特開2017-21031(P2017-21031A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-21031(P2017-21031A)
(43)【公開日】2017年1月26日
(54)【発明の名称】ガス流の制御
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20060101AFI20170105BHJP
   H01J 49/10 20060101ALI20170105BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20170105BHJP
【FI】
   G01N27/62 B
   G01N27/62 G
   H01J49/10
   G01N1/00 101R
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-138166(P2016-138166)
(22)【出願日】2016年7月13日
(31)【優先権主張番号】1512245.0
(32)【優先日】2015年7月14日
(33)【優先権主張国】GB
(71)【出願人】
【識別番号】516128717
【氏名又は名称】サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ユールゲン シュルーター
【テーマコード(参考)】
2G041
2G052
5C038
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA14
2G041EA05
2G041FA17
2G041GA24
2G041KA03
2G052AB01
2G052CA04
2G052CA14
2G052CA38
2G052GA24
2G052HC25
2G052HC28
5C038GG09
5C038GG13
(57)【要約】
【課題】ICP−CCT機器内の複数の種類の衝突ガスの流れを制御するための、単一の流れ制御器のみを必要とするガス制御システムを提供することが望ましい。
【解決手段】本発明は、ガス入口ライン上に配置される少なくとも第1の流れ制限部及び第2の流れ制限部と、ガス入口ラインに接続されるガス流制御ラインと、ガス制御ライン上のガス流制御器と、ガス入口ライン及びガス制御ライン内のガス流を制御するための弁とを備える、分析装置内にガスを提供するためのガス入口システムに関する。分析装置内へのガス流を制御する方法も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置内にガスを提供するためのガス入口システムであって、
(a)前記装置内にガスを導入するための、前記装置に流体接続される少なくとも1つのガス入口ラインと、
(b)前記少なくとも1つのガス入口ライン内のガスの流れを制御するための、前記少なくとも1つのガス入口ライン上に配置される少なくとも1つの弁と、
(c)少なくとも1つのガス入口接合部を通じて前記少なくとも1つのガス入口ラインに流体接続される少なくとも1つのガス流制御ラインと、
(d)それぞれ、前記少なくとも1つのガス入口接合部の上流及び下流にある、前記少なくとも1つのガス入口ライン上に配置される少なくとも1つの第1の流れ制限部及び少なくとも1つの第2の流れ制限部と、
(e)前記少なくとも1つのガス入口接合部の圧力を制御するように前記少なくとも1つのガス流制御ライン上に配置される少なくとも1つの背圧調節器と、
(f)前記少なくとも1つのガス流制御ライン内のガスの流れを制御するための少なくとも1つの弁と、
(g)前記背圧調節器の下流にある、前記少なくとも1つのガス制御ラインに流体接続される少なくとも1つの真空ポンプまたは排気管と、を備える、ガス入口システム。
【請求項2】
前記第1の流れ制限部及び/または前記第2の流れ制限部は、複数の制限部として提供される場合、前記ガス入口ライン上に並列配置で配置され、前記ガス入口ラインは、任意選択的に、前記複数の制限部を通る流れを選択的に方向付けるための少なくとも1つの弁をさらに備える、請求項1に記載のガス入口システム。
【請求項3】
前記第2の流れ制限部は、並列配置で配置される複数の流れ制限部として提供される、請求項1または2に記載のガス入口システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのガス入口ラインの各々に、第1の流れ制限部及び少なくとも1つの第2の流れ制限部を備え、前記制限部は、前記第1の流れ制限部及び前記少なくとも1つの第2の流れ制限部を通るガス流の比率が、両制限部にわたって同じ圧力差で、1:10〜10:1の範囲であるように構築される、請求項1〜3の何れか1項に記載のガス入口システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのガス入口ラインの各々に、第1の流れ制限部及び少なくとも1つの第2の流れ制限部を備え、前記制限部は、前記第1の流れ制限部及び前記少なくとも1つの第2の流れ制限部を通るガス流の比率が、前記ガス入口ライン内で一定のガス圧力で、前記流れ制御器の設定に応じて、1:1〜1000:1の範囲であるように構築される、請求項1〜3の何れか1項に記載のガス入口システム。
【請求項6】
それぞれのガス入口ラインに各々接続される複数のガス制御ラインを備え、前記複数のガス制御ラインが、好ましくは前記ガス制御ライン上の前記少なくとも1つの背圧調節器の上流の1つ又はそれ以上のガス制御ライン接合部で合流する、請求項1〜5の何れか1項に記載のガス入口システム。
【請求項7】
前記複数のガス制御ラインの各々は、単一の背圧調節器に流体接続される、請求項6に記載のガス入口システム。
【請求項8】
前記ガス制御ライン上に、好ましくはガス流を制御するための前記弁と前記背圧調節器との間に配置される少なくとも1つの流れ制限部をさらに備える、請求項1〜7の何れか1項に記載のガス入口システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの流れ制限部は、好ましくは、前記ガス制御ラインと並列に配置され、かつ第1の接合部及び第2の接合部で前記ガス制御ラインに接続する別々のライン上に1つ又はそれ以上の制限部として提供される切り替え可能な制限部として提供され、少なくとも1つの弁が、前記1つ以上の制限部を通るガス流を選択的に方向付けるためにさらに提供される、請求項8に記載のガス入口システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの流れ制限部は、ガス流を制御するための前記少なくとも1つの弁と前記背圧調節器との間の、前記少なくとも1つのガス流制御ラインに流体接続される通気ライン上に提供される、請求項8に記載のガス入口システム。
【請求項11】
前記通気ラインは、大気に開放されている、請求項10に記載のガス入口システム。
【請求項12】
前記通気ラインは、ガス貯蔵器に接続される、請求項10または11に記載のガス入口システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの真空ポンプは、単一の真空ポンプとして提供される、請求項1〜12の何れか1項に記載のガス入口システム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの真空ポンプは、連続して配置される複数の真空ポンプとして提供される、請求項1〜12の何れか1項に記載のガス入口システム。
