(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-210766(P2017-210766A)
(43)【公開日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】木製防護柵及びその連結金具
(51)【国際特許分類】
E01F 15/04 20060101AFI20171102BHJP
【FI】
E01F15/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-103629(P2016-103629)
(22)【出願日】2016年5月24日
(71)【出願人】
【識別番号】516153731
【氏名又は名称】株式会社森田
(71)【出願人】
【識別番号】594115382
【氏名又は名称】東洋水研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 幹人
(72)【発明者】
【氏名】森田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】北村 雅司
【テーマコード(参考)】
2D101
【Fターム(参考)】
2D101CA06
2D101EA02
2D101EA11
2D101FA23
2D101FA27
2D101FB12
2D101FB14
(57)【要約】
【課題】木製防護柵及び木製支柱に木製ビームを連結するための木製防護柵の連結金具を提供する。
【解決手段】略矩形状の薄板からなる基板10と、基板10の幅方向両端部の上面に立設した一対の起立板11と、起立板11の両端部を超える範囲の基板10の裏面に基板10の両端部を除いて固着した矩形状の補強板20と、起立板11の一端部近傍における補強板20の幅方向両端部に反起立板方向に垂設した一対の規制板21と、補強板20の両端部から一定距離離間した基板10の裏面の幅方向に固着した一対の桟板30と、基板10の両端部に穿設した長孔12と、補強板20の両端部近傍の基板10に穿設した支持孔13と、起立板11の近傍における基板10と補強板20を貫通して穿設した固定孔14からなり、補強板20と桟板30との間の基板10を屈曲域Dとして形成した木製防護柵の連結金具を基本として提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形状の薄板からなる基板と、基板の幅方向両端部の上面に立設した一対の起立板と、起立板の両端部を超える範囲の基板の裏面に基板の両端部を除いて積層して固着した矩形状の補強板と、起立板の一端部近傍における補強板の幅方向両端部に反起立板方向に垂設した一対の規制板と、補強板の両端部から一定距離離間した基板の裏面の幅方向に積層して固着した一対の桟板と、基板の両端部に穿設した長孔と、補強板の両端部近傍の基板に穿設した支持孔と、起立板の近傍における基板と補強板を貫通して穿設した固定孔からなり、補強板と桟板との間の基板を屈曲域として形成したことを特徴とする木製防護柵の連結金具。
【請求項2】
基板を厚さ2mmの薄板から形成するとともに、補強板及び桟板を厚さ1mmの薄板から形成した請求項1記載の木製防護柵の連結金具。
【請求項3】
基板の長手方向両端部の角部を隅切りしてなる請求項1又は2記載の木製防護柵の連結金具。
【請求項4】
屈曲域において、基板を上下方向のいずれかに所定角度で屈曲させる請求項1,2又は3記載の木製防護柵の連結金具。
【請求項5】
地表に立設された木製の支柱内を水平方向に貫通して形成された貫通孔内に、請求項1〜4のいずれかに記載の木製防護柵の連結金具を挿通して、起立板を貫通孔内に位置させるとともに規制板を支柱に密接させて固定孔を介して連結金具を支柱に固定するとともに、支柱から突出させた連結金具の端部に横桟としての木製ビームを載置させて長孔及び支持孔を介して木製ビームを固定することにより構築したことを特徴とする木製防護柵。
【請求項6】
屈曲域において、基板を上下方向のいずれかに所定角度で屈曲させることにより、木製ビームを所定の角度に傾斜させて固定した請求項5記載の木製防護柵。
【請求項7】
木製ビームの傾斜角度を木製防護柵の構築地域の勾配に沿って所定角度に傾斜させた請求項6記載の木製防護柵。
【請求項8】
