【課題】無電解メッキの際にメッキ不良を最小化することのできる印刷回路基板のスルーホールを無電解銅メッキする方法、その方法に使用される触媒溶液及びその触媒溶液を製造する方法を提供すること。
【解決手段】導体層と不導体層とが積層された印刷回路基板のスルーホール(Through−hole)を無電解銅メッキ(electroless copper plating)する方法が開示される。本方法は、塩基性プリディップ溶液を用いてスルーホールをマイナスイオン化させるステップと、ピリジン(Pyridine)または3−ピリジンメタノール(3−pyridinemethanol)から選択されるパラジウムイオンリガンド及びパラジウムイオンからなる錯化合物を含む触媒溶液を用いてスルーホールを触媒処理するステップと、スルーホール表面を無電解銅メッキするステップとを含む。
導体層と不導体層とが積層された印刷回路基板のスルーホール(Through−hole)を無電解銅メッキ(electroless copper plating)する方法において、
硫酸のナトリウム塩から選択されるマイナスイオン付与剤を含む塩基性プリディップ溶液を用いて前記スルーホールをマイナスイオン化させるステップと、
ピリジン(Pyridine)または3−ピリジンメタノール(3−pyridinemethanol)から選択されるパラジウムイオンリガンド及びパラジウムイオンからなる錯化合物を含む触媒溶液を用いて前記スルーホールを触媒処理するステップと、
前記スルーホールの表面を無電解銅メッキするステップと、を含む無電解銅メッキをする方法。
非金属材質のインペラを用いて前記パラジウムイオンリガンドの添加された溶液を撹拌するステップを更に含むことを特徴とする請求項3に記載の無電解銅メッキのための触媒溶液を製造する方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において使用される用語の概略を説明し、本発明について具体的に説明する。
【0021】
本発明の実施形態において使用される用語は、本発明における機能を考慮しながらできるだけ現在広く使われる一般的な用語を選択しているが、それは当該分野に携わる技術者の意図または凡例、新たな技術の登場等に応じて異なってよい。なお、特定の場合は、出願人が任意に選定した用語もあるし、その場合に該当する発明の説明箇所において詳細にその意味を記載する。よって、本発明で使用される用語は、単なる用語の名称ではなく、その用語の有する意味と、本発明の全体的な内容を根拠に定義されるべきである。
【0022】
本発明の実施形態は、多様な置き換えを加えることができ、様々な実施形態を有するため、特定の実施形態を図に例示し、詳細な説明において詳細に説明する。しかし、それは、特定の実施形態に対して範囲を限定するためのものではなく、発明された思想及び技術範囲に含まれる全ての置き換え、均等物ないし代替物を含むものとして理解されるべきである。実施形態を説明するうえで、関連する公知技術に対する具体的な説明が要旨を曖昧とすると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0023】
第1及び第2等の用語は、多様な構成要素を説明するのに使用されることができるが、構成要素は用語によって限定されるべきではない。用語は、1つの構成要素を別の構成要素から区別する目的としてのみ使用される。
【0024】
単数の表現は文脈上明確に異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」または「構成される」等の用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはそれを組み合わせたものが存在することを指定するためのものであり、1つまたはそれ以上の別の特徴や、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはそれを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め省くものとして理解されるべきである。
【0025】
以下においては、添付の図を参考にして本発明の実施形態に対して、本発明の属する技術分野において通常の技術を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。しかし、本発明は、多様に異なる形態で実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。そして、図を参照して本発明を明確に説明するために、説明に関係のない部分は省略しており、明細書全体を通じて類似する箇所に対しては類似する図の符号を付している。
【0026】
図1は、本開示の一実施形態に係る導体層と不導体層とが積層された印刷回路基板のスルーホールを無電解銅メッキする方法を説明するためのフローチャートである。
【0027】
図1を参照すると、まず、塩基性プリディップ溶液を用いて印刷回路基板のスルーホールをマイナスイオン化させる(S110)。プリディップ溶液とは、以後の触媒処理段階で使用される薬品が汚染されたり、濃度が変化することを防止するためのものとして、プリディップ溶液を用いて触媒処理がより活性化されてよい。印刷回路基板のスルーホールをマイナスイオン化させることで、パラジウムイオンが不導体表面により安定的にイオン結合できてよい。
【0028】
そして、ピリジン(Pyridine)または3−ピリジンメタノール(3−pyridinemethanol)から選択されるパラジウムイオンリガンド及びパラジウムイオンから構成された錯化合物(Coordination complex)を含む触媒溶液を用いて前記マイナスイオン化されたスルーホールを触媒処理する(S120)。この段階では、前記錯化合物をスルーホール表面に付着させる。
