【解決手段】ロータリダンパ1は、仕切り部3と、第一、第二調整ネジ8a、8bと、を有する。仕切り部3は、自身で仕切られた円筒室200の領域間を繋ぐ第一、第二流路と、第一流路およびケース2の第一調整ボルト用ネジ孔208aに繋がる第一挿入穴と、第二流路およびケース2の第二調整ボルト用ネジ孔208bに繋がる第二挿入孔と、を有する。第一調整ネジ8aは、第一調整ボルト用ネジ孔208aと螺合して第一挿入孔に挿入され、第一流路への突出長を調整できる。第二調整ネジ8bは、第二調整ボルト用ネジ孔208bと螺合して第二挿入孔に挿入され、第二流路への突出長を調整できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態を説明する。
【0015】
図1(A)および
図1(B)は、本実施の形態に係るロータリダンパ1の概略構成を示す外観図および部分断面図であり、
図2は、本実施の形態に係るロータリダンパ1の部品展開図である。
【0016】
図示するように、本実施の形態に係るロータリダンパ1は、ケース2と、一対の仕切り部3と、一対の第一逆止弁4aと、一対の第二逆止弁4bと、ロータ5と、ケース2内に充填されたオイル、シリコン等の粘性流体6と、蓋7と、一対の第一調整ボルト8aと、一対の第二調整ボルト8bと、を備えている。
【0017】
ケース2は、それぞれ第一逆止弁4aおよび第二逆止弁4bが取り付けられた一対の仕切り部3とロータ5とを粘性流体6とともに収容する。
【0018】
図3(A)は、ケース2の正面図であり、
図3(B)は、
図3(A)に示すケース2のA−A断面図であり、
図3(C)は、ケース2の背面図である。
【0019】
図示するように、ケース2内には、一端が開口した円筒室(底付き円筒状の空間)200が形成されており、この円筒室200の内周面203には、仕切り部3毎に一対の位置決め用凸部204が、円筒室200の中心線220に沿って形成されている。各仕切り部3は、自仕切り部3に対応する一対の位置決め用凸部204により位置決めされた状態で、ケース2の円筒室200内に収容される。
【0020】
また、円筒室200には、内周面203および外周面205を貫く一対の第一調整ボルト用ネジ孔208aが、円筒室200内に収容された一対の仕切り部3の後述の第一流路303a(
図4参照)と略同じ高さの位置に形成されている。同様に、円筒室200には、内周面203および外周面205を貫く一対の第二調整ボルト用ネジ孔208bが、円筒室200内に収容された一対の仕切り部3の後述の第二流路303b(
図4参照)と略同じ高さの位置に形成されている。
【0021】
また、円筒室200の底部201には、ロータ5用の開口部202が形成されている。ロータ5は、後述するロータ本体500の下端部503(
図7参照)がこの開口部502に挿入されることにより、ロータ5の回転軸520が円筒室200の中心線220と一致して、ケース2に対して相対的に回転可能となるように、円筒室200内に収容される(
図1および
図2参照)。円筒室200の内周面203の開口側206には、蓋7の後述する雌ネジ部702(
図8参照)と螺合する雌ネジ部207が形成されている。
【0022】
仕切り部3は、外周面300がケース2の円筒室200の内周面203と接触し、内周面301がケース2の円筒室200に収容されたロータ5の後述するロータ本体500の外周面504(
図7参照)と近接する扇形の柱状部材である。一対の仕切り部3は、ケース2の円筒室200の中心線220に沿って、この中心線220に対して軸対称となるように、内周面301を円筒室200の径方向内方に向けて配置され、これにより、円筒室200内を2つの領域216a、216b(
図9(A)参照)に仕切る。
【0023】
図4(A)は、仕切り部3の正面図であり、
図4(B)は、
図4(A)に示す仕切り部3のB−B断面図であり、
図4(C)は、仕切り部2の背面図であり、
図4(D)は、
図4(A)に示す仕切り部3のC−C断面図(仕切りブロック30bの上面図)であり、
図4(E)は、
図4(A)に示す仕切り部3のD−D断面図(仕切りブロック30aの上面図)である。
【0024】
図示するように、仕切り部3は、3つの仕切りブロック30a〜30cがケース2の円筒室200の中心線220に沿って積み重ねられて構成される。仕切り部3の外周面300には、自仕切り部3に対応するケース2の一対の位置決め用凸部204を挿入するための一対の位置決め用凹部302が形成されている。
