【解決手段】炭化処理システム100は、汚泥や、畜糞、堆肥、ウッドチップ等の有機物の炭化処理を行う炭化炉10と、炭化炉10から排出された排気ガスの冷却を行う排熱回収手段としての熱交換器53とを備える。炭化炉10には、有機物を炉内に投入する投入経路21と、炉内で生成された炭化物を回収する回収経路31と、燃焼ガスを炉内に供給する供給経路41と、炉内で発生した排気ガスを炉外へ排出する排出経路51と、熱交換器53により加熱された高温空気を炉内に供給する供給経路61と、熱交換器53により冷却された排気ガスの一部を炉内に循環させる循環経路52とが接続され、循環経路52の排気ガスの温度及び酸素濃度は、供給経路61の高温空気の温度及び酸素濃度よりも低くなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、最近では、汚泥や、畜糞、堆肥、ウッドチップ等の有機物を再利用する技術が開発されてきている。例えば、汚泥やウッドチップの場合、バイオマス燃料等に再利用することが検討されており、畜糞や堆肥の場合、家畜や魚の飼料等に再利用することが検討されている。しかしながら、上記特許文献1に記載の炭化処理システムでは、炉内に導入された有機物は、完全に燃焼され、灰となって炉外へ排出されていた。このため、汚泥や、畜糞、堆肥、ウッドチップ等の再利用の観点からは改善の余地があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、汚泥や、畜糞、堆肥、ウッドチップ等の有機物の再利用を図ることが可能な炭化処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、汚泥、畜糞、堆肥、ウッドチップ等の有機物の炭化処理を行って、前記有機物の炭化物を回収する炭化処理システムであって、前記有機物の炭化処理を行う炭化炉と、前記炭化炉から排出された排気ガスの冷却を行う排熱回収手段とを備え、前記炭化炉には、前記有機物を炉内に投入する有機物投入経路と、前記炉内で生成された前記炭化物を回収する炭化物回収経路と、燃焼ガスを前記炉内に供給する燃焼ガス供給経路と、前記炉内で発生した排気ガスを炉外へ排出する排気ガス排出経路と、前記排熱回収手段により加熱された高温空気を前記炉内に供給する高温空気供給経路と、前記排熱回収手段により冷却された排気ガスの一部を前記炉内に循環させる排気ガス循環経路とが接続されており、前記排気ガス循環経路の排気ガスの温度及び酸素濃度は、前記高温空気供給経路の高温空気の温度及び酸素濃度よりも低くなっていることを特徴とする。
【0007】
上記構成の炭化処理システムによれば、炭化炉に供給される排気ガス(循環ガス)及び高温空気によって、炉内では、有機物の炭化処理(熱分解)が行われ、また、炭化処理の際に発生する可燃ガスの燃焼が行われる。循環ガスの温度は、高温空気の温度よりも低く、循環ガスの酸素濃度は、高温空気の酸素濃度よりも低くなっているので、炭化炉に供給される循環ガスの量及び高温空気の量を調整することによって、炭化炉の炉内の燃焼温度及び酸素濃度を調整することが可能になる。これにより、炭化炉の中層部及び下層部では、比較的低温の温度(例えば、650℃)で有機物の炭化処理(熱分解)が行われ、有機物が炭化物と可燃ガスとに分解される。炭化炉の上層部では、炭化処理によって発生した可燃ガスが比較的高温の温度(例えば、850℃)で完全燃焼される。そして、炭化処理によって生成された炭化物を回収することによって、その炭化物の再利用を図ることができる。
【0008】
上記構成の炭化処理システムにおいて、前記排熱回収手段として、熱交換器、乾燥炉、およびボイラーのうち少なくとも1つが設けられていることが好ましい。
【0009】
上記構成の炭化処理システムによれば、例えば、排熱回収手段として乾燥炉を設けた場合、乾燥炉に排気ガスを導入することによって、排気ガスの熱を熱源として利用することで、さまざまなものを乾燥(脱水)することが可能になる。
【0010】
上記構成の炭化処理システムにおいて、前記炭化炉の上下方向の中間位置よりも上側には、空気を前記炉内に供給する空気供給経路が接続されており、当該空気供給経路からの空気供給によって炭化処理により発生した可燃ガスを燃焼させることが好ましい。
