【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によると、分析装置内にガスを提供するためのガス入口システムが提供され、本システムは、
(a)装置内にガスを導入するための、装置に流体接続される少なくとも1つのガス入口ラインと、
(b)少なくとも1つのガス入口ライン内のガスの流れを制御するための、少なくとも1つのガス入口ライン上に配置される少なくとも1つの弁と、
(c)少なくとも1つのガス入口接合部を通じて少なくとも1つのガス入口ラインに流体接続される少なくとも1つのガス流制御ラインと、
(d)少なくとも1つのガス入口ライン上に配置される少なくとも1つの流れ制限部と、
(e)少なくとも1つのガス流制御ライン上に配置される少なくとも1つのガス流制御器と、
(f)少なくとも1つのガス流制御ライン内のガスの流れを制御するための少なくとも1つの弁とを備える。
【0010】
流れ制限部は、好ましくは、ガス入口接合部と分析装置との間に提供され得る。本発明は、少なくとも1つのガス入口ライン上に配置される、少なくとも1つの第1の流れ制限部及び少なくとも1つの第2の流れ制限部を含むように拡張され得る。
【0011】
本発明は、質量分析計内、具体的には、質量分析計の衝突セル内にか、または質量分析計の衝突セルと組み合わせたようなガス入口システムを提供するようにも拡張され得る。
【0012】
本発明は、質量分析計の衝突セル内にガスを導入するためのガス入口システムを有する質量分析計に、さらに拡張され得る。
【0013】
特に本発明によるガス入口システムを動作させるための分析装置内へのガス流を制御する方法も提供され、本方法は、
−分析装置内にガスを提供するために、少なくとも1つのガス供給部から少なくとも1つのガス入口ライン内にガスを流すステップと、
−ガス入口ライン内のガス流の一部がガス制御ラインを通って流れるように、ガス入口ライン内のガス流の一部を、ガス入口ライン上に配置され、かつガスライン接合部でガス入口ラインと交わるガス制御ライン内に分割するステップと、を含み、ガス制御ライン内のガス流は、ガス流制御器の手段によって制御され、
−それにより、ガス入口ラインからガス制御ライン内に分割されていないガスの一部が装置内に送達される。
【0014】
したがって、実施形態において、本発明は、装置内に流れるガス流の直接的な制御よりもむしろ、分析装置内に流れるガスを調整するための排気管(ガス制御ライン)内に流れるガスの制御を伴う。
【0015】
ガス入口ライン及びガス制御ラインは、ガスを輸送するための任意のチャネル、管、導管、毛細管または同様のものであり得る。さらに、追加の構成要素が、接合部、弁、流れ制限部、流れ制御器、計器、及び同様のもの等のこれらのガスラインのいずれか、またはこれらの両方の上に配置され得ることが当業者に明らかになるであろう。これらの構成要素は、時折、ガスラインにも流体接続し得る。本明細書に、接続されると記載されるガスラインは、直接接続され得るか、またはこれらは当業者に既知の好適な手段を通じて流体接続され得る。
【0016】
ガス流制御器は、好ましくはガス制御ライン内のガス流を制御するための弁の下流に提供され得る。ガス流制御器はまた、大気に開放されていてもよく、または好ましくは、大気圧またはそれに近くあり得る別のガスラインまたはガス供給部に接続され得る。
【0017】
ガス流制御器は、任意の好適なガス流制御器であり得る。いくつかの実施形態において、制御器は、背圧調節器、質量流量制御器、または体積流量制御器である。好適な実施形態において、制御器は、背圧調節器である。
【0018】
流れ制限部は、ガスライン内の流れを制限するための、当分野で既知の任意の好適な制限部から選択され得る。流れ制限部は、いくつかの実施形態において、固定流れ制限部であり得る。
【0019】
一配置において、第1の流れ制限部は、ガス入口接合部の上流に配置され得、第2の流れ制限部は、ガス入口接合部の下流に配置され得る。したがって、そのような構成において、第1の流れ制限部は、ガス入口接合部とガス供給部との間に位置付けられ、第2の流れ制限部は、ガス入口接合部と分析装置との間に位置付けられる。
【0020】
少なくとも1つの弁は、好ましくは第2の流れ制限部とこの装置との間に位置付けられ得る。この弁は、必要なときに装置内へのガスの流れをオフにすることができるというように、分析装置内へのガスの流れを調節するという目的に適う。
