(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-210534(P2017-210534A)
(43)【公開日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】海藻からアルギン酸を抽出する方法
(51)【国際特許分類】
C08B 37/04 20060101AFI20171102BHJP
【FI】
C08B37/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-103837(P2016-103837)
(22)【出願日】2016年5月25日
(71)【出願人】
【識別番号】507146658
【氏名又は名称】香取 義重
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香取 義重
【テーマコード(参考)】
4C090
【Fターム(参考)】
4C090AA04
4C090BA72
4C090BB02
4C090BB23
4C090BB36
4C090BB52
4C090BC04
4C090BC06
4C090CA04
4C090CA15
4C090CA18
4C090CA23
4C090CA26
4C090CA31
4C090CA33
4C090CA34
4C090DA31
(57)【要約】 (修正有)
【課題】大量の水分を含む海藻から、マイクロ波を用いた加熱分解の原料として用いるアルギン酸の製造方法。
【解決手段】海藻を水洗して塩分を除去し、マイクロ波照射装置及び撹拌装置を備える反応槽に供給し、pH9〜11水酸化ナトリウムを加える海藻供給段階と、反応槽を撹拌しながら、マイクロ波を照射して、海藻の細胞膜を破壊して反応水を確保するマイクロ波照射破壊段階と、マイクロ波照射して反応槽を80℃以上反応液の沸点未満で0.5〜5時間加熱して加水分解する段階と、膨潤した海藻を摩砕したものに炭酸ナトリウムを加えて反応槽に装填し、アルギン酸ナトリウムを溶出するアルギン酸分離段階と、反応槽にカルシウム塩を加えて、炭酸カルシウムとアルギン酸カルシウムを析出させ、分離するアルギン酸カルシウム分離段階と、固体と反応液水分を分離する固液分離段階をこの順次に有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海藻を水洗して塩分を除去し、マイクロ波照射装置及び撹拌装置を備える反応槽に供給し、海藻が含有する水分がpH9乃至11になる量の水酸化ナトリウムを加える海藻供給段階と、
前記反応槽を撹拌しながら、マイクロ波を照射して海藻の細胞内に存在する水分を沸点以上に加熱して、前記海藻の3乃至30重量%の細胞膜を破壊するするマイクロ波照射破壊段階と、
前記反応槽を80℃以上反応液の沸点未満で0.5乃至5時間加熱する加水分解段階と、
前記反応槽に炭酸ナトリウムを加えてアルギン酸ナトリウムを溶出させるアルギン酸分離段階と
前記反応槽にカルシウム塩を加えてアルギン酸カルシウムを析出させ、分離するアルギン酸カルシウム分離段階と、 前記反応後に、固体と反応液水分を固液分離する固液分離段階と、
をこの順次に有することを特徴とする海藻からアルギン酸を抽出する方法。
【請求項2】
前記マイクロ波照射破壊段階は、海藻の細胞内の水分を沸点以上加熱して細胞膜を破壊するようにマイクロ波を間欠的に照射することを特徴とする請求項1に記載の海藻からアルギン酸を抽出する方法。
【請求項3】
前記加水分解段階は、反応液をpH9乃至11とする量の水酸化ナトリウムを加えて、300乃至700ppmの過酸化水素を更に加えて行うことを特徴とする請求項1に記載の海藻からアルギン酸を抽出する方法。
【請求項4】
前記アルギン酸分離段階は、アルギン酸ナトリウムを溶出させるのに必要なナトリウムイオンのモル数を測定し、該モル数の1.0乃至1.5倍モルのナトリウムイオンを解離するナトリウム塩を加えることを特徴とする請求項1に記載の海藻からアルギン酸を抽出する方法。
【請求項5】
前記アルギン酸カルシウム分離段階は、沈殿を析出させるのに必要なカルシウムイオンのモル数を測定し、該モル数の1.0乃至1.5倍モルの炭酸イオン及びナトリウムイオンを解離するカルシウム塩を加えることを特徴とする請求項1に記載の海藻からアルギン酸を抽出する方法。
【請求項6】
前記固液分離段階は、アルギン酸カルシウムや炭酸カルシウムの固体と反応液水分を固液分離することを特徴とする請求項1に記載の海藻からアルギン酸を抽出する方法。
【請求項7】
更に、アルギン酸カルシウムと炭酸カルシウムとが混合した固体を水に懸濁し、50乃至80度に加熱し、酸を加えてpH2乃至3に調整してアルギン酸カルシウムを溶解した後、冷却してアルギン酸を沈殿させ、ろ過してアルギン酸を単離することを特徴とする請求項6に記載のアルギン酸を抽出する方法。