【0029】
そして、スルーホール表面を無電解銅メッキする(S130)。この段階では、錯化合物を還元させてパラジウム金属がスルーホール表面から析出されるようにし、パラジウム金属を触媒にしてメッキ液内の銅イオンを還元させてスルーホール表面に析出されるようにする。このような方式で、不導体を含むスルーホール表面を無電解銅メッキすることができる。
【0030】
以下では、本発明の一実施形態に係る印刷回路基板のスルーホールに無電解メッキをするための方法についてより詳細に説明する。
【0031】
図2Aないし
図2Fは、本発明の一実施形態に係る印刷回路基板のスルーホールに無電解メッキをする一連の過程を示す図である。
【0032】
まず、
図2Aを参照すると、スルーホール3の形成された印刷回路基板10の断面を示すものであり、印刷回路基板10は導体層1と不導体層2とが積層された構造である。一方、図は例示に過ぎず、本発明が図面に示す数の導体層と不導体層とからなる印刷回路基板の使用にのみ限定されるものでなく、例えば、2つの導体層とその間に不導体層とが含まれた両面印刷回路基板も用いられてよく、別の数の組み合わせも可能である。
【0033】
導体層1は、伝導性を有する銅、ニッケル、金、パラジウム、銀のような金属材質を使用してよい。
【0034】
不導体層2は、レジン(Resin)、ガラス、合成樹脂等のような非伝導性の非金属物質を使用してよい。
【0035】
スルーホール3は、印刷回路基板10の層間の電気的コネクションを目的とし、印刷回路基板10に形成されたものである。一方、本明細書で使用される用語の「スルーホール」は、
図2Bに示すように、上部から下部に完全に貫通したものと、片面が塞がれている完全に貫通しないもの(non−through hole)を含む概念として使用される。
【0036】
スルーホール3を形成する方法としては、ドリリング加工方式、レーザ加工方式等を考慮してよい。
【0037】
その後、印刷回路基板10を脱脂溶液で脱脂及びコンディショニング(Clean & Conditioning、C&C)処理する。
【0038】
ここで、脱脂溶液は、一価、二価及び三価アミン類または水酸化物を含んでよく、pH8.0〜14.0である塩基性であってよい。
【0039】
一実施形態によると、脱脂溶液は1〜20重量%のアミン類または水酸化物と、2〜8重量%の溶剤と、2〜15重量%のpH調節剤及び残量の純水で構成されてよい。
【0040】
脱脂溶液に使用される水酸化物は、水酸化ナトリウム(Sodium hydroxide)、水酸化カリウム(Potassium hydroxide)、水酸化テトラメチルアンモニウム(Tetramethylammonium hydroxide)、水酸化マグネシウム(Magnesium hydroxide)、水酸化カルシウム(Calcium hydroxide)等のようなアルカリ金属類のうち、少なくとも1つであってよく、好適には水酸化ナトリウムを使用したり、別のアルカリ金属類と2種以上の混用使用も可能である。
【0041】
脱脂溶液に使用されるアミン類は、モノエチルアミン、モノエタノールアミン、モノブチルアミン、モノメチルアミン、モノイソプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、1−ナフチルアミン、ジフェニルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、ジブチルアミン、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピペラジン、P−フェニレンジアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、ジエチレントリアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,3,5−トリアジン、テトラエチレンペンタミン、トリエチレンテトラミン、ベンゼンメタンアミン等を使用してよい。
【0042】
脱脂及びコンディショニング処理段階では、具体的に、印刷回路基板10を脱脂溶液に浸漬させて酸化膜等の異物を第1回除去しつつ、スルーホール3の内壁に露出された導体層1及び不導体層2の表面に1価、2価及び3価アミン類が付着され、両イオン層4が形成される(
図2Bを参照)。
【0043】
前記脱脂及びコンディショニング処理段階の後、水洗及びエッチングを施す。具体的に、本段階は、第1回水洗工程、ソフトエッチング工程、第2回水洗工程からなってよい。
【0044】
前記第1回及び第2回水洗工程は、印刷回路基板10の異物を除去する工程として、水または薬品等を用いて水洗させる作業を含む。
【0045】
ソフトエッチング工程は、導体層1の表面に微細な粗さを作り、メッキ段階で金属粒子が均一に密着するようにし、脱脂でも処理できない汚物を除去するための工程である。
【0046】
そして、ソフトエッチング工程に使用される溶液は、例えば、水に過酸化水素と硫酸及び阻害剤が混合された溶液であってよく、または水に過硫酸ナトリウム及び阻害剤が混合された溶液であってもよい。その他にも、従来のソフトエッチング工程で使用される多様な種類のエッチング溶液が使用されてよい。
【0047】
上述のように、水洗及びエッチングが行われた後は、
図2Cのように、プラスイオン層4は不導体層2の表面にのみ残ることになる。
【0048】
その後、印刷回路基板10を塩基性プリディップ容液に浸漬させる。塩基性プリディップ溶液のpHは8.0〜14.0の範囲である。このpH範囲から外れると、その後の触媒処理工程でパラジウムの吸着量が減少するという点が確認された。
【0049】
プリディップ溶液は、スルーホール3に露出された不導体層2の表面に付着されたプラスイオンをマイナスイオン化させ(
