特開2017-210558(P2017-210558A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017210558-粘着剤組成物、及び粘着シート 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-210558(P2017-210558A)
(43)【公開日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20171102BHJP
   C09J 9/00 20060101ALI20171102BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20171102BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20171102BHJP
【FI】
   C09J201/00
   C09J9/00
   C09J11/04
   C09J7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-104858(P2016-104858)
(22)【出願日】2016年5月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】大高 翔
(72)【発明者】
【氏名】宮田 壮
(72)【発明者】
【氏名】吉延 毅朗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋一
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA18
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB03
4J004DA01
4J004FA05
4J004FA08
4J040DF041
4J040DF051
4J040HA136
4J040JB09
4J040LA03
4J040LA09
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】優れた粘着力を有すると共に、表面抵抗率が高く、且つ、比誘電率が高い、粘着シートが有する粘着剤層を形成し得る粘着剤組成物、及び当該粘着剤組成物を用いた粘着シートを提供する。
【解決手段】粘着剤(A)と誘電性微粒子(B)とを含有する粘着剤組成物であって、粘着剤(A)から形成したシート状物の表面自由エネルギーの極性成分γの値が2.5以上である、粘着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤(A)と誘電性微粒子(B)とを含有する粘着剤組成物であって、
粘着剤(A)から形成したシート状物の表面自由エネルギーの極性成分γの値が2.5以上である、粘着剤組成物。
【請求項2】
誘電性微粒子(B)が、白色フィラーを含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
誘電性微粒子(B)が、酸化チタン微粒子を含む、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
誘電性微粒子(B)の平均粒子径が、0.10〜10μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
粘着剤(A)の周波数0.1MHzにおける比誘電率が6.3〜12.0である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する、粘着シート。
【請求項7】
前記粘着剤層中の誘電性微粒子(B)の含有率が、当該粘着剤層の全体積に対して、0.1〜25体積%である、請求項6に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記粘着剤層が、下記条件式(1)を満たす、請求項6又は7に記載の粘着シート。
条件式(1):y1≧6.8×e0.07x
〔式(1)中、xは前記粘着剤層中の誘電性微粒子(B)として含まれる酸化チタン微粒子の体積含有率(x)(体積%)であり、y1は前記粘着剤層の周波数0.1MHzにおける比誘電率である。eはネイピア数である。〕
【請求項9】
前記粘着剤層が、下記条件式(2)を満たす、請求項6〜8のいずれか一項に記載の粘着シート。
条件式(2):y2≧5.8×e0.069x
〔式(2)中、xは前記粘着剤層中の誘電性微粒子(B)として含まれる酸化チタン微粒子の体積含有率(x)(体積%)であり、y2は前記粘着剤層の周波数1MHzにおける比誘電率である。eはネイピア数である。〕
【請求項10】
前記粘着剤層の周波数0.1MHzにおける比誘電率が、9.5〜20.0である、請求項6〜9のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項11】
絶縁性を有する、請求項6〜10のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項12】
基材の少なくとも一方の表面に、前記粘着剤層を有する、請求項6〜11のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項13】
基材の両面に、前記粘着剤層を有する、請求項12に記載の粘着シート。
【請求項14】
2枚の剥離材に、前記粘着剤層が挟持された構成を有する、請求項6〜11のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項15】
電子デバイスの接合に用いられる、請求項6〜14のいずれか一項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、及び、当該粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの一つである静電容量方式タッチパネルは、LCDモジュール上に、トップパネルとして用いられるガラス板や、ハードコート層、透明導電膜等の各種部材から構成された積層体からなる。
これらの各種部材を接合するために、例えば、特許文献1に開示されたような粘着剤が用いられている。
【0003】
ところで、静電容量方式タッチパネルは、透明導電膜に微弱な電圧を印加すると、透明導電膜表面に電荷が蓄えられ電界を形成する。このタッチパネルの表面を、指やタッチペン等の導体で接触すると、この形成した電界の状態が変化して放電され、微弱な電流が流れる。そして、透明導電膜の四隅に流れるこの微弱な電流の変化を計算処理することで、接触位置の検出を行うことができる。
このように静電容量方式タッチパネルの検出感度は、電界の変化の大きさに依存している。そのため、静電容量方式タッチパネルを構成する積層体材料としては、電界を形成し易い高静電容量の材料が求められている。
【0004】
静電容量は、各種部材の厚さと比誘電率により変化する。つまり、静電容量を高くするには、各種部材を薄膜化すると共に、高比誘電率の材料からなる部材を用いる必要がある。
そのため、静電容量方式タッチパネルを構成する各種部材の接合に用いられる粘着剤に対しても、高比誘電率化が求められている。
特許文献1に記載されたような一般的なアクリル系粘着剤からなる粘着剤層の比誘電率は5程度であり、このような粘着剤からなる粘着剤層の存在も、静電容量低下の要因となる。
【0005】
このような問題に対して、特許文献2には、高比誘電率の粘着剤層を形成し得る粘着剤として、アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来の構成単位を19〜92質量%、特定構造のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来の構成単位を7〜80質量%、及び官能基含有モノマーに由来の構成単位を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むタッチパネル部材貼付用粘着剤が開示されている。