【0021】
ガス入口ラインを通るガスの流量は、一般的に流れ制限部全体にわたる圧力差によって決定される。例えば、第1の流れ制限部を通るガス流は、ガス入口ライン内に供給するガス供給部(P
in)とガス入口接合部の圧力との間の圧力差によって決定される。同様に、第2の流れ制限部を通るガス流は、ガス入口接合部(P
i)と分析装置との間の圧力差によって決定される。したがって、改善されたガス流制御に関して、複数の第1の流れ制限部及び/または複数の第2の流れ制限部を配置することが好適であり得る。そのような複数の制限部をガス入口ライン上に制限部の並列配置で配置することが、好ましくあり得る。複数の制限部は、切り替え可能であり得る。すなわちガスは、必要に応じて制限部のうちの1つ以上を通じて、選択的に方向付けられ得る。
【0022】
少なくとも1つの弁が、並列制限部のうちの1つ以上を通るガスの流れを選択的に方向付けるために、ガス入口ラインに配置され得る。例えば、システムに提供される複数の第2の流れ制限部が存在し得る。このようにして提供される第2の流れ制限部は、1つの端上でガス入口ラインに、他方の端上で分析装置に、流体接続され得る。弁は、流れ制限部の各々と分析装置との間に、好適に配置され得る。あるいは、制限部のうちの1つを通じてガス流を選択的に方向付けるための、複数の第2の流れ制限部の上流に配置される少なくとも1つの切り替え弁が存在し得る。したがって、好適に配置された弁の位置を調整することにより、第2の流れ制限部を通るガス流が、選択的に制御され得る。
【0023】
ガス入口接合部の上流に並列で配置される複数の第1の流れ制限部が提供される場合、類似の解決策が提供され得る。弁は、流れ制限部の上流または下流のライン上の切り替え弁としてか、または分離した弁のいずれかとして、並列制限部の上流または下流のいずれかに提供され得る。好ましくは、弁は、制限部の上流に提供され得る。この構成で配置された制限部からのガスラインは、好ましくはガス入口ライン上の制限部の下流、ガス入口接合部の上流で合流し得る。
【0024】
第1の流れ制限部及び第2の流れ制限部、ならびに/またはガス入口接合部及びP
iの圧力を調整することにより、非常に広い範囲の、ガス入口ラインを流れるガスの一部が、ガス制御ライン内に分割され得る。したがって、一般に、ガスの約0.00001%〜約99.99%の範囲、例えば、0.0001%〜約99.9%、または約0.001%〜約99.9%、約0.01%〜約99.9%、または約0.1%〜約99.9%が、分割され得る。分割され得る下限は、約0.00001%、約0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約0.5%、または約1%であり得る。分割され得る上限は、約99.999%、約99.99%、約99.9%、約99.5%、約99%、約98%、約97%、約96%、または約95%であり得る。
【0025】
一配置において、本発明によるガス入口システムは、質量分析計の衝突セル等の低圧で動作する装置と組み合わせて提供される。
【0026】
ガス入口ライン及びガス制御ライン上の弁が共に開放されている場合、ガスは、ガス入口ライン及びガス制御ラインを通って流れることができるようになるであろう。ガス供給部からの入力圧力(P
in)は、例えばガスフラスコで、外部減圧器によって画定され得る。制御ライン上のガス流制御器は、このライン内のガスの流れを調節する。ガス流制御器は、背圧調節器であり得る。そのような構成において、ガス入口接合部の圧力は、背圧調節器によって決定される。第1の流れ制限部を通るガスの流れは、ガス入口ライン内にガスを提供するガス供給部内の圧力(P
in)と、ガス入口接合部の圧力(P
i)との差によって決定され、第2の流れ制限部を通るガスの流れは、ガス入口接合部の圧力(P
i)と分析装置内の圧力(P
0)との差によって決定される。システムが質量分析計(例えば、衝突セル)の低圧システムと併せて使用される事例において、後者は、0であると推定され得る。システム内のガス流は、ポアズイユの式
によって近似され得、式中、Φは、体積ガス流量であり、P
iは、入口圧力(ここでは、ガス入口接合部の圧力)であり、P
0は、出口圧力であり、P