【請求項15】
少なくとも1つのガス供給部をさらに備える、請求項1〜14の何れか1項に記載のガス入口システム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのガス供給部の各々は、複数のガス供給部として提供される場合、それぞれのガス入口ラインに接続される、請求項15に記載のガス入口システム。
【請求項17】
前記分析装置は、質量分析計である、請求項1〜16の何れか1項に記載のガス入口システム。
【請求項18】
前記少なくとも1つのガス入口ラインは、前記質量分析計の衝突セルに流体接続される、請求項17に記載のガス入口システム。
【請求項19】
前記ガス制御ラインに接続された前記真空ポンプは、前記質量分析計の真空ポンプシステムの一部である、請求項17または18に記載のガス入口システム。
【請求項20】
請求項1〜19の何れか1項に記載のガス入口システムを有する、分析装置。
【請求項21】
特に請求項1〜20の何れか1項に記載のガス入口システムを動作させるための分析装置内へのガス流を制御する方法であって、
分析装置内にガスを提供するために、少なくとも1つのガス供給部から少なくとも1つのガス入口ライン内にガスを流すステップと、
前記ガス入口ライン内のガス流の一部がガス制御ラインを通って流れるように、前記ガス入口ライン内のガス流の一部を、前記ガス入口ライン上に配置されかつガス入口接合部で前記ガス入口ラインと交わるガス制御ライン内に分割するステップと、を含み、
前記ガス制御ライン内のガス流は、前記ガス入口接合部の圧力を調節する背圧調節器、及び前記背圧調節器の下流で前記ガス制御ラインに流体接続される真空ポンプまたは排気管によって制御され、
それにより、前記ガス入口ラインから前記ガス制御ライン内に分割されないガスの部分が、前記装置内に送達され、前記分析装置内への流量が、前記ガス入口接合部と前記分析装置との間のガス圧力の差によって決定される、方法。
【請求項22】
前記ガス入口ラインから分離されるガスの部分は、約0.0001%〜99.99%、好ましくは約0.1%〜99.9%の範囲に及ぶ、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(i)前記背圧調節器を使用して、前記ガス制御ライン内の第1の背圧を設定し、それにより前記分析装置内への第1のガスの流量を設定するステップと、
その後に、(ii)前記背圧調節器を使用して、前記ガス制御ライン内の前記第1の背圧とは異なる第2の背圧を設定し、それにより前記分析装置内への前記第1の流量とは異なる第2のガスの流量を設定するステップと、をさらに含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の背圧及び前記第2の背圧のうちの少なくとも1つは、1バール未満である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の流量及び前記第2の流量は、少なくとも10倍、または少なくとも20倍、または少なくとも50倍、または少なくとも100倍異なる、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の流量及び第2の流量は、最大最大100、または最大120倍、または最大150倍、または最大200倍異なる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ガス制御ラインを通る流れは、前記ガス入口ライン内に逆拡散が起こらないように十分に高い、請求項21〜26の何れか1項に記載の方法。
【請求項28】
第1の流れ制限部によって、前記ガス供給部から前記ガス入口接合部へのガスの流れを制御するステップと、
少なくとも1つの第2の流れ制限部によって、前記ガス入口接合部から前記分析装置内へのガスの流れを制御するステップと、をさらに含む、請求項21〜27の何れか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つの第2の流れ制限部は、並列配置で配置される複数の流れ制限部として提供される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
複数のガス供給部からのガスは、別々のガス入口ライン内に流され、各々のガス入口ライン内のガスの流れは、各々のガス入口ライン内のガス流の一部を分離することによって制御される、請求項21〜29の何れか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記分析装置は、質量分析計である、請求項21〜30の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空下で動作する分析器を含む分析器用のガス入口システムに関する。本発明はさらに、ガスの流れを分析器に送達するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
はじめに
誘導結合型のプラズマ質量分析(ICP−MS)は、最低1015の1(1000兆分の1、ppq)の非常に低い濃度での濃度で、妨害されていない低バックグラウンドの同位体の金属及びある特定の非金属を検出することができる分析法である。本方法は、分析される試料を誘導結合型プラズマでイオン化し、次いで、質量分析計を用いて、そのようにして発生したイオンを分離及び定量化することを伴う。
【0003】
プラズマは、ガス(通常、アルゴン)を電磁石コイル内でイオン化して、アルゴン原子と自由電子とアルゴンイオンとの高度に励起された混合物を発生させことによって発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ある特定の元素が、ICP−MSによる比較的乏しい検出限界を有することで知られている。これらは主に、プラズマガス、マトリックス構成要素、または試料を可溶化するために使用される溶媒に由来するイオンによって発生したスペクトル干渉に悩まされるものである。例には、56Feの決定の場合は40Ar16O、39Kの決定の場合は38ArH、40Caの決定の場合は40Ar、80Seの決定の場合は40Ar40Ar、75Asの決定の場合は40Ar35Cl、52Crの決定の場合は40Ar12C、51Vの決定の場合は35Cl16Oが挙げられる。
【0005】
この問題に対する一解決策は、分析器の前に位置付けられた衝突/反応セルを含む衝突セル技術(ICP−CCT)によってもたらされる。典型的にはイオンに焦点を合わせるように高周波モードで動作する多極磁場を備えるこのセル内に、ヘリウムまたは水素等の衝突ガスが導入される。衝突ガスは、セル内のイオンと衝突及び反応して、妨害イオンを無害な妨害しない種または妨害を引き起こさない他のイオンに変換する。
【0006】