また、特許文献3には、静電容量式タッチパネルと表面保護層との間に配置される粘着シートに関する発明が開示されているが、高比誘電率の粘着剤層を形成するために、熱硬化型又は活性エネルギー線硬化型のウレタン系粘着剤を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−55710号公報
【特許文献2】特開2013−185125号公報
【特許文献3】特開2012−251030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2及び特許文献3に開示の粘着剤から形成される粘着剤層も比誘電率が高いものであるが、更なる比誘電率が高い粘着剤層を形成し得る粘着剤が求められている。
【0008】
本発明は、優れた粘着力を有すると共に、表面抵抗率が高く、且つ、比誘電率が高い、粘着シートが有する粘着剤層を形成し得る粘着剤組成物、及び当該粘着剤組成物を用いた粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、シート状物とした際の当該シート状物の表面自由エネルギーの極性成分γの値を所定値以上となる粘着剤と、誘電性微粒子とを含有する粘着性組成物が、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[15]を提供する。
[1]粘着剤(A)と誘電性微粒子(B)とを含有する粘着剤組成物であって、
粘着剤(A)から形成したシート状物の表面自由エネルギーの極性成分γの値が2.5以上である、粘着剤組成物。
[2]誘電性微粒子(B)が、白色フィラーを含む、上記[1]に記載の粘着剤組成物。
[3]誘電性微粒子(B)が、酸化チタン微粒子を含む、上記[1]又は[2]に記載の粘着剤組成物。
[4]誘電性微粒子(B)の平均粒子径が、0.10〜10μmである、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
[5]粘着剤(A)の周波数0.1MHzにおける比誘電率が6.3〜12.0である、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
[6]上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する、粘着シート。
[7]前記粘着剤層中の誘電性微粒子(B)の含有率が、当該粘着剤層の全体積に対して、0.1〜25体積%である、上記[6]に記載の粘着シート。
[8]前記粘着剤層が、下記条件式(1)を満たす、上記[6]又は[7]に記載の粘着シート。
条件式(1):y1≧6.8×e0.07x
〔式(1)中、xは前記粘着剤層中の誘電性微粒子(B)として含まれる酸化チタン微粒子の体積含有率(x)(体積%)であり、y1は前記粘着剤層の周波数0.1MHzにおける比誘電率である。eはネイピア数である。〕
[9]前記粘着剤層が、下記条件式(2)を満たす、上記[6]〜[8]のいずれか一項に記載の粘着シート。
条件式(2):y2≧5.8×e0.069x
〔式(2)中、xは前記粘着剤層中の誘電性微粒子(B)として含まれる酸化チタン微粒子の体積含有率(x)(体積%)であり、y2は前記粘着剤層の周波数1MHzにおける比誘電率である。eはネイピア数である。〕
[10]前記粘着剤層の周波数0.1MHzにおける比誘電率が、9.5〜20.0である、上記[6]〜[9]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[11]絶縁性を有する、上記[6]〜[10]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[12]基材の少なくとも一方の表面に、前記粘着剤層を有する、上記[6]〜[11]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[13]基材の両面に、前記粘着剤層を有する、上記[12]に記載の粘着シート。
[14]2枚の剥離材に、前記粘着剤層が挟持された構成を有する、上記[6]〜[11]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[15]電子デバイスの接合に用いられる、上記[6]〜[14]のいずれか一項に記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤を有する粘着シートは、優れた粘着力を有すると共に、当該粘着剤層は、表面抵抗率が高く、且つ比誘電率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の粘着シートの構成の一例を示す粘着シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の記載において、「質量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
また、例えば「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
【0013】
〔粘着剤組成物〕
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤(A)と誘電性微粒子(B)とを含有する。
本発明の一態様の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(B)には該当しない非誘電性微粒子(C)をさらに含有してもよい。
【0014】
なお、本発明の粘着剤組成物から形成した粘着剤層中において、粒子径10nm以上の微粒子として存在する成分のうち、比誘電率の値に応じて、誘電性微粒子(B)もしくは非誘電性微粒子(C)に属するものとして分類される。
一方で、当該粘着剤層中において、上記微粒子には該当しない成分は、粘着剤(A)に属するものとして分類される。
そのため、非誘電性微粒子(C)を含有しない場合には、本発明の粘着剤組成物は、粘着剤(A)と誘電性微粒子(B)とからなる。
また、非誘電性微粒子(C)を含有する場合、本発明の粘着剤組成物は、粘着剤(A)と、誘電性微粒子(B)と、非誘電性微粒子(C)とからなる。
以下、本発明の粘着剤組成物に含まれる各成分について説明する。
【0015】
<成分(A):粘着剤>
粘着剤(A)は、粘着性を有する粘着剤層を構成する主成分であり、少なくとも粘着性樹脂を含有するものであるが、さらに架橋剤を含有することが好ましく、架橋剤以外の粘着剤用添加剤を含有してもよい。
ここで、本発明において、粘着剤(A)に含まれる粘着性樹脂、架橋剤、及び粘着剤用添加剤の各成分は、下記要件(I)を満たすように調製されたものである。
・要件(I):粘着剤(A)から形成したシート状物の表面自由エネルギーの極性成分γの値(以下、単に「γの値」ともいう)が2.5以上である。
【0016】
本発明において、要件(I)で規定する粘着剤(A)から形成したシート状物の表面自由エネルギーの極性成分γの値は、粘着剤(A)から形成したシート状物の塗膜の表面上に、3種の溶媒(純水、ジヨードメタン、及び1−ブロモナフタレン)をそれぞれ滴下し、それぞれの溶媒に対する静的接触角を測定し、測定した静的接触角の値から、北崎 畑法に基づいて算出した値である。より具体的な手法については、実施例に記載の方法により測定した値を意味する。
【0017】
本発明の粘着剤組成物では、粘着剤(A)から形成されるシート状物の表面自由エネルギーの極性成分γの値を調整することで、形成した粘着剤層中にて、誘電性微粒子(B)の分散性を良好とし、均一に分散させることができ、当該粘着剤層の比誘電率を高く調整することができる。
上記γの値が大きい粘着剤(A)ほど、別途添加する誘電性微粒子(B)の表面との濡れ性が大きく、粘着剤(A)中に含まれるポリマー成分と誘電性微粒子(B)の吸着を促進する。そして、誘電性微粒子(B)の表面に吸着されたポリマー成分の立体障害によって、誘電性微粒子(B)の分散性が向上すると考えられる。
【0018】