【請求項8】
前記海藻が、アルギン酸含有率が高いビバマタ属ホンダワラ科やコンブ類などの褐藻類であることを特徴とする請求項1に記載のアルギン酸を抽出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻からアルギン酸を抽出する方法に係り、より詳しくは、多量の水分を含有する海藻の細胞を、マイクロ波間欠照射及びアルカリ性加水分解を併用して分解し、効率よく海藻からアルギン酸を抽出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスの原料の一つとして海藻が挙げられている。海と陸地との比は7:3であり、照射される太陽エネルギーに対する海藻のエネルギー再生率は、熱帯雨林に匹敵し、日本は四方を海に囲まれて広い領海及び排他的経済水域を有する。海藻を工業原料用のバイオマスとして大量に生産し利用することができれば、経済規模の拡大にもなり、大きな経済効果が生じるものと期待される。
【0003】
しかし、海藻の工業原料としての利用は、なかなか実現しない。その理由の一つとして、海であるために生じる障害、即ち海藻を大量に養殖生産する設備や、工場の建設が困難であるという問題である。この問題に対しては、例えば気胞を有し海面浮遊性の海藻であるヒバマタ属ホンダワラ科の海藻を外洋で栽培し、海面に浮遊させた海藻を自走収穫機で収穫すると共に、生産には工場船を利用するシステムを提案した(例えば特許文献1、2を参照)。
また、海藻を構成する糖質の主成分であるアルギン酸にマイクロ波を照射すれば、合成ガスが生産でき、合成ガスから自動車の燃料、燃料電池の燃料、及び合成化学製品等が製造できる。
【0004】
海藻の利用がなかなか実現しない主な原因として、海藻は通常90%前後の水分を含有するので、その脱水・乾燥作業における負担が大きすぎて、海藻の利用が経済的に成立しない点を挙げることができる。例えば、含水量90%の海藻を燃焼させようとすると、海藻の燃焼エネルギーよりも水分を蒸発させるエネルギーの方が大きくなってしまうし、天日乾燥させるには広大な土地と労力を必要とする。
【0005】
図2は、海藻からアルギン酸を製造する従来技術を示すブロック図である。
図2に示すように、海藻からアルギン酸を製造する従来技術は、海藻を乾燥する海藻乾燥段階と、乾燥した海藻を細断する海藻細断段階と、細断した海藻を水で膨潤させる海藻膨潤段階とを有する。海藻を乾燥、細断、膨潤させるのは、海藻を扱いやすい大きさに揃えると共に、海藻の組織を傷つけてアルギン酸を抽出し易くするためでもある。
【0006】
海藻の中でアルギン酸(AL
−)は、例えばカルシウムイオンなどの無機イオン塩となって閉じ込められているので、次に水中で膨潤させた海藻に炭酸ナトリウムを加え加熱して、[式1]に従ってナトリウムイオン(Na
+)とカルシウムイオン(Ca
2+)をイオン交換させてアルギン酸を抽出するアルギン酸抽出段階と、アルギン酸抽出液から炭酸カルシウムを除去する炭酸カルシウム除去段階と、を有する。
[式1]
AL
−Ca
2+AL
− + Na
2CO
3 = 2AL
−Na
+ + CaCO
3
【0007】
炭酸カルシウム除去段階で得られたアルギン酸抽出液は、酸性にしてアルギン酸を沈殿させるか、又はカルシウムイオンを加えてアルギン酸カルシウムを沈殿させてろ過し、アルギン酸又はアルギン酸カルシウムとして得られている。
【0008】
しかし、炭酸カルシウム除去段階で生成する炭酸カルシウムは微細な沈殿になるので目の細かいろ過装置、例えば珪藻土を敷いたフィルターを用いてろ過しなければならず、しかもアルギン酸抽出液は、アルギン酸ナトリウムによって粘度が増大しているので50〜80倍の水で希釈して粘度を下げてからろ過しなければならないので、大幅な製造コストがかかるという問題点がある。このため、従来の方法で製造したアルギン酸は高価な商品であって、これから自動車の燃料や工業製品を製造することは経済的に成立しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−271910号公報
