバルブ31および第2のエアゾールバルブ32)と、それぞれのエアゾールバルブに装着される吐出部材4とを主に備える。吐出部材4は、エアゾール組成物および水性エアゾール組成物A2を吐出するための部材である。以下、それぞれについて説明する。なお、2液式エアゾール製品1の構成は、本実施形態に限定されない。そのため、以下に示される2液式エアゾール製品1の構成は例示であり、適宜設計変更を行うことができる。また、以下の説明において、同様の構成には同じ参照符号を付し、説明を適宜省略する。
【0016】
<第1のエアゾール容器21>
第1のエアゾール容器21は、油性エアゾール組成物A1が充填される容器である。油性エアゾール組成物A1は、油性溶媒と第1の界面活性剤とを含む油性原液と、第1の噴射剤とを含む。
【0017】
第1のエアゾール容器21は、油性エアゾール組成物A1を加圧充填するための耐圧容器である。第1のエアゾール容器21は、有底筒状であり、開口部に第1のエアゾールバルブ31を固着するための開口部が形成されている。第1のエアゾール容器21の材質は特に限定されない。一例を挙げると、第1のエアゾール容器21は、アルミニウムやブリキなどの金属、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂、耐圧ガラス等からなる。
【0018】
(油性原液)
・油性溶媒
油性溶媒は、油性原液の主成分であり、吐出されると油性溶媒と後述する第1の界面活性剤とを含んだ油性原液が噴射剤により発泡され、油性フォームの液膜を構成する。
【0019】
油性溶媒としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸オクチル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、イソオクタン酸セチル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2−エチルへキサン酸トリメチロールプロパン、ネオペンタン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、クエン酸トリエチル、コハク酸ジオクチル、アジピン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチルなどのエステル油、オリーブ油、アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、ホホバ油、麦芽油、ヤシ油、パーム油などの油脂類、ケロシン、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、イソパラフィンなどの炭化水素油、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、シクロペンタシロキサンなどのシリコーンオイル、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、ラノリンアルコール、ヘキシルドデカノール、セトステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸などの高級脂肪酸、ミツロウ、ラノリン、カンデリラロウ、カルナウバロウなどのロウ類等が例示される。油性溶媒は、特に発泡しやすい点からエステル油、油脂類であることが好ましい。
【0020】
油性溶媒の含有量は、油性原液中、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましい。また、油性溶媒の含有量は、油性原液中、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。油性溶媒の含有量が60質量%未満である場合、油性溶媒の発泡性が悪くなり、水性エアゾール組成物A2と混ざりにくくなる傾向がある。一方、油性溶媒の含有量が98質量%を超える場合、第1の界面活性剤や任意の有効成分を必要量含有させにくくなる傾向がある。
【0021】
・第1の界面活性剤
第1の界面活性剤は、噴射剤が気化して膨張することにより油性原液を発泡させ、吐出された油性エアゾール組成物A1の吐出物が水性エアゾール組成物A2の吐出物と混ざりやすくするために含有される。第1の界面活性剤としては、モノラウリン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル、モノカプリン酸ジグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸ペンタグリセリル、モノミリスチン酸ペンタグリセリル、モノステアリン酸ペンタグリセリル、モノオレイン酸ペンタグリセリル、ヘキサステアリン酸ペンタグリセリル、トリミリスチン酸ペンタグリセリル、トリオレイン酸ペンタグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル、ペンタオレイン酸デカグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸POEグリセリル、モノオレイン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、POE・POPセチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEイソセチルエーテル、POEイソステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ステアリン酸POEセチルエーテル、イソステアリン酸POEラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、モノヤシ油脂肪酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノラウリン酸POEソルビット、テトラステアリン酸POEソルビット、テトラオレイン酸POEソルビットなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤等が例示される。これらの中でも、油性溶媒を発泡させやすい点から、第1の界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0022】
第1の界面活性剤の含有量は、油性原液中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、第1の界面活性剤の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。第1の界面活性剤の含有量が1質量%未満である場合、吐出物は、発泡性が低く、フォームを形成しにくい。一方、第1の界面活性剤の含有量が20質量%を超える場合、第1の界面活性剤は、吐出面に残りやすく、使用感が低下しやすい。