そのため、当該γの値が2.5未満となる粘着剤を用いて形成される粘着剤層は、誘電性微粒子(B)の分散性が低下し、比誘電率を高くすることが難しくなる。
上記観点から、要件(I)で規定するγの値としては、好ましくは2.8以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは3.2以上、より更に好ましくは3.5以上であり、また、好ましくは15以下、より好ましくは13.5以下、更に好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下である。
【0019】
要件(I)で規定するγの値は、粘着剤(A)中に含まれる各成分の双極子モーメントに依存する。つまり、双極子モーメントを大きくする極性基を有する成分の含有量が増えると、要件(I)で規定するγの値は増加する傾向がある。
γの値を増加させ得る当該極性基としては、例えば、ヒドロキシ基、チオール基、カルボニル基、アミノ基等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシ基を有する成分の含有量が多くなることで、γの値は増加し易い。
一方、各成分の炭素鎖が長くなる程、双極子モーメントは小さくなり、要件(I)で規定するγの値は減少する傾向がある。
具体的には、粘着剤(A)に含まれる各成分の種類及び含有量を、後述の事項を考慮して、適宜選択することで、γの値を上記要件(I)を満たすように調整することができる。
【0020】
粘着剤(A)の周波数0.1MHzにおける比誘電率としては、表面抵抗率及び比誘電率が高い粘着剤層を形成し得る粘着剤組成物とする観点から、好ましくは6.3〜12.0、より好ましくは7.0〜11.7、より好ましくは7.4〜11.5、更に好ましくは7.8〜11.2、更に好ましくは8.2〜11.0、より更に好ましくは8.5〜10.5である。
【0021】
粘着剤(A)の周波数1.0MHzにおける比誘電率としては、上記観点から、好ましくは5.7〜12.0、より好ましくは6.0〜11.5、より好ましくは6.3〜11.0、更に好ましくは6.7〜10.5、更に好ましくは7.0〜10.0、より更に好ましくは7.4〜9.5である。
【0022】
なお、本明細書において、粘着剤(A)の周波数0.1MHzもしくは1.0MHzにおける比誘電率は、後述の実施例の「粘着剤の比誘電率の測定」の項目に記載の方法に基づいて測定された値を意味する。
以下、γの値を上記要件(I)を満たすように調整し得る、粘着剤(A)に含まれる各成分について説明する。
【0023】
[粘着性樹脂]
本発明の一態様において、粘着剤(A)に含まれる粘着性樹脂としては、上記要件(I)を満たす粘着剤(A)を調製する観点から、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂から選ばれ、極性基(好ましくはヒドロキシ基)を有する粘着性樹脂が好ましい。
【0024】
粘着性樹脂の質量平均分子量としては、好ましくは2万〜180万、より好ましくは3万〜150万、更に好ましくは5万〜120万である。
【0025】
粘着剤(A)中の粘着性樹脂の含有量としては、粘着剤(A)中に含まれる有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは55〜100質量%、より好ましくは65〜99.99質量%、更に好ましくは70〜99.90質量%、より更に好ましくは80〜99.85質量%である。
なお、本明細書において「粘着剤(A)中に含まれる有効成分」とは、粘着剤(A)中に含まれる成分から溶媒を除いた成分を意味し、具体的には、粘着性樹脂や粘着剤用添加剤を指す。
【0026】
本発明の一態様において、上述の粘着性樹脂の中でも、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a1)及びヒドロキシ基含有モノマーに由来する構成単位(a2)を有するアクリル系共重合体(A1)が好ましい。
以下、アクリル系共重合体(A1)の詳細について説明する。
【0027】
(アクリル系共重合体(A1))
アクリル系共重合体(A1)は、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、「モノマー(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)及びヒドロキシ基含有モノマー(以下、「モノマー(a2’)ともいう」)に由来する構成単位(a2)を有する共重合体であるが、さらにモノマー(a1’)及び(a2’)以外のモノマー(以下、「モノマー(a3’)」ともいう)に由来する構成単位(a3)を有していてもよい。
なお、アクリル系共重合体(A1)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
モノマー(a1’)が有するアルキル基の炭素数としては、1〜20であるが、γの値の調製の観点、及び良好な粘着性を発現させる観点から、好ましくは1〜16、より好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜8、より更に好ましくは1〜6である。
なお、当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0029】
モノマー(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのモノマー(a1’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明の一態様において、モノマー(a1’)としては、γの値の調製の観点、及び良好な粘着性を発現させる観点から、n−ブチル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
n−ブチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量としては、アクリル系共重合体(A1)中の構成単位(a1)の全量(100質量%)に対して、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは60〜100質量%、更に好ましくは65〜100質量%、より更に好ましくは70〜100質量%である。
【0031】
アクリル系共重合体(A1)中の構成単位(a1)の含有量としては、アクリル系共重合体(A1)中の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50〜94質量%、より好ましくは60〜92質量%、更に好ましくは65〜90質量%、より更に好ましくは70〜85質量%である。
構成単位(a1)の含有量が50質量%以上であれば、良好な粘着性を有する粘着剤(A)を調製することができる。一方、構成単位(a1)の含有量が94質量%以下であれば、構成単位(a2)の含有量を十分に確保でき、上記要件(I)を満たす粘着剤(A)を容易に調製することができる。
【0032】
モノマー(a2’)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
これらのモノマー(a2’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明の一態様において、モノマー(a2’)としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基の炭素数としては、γの値の調製の観点から、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜6、より更に好ましくは2〜4である。
なお、当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0034】
アクリル系共重合体(A1)中の構成単位(a2)の含有量としては、アクリル系共重合体(A1)中の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは6〜50質量%、より好ましくは8〜40質量%、更に好ましくは10〜35質量%、より更に好ましくは15〜30質量%である。