refは、体積流量の基準圧力(典型的には1バールまたは標準圧力(1.013バール)であり、Lは、管の長さであり、ηは、ガスの粘度であり、Rは、管の半径であり、Vは、出口圧力での体積であり、vは、基準圧力でのガス速度である。P
0<<P
iである場合、ガス流は、したがってP
i2に比例する。
【0027】
一般論として、ガス入口接合部の圧力は、(非常に低い)分析器内の圧力からガス貯蔵器の圧力の高さまでの範囲に調整され得る。圧力及び制限部を調整することにより、分析器内へのガス流が調整され得る。
【0028】
ガス流制御器、例えば、背圧調節器が大気に開放される配置において、ガス入口接合部の最低圧力は、約1バール(周囲圧力)である。システム内のガス流は二乗した圧力に比例するため、5バール絶対に近い圧力が、約20の第2の流れ制限部を通る流量範囲を達成するために必要である。これは実行可能であるが、これより記載される通り、例えば弁の定格に起因して、かつより広い範囲の流量を達成するように、システムをより低い圧力で動作させることが有益であり得る。
【0029】
したがって、システムのいくつかの実施形態において、少なくとも1つの真空ポンプが、ガス流制御器の下流にあるガス制御ラインに流体接続される。真空ポンプが、単一のポンプとして提供され得る。真空ポンプは、連続して配置される複数の真空ポンプとしても提供され得る。真空ポンプの排気管は、大気に開放されていてもよい。真空ポンプは、質量分析計の真空ポンプシステムの一部でもあり得る。分析装置は、好ましくは、例えば同じ真空ポンプを使用して真空下にあり得る。
【0030】
ガス入口システム内の流れ制限部は、ガス入口接合部の調整可能な圧力と組み合わせて、分析装置内に任意の望ましいガスの流量を提供するように、選択され得る。したがって、分析装置内へのガスの流量は、一般に約0.1〜約100mL/分、または約0.2〜約50mL/分、または約0.3〜約30mL/分の範囲であり得る。さらに、ガス入口ライン内へのガス圧力及びガス入口接合部のガス圧力によって、第1の流れ制限部及び第2の流れ制限部を通るガス流の比率は、任意の所望の値を取ることができる。いくつかの実施形態において、ガス入口の一定のガス圧力で、流れ制御器によって設定される背圧に応じて、第1の流れ制限部及び第2の流れ制限部を通るガス流の比率は、約1:1〜約1000:1、約1:1〜約500:1、約1:1〜約100:1、約1:1〜約50:1、または約1:1〜約20:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、第1の流れ制限部及び第2の流れ制限部を通るガス流の比率は、1:1〜1000:1の範囲、1:1〜500:1の範囲、1:1〜100:1の範囲、1:1〜50:1の範囲、または1:1〜20:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、制限部は、第1の流れ制限部及び少なくとも1つの第2の流れ制限部を通るガス流の比率が、両方の制限部全体にわたって同じ圧力差で、1:10〜10:1の範囲、1:8〜8:1の範囲、1:5〜5:1の範囲、または1:3〜3:1の範囲であるように、構築される。
【0031】
システムが異なるガスを用いて使用される場合、各ガスは、異なるガス入口ラインに接続され得ることにも留意されたい。異なる制限部が、異なるライン上に配置され得るので、ガス供給部の圧力が一定に維持される事例においてさえも、異なる流量が異なるガスに対して達成され得る。
【0032】
ガス制御ライン上の流れ制御器が、ガス入口ライン、特にガス入口接合部の圧力を設定する。第2の流れ制限部を通るガス流は、この圧力と分析装置内の圧力との間の差に比例する。分析装置内の圧力は、200ミリバール未満、100ミリバール未満、50ミリバール未満、40ミリバール未満、30ミリバール未満、20ミリバール未満、10ミリバール未満、5ミリバール未満、1ミリバール未満、0.05ミリバール未満、0.01ミリバール未満、0.005ミリバール未満、または0.001ミリバール未満であり得る。装置の第1の種類の分析装置内の圧力は、約5〜200ミリバール、約10〜100ミリバール、約1〜0.001ミリバール、約0.1〜0.001ミリバールまたは約0.01〜0.001ミリバールの範囲であり得る。分析装置の第2の種類について、装置内の圧力は、約0.1〜約10
-4ミリバール、約0.01〜約10
-4ミリバール、または約0.001〜約10