【0023】
・任意成分
油性原液は、上記した油性溶媒および第1の界面活性剤のほかに、製品の性能や目的などに応じて、有効成分、粉体等が含有されてもよい。
【0024】
有効成分としては、塩化マグネシウム等の発熱成分、サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェンなどの消炎鎮痛剤、l−メントール、カンフルなどの清涼化剤、パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、オクトクレリン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、パラアミノ安息香酸などの紫外線吸収剤、レチノールなどの油溶性ビタミン、ディート、ユーカリオイルなどの害虫忌避剤、尿素などの保湿剤、過酸化水素、酸化酵素などの酸化剤、香料等が例示される。なお、有効成分が水溶性である場合は、有効成分自体を、または、有効成分を少量の水に溶解させて界面活性剤で油性溶媒中に乳化させてもよい。
【0025】
有効成分が含有される場合の含有量は、油性原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が0.1質量%未満である場合、有効成分の効果が不充分になりやすい傾向がある。一方、有効成分の含有量が30質量%を超える場合、過剰になりやすい傾向がある。
【0026】
粉体としては、タルク、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、シリカ、ゼオライト、セラミックパウダー、炭粉末、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、シリコーンパウダー、ポリエチレンパウダー等が例示される。
【0027】
粉体が含有される場合の含有量は、油性原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、粉体の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。粉体の含有量が0.01質量%未満である場合、粉体を含有する効果が得られにくい傾向がある。一方、粉体の含有量が5質量%を超える場合、油性エアゾール組成物A1は、バルブや吐出部材の吐出孔で詰まりやすくなる傾向や、静置した状態で長期間保存した場合、粉体が容器底部で固まりやすくなり(ケーキング)、均一な組成物を吐出しにくい傾向がある。
【0028】
油性原液の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、油性原液は、油性溶媒に第1の界面活性剤や、適宜の任意成分を添加することにより調製することができる。
【0029】
油性原液の含有量は、後述する噴射剤として液化ガスが用いられる場合は油性エアゾール組成物A1中、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましい。また、油性原液の含有量は、油性エアゾール組成物A1中、97質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。油性原液の含有量が60質量%未満である場合、得られる油性フォームが粗くなりすぎ、混合作用が得られる前に壊れやすい傾向がある。一方、油性原液の含有量が97質量%を超える場合、フォームの発泡が小さく、水性エアゾール組成物A2の吐出物との混合効果が不充分となりやすい傾向がある。
【0030】
(第1の噴射剤)
第1の噴射剤は、外部に吐出されると油性原液を発泡させて油性フォームを形成し、水性エアゾール組成物A2の吐出物と混ざりやすくする等の目的で含有される。
【0031】
第1の噴射剤としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン、トランス−2,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エンなどのハイドロフルオロオレフィン、ジメチルエーテル、およびこれらの混合物などの液化ガス;炭酸ガス、亜酸化窒素、窒素、圧縮空気、およびこれらの混合物などの圧縮ガス;等が例示される。これらの中でも、特に油性原液を発泡させて水性エアゾール組成物A2の吐出物との混合効果が得られやすい点から、噴射剤は、液化ガスが用いることが好ましい。なお、本実施形態の2液式エアゾール製品1は、第1の噴射剤および後述する第2の噴射剤のうち、少なくともいずれか一方が液化ガスであればよい。これにより、油性エアゾール組成物A1または後述する水性エアゾール組成物A2のうち、噴射剤として液化ガスを含む少なくともいずれか一方が、吐出後に液化ガスの気化によって充分に膨張する。その結果、吐出後の油性エアゾール組成物A1および水性エアゾール組成物A2とは、互いに接触しやすい。
【0032】
噴射剤として液化ガスが用いられる場合の液化ガスの含有量は、油性エアゾール組成物A1中、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、液化ガスの含有量は、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。液化ガスの含有量が3質量%未満である場合、発泡性が不充分となり、水性エアゾール組成物A2の吐出物との混合効果が不充分となりやすい傾向がある。一方、液化ガスの含有量が40質量%を超える場合、油性フォームが粗くなりすぎ、混合作用が得られる前に壊れやすい傾向がある。なお、噴射剤として圧縮ガスが用いられる場合は、エアゾール容器の内圧が油性エアゾール組成物を吐出するために適切な内圧となる充填量であればよく、特に限定されない。一例を挙げると、油性エアゾール組成物を充填したエアゾール容器の内圧は、25℃において0.3〜0.8MPaである。
【0033】
油性エアゾール組成物A1全体の説明に戻り、本実施形態の油性エアゾール組成物A1を調製する方法は特に限定されない。一例を挙げると、油性エアゾール組成物A1は、周知のエアゾール容器内に油性原液を充填し、エアゾール容器の開口部にエアゾールバルブ(第1のエアゾールバルブ31)を取り付け、バルブから噴射剤を充填し、油性原液と噴射剤とを混合することにより調製することができる。
【0034】
得られた油性エアゾール組成物A1は、使用者によって吐出部材4が操作されることにより、外部に吐出される。吐出された油性エアゾール組成物A1は、噴射剤によって油性原液が発泡し、油性フォームを形成する。得られる油性フォームは、25℃における泡密度が0.05g/ml以上であることが好ましく、0.07g/ml以上であることがより好ましい。また、25℃における泡密度は、0.40g/ml以下であることが好ましく、0.35g/ml以下であることがより好ましい。泡密度が上記範囲内にある場合、油性エアゾール組成物A1は、ノズルの吐出孔から吐出された後、適度に膨張、発泡して水性エアゾール組成物A2の吐出物と混ざりやすい。
