【解決手段】電動装置は、電動モータと、前記電動モータの駆動力を受けて進退する駆動部材と、前記駆動部材に押圧されて移動する移動部材と、前記移動部材の移動範囲を規制するストッパ部と、前記移動部材に対する前記駆動部材の押圧部、又は前記押圧部によって押圧される前記移動部材の受圧部に設けられ、前記移動部材の移動が前記ストッパ部で規制される前は前記駆動部材の押圧力を前記移動部材に伝達して該移動部材を移動させる一方、前記移動部材の移動が前記ストッパ部で規制された後は前記駆動部材の押圧力を吸収する緩衝機構とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、本開示に係る電子機器システム10の構成図であり、電動装置11と携帯用情報機器12とを分離させた状態での斜視図である。
図2は、
図1に示す電動装置11と携帯用情報機器12とを接続した状態での一部断面側面図である。
図3は、
図1に示す携帯用情報機器12の底面16aの構成を模式的に示す底面図である。
【0008】
本開示は、携帯用情報機器12の一例であるノート型PCを冷却装置となる電動装置11に接続することで、携帯用情報機器12の冷却機能を補強する電子機器システム10を例示する。電動装置11は、携帯用情報機器12の処理機能、電源機能及び周辺機器やネットワークに対する接続機能を拡張・補強する機能を有するものであってもよい。携帯用情報機器12はノート型PC以外であってもよく、例えばタブレット型PCやスマートフォン等であってもよい。
【0009】
先ず、電子機器システム10の全体的な構成を説明する。
【0010】
図1に示すように、携帯用情報機器12は、本体筐体16に対してディスプレイ筐体18を開閉可能に連結したクラムシェル型構造である。本体筐体16の上面にはキーボード20が設けられている。ディスプレイ筐体18の前面にはディスプレイ22が設けられている。
【0011】
図2及び
図3に示すように、本体筐体16の底面16aには、電動装置11のコネクタ24と電気的に接続されるコネクタ25と、矩形の開口部26と、一対の係合穴31とが設けられている。開口部26は、シャッター部材27によって開閉可能に覆われている。シャッター部材27は、例えば両開き構造となっている。開口部26の内部には、シャッター部材27によって開閉可能に覆われた放熱側ヒートシンク29が配置されている。係合穴31は、電動装置11側から突出する係合レバー30と係合可能である。
【0012】
コネクタ25は、本体筐体16の内部に収容された図示しない基板に接続されている。放熱側ヒートシンク29は、電動装置11側の受熱側ヒートシンク32に当接することで携帯用情報機器12の冷却機能を拡張するものである。放熱側ヒートシンク29と受熱側ヒートシンク32とが当接して熱的に接続されることで、携帯用情報機器12内で発生した熱を電動装置11に伝達して外部に放熱することができる。シャッター部材27は、高温になる放熱側ヒートシンク29が携帯用情報機器12の底面16aに常時露出することを防止するものである。
【0013】
図1及び
図2に示すように、電動装置11は、携帯用情報機器12の本体筐体16を載置させた状態で用いられるものである。電動装置11は、合成樹脂材や金属材によって成形した装置筐体33にPC搭載部34及び操作部36を設けて構成されている。
【0014】
PC搭載部34は、携帯用情報機器12を載置することのできる大きさの上面を有した箱体である。PC搭載部34は、載置面34aと、逃げ面34bとを備える。載置面34aは、前側から後側に向かうに従って漸次高さ寸法が大きくなるように傾斜し、携帯用情報機器12の底面16aが着地する面である。逃げ面34bは、載置面34aの後側で一段低く形成されている。逃げ面34bは、携帯用情報機器12の後方下面から図示しないバッテリ等が突出している場合に、該バッテリ等を避けるための低部である。
【0015】
逃げ面34bの後部左右両端には、それぞれ支持部材35L,35Rが設けられている。支持部材35L,35Rは、携帯用情報機器12の底面16aの後端部を上下動可能に支持するクッション部材である。支持部材35L,35Rは、例えばコイルばねである弾性体39によって上昇方向に付勢されている。支持部材35L,35Rは、携帯用情報機器12の重量で押圧されている場合は弾性体39の付勢力に抗して下降し(
図2参照)、携帯用情報機器12の重量が付与されていない場合は上昇している(
図1参照)。
【0016】