固定孔に皿木ネジを挿入して連結金具を支柱に固定した請求項5,6又は7記載の木製防護柵。
【請求項9】
支持孔にコーチスクリューを挿入して木製ビームを連結金具に固定した請求項5,6,7又は8記載の木製防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の木製防護柵、特には公園,遊歩道,森林ウォーキングロード,歩道等の主として自然環境を重視した地域において、境界の明示,安全対策や経路の案内用として設置する木製防護柵及び木製防護柵の木製支柱に木製ビームを連結するための連結金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から横断防止柵,境界フェンス,転落防止柵等の各種防護柵を構築する際には、所定間隔に配置した支柱の上端から筒状の水平ビームを架設し、この水平ビームの内径と略同径の外径を有する接続部材の一端部を水平ビームの端部に挿入し、この接続部材の他端部を次の水平ビームの端部に挿入して支柱上端に設けた取付部上に載置し、接続部材の両端に設けたボルト孔にボルトを挿入して固定することにより水平ビームを支柱上端に取付ける方法が一般に用いられている。
【0003】
上記構造の従来の防護柵は設置場所に関わらず、耐久性・安全性の観点から金属製の材質の防護柵が多用されてきた。このことは、公園や遊歩道等の自然環境を重視した地域に構築される防護柵においても同様であった。しかしながら、近時は自然志向の高まりと相俟って、自然環境を重視した地域における遊歩道や森林ウォーキングロード(主に緩傾斜からなり、一般の歩道より広い道幅をもち、森林療法/セラピーに適した森林内歩道)の設置や整備が進み、又それ以外の地域においても自然と調和する工法として、天然の木材(特には間伐材)を使用した木製防護柵の需要が高まっている。このような木製防護柵としては1本の支柱の両側に2個の連結金具を用いて横桟としての木製ビームを連結した構造が一般に用いられている。
【0004】
また、本発明者は先に、木製支柱に対する木製ビームの連結に適した防護柵の連結金具として、平板状の基体の略中央両端部に形成された突条と、この突条に近接する基体裏面側にあって先鋭部が中央部を向くように突設されたクサビと、基体から左右に伸びる延長部とから構成された防護柵の連結金具と、この連結金具を用いて構築した防護柵を提供している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−183262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1にかかる防護柵及びその連結金具によれば、木製ビームの構築作業が簡易であるとともに、連結金具の点数が最小限となるため施工コストを低廉化することができる。また、連結金具が外部から看取されないため、外観上の見映えが良好である。しかしながら、特許文献1に示すような防護柵は構造的な防腐効果を見出すことができず、又木製ビームは、鉛直方向に立設された木製の支柱に対して直交する方向、即ち、水平方向にのみ連結されるものではない。木製防護柵を構築する地域の起伏や勾配に対応して、支柱に対して上下方向に所定角度傾斜させて連結する必要がある。そのため、木製ビームを傾斜させて支柱に連結するためには、連結金具の木製ビームを支持する箇所を屈曲させる必要がある。
【0007】
木製ビームを支柱に連結するための連結金具には、本質的機能として荷重に対応するための強度が要求されるが、強度を高めると木製ビームを支持する箇所を設置場所の縦断勾配の変化に沿って所定角度に屈曲し、該屈曲した箇所に木製ビームを支持することによって、木製ビームを傾斜させて施工することが困難となり、一方、屈曲を容易とするために強度を調節すると連結金具として本来必要とする強度を保持することができなくなるおそれがある。例えば、特許文献1にかかる防護柵の連結金具の基体は、同一厚さの板材から構成されているため、必要な強度を保持すると、木製ビームの勾配に応じて、所定の角度に正確に折り曲げることが困難である。
【0008】