【0035】
また、得られた油性フォームを有底筒状のカップに充填し、このフォームに上から円板で荷重をかけた際にフォームから受ける最大の弾発力(泡の硬度)が10mN以上であることが好ましく、20mN以上であることがより好ましい。また、このフォームに上から円板で荷重をかけた際にフォームから受ける最大の弾発力(泡の硬度)が200mN以下であることが好ましく、100mN以下であることがより好ましい。泡密度が上記範囲内にある場合、油性エアゾール組成物A1は、ノズルの吐出孔44から吐出され、発泡した後に、適度に形がくずれて消泡しやすいため水性エアゾール組成物A2の吐出物と混ざりやすい。なお、上記泡の硬度は容積20mlのカップに油性エアゾール組成物A1を吐出し、容器からはみ出した分のフォームをすりきった後に、直径10mmの円板で100mm/minの速さで10mm押し下げた際にフォームから受ける最大の荷重である。
【0036】
<第2のエアゾール容器22>
第2のエアゾール容器22は、水性エアゾール組成物A2が充填される容器である。水性エアゾール組成物A2は、水と第2の界面活性剤とを含む水性原液と、第2の噴射剤とを含む。
【0037】
第2のエアゾール容器22は、水性エアゾール組成物A2を加圧充填するための耐圧容器である。第2のエアゾール容器22は、上記した第1のエアゾール容器21と同様の形状、材質であってもよい。
【0038】
(水性原液)
水性原液は、水と、第2の界面活性剤とを主に含む。
【0039】
・水
水は、水性原液の主成分であり、吐出されると後述する第2の界面活性剤と噴射剤の気化により発泡して水性フォームやクリームの液膜を構成する。また、水は、油分に溶解しない有効成分を溶解するための溶媒や、吐出される水性フォームの発泡性を向上させる等の目的で含有される。
【0040】
水の含有量は、水性原液中、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。また、水の含有量は、水性原液中、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が50質量%未満である場合、吐出物は、発泡性が悪くなり、油性エアゾール組成物A1と混合されにくい傾向がある。一方、水が99質量%を超える場合、第2の界面活性剤や他の成分を必要量含有させにくくなる傾向がある。
【0041】
・第2の界面活性剤
第2の界面活性剤は、水性原液を発泡させやすくする、吐出された水性エアゾール組成物A2の吐出物が油性エアゾール組成物A1の吐出物と混ざりやすくする等の目的で含有される。第2の界面活性剤は、上記した第1の界面活性剤と同じであってもよく、異なっていてもよい。具体的には、第2の界面活性剤は、油性エアゾール組成物A1で第1の界面活性剤として例示した非イオン性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、ラウリン酸カリウムなどの脂肪酸石鹸、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ミリスチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ラウリルリン酸などのアルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸などのポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などの陰イオン性界面活性剤;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムなどのアルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミンなどのポリオキシエチレンアルキルアミンなどの陽イオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(ラウリルベタイン)、ステアリルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、オクタデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタインなどのアルキルベタイン、ヤシ酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(コカミドプロピルベタイン)、コカミドプロピルヒドロキシスルタインなどの脂肪酸アミドプロピルベタインなどのベタイン型、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン(ココアンホ酢酸)などのアルキルイミダゾール型、ラウリルジメチルアミンN−オキシド、オレイルジメチルアミンN−オキシドなどのアミンオキシド型などの両性界面活性剤;ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体などのシリコーン系界面活性剤;N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸カリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ラウロイル−L−グルタミン酸カリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸カリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウムおよびN−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸塩;N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸、N−ラウロイル−L−グルタミン酸、N−ステアロイル−L−グルタミン酸などのN−アシルグルタミン酸、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウムなどのN−アシルグリシン塩、N−ヤシ油脂肪酸アシル−DL−アラニントリエタノールアミンなどのN−アシルアラニン塩などのアミノ酸系界面活性剤等が例示される。
【0042】