【0011】
上記構成の炭化処理システムによれば、空気供給経路から供給される空気の酸素濃度は、炭化処理によって発生した可燃ガスの酸素濃度よりも高くなっているので、可燃ガスの燃焼を促進させることができる。
【0012】
上記構成の炭化処理システムにおいて、前記排熱回収手段から排出された排気ガスの冷却を行う第2熱交換器と、前記第2熱交換器から排出された排気ガスに含まれる飛灰を回収するフィルタと、前記フィルタから排出された排気ガスを排気筒から外部へ排出するブロワとを備えることが好ましい。
【0013】
上記構成の炭化処理システムによれば、第2熱交換器によって、炭化炉に供給される循環ガスの温度を効率的に低下させることができる。
【0014】
上記構成の炭化処理システムにおいて、前記炭化炉の下端部には、前記炭化物を取り出し可能な取出口が、当該取出口の上端開口部の高さ位置を調整可能に設けられていることが好ましい。
【0015】
上記構成の炭化処理システムによれば、有機物の種類や水分量、炭化炉の運転条件等に応じて、炭化炉の下層部で生成される炭化物の量が変動したとしても、取出口の上端開口部の高さ位置を調整することで、炭化物の回収効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、汚泥や、畜糞、堆肥、ウッドチップ等の有機物の再利用を図ることが可能な炭化処理システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る炭化処理システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る炭化処理システム100の概略構成を示す図である。
図2は、炭化処理システム100の炭化炉10を示す断面図である。
図3は、
図2のX1−X1線断面図である。
【0020】
図1に示すように、炭化処理システム100は、原料である有機物の炭化処理を行って炭化物を生成する炭化炉10、炭化炉10に原料である有機物を投入する有機物投入部20、炭化炉10で生成された炭化物を回収する炭化物回収部30、炭化炉10に燃焼ガス(燃料及び空気)を供給する燃焼ガス供給部40、炭化炉10で発生した排気ガス及び灰(飛灰)を外部へ排出する排気ガス排出部50、炭化炉10に比較的高温の空気を供給する高温空気供給部60、各部に冷却用の冷却水を供給する冷却水供給部70、炭化炉10に常温の空気を供給する空気供給部80等を備えた構成になっている。本実施形態では、原料である有機物は、汚泥、畜糞(例えば鶏糞)、堆肥、ウッドチップ等とされる。有機物は、乾燥させた状態で炭化炉10に投入してもよいし、あるいは、未乾燥の状態(水分を含んだ状態)で炭化炉10に投入してもよい。
【0021】
炭化処理システム100の各部の構成について説明する。
図1では、燃料の流れを実線で示し、排気ガスの流れを破線で示し、空気の流れを1点鎖線で示し、冷却水の流れを2点鎖線で示す。
【0022】
炭化炉10は、本実施形態では、無砂式かつ噴流式の炭化炉として構成されている。無砂式の炭化炉とは、例えば流動床式炭化炉に用いられる流動砂等のような砂が用いられていないものを言う。噴流式の炭化炉とは、例えば特開平6−331116号公報に記載された立型焼却炉のように、炉内に供給されたガスによって上向きのガス流を炉内に発生させ、この上向きのガス流によって炉内に投入された有機物の処理を行うものを言う。本実施形態では、炭化炉10において、有機物を炭化物と可燃ガスとに分解する炭化処理(熱分解)に加えて、炭化処理の際に発生した可燃ガスの燃焼が行われる。
【0023】
図1〜