【0025】
仕切り部3には、円周方向の両端面305、306を貫いて、この仕切り部3によって仕切られたケース2の円筒室200内の領域216a、216b(
図9(A)参照)間を連結する第一流路303aおよび第二流路303bが形成されている。第一流路303aの第一回転方向R1(
図9参照)の下流側(仕切り部3の端面306側)には、第一逆止弁4aの脱落を防止するためのストッパ307aが形成されている。同様に、第二流路303bの第二回転方向R2(
図10参照)の下流側(仕切り部3の端面305側)には、第二逆止弁4bの脱落を防止するためのストッパ307bが形成されている。
【0026】
また、仕切り部3には、ケース2の第一調整ボルト用ネジ孔208aに螺合した第一調整ボルト8aのネジ部80(
図2参照)を第一流路303a内に導く第一挿入穴304aが、仕切り部3の外周面300から第一流路303aに向けて形成されている。ここで、第一流路303aを流れる粘性流体6が第一挿入穴304aを通って外部に漏れないようするために、第一調整ボルト8aのネジ部80と第一挿入穴304aとの隙間を塞ぐOリング等のシール材(不図示)を、第一挿入穴304aに装着してもよい。
【0027】
同様に、仕切り部3には、ケース2の第二調整ボルト用ネジ孔208bに螺合した第二調整ボルト8bのネジ部80(
図2参照)を第二流路303b内に導く第二挿入穴304bが、仕切り部3の外周面300から第二流路303bに向けて形成されている。ここで、第二流路303bを流れる粘性流体6が第二挿入穴304bを通って外部に漏れないようするために、第二調整ボルト8bのネジ部80と第二挿入穴304bとの隙間を塞ぐOリング等のシール材(不図示)を、第二挿入穴304bに装着してもよい。
【0028】
第一流路303aおよび第一挿入穴304aは、仕切りブロック30bの上面に形成された溝と、仕切りブロック30cの下面に形成された溝とを対向させて、両仕切りブロック30b、30cを積み重ねることにより形成される。同様に、第二流路303bおよび第二挿入穴304bは、仕切りブロック30aの上面に形成された溝と、仕切りブロック30bの下面に形成された溝とを対向させて、両仕切りブロック30a、30bを積み重ねることにより形成される。
【0029】
上記構成の仕切り部3は、例えばつぎのようにして、第一逆止弁4aおよび第二逆止弁4bが取り付けられた状態でケース2の円筒室200内に収容される。まず、仕切りブロック30aの一対の位置決め用凹部302にケース2の一対の位置決め用凸部204を挿入して、仕切りブロック30aをケース2の円筒室200の底面203上に配置する。その後、第二逆止弁4bを、仕切り部3の端面305側に、第二流路303bのストッパ307bに係止させつつ配置する。
【0030】
つぎに、仕切りブロック30bの一対の位置決め用凹部302にケース2の一対の位置決め用凸部204を挿入して、仕切りブロック30bをケース2の円筒室200内に配置された仕切りブロック30c上に配置する。その後、第一逆止弁4aを、仕切り部3の端面306側に、第一流路303aのストッパ307aに係止させつつ配置する。
【0031】
それから、仕切りブロック30cの一対の位置決め用凹部302にケース2の一対の位置決め用凸部204を挿入して、仕切りブロック30cをケース2の円筒室200内に配置された仕切りブロック30b上に配置する。以上のようにして、第一逆止弁4aおよび第二逆止弁4bが取り付けられた仕切り部3を構成する。
【0032】
なお、仕切りブロック30a〜30cおよびケース2の円筒室200の底面203を貫くネジ孔を設け、このネジ孔に連結ボルトを螺合させることにより、仕切りブロック30a〜30cをケース2に固定させてもよい。
【0033】
第一逆止弁4aは、仕切り部3の端面306側において、第一流路303aを開閉する。同様に、第二逆止弁4bは、仕切り部3の端面305側において、第二流路303bを開閉する。
【0034】
図5(A)〜
図5(C)は、第一逆止弁4a、第二逆止弁4bの正面図、上面図、および下面図である。
【0035】
図示するように、第一逆止弁4aおよび第二逆止弁4bは、円板状の弁部400と、係止部401と、弁部400および係止部401を連結する円柱状の連結部402と、を有する。
【0036】
第一逆止弁4aの弁部400は、仕切り部3の端面306における第一流路303aの開口(第一流路303aの第一回転方向R1の下流側の開口)の直径D1(