存在し得る妨害種の範囲により、2つ以上の衝突ガスを使用することが有益であり得る。これは通常、1種類のガスを衝突セルに抽気し、そのようにして得られたデータを収集し、その後、別の衝突ガスに切り替えることを意味する。衝突ガスの流れは、通常、約0.2〜10mL/分の範囲であり、典型的には質量流量制御器によって制御される。
【0007】
原則として、単一の質量流量制御器を使用して、使用される異なる種類の衝突ガスの流れを制御することが有益である。しかしながら、質量流量制御器の大きな死容積に起因して、データが収集され得る前に、10分を超えるガス置換が必要である。したがって、現在のシステムにおいて、独立した質量流量制御器が、使用される各衝突ガスに対して使用される。質量流量制御器は、かなり高価であるため、これは各機器のかなりの付加費用につながる。
【0008】
ICP−CCT機器内の複数の種類の衝突ガスの流れを制御するための、単一の流れ制御器のみを必要とするガス制御システムを提供することが望ましい。そのようなシステムは、単純かつ費用対効果の高い様式で、ガスの高速切り替えを理想的に可能にするはずである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によると、分析装置内にガスを提供するためのガス入口システムが提供され、本システムは、
(a)装置内にガスを導入するための、装置に流体接続される少なくとも1つのガス入口ラインと、
(b)少なくとも1つのガス入口ライン内のガスの流れを制御するための、少なくとも1つのガス入口ライン上に配置される少なくとも1つの弁と、
(c)少なくとも1つのガス入口接合部を通じて少なくとも1つのガス入口ラインに流体接続される少なくとも1つのガス流制御ラインと、
(d)少なくとも1つのガス入口ライン上に配置される少なくとも1つの流れ制限部と、
(e)少なくとも1つのガス流制御ライン上に配置される少なくとも1つのガス流制御器と、
(f)少なくとも1つのガス流制御ライン内のガスの流れを制御するための少なくとも1つの弁とを備える。
【0010】
流れ制限部は、好ましくは、ガス入口接合部と分析装置との間に提供され得る。本発明は、少なくとも1つのガス入口ライン上に配置される、少なくとも1つの第1の流れ制限部及び少なくとも1つの第2の流れ制限部を含むように拡張され得る。
【0011】
本発明は、質量分析計内、具体的には、質量分析計の衝突セル内にか、または質量分析計の衝突セルと組み合わせたようなガス入口システムを提供するようにも拡張され得る。
【0012】
本発明は、質量分析計の衝突セル内にガスを導入するためのガス入口システムを有する質量分析計に、さらに拡張され得る。
【0013】
特に本発明によるガス入口システムを動作させるための分析装置内へのガス流を制御する方法も提供され、本方法は、
−分析装置内にガスを提供するために、少なくとも1つのガス供給部から少なくとも1つのガス入口ライン内にガスを流すステップと、
−ガス入口ライン内のガス流の一部がガス制御ラインを通って流れるように、ガス入口ライン内のガス流の一部を、ガス入口ライン上に配置され、かつガスライン接合部でガス入口ラインと交わるガス制御ライン内に分割するステップと、を含み、ガス制御ライン内のガス流は、ガス流制御器の手段によって制御され、
−それにより、ガス入口ラインからガス制御ライン内に分割されていないガスの一部が装置内に送達される。
【0014】
したがって、実施形態において、本発明は、装置内に流れるガス流の直接的な制御よりもむしろ、分析装置内に流れるガスを調整するための排気管(ガス制御ライン)内に流れるガスの制御を伴う。
【0015】
ガス入口ライン及びガス制御ラインは、ガスを輸送するための任意のチャネル、管、導管、毛細管または同様のものであり得る。さらに、追加の構成要素が、接合部、弁、流れ制限部、流れ制御器、計器、及び同様のもの等のこれらのガスラインのいずれか、またはこれらの両方の上に配置され得ることが当業者に明らかになるであろう。これらの構成要素は、時折、ガスラインにも流体接続し得る。本明細書に、接続されると記載されるガスラインは、直接接続され得るか、またはこれらは当業者に既知の好適な手段を通じて流体接続され得る。
【0016】
ガス流制御器は、好ましくはガス制御ライン内のガス流を制御するための弁の下流に提供され得る。ガス流制御器はまた、大気に開放されていてもよく、または好ましくは、大気圧またはそれに近くあり得る別のガスラインまたはガス供給部に接続され得る。
【0017】
ガス流制御器は、任意の好適なガス流制御器であり得る。いくつかの実施形態において、制御器は、背圧調節器、質量流量制御器、または体積流量制御器である。好適な実施形態において、制御器は、背圧調節器である。
【0018】
流れ制限部は、ガスライン内の流れを制限するための、当分野で既知の任意の好適な制限部から選択され得る。流れ制限部は、いくつかの実施形態において、固定流れ制限部であり得る。
【0019】
一配置において、第1の流れ制限部は、ガス入口接合部の上流に配置され得、第2の流れ制限部は、ガス入口接合部の下流に配置され得る。したがって、そのような構成において、第1の流れ制限部は、ガス入口接合部とガス供給部との間に位置付けられ、第2の流れ制限部は、ガス入口接合部と分析装置との間に位置付けられる。
【0020】
少なくとも1つの弁は、好ましくは第2の流れ制限部とこの装置との間に位置付けられ得る。この弁は、必要なときに装置内へのガスの流れをオフにすることができるというように、分析装置内へのガスの流れを調節するという目的に適う。
【0021】
ガス入口ラインを通るガスの流量は、一般的に流れ制限部全体にわたる圧力差によって決定される。例えば、第1の流れ制限部を通るガス流は、ガス入口ライン内に供給するガス供給部(Pin)とガス入口接合部の圧力との間の圧力差によって決定される。同様に、第2の流れ制限部を通るガス流は、ガス入口接合部(Pi)と分析装置との間の圧力差によって決定される。したがって、改善されたガス流制御に関して、複数の第1の流れ制限部及び/または複数の第2の流れ制限部を配置することが好適であり得る。そのような複数の制限部をガス入口ライン上に制限部の並列配置で配置することが、好ましくあり得る。複数の制限部は、切り替え可能であり得る。すなわちガスは、必要に応じて制限部のうちの1つ以上を通じて、選択的に方向付けられ得る。
【0022】
少なくとも1つの弁が、並列制限部のうちの1つ以上を通るガスの流れを選択的に方向付けるために、ガス入口ラインに配置され得る。例えば、システムに提供される複数の第2の流れ制限部が存在し得る。このようにして提供される第2の流れ制限部は、1つの端上でガス入口ラインに、他方の端上で分析装置に、流体接続され得る。弁は、流れ制限部の各々と分析装置との間に、好適に配置され得る。あるいは、制限部のうちの1つを通じてガス流を選択的に方向付けるための、複数の第2の流れ制限部の上流に配置される少なくとも1つの切り替え弁が存在し得る。したがって、好適に配置された弁の位置を調整することにより、第2の流れ制限部を通るガス流が、選択的に制御され得る。
【0023】
ガス入口接合部の上流に並列で配置される複数の第1の流れ制限部が提供される場合、類似の解決策が提供され得る。弁は、流れ制限部の上流または下流のライン上の切り替え弁としてか、または分離した弁のいずれかとして、並列制限部の上流または下流のいずれかに提供され得る。好ましくは、弁は、制限部の上流に提供され得る。この構成で配置された制限部からのガスラインは、好ましくはガス入口ライン上の制限部の下流、ガス入口接合部の上流で合流し得る。