図3に示すように、炭化炉10は、略円筒状に形成されており、有機物の燃焼及び炭化を行う炉内の空間が、耐火レンガ等の外壁によって囲われた構成になっている。炭化炉10には、原料である有機物を炉内に供給する有機物供給口11、炉内で生成された炭化物を炉外へ排出する炭化物排出口(炭化物取出口)12、燃焼ガスを炉内に供給する燃焼ガス供給口(燃料供給口)13、炉内で発生した排気ガス及び灰(飛灰)を炉外へ排出する排気ガス排出口14、冷却及び徐塵された排気ガスを炉内に供給する循環ガス供給口15、排熱回収手段である熱交換器53により加熱された高温の空気を供給する高温空気供給口16、常温の空気(加熱されていない空気)を供給する空気供給口17等が設けられている。なお、各供給口及び排出口には、図示しないシールが設けられており、炉内の空間の気密性が保たれている。
【0024】
有機物供給口11は、炭化炉10の側壁部に設けられている。有機物供給口11の一端は、炉内の下部の空間(下層部)A3に連通されている。有機物供給口11の他端は、有機物投入部20の投入経路21に接続されており、原料である有機物が投入経路21から有機物供給口11を介して炉内に投入されるようになっている。
【0025】
炭化物排出口12は、炭化炉10の下端部に設けられている。炭化物排出口12の一端は、炉内の下部の空間(下層部)A3に連通されている。炭化物排出口12の他端は、ロータリーバルブ34を介して炭化物回収部30の回収経路31に接続されており、炭化物排出口12から排出された炭化物が、回収経路31に設けられた回収箱33に収容されるようになっている。炭化物排出口12には、円筒状のパイプ部材12aが装着されており、パイプ部材12aの上端開口部12bから炉内の下層部A3に溜まった炭化物が排出される。つまり、下層部A3に溜まった炭化物がパイプ部材12aの上端開口部12bの高さ位置を超えた場合に、上端開口部12bから炭化物が排出されるようになっている。パイプ部材12aの上端開口部12bは、水平方向に対し斜めに傾斜した角度に形成されている。この場合、パイプ部材12aの上端開口部12bの高さ位置が調整可能になっている。例えば、上端開口部12bの高さ位置の異なる複数のパイプ部材12aを用意しておき、炭化物排出口12に取り付けるパイプ部材12aを変更することによって、上端開口部12bの高さ位置を調整することが可能である。
【0026】
燃焼ガス供給口13は、炭化炉10の側壁部に設けられている。燃焼ガス供給口13の一端は、炉内の下部の空間(下層部)A3に連通されている。燃焼ガス供給口13の他端は、燃焼ガス供給部40の供給経路41に接続されており、燃焼ガスが供給経路41から燃焼ガス供給口13を介して炉内に供給されるようになっている。
【0027】
排気ガス排出口14は、炭化炉10の上端部に設けられている。排気ガス排出口14の一端は、炉内の上部の空間(上層部)A1に連通されている。排気ガス排出口14の他端は、排気ガス排出部50の排出経路51に接続されており、排気ガス及び飛灰が炉内から排気ガス排出口14を介して排出経路51に排出されるようになっている。
【0028】
循環ガス供給口15は、炭化炉10の側壁部に設けられている。循環ガス供給口15の一端は、炉内の下部の空間(下層部)A3に連通されている。循環ガス供給口15の他端は、排気ガス排出部50の循環経路52に接続されており、冷却及び徐塵後の比較的低温(略180℃)で比較的酸素濃度の低い排気ガスが循環経路52から循環ガス供給口15を介して炉内に供給されるようになっている。
【0029】
高温空気供給口16は、炭化炉10の側壁部に設けられている。高温空気供給口16の一端は、炉内の下部の空間(下層部)A3に連通されている。高温空気供給口16の他端は、高温空気供給部60の供給経路61に接続されており、高温空気供給部60で加熱された比較的高温(略400℃)の空気が供給経路61から高温空気供給口16を介して炉内に供給されるようになっている。
【0030】
空気供給口17は、炭化炉10の側壁部に設けられている。空気供給口17は、複数設けられている。本実施形態では、空気供給口17として、
図2、
図3に示すように、4つの空気供給口17aと、4つの空気供給口17bとが設けられている。空気供給口17の一端は、炉内の中間部の空間(中層部)A2に連通されている。空気供給口17の他端は、空気供給部80の供給経路81に接続されており、常温の空気が供給経路81から空気供給口17を介して炉内に供給されるようになっている。
【0031】