図4(D)参照)よりも大きな直径D5を有し、第一逆止弁4aが移動することにより仕切り部3の端面306における第一流路303aの開口を開閉する。同様に、第二逆止弁4bの弁部400は、仕切り部3の端面305における第二流路303bの開口(第二流路303bの第二回転方向R2の下流側の開口)の直径D3(
図4(E)参照)よりも大きな直径D5を有し、第二逆止弁4bが移動することにより仕切り部3の端面305における第二流路303bの開口を開閉する。
【0037】
第一逆止弁4aの係止部401は、仕切り部3の端面306における第一流路303aの開口の直径D1より大きく、かつ第一流路303aの直径D2より小さい長さL1と、仕切り部3の端面306における第一流路303aの開口の直径D1より小さい幅Wと、を有する板状部材であり、弁部400が仕切り部3の端面306における第一流路303aの開口を開く方向に移動した場合に、第一流路303aのストッパ307aと係止して、第一逆止弁4aの第一流路303aからの脱落を防止する。同様に、第二逆止弁4bの係止部401は、仕切り部3の端面305における第二流路303bの開口の直径D3より大きく、かつ第二流路303bの直径D4より小さい長さL1と、仕切り部3の端面305における第二流路303bの開口の直径D4より小さい幅Wと、を有する板状部材であり、弁部400が仕切り部3の端面305における第二流路303bの開口を開く方向に移動した場合に、第二流路303bのストッパ307bと係止して、第二逆止弁4bの第二流路303bからの脱落を防止する。
【0038】
第一逆止弁4aの連結部402は、仕切り部3の端面306における第一流路303aの開口の直径D1よりも小さい直径D6を有する円柱状部材である。第一逆止弁4aの連結部402の長さL2は、係止部401が第一流路303aのストッパ307aと係止したときに、弁部400が第一流路303aを開門し、かつ弁部400が第一流路303aを閉門したときに、係止部401が第一流路303aの側壁面に当接することなく、自由に移動できる長さに設定される。同様に、第二逆止弁4bの連結部402は、仕切り部3の端面305における第二流路303bの開口の直径D3よりも小さい直径D6を有する円柱状部材である。第二逆止弁4bの連結部402の長さL2は、係止部401が第二流路303bのストッパ307bと係止したときに、弁部400が第二流路303bを開門し、かつ弁部400が第二流路303bを閉門したときに、係止部401が第二流路303bの側壁面に当接することなく、自由に移動できる長さに設定される。
【0039】
上記構成の第一逆止弁4aは、弁部400が仕切り部3の端面306側の外部に位置し、かつ係止部401が第一流路303aのストッパ307aよりも第一回転方向R1(
図9参照)の上流側に位置するようにして、第一流路303aに取り付けられる。同様に、第二逆止弁4bは、弁部400が仕切り部3の端面305側の外部に位置し、かつ係止部401が第二流路303bのストッパ307bよりも第二回転方向R2(
図10参照)の上流側に位置するようにして、第二流路303bに取り付けられる。
【0040】
第一調整ボルト8aは、ケース2の第一調整ボルト用ネジ孔208aと螺合して、仕切り部3の第一挿入穴304aに挿入される。同様に、第二調整ボルト8bは、ケース2の第二調整ボルト用ネジ孔208bと螺合して、仕切り部3の第二挿入穴304bに挿入される。
【0041】
図6(A)〜
図6(C)は、第一調整ボルト8a、第二調整ボルト8bの正面図、上面図、および下面図である。
【0042】
図示するように、第一調整ボルト8aおよび第一調整ボルト8bは、六角穴付きボルト頭部800と、ネジ部801と、を有する。
【0043】
第一調整ボルト8aのネジ部801は、ケース2の外周面205および内周面203間の厚みT(
図2参照)と、第一挿入穴304aの長さL3(
図4(D)参照)と、第一流路303aの直径D2(
図4(D)参照)との合計より僅かに短い長さL5を有し、ケース2の第一調整ボルト用ネジ孔208aと螺合する。同様に、第二調整ボルト8bのネジ部801は、ケース2の外周面205および内周面203間の厚みTと、第二挿入穴304bの長さL4(
図4(E)参照)と、第二流路303aの直径D4(
図4(E)参照)との合計より僅かに短い長さL5を有し、ケース2の第二調整ボルト用ネジ孔208bと螺合する。
【0044】