第2の界面活性剤の含有量は、水性原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、第2の界面活性剤の含有量は、15質量%以下であることが好ましく、10量%以下であることがより好ましい。第2の界面活性剤の含有量が0.1質量%未満である場合、吐出物は、発泡性が低く、油性エアゾール組成物A1の油性フォームと混合されにくい傾向がある。一方、第2の界面活性剤の含有量が15質量%を超える場合、吐出面に残りやすく、使用感が低下しやすい傾向がある。
【0043】
・任意成分
水性原液は、上記した水および第2の界面活性剤のほかに、製品の性能や目的などに応じて、有効成分、アルコール、粘度調整剤、油性成分、粉体が含有されてもよい。
【0044】
有効成分は、油性エアゾール組成物中に含まれる有効成分の効果を補助したり、他の効果を得る等の目的で適宜含有される。有効成分としては、l−メントール、カンフル、ミントオイルなどの清涼剤;緑茶エキス、柿タンニン、銀、ポリフェノールなどの消臭成分;ヒアルロン酸、乳酸ナトリウム、dl−ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、レシチン、尿素、ホホバエステル、ソルビトール等の保湿剤;アスコルビン酸、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤;パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸ナトリウム、dl−α−トコフェロール、酢酸トコフェロール等のビタミン類;アラントインヒドロキシアルミニウム、クエン酸、ミョウバン等の収斂剤;塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸リドカイン、リドカイン等の局所麻酔剤;ジフェンヒドラミン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム等の抗炎症剤;クロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛等の制汗成分;パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、感光素、パラクロルメタクレゾールなどの殺菌消毒剤;ラフェニレンジアミン、硫酸パラフェニレンジアミン、パラトルイレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−パラフェニレンジアミン、N−フェニル−パラフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルアミン、2−クロロパラフェニレンジアミン、N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、メタアミノフェノール、オルトアミノフェノールなどの酸化染料;赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、赤色232号、だいだい色205号、黄色202号、黄色203号、緑色201号、緑色204号、青色203号、かっ色201号、赤色401号、だいだい色402号、黄色403号、緑色401号、紫色401号、黒色401号など色素;香料等が例示される。
【0045】
有効成分が含有される場合の含有量は、水性原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が0.1質量%未満である場合、有効成分の効果が不充分になりやすい傾向がある。一方、有効成分の含有量が30質量%を超える場合、過剰になりやすい傾向がある。
【0046】
アルコールは、吐出物の発泡性および消泡性を調整し、油性フォームとの混合効果を調整する等の目的で適宜含有される。アルコールとしては、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数2〜3個の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどの炭素数が3〜5個の多価アルコール等が例示される。
【0047】
アルコールが含有される場合の含有量は、水性原液中、0.5質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、水性原液中、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が0.5質量%未満である場合、所望される効果が充分に得られない傾向がある。一方、アルコールの含有量が40質量%を超える場合、吐出物は、発泡しにくくなり、油性エアゾール組成物A1の油性フォームとの混合効果が不充分になりやすい傾向がある。
【0048】
粘度調整剤は、水性原液の粘度を調整して吐出物の発泡性および消泡性を調整し、油性フォームとの混合効果を調整する等の目的で適宜含有される。粘度調整剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系高分子、キサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガムなどのガム質、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、デンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、変性ポテトスターチ、カルボキシビニルポリマー等が例示される。
【0049】
粘度調整剤が含有される場合の含有量は、水性原液中、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、粘度調整剤の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。粘度調整剤の含有量が0.05質量%未満である場合、所望される効果が充分に得られない傾向がある。一方、粘度調整剤の含有量が5質量%を超える場合、水性原液の粘度が高くなりすぎて、発泡しにくくなり、油性フォームと混合されにくくなる傾向がある。
【0050】
油性成分は、吐出物をクリーム状にしたり、吐出物の発泡性や消泡性を調整し、油性フォームとの混合状態を調整する等の目的で適宜含有される。油性成分としては、油性エアゾール組成物A1で例示したエステル油、油脂、炭化水素油、シリコーンオイル、高級アルコール、高級脂肪酸、ロウ類等が例示される。
【0051】
油分が含有される場合の含有量は、水性原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、油分の含有量は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。油分の含有量が0.01質量%未満である場合、所望される効果が充分に得られない傾向がある。一方、油分の含有量が25質量%を超える場合、発泡しにくくなり、油性フォームと混合されにくくなる傾向がある。