図2Dを参照)、パラジウムイオン(Pd
2+)が不導体表面に更に安定的にイオン結合されるように促す役割を担う。
【0050】
一実施形態によると、プリディップ溶液は0.01〜20重量%の水酸化物またはアミン類、0.1〜5重量%のマイナスイオン付与剤、0.001〜1重量%の湿潤剤及び残量の純水で構成されてよい。
【0051】
プリディップ溶液に使用される水酸化物は、水酸化ナトリウム(Sodium hydroxide)、水酸化カリウム(Potassium hydroxide)、水酸化テトラメチルアンモニウム(Tetramethylammonium hydroxide)、水酸化マグネシウム(Magnesium hydroxide)、水酸化カルシウム(Calcium hydroxide)等のようなアルカリ金属類のうち、少なくとも1つであってよく、好適には水酸化ナトリウムを使用したり、別のアルカリ金属類と2種以上の混用使用も可能である。
【0052】
プリディップ溶液に使用されるアミン類は、モノエチルアミン、モノエタノールアミン、モノブチルアミン、モノメチルアミン、モノイソプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、1−ナフチルアミン、ジフェニルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、ジブチルアミン、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピペラジン、P−フェニレンジアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、ジエチレントリアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,3,5−トリアジンのうち、少なくとも1つであってよい。
【0053】
プリディップ溶液に使用される水酸化物とアミン類とは、プリディップ溶液中の銅イオン(Cu
2+)の錯体の役割を担うと同時に、イオンパラジウム触媒工程に流入された際、パラジウムイオンリガンド機能を強化する役割をする。
【0054】
特に、プリディップ溶液に使用される水酸化物は、少量の弱酸ないし中性の添加剤が入るとしても、バッファリング効果によってプリディップ溶液のpHが8.0〜14.0の範囲で安定的に維持できるようにする役割を担う。
【0055】
プリディップ溶液に使用されるマイナスイオン付与剤は、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等のような硫酸のナトリウム塩であってよい。
【0056】
前記マイナスイオン付与剤は、従来技術で使用されていた酸性プリディップ溶液内の高分子のマイナスイオン界面活性剤の役割を代替するものである。従来は、酸性プリディップ内の高分子のマイナスイオン性界面活性剤が触媒であるパラジウムイオンと凝集されて異物が発生し、このような異物は基板の表面とホール内壁に付着されて短絡を引き起こし、メッキ段階で不良の原因となる問題があったが、本発明の塩基性プリディップ溶液を用いると、このような問題を解決することができる。
【0057】
プリディップ溶液に使用される湿潤剤は、分子量400〜20,000の間のエチレングリコールのポリマーであってよい。
【0058】
前記湿潤剤は、印刷回路基板10と溶液の接触角を低くし、印刷回路基板10内の酸化を防止する役割を担う。
【0059】
その後、触媒溶液を印刷回路基板10に接触させて触媒処理を行う。触媒溶液と印刷回路基板10とを接触させる方法としては、特に制限されるわけではなく、例えば、ディッピング(Dipping)、噴射(Spray)等の方式が利用可能である。
【0060】
触媒溶液は、溶媒と、ピリジンまたは3−ピリジンメタノールから選択されるパラジウムイオンリガンド及びパラジウムイオンから構成された錯化合物を含む。
【0061】
具体的に、溶媒でパラジウム化合物とパラジウムイオンリガンドを混合反応させることで、パラジウム化合物のパラジウムイオンと、パラジウムイオンリガンドとが結合された錯化合物を形成させ、触媒溶液を製造することができる。ここで、溶媒は水であってよい。
【0062】
一実施形態によると、触媒溶液は0.1〜10重量%のパラジウム化合物、0.2〜20重量%のパラジウムイオンリガンド、0.0005〜0.5重量%の湿潤剤、0.001〜1重量%のカップリング剤、0.1〜10重量%のpH調節剤、0.1〜10重量%のpHバッファ及び残量の純水で構成されてよい。
【0063】
このような触媒溶液で触媒処理されると、パラジウムイオンとパラジウムイオンリガンドとが配位結合して形成された錯化合物からなる層5がマイナスイオン化した不導体層2に付着される(
図2Eを参照)。
【0064】
触媒溶液で使用されるパラジウム化合物は、塩化パラジウム、不和パラジウム、ブロム化パラジウム、ヨウ素化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウムまたは硫化パラジウムであってよい。
【0065】
触媒溶液で使用されるパラジウムイオンリガンドは、ピリジン、2−ピリジンメタノール(2−pyridinemethanol)、3−ピリジンメタノール(3−pyridinemethanol)、4−ピリジンメタノール(4−pyridinemethanol)であってよい。
【0066】
または、触媒溶液で使用されるパラジウムイオンリガンド2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン等のようなピリジン誘導体であってよい。
【0067】
特に、3−ピリジンメタノールまたはピリジン(C
5H