構成単位(a2)の含有量が6質量%以上であれば、γの値は高くなり易く、要件(I)を満たす粘着剤(A)を容易に調製することができる。一方、構成単位(a2)の含有量が50質量%以下であれば、良好な粘着性を有する粘着剤(A)を調製することができる。
【0035】
モノマー(a3’)としては、例えば、上述のモノマー(a1’)及び(a2’)と共重合可能なモノマーから選択することができ、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリド等のハロゲン化オレフィン類;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0036】
また、モノマー(a3’)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等のヒドロキシ基以外の官能基含有モノマーを用いてもよい。
これらのモノマー(a3’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
アクリル系共重合体(A1)中の構成単位(a3)の含有量としては、アクリル系共重合体(A1)中の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、更に好ましくは0〜10質量%、より更に好ましくは0〜5質量%である。
【0038】
また、ヒドロキシ基以外の官能基含有モノマーに由来の構成単位の含有量としては、アクリル系共重合体(A1)中の構成単位(a2)の全量100質量部に対して、好ましくは0〜50質量部、より好ましくは0〜30質量部、更に好ましくは0〜10質量部、より更に好ましくは0〜5質量部である。
【0039】
本発明の一態様において、アクリル系共重合体(A1)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは10万〜150万、より好ましくは20万〜120万、更に好ましくは25万〜100万、より更に好ましくは30万〜80万である。
【0040】
本発明の一態様において、アクリル系共重合体(A1)以外の粘着性樹脂を含有してもよい。
アクリル系共重合体(A1)以外の粘着性樹脂の含有量としては、粘着剤(A)中のアクリル系共重合体(A1)の全量100質量部に対して、好ましくは0〜50質量部、より好ましくは0〜30質量部、更に好ましくは0〜10質量部、より更に好ましくは0〜5質量部である。
【0041】
粘着剤(A)中のアクリル系共重合体(A1)の含有量としては、粘着剤(A)中に含まれる有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは60〜99.99質量%、更に好ましくは70〜99.90質量%、より更に好ましくは80〜99.85質量%である。
【0042】
[架橋剤]
本発明の一態様において、粘着性をより向上させた粘着剤(A)を調製する観点から、粘着剤(A)が、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
架橋剤は、粘着剤(A)中に官能基を有する粘着性樹脂が含まれている場合、当該官能基と反応して、樹脂同士を架橋するものである。
【0043】
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等、及びそれらのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤;エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤;ヘキサ〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤;アルミニウムキレート等のキレート系架橋剤;等が挙げられる。
これらの架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の一態様において、架橋剤としては、凝集力を高めて粘着力を向上させる観点、及び入手し易さ等の観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0044】
粘着剤(A)中の架橋剤の含有量は、粘着性樹脂が有する官能基の数により適宜調整されるが、官能基を有する粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.03〜7質量部、更に好ましくは0.05〜4質量部である。
【0045】
また、粘着剤(A)が上述のアクリル系共重合体(A1)を含有する場合、アクリル系共重合体(A1)中の構成単位(a2)の全量100質量部に対する架橋剤の含有割合としては、好ましくは0.1〜3.8質量部、より好ましくは0.3〜3.5質量部、更に好ましくは0.55〜3.2質量部である。
上記架橋剤の含有割合が0.1質量部以上であれば、得られる粘着剤(A)の粘着性をより向上させることができる。一方、上記架橋剤の含有割合が3.8質量部以下であれば、架橋後においても構成単位(a2)が有するヒドロキシ基を残存させ易く、要件(I)を満たす粘着剤(A)と調製し易くなる。
【0046】
[粘着剤用添加剤]
粘着剤(A)は、本発明の効果を損なわない範囲にて、架橋剤以外の粘着剤用添加剤を含有してもよい。
このような粘着剤用添加剤としては、例えば、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、防錆剤、顔料、染料等が挙げられる。
なお、本発明において、粘着剤(A)を含む粘着剤組成物から形成した粘着剤層中にて、粒子径10nm以上の微粒子として存在する粘着剤用添加剤は、比誘電率の値に応じて、誘電性微粒子(B)もしくは非誘電性微粒子(C)に属するものとして分類される。
すなわち、粘着剤(A)に含まれる粘着剤用添加剤は、誘電性微粒子(B)及び非誘電性微粒子(C)は含まれない。
【0047】
粘着剤(A)が粘着付与剤を含有する場合、当該粘着付与剤の含有量としては、粘着剤(A)中に含まれる粘着性樹脂の全量100質量部に対して、好ましくは0.1〜150質量部、より好ましくは0.5〜100質量部、更に好ましくは1〜50質量部、より更に好ましくは2〜30質量部である。
【0048】
粘着付与剤以外の上述の粘着剤用添加剤の各含有量としては、それぞれ、粘着剤(A)中に含まれる粘着性樹脂の全量100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜7質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。
【0049】
<成分(B):誘電性微粒子>
本発明において、成分(B)として用いる「誘電性微粒子」とは、粘着剤組成物から形成した粘着剤層中において、粒子径10nm以上の微粒子として存在し、且つ、実施例に記載の方法に基づいて測定した、周波数0.1MHzにおける比誘電率が20以上(好ましくは50以上、より好ましくは100以上)の微粒子を指す。
【0050】
誘電性微粒子(B)を構成する化合物としては、比誘電率が20以上となるものであればよく、例えば、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸リチウム、チタン酸カリウム、チタン酸ビスマス、チタン酸カルシウム等のチタン原子含有化合;ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸ナトリウム、タンタル酸リチウム等のニオブ原子含有化合物;ジルコン酸鉛、ジルコン酸ベリウム等のジルコン原子含有化合物;スズ酸バリウム等のスズ原子含有化合物;等が挙げられる。
誘電性微粒子(B)は、上記化合物群から選ばれる1種のみから構成された微粒子であってもよく、上記化合物群から選ばれる2種以上から構成された微粒子であってもよい。
【0051】