-4ミリバールであり得る。したがって、システム内の流れ制限部のいずれの所与の構成に対して、ガス流制御器が、ガス制御ライン内の背圧、その結果分析装置内への流量を設定するために使用され得る。
【0033】
ガス流制御器の設定を調整することにより、分析装置内への第2の流量に帰着する、第1の背圧とは異なるガス制御ライン内の第2の背圧が、設定され得る。背圧のさらなる調整は、分析装置内への異なる流量が達成されるように流れ制御器の設定を変更することによって、行うことができる。さらに、または敬意を表して、装置内への流量における調整は、例えば異なる第2の流れ制限部の手段によりガス入口ライン上の異なる制限部に切り替えることによって行うことができる。したがって、分析装置内へのガスの流れは、分析装置内へのガスの流れを選択的に制御するように、ガス入口ライン上の少なくとも1つの第2の流れ制限部を通じて、選択的に方向付けられ得る。
【0034】
ガス制御ライン内の背圧は、一般にP
in(ガス入口ライン内への圧力)未満の任意の値であり得る。本文脈において、「バール(g)」は、大気圧を超える圧力である「バール(ゲージ)」を指し、「バール(a)」は、絶対圧力である「バール(絶対)」を指す。いくつかの実施形態において、背圧は、5バール(g)未満、1.5バール(g)未満、1バール(a)未満、500ミリバール(a)未満、200ミリバール(a)未満、または100ミリバール(a)未満である。ガス制御ライン内の背圧は、1ミリバール(a)超、または10ミリバール(a)超、または50ミリバール(a)超、または100ミリバール(a)超であり得る。ガス制御ライン内の好適な範囲の背圧は、1.5バール(a)〜100ミリバール(a)であり得るか、または1.5バール(a)〜50ミリバール(a)であり得るか、または1.5バール(a)〜10ミリバール(a)であり得るか、または1バール(a)〜100ミリバール(a)であり得るか、または1バール(a)〜50ミリバール(a)であり得るか、または1バール(a)〜10ミリバール(a)であり得る。したがって、広範囲の流量、例えば、最大10倍、または最大50倍、または最大100倍、または最大150倍、または最大200倍、または最大250倍異なる流量が達成され得る。
【0035】
ガス制御ライン内のガス流を制御するための弁が、好適にガス制御ライン上に、またはガス制御ラインと流体連結している弁として提供され得る。複数のガス制御ラインが、ガス入口システムに提供され、複数のラインにガス流を制御するための少なくとも1つの弁が提供されることもまた可能である。複数のガス制御ラインは、それぞれのガス入口ラインに各々接続され得る。複数のガス制御ラインは、1つ以上のガス制御ライン接合部で合流もし得る。制御ラインは、1つの接合部ですべて合流し得るか、または、これらは、複数の接合部で合流し得る。制御ラインが、1つ以上のガス制御ライン接合部を通って、ガス制御ライン上のガス流制御器の上流にある単一のガス制御ライン内に合流することが好ましくあり得る。このようにして、単一のガス流制御器が、ガス制御ライン内のガス流を調節するために使用され得る。1つ以上の弁が、複数のガス制御ライン内のガス流を選択的に制御するためにガス制御ライン上に提供され得る。弁は、個々のライン上及び/または1つ以上のガス制御ライン接合部に、提供され得る。
【0036】
一実施形態において、本発明によるガス入口システムが提供され得る:
−複数のガス入口ラインであり、各ラインが、分析装置に流体接続され、
−複数のガス制御ラインであり、それぞれのガス入口ラインに各々流体接続され、
−ガス制御ラインが、ガス流制御器の上流の1つ以上のガス制御ライン接合部で合流する。
【0037】
好ましくは、ガス制御ライン内のガス流を選択的に制御するための、少なくとも1つの弁も提供され得る。少なくとも1つの弁は、例えば、ガス制御ラインのうちの1つ以上の上、及び/または1つ以上のガス制御ライン接合部に提供され得る。
【0038】
本発明によるガス入口システムが、複数のガス入口ラインを備えるシステムとして提供される場合、それ故に、各ガス入口ライン内のガスの流れがガス入口ラインの各々内のガス流の一部を分割することにより制御され得る。ガス入口ラインの各々内のガスの流れは、少なくとも1つのガス供給部によって供給され得る。複数のガス供給部が使用されるとき、複数のガス入口ラインは、分析装置内のガス組成に対して均衡になるのに必要な最短切り替え時間で分析装置内に流入するガス間を切り替えることができるため、有用である。