そこで、本発明は、上記した木製防護柵及びその連結金具に求められている強度の保持と木製ビームを傾斜させて支持することの双方の課題を同時に満足するとともに、構築作業が簡易であり、連結金具が外部から看取されないことにより天然木材の持つ雰囲気を高めることができて外観性が良好であり、連結金具が風雨に曝されることがなく腐食を防止することができる木製防護柵及びその連結金具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はその目的を達成するために、略矩形状の薄板からなる基板と、基板の幅方向両端部の上面に立設した一対の起立板と、起立板の両端部を超える範囲の基板の裏面に基板の両端部を除いて積層して固着した矩形状の補強板と、起立板の一端部近傍における補強板の幅方向両端部に反起立板方向に垂設した一対の規制板と、補強板の両端部から一定距離離間した基板の裏面の幅方向に積層して固着した一対の桟板と、基板の両端部に穿設した長孔と、補強板の両端部近傍の基板に穿設した支持孔と、起立板の近傍における基板と補強板を貫通して穿設した固定孔からなり、補強板と桟板との間の基板を屈曲域として形成した木製防護柵の連結金具を基本として提供する。
【0010】
そして、基板を厚さ2mmの薄板から形成するとともに、補強板及び桟板を厚さ1mmの薄板から形成した構成、基板の長手方向両端部の角部を隅切りしてなる構成、及び屈曲域において、基板を上下方向のいずれかに所定角度で屈曲させる構成を提供する。
【0011】
そして、地表に立設された木製の支柱内を水平方向に貫通して形成された貫通孔内に、前記した構成の木製防護柵の連結金具を挿通して、起立板を貫通孔内に位置させるとともに規制板を支柱に密接させて固定孔を介して連結金具を支柱に固定するとともに、支柱から突出させた連結金具の端部に横桟としての木製ビームを載置させて長孔及び支持孔を介して木製ビームを固定することにより構築した木製防護柵を提供する。
【0012】
更に、屈曲域において、基板を上下方向のいずれかに所定角度で屈曲させることにより、木製ビームを所定の角度に傾斜させて固定した構成、木製ビームの傾斜角度を木製防護柵の構築地域の勾配に沿って所定角度に傾斜させた構成、 固定孔に皿木ネジを挿入して連結金具を支柱に固定した構成、及び支持孔にコーチスクリューを挿入して木製ビームを連結金具に固定した構成を提供する。
【発明の効果】
【0013】
以上記載した本発明によれば、起立板の両端部を超える範囲の基板の裏面に基板の両端部を除いて矩形状の補強板を固着しているため、基板を薄板から構成しても、基板と補強板が相俟って連結金具として必要十分な強度を得ることができる。そして、基板と補強板及び基板と桟板からなる構成の間に、基板のみから構成される屈曲域を設けているため、この屈曲域において基板を上下方向の任意の角度に容易に屈曲することができる。そのため、木製防護柵の構築地域の勾配に沿って所定角度に傾斜させて木製ビームを支柱に連結することができる。また、補強板の端部から一定距離離間した基板の裏面の幅方向に桟板を固着してあるため、連結金具の端部における歪みを効果的に防止することができる。
【0014】
そのため、木製ビームを支柱に連結するための連結金具に要求される強度と、木製防護柵の構築地域の縦断勾配に沿って所定角度に傾斜させて木製ビームを支柱に連結することができる作業性の双方を高いレベルで実現することができる。更に、支柱の貫通孔の方向を変化させることにより、連結金具の貫通孔への挿通方向を任意に調節することができるため、木製防護柵の水平方向におけるカーブを構築地域に応じて任意に設定して木製防護柵を構築することができる。
【0015】
更に、1個の連結金具の両端部に左右の木製ビームを連結することができるため、従来の連結金具に比して金具自体の個数は半分となり、木製防護柵の構築作業が簡易になるとともに施工コストを低廉化することができ、かつ、確実・強固に固着できる。また、木製ビームの接続に使用した連結金具が外部から看取されないので、天然木材を使用した木製防護柵において雰囲気を壊す金具を使用していることが判らず、構築した木製防護柵の外観性が良好であるとともにデザイン性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図12】桟板の(a)全体斜視図、(b)正面図、(c)平面図。
【
図13】連結金具を使用した木製防護柵の要部断面説明図。
【
図14】連結金具を屈曲させて使用した木製防護柵の要部断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面に基づいて本発明にかかる木製防護柵及びその連結金具の実施形態を説明する。