このように、炭化炉10には、燃焼ガス供給口13から供給される燃焼ガスに加えて、循環ガス及び高温空気が供給されるようになっている。さらには、常温の空気も炭化炉10に供給されるようになっている。炭化炉10の始動時、燃焼ガス供給口13から供給された燃焼ガスによって、炉内が加熱昇温される。その後、炭化炉10に循環ガス及び高温空気が下層部A3に供給されると、炉内に投入された有機物の炭化処理が開始される。具体的には、炭化炉10の下層部A3の温度は略650℃となっており、循環ガスの導入により酸素濃度が低下するため、炭化炉10の下層部A3では、有機物が熱分解され、炭化物及び可燃ガスが生成される。つまり、有機物が完全燃焼されるのではなく、炭化物の状態に変化して、生成された炭化物は、下層部A3に浮遊、流動状態で堆積していく。下層部A3に浮遊、流動状態で溜まった炭化物は、炭化物排出口12から排出され、炭化物回収部30の回収箱33に収容される。
【0032】
一方、炭化炉10の下層部A3で発生した可燃ガスは、上層部A1へ向けて上昇する(吹き上がる)ガス流となる。炭化炉10の上層部A1の温度は略850℃となっており、炭化炉10の上層部A1では、可燃ガスが完全燃焼して、その結果、排気ガス及び灰(飛灰)が発生する。上層部A1で発生した排気ガス及び灰は、排気ガス排出口14から排気ガス排出部50の排出経路51に排出される。なお、炭化炉10の上層部A1と下層部A3との間の中層部A2は、炭化炉10の下層部A3で発生した可燃ガスが、上層部A1へ向けて上昇する箇所になっている。また、中層部A2は、上向きの可燃ガスのガス流と、炉内に供給される空気とが混合される箇所になっている。
【0033】
有機物投入部20は、原料である有機物を炭化炉10に投入する投入経路21を備えており、投入経路21には、有機物を搬送するスクリューコンベア(投入コンベア)22が設けられている。スクリューコンベア22のスクリュー22aが回転駆動することによって、図示しない原料ホッパから供給された有機物が、炭化炉10に連続的に投入されるようになっている。スクリューコンベア22のスクリュー22aの回転駆動を図示しない制御装置によって制御することによって、炭化炉10に供給される有機物の量が調整可能になっている。
【0034】
炭化物回収部30は、炭化炉10の炭化物排出口12のロータリーバルブ34から排出された炭化物を回収する回収経路31を備えており、回収経路31には、炭化物を搬送するスクリューコンベア32と、スクリューコンベア32によって搬送された炭化物を収容(収集)する回収箱33とが設けられている。スクリューコンベア32のスクリュー32aが回転駆動することによって、炭化物排出口12から排出された炭化物が、回収箱33に搬送されるようになっている。また、スクリューコンベア32には、冷却水貯溜部32bが設けられており、冷却水ポンプ73によって供給される冷却水によって、スクリューコンベア32を搬送中の炭化物が冷却されるようになっている。
【0035】
燃焼ガス供給部40は、燃焼用の燃焼ガス(燃料及び空気)を炭化炉10に供給する供給経路41を備えている。供給経路41は、燃料(例えば灯油)を供給する燃料供給経路41aと、燃料供給経路41aの燃料に混合される空気を供給する空気供給経路41bとを有している。燃料としては、灯油以外のものを用いてもよく、例えば他の石油燃料(例えば重油等)を用いてもよい。燃料供給経路41aには、燃料タンク42と、燃料ポンプ43とが設けられており、燃料タンク42に貯溜された燃料が燃料ポンプ43によって供給される。燃料供給経路41aの燃料と、空気供給経路41bの空気とは所定の比率で混合された後、バーナ44によって着火され、着火された燃焼ガスが炭化炉10の燃焼ガス供給口13から炉内へ噴出(噴射)されるようになっている。燃料ポンプ43のポンプ動作や、バーナ44の着火動作を図示しない制御装置によって制御することによって、炉内に噴出される燃焼ガスの供給量が調整可能になっている。なお、本実施形態では、燃焼ガス供給部40による燃焼ガスの供給(バーナ44による着火)は、炭化炉10の運転始動時のみに使用され、炭化炉10での炭化処理が開始された始動後は、燃焼ガスを炭化炉10に供給しなくても(バーナ44による着火を行わなくても)、炭化炉10での炭化処理が継続されるようになっている。