ロータ5は、ケース2の円筒室200に対して相対的に回転可能となるように円筒室200内に収容される。
【0045】
図7(A)および
図7(B)は、ロータ5の正面図および側面図であり、
図7(C)は、
図7(A)に示すロータ5のE−E断面図である。
【0046】
図示するように、ロータ5は、円筒状のロータ本体500と、ロータ500の回転軸520に対して軸対称に形成された一対のベーン(回転翼)501と、を有する。
【0047】
ベーン51は、ロータ5の回転軸520に沿って形成され、ロータ本体500の外周面504から径方向外方へ突出し、先端面505がケース2の円筒室200の内周面203と近接して、円筒室200を仕切る。ベーン501には、ベーン501の先端面505と円筒室200の内周面203との間、ベーン501の下面506と円筒室200の底部201との間、およびベーン501の上面507と蓋7の下面704(
図8参照)との間を塞ぐシール材として機能する摺動部材508が必要に応じて装着される(
図1、
図2参照)。摺動部材508の素材には、ポリアミド等の摺動性に優れた樹脂が用いられる。
【0048】
ロータ本体500には、外部からの回転力をロータ5に伝達する六角シャフト(不図示)を挿入するための貫通孔509が、回転軸520を中心にして形成されている。そして、ロータ本体500の上端部502は、蓋7の開口部700(
図8参照)に回転可能に挿入され、ロータ本体500の下端部503は、ケース2の円筒室200の底部201に形成された開口部202に回転可能に挿入される(
図2参照)。
【0049】
なお、ケース2の円筒室200の開口部202から粘性流体6が外部に漏れないようにするために、Oリング等のシール材(不図示)を、ロータ本体500の下端部503とケース2の円筒室200の開口部202との間に介在させてもよい。
【0050】
蓋7は、それぞれ第一逆止弁4aおよび第二逆止弁4bが取り付けられた一対の仕切り部3と、ロータ5とを、粘性流体6とともにケース2内に封じ込める。
【0051】
図8(A)〜
図8(C)は、蓋7の正面図、側面図、および背面図であり、
図8(D)は、
図8(A)に示す蓋7のF−F断面図である。
【0052】
図示するように、蓋7には、ケース2の円筒室200の底部201に形成された開口部202と対向する位置に、蓋7の上面703および下面704を貫く開口部700が形成されている。この開口部700には、ロータ5のロータ本体500の上端部502が挿入される。また、蓋7の外周面701には、ケース2の円筒室200の内周面203の開口側206に形成された雌ネジ部207と螺合する雄ネジ部702が形成されている。なお、蓋7の開口部700から粘性流体6が外部に漏れないように、Oリング等のシール材(不図示)を、ロータ5のロータ本体500の上端部502と蓋7の開口部700との間に介在させてもよい。同様に、蓋7の雄ネジ部702とケース2の円筒室200の雌ネジ部207との螺合部分から粘性流体6が外部に漏れないように、Oリング等のシール材(不図示)を、蓋7の外周面701とケース2の円筒室200の内周面203との間に介在させてもよい。
【0053】
つぎに、ロータリダンパ1の動作原理を説明する。
【0054】
図9(A)および
図9(B)は、ロータリダンパ1が第一回転方向R1に回転した場合の動作原理を説明するための図であり、
図10(A)および
図10(B)は、ロータリダンパ1が第二回転方向R2に回転した場合の動作原理を説明するための図である。
【0055】
まず、
図9(A)および
図9(B)に示すように、ケース2に対してロータ5が第一回転方向R1に相対的に回転した場合、ロータ5のベーン501と仕切り部3の第一回転方向R1の上流側に位置する端面305との間の領域217が圧縮される。
【0056】
その結果、
図9(A)に示すように、この領域217内の粘性流体6が第一流路303aに流れ込む。この第一流路303a内に流れ込んだ粘性流体6の力により、第一逆止弁4aが第一流路303aを開門する。これにより、領域217から第一流路303a内に流れ込んだ粘性流体6は、ロータ5のベーン501と仕切り部3の第一回転方向R1の下流側に位置する端面306との間の領域218へ排出される。そして、ロータ5に加えられた第一回転方向R1の回転力に対して、第一流路303a内を流れる粘性流体6の流量に基づいた制動トルクを発生させる。このとき、第一調整ボルト8aの第一流路303aへの突出長に応じて、第一流路303aを流れる粘性流体6の流量を規制できるので、第一調整ボルト8aの第一流路303aへの突出長を変更することにより、ロータ5に加えられた第一回転方向R1の回転力に対する制動トルクを調整することができる。具体的には、制動トルクを大きくしたい場合には、第一調整ボルト8aの第一流路303aへの突出長を大きくして、第一流路303aを流れる粘性流体6の流量を小さくし、制動トルクを小さくしたい場合には、第一調整ボルト8aの第一流路303aへの突出長を小さくして、第一流路303aを流れる粘性流体6の流量を大きくする。