図1は本発明にかかる木製防護柵2の連結金具1の全体斜視図、
図2はその正面図、
図3はその平面図、
図4は
図3のA−A断面図、
図5は
図3のB−B断面図、
図6は基板10の全体斜視図、
図7はその正面図、
図8はその平面図である。
【0018】
図において、基板10は平面視が矩形状の金属製(例えばSUS304等のステンレス鋼材)の薄板からなり、長手方向の両端部角部を所定角度で隅切りして、隅切り部10a,10b,10c,10dを切削形成することにより、取扱時の利便性を高めている(
図6参照)。図示例では、基板10の全長L×全幅W×厚さTを350mm×52mm×2mmに形成している(
図7,
図8参照)。
【0019】
基板10の中央部における幅方向両端部の上面には一対の起立板11を垂直方向に立設している。図示例では、この起立板11の全幅L1×高H1×厚さT1を104mm×14mm×2mmに形成している。
【0020】
図9は補強板20の全体斜視図、
図10はその正面図、
図11はその平面図である。補強板20は平面視が矩形状の金属製の薄板からなり、図示例では、全長L2×全幅W2×厚さT2を180mm×52mm×1mmに形成している(
図10,
図11参照)。この補強板20を、起立板11の両端部を超える範囲の基板10の裏面にスポット溶接,ビス,接着剤等の適宜の手段によって固着している。よって、基板10は、その両端部を除いた裏面の中央部分全面に補強板20が一体として積層して固着されている。図示例では、基板10に補強板20が固着された範囲の厚さは3mm(T+T2)となっており、使用時における連結金具1にかかる荷重を支える強度部材として機能する。一方、SUS304等のステンレス鋼材を3mmの厚さとすると、修正が難しく、木製防護柵2の施工現場において屈曲加工しようとすると屈曲角度,屈曲箇所にばらつきが生じてしまう。
【0021】
この補強板20の長手方向の一端部近傍における幅方向両端部に一対の矩形状の規制板21が垂直方向に垂設されている。図示例では、この規制板21の全幅L3×高H3×厚さT3を20mm×16mm×1mmに形成している(
図10,
図11参照)。この規制板21は、基板10に補強板20を固着した状態において、基板10の起立板11の一端部近傍において起立板11の反対方向に垂設される。
【0022】
図12(a)は桟板30の全体斜視図、(b)はその正面図、(c)はその平面図である。桟板30は平面視が矩形状の金属製の薄板からなり、図示例では、全長L4×全幅W4×厚さT4を52mm×10mm×1mmに形成している。この桟板30を、基板10に固着した補強板20の両端部から一定距離離間させた基板10の裏面の幅方向にスポット溶接,ビス,接着剤等の適宜の手段によって積層して固着する。図示例では、基板10に桟板30が固着された範囲の厚さは3mm(T+T4)となっており、使用時における連結金具1にかかる荷重を支持するとともに、連結金具1の端部における歪みを防止する強度部材として機能する。
【0023】
上記構成を採用することにより、連結金具1において、基板10のみからなる補強板20と桟板30との間を屈曲域Dとして形成した。このように、基板10を薄板から構成するとともに、基板10に補強板20及び桟板30を固着することによって、強度部材を構成し、連結金具1にかかる荷重を支持するための強度を実現した。同時に補強板20と桟板30との間に基板10の薄板のみからなる屈曲域をDを形成することにより、連結金具1を所望の角度に屈曲形成可能とした。図示例では基板10として2mmの厚さの薄板を使用しており、SUS304等のステンレス鋼材であっても木製防護柵2の施工現場において屈曲加工する際に所定の屈曲角度,屈曲箇所で正確に加工することが容易である。この屈曲域Dは、基板10と補強板20が一体に固着した強度部材からなる強度域と、基板10と桟板30が一体に固着した強度部材からなる強度域との間に挟まれているため、その強度の差分(厚さT+T2又はT+T4と厚さTとの差分)によって、施工時における屈曲加工が容易である。このように、基板10に強度に強弱を設けたことが本発明の特徴の1つである。
【0024】