誘電性微粒子(B)の比誘電率としては、通常20以上であるが、好ましくは50以上、より好ましくは100以上であり、また、好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下、更に好ましくは1000以下である。
なお、本明細書において、誘電性微粒子(B)の比誘電率は、後述の実施例の「微粒子の比誘電率」の項目に記載の方法に基づいて測定された値を意味する。
【0052】
なお、本発明の一態様において、誘電性微粒子(B)が白色フィラーを含むことが好ましい。
誘電性微粒子(B)として白色フィラーを含むことで、得られる粘着剤組成物から形成した粘着剤層が白色着色されるため、当該粘着剤層の反射率が高くなる。そのため、当該粘着剤組成物を用いた粘着シートを表示用電子デバイスに用いた際に、白色で反射率が高い粘着剤層を有するため、明るさの損失が少ないという利点がある。また、表示用の下地色として白色が最適である。
白色フィラーの含有量としては、上記観点から、粘着剤組成物から形成される粘着剤層中の誘電性微粒子(B)の全体積(100体積%)に対して、好ましくは70〜100体積%、より好ましくは80〜100体積%、更に好ましくは90〜100体積%、より更に好ましくは95〜100体積%である。
【0053】
本発明の一態様において、表面抵抗率及び比誘電率が高い粘着剤層を形成し得る粘着剤組成物とする観点から、誘電性微粒子(B)が、チタン原子含有化合物のみから構成されたチタン系微粒子を含むことが好ましく、酸化チタンのみから構成された酸化チタン微粒子を含むことがより好ましい。
【0054】
チタン系微粒子の含有量としては、上記観点から、粘着剤組成物から形成される粘着剤層中の誘電性微粒子(B)の全体積(100体積%)に対して、好ましくは70〜100体積%、より好ましくは80〜100体積%、更に好ましくは90〜100体積%、より更に好ましくは95〜100体積%である。
【0055】
また、酸化チタン微粒子の含有量としては、上記観点から、粘着剤組成物から形成される粘着剤層中の誘電性微粒子(B)の全体積(100体積%)に対して、好ましくは70〜100体積%、より好ましくは80〜100体積%、更に好ましくは90〜100体積%、より更に好ましくは95〜100体積%である。
【0056】
誘電性微粒子(B)の平均粒子径としては、好ましくは0.10〜10μm、より好ましくは0.15〜8μm、更に好ましくは0.20〜5μm、より更に好ましくは0.25〜2μmである。
誘電性微粒子(B)の平均粒子径が0.10μm以上であれば、形成される粘着剤層中にて、誘電性微粒子(B)同士の凝集を抑え、均一に分散させることができ、比誘電率のばらつきが小さい粘着剤層を形成することができる。
一方、誘電性微粒子(B)の平均粒子径が10μm以下であれば、形成される粘着剤層の粘着力を良好に維持することができる。
【0057】
本発明の一態様の粘着剤組成物において、誘電性微粒子(B)の含有量としては、当該粘着剤組成物から形成される粘着剤層の全体積(100体積%)に対して、好ましくは0.1〜25体積%、より好ましくは0.3〜20体積%、更に好ましくは0.5〜15体積%、より更に好ましくは0.8〜12体積%、特に好ましくは1.2〜9体積%である。
上記範囲であれば、形成される粘着剤層の比誘電率を高く調整すると共に、良好な粘着力を保持し、当該粘着剤層中にて誘電性微粒子を良好に分散させることができ、粘着剤層の比誘電率のばらつきを抑えることができる。
【0058】
<成分(C):非誘電性微粒子>
本発明の一態様の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(B)には該当しない、非誘電性微粒子(C)を含有してもよい。
なお、本発明において、成分(C)として用いる「非誘電性微粒子」とは、粘着剤組成物から形成した粘着剤層中において、粒子径10nm以上の微粒子として存在し、且つ、成分(B)には該当しない微粒子を指す。
【0059】
非誘電性微粒子(C)の構成成分としては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、マイカ、アルミナ、酸化亜鉛、ガラス、各種ポリマー等が挙げられる。
非誘電性微粒子(C)は、1種のみの成分から構成された微粒子であってもよく、2種以上の成分から構成された微粒子であってもよい。
【0060】
非誘電性微粒子(C)の平均粒子径としては、通常10nm以上であるが、好ましくは0.10〜10μm、より好ましくは0.15〜8μm、更に好ましくは0.20〜5μm、より更に好ましくは0.25〜2μmである。
【0061】
本発明の一態様の粘着剤組成物において、非誘電性微粒子(C)の含有量としては、当該粘着剤組成物から形成される粘着剤層中の成分(B)の全体積(100体積%)に対して、好ましくは0〜30体積%、より好ましくは0〜10体積%、更に好ましくは0〜5体積%、より更に好ましくは0〜2体積%である。
【0062】
〔粘着シートの構成〕
本発明の粘着シートは、上述の本発明の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有するものであれば、特に制限は無い。
なお、当該粘着剤層は表面抵抗率及び比誘電率が高いため、本発明の一態様の粘着シートは、絶縁性を有することが好ましい。
【0063】
図1は、本発明の粘着シートの構成の示す粘着シートの断面図である。
本発明の一態様の粘着シートとしては、例えば、図1(a)に示すように、基材11の少なくとも一方の表面上に、粘着剤層12を有する基材付き粘着シート1aが挙げられる。
なお、基材付き粘着シート1aの構成においては、図1(b)に示すように、粘着剤層12上に、さらに剥離材13を積層した基材付き粘着シート1bとしてもよい。
【0064】
本発明の一態様の粘着シートとしては、図1(c)に示すように、基材11の両面に、それぞれ粘着剤層12a、12bを有する基材付き両面粘着シート1cのような構成としてもよい。なお、図1(c)に示す両面粘着シート1cは、粘着剤層12a、12b上に、さらに剥離材を積層した構成としてもよい。
【0065】
また、本発明の一態様の粘着シートとしては、図1(d)のように、基材を用いずに、2枚の剥離材13a、13bに粘着剤層12が挟持された構成を有する基材無し粘着シート1dとしてもよい。
この基材無し粘着シート1dの剥離材13a、13bは、同じ種類の素材であってもよく、互いに異なる種類の素材であってもよいが、剥離材13aと剥離材13bとの剥離力が異なるように調整された素材であることが好ましい。
なお、基材無し粘着シートとしては、両面に剥離処理が施された剥離材の一方の面上に粘着剤層を設けたものをロール状に巻いた構成を有する粘着シートも挙げられる。
【0066】
なお、本発明の一態様の粘着シートの粘着力としては、好ましくは3.0N/25mm以上、より好ましくは5.0N/25mm以上、更に好ましくは6.0N/25mm以上、より更に好ましくは8.0N/25mm以上である。
なお、本明細書において、粘着シートの上記粘着力は、ステンレス板(SUS304、360番研磨)を被着体とした場合に測定した値であって、より具体的には、実施例に記載の方法に基づいて測定した値を意味する。
【0067】
<基材>
本発明の一態様の粘着シートが有する基材としては、当該粘着シートの用途に応じて適宜選択され、導電性基材を用いてもよく、絶縁性基材を用いてもよい。
なお、当該粘着シートが有する粘着剤層は、表面抵抗率及び比誘電率が高いため、基材として絶縁性基材を用いることで、絶縁性の粘着シートとすることができる。
【0068】
導電性基材としては、例えば、鉄、アルミニウム、金、銀、銅等からなる金属基材等が挙げられる。
絶縁性基材としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、グラシン紙等やこれらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等の各種紙類;不織布等の多孔質材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等から選ばれる1種以上の樹脂を含むプラスチックフィルム又はシート;ガラス基材;等が挙げられる。