【0057】
なお、ケース2に対してロータ5が第一回転方向R1に相対的に回転して、ロータ5のベーン501と仕切り部3の第一回転方向R1の上流側に位置する端面305との間の領域217が圧縮された場合、
図9(B)に示すように、この領域217内の粘性流体6の圧力によって、第二逆止弁4bが第二流路303bを閉門するため、第二流路303bを介しての領域217から領域218への粘性流体6の移動は行われない。
【0058】
つぎに、
図10(A)および
図10(B)に示すように、ケース2に対してロータ5が第一回転方向R1の逆回転方向である第二回転方向R2に相対的に回転した場合、ロータ5のベーン501と仕切り部3の第二回転方向R2の上流側に位置する端面306との間の領域218が圧縮される。
【0059】
その結果、
図10(B)に示すように、この領域218内の粘性流体6が第二流路303bに流れ込む。この第二流路303b内に流れ込んだ粘性流体6の力により、第二逆止弁4bが第二流路303bを開門する。これにより、領域218から第二流路303b内に流れ込んだ粘性流体6は、ロータ5のベーン501と仕切り部3の第二回転方向R2の下流側に位置する端面305との間の領域217へ排出される。そして、ロータ5に加えられた第二回転方向R2の回転力に対して、第二流路303b内を流れる粘性流体6の流量に基づいた制動トルクを発生させる。このとき、第二調整ボルト8bの第二流路303bへの突出長に応じて、第二流路303bを流れる粘性流体6の流量を規制できるので、第二調整ボルト8bの第二流路303bへの突出長を変更することにより、ロータ5に加えられた第二回転方向R2の回転力に対する制動トルクを調整することができる。具体的には、制動トルクを大きくしたい場合には、第二調整ボルト8bの第二流路303bへの突出長を大きくして、第二流路303bを流れる粘性流体6の流量を小さくし、制動トルクを小さくしたい場合には、第二調整ボルト8bの第二流路303bへの突出長を小さくして、第二流路303bを流れる粘性流体6の流量を大きくする。
【0060】
なお、ケース2に対してロータ5が第二回転方向R2に相対的に回転して、ロータ5のベーン501と仕切り部3の第一回転方向R2の上流側に位置する端面306との間の領域218が圧縮された場合、
図10(A)に示すように、この領域218内の粘性流体6の圧力によって、第一逆止弁4aが第一流路303aを閉門するため、第一流路303aを介しての領域218から領域217への粘性流体6の移動は行われない。
【0061】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0062】
本実施の形態では、仕切り部3に、この仕切り部3によって仕切られるケース2の円筒室200内の領域216a、216b間を連結する第一流路303a、第二流路303bを形成するとともに、ケース2の第一調整ボルト用ネジ孔208aと螺合する第一調整ネジ8aを第一流路303a内に導く第一挿入穴304aと、ケース2の第二調整ボルト用ネジ孔208bと螺合する第二調整ネジ8bを第二流路303b内に導く第二挿入穴304bと、を形成している。
【0063】
また、ケース2に対してロータ5が第一回転方向R1に相対的に回転した場合に第一流路303aを開門し、ケース2に対してロータ5が第二回転方向R2に相対的に回転した場合に第一流路303aを閉門する第一逆止弁4aと、ケース2に対してロータ5が第一回転方向R1に相対的に回転した場合に第二流路303bを閉門し、ケース2に対してロータ5が第二回転方向R2に相対的に回転した場合に第二流路303bを開門する第二逆止弁4bと、ケース2の第一調整ボルト用ネジ孔208aと螺合して仕切り部3の第一挿入穴304aに挿入された第一調整ネジ8aと、ケース2の第二調整ボルト用ネジ孔208bと螺合して仕切り部3の第二挿入穴304bに挿入された第二調整ネジ8bと、を設けている。
【0064】