そして、連結金具1には、木製防護柵2を構成する木製支柱3に連結金具1を固定するとともに、連結金具1に木製ビーム4を固定するための適宜の取付孔が形成されている。図示例では、基板10における桟板30より開放端側の両端部には、一対の長孔12を穿設し、補強板20の長手方向の両端部近傍、即ち、補強板20と桟板30の間の屈曲域Dにおける基板10に支持孔13を穿設するとともに、起立板11の長手方向の一端部近傍における基板10と補強板20を貫通して固定孔14を穿設している。
【0025】
次に上記構成の連結金具1を使用して、木製ビーム4を木製支柱3に固定して構築する木製防護柵2の構成を説明する。
図13は連結金具1を使用した木製防護柵の要部断面説明図である。先ず、地表に立設した丸型の木製支柱3内を水平方向に貫通して形成した貫通孔5内に、起立板11を上方として連結金具1を挿通するとともに、基板10の裏面に固着した補強板20に垂設した規制板21を木製支柱3の側面に密接させる。その後、固定孔14から木製支柱3の貫通孔5内に向けて、皿木ネジ(図示略)等の固定具を挿入して連結金具1を支柱に固定する。これにより、貫通孔5内に連結金具1が固定されるとともに、貫通孔5内から連結金具1の両端が突出した状態となる。
【0026】
次に、横桟としての木製ビーム4を水平方向に固定する場合は、下端面を水平に切削するとともに、木製ビーム4の端部を、木製支柱3の貫通孔5から突出している連結金具1の端部に載置し、長孔12からボルト15を挿通して固定し、更に支持孔13からコーチスクリュー(図示略)等の支持具を挿入して木製支柱3に固定する。この作業を横桟となる木製ビーム4の本数だけ行うことによって、
図13に示す木製防護柵2が構築される。更に、木製支柱3の貫通孔5の水平方向における切削方向を変化させることにより、連結金具1の貫通孔5への挿通方向を任意に調節することができるため、木製防護柵2の水平方向におけるカーブを構築地域に応じて任意に設定することができる。なお、図示例では木製支柱3及び木製ビーム4として、間伐材からなる直径120mmの無垢の棒材を使用した。
【0027】
上記した
図13に示す木製防護柵2は、木製ビーム4を木製支柱3に対して直交する方向に固定したものであるが、木製防護柵2を構築する場所によっては、その起伏や勾配に対応して、木製ビーム4を木製支柱3に対して上下方向に所定角度傾斜させて連結する必要がある。そのため、木製ビーム4を傾斜させて木製支柱3に連結するためには、木製ビームを載置させて支持する連結金具1の両端部を容易に屈曲させるために、連結金具1において、補強板20と桟板30との間に基板10のみからなる屈曲域Dを形成してある。
【0028】
よって、
図14に示すように、貫通孔5に連結金具1を挿通して固定した後に、連結金具1の両端部を屈曲域Dを起点として、木製防護柵2を構築する場所の起伏や勾配に対応して、上下方向に所定の角度で屈曲させる。
図14は連結金具1の左側の屈曲域Dを上方(時計回り方向)に、右側の屈曲域Dを下方(時計回り方向)に屈曲させた例である。この屈曲の方向や角度は設置場所に応じて任意に設定するものである。このようにして屈曲させた連結金具1の両端部への木製ビーム4の固定手段は前記した
図13に示すケースと同様である。この屈曲域Dは、基板10と補強板20が一体に固着した強度部材からなる強度域と、基板10と桟板30が一体に固着した強度部材からなる強度域との間に挟まれているため、その強度の差分(厚さT+T2又はT+T4と厚さTとの差分)によって、施工時における屈曲加工が容易である。
【0029】
従来の木製防護柵は自然環境に調和し、外観上の見映えもよいが、金属製防護柵に比較して腐食に弱く、耐久性に難があり、又部品の交換が困難な課題を残している。この腐食の問題は、木製ビームに比べて、木製支柱に際だって多く、中でも木製支柱が地面と接する地際部分において顕著である。これは地際部分が乾燥と湿潤を繰り返す部分であり、栄養分の補給も容易であるため、腐食による劣化の進行が早いためである。併せて物や人の衝突、落石等によって木製支柱や木製ビームが損傷してしまうこともある。しかしながら、従来の木製支柱は地面に直接埋設されている構造が多く、地際部分からの腐食を避けられず、又交換が困難であった。
【0030】
そこで、本発明では木製防護柵2の耐久性や強度を向上させるために、木製支柱3の腐食を防止し、その交換を容易とする構造を新たに採用した。以下、その構成を説明する。