【0052】
粉体は、油性フォームによるべたつきを低減する等、使用感を向上させる目的で適宜含有される。粉体としては、油性エアゾール組成物A1で例示したものが同様に使用され得る。
【0053】
粉体が含有される場合の含有量は、油性原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、粉体の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。粉体の含有量が0.01質量%未満である場合、粉体を含有する効果が得られにくい傾向がある。一方、粉体の含有量が5質量%を超える場合、水性エアゾール組成物A2は、バルブや吐出部材の吐出孔で詰まりやすくなる傾向や、静置した状態で長期間保存した場合、粉体が容器底部で固まりやすくなり(ケーキング)、均一な組成物を吐出しにくい傾向がある。
【0054】
水性原液の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、水性原液は、水に第2の界面活性剤や、適宜の任意成分を添加することにより調製することができる。
【0055】
水性原液の含有量は、後述する噴射剤として液化ガスが用いられる場合は水性エアゾール組成物A2中、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましい。また、水性原液の含有量は、水性エアゾール組成物A2中、97質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。水性原液の含有量が60質量%未満である場合、得られる吐出物(水性フォーム)が粗くなって壊れやすい傾向がある。一方、水性原液の含有量が97質量%を超える場合、吐出物の発泡が小さくなり、油性フォームとの混合効果が不充分になりやすい傾向がある。
【0056】
(第2の噴射剤)
第2の噴射剤は、外部に吐出された水性原液を発泡させる、水性フォームと油性フォームとを混合しやすくする等の目的で含有される。第2の噴射剤としては、油性エアゾール組成物A1の説明において例示したものが同様に使用され得る。第2の噴射剤は、それらの中でも、特に、水性原液を発泡させて油性フォームとの混合効果が得られやすい点から、液化ガスが用いられることが好ましい。
【0057】
第2の噴射剤として液化ガスが用いられる場合、液化ガスの含有量は、水性エアゾール組成物A2中、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、液化ガスの含有量は、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。液化ガスの含有量が3質量%未満である場合、吐出物の発泡性が不充分となり、油性フォームとの混合効果が不充分になりやすい。一方、液化ガスの含有量が40質量%を超える場合、水性フォームが粗くなって壊れやすい傾向がある。なお、油性エアゾール組成物A1と同様に、噴射剤として圧縮ガスが用いられる場合は、エアゾール容器の内圧が水性エアゾール組成物A2を吐出するために適切な内圧となる充填量であればよく、特に限定されない。一例を挙げると、水性エアゾール組成物A2を充填したエアゾール容器の内圧は、25℃において0.3〜0.8MPaである。
【0058】
本実施形態の水性エアゾール組成物A2を調製する方法は特に限定されない。一例を挙げると、水性エアゾール組成物A2は、周知のエアゾール容器内に水性原液を充填し、エアゾール容器の開口部にエアゾールバルブ(第2のエアゾールバルブ32)を取り付け、バルブから噴射剤を充填し、水性原液と噴射剤とを混合することにより調製することができる。
【0059】
得られた水性エアゾール組成物A2は、使用者によって吐出部材4が操作されることにより、外部に吐出される。吐出された水性エアゾール組成物A2は、噴射剤によって水性原液が発泡し、水性フォームを形成する。得られる水性フォームは、25℃における泡密度が0.01g/ml以上であることが好ましく、0.02g/ml以上であることがより好ましい。また、25℃における泡密度は、0.10g/ml以下であることが好ましく、0.07g/ml以下であることがより好ましい。泡密度が上記範囲内にある場合、水性エアゾール組成物A2は、ノズルの吐出孔から吐出された後、適度に膨張して油性エアゾール組成物A1の吐出物と混ざりやすい。
【0060】
なお、得られた油性フォームと水性フォームの25℃における泡密度の比が1:0.1〜1:0.5であることが好ましい。泡比重の比が前述の範囲にすることにより、油性フォームと水性フォームとがより混ざりやすくなる。
【0061】
また、得られた水性フォームを有底筒状のカップに充填し、このフォームに上から円板で荷重をかけた際にフォームから受ける最大の弾発力(泡の硬度)が10mN以上であることが好ましく、20mN以上であることがより好ましい。また、このフォームに上から円板で荷重をかけた際にフォームから受ける最大の弾発力(泡の硬度)が200mN以下であることが好ましく、100mN以下であることがより好ましい。泡密度が上記範囲内にある場合、水性エアゾール組成物A2は、ノズルの吐出孔44から吐出され、発泡した後に、適度に形がくずれて消泡しやすいため油性エアゾール組成物A1の吐出物と混ざりやすい。なお、上記泡の硬度は容積20mlのカップに水性エアゾール組成物A2を吐出し、容器からはみ出した分のフォームをすりきった後に、直径10mmの円板で100mm/minの速さで10mm押し下げた際にフォームから受ける最大の荷重である。
【0062】
<第1のエアゾールバルブ31>
第1のエアゾールバルブ31は、第1のエアゾール容器21の開口部に保持されるマウンティングカップ51と、マウンティングカップ51の中央に保持されるハウジング52と、ハウジング52内に上下動自在に収容されるステム53と、ステム53に形成されたステム孔54を開閉するためのステムラバー55と、ステム孔54がステムラバー55によってシールされるようにステム53を常時上向きに付勢するスプリングと、その上面でマウンティングカップ51を覆い、その円筒状の外周部をエアゾール容器にクリンプして固着するカバーキャップを備える。ハウジング52の底面には、油性エアゾール組成物A1をハウジング52内に取り込むための取込孔56が形成されている。また、ハウジング52の底面には、油性エアゾール組成物A1をハウジング52内に取り込むためのディップチューブ57が取り付けられている。
【0063】
なお、本実施形態の2液式エアゾール製品1は、正立状態で使用することが想定されている。そのため、それぞれのエアゾール容器に充填(貯留)されたエアゾール組成物を取り出すためにディップチューブ57が設けられている。一方、倒立状態で使用される場合には、ディップチューブ57は、省略されてもよい。