このため、本実施の形態では、第一調整ネジ8aの第一調整ボルト用ネジ孔208aへの螺合量を調節して、第一調整ネジ8aの第一流路303a内への突出長を変更することにより、ケース2に対してロータ5が第一回転方向R1に相対的に回転した場合(このとき、第二流路303bは第二逆止弁4bによって閉門される)における、第一流路303a内を流れる粘性流体6の流量を調整して、仕切り部3によって仕切られるケース2の円筒室200内の領域216a、216b間における粘性流体の移動を調整することができる。したがって、本実施の形態によれば、ロータ5に加えられた第一回転方向R1の回転力に対する制動トルクを調整することができる。
【0065】
同様に、本実施の形態では、第二調整ネジ8bの第二調整ボルト用ネジ孔208bへの螺合量を調節して、第二調整ネジ8bの第二流路303b内への突出長を変更することにより、ケース2に対してロータ5が第二回転方向R2に相対的に回転した場合(このとき、第一流路303aは第一逆止弁4aによって閉門される)における、第二流路303b内を流れる粘性流体6の流量を調整して、仕切り部3によって仕切られるケース2の円筒室200内の領域216a、216b間における粘性流体の移動を調整することができる。したがって、本実施の形態によれば、ロータ5に加えられた第二回転方向R2の回転力に対する制動トルクを調整することができる。
【0066】
また、本実施の形態によれば、第一調整ネジ8aの第一調整ボルト用ネジ孔208aへの螺合量を調節するだけで、ケース2に対してロータ5が第一回転方向R1に相対的に回転した場合における、第一流路303a内を流れる粘性流体6の流量を調整することができるので、簡単な操作により、ロータ5に加えられた第一回転方向R1の回転力に対する制動トルクを調整することができる。
【0067】
同様に、本実施の形態によれば、第二調整ネジ8bの第二調整ボルト用ネジ孔208bへの螺合量を調節するだけで、ケース2に対してロータ5が第二回転方向R2に相対的に回転した場合における、第二流路303b内を流れる粘性流体6の流量を調整することができるので、簡単な操作により、ロータ5に加えられた第二回転方向R2の回転力に対する制動トルクを調整することができる。
【0068】
また、本実施の形態では、3つの仕切りブロック30a〜30cをケース2の円筒室200の中心線220に沿って積み重ねることにより仕切り部3を構成している。そして、仕切りブロック30bの上面に形成された溝と、仕切りブロック30cの下面に形成された溝とを対向させて、両仕切りブロック30b、30cを積み重ねることにより、第一流路303aおよび第一挿入穴304aを形成するとともに、仕切りブロック30aの上面に形成された溝と、仕切りブロック30bの下面に形成された溝とを対向させて、両仕切りブロック30a、30bを積み重ねることにより、第二流路303bおよび第二挿入穴304bを形成している。したがって、本実施の形態によれば、第一流路303aおよび第一挿入穴304aと、第二流路303bおよび第二挿入穴304bとを、仕切り部3に、円筒室200の中心線220に沿って重ねて設けることができるので、仕切り部3の外径を小さくして、ロータリダンパ1の小型化を図ることができる。
【0069】
また、本実施の形態において、ロータ5のベーン501に、ベーン501の先端面505と円筒室200の内周面203との間、ベーン501の下面506と円筒室200の底部201との間、およびベーン501の上面507と蓋7の下面704との間を塞ぐシール材として機能する摺動部材508を装着することにより、これらの隙間を塞ぎつつ摺動性を向上させることができる。このため、ロータ5に加えられた回転力に対して、より高い制動トルクを実現しつつ、外部からの回転力をロータ5に伝達する六角シャフトを滑らかに回転させることができる。
【0070】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0071】
例えば、上記の実施の形態において、第一調整ネジ8aおよび第二調整ネジ8bのいずれか一方を省略してもよい。
【0072】
第一調整ネジ8aを省略する場合、ケース2の第一調整ボルト用ネジ孔208aおよび仕切り部3の第一挿入穴304aは不要である。この場合、ロータ5に加えられた第二回転方向R2の回転力に対して、第二調整ネジ8bにより調整された大きさの制動トルクを発生させ、ロータ5に加えられた第一回転方向R1の回転力に対しては、より小さい制動トルクを発生させるロータリダンパ1を実現することができる。