図17は、本発明で採用した支柱固定金具40の正面図、
図18はその側面図、
図19はその平面図、
図20は木製支柱3の立設状態を示す要部正面図、
図21はその要部平面図である。支柱固定金具40は、所定面積を有する矩形状の板材からなる座板41と、座板41の中央部に垂直方向に立設された所定面積を有する矩形状の板材からなる挿通板43から構成されている。座板41の隅部には、座板41を固定するための固定孔42が穿設され、挿通板43の中央部には1又は複数のボルト孔44が穿設されている。図示例では、座板41の全長L5×全幅W5×厚さT5を220mm×220mm×3mmに、挿通板43の全幅W6×全高H6×厚さT6を100mm×300mm×3mmに形成している。
【0031】
図20,
図21において、45はコンクリート製の基礎であって、この基礎45上に支柱固定金具40を介して木製支柱3を立設する。先ず、木製防護柵2を施工する地域の起伏や勾配に対応して木製支柱3を立設する所定箇所に、水平な上面を有する基礎45を構築する。そして、この基礎45の上面に、支柱固定金具40の座板41を載置し、固定孔42を介してボルト46で基礎45に固定する。次に、木製支柱3の下端面に挿通板43を収納可能な挿通孔47を切削形成し、この挿通孔47を支柱固定金具40の挿通板43に被冠させ、ボルト48で固定して、木製支柱3を立設する。
【0032】
かかる木製支柱3は、腐食の原因となる地際部分に基礎45及び支柱固定金具40の座板41が存在するため、地面との縁が切られており、腐食を低減させて木製支柱3の耐久性が向上し、長寿命化を図ることができる。また、木製支柱3は支柱固定金具40によって、基礎45に固定されているため、強度が補強されており、損傷が少ない。更に、腐食して交換を必要とする場合においても、ボルトを外して支柱固定金具40の挿通板43から木製支柱3を引き抜くだけで容易に交換することができる。なお、木製ビーム4も上記した構成の連結金具1を使用して木製支柱3に固定しているため、木製ビーム4そのものも容易に交換することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上記載した本発明によれば、起立板の両端部を超える範囲の基板の裏面に基板の両端部を除いて矩形状の補強板を固着しているため、基板を薄板から構成しても、基板と補強板が相俟って連結金具として必要十分な強度を得ることができる。そして、基板と補強板及び基板と桟板からなる構成の間に、基板のみから構成される屈曲域を設けているため、この屈曲域において基板を上下方向の任意の角度に容易に屈曲することができる。そのため、木製防護柵の構築地域の勾配に沿って所定角度に傾斜させて木製ビームを支柱に連結することができる。また、補強板の端部から一定距離離間した基板の裏面の幅方向に桟板を固着してあるため、連結金具の端部における歪みを効果的に防止することができる。
【0034】
そのため、木製ビームを支柱に連結するための連結金具に要求される強度と、木製防護柵の構築地域の勾配に沿って所定角度に傾斜させて木製ビームを支柱に連結することができる作業性の双方を高いレベルで実現することができる。更に、支柱の貫通孔の方向を変化させることにより、連結金具の貫通孔への挿通方向を任意に調節することができるため、木製防護柵の水平方向におけるカーブを構築地域に応じて任意に設定して木製防護柵を構築することができる。
【0035】
更に、1個の連結金具の両端部に左右の木製ビームを連結することができるため、従来の連結金具に比して金具自体の個数は半分となり、木製防護柵の構築作業が簡易になるとともに施工コストを低廉化することができ、かつ、確実・強固に固着できる。また、木製ビームの接続に使用した連結金具が外部から看取されないので、天然木材を使用した木製防護柵において雰囲気を壊す金具を使用していることが判らず、構築した木製防護柵の外観性が良好であるとともにデザイン性に優れている。
【符号の説明】
【0036】
1…連結金具
2…木製防護柵
3…木製支柱
4…木製ビーム
5…貫通孔
10…基板
11…起立板
12…長孔
13…支持孔
14,42…固定孔
20…補強板
21…規制板
30…桟板
40…支柱固定金具
41…座板
43…挿通板
44…ボルト孔
45…(コンクリート製の)基礎
46,48…ボルト
47…挿通孔