【0064】
<第2のエアゾールバルブ32>
第2のエアゾールバルブ32は、第2のエアゾール容器22に取り付けられ、水性エアゾール組成物A2を取り込むこと以外は、第1のエアゾールバルブ31と同様の構成である。
【0065】
<吐出部材4>
吐出部材4は、油性エアゾール組成物A1および水性エアゾール組成物A2を吐出するための部材である。吐出部材4は、第1のエアゾールバルブ31のステム53および第2のエアゾールバルブ32のステム53に装着される。
図2は、吐出部材4の平面図である。吐出部材4は、第1のエアゾールバルブ31および第2のエアゾールバルブ32に取り付けられる本体部41と、本体部41の側周面に形成されたノズル部42と、それぞれのエアゾールバルブに装着され、2つのエアゾール容器を並列に連結し、かつ、本体部41の周囲を覆うカバー部材43とから主に構成される。ノズル部42の先端開口は、油性エアゾール組成物A1および水性エアゾール組成物A2が吐出される吐出孔44である。
【0066】
図2に示されるように、吐出部材4の内部には、それぞれのエアゾールバルブから吐出孔44までを連通する通路(第1通路P1および第2通路P2)が形成されている。また、ノズル部42の内部は、隔壁45によって区画されている。これにより、第1通路P1を通過する油性エアゾール組成物A1と、第2通路P2を通過する水性エアゾール組成物A2とは、吐出孔44から略平行に吐出され得る。油性エアゾール組成物A1と水性エアゾール組成物A2とは、吐出されるまでは混合されることなく、吐出孔44から吐出された後に発泡し、接触し得る。また、
図2に示されるように、本実施形態の吐出部材4の内部には、油性エアゾール組成物A1および水性エアゾール組成物A2を混合するための別途の部材が設けられていない。そのため、第1通路P1および第2通路P2内には、混合された油性エアゾール組成物A1および水性エアゾール組成物A2が残存しにくく、衛生的である。
【0067】
なお、隔壁45の厚みは特に限定されない。すなわち、吐出された油性エアゾール組成物A1および水性エアゾール組成物A2のうち少なくともいずれか一方には、液化ガスが含まれる。そのため、吐出された際に液化ガスが気化して膨張することにより、吐出された油性エアゾール組成物A1および水性エアゾール組成物A2のうち少なくともいずれか一方の吐出物は、液化ガスの気化により発泡する。隔壁の厚みは、このような膨張を経て、油性エアゾール組成物A1と水性エアゾール組成物A2とが互いに接触し得るような厚みであればよい。言い換えると、吐出孔44のうち、油性エアゾール組成物A1の吐出される第1の吐出孔44aと、水性エアゾール組成物A2の吐出される第2の吐出孔44bとが、離れすぎることなく適度に近接された位置に形成されていればよい。また、隔壁45の厚みは、吐出される油性エアゾール組成物A1または水性エアゾール組成物A2がどの程度膨張し得るかによって、膨張後の両エアゾール組成物が互いに接触し得る厚みに調節されてもよい。
【0068】
また、
図2では、ノズル部42内の第1通路P1と第2通路P2とは、いずれも吐出孔44の近傍において、略平行となるよう形成されている。このように、第1通路P1および第2通路P2が略平行に形成されている場合、吐出された油性エアゾール組成物A1および水性エアゾール組成物A2は、同じ方向に進行しながら液化ガスが気化し膨張することに他方のフォーム側にも拡がり、溶解性の違いから進行方向が複雑に変化してより確実に接触しやすい。なお、第1通路P1および第2通路P2が略平行に形成されている場合のほか、本実施形態の第1通路P1および第2通路P2は、いずれも所定の角度だけ傾いていてもよい。一例を挙げると、油性エアゾール組成物A1および水性エアゾール組成物A2は、本実施形態で例示したように略平行に吐出されてもよく、所定の角度で互いに衝突する方向に吐出されてもよい。
【0069】
さらに、隔壁45によって吐出孔44を区画する態様は特に限定されない。一例を挙げると、隔壁45は、本実施形態で例示したように吐出孔44を左右に区画するよう形成されている場合の他、油性エアゾール組成物A1または水性エアゾール組成物A2のいずれかが他方を覆うように上下に区画するよう形成されてもよく、油性エアゾール組成物A1または水性エアゾール組成物A2のいずれかが他方の内部に包含されるように二重円筒状に区画するよう形成されてもよい。
【0070】
図3は、本実施形態の2液式エアゾール製品1から吐出された吐出物の外観写真である。なお、
図3の吐出物は、後述する実施例1の吐出物の外観写真である。ノズル部42から吐出された油性エアゾール組成物A1および水性エアゾール組成物A2は、噴射剤として液化ガスが含まれるため吐出後に液化ガスが気化して吐出物が発泡し、互いに接触する。この際、油性エアゾール組成物A1と水性エアゾール組成物A2とは溶解性が異なる。その結果、吐出物同士(油性フォームと水性フォーム)は相溶しにくい。したがって、それぞれの吐出物は、ノズルから放射状に膨張し、溶解性の違いから吐出物同士が反発して吐出方向が変化して混ざり合う。このように、本実施形態の2液式エアゾール製品1によれば、たとえば吐出部材4内に2液を混合する部位を設けなくても、それぞれ別々に吐出された2種の吐出物が吐出後に互いに接触し、自動的に混ざり合う。また、使用者によって吐出物を混ぜ合わせる操作が必須ではない。その結果、2液式エアゾール製品1の製造者は、どの程度混ざり合う製品とするか、製造者側で設計することができる。したがって、得られる2液式エアゾール製品1の性能や品質を管理しやすい。なお、このように本実施形態の2液式エアゾール組成物は、吐出物を混合することが必須でない。しかしながら、使用者は、適宜、得られる吐出物を任意に混合してから用いてもよい。
【0071】
なお、本実施形態の2液式エアゾール製品によって得られる吐出物は、上記のとおり、油性エアゾール組成物A1と水性エアゾール組成物A2とが使用者が混合しなくても自動的に混ざり合う。この際、両エアゾール組成物がどの程度混ざり合っているかは、目視によって容易に確認することができる。たとえば、自動的に混ざった状態としては
図3に示されるように、ノズル部42から吐出された両エアゾール組成物は、吐出された方向と直交する方向に複雑に行き来するように混ざり合う。一方、混ざらない状態では、
図4に示されるように、両エアゾール組成物は、ノズル部42から略直進方向に吐出されるのみであり、吐出された方向と直交する方向には略混ざり合わない。なお、後述するように、たとえば油性原液に、水と接触することにより発熱する発熱成分が含有されている場合には、自動的に混ざったかどうかをサーモグラフィ等によって測定することによっても把握し得る。たとえば、自動的に混ざり合った場合には、油性フォーム側と水性フォーム側のいずれでも発熱が確認できるのに対し、自動的に混ざり合わない場合には、発熱が両エアゾール組成物の接触界面付近で主に確認されるのみとなる。