【0073】
なお、第一調整ボルト用ネジ孔208aおよび第一挿入穴304aを省略する場合、仕切りブロック30bの上面および仕切りブロック30cの下面各々の溝を省略して、両仕切りブロック30b、30cを一体化することもできる。また、仕切り部3をケース2と一体的に形成して、第二流路303bおよび第二挿入穴304bを、仕切り部3の上面に形成してもよい。
【0074】
また、第二調整ネジ8bを省略する場合、ケース2の第二調整ボルト用ネジ孔208bおよび仕切り部3の第二挿入穴304bは不要である。この場合、ロータ5に加えられた第一回転方向R1の回転力に対して、第一調整ネジ8aにより調整された大きさの制動トルクを発生させ、ロータ5に加えられた第二回転方向R2の回転力に対しては、より小さい制動トルクを発生させるロータリダンパ1を実現することができる。
【0075】
なお、第二調整ボルト用ネジ孔208bおよび第二挿入穴304bを省略する場合、仕切りブロック30aの上面および仕切りブロック30bの下面各々の溝を省略して、両仕切りブロック30a、30bを一体化することもできる。また、仕切り部3をケース2と一体的に形成して、第一流路303aおよび第一挿入穴304aを、仕切り部3の上面に形成してもよい。
【0076】
また、本実施の形態において、第一流路303aおよび第二流路303bのいずれか一方を省略してもよい。
【0077】
第一流路303aを省略する場合、ケース2の第一調整ボルト用ネジ孔208a、仕切り部3の第一挿入穴304a、および第一調整ネジ8aも省略する。この場合、ロータ5に加えられた第二回転方向R2の回転力に対して、第二調整ネジ8bにより調整された大きさの制動トルクを発生させ、ロータ5に加えられた第一回転方向R1の回転力に対しては、第二逆止弁4bが第二流路303bを閉門して、より大きな制動トルクを発生させるロータリダンパ1を実現することができる。ここで、第二逆止弁4bをさらに省略することにより、ロータ5に第一回転方向R1および第二回転方向R2のいずれの方向の回転力を加えた場合でも、第二調整ネジ8bにより調整された大きさの制動トルクを発生させるロータリダンパ1を実現することができる。
【0078】
また、第二流路303bを省略する場合、ケース2の第二調整ボルト用ネジ孔208b、仕切り部3の第二挿入穴304b、および第二調整ネジ8bも省略する。この場合、ロータ5に加えられた第一回転方向R1の回転力に対して、第一調整ネジ8aにより調整された大きさの制動トルクを発生させ、ロータ5に加えられた第二回転方向R2の回転力に対しては、第一逆止弁4aが第一流路303aを閉門して、より大きな制動トルクを発生させるロータリダンパ1を実現することができる。ここで、第一逆止弁4aをさらに省略することにより、ロータ5に第一回転方向R1および第二回転方向R2のいずれの方向の回転力を加えた場合でも、第一調整ネジ8aにより調整された大きさの制動トルクを発生させるロータリダンパ1を実現することができる。
【0079】
また、上記の実施の形態では、ケース2の第一調整ボルト用ネジ孔208aに対する第一調整ネジ8aの螺合量を操作することにより、第一流路303aを流れる粘性流体6の流量を調整している。しかし、本発明はこれに限定されない。外部から第一流路303aへの突出長を調整して、第一流路303aを流れる粘性流体6の流量を調整できるものであれば、ネジ以外の調整手段を用いてもよい。同様に、上記の実施の形態では、ケース2の第二調整ボルト用ネジ孔208bに対する第二調整ネジ8bの螺合量を操作することにより、第二流路303bを流れる粘性流体6の流量を調整しているが、本発明はこれに限定されない。外部から第二流路303bへの突出長を調整して、第二流路303bを流れる粘性流体6の流量を調整できるものであれば、ネジ以外の調整手段を用いてもよい。
【0080】
また、上記の実施の形態では、ケース2の円筒室200に一対の仕切り部3を設けるとともに、ロータ5に一対のベーン501を設けた場合を例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。仕切り部3およびベーン501は、互いに同数であれば、1または3以上形成されていてもよい。
【0081】
上記の実施の形態に係るロータリダンパ1は、例えば、自動車、鉄道車両、航空機、船舶等で用いられるリクライニング機能付きの座席シートに広く適用できる。