【0024】
第1の流れ制限部及び第2の流れ制限部、ならびに/またはガス入口接合部及びPiの圧力を調整することにより、非常に広い範囲の、ガス入口ラインを流れるガスの一部が、ガス制御ライン内に分割され得る。したがって、一般に、ガスの約0.00001%〜約99.99%の範囲、例えば、0.0001%〜約99.9%、または約0.001%〜約99.9%、約0.01%〜約99.9%、または約0.1%〜約99.9%が、分割され得る。分割され得る下限は、約0.00001%、約0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約0.5%、または約1%であり得る。分割され得る上限は、約99.999%、約99.99%、約99.9%、約99.5%、約99%、約98%、約97%、約96%、または約95%であり得る。
【0025】
一配置において、本発明によるガス入口システムは、質量分析計の衝突セル等の低圧で動作する装置と組み合わせて提供される。
【0026】
ガス入口ライン及びガス制御ライン上の弁が共に開放されている場合、ガスは、ガス入口ライン及びガス制御ラインを通って流れることができるようになるであろう。ガス供給部からの入力圧力(Pin)は、例えばガスフラスコで、外部減圧器によって画定され得る。制御ライン上のガス流制御器は、このライン内のガスの流れを調節する。ガス流制御器は、背圧調節器であり得る。そのような構成において、ガス入口接合部の圧力は、背圧調節器によって決定される。第1の流れ制限部を通るガスの流れは、ガス入口ライン内にガスを提供するガス供給部内の圧力(Pin)と、ガス入口接合部の圧力(Pi)との差によって決定され、第2の流れ制限部を通るガスの流れは、ガス入口接合部の圧力(Pi)と分析装置内の圧力(P0)との差によって決定される。システムが質量分析計(例えば、衝突セル)の低圧システムと併せて使用される事例において、後者は、0であると推定され得る。システム内のガス流は、ポアズイユの式
によって近似され得、式中、Φは、体積ガス流量であり、Piは、入口圧力(ここでは、ガス入口接合部の圧力)であり、P0は、出口圧力であり、Prefは、体積流量の基準圧力(典型的には1バールまたは標準圧力(1.013バール)であり、Lは、管の長さであり、ηは、ガスの粘度であり、Rは、管の半径であり、Vは、出口圧力での体積であり、vは、基準圧力でのガス速度である。P0<<Piである場合、ガス流は、したがってPi2に比例する。
【0027】
一般論として、ガス入口接合部の圧力は、(非常に低い)分析器内の圧力からガス貯蔵器の圧力の高さまでの範囲に調整され得る。圧力及び制限部を調整することにより、分析器内へのガス流が調整され得る。
【0028】
ガス流制御器、例えば、背圧調節器が大気に開放される配置において、ガス入口接合部の最低圧力は、約1バール(周囲圧力)である。システム内のガス流は二乗した圧力に比例するため、5バール絶対に近い圧力が、約20の第2の流れ制限部を通る流量範囲を達成するために必要である。これは実行可能であるが、これより記載される通り、例えば弁の定格に起因して、かつより広い範囲の流量を達成するように、システムをより低い圧力で動作させることが有益であり得る。
【0029】
したがって、システムのいくつかの実施形態において、少なくとも1つの真空ポンプが、ガス流制御器の下流にあるガス制御ラインに流体接続される。真空ポンプが、単一のポンプとして提供され得る。真空ポンプは、連続して配置される複数の真空ポンプとしても提供され得る。真空ポンプの排気管は、大気に開放されていてもよい。真空ポンプは、質量分析計の真空ポンプシステムの一部でもあり得る。分析装置は、好ましくは、例えば同じ真空ポンプを使用して真空下にあり得る。
【0030】
ガス入口システム内の流れ制限部は、ガス入口接合部の調整可能な圧力と組み合わせて、分析装置内に任意の望ましいガスの流量を提供するように、選択され得る。したがって、分析装置内へのガスの流量は、一般に約0.1〜約100mL/分、または約0.2〜約50mL/分、または約0.3〜約30mL/分の範囲であり得る。さらに、ガス入口ライン内へのガス圧力及びガス入口接合部のガス圧力によって、第1の流れ制限部及び第2の流れ制限部を通るガス流の比率は、任意の所望の値を取ることができる。いくつかの実施形態において、ガス入口の一定のガス圧力で、流れ制御器によって設定される背圧に応じて、第1の流れ制限部及び第2の流れ制限部を通るガス流の比率は、約1:1〜約1000:1、約1:1〜約500:1、約1:1〜約100:1、約1:1〜約50:1、または約1:1〜約20:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、第1の流れ制限部及び第2の流れ制限部を通るガス流の比率は、1:1〜1000:1の範囲、1:1〜500:1の範囲、1:1〜100:1の範囲、1:1〜50:1の範囲、または1:1〜20:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、制限部は、第1の流れ制限部及び少なくとも1つの第2の流れ制限部を通るガス流の比率が、両方の制限部全体にわたって同じ圧力差で、1:10〜10:1の範囲、1:8〜8:1の範囲、1:5〜5:1の範囲、または1:3〜3:1の範囲であるように、構築される。
【0031】
システムが異なるガスを用いて使用される場合、各ガスは、異なるガス入口ラインに接続され得ることにも留意されたい。異なる制限部が、異なるライン上に配置され得るので、ガス供給部の圧力が一定に維持される事例においてさえも、異なる流量が異なるガスに対して達成され得る。
【0032】
ガス制御ライン上の流れ制御器が、ガス入口ライン、特にガス入口接合部の圧力を設定する。第2の流れ制限部を通るガス流は、この圧力と分析装置内の圧力との間の差に比例する。分析装置内の圧力は、200ミリバール未満、100ミリバール未満、50ミリバール未満、40ミリバール未満、30ミリバール未満、20ミリバール未満、10ミリバール未満、5ミリバール未満、1ミリバール未満、0.05ミリバール未満、0.01ミリバール未満、0.005ミリバール未満、または0.001ミリバール未満であり得る。装置の第1の種類の分析装置内の圧力は、約5〜200ミリバール、約10〜100ミリバール、約1〜0.001ミリバール、約0.1〜0.001ミリバールまたは約0.01〜0.001ミリバールの範囲であり得る。分析装置の第2の種類について、装置内の圧力は、約0.1〜約10-4ミリバール、約0.01〜約10-4ミリバール、または約0.001〜約10-4ミリバールであり得る。したがって、システム内の流れ制限部のいずれの所与の構成に対して、ガス流制御器が、ガス制御ライン内の背圧、その結果分析装置内への流量を設定するために使用され得る。
【0033】