【0072】
<2液式エアゾール組成物の代表的用途>
本発明の一実施形態の2液式エアゾール組成物の代表的用途について説明する。
【0073】
(発熱フォーム)
本実施形態の2液式エアゾール製品1は、油性原液に、水と接触することにより発熱する発熱成分が含まれる場合、発熱フォームを形成するエアゾール製品として好適である。すなわち、このような2液式エアゾール製品1は、油性エアゾール組成物A1と水性エアゾール組成物A2とが吐出され、互いに接触して自動的に混合されることにより、油性成分中の発熱成分が、水性エアゾール組成物A2中の水と反応して発熱する。その結果、2液式エアゾール製品1は、油性エアゾール組成物と水性エアゾール組成物同士がより自動的に混ざりやすくなり、使用者が混ぜ合わせる操作が必須でなく、発熱し得る吐出物が得られるため、利便性がよい。また、どの程度発熱させるかについて、製造者は、設計しやすい。そのため、たとえば製品の安全性等について、製造者は、管理しやすい。
【0074】
(染毛剤)
本実施形態の2液式エアゾール製品1は、水性原液に、酸素と反応して発色する酸化染料が含まれ、油性原液に、酸化剤が含まれる場合、染毛剤として好適である。すなわち、このような2液式エアゾール製品1は、油性エアゾール組成物と水性エアゾール組成物とが接触することにより水性エアゾール組成物中の酸化染料は、油性エアゾール組成物中の酸化剤と反応し、発色する。その結果、使用者が混ぜ合わせる操作が必須でなく、利便性がよい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0076】
(油性エアゾール組成物1)
以下の処方にしたがって油性原液1を調製し、アルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にエアゾールバルブを取り付け、エアゾールバルブから液化ガスを充填し、油性原液1と液化ガスとを混合して油性エアゾール組成物1を調製した。
<油性原液1>
モノラウリン酸ジグリセリル 3.0
モノオレイン酸ジグリセリル 3.0
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 25.0
オリーブ油 54.0
無水塩化マグネシウム 15.0
合計 100.0(質量%)
<油性エアゾール組成物1>
油性原液1 92.0
液化石油ガス(25℃での圧力:0.5MPa) 8.0
合計 100.0(質量%)
【0077】
(油性エアゾール組成物2)
油性原液1をアルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にエアゾールバルブを取り付け、エアゾールバルブから液化ガスを充填し、油性エアゾール組成物2を調製した。
<油性エアゾール組成物2>
油性原液1 85.0
液化石油ガス(25℃での圧力:0.5MPa) 15.0
合計 100.0(質量%)
【0078】
(油性エアゾール組成物3)
油性原液1をアルミニウム製耐圧容器に73.0g(99質量%)充填した。容器の開口部にエアゾールバルブを取り付け、エアゾールバルブから液化石油ガス(プロパンガス)0.75g(1質量%)を充填し、さらに、エアゾールバルブから炭酸ガスを0.6MPaとなるように充填し、油性エアゾール組成物3を調製した。25℃における容器内の平衡圧力は0.6MPaであった。
【0079】
(油性エアゾール組成物4)
以下の処方にしたがって油性原液2を調製し、アルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にエアゾールバルブを取り付け、エアゾールバルブから液化ガスを充填し、油性エアゾール組成物4を調製した。
<油性原液2>
モノラウリン酸ジグリセリル 3.0
モノオレイン酸ジグリセリル 3.0
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 30.0
オリーブ油 63.5
香料 0.5
合計 100.0(質量%)
<油性エアゾール組成物4>
油性原液2 92.0
液化石油ガス(25℃での圧力:0.5MPa) 8.0
合計 100.0(質量%)
【0080】
(油性エアゾール組成物5)
以下の処方にしたがって油性原液3を調製し、アルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にエアゾールバルブを取り付け、エアゾールバルブから液化ガスを充填し、油性エアゾール組成物5を調製した。
<油性原液3>
モノラウリン酸ジグリセリル 3.0
モノオレイン酸ジグリセリル 3.0
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 30.0
オリーブ油 59.0
ジエチルトルアミド 5.0
合計 100.0(質量%)
<油性エアゾール組成物5>
油性原液3 92.0
液化石油ガス(25℃での圧力:0.5MPa) 8.0
合計 100.0(質量%)
【0081】
(油性エアゾール組成物6)
以下の処方にしたがって油性原液4を調製し、アルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にエアゾールバルブを取り付け、エアゾールバルブから窒素ガスを充填し、油性エアゾール組成物6を調製した。25℃における容器内の圧力は0.6MPaであった。
<油性原液4>
ミネラルオイル 50.0
水添(スチレン/イソプレン)コポリマーと
水添ポリデセンとの混合物 25.0
無水塩化マグネシウム 25.0
合計 100.0(質量%)
【0082】
(水性エアゾール組成物1)
以下の処方にしたがって水性原液1を調製し、アルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にエアゾールバルブを取り付け、エアゾールバルブから液化ガスを充填し、水性原液1と液化ガスとを混合して水性エアゾール組成物1を調製した。
<水性原液1>
PEG−20ソルビタンココエート 1.0
青色1号 0.1
精製水 98.9
合計 100.0(質量%)
<水性エアゾール組成物1>
水性原液1 92.0
液化石油ガス(25℃での圧力:0.5MPa) 8.0
合計 100.0(質量%)
【0083】
(水性エアゾール組成物2)
以下の処方にしたがって水性原液2を調製し、アルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にエアゾールバルブを取り付け、エアゾールバルブから液化ガスを充填し、水性原液2と液化ガスとを混合して水性エアゾール組成物2を調製した。