5N)がパラジウムイオンリガンドとして使用される際、パラジウムイオンとの結合力に優れていることを実験を通して確認した。
【0068】
触媒溶液で使用される湿潤剤は、分子量400〜20,000の間のエチレングリコールのポリマーであってよい。
【0069】
触媒溶液で使用されるカップリング剤は、シラン(Silane)系カップリング剤、チタネート(Titanate)系カップリング剤、ジルコネート(Zirconate)系カップリング剤のうち、1種または2種の混合使用も可能である。
【0070】
例えば、触媒溶液で使用されるカップリング剤は、ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリネオデカノイルジルコネート(Neopentyl(diallyl)oxy、trineodecanonyl zirconate)及びネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリネオデカノイルチタネート(Neopentyl(diallyl)oxy、trineodecanonyl titante)のうち少なくとも1つであってよい。
【0071】
前記カップリング剤は、印刷回路基板10の不導体層2にパラジウムイオンが吸着される量を増加させ、なお、均一の吸着を促す役割を担う。
【0072】
触媒溶液で使用されるpH調節剤としては水酸化ナトリウムを使用することができ、pHバッファとしては硼酸を使用することができる。
【0073】
一方、本触媒溶液は、消泡剤(Anti−foaming agent)を更に含むことができる。例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリルレート(1,1,1,3,3,3−Hexafluoroisopropyl acrylate)が消泡剤として使用されてよい。
【0074】
このような消泡剤は、泡の発生を抑える役割を担い、付随的に、分散効果をもたらして湿潤性を高める役割を担う。泡が発生する場合、その泡が触媒溶液を通る印刷回路基板10に付着するようになり、異物性不良を引き起こすことになるが、上述のような消泡剤を使用することで、このような不具合を防止することができるようになる。
【0075】
特に、本発明に係る触媒溶液は、塩基性プリディップ溶液を使用する工程において適切である。塩基性プリディップ溶液を使用する際、工程過程において、プリディップ溶液に銅が溶解され、プリディップ溶液中の銅イオンの濃度が増加することがあり、それにより、プリディップ溶液に溶解された銅イオンが触媒溶液に流入し、触媒溶液中のパラジウムイオンとパラジウムイオンリガンドとの結合力を妨害することがある(銅イオンとパラジウムイオンとはすべて配位結合が可能であり、配位数は4で同一であり、配位結合の際に全て平面四角の形を帯びる点において類似する)。しかし、本発明に係る触媒溶液を使用する場合、パラジウムイオンとパラジウムイオンリガンドとの結合力が向上できるため、触媒溶液に銅イオンが流入したとしても、パラジウムイオンはパラジウムイオンリガンドと安定的に結合を維持することができる。
【0076】
一方で、以下で説明する本発明の一実施形態に係る触媒溶液の製造方法によると、パラジウムイオンとパラジウムイオンリガンドとの結合力を更に顕著に上昇させることができる。なお、パラジウムイオンの酸化も防止することができるようになる。
【0077】
図3は、触媒溶液を製造する方法を説明するための本発明の一実施形態に係るフローチャートである。
【0078】
図3を参照すると、まず、パラジウム化合物が溶解された溶液を用意する(S310)。
【0079】
ここで、パラジウム化合物は、塩化パラジウム、不和パラジウム、ブロム化パラジウム、ヨウ素化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウムまたは硫化パラジウムから選択されてよい。
【0080】
そして、前記溶液にピリジンまたは3−ピリジンメタノールから選択されるパラジウムイオンリガンドを添加する(S320)。添加されたパラジウムイオンリガンドはパラジウム化合物から分解されたパラジウムイオンに反応して錯化合物を形成する。
【0081】
この場合、錯化合物形成のための反応温度条件は50〜90℃であり、反応時間条件は30〜480分であってよい。このような反応条件は、従来は常温で20〜60分反応させたものと比較した際、パラジウムイオンの酸化を顕著に防止することができ、パラジウムイオンとパラジウムイオンリガンドとの結合力を向上させることができる。
【0082】
なお、添加されるパラジウムイオンリガンドが3−ピリジンメタノールまたはピリジン(C
5H
5N)である場合に、別のパラジウムイオンリガンドを使用する場合より、パラジウムイオンとの結合力に優れていることを実験を通じて確認した。
【0083】
特に、本発明では、溶液にパラジウムイオンリガンドを予め設定された時間間隔をおいて段階的に添加することで、パラジウムイオンリガンドとパラジウムイオンと間の結合力を更に向上させた。
【0084】
パラジウムイオンリガンドを段階的に添加することについてより具体的に説明する。まず、溶液にパラジウムイオンリガンドを添加(第1回添加)する途中で中断し、予め設定された時間の間に溶液を撹拌する。これまで添加されたパラジウムイオンリガンドは、添加される全てのパラジウムイオンリガンド量の約60重量%であってよい。添加される全てのパラジウムイオンリガンド量は、触媒溶液に使用されたパラジウム化合物量の約2倍に設定されてよい。
【0085】
ここで、撹拌が行われる予め設定された時間は、約60分であってよい。撹拌の間、パラジウムイオンとパラジウムイオンリガンドとが反応して錯化合物を形成することができる。そして、反応温度は50〜90℃、好適には80℃であってよい。
【0086】