ガス流制御器の設定を調整することにより、分析装置内への第2の流量に帰着する、第1の背圧とは異なるガス制御ライン内の第2の背圧が、設定され得る。背圧のさらなる調整は、分析装置内への異なる流量が達成されるように流れ制御器の設定を変更することによって、行うことができる。さらに、または敬意を表して、装置内への流量における調整は、例えば異なる第2の流れ制限部の手段によりガス入口ライン上の異なる制限部に切り替えることによって行うことができる。したがって、分析装置内へのガスの流れは、分析装置内へのガスの流れを選択的に制御するように、ガス入口ライン上の少なくとも1つの第2の流れ制限部を通じて、選択的に方向付けられ得る。
【0034】
ガス制御ライン内の背圧は、一般にPin(ガス入口ライン内への圧力)未満の任意の値であり得る。本文脈において、「バール(g)」は、大気圧を超える圧力である「バール(ゲージ)」を指し、「バール(a)」は、絶対圧力である「バール(絶対)」を指す。いくつかの実施形態において、背圧は、5バール(g)未満、1.5バール(g)未満、1バール(a)未満、500ミリバール(a)未満、200ミリバール(a)未満、または100ミリバール(a)未満である。ガス制御ライン内の背圧は、1ミリバール(a)超、または10ミリバール(a)超、または50ミリバール(a)超、または100ミリバール(a)超であり得る。ガス制御ライン内の好適な範囲の背圧は、1.5バール(a)〜100ミリバール(a)であり得るか、または1.5バール(a)〜50ミリバール(a)であり得るか、または1.5バール(a)〜10ミリバール(a)であり得るか、または1バール(a)〜100ミリバール(a)であり得るか、または1バール(a)〜50ミリバール(a)であり得るか、または1バール(a)〜10ミリバール(a)であり得る。したがって、広範囲の流量、例えば、最大10倍、または最大50倍、または最大100倍、または最大150倍、または最大200倍、または最大250倍異なる流量が達成され得る。
【0035】
ガス制御ライン内のガス流を制御するための弁が、好適にガス制御ライン上に、またはガス制御ラインと流体連結している弁として提供され得る。複数のガス制御ラインが、ガス入口システムに提供され、複数のラインにガス流を制御するための少なくとも1つの弁が提供されることもまた可能である。複数のガス制御ラインは、それぞれのガス入口ラインに各々接続され得る。複数のガス制御ラインは、1つ以上のガス制御ライン接合部で合流もし得る。制御ラインは、1つの接合部ですべて合流し得るか、または、これらは、複数の接合部で合流し得る。制御ラインが、1つ以上のガス制御ライン接合部を通って、ガス制御ライン上のガス流制御器の上流にある単一のガス制御ライン内に合流することが好ましくあり得る。このようにして、単一のガス流制御器が、ガス制御ライン内のガス流を調節するために使用され得る。1つ以上の弁が、複数のガス制御ライン内のガス流を選択的に制御するためにガス制御ライン上に提供され得る。弁は、個々のライン上及び/または1つ以上のガス制御ライン接合部に、提供され得る。
【0036】
一実施形態において、本発明によるガス入口システムが提供され得る:
−複数のガス入口ラインであり、各ラインが、分析装置に流体接続され、
−複数のガス制御ラインであり、それぞれのガス入口ラインに各々流体接続され、
−ガス制御ラインが、ガス流制御器の上流の1つ以上のガス制御ライン接合部で合流する。
【0037】
好ましくは、ガス制御ライン内のガス流を選択的に制御するための、少なくとも1つの弁も提供され得る。少なくとも1つの弁は、例えば、ガス制御ラインのうちの1つ以上の上、及び/または1つ以上のガス制御ライン接合部に提供され得る。
【0038】
本発明によるガス入口システムが、複数のガス入口ラインを備えるシステムとして提供される場合、それ故に、各ガス入口ライン内のガスの流れがガス入口ラインの各々内のガス流の一部を分割することにより制御され得る。ガス入口ラインの各々内のガスの流れは、少なくとも1つのガス供給部によって供給され得る。複数のガス供給部が使用されるとき、複数のガス入口ラインは、分析装置内のガス組成に対して均衡になるのに必要な最短切り替え時間で分析装置内に流入するガス間を切り替えることができるため、有用である。
【0039】
複数のガス制御ラインとして提供される場合、ガス制御ラインは、単一のガス流制御器に接続されることが、好ましくあり得る。結果として本発明の利点は、単一のガス流制御器を、衝突ガス等の複数のガスの種類の流れを調節するために使用することができることである。分離した質量流量制御器は、従来技術に対して、各ガス入口ラインに対して必要ではなく、故に経費を節減する。さらに、分析装置内に供給するガスライン上にガス流制御器を直接位置付けないことは、有益である。これは、質量流量制御器等のガス流制御器が、ガスの充填後、置換するのに時間がかかるかなり大きな死容積を有するためである。本発明は、直列ではなく、むしろ分離したライン上のガス入口ライン内の背圧を制御するための単一の流れ制御器を使用し、結果として、ガスを切り替えた後にシステムが均衡になるために必要な時間が、従来の直列解決策と比較して最短である解決策を提供する。
【0040】
別の利点は、ガスを汚染する危険性が、大幅に低減されることである。ガス流制御器は、ガスと接触する多くの異なる表面を有する。いくつかの制御器は、いくらかの量まで炭化水素等の小さな有機分子を放出するポリマー材料で作製されている。制御器の全表面積は、面積が大きくなるにつれ、典型的にはより多くの水分が吸収され、その結果脱着されるか、またはガス内に放出もされ得るため重要である。いくつかのガス制御器は、最適化された洗浄手順を有し、及び/または材料は、ガスの放出を最小化するように選択される。分析器内に流入するガス流内にガス制御器を入れないことは、より安価であり、かつより効率的である。
【0041】
少なくとも1つの流れ制限部が、ガス制御ライン上に、または複数のガス制御ラインとして提供される場合、これにより提供された制御ラインのうちの1つ以上の上に提供されることも可能である。そのような流れ制限部の手段によって、ガス制御ライン内のガス流が、例えばガス制御ライン内の逆拡散の危険性を防ぐか、または最小化するためにさらに制御され得る。流れ制限部は、制御ライン内のガス流を制御するための弁と、ガス流制御器との間に配置され得る。流れ制限部は、例えば、ガス制御ラインと並列で配置され、かつ第1の接合部及び第2の接合部でガス制御ラインに接続される分離したライン上に1つ以上の制限部として提供され得る切り替え可能な制限部としても提供され得、少なくとも1つの弁が、1つ以上の制限部を通るガス流を選択的に方向付けるために、さらに提供される。少なくとも1つの弁が、第1の接合部または第2の接合部で、例えば切り替え弁として提供され得る。少なくとも1つの弁が、分離したラインの各々上に提供され得る。あるいは、第1の接合部及び/または第2の接合部に、または分離したラインのうちの1つ以上の上に配置される弁の組み合わせが提供され得る。
【0042】
ガス制御ライン内での逆流を防ぐため、常にガス制御ラインを通る(すなわち、ガス流制御器を通る)ガスの流れが存在する。多くの場合、ガス消費を最小化するために、流れが強すぎないことが、有益である。制限部を通る総ガス流量が、分析器内への最大ガス流量よりも僅かに多い方法で、制限部を調整することが可能である。したがって、総ガス流量は、分析器内へのガス流量よりも最大25%も多いか、最大10%多いか、またはさらには最大5%多くあり得る。