なお、本発明の一態様で用いる基材は、単層フィルム又はシートであってもよく、2層以上の積層体である複層フィルム又はシートであってもよい。
【0069】
上記プラスチックフィルム又はシートは、未延伸でもよいし、縦又は横等の一軸方向あるいは二軸方向に延伸されていてもよい。
また、プラスチックフィルム又はシートは、さらに紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が含有されていてもよい。
【0070】
基材がプラスチックフィルム又はシートである場合、基材と粘着剤層との密着性を向上させる観点から、必要に応じて、基材の表面に対し酸化法や凹凸化法等の表面処理を施すことが好ましい。
酸化法としては、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、クロム酸酸化(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。
また、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選定されるが、粘着剤層との密着性の向上効果や操作性の観点から、コロナ放電処理法が好ましい。また、基材の表面に、プライマー処理を施してもよい。
【0071】
基材の厚さは、粘着シートの用途に応じて適宜選択されるが、取扱性の観点から、好ましくは10〜250μm、より好ましくは15〜200μm、更に好ましくは20〜150μmである。
【0072】
<剥離材>
本発明の一態様の粘着シートが有する剥離材としては、両面に剥離処理が施された剥離シートや、一方の表面のみに剥離処理が施された剥離シートが用いられる。
このような剥離材に施される剥離処理としては、剥離材用基材の剥離処理を施す表面上に、剥離剤を塗布して剥離剤からなる被膜を形成して行う方法等が挙げられる。
【0073】
剥離材用基材としては、例えば、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、又はポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離材の厚さは、好ましくは10〜200μm、より好ましくは25〜150μmである。
【0074】
<粘着剤層>
本発明の粘着シートが有する粘着剤層は、上述の本発明の粘着剤組成物から形成された層である。
そのため、当該粘着剤層は、上述の粘着剤(A)及び誘電性微粒子(B)を含有するが、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに非誘電性微粒子(C)を含有していてもよい。
なお、これら成分(A)〜(C)の詳細は、上述のとおりである。
【0075】
本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層中の誘電性微粒子(B)の含有量は、当該粘着剤層の全体積に対して、好ましくは0.1〜25体積%、より好ましくは0.3〜20体積%、更に好ましくは0.5〜15体積%、より更に好ましくは0.8〜12体積%、特に好ましくは1.2〜9体積%である。
成分(B)の含有量が0.1体積%以上であれば、粘着剤層の比誘電率を高く調整することができる。
一方、成分(B)の含有量が25体積%以下であれば、良好な粘着力を保持できると共に、誘電性微粒子(B)を粘着剤層中にて良好に分散させることができ、粘着剤層の比誘電率のばらつきを抑えることができる。
【0076】
本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層中の非誘電性微粒子(C)の含有量としては、当該粘着剤層中に含有する誘電性微粒子(B)の全体積(100質量%)に対して、好ましくは0〜30体積%、より好ましくは0〜10体積%、更に好ましくは0〜5体積%、より更に好ましくは0〜2体積%である。
【0077】
本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層の周波数0.1MHzにおける比誘電率としては、好ましくは9.5〜20.0、より好ましくは9.7〜18.0、更に好ましくは10.0〜16.0、より更に好ましくは10.5〜15.0である。
【0078】
また、本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層の周波数1.0MHzにおける比誘電率としては、好ましくは7.80〜18.0、より好ましくは8.00〜16.0、更に好ましくは8.50〜15.0、より更に好ましくは8.80〜14.0である。
【0079】
なお、本明細書において、粘着剤層の周波数0.1MHzもしくは1.0MHzにおける比誘電率は、後述の実施例の「粘着剤層の比誘電率」の項目に記載の方法に基づいて測定された値を意味する。
【0080】
本発明の一態様の粘着シートにおいて、粘着剤層中の誘電性微粒子(B)が、酸化チタン微粒子を含むことが好ましい。
そして、酸化チタン微粒子を含む粘着剤層が、下記条件式(1)及び(2)の少なくとも一方を満たすことが好ましく、下記条件式(1)及び(2)の双方を満たすことがより好ましい。
・条件式(1):y1≧6.8×e0.07x
〔式(1)中、xは前記粘着剤層中の誘電性微粒子(B)として含まれる酸化チタン微粒子の体積含有率(x)(体積%)であり、y1は前記粘着剤層の周波数0.1MHzにおける比誘電率である。eはネイピア数である。〕
・条件式(2):y2≧5.8×e0.069x
〔式(2)中、xは前記粘着剤層中の誘電性微粒子(B)として含まれる酸化チタン微粒子の体積含有率(x)(体積%)であり、y2は前記粘着剤層の周波数1MHzにおける比誘電率である。eはネイピア数である。〕
【0081】
本発明の粘着シートは、上述の要件(I)を満たす粘着剤(A)を含む粘着剤組成物から形成した粘着剤層を有する。そのため、誘電性微粒子(B)の含有量が比較的少なくても、粘着剤層の表面抵抗率及び比誘電率を高く調整することができる。
上記条件式(1)及び(2)は、要件(I)を満たす粘着剤(A)を含む粘着剤組成物から形成した粘着剤層における、成分(B)として含有する酸化チタン微粒子の体積含有率(x)と、粘着剤層の所定の周波数における比誘電率との関係を表したものである。
上記条件式(1)及び(2)を満たすように酸化チタン微粒子の体積含有率(x)を調整することで、粘着剤層の高い比誘電率を保持しつつも、良好な粘着力を発現させることができる。また、誘電体微粒子を多量に含有させても、誘電体微粒子の沈降を抑制することができる。更には、酸化チタン微粒子が光触媒機能を有していることに起因した粘着剤層中の有機物の分解が誘発されてしまう現象を抑制することができる。
なお、要件(I)を充足しない粘着剤を用いた場合、形成される粘着剤層は、上記条件式(1)及び(2)を満たさない可能性が高く、また、酸化チタン微粒子を含む誘電性微粒子(B)の含有量を増加させても、粘着剤層の比誘電率を十分に高く調整することが難しい。
【0082】
なお、上記条件式(1)及び(2)中のxで表される、粘着剤層中の酸化チタン微粒子の体積含有率(x)としては、好ましくは0.1〜20体積%、より好ましくは0.3〜16体積%、更に好ましくは0.5〜14体積%、より更に好ましくは0.8〜12体積%、特に好ましくは1.2〜9体積%である。
【0083】
本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層の表面抵抗率は、好ましくは1.0×1011Ω/□以上、より好ましくは1.0×1012Ω/□以上、更に好ましくは1.0×1013Ω/□以上、より更に好ましくは1.0×1014Ω/□以上である。
なお、本明細書において、粘着剤層の表面抵抗率の値は、実施例に記載の方法に基づいて測定した値を意味する。
【0084】
本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層の厚さとしては、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜60μm、更に好ましくは3〜40μmである。