上記予め設定された時間が経過した後は、溶液に残りのパラジウムイオンリガンドを添加する(第2回添加)。すなわち、第1回添加段階で添加される全てのパラジウムイオンリガンド量の約60重量%が添加された場合、この段階では残りの約40重量%が添加される。
【0087】
上記のように、残りのパラジウムイオンリガンドが第2回添加された後、一定時間の間、錯化合物形成反応のために撹拌が行われてよい。この場合、約30分の間撹拌が進められてよい。この場合、反応温度は50〜90℃、好適には80℃であってよい。
【0088】
このように、パラジウムイオンリガンドを分けて段階的に添加する場合、一度に同時に添加する場合よりパラジウムイオンとパラジウムイオンリガンドとの間の結合力の向上を確認することができた。一方、上述の実施形態では、パラジウムイオンリガンドを二度に分けて添加するものとして説明したが、必ずしもこの回数に限定されるわけではなく、3回以上に分けて段階的に添加することも可能である。
【0089】
一方、前記第1回添加の後、第2回添加の前に消泡剤(antifoaming agent)及び/または湿潤剤(Wetting agent)を溶液に添加することができる。
【0090】
例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリルレート(1,1,1,3,3,3−Hexafluoroisopropyl acrylate)が消泡剤として添加されてよい。そして、例えば、分子量400〜20,000の間のエチレングリコールのポリマーが湿潤剤として添加されてよい。
【0091】
そして、前記第2回添加の後、pH調節剤(pH Controller)とpHバッファ(pH Buffer)が溶液に更に添加されてよい。例えば、pH調節剤として水酸化ナトリウム(NaOH)を使用してよく、pHバッファとして硼酸(H
3BO
3)を使用してよい。
【0092】
触媒溶液を製造する過程で持続的に撹拌が行われてよく、この場合、腐食が生じない非金属材質のインペラ(Impeller)が撹拌のための使用されてよい。特に、低速用インペラを使用すると、高速で撹拌する場合よりパラジウムの酸化を軽減することができる。
【0093】
上述のような過程を通じて得られた溶液を、チラー(Chiller)で一定の速度で予め設定された温度(例えば、約25℃)までに冷却させる。チラーを用いて一定速度で温度を下降させる場合、自然冷却させるよりパラジウムイオンとパラジウムイオンリガンドとの間の結合力が向上することを確認することができた。
【0094】
最終的に冷却された溶液は、印刷回路基板10のスルーホール3のメッキのための触媒溶液として用いられてよい。
【0095】
上述の触媒溶液で印刷回路基板10を触媒処理した後、
図2Fのようにメッキを形成することができる。
【0096】
一例として、不導体層2に付着されたパラジウムイオンとパラジウムイオンの錯化合物5に還元剤として電子を提供し、錯化合物を分解させることで金属パラジウム5’が不導体層2の表面に形成されるようにする。
【0097】
そして、銅イオンの含まれたメッキ液に印刷回路基板10を浸漬すると、銅イオンはパラジウム金属5’を触媒として用いて還元するようになり、それにより、銅金属6がスルーホールの表面に析出される。このように、無電解銅メッキが行われてスルーホール3の表面に伝導性が与えられるようになる。スルーホール3の表面に伝導性が与えられると、電流を印加して電気メッキ層を形成することができる。
【0098】
上述の本発明の実施形態によると、従来の酸性プリディップ内高分子のマイナスイオン性界面活性剤が触媒溶液のパラジウムイオンと凝集されて異物が発生することで、この異物がスルーホール3に流入して短絡を引き起こし、ショート不良の原因となる問題を、高分子のマイナスイオン性界面活性剤を使用しない上述の塩基性プリディップに代替することで解決することができる。なお、プリディップ溶液に湿潤剤を使用することで、基板酸化を防ぐことができる。
【0099】
一方、塩基性プリディップは、酸性プリディップに比べて異物発生が少ないという長所を有する一方で、塩基性プリディップ内に銅イオンが溶解され、銅イオンが溶解された塩基性プリディップが触媒溶液に流入し、銅イオンがパラジウムイオンとパラジウムイオンリガンドとの間の結合を妨害するという短所も存在する。このような短所を解決するために、本発明では、パラジウムイオンとの結合力の高いパラジウムイオンリガンドを使用し、なお、パラジウムイオンとパラジウムイオンリガンドとの間の結合力をより向上させるために、上述のような触媒溶液製造方法を採用している。
【実施例】
【0100】
以下では、本発明の上述の効果について、多様な実験例を通じて説明を進める。
プリディップ工程での基板酸化防止の効果実験
実施形態1−1ないし1−4と、比較例1−1ないし1−4に対して実験を行った。同一銅試片に対して、それぞれプリディップ工程まで処理を施し、各段階の具体的な工程手順は、以下の表1ないし表2の通りである。実施形態1−1、実施形態1−2、比較例1−1、比較例1−2に対しては、表1の正常条件(normal condition)で、実施形態1−3、実施形態1−4、比較例1−3、比較例1−4に対しては、悪条件(unfavorable condition)で実験した。脱脂及びソフトエッジング溶液は、全ての場合において同一のものを使用した。そして、銅試片は、一般的にPCB資材で使用されるEMC会社で制作販売するHalogen Free銅箔積層原板を使用した。
【0101】
実施形態1−1と実施形態1−3とのプリディップ溶液はpH8.0±1.0の塩基性で、水酸化物として水酸化ナトリウム、アミン類としてモノエタノールアミン、マイナスイオン付与剤として硫酸水素ナトリウム、湿潤剤として400〜20,000の間の分子量を有するポリエチレングリコールを含む。