【特許文献2】特開2008−297531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであって、大量の水分を含む海藻から、マイクロ波を用いた加熱分解の原料として用いることができる純度及び価格のアルギン酸又はその塩を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するための本発明の海藻からアルギン酸を抽出する方法は、海藻を水洗して塩分を除去し、海藻をマイクロ波照射装置及び撹拌装置を備える反応槽に供給し、反応液がpH9〜11になるように水酸化ナトリウムを加える海藻供給段階と、反応槽にマイクロ波を照射して海藻の3〜30重量%の細胞を破壊して反応液を確保するマイクロ波照射破壊段階と、マイクロ波を間欠照射して反応槽を80℃以上反応液の沸点未満で0.5〜5時間加熱して、海藻の細胞膜や細胞壁を加水分解する加水分解段階と、炭酸ナトリウムを加えて反応槽を50〜70℃で0.5〜5時間加熱してアルギン酸ナトリウムを溶出するアルギン酸分離段階と、反応槽にカルシウム塩を加えて炭酸カルシウムとアルギン酸カルシウムを析出させ、分離するアルギン酸カルシウム分離段階と、炭酸カルシウムやアルギン酸カルシウムなどの固体と反応液水分を分離する固液分離段階と、をこの順次に備えることを特徴とする。
【0012】
前記マイクロ波照射破壊段階は、海藻の細胞内の水分に直接マイクロ波を間欠的に照射して沸点以上に加熱して細胞膜を破壊することにより水酸化ナトリウムを溶解する反応水を確保することを特徴とする。
【0013】
また、前記加水分解段階は、反応水に溶解したpH9〜11の水酸化ナトリウム水溶液にマイクロ波を間欠照射して反応槽を80℃以上反応液の沸点未満で0.5〜5時間加熱して、海藻の細胞膜や細胞壁を加水分解することを特徴とする。300〜700ppmの過酸化水素を更に加えてフェントン反応をトリガーとして細胞膜に存在する脂質を連鎖的に破壊することができる。
【0014】
前記アルギン酸分離段階は、沈殿を析出させるのに必要なカルシウムイオンのモル数を測定し、該モル数の1.0〜1.5倍モルのカルシウムイオンを解離するカルシウム塩として加えることが好ましい。
【0015】
前記固液分離段階の後に、アルギン酸カルシウムと炭酸カルシウムとが混合した固体を水に懸濁し、50〜80度に加熱し、酸を加えてpH2〜3に調整してアルギン酸カルシウムを溶解した後、冷却してアルギン酸を沈殿させ、ろ過してアルギン酸を単離することができる。 前記海藻が、アルギン酸の含有率が高いビバマタ属ホンダワラ科や昆布など褐藻類の海藻であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の海藻からアルギン酸を抽出する方法は、海藻の細胞膜を破壊して反応水を確保するためにマイクロ波を照射するマイクロ波照射破壊段階と、アルカリ性で加水分解する加水分解段階と、アルギン酸分離段階と、によって海藻の細胞壁間及び細胞内のアルギン酸及びその塩を溶出させ、更にカルシウム塩を加えてアルギン酸を沈殿させた後、反応液水分のみを除去し、炭酸カルシウムを分離しないでアルギン酸を得ることによって、ろ過が容易になるという特徴がある。
【0017】
得られたアルギン酸カルシウムと炭酸カルシウムの混合物は、湿体のまま加熱分解反応に用いることができる。
アルギン酸カルシウムと炭酸カルシウムの混合物を加熱下に酸処理した後冷却することによって、容易且つ安価にアルギン酸を精製製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の海藻からアルギン酸を製造する技術を示すブロック図である。
【
図2】海藻からアルギン酸を製造する従来技術を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の海藻からアルギン酸を製造する方法を示すブロック図である。
図1に示すように、本発明の海藻からアルギン酸を抽出する方法は、海藻供給段階と、マイクロ波照射破壊段階と、加水分解段階と、アルギン酸分離段階と、アルギン酸カルシウム分離段階と、固液分離段階と、を有する。
【0020】
海藻供給段階は、水洗工程と、洗浄した海藻を切断して反応槽に移送するする供給工程と、海藻を収容した反応槽に水酸化ナトリウムを供給する工程とを含むことができる。
水洗工程は、海藻の塩分及び表面に付着する汚染物を除去する段階であって、使用する海藻の状況によって変更される。
【0021】
本反応で使用する反応槽は、マイクロ波照射装置と、撹拌装置とを備えることが好ましい。撹拌装置は、マイクロ波照射装置と干渉しないようにマイクロ波の届かない位置に設置されるか、又はマイクロ波を吸収しない素材で形成されることが好ましい。
海藻供給工程で使用する輸送装置は、本反応の目的に適うものであれば特に制限されないが、通常のベルトコンベヤーやバケットコンベヤーを用いて行うことができる。また、スクリュープレスを用いて海藻の水分を脱水しながら行うこともできる。
【0022】
海藻供給段階後のマイクロ波照射破壊段階において、反応槽に水酸化ナトリウムを加えることが好ましい。水酸化ナトリウムは、ペレットなどの固体、又は濃厚溶液で加えることができる。固体で加える場合には、例えば2軸混練機を用いて海藻を混練しながら水酸化ナトリウムを加えることができる。