0.5μm以上であれば、被着体に対し良好な粘着力が得られる。一方、100μm以下であれば、生産性の面で有利であり、取扱い易い粘着シートとなり得る。
【0085】
〔粘着シートの製造方法〕
本発明の粘着シートの製造方法としては、特に制限はなく、基材又は剥離材上に、本発明の粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させて、粘着剤層を形成する工程を有する製造方法が挙げられる。
なお、基材又は剥離材への基材や剥離材の表面上への塗布の作業性を向上させるために、粘着剤層の形成材料である本発明の粘着剤組成物は、更に有機溶媒で希釈して、溶液の形態とすることが好ましい。
【0086】
有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、トルエン、キシレン、n−プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。
なお、これらの有機溶媒は、例えば、粘着剤(A)に含まれる粘着性樹脂の合成時に使用された有機溶媒をそのまま用いてもよいし、粘着性樹脂の合成時に使用された以外の1種以上の有機溶媒を加えてもよい。
【0087】
粘着剤組成物の溶液の固形分濃度としては、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜45質量%、更に好ましくは15〜30質量%である。
【0088】
基材又は剥離材上に、粘着剤組成物の溶液の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0089】
具体的な製造方法として、図1(a)のような基材付き粘着シート1aの製造方法としては、例えば、基材11の一方の面に、粘着性組成物の溶液を直接塗布し、乾燥して粘着剤層12を形成させて製造する方法が挙げられる。
また、図1(b)のような基材付き粘着シート1bの製造方法としては、例えば、剥離材13の剥離処理面上に、粘着性組成物の溶液を直接塗布し、乾燥して粘着剤層12を形成させた後、表出している粘着剤層12の表面と基材11とを貼り合わせて製造する方法等が挙げられる。
さらに、図1(c)のような基材付き両面粘着シート1cの製造方法としては、例えば、基材の両面のそれぞれに、粘着性組成物の溶液を直接塗布し、乾燥して粘着剤層12、12’を形成させて製造する方法や、2枚の剥離材を用意し、それぞれの剥離材の剥離処理面上に、粘着性組成物の溶液を直接塗布し、乾燥して粘着剤層を形成させた後、2つの剥離材上に形成した粘着剤層12a、12bを基材11の両面に貼り合わせて製造する方法等が挙げられる。
そして、図1(d)のような基材無し粘着シート1dの製造方法としては、例えば、一つの剥離材13aの剥離処理面に粘着性組成物の溶液を直接塗布し、乾燥して粘着剤層12を形成させた後、表出している粘着剤層12の表面に、別の剥離材13bを貼り合わせて製造する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0090】
以下の実施例の記載において示された各種物性値は、以下のとおり測定した値である。
[質量平均分子量(Mw)]
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC−8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL−H」「TSK gel GMHXL(×2)」「TSK gel G2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの。
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0091】
[比誘電率測定用試験サンプルの比誘電率]
LCR/レジスタンスメータ(アジレントテクノロジー社製、製品名「インピーダンス/ゲイン・フェーズ アナライザ4194A」)に、「Agilent16451B誘電体テスト・フィクスチャ」(製品名、アジレントテクノロジー社製)を接続して、周波数0.1MHz又は1MHzにおける比誘電率測定用サンプルの静電容量C(単位:F)を測定した。
また、比誘電率測定用試験サンプルが、測定対象物を2枚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムで挟持した構成を有する場合には、各PETフィルムの静電容量は、別途測定し(その測定値をC(単位:F)とする)、比誘電率測定用試験サンプルの静電容量C(単位:F)を、下記計算式(3)から算出した。
【数1】

そして、上記計算式(3)から算出した比誘電率測定用試験サンプルの静電容量C(単位:F)、比誘電率測定用試験片の厚さd(単位:m)を用い、測定電極の直径L=0.005(単位:m)、真空の誘電率ε=8.854×10−12(単位:F/m)とし、下記計算式(4)から、比誘電率測定用試験サンプルの比誘電率εを算出した。
【数2】
【0092】
[微粒子の比誘電率]
測定対象となる微粒子とポリエチレンとの樹脂混合物から樹脂シートを形成した。なお、当該樹脂シート中に含まれる微粒子の体積分率をV、ポリエチレンの体積分率をVとする(ただし、V+V=1)。当該樹脂シートを比誘電率測定用試験サンプルとし、上記の比誘電率の測定方法に基づき、当該比誘電率測定用試験サンプルの比誘電率εを測定した。
そして、下記式(5)で表されるLichteneckerの対数混合則に基づき、周波数1.0MHzにおけるポリエチレンの比誘電率ε=2.3とし、周波数1.0MHzにおける前記微粒子の比誘電率εを算出した。
【数3】
【0093】
製造例1〜7
表1に記載の種類及び配合量(固形分量)で粘着性樹脂及び各種添加剤を添加し、希釈溶媒である酢酸エチルを加え、固形分濃度40%の粘着剤(α1)〜(α7)をそれぞれ調製した。
なお、粘着剤(α1)〜(α7)の調製に使用した表1に記載の粘着性樹脂及び各種添加剤の詳細は、以下のとおりである。
<粘着性樹脂>
・アクリル系樹脂(1):n−ブチルアクリレート(BA)、メチルアクリレート(MA)、メチルメタクリレート(MMA)、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)に由来の構成単位を有するアクリル系共重合体。BA/MA/MMA/HEA=60/10/13/17(質量比)、Mw=40万。
・アクリル系樹脂(2):n−ブチルアクリレート(BA)及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)に由来の構成単位を有するアクリル系共重合体。BA/HEA=80/20(質量比)、Mw=50万。
・アクリル系樹脂(3):n−ブチルアクリレート(BA)及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)に由来の構成単位を有するアクリル系共重合体。BA/HEA=90/10(質量比)、Mw=50万。
・アクリル系樹脂(4):n−ブチルアクリレート(BA)及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)に由来の構成単位を有するアクリル系共重合体。BA/HEA=95/5(質量比)、Mw=50万。
・アクリル系樹脂(5):n−ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AAc)に由来の構成単位を有するアクリル系共重合体。BA/AAc=90/10(質量比)、Mw=60万。
・アクリル系樹脂(6):n−ブチルアクリレート(BA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、ビニル酢酸(VAc)、及びアクリル酸(AAc)に由来の構成単位を有するアクリル系共重合体。BA/2EHA/VAc/AAc=60/25/10/5(質量比)、Mw=55万。