【0039】
複数のガス制御ラインとして提供される場合、ガス制御ラインは、単一のガス流制御器に接続されることが、好ましくあり得る。結果として本発明の利点は、単一のガス流制御器を、衝突ガス等の複数のガスの種類の流れを調節するために使用することができることである。分離した質量流量制御器は、従来技術に対して、各ガス入口ラインに対して必要ではなく、故に経費を節減する。さらに、分析装置内に供給するガスライン上にガス流制御器を直接位置付けないことは、有益である。これは、質量流量制御器等のガス流制御器が、ガスの充填後、置換するのに時間がかかるかなり大きな死容積を有するためである。本発明は、直列ではなく、むしろ分離したライン上のガス入口ライン内の背圧を制御するための単一の流れ制御器を使用し、結果として、ガスを切り替えた後にシステムが均衡になるために必要な時間が、従来の直列解決策と比較して最短である解決策を提供する。
【0040】
別の利点は、ガスを汚染する危険性が、大幅に低減されることである。ガス流制御器は、ガスと接触する多くの異なる表面を有する。いくつかの制御器は、いくらかの量まで炭化水素等の小さな有機分子を放出するポリマー材料で作製されている。制御器の全表面積は、面積が大きくなるにつれ、典型的にはより多くの水分が吸収され、その結果脱着されるか、またはガス内に放出もされ得るため重要である。いくつかのガス制御器は、最適化された洗浄手順を有し、及び/または材料は、ガスの放出を最小化するように選択される。分析器内に流入するガス流内にガス制御器を入れないことは、より安価であり、かつより効率的である。
【0041】
少なくとも1つの流れ制限部が、ガス制御ライン上に、または複数のガス制御ラインとして提供される場合、これにより提供された制御ラインのうちの1つ以上の上に提供されることも可能である。そのような流れ制限部の手段によって、ガス制御ライン内のガス流が、例えばガス制御ライン内の逆拡散の危険性を防ぐか、または最小化するためにさらに制御され得る。流れ制限部は、制御ライン内のガス流を制御するための弁と、ガス流制御器との間に配置され得る。流れ制限部は、例えば、ガス制御ラインと並列で配置され、かつ第1の接合部及び第2の接合部でガス制御ラインに接続される分離したライン上に1つ以上の制限部として提供され得る切り替え可能な制限部としても提供され得、少なくとも1つの弁が、1つ以上の制限部を通るガス流を選択的に方向付けるために、さらに提供される。少なくとも1つの弁が、第1の接合部または第2の接合部で、例えば切り替え弁として提供され得る。少なくとも1つの弁が、分離したラインの各々上に提供され得る。あるいは、第1の接合部及び/または第2の接合部に、または分離したラインのうちの1つ以上の上に配置される弁の組み合わせが提供され得る。
【0042】
ガス制御ライン内での逆流を防ぐため、常にガス制御ラインを通る(すなわち、ガス流制御器を通る)ガスの流れが存在する。多くの場合、ガス消費を最小化するために、流れが強すぎないことが、有益である。制限部を通る総ガス流量が、分析器内への最大ガス流量よりも僅かに多い方法で、制限部を調整することが可能である。したがって、総ガス流量は、分析器内へのガス流量よりも最大25%も多いか、最大10%多いか、またはさらには最大5%多くあり得る。
【0043】
安定した流れまたは圧力制御は、ガスの流量が低すぎなければ、より容易に達成可能である。結果として、非常に少ないガスの流量は、背圧調節器及び流れ制御器にとって問題であり得る。これは、第1の制限部を通るガス流を増加させること、すなわち第1の制限部を、より制限的でなくすることによって対処することができる。しかしながら、これは、システムにおけるガス消費の増加をもたらす。代替の解決策は、ガス制御ライン上の流れ制御器の上流、例えば制御ライン上のガス流を制御するための弁と、流れ制御器との間、またはこの弁の上流に抽気制限部を配置することによって、流れ制御器を通るガス流を増加させることによりもたらされる。抽気制限部は、流れ制御器の上流の、例えば、ガス流を制御するための少なくとも1つの弁とガス流制御器との間のか、またはこの弁の上流の少なくとも1つのガス流制御ラインに流体接続される通気ライン上の流れ制限部として提供され得る。通気ラインは、大気に開放されていてもよい。あるいは、通気ラインは、ガス貯蔵器に開放されていてもよい。