加える水酸化ナトリウムの量は、海藻をpH9〜11にする量であることが好ましい。
【0023】
マイクロ波照射破壊段階は、海藻の3〜30重量%の細胞を破壊するまでは、マイクロ波を所定の間隔で間歇照射することが好ましい。反応液の温度が上がりすぎないようにマイクロ波照射間隔を制御することができる。
海藻の細胞の破壊率が3重量%未満では、水酸化ナトリウムを溶解する水分を十分に確保することができず30重量%を超えると電気の使用量が増加して経済的に好ましくない。
【0024】
海藻の細胞の破壊率が3〜30重量になった後は、マイクロ波照射装置を用いて、反応槽の温度を80℃以上水の沸点未満に0.5〜5時間保つ加水分解段階を行うことが好ましい。反応槽の温度が80℃未満であるか、又は反応時間が0.5時間未満である場合は、加水加熱分解反応が充分に進行せずアルギン酸の収率が低下することがあり、反応温度が水の沸点を超えるのは好ましくなく、反応時間が5時間を超えてもアルギン酸の収率は増加しないので好ましくない。
【0025】
前記加水分解段階は、更に過酸化水素を加え、海藻内の金属イオンを触媒とする連鎖的脂質過酸化反応を行わせることができる。過酸化水素は水溶液として入手可能であるが、過酸化水素の実質含量として、海藻絶乾重量の300〜700ppm相当を加えることが好ましい。
褐藻類には絶乾重量の300〜700ppm相当のFeが吸着している。過酸化水素は、この鉄イオン(Fe
2+)の触媒作用で、ヒドロキシカルラジカル(HO・)に変化する(フェントン反応)。フェントン反応で生起したヒドロキシカルラジカル(HO・)は、細胞膜に存在する脂質(LH)から電子を奪い脂質ラジカル(L・)を生成する(連鎖開始反応)。生成した脂質ラジカル(L・)が酸素分子(O
2)と反応して脂質ペルオキシラジカル(LOO・)となり、他の脂質(LH)と反応して、過酸化脂質(LOOH)と新たな脂質ラジカル(L・)が生成される反応が、連鎖的に繰り返される。
この連鎖的脂質過酸化反応により、海藻の細胞膜や細胞壁に存在する脂質を連鎖的に破壊することができるので、加水分解工程を効率的に処理することができる。
【0026】
前記アルギン酸分離段階は、前記加熱分解段階終了後に、前記反応槽中のカルシウムイオン量のモル数を定量し、前記反応槽に、該カルシウムイオン量の0.8〜1.5当量の炭酸ナトリウムを加え、50〜70℃に0.5〜5時間保って、アルギン酸ナトリウムの溶出を促進することができる。
【0027】
本発明の生成物のアルギン酸カルシウムは、更にマイクロ波を照射し熱分解して合成ガスを製造することを目的の一つとする。この熱分解反応において、炭酸カルシウムは異常反応を防止する効果があるので、本実施例では、アルギン酸カルシウム分離段階の反応液から炭酸カルシウムを分離しないことを特徴とする。
【0028】
前記アルギン酸カルシウム分離段階で、沈殿を析出させるのに必要なカルシウムイオンのモル数を測定し、該モル数の1.0〜1.5倍モルのカルシウムイオンを解離するカルシウム塩を加え、アルギン酸カルシウムを沈殿させることが好ましい。アルギン酸カルシウムを沈殿させることによって、反応液の粘度が増大するのを防ぐことができる。
【0029】
カルシウム塩は、アルギン酸と塩を形成する水溶性の塩であれば特に制限されないが、反応液はpH9〜11の水酸化ナトリウムを含むので、加えた水酸化ナトリウムの当量未満の塩化カルシウムを加えることが好ましい。加えた水酸化ナトリウムのモル数より多い塩化カルシウムを加えると反応液が酸性になるので好ましくない。
【0030】
固液分離段階は、液体から固体を分離し取得する方法、例えばろ過法や遠心分離法を用いて行うことができる。
固液分離段階は、更に、アルギン酸カルシウムと炭酸カルシウムとが混合した固体を水に懸濁し、50〜80度に加熱し、酸を加えてpH2〜3に調整してアルギン酸カルシウムを溶解した後、冷却してアルギン酸を沈殿させ、ろ過してアルギン酸を単離する工程を行うことができる。
【0031】
酸としては、本発明に用いることができる無機の強酸であれば特に制限されないが、最も好ましい実例として塩酸を挙げることができる。
従来のアルギン酸の原料の海藻としては、寒流域に生育する大型の海藻又は昆布を用いることを妨げることはないが、これらは資源としての再生力が弱く、また海底に潜水して収穫しなければならないので、大量に収穫するのは困難がある。
【0032】
大量生産し大量に収穫するには、例えば気胞を有し海面浮遊性の海藻であるヒバマタ属ホンダワラ科の海藻を外洋で栽培し、海面に浮遊させた海藻を自走収穫機で収穫すると共に、生産には工場船を利用するシステムを利用することができる。これらの作業は、海面において作業できるので、有利である。