【0043】
安定した流れまたは圧力制御は、ガスの流量が低すぎなければ、より容易に達成可能である。結果として、非常に少ないガスの流量は、背圧調節器及び流れ制御器にとって問題であり得る。これは、第1の制限部を通るガス流を増加させること、すなわち第1の制限部を、より制限的でなくすることによって対処することができる。しかしながら、これは、システムにおけるガス消費の増加をもたらす。代替の解決策は、ガス制御ライン上の流れ制御器の上流、例えば制御ライン上のガス流を制御するための弁と、流れ制御器との間、またはこの弁の上流に抽気制限部を配置することによって、流れ制御器を通るガス流を増加させることによりもたらされる。抽気制限部は、流れ制御器の上流の、例えば、ガス流を制御するための少なくとも1つの弁とガス流制御器との間のか、またはこの弁の上流の少なくとも1つのガス流制御ラインに流体接続される通気ライン上の流れ制限部として提供され得る。通気ラインは、大気に開放されていてもよい。あるいは、通気ラインは、ガス貯蔵器に開放されていてもよい。
【0044】
本発明によるガス入口システムが少なくとも1つのガス供給部と組み合わせて提供され得ることを理解されたい。好ましくは、ガス供給部からガス入口ラインへのガスの流れを制御するための少なくとも1つの弁もまた、提供される。本システムは、複数のガス供給部と一緒に使用されるようにも構成され得る。そのような配置において、各ガス供給部は、それぞれのガス入口ラインに接続され得る。
【0045】
本発明によるシステムは、少なくとも1つの弁の、弁の位置を制御するための少なくとも1つの制御器を含むようにも構成され得る。制御器は、好ましくは少なくとも1つのシステムパラメータ、例えば、システム内の(例えば、システム内の1つ以上の場所での)ガスの存在及び/もしくは非存在、濃度、ガス流、ならびに/または圧力を反映するパラメータについての入力を受信し、パラメータ情報に基づいて、少なくとも1つの弁に信号を提供することができるように適合され得る。システムパラメータは、ガス入口システムが接続される衝突セルにおけるガス組成及び/または濃度及び/または圧力についてのデータも、含むことができる。いくつかの実施形態において、制御器は、少なくとも1つのガスの濃度または圧力または流量についての入力を受信するように適合され、制御器は、入力パラメータに基づいてシステム内の弁のうちの少なくとも1つの位置を調整することができる。いくつかの構成において、制御器は、少なくとも1つの切り替え弁等の、少なくとも1つの弁の位置を調整するように適合される。したがって、弁は、制御器から入力を受信して、制御器からの信号に応じてこれらの位置を変更することができるようにも適合され得る。制御器は、システム内の1つ以上の段階中に経過した時間、例えば、システム内の衝突ガスの種類が変わってから過ぎた時間についての入力を受信するようにも適合され得る。したがって、制御器は、試料ガスの濃度、試料ガスの存在もしくは試料ガス非存在、または時間のパラメータに基づいて、1つ以上の弁の位置を調節するように適合され得る。制御器によって制御される1つ以上の弁は、本明細書に記載されるガスラインのいずれか上の弁のうちのいずれか1つ以上(例えば、ガス入口ライン、ガス制御ライン等上の弁)を備え得る。制御器は、質量流量制御器または背圧調節器等のシステム内の少なくとも1つの流れ制御器の位置を調整するようにも適合され得る。
【0046】
本発明のある特定の実施形態において、システムの接合部のうちの1つ以上が、T接合部として提供される。この文脈において、T接合部は、3つの流れチャネルの任意の接合部、すなわち3つのアームを含有する接合部を意味する。T接合部は、T継手としてか、Y継手としてか、または3つの直交チャネルの接合部として、提供され得る。接合部は、2次元接合部としてさらに提供され得、3つのチャネルは、同じ平面内に置かれるか、または接合部は、3つのチャネルが同じ平面内に置かれていない3次元構造として(すなわち、3次元「三脚」として)提供され得る。
【0047】
本発明によるシステムの構成要素、例えばガス入口ライン及びガス制御ライン、ならびに本明細書に記載される接合部を含む構成要素は、機械加工されたブロックで、すなわち、1つの機械的部品として提供され得る。これは、システム、またはシステムの一部の製造が、金属ブロック等の材料の塊から、機械加工によって行われ得ることを意味する。さらに、T接合部を使用することは、機械加工されたブロックにおける製造の有無にかかわらず、接合部内の開口部を通る流れが、完全な機械的制御下にあることを確実にする。T接合部の設計は、拡散経路が十分に分離していることを確実にし、これの流れ特性は明確かつ予測可能であるため、このT接合部の設計が、システムの設定及び校正を容易にする。
【0048】
さらに、本発明が、例えば分析システム内にガスを輸送するためのガス流を提供する搬送ガス入口システムを含む、当分野で既知のガス入口システムと組み合わせられ得ることを理解されたい。
【0049】
本発明の追加の詳細と併せて上記の特徴が以下の実施例にさらに記載され、これらは本発明をさらに例示することを意図するが、本発明の範囲を制限することは、決して意図しない。
【0050】
当業者は、下記の図面が単に例示的目的のためであることを理解するであろう。図面が本教示の範囲を制限することを決して意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明によるガス入口システムを示す。
図2】ガス制御ライン上に真空ポンプをさらに含むガス入口システムを示す。
図3】2つのガス入口ラインを有し、各々がガス制御ラインに接続されるガス入口システムの構成を示す。
図4】ガス入口ライン上に、切り替え可能な第2の制限部を有する構成を示す。
図5】ガス制御ライン上に抽気制限部を有する構成を示す。
図6(A)】ガス入口圧力Pin、ガス入口接合部の圧力Piの、異なる値のシステムによるガス入口システムによって達成可能な異なる流量を示す;(A)Pinを2000ミリバールに、及びPiを、100ミリバールに設定。制限部は、任意の単位で示される。
図6(B)】ガス入口圧力Pin、ガス入口接合部の圧力Piの、異なる値のシステムによるガス入口システムによって達成可能な異なる流量を示す;(B)Pinを2000ミリバールに、及びPiを1069ミリバール(周囲圧力)に設定。制限部は、任意の単位で示される。
図6(C)】ガス入口圧力Pin、ガス入口接合部の圧力Piの、異なる値のシステムによるガス入口システムによって達成可能な異なる流量を示す;(C)Pinを5000ミリバールに、及びPiを4050ミリバールに設定。制限部は、任意の単位で示される。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下において、本発明の例となる実施形態が、図面を参照にして記載される。これらの実施例は、本発明のさらなる理解をもたらすために、本発明の範囲を限定することなく提供される。
【0053】
以下の説明において、一連のステップを説明する。当業者は、文脈によって要求されない限り、ステップの順序が、結果として生じる構成及びそれの効果に重要ではないことを理解するであろう。さらに、ステップの順序にかかわらず、ステップ間の時間遅延の存在または不在が、記載されたステップのうちのいくつかまたはすべての間に存在し得ることは当業者に明らかになるであろう。