<水性原液2>
ラウリルリン酸カリウム液 25.0
トリイソステアリン酸PEGソルビタン 0.5
コカミドプロピルベタイン 3.0
ソルビトール 10.0
ジプロピレングリコール 10.0
青色1号 0.1
精製水 51.4
合計 100.0(質量%)
<水性エアゾール組成物2>
水性原液2 95.0
液化石油ガス(25℃での圧力:0.45MPa) 5.0
合計 100.0(質量%)
【0084】
(水性エアゾール組成物3)
以下の処方にしたがって水性原液3を調製し、アルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にエアゾールバルブを取り付け、エアゾールバルブから液化ガスを充填し、水性原液3と液化ガスとを混合して水性エアゾール組成物3を調製した。
<水性原液3>
POE硬化ヒマシ油 1.0
エタノール 20.0
青色1号 0.1
精製水 78.9
合計 100.0(質量%)
<水性エアゾール組成物3>
水性原液3 90.0
液化石油ガス(25℃での圧力:0.45MPa) 10.0
合計 100.0(質量%)
【0085】
(水性エアゾール組成物4)
以下の処方にしたがって水性原液4を調製し、アルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にエアゾールバルブを取り付け、エアゾールバルブから液化ガスを充填し、水性原液4と液化ガスとを混合して水性エアゾール組成物4を調製した。
<水性原液4>
PEG−20ソルビタンココエート 1.0
精製水 99.0
合計 100.0(質量%)
<水性エアゾール組成物4>
水性原液4 92.0
液化石油ガス(25℃での圧力:0.5MPa) 8.0
合計 100.0(質量%)
【0086】
(水性エアゾール組成物5)
以下の処方にしたがって水性原液5を調製し、アルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にエアゾールバルブを取り付け、エアゾールバルブから窒素ガスを充填し、水性エアゾール組成物5を調製した。25℃における容器内の圧力は0.6MPaであった。
<水性原液5>
精製ステアリン酸 6.5
セタノール 2.0
ステアリン酸グリセリル 1.0
N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウム 1.0
ソルビトール 2.5
グリセリン 2.5
水酸化ナトリウム1%水溶液 7.5
オクテニルコハク酸テンプンアルミニウム 10.0
青色1号 0.1
精製水 66.9
合計 100.0(質量%)
【0087】
(実施例1)
油性エアゾール組成物1を充填した容器と、水性エアゾール組成物1を充填した容器とを連結し、
図1に示される吐出部材4を装着し、2連式の2液式エアゾール製品を製造した。
【0088】
(実施例2)
油性エアゾール組成物1を充填した容器と、水性エアゾール組成物2を充填した容器とを連結し、
図1に示される吐出部材4を装着し、2連式の2液式エアゾール製品を製造した。
【0089】
(実施例3)
油性エアゾール組成物1を充填した容器と、水性エアゾール組成物3を充填した容器とを連結し、
図1に示される吐出部材4を装着し、2連式の2液式エアゾール製品を製造した。
【0090】
(実施例4)
油性エアゾール組成物2を充填した容器と、水性エアゾール組成物1を充填した容器とを連結し、
図1に示される吐出部材4を装着し、2連式の2液式エアゾール製品を製造した。
【0091】
(実施例5)
油性エアゾール組成物3を充填した容器と、水性エアゾール組成物1を充填した容器とを連結し、
図1に示される吐出部材4を装着し、2連式の2液式エアゾール製品を製造した。
【0092】
(実施例6)
油性エアゾール組成物4を充填した容器と、水性エアゾール組成物1を充填した容器とを連結し、
図1に示される吐出部材4を装着し、2連式の2液式エアゾール製品を製造した。
【0093】
(実施例7)
油性エアゾール組成物5を充填した容器と、水性エアゾール組成物1を充填した容器とを連結し、
図1に示される吐出部材4を装着し、2連式の2液式エアゾール製品を製造した。
【0094】
(比較例1)
水性エアゾール組成物1を充填した容器と、水性エアゾール組成物4を充填した容器とを連結し、
図1に示される吐出部材4を装着し、2連式の2液式エアゾール製品を製造した。
【0095】
(比較例2)
油性エアゾール組成物6を充填した容器と、水性エアゾール組成物5を充填した容器とを連結し、
図1に示される吐出部材4を装着し、2連式の2液式エアゾール製品を製造した。
【0096】
実施例1〜7および比較例1〜2に製造したそれぞれの2液式エアゾール製品を用いて、以下の試験方法に従って吐出物の外観評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
<外観評価>
2液式エアゾール製品を、25℃の恒温水槽中に1時間浸漬し、油性エアゾール組成物と水性エアゾール組成物とを同時に吐出した。油性エアゾール組成物と水性エアゾール組成物との吐出量はいずれも1.0gとした。吐出後に形成された油性フォームと水性フォームを混ぜずに、以下の評価基準にしたがって外観を観察した。
(評価基準)
◎ 吐出された両エアゾール組成物は、直後に全体的に混ざり合った。
○ 吐出された両エアゾール組成物は、少なくとも一部が混ざり合った。
× 吐出された両エアゾール組成物は、自動的には混ざらなかった。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示されるように、実施例1の2液式エアゾール製品において、吐出された油性エアゾール組成物および水性エアゾール組成物は、いずれもノズルから放射状に膨張し、互いに接触した後、自動的に混ざり合った。その結果、
図3に示されるように、油性エアゾール組成物と水性エアゾール組成物とが複雑に混ざり合った吐出物が得られた。また、実施例2〜7の2液式エアゾール製品でも、両エアゾール組成物の混ざり合った吐出物が得られた。これらの中でも特に、実施例1、3〜7の2液式エアゾール製品では、両エアゾール組成物が充分に混ざり合った吐出物が得られた。
【0100】
一方、比較例1の2液式エアゾール製品において、吐出された油性エアゾール組成物および水性エアゾール組成物は、いずれも混ざり合わなかった。
図4は、比較例1の2液式エアゾール製品から吐出された吐出物の外観写真である。
図4に示されるように、比較例1の2液式エアゾール製品の吐出物は、油性エアゾール組成物および水性エアゾール組成物が分離されたままであり、自動的には混ざり合わなかった。また、比較例2の2液式エアゾール製品でも同様に、吐出された油性エアゾール組成物および水性エアゾール組成物は、いずれも混ざり合わなかった。