【0036】
排気ガス排出部50は、炭化炉10の排気ガス排出口14から排出された排気ガス及び灰(飛灰)を冷却及び徐塵(徐灰)する排出経路51と、排出経路51において冷却及び徐塵された排気ガスの一部を炭化炉10に循環させる循環経路52とを備えている。排出経路51には、熱交換器(第1熱交換器)53と、冷却筒(第2熱交換器)54と、バグフィルタ55と、排風機(ブロワ)56と、排気筒(煙突)57とが設けられている。排出経路51の排風機56と排気筒57との間の位置で、循環経路52が分岐されている。循環経路52には、送風機(ブロワ)58が設けられている。
【0037】
熱交換器53は、炭化炉10の排気ガス排出口14から排出された排気ガスを空気との熱交換により冷却(空冷)するために設けられている。熱交換器53への空冷用の空気の供給は、送風機(ブロワ)62によって行われる。炭化炉10から排出された排気ガスの温度は略850℃となっているが、熱交換器53によって略400℃まで低下される。
【0038】
冷却筒54は、熱交換器53から排出された排気ガスを冷却水との熱交換により冷却(水冷)するために設けられている。冷却筒54への空冷用の冷却水の供給は、冷却水供給部70によって行われる。熱交換器53から排出された排気ガスの温度は略400℃となっているが、冷却筒54によって排気ガスの温度は略180℃まで冷却される。
【0039】
バグフィルタ55は、炭化炉10の排気ガス排出口14から排出された排気ガスに含まれる飛灰を回収するために設けられている。バグフィルタ55によって飛灰が除去された排気ガスは、排風機56によって排気筒57から外部へ排出される。つまり、バグフィルタ55によって排気ガス中の飛灰が分離され、外部へ排出される排気ガスに飛灰が混入されないようになっている。
【0040】
一方、バグフィルタ55から排出された排気ガスの一部は、排風機56によって循環経路52に送られ、送風機58によって炭化炉10に導入されるようになっている。循環経路52は、バグフィルタ55によって飛灰が分離された排気ガスの一部を炭化炉10に循環(環流)させるために設けられている。循環経路52から炭化炉10に供給される排気ガスの温度は、略180℃になっている。循環経路52には、図示しない流量調整弁が設けられており、流量調整弁を図示しない制御装置によって制御することによって、炭化炉10に供給される排気ガス(循環ガス)の量が調整可能になっている。
【0041】
高温空気供給部60は、比較的高温の空気を炭化炉10に供給する供給経路61を備えている。供給経路61には、送風機(ブロワ)62と、上述した熱交換器53とが設けられている。熱交換器53は、炭化炉10に供給する空気を加熱するために設けられており、熱交換器53を通過した空気は略400℃まで加熱される。供給経路61から炭化炉10に供給される空気の温度は、略400℃になっている。供給経路61には、図示しない流量調整弁が設けられており、流量調整弁を図示しない制御装置によって制御することによって、炭化炉10に供給される空気(高温空気)の量が調整可能になっている。
【0042】
冷却水供給部70は、炭化処理システム100の各部に冷却水を供給するために設けられており、冷却水タンク71、冷却水ポンプ72,73等を備えた構成になっている。冷却水ポンプ72によって、排気ガス排出部50の冷却筒54への冷却水の供給が行われる。冷却水ポンプ72のポンプ流量を図示しない制御装置によって制御して、冷却筒54への冷却水の供給量を制御することによって、炭化炉10に供給される排気ガス(循環ガス)の温度が調整可能になっている。また、冷却水ポンプ73によって、炭化物回収部30の冷却水貯溜部32bへの冷却水の供給が行われる。
【0043】