【0054】
本発明は、質量分析計、特に質量分析計で使用するための衝突セルを含む分析システム全般の、ガス入口システムに適用可能であることを理解されたい。したがって、一般に、システムに送達されているガスが可変になる。さらに、本発明によるシステム及び方法が、好適な衝突セルの好適な実施形態が続く実施形態に例示されるが、本発明は、ガス送達構成要素を含むか、または伴う他の分析システムにも適用可能であることを理解されたい。
【0055】
図1を参照して、ガスライン接合部6で接続されるガス入口ライン2及びガス制御ライン11を有するガス供給部10から衝突セル9内にガスを送達するためのガス入口システム1が概略的に示される。第1の流れ制限部3及び第2の流れ制限部4が、ガス入口ライン2上に配置されている。弁5、7が、ガス入口ライン及びガス制御ラインそれぞれ上に配置されている。流れ制御器(背圧調節器)8が、弁7の下流のガス制御ライン上に配置されている。この実施形態において、流れ制御器は、ポンプ注入されず、単に排気管12を通って大気に排出する。
【0056】
ガスが、衝突セルで使用されない場合、弁5、7は、閉まったままになっている。開口部弁は、ガスが制限部3を通りガス入口接合部6に向かって流れることをもたらす。システムが、背圧調節器を使用する場合、システム内のこの場所の圧力(Pi)は、背圧調節器8によって調整される。したがって、制限部3を通るガス流は、ガス供給部からの圧力であるPin、及びガス入口接合部6の圧力Piによって画定される。次いで、ガスは、ガス入口接合部から、第2の制限部4を通って、衝突セル9内に流れる。衝突セル内の圧力は、非常に低い、例えば0.01ミリバール以下であるため、第2の制限部を通る流量は、ポアズイユの式に従ってPiにより制御される。
【0057】
システム内の流量は、Pin及び/もしくはPiを変更させることによりならびに/または流れ制限部3、4を変更することにより、調整され得る。例えば、Piを2倍にすることは、制限部4を通る流量において、おおよそ4倍の増加をもたらし、Piの5倍の増加は、流量において20倍を超える増加などをもたらす。しかしながら、この設定で達成可能なPiの最低値(周囲圧力)が1バールである事実に起因して、Piは、流量における20倍の変化を達成するために、ほぼ5バールに設定されなければならない。
【0058】
実行可能ではあるが、例えば弁の定格に起因して、より低い圧力でシステムを動作することが有益であり得る。さらに、圧力のより広い範囲、したがって達成可能な流量のより広い範囲が、有益であり得る。
【0059】
したがって、図2に戻ると、システムの代替実施形態は、流れ制御器の下流のガス制御ライン11上に配置される真空ポンプ13を含む。この構成において、Piは、必要に応じて衝突セル9内への任意の所望の流量を達成するように設定され得る。例として、適切な制限部3、4をガス入口ライン2上に配置し、Piを100ミリバール〜1バールに制御することにより、100倍異なるガス流が達成可能である。
【0060】
システムを構成する際、ガス入口ライン2内への逆拡散が起こらないように、制御ライン11を通る流量が常に十分に高いことに注意を払わなければならない。しかしながら、これは、システム内の圧力及び制限部を調整することにより、及びガス制御ラインの制限部を調整することにより達成可能である。
【0061】
真空ポンプ13は、大気に開放されている排気管を有し得る。しかしながら、複数の真空ポンプは、システム、例えば、連続的に配置されるポンプと一緒でも使用され得る。真空ポンプは、質量分析計の真空ポンプシステムの一部でもあり得るか、またはこれに接続されも得る。
【0062】
本システムは、複数のガスのガス流が、単一の流れ制御器を使用して、個々に制御され得るように設定され得る。2つのガスの設定の実施例が、図3に示されるが、当業者は、この設定が、追加のガスラインを通る任意の数のガスに同様に適用され得ることを理解するであろう。
【0063】
図3において、2つのガス供給部10、10’が、示され、これらは各々、衝突セル9内に供給するガス入口ライン2、2’に接続される。各ガス入口ラインは、ガス制御ライン接合部14で合流するそれぞれのガス制御ライン11、11’に接続される。弁7、7’は、ガス制御ラインを通るガス流を制御する。代替の構成において、単一の切り替え弁が、制御ライン接合部14に配置され得る。単一の流れ制御器8は、制御ライン接合部14の下流のガス制御ライン上で接続される。
【0064】
したがって、この構成において、単一の流れ制御器は、2つのガス入口ライン2、2’内のガス流を調節するのに、使用され得る。制限部3、3’及び4、4’を各それぞれのガス入口ライン上に、ならびにガス圧力Pin及びPiを(後者が背圧調節器8を通るように)構成することにより、各ガス入口ライン内の流量が、任意の所望の値に独立して設定することができる。これにより、各々が分離したガス入口ラインを通って供給される異なるガスに対する個々の流量が、可能になる。各ガス供給部10、10’からのガス流は、セル9内に同時に、またはより典型的には異なる時間に流入され得る。弁5、7及び5’、7’の適切な操作は、1つのガス供給部または両方のガス供給部のいずれかが、同時にセルに接続されることを可能にする。
【0065】
本ガス入口システムは、システムの能力をさらに拡張するために、切り替え可能な流れ制限部を含むように配置され得る。図4において、そのような設定の実施例が提供される。ここでは、2つの第2の流れ制限部4、4’が、単一のガス入口ライン2上に配置されている。制限部は、制限部と衝突セル9との間に配置される2つの弁5、5’を通じて切り替え可能である。
【0066】
ガス入口ライン上に切り替え可能な制限部を有することにより、流量を調整するためのさらなる実現性が、可能である。したがって、異なる制限部を有することにより、流量の範囲が、ガス制御ライン11の任意の所与の構成について拡大され得る。
【0067】
追加の並列制限部が、必要に応じて同じ様式でガス入口ライン上に配置され得、追加の弁が、任意の1つの制限部を通るガス流を選択的に方向付けるように含まれ得ることを理解されたい。
【0068】
さらに、制限部の同様の配置が、ガス制御ライン上に配置され得る。そのような制限部は、弁7と流れ制御器8との間に配置される。そのような制限部の配置を通じて、ガス制御ライン内の流量が、調整され得る。これは、逆流の高い危険性が存在するとき、低流量で特に重要であり得る。切り替え可能な制限部のこの位置の別の利点は、これらの切り替え可能な制限部を通って流れるガスが、分析器に導入されず、したがって、清浄度に対する要求、低死容積などが大きく緩和され、制限部を切り替えた後の緩和時間が最小化されることであろう。
【0069】
流れ制御器は、例えば背圧調節器として提供される場合、非常に低い流量で動作している際、問題を有し得る。低流量に対処する1つの方法は、システム内の制限部3を、より制限的でないようにし、これにより、システム内の他のパラメータに影響を与えることなく、ガス制御ライン内への流量を、増加させることである。しかしながら、これは、システム内のガス消費が増加するという欠点を有する。
【0070】