【0102】
実施形態1−2と実施形態1−4とのプリディップ溶液は、pH11.38の塩基性ということと、アミン類としてトリエチルアミンを使用していることのみを除いては、実施形態1−1と同様である。
【0103】
比較例1−1と比較例1−3とのプリディップ溶液はpH2.0〜3.0の硫酸溶液で、湿潤剤として400〜20,000の間の分子量を有するポリエチレングリコールを含む。
【0104】
実施形態1−2と実施形態1−4とのプリディップ溶液は、pH8.5の塩基性ということと、マイナスイオン付与剤を使用していないことと、湿潤剤を使用していないことを除いては、実施形態1−1と同様である。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
前記実施形態1−1ないし1−4と比較例1−1ないし1−4の試片に対して酸化膜の発生の有無を肉眼で確認した結果は、
図4の通りである。
【0108】
図4を参照すると、正常条件で処理された実施形態1−1ないし1−2と、比較例1−1ないし1−2とは、いずれも酸化膜が発生していないことを確認した。
【0109】
そして、悪条件で処理された実施形態1−3と比較例1−3とは、酸化膜が発生していないが、悪条件で処理された実施形態1−4と比較例1−4とは酸化膜が発生していた。
【0110】
上記のような実験の結果を通じ、実施形態1−1と1−3とで使用したプリディップ溶液が最も優れていることを知ることができる。すなわち、実施形態1−1と1−3とで使用したプリディップ溶液は、工程進行過程でエッチング処理の後、水洗時間が長くなることで、基板に酸化膜が発生するおそれがあるという問題を解決することに適している。
【0111】
プリディップ溶液のスルーホール浸透性実験
以下の表3は、前記実施形態1−1のプリディップ溶液、及び前記比較例1−1のプリディップ溶液のそれぞれの表面張力を測定した結果である。
【0112】
【表3】
【0113】
図5は、前記実施形態1−1のプリディップ溶液と、前記比較例1−1のプリディップ溶液とのホール湿潤(Hole wetting)能力に対する比較結果である。実験は、LVH(Laser Via Hole)上に所定量のプリディップを塗布した後、時間経過に沿って、プリディップがホール内に入り込む時間を比較することで行われた。
【0114】
図5を参照すると、実施形態1−1のプリディップ溶液を純水(pure water)及び比較例1−1のプリディップ溶液と比較した際、左及び右の接触角度(contact angle)の減少量の平均が最も大きいことが確認された。すなわち、基板のホール内に最も速く浸透することを知ることができる。
【0115】
図6は、前記実施形態1−1のプリディップ溶液と、前記比較例1−1のプリディップ溶液とに対し、プリディップ溶液内の触媒溶液の広がりを実験した結果である。本実験は、プリディップ処理の後、基板のスルーホール内部にプリディップが残存する際、触媒溶液がスルーホールの内部に浸透することがスムーズに行われるかを確認するためのものである。具体的に、プリディップ溶液100mlに触媒溶液2mlをゆっくりと投入し、投入直後を観察し、触媒を投入してから1日放置した以後を観察した。
図6を参照すると、プリディップ溶液内の触媒溶液の広がりは実施形態1−1が優れていることを知ることができ、比較例1−1の場合、底に異物層が形成されていることを知ることができた。
【0116】
印刷回路基板が小型化することにより、スルーホールのサイズが更に小さくなる一方で、上述の実施形態1−1のプリディップ溶液はこのような小さいサイズのスルーホール表面全体に均一に適用されてよく、よって、後続工程でメッキがスルーホール表面に均一になるという効果を果たすことができる。
【0117】
触媒溶液としてプリディップ溶液の流入時の異物発生観察
図7は、前記実施形態1−1のプリディップ溶液と、前記比較例1−1のプリディップ溶液とを触媒溶液として投入させた際、異物発生を観察した結果である。
図7を参照すると、同一条件で実験した際、比較例1−1のプリディップが触媒溶液として流入された場合、泡及び異物が過度に発生した。そして、発生した泡及び異物除去のために、一時間以上かかり、泡除去がほぼ不可能であった。一方、実施形態1−1のプリディップが触媒溶液に流入された場合には、泡及び異物発生がほとんど観察されず、微量発生した泡はスプレイオフ処理の際に直ちに除去できた。
【0118】
上記実験結果に鑑みると、実施形態1−1のプリディップ溶液が比較例1−1のプリディップ溶液と比較し、触媒溶液が流入した際に、異物及び泡発生が顕著に減少していることが分かる。
【0119】
触媒溶液の製造方法
実施形態2に係る触媒溶液製造方法、及び比較例2に係る触媒溶液製造方法による触媒溶液をそれぞれ製造し、製造された触媒溶液で実験を行った。
【0120】
比較例2は、中、高速用Impeller(Propeller type)(材質:金属(腐食可能性有)を備えた反応器において、硫酸パラジウム(PdSO
4)が溶解された溶液にパラジウムイオンリガンドとして2−アミノピリジンを添加して30℃で30分間反応させた。そして、pH調節剤として、水酸化ナトリウムを添加し、pHバッファとして硼酸を添加した。生産完了の後、自然冷却方式を採用して最終触媒溶液を得た。
【0121】
実施形態2は、Pd酸化防止のために、低速用Impeller(Paddle type)(材質:Teflon(腐食可能性無)を備えた反応器において、硫酸パラジウム(PdSO
4)が溶解された溶液にパラジウムイオンリガンドとして3−ピリジンメタノールを添加する総量のうち、約60重量%程度を先に添加した。そのあと、添加を停止し、80℃で60分間反応させた。そして、消泡剤とカップリング剤とを添加した後、残りの3−ピリジンメタノール、すなわち、残りの40重量%を添加した後、80℃で30分間反応させた。生産完了後、チラーを稼働させた冷却方式を採用した。