空気供給部80は、常温の空気を炭化炉10に供給する供給経路81を備えている。供給経路81は、上述した高温空気供給部60の供給経路61から分岐されている。つまり、供給経路81の上流側が、供給経路61の熱交換器53よりも上流側の位置で、供給経路61に接続されている。供給経路81の下流側は、複数の経路に分岐されている。本実施形態では、供給経路81の下流側は、8つの経路に分岐されており、そのうち4つの経路が空気供給口17aに接続されており、残りの4つの経路が空気供給口17bに接続されている。供給経路81には、図示しない流量調整弁が設けられており、流量調整弁を図示しない制御装置によって制御することによって、炭化炉10に供給される空気の量が調整可能になっている。
【0044】
上記構成の炭化処理システム100では、炭化炉10に供給される排気ガス(循環ガス)及び高温空気によって、炉内では、有機物の炭化処理(熱分解)が行われ、また、炭化処理の際に発生する可燃ガスの燃焼が行われる。循環経路52から供給される循環ガスの温度は、供給経路61から供給される高温空気の温度よりも低く、循環経路52から供給される循環ガスの酸素濃度は、供給経路61から供給される高温空気の酸素濃度よりも低くなっているので、炭化炉10に供給される循環ガスの量及び高温空気の量を調整することによって、炭化炉10の炉内の燃焼温度及び酸素濃度を調整することが可能になる。これにより、炭化炉10の下層部A3では、比較的低温の温度(例えば、650℃)で有機物の炭化処理(熱分解)が行われ、有機物が炭化物と可燃ガスとに分解される。炭化炉10の上層部A1では、炭化処理によって発生した可燃ガスが比較的高温の温度(例えば、850℃)で完全燃焼される。そして、炭化処理によって生成された炭化物を回収することによって、その炭化物の再利用を図ることができる。例えば、汚泥やウッドチップの場合、バイオマス燃料等に再利用することが可能であり、畜糞の場合、家畜や魚の飼料等に再利用することが可能であり、堆肥の場合、土壌改良剤等に再利用することが可能である。なお、炭化炉10への循環ガスの供給量と、高温空気の供給量との比率は、有機物の種類や水分量、炭化炉10の運転条件等に応じて適宜設定されるが、高温空気の供給量の比率が高くなるほど、生成される炭化物の量が減少し、完全燃焼して灰になる有機物の量が増加する可能性がある。一方、循環ガスの供給量の比率が高くなるほど、熱分解の反応速度が遅くなり、炭化物の生成効率が低下する可能性がある。
【0045】
また、炭化炉10の上下方向の中間位置よりも上側の位置に空気供給部80の供給経路81が接続されており、炭化炉10の中層部A2に空気が供給されるようになっている。供給経路81から炉内に供給された空気は、上層部A1へ向けて上昇する(吹き上がる)可燃ガスのガス流と混合される。供給経路81から供給される空気の酸素濃度は、上層部A1へ向けて上昇する可燃ガスの酸素濃度よりも高くなっているので、上層部A1において、炭化処理により発生した可燃ガスの燃焼を促進させることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、炭化炉10の中層部A2に常温の空気が供給されるが、常温の空気の代わりに、高温空気供給部60からの高温空気を炭化炉10の中層部A2に供給する構成としてもよい。あるいは、炭化炉10の中層部A2に、常温の空気および高温空気の両方を供給する構成としてもよい。高温空気供給部60からの高温空気を供給する場合、熱交換器53による熱交換後の空気を炭化炉10の中層部A2に導入すればよい。
【0047】
ここで、供給経路81から炭化炉10に供給される空気の導入形態を、例えば、
図4、
図5に示すような導入形態とすることが可能である。
図4では、炭化炉10の中層部A2に連通する4つの空気供給口17aが、90度おきに配置されている。空気供給口17aは、炭化炉10の外壁に対し、垂直な方向に設けられている。言い換えれば、循環ガス供給口15及び高温空気供給口16は、炭化炉10の平面視での中心(炉心)から放射状に延びる方向に沿って設けられている。このような空気供給口17aを設けた場合、供給経路81から炭化炉10に供給される空気の流れが、炉心に向かう流れとなる。
【0048】
一方、
図5では、炭化炉10の中層部A2に連通する4つの空気供給口17bが、90度おきに配置されている。空気供給口17bは、炭化炉10の外壁に対し、炭化炉10の外壁に対し、垂直な方向ではなく、角度αだけ傾斜した方向に設けられている。このような空気供給口17bを設けた場合、供給経路81から炭化炉10に供給される空気の流れが、炭化炉10の内壁に沿って流れる旋回流となる。なお、