【0044】
本発明によるガス入口システムが少なくとも1つのガス供給部と組み合わせて提供され得ることを理解されたい。好ましくは、ガス供給部からガス入口ラインへのガスの流れを制御するための少なくとも1つの弁もまた、提供される。本システムは、複数のガス供給部と一緒に使用されるようにも構成され得る。そのような配置において、各ガス供給部は、それぞれのガス入口ラインに接続され得る。
【0045】
本発明によるシステムは、少なくとも1つの弁の、弁の位置を制御するための少なくとも1つの制御器を含むようにも構成され得る。制御器は、好ましくは少なくとも1つのシステムパラメータ、例えば、システム内の(例えば、システム内の1つ以上の場所での)ガスの存在及び/もしくは非存在、濃度、ガス流、ならびに/または圧力を反映するパラメータについての入力を受信し、パラメータ情報に基づいて、少なくとも1つの弁に信号を提供することができるように適合され得る。システムパラメータは、ガス入口システムが接続される衝突セルにおけるガス組成及び/または濃度及び/または圧力についてのデータも、含むことができる。いくつかの実施形態において、制御器は、少なくとも1つのガスの濃度または圧力または流量についての入力を受信するように適合され、制御器は、入力パラメータに基づいてシステム内の弁のうちの少なくとも1つの位置を調整することができる。いくつかの構成において、制御器は、少なくとも1つの切り替え弁等の、少なくとも1つの弁の位置を調整するように適合される。したがって、弁は、制御器から入力を受信して、制御器からの信号に応じてこれらの位置を変更することができるようにも適合され得る。制御器は、システム内の1つ以上の段階中に経過した時間、例えば、システム内の衝突ガスの種類が変わってから過ぎた時間についての入力を受信するようにも適合され得る。したがって、制御器は、試料ガスの濃度、試料ガスの存在もしくは試料ガス非存在、または時間のパラメータに基づいて、1つ以上の弁の位置を調節するように適合され得る。制御器によって制御される1つ以上の弁は、本明細書に記載されるガスラインのいずれか上の弁のうちのいずれか1つ以上(例えば、ガス入口ライン、ガス制御ライン等上の弁)を備え得る。制御器は、質量流量制御器または背圧調節器等のシステム内の少なくとも1つの流れ制御器の位置を調整するようにも適合され得る。
【0046】
本発明のある特定の実施形態において、システムの接合部のうちの1つ以上が、T接合部として提供される。この文脈において、T接合部は、3つの流れチャネルの任意の接合部、すなわち3つのアームを含有する接合部を意味する。T接合部は、T継手としてか、Y継手としてか、または3つの直交チャネルの接合部として、提供され得る。接合部は、2次元接合部としてさらに提供され得、3つのチャネルは、同じ平面内に置かれるか、または接合部は、3つのチャネルが同じ平面内に置かれていない3次元構造として(すなわち、3次元「三脚」として)提供され得る。
【0047】
本発明によるシステムの構成要素、例えばガス入口ライン及びガス制御ライン、ならびに本明細書に記載される接合部を含む構成要素は、機械加工されたブロックで、すなわち、1つの機械的部品として提供され得る。これは、システム、またはシステムの一部の製造が、金属ブロック等の材料の塊から、機械加工によって行われ得ることを意味する。さらに、T接合部を使用することは、機械加工されたブロックにおける製造の有無にかかわらず、接合部内の開口部を通る流れが、完全な機械的制御下にあることを確実にする。T接合部の設計は、拡散経路が十分に分離していることを確実にし、これの流れ特性は明確かつ予測可能であるため、このT接合部の設計が、システムの設定及び校正を容易にする。
【0048】
さらに、本発明が、例えば分析システム内にガスを輸送するためのガス流を提供する搬送ガス入口システムを含む、当分野で既知のガス入口システムと組み合わせられ得ることを理解されたい。
【0049】
本発明の追加の詳細と併せて上記の特徴が以下の実施例にさらに記載され、これらは本発明をさらに例示することを意図するが、本発明の範囲を制限することは、決して意図しない。
【0050】
当業者は、下記の図面が単に例示的目的のためであることを理解するであろう。図面が本教示の範囲を制限することを決して意図しない。