【0122】
実施形態2により製造された触媒溶液を時間及び温度の変化に応じて、ビーカー壁面吸着度合いを観察した。その結果は、
図8Aの実施形態2−1と同等である。ビーカー壁面に吸着量が少ないほど、パラジウムイオンとパラジウムイオンリガンドとの間の結合が強いと判定することができる。そして、比較例2によって製造された触媒溶液を時間及び温度変化に応じてビーカー平面吸着度合いを観察した。その結果は、
図8Aの比較例2−1の通りである。実験条件は、実施形態2−1と比較例2−1とが相互に同様であった。
図8Aから分かるように、実施形態2−1では、多様な放置条件にもビーカー壁面に吸着がなかった。しかし、比較例2−1では、高温放置条件でビーカー壁面にパラジウム吸着を肉眼で確認した。
【0123】
実施形態2によって製造された触媒溶液を均質器(homogenizer)で3000cycle/minの条件で強制酸化させ、パラジウム濃度の減少量を確認した。その結果は、
図8Bの実施形態2−2と同様である。そして、比較例2によって製造された触媒溶液を均質器で3000cycle/minの条件で強制酸化させてパラジウム濃度の減少量を確認した。その結果は、
図8Bの比較例2−2と同様である。
図8Bで分かるように、実施形態2−2では物理的な強制酸化にもパラジウム濃度の減少量が比較例2−2と比較する際、顕著に改善できていることが分かる。すなわち、パラジウムイオンとパラジウムイオンリガンドとの結合力が強化されていることが分かる。
【0124】
本実験で確認できる主要な特徴は、パラジウムリガンドを一気に入れる比較例2の場合より、2回に分けて入れる実施形態2の場合のほうがより多くの錯化合物を形成することができるということである。なお、比較例2のように、自然冷却して触媒溶液を製造する場合、周辺の生産環境の温度に影響を受けて液安定性が低下する。すなわち、夏場に生産を行う場合には、30度を超える周辺温度に触媒溶液が露出されるようになり、液安定性が低下するおそれがある。一方で、実施形態2のように、チラーを用いて所望の温度にまで冷却させると、外部温度に影響を受けずに、一定速度で溶液の温度を下降させることができるため、溶液の安定性が低下しない。
【0125】
パラジウムイオンリガンドの種類変更による触媒溶液性能
パラジウムイオンリガンドの種類変更による効果を調べるために、実施形態3−1、実施形態3−2及び比較例3に係る触媒溶液を表4の条件を従って実験を行った。
【0126】
実施形態3−1の触媒溶液は、0.1〜10重量%の硫酸パラジウム;0.2〜20重量%のパラジウムイオンリガンドとしてピリジン(C
5H
5N);0.0005〜0.5重量%の消泡剤として1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリルレート(ALPHAMETAL Co.,Ltd.社のPC4754);0.0005〜0.5重量%の湿潤剤としてMw.400〜20000であるポリエチレングリコール;0.001〜1重量%のカップリング剤(ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリネオデカノニルジルコネートまたはネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリネオデカノニルチタネート);0.1〜10重量%のpH調節剤として水酸化ナトリウム(NaOH);0.1〜10重量%のpHバッファとして硼酸(H
3BO
3);及び残量の純水で構成した。
【0127】
実施形態3−2の触媒溶液は、実施形態3−1と比較し、パラジウムイオンリガンドとしてピリジンの代わりに3−ピリジンメタノール(3−pyridinemethanol)を使用しているという点を除いては同様である。
【0128】
比較例3の触媒溶液は、実施形態3−1と比較し、パラジウムイオンリガンドとしてピリジンの代わりに2−アミノピリジン(2−Aminopyridine)を使用しているという点を除いては同様である。
【0129】
【表4】
【0130】
図9Aないし
図9Cに実施形態3−1、実施形態3−2及び比較例3による実験結果をまとめた。
【0131】
図9Aを参照すると、実施形態3−1及び実施形態3−2は、プリディップ内の銅濃度上昇にもメッキ色やメッキの厚さに大差がないことを確認している。しかし、比較例3は、プリディップ内の銅濃度の上昇によって次第にメッキの厚さが減少していることを確認した。
【0132】
そして、
図9Bを参照すると、実施形態3−1及び実施形態3−2は、プリディップ内の銅濃度上昇にもカバーレイ(coverlay)非メッキ現象の発生がなく、密着力テストにも安定的な結果を確認した。しかし、比較例3は、プリディップ内の銅濃度上昇によってカバーレイ非メッキ現象が発生しており、密着力テストでNG(Not Good)を確認した。
【0133】
そして、
図9Cは、実施形態3−1及び実施形態3−2と比較例3とに対し、プリディップが触媒溶液に強制流入された場合、銅濃度による触媒溶液の色及び液安定性を確認した結果である。実施形態3−1及び実施形態3−2は、プリディップ流入にも触媒色及び安定的に大差がないが、比較例3はプリディップ流入により銅濃度の高いプリディップ溶液が流入するほど、触媒溶液色が緑色に大きく変化している。それは、触媒溶液内に流入した銅イオン(Cu
2+)がパラジウムイオンリガンドと結合しているパラジウムイオン(Pd
2+)よりリガンドとの結合力に優れ、パラジウムイオンとパラジウムイオンリガンドとの結合を妨害して発生した変化と判断した。実際、銅イオンとパラジウムイオンとは、全て配位結合が可能であり、配位数は4と同様であり、配位結合の際に全て平面四角状を帯びる点において類似している。