図4の空気供給口17a、
図5の空気供給口17bのうち、いずれか一方のみを用いて、炭化炉10の中層部A2に空気を供給してもよい。この場合、使用しない空気供給口は密閉し、炉内の空間の気密性を確保するようにしておく。
【0049】
また、排出経路51には、排気ガスの空冷を行う熱交換器53に加えて、排気ガスの水冷を行う冷却筒54が設けられているので、炭化炉10に供給される循環ガスの温度を効率的に低下させることができる。
【0050】
また、炭化炉10の下端部に設けられたパイプ部材12aの上端開口部12bの高さ位置が調整可能になっているので、有機物の種類や水分量、炭化炉10の運転条件等に応じて、炭化炉10の下層部A3で生成される炭化物の量が変動したとしても、上端開口部12bの高さ位置を調整することで、炭化物の回収効率を向上させることができる。
【0051】
上記実施形態において、循環経路52から炭化炉10の下層部A3に供給される循環ガスの温度の上限値を、略180℃とすることが好ましい。循環ガスの温度が180℃よりも高くなると、バグフィルタ55の損傷が懸念されるためである。循環ガスの温度は、上述したように、冷却水ポンプ72のポンプ流量を制御し、冷却筒54への冷却水の供給量を制御することによって、調整することが可能になっている。なお、循環ガスの温度の下限値は特に限定されないが、循環ガスの温度が低くなるほど、熱分解の反応速度が遅くなり、炭化物の生成効率が低下する可能性がある。
【0052】
上記実施形態において、供給経路61から炭化炉10の下層部A3に供給される高温空気の温度の下限値を、略400℃とすることが好ましい。高温空気の温度が400℃よりも低くなると、熱分解の反応速度が遅くなり、炭化物の生成効率が低下することが懸念されるためである。高温空気の温度は、熱交換器53に供給される空気の流量を制御することによって調整することが可能である。例えば、送風機(ブロワ)62の送風量を調整することによって、熱交換器53に供給される空気の流量を制御して、高温空気の温度を調整することが可能である。なお、高温空気の温度の上限値は特に限定されないが、高温空気の温度が高くなるほど、生成される炭化物の量が減少し、完全燃焼して灰になる有機物の量が増加する可能性がある。
【0053】
上記実施形態では、炭化炉10が、有機物の炭化処理を行う下層部A3と、可燃ガスの完全燃焼を行う上層部A1とが一体的に設けられた場合について説明した。つまり、炭化炉10の上層部A1が、中層部A2及び下層部A3の上側に設けられた場合について説明した。しかし、これに限らず、可燃ガスの完全燃焼を行う上層部A1を、中層部A2の側方(横側)に設置する構成としてもよい。この場合、上層部A1と中層部A2とを、配管(ガス管)を介して接続すればよい。この構成では、炭化炉10の設置高さを低くすることが可能になる。また、上層部A1の下部に排気ガス排出口14を設けてもよく、こうすることによって、炭化炉10の設置高さを一層低くすることが可能になる。
【0054】
上記実施形態では、炭化炉10から排出された排気ガスの熱(排熱)を回収する排熱回収手段として、空冷式の熱交換器53を設けた場合について説明したが、熱交換器53にの代わりに、乾燥炉や、ボイラー等を設ける構成としてもよい。あるいは、熱交換機53に加えて、乾燥炉や、ボイラー等を設ける構成としてもよい。例えば、上述した冷却筒54の代わりに、乾燥炉を設ける構成の場合、乾燥炉に熱交換器53から排出された排気ガスを導入することによって、排気ガスの熱を熱源として利用することで、さまざまなものを乾燥(脱水)することが可能になる。乾燥炉によって、例えば、炭化炉10に投入する有機物の乾燥を行うことができ、乾燥炉によって汚泥を乾燥した場合、水分量を少量(例えば、8%程度)にまで低減した脱水汚泥を容易に得ることができる。
【0055】
今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。