・シリル化ウレタン系樹脂(1):ポリオキシプロピレンジオール/イソホロンジイソシアネート/N−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン/メチルアクリレート=93.7/2.3/2.2/1.8(質量比)の割合で重合してなるシリル化ウレタン系樹脂、Mw=4万。
<各種添加剤>
・架橋剤:イソシアネート系架橋剤、製品名「コロネートL」(東ソー株式会社製)。
・粘着付与樹脂:テルペンフェノール系樹脂、製品名「YSポリスターG125」(ヤスハラケミカル社製)、Mw=1000、軟化点:125℃。
・触媒:チタンキレート系触媒、製品名「オルガチックスTC−100」(マツモトファインケミカル(株)製)。
【0094】
調製した粘着剤(α1)〜(α7)について、以下の方法に基づき、表面自由エネルギーの極性成分γの値、及び、比誘電率の値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0095】
[表面自由エネルギーの極性成分γの測定]
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ株式会社製、製品名「ルミラー T60」)の表面上に、調製した粘着剤(α1)〜(α7)のいずれかを塗布し、厚さ25μmのシート状の塗膜を形成した。
そして、形成直後の塗膜の表面上に、純水、ジヨードメタン、及び1−ブロモナフタレンの3種の溶媒をそれぞれ滴下し、3種の溶媒(純水、ジヨードメタン、及び1−ブロモナフタレン)のそれぞれに対する3秒後の静的接触角を、全自動接触角計(協和界面科学株式会社製、製品名「DM−701」)を用いて測定した。
測定した3種の溶媒に対する静的接触角の値を基に、北崎−畑法により、粘着剤から形成したシート状物(塗膜)の表面自由エネルギーの極性成分γsの値を算出した。
【0096】
[粘着剤の比誘電率の測定]
以下の手順で、比誘電率測定用サンプルを作製した。
まず、剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」)の剥離処理面上に、調製した粘着剤(α1)〜(α7)のいずれかを塗布し、乾燥させて、厚さ25μmの当該粘着剤からなる誘導体微粒子非含有粘着剤層(α’)(以下、単位「粘着剤層(α’)」ともいう)を形成した。
上記と同じ方法で、剥離フィルム上に粘着剤層(α’)を形成したものを8個作製し、粘着剤層(α’)同士を8枚重ね合わせて、8層の粘着剤層(α’)からなる積層体を作製した。
そして、当該積層体の両面に存在する剥離フィルムを除去し、表出した当該積層体の表面に、厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製、製品名「コスモシャイン A4300」)をそれぞれ貼付し、PETフィルム/8層の粘着剤層(α’)からなる積層体/PETフィルムの構成を有する比誘電率測定用サンプルを作製した。
作製した比誘電率測定用サンプルを用いて、上述の比誘電率の測定法に基づき、周波数0.1MHz及び1MHzにおける比誘電率を測定した。得られた値を、測定対象となる粘着剤の比誘電率とし、表1に記載した。
【0097】
【表1】
【0098】
実施例1〜5、比較例1〜9
表2に示す粘着剤(α1)〜(α7)のいずれかに対して、表2に示す種類の微粒子を配合し、さらに酢酸エチルを加え、固形分濃度40質量%の粘着剤組成物を調製した。なお、微粒子の配合量は、粘着剤組成物から形成した粘着剤層中の微粒子の体積含有量xが、表2に示す値となるように配合量を調整した。
そして、剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」)の剥離処理面上に、調製した粘着剤組成物を塗布し、乾燥して、厚さ25μmの粘着剤層を形成した。
次いで、形成した粘着剤層の表面に、基材であるPETフィルム(株式会社東レ製、製品名「ルミラー」、厚さ50μm)を積層して、基材付き粘着シートを作製した。
また、基材である上記PETフィルムに代えて、上記とものと同じ種類の剥離フィルムの剥離処理面と、形成した粘着剤層の表面とを貼り合わせ、基材無し粘着シートを作製した。
【0099】
なお、粘着剤組成物の調製に使用した表2に記載の微粒子の詳細は、以下のとおりである。
<微粒子>
・酸化チタン:大日精化工業株式会社製、製品名「SZカラー #7030ホワイト」、平均粒子径0.3μm、周波数1MHzにおける比誘電率114の誘電性微粒子。
・シリカ:東海ミネラル株式会社製、製品名「ES−D25」、平均粒子径25μm、周波数1MHzにおける比誘電率3.6の非誘電性微粒子。
【0100】
実施例及び比較例で作製した基材付き粘着シート及び基材無し粘着シートを用いて、以下の物性値を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0101】
[粘着剤層の比誘電率]
複数作製した基材無し粘着シートの厚さ25μmの粘着剤層同士を8枚重ね合わせ、8層の粘着剤層からなる積層体を作製した。
そして、当該積層体の両面に存在する剥離フィルムを除去し、表出した当該積層体の表面に、厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製、製品名「コスモシャイン A4300)をそれぞれ貼付し、PETフィルム/8層の粘着剤層(α’)からなる積層体/PETフィルムの構成を有する比誘電率測定用サンプルを作製した。
作製した比誘電率測定用サンプルを用いて、上述の比誘電率の測定法に基づき、周波数0.1MHz及び1MHzにおける比誘電率を測定した。得られた値を、測定対象となる粘着剤層の比誘電率とし、表2に記載した。
【0102】
[粘着力]
作製した基材付き粘着シートを25mm×300mmに切断したものを試験サンプルとした。
当該試験サンプルの剥離シートを除去し、表出した粘着剤層を被着体であるステンレス板(SUS304、360番研磨)に貼付した。
そして、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で24時間放置した後、JIS Z0237:2000に基づき、180°引き剥がし法により、引っ張り速度300mm/分にて、粘着シートの粘着力を測定した。
【0103】
[粘着剤層の表面抵抗率]
作製した基材付き粘着シートを20mm×40mmに切断したものを試験サンプルとした。
当該試験サンプルを23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で24時間放置後、剥離シートを除去し、表出した粘着剤層に対して、低抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、製品名「ロレスタGP MCP−T610型」)を用いて、JIS−K7194に準拠して、粘着剤層の表面抵抗率を測定した。
なお、当該測定は3回行い、その3回の平均値を、測定対象の粘着シートの表面抵抗率とした。
【0104】
【表2】
【0105】
表2より、実施例1〜5で調製した粘着剤組成物から形成した粘着剤層は、優れた粘着力を有すると共に、表面抵抗率が高く、且つ比誘電率が高いことが分かる。
一方、比較例1〜9で調製した粘着剤組成物から形成した粘着剤層は、実施例1〜5に比べて、周波数0.1MHz及び1MHzのいずれにおいても比誘電率の値が低い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の粘着シートは、優れた粘着力を有すると共に、当該粘着シートが有する粘着剤層の表面抵抗率が高く、且つ、比誘電率も高い。
そのため、本発明の粘着シートは、電子デバイスの接合に用いられることが好ましく、具体的には、静電容量式デバイスや近距離無線通信デバイス等の各種デバイスに組み込まれる部材に用いられる接着部材として、又は、回路基板をラミネートするために用いられるラミネート部材として好適である。
【符号の説明】
【0107】
1a、1b、1c、1d 粘着シート
11 基材
12、12a、12b 粘着剤層
13、13a、13b 剥離材
図1