【0134】
上記のような実施形態3−1及び実施形態3−2と比較例3との結果を通じ、パラジウムイオンリガンドとして3−ピリジンメタノールまたはピリジンを使用すれば、プリディップ内の銅濃度が次第に増加する工程の過程の中に、プリディップが触媒溶液に流入されても、触媒の性能が低下していないことを確認し、3−ピリジンメタノールまたはピリジンのようなパラジウムイオンリガンドが銅イオンよりパラジウムイオンとの結合力がより強いことを確認することができた。
【0135】
カップリング剤の種類変更による触媒溶液性能
カップリング剤の種類変更による効果を知るために、実施形態4−1、実施形態4−2及び比較例4による触媒溶液を表5の条件を基に実験を行った。実験においてエポキシ試片はEMC社で制作販売するHalogen Free資材を使用した。
【0136】
実施形態4−1の触媒溶液は、0.1〜10重量%の硫酸パラジウム、0.2〜20重量%のピリジン(C
5H
5N)、0.0005〜0.5重量%の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリルレート、0.0005〜0.5重量%のMw.400〜20000であるポリエチレングリコール、0.001〜1重量%のチタン系のカップリング剤(ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリネオデカノニルチタネート)、0.1〜10重量%の水酸化ナトリウム(NaOH)及び0.1〜10重量%の硼酸(H
3BO
3)及び残量の純水で構成した。
【0137】
実施形態4−2の触媒溶液は、実施形態4−1と比較してカップリング剤としてチタン系のカップリング剤の代わりにジルコネート系のカップリング剤(ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリネオデカノニルジルコネート)を使用しているという点を除いては同様である。
【0138】
比較例4の触媒溶液は、実施形態4−1と比較し、カップリング剤としてチタン系のカップリング剤の代わりにシラン(Silane)系カップリング剤(gamma−Aminopropyltrimethoxysilane)を使用しているという点を除いては同様である。
【0139】
【表5】
【0140】
実施形態4−1及び実施形態4−2と比較例4との試片に対してパラジウム吸着量を確認した。パラジウム吸着量の確認は、基板の不導体部分に付着され、還元されたパラジウム金属の量を確認するものであり、それを通じ、後工程である無電解化学銅メッキ工程の性能を類推することができる。通常、パラジウム吸着量が高いほど、メッキの厚さおよびメッキの信頼性に優れていると判断する。
【0141】
パラジウム吸着量測定方法は、以下のように進められる。
1.試片を上記表4のように、還元工程まで処理した後乾燥する。
2.300mLビーカーにメスシリンダやTipを用いて5mL、30mL、50mLの目盛り線を引く。
3.塩酸と硝酸とを3:1の割合で30mLになるように用意する(塩酸:22.5mL、硝酸:7.5mL)。
4.試料をビーカーに入れて前処理液に浸かるようにし、加熱器の温度を約80〜90℃に設定して加熱する(i.e.Acid Digestion)。加熱の際、必ずフード設備内で進め、前処理液が沸騰しないように観察しつつ、必要に応じて加熱温度を適切に調節する。
5.前処理液が5mLになると加熱を中断する。加熱が終了するまで当該試片は必ず前処理液に浸かる状態であるべきである。
6.当該ビーカーを加熱器から分離し、前処理液が常温になるように放置した後、超純水(分析用)を用いて最終的に体積が丁度50mLになるようにする。
7.当該前処理液をよく撹拌した後、ICP機器分析を進める。
【0142】
パラジウム吸着量は、次の数式を通じて算出してよい。
パラジウム吸着量(μg/cm
2)=分析結果(μg/mL)×前処理最終体積(mL)÷処理試片面積(cm
2)
【0143】
表6は、実施形態4−1及び実施形態4−2と比較例4との試片に対するパラジウム吸着量の確認結果である。
【0144】
【表6】
【0145】
上記の表6を参照すると、実施形態4−1と比較例4とでは、類似するパラジウム吸着量を確認し、実施形態4−2では実施形態4−1と比較例4と比較する際、多少低いパラジウム吸着量を確認した。
【0146】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は以上の実施形態に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的趣旨の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと解釈される。
導体層と不導体層とが積層された印刷回路基板のスルーホール(Through−hole)を無電解銅メッキ(electroless copper plating)する方法において、
硫酸のナトリウム塩から選択されるマイナスイオン付与剤を含む塩基性プリディップ溶液を用いて前記スルーホールをマイナスイオン化させるステップと、
ピリジン(Pyridine)または3−ピリジンメタノール(3−pyridinemethanol)から選択されるパラジウムイオンリガンド及びパラジウムイオンからなる錯化合物を含む触媒溶液を用いて前記スルーホールを触媒処理するステップと、
前記スルーホールの表面を無電解銅メッキするステップと、を含む無電解銅メッキをする方法。
非金属材質のインペラを用いて前記パラジウムイオンリガンドの添加された溶液を撹拌するステップを更に含むことを特徴とする請求項3に記載の無電解銅メッキのための触媒溶液を製造する方法。