図5において、抽気制限部15が、弁7と制御器8との間に配置される通気または抽気ライン16上に提供される、この板挟みの解決策を提供する代替の配置が示されている。通気ラインは、大気に開放されていてもよく、あるいは通気ラインは、ガス貯蔵器に開放されていてもよい。この構成において、制御器8は、制御器を通る追加の流れが抽気通気孔によって提供されるため、ガス制御ライン内の非常に低い流量でさえも処理することができる。この設定において、抽気部が大気圧に開放されているため、ガス制御ライン内にガスの逆流が存在しないように制御ラインを通る流れを十分に高く維持するように、注意を払わなければならない。制限部15は、逆流の危険性を最小化すると同時に制御器内への適正なガスの流れを提供するように、調整され得る。
【0071】
本発明によるシステムの特定の実施形態の前述の説明により、理解されるべきである通り、本システムは高い適合性を有し、異なる圧力で広範囲の流量を提供するように構成され得る。異なる構成及び圧力に基づいて、流量がどのように変化し得るかを示すシステムの少数の例となる配置は、記載されていない。
【0072】
したがって、図6に戻ると、異なる設定の影響を示す模擬実験の結果が、示されている。模擬実験を、単一の第1の制限部及び単一の第2の制限部を含有するシステムの構成について行った。第1の設定において、Pinを、2バール(a)に設定する。制限部は、任意の単位で示され、Piの異なる値の制御ライン内の流量は、(A)及び(B)それぞれに示される。したがって、Piが背圧調節器により100ミリバール(a)に設定される場合、(A)ガス供給部からの流量は、39.9mL/分であり、第2の制限部を通る衝突セルへの流量は、0.25mL/分であり、制御ライン内の流量は、39.65mL/分である。したがって、大部分のガスは、制御ラインを通って大気に送達される。(B)において、Piは、1069ミリバール(a)(周囲圧力)に設定され、これは、28.6mL/分の第2の制限部を通る衝突セルへの流量をもたらす一方で、制御ラインを通る流量は、非常に低い、または約0.003mL/分である。結果として、Piにおける10倍の減少を通じて、第2の制限部を通る分析システム内への流量において、100倍超の変化が達成される。
【0073】
10倍の制限部における同時増加は、0.025〜3mL/分の範囲の流量をもたらす(すなわち流量は、制限部に対して線形である)。後述の通り、この設定におけるガス消費は、ガスの大部分が制御ラインを通って大気に放出されるという事実に起因して、分析装置内への流量が最も低いときに、最も高い。
【0074】
システムに真空ポンプが存在しない場合、Piは、周囲圧力(1バール(a))未満に決してなり得ない。(C)に示される構成において、Pinは、5000ミリバール(a)に設定され、Piは、4050ミリバール(a)で設定されている。制限部は、それぞれ1000及び2000であり、8.60mL/分のガス供給部からの流量、及び0.40mL/分の制御ライン内の流量で、8.2mL/分の分析装置内への流量をもたらす。入口圧力Pinを6000ミリバール(a)に上昇させると、12mL/分の分析装置内への流量が達成可能である一方で、接合部点(Pi)での1000ミリバール(a)への低減は、0.5mL/分の流量をもたらす。したがって、この構成について、流量における24倍の範囲が達成可能である。
【0075】
本発明の説明及びそれの実施形態のうちのいくつかに基づいて理解されるべきである通り、本発明は、当分野で既知のガス入口システムを超える明確な利点を提供する。これらの利点のうちのいくつかには、
−単一の流れ制御器が、複数のガス間を切り替えるために使用され得ることと、
−ガス間の切り替え時間が最短であることと、
−複数の流れ制御器の仕様と比較して、経費を節減することと、
−特に、システム内で真空ポンプを使用するとき、非常に広範囲の流量が可能であることと、
−切り替え可能な制限部を提供することが、流れ制御器の従来の位置付けでは達成不可能な値にまで流量範囲を広げることと、
−ガス消費が極めて低くあり得ることと、
−抽気制限部の使用が流量の調整を容易にすることと、
−以下のいくつかの明確な利点:
o流れ制御器からの不純物、したがって汚染せず、
o流れ制御器から分析装置に入る異物の危険性がなく、
o最初の使用においてさえ、置換時間が最短であるという利点を有する、流れ制御器を通過するガスが、分析装置内に導入されないこととを含む。
【0076】
特許請求の範囲を含めて、本明細書において使用される際、文脈が別段示さない限り、用語の単数形は複数形も含むものとして、また逆の場合も同様のものとして解釈される。したがって、本明細書において使用される際、別段文脈が他に明確に示さない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数の指示内容を含むことに留意されたい。
【0077】
記載及び特許請求の範囲全体を通して、用語「備える」、「含む」、「有する」、及び「含有する」、ならびにそれらの変形が、「〜を含むが、これらに限定されない」を意味として理解されるべきであり、他の構成要素を除外することを意図されない。
【0078】
本発明は、約、おおよそ、一般に、実質的に、本質的に、少なくとも等の用語と併せて使用される場合、正確な用語、特徴、値、及び範囲等も含める(すなわち、「約3」は、正確に3も含めるか、または「実質的に一定」は、正確に一定も含めるもとのする)。
【0079】
「少なくとも1つの」という用語は、「1つ以上の」を意味するものとして理解されるべきであり、したがって、1つまたは複数の構成要素を含む両方の実施形態を含む。さらに、「少なくとも1つの」を有する特徴を記載する独立請求項を指す従属請求項は、その特徴が「前記」及び「前記少なくとも1つの」と称される場合、共に同じ意味を有する。
【0080】
依然として本発明の範囲と共にある間に本発明の前述の実施形態への変形が、成され得るが、依然として本発明の範囲内にあることが理解されるであろう。明細書に開示された特徴は、別段述べられない限り、同じ、同等の、または類似の目的に適う代替の特徴と置換され得る。したがって、別段述べられない限り、開示された各特徴は、一般的な一連の同等または類似の特徴の一実施例を表わす。
【0081】
例示的な言い回しの使用、例えば、「例えば(for instance)」、「例えば〜など(such as)」、「例えば(for example)」、及び同様のものなどは、単に本発明をより良く例示することが意図され、そのように特許請求されない限り、本発明の範囲の限定を示すものではない。明細書に記載されたあらゆるステップは、文脈が別段明確に示さない限り、任意の順序でまたは同時に行われてもよい。
【0082】
明細書に開示された特徴及び/またはステップのすべては、特徴及び/またはステップのうちの少なくともいくつかが相互排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされ得る。特に、本発明の好適な特徴は、本発明のすべての態様に適用可能であり、任意の組み合わせで使用されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6(A)】
図6(B)】
図6(C)】