操作部36は、PC搭載部34よりも大きな高さ寸法を有した直方体状部分である。操作部36は、PC搭載部34の一側方において後方側となる部位(逃げ面34bの側部)に設けてある。操作部36は、エジェクトボタン37と、図示しないキー挿入孔とを有する。エジェクトボタン37は、電動装置11に接続された携帯用情報機器12を取り外す際に操作する操作ボタンである。キー挿入孔は、図示しないワイヤ式ロックキーを装着するための開口である。ロックキーをキー挿入孔に挿入してロック操作することにより、エジェクトボタン37に対する入力操作が無効となる。これにより、携帯用情報機器12の電動装置11からの取り外しが防止され、携帯用情報機器12の盗難防止が図られる。
【0017】
載置面34a上には、コネクタ24と、載置面34aに形成された開口部38を開閉可能に覆うシャッター部材40とが設けられている。開口部38の内部には受熱側ヒートシンク32が配置され、シャッター部材40によって開閉可能に覆われている。
【0018】
コネクタ24は、PC搭載部34の内部に収容された図示しない基板等に接続されており、載置面34a上に突出している。コネクタ24は、電動装置11に設けた各種拡張機能の接続端子を構成し、携帯用情報機器12の底面16aに設けたコネクタ25に接続されるものである。コネクタ24にコネクタ25を接続することにより、電動装置11と携帯用情報機器12が電気的に接続され、電動装置11に設けた各種拡張機能を携帯用情報機器12から使用することが可能となる。
【0019】
コネクタ24の左右側部からは係合レバー30がそれぞれ突出し、その上部が載置面34a上に露出している。各係合レバー30は、レバーばね30aによって係合穴31に対する係合方向(後方)に付勢されている。各係合レバー30の前側及び左右側の三方を囲むように平面視コの字状のガイドポスト41が突出形成されている。ガイドポスト41は、電動装置11に携帯用情報機器12が接続される際、係合レバー30と共に携帯用情報機器12側の係合穴31に挿入され、装置筐体33に対して携帯用情報機器12を位置決めする位置決めピンとして機能する。さらに載置面34a上で各ガイドポスト41の側方には、エジェクト部材42がそれぞれ設けられている。エジェクト部材42は、電動装置11から携帯用情報機器12を取り外す際、係合レバー30の係合穴31への係合状態が解除された後に上昇し、携帯用情報機器12の底面16aを押し上げるものである。
【0020】
次に、電動装置11による携帯用情報機器12の冷却構造について具体的に説明する。
【0021】
図4は、電動装置11の内部構造を模式的に示す平面図である。
図5は、電動装置11と携帯用情報機器12とを接続した状態での内部構造を模式的に示す側面図である。
【0022】
図3及び
図5に示すように、携帯用情報機器12は、シャッター部材27で開閉可能に設けられた放熱側ヒートシンク29を底面16aに有する。放熱側ヒートシンク29は、銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い金属材料によって形成された矩形板状部材である。放熱側ヒートシンク29は、本体筐体16内に設けられた発熱体43と熱的に接続されている。発熱体43は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の電子部品である。発熱体43で発生した熱は放熱側ヒートシンク29に効率よく伝達される。
【0023】
図1、
図4及び
図5に示すように、電動装置11は、受熱側ヒートシンク32と、ラジエータ44と、循環ポンプ46とを配管47で環状に接続して冷却水を循環させる水冷ユニット48を備える。
【0024】
受熱側ヒートシンク32は、銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い金属材料によって形成された矩形板状部材である。受熱側ヒートシンク32は、入口用の配管47と出口用の配管47が接続され、内部の図示しないフィンが配設された冷却水流通空間に冷却水が流通する。この冷却水流通空間は、受熱側ヒートシンク32の上面を形成する薄い蓋体の内側に形成されている。フィンは、その端面が蓋体の内面に当接した状態で冷却水流通空間内に所定間隔を介して複数並列されている。このように、受熱側ヒートシンク32は、冷却水流通空間内のフィンの周囲に冷却水が流通することで、フィンと冷却水との間で熱交換を行う水冷ジャケット構造とされている。
【0025】
水冷ユニット48では、ラジエータ44で送風ファン49による送風も受けて放熱した冷却水が循環ポンプ46を介して受熱側ヒートシンク32に導入される。受熱側ヒートシンク32で放熱側ヒートシンク29側からの熱を回収した冷却水は、再びラジエータ44に導入される。これにより、受熱側ヒートシンク32は高い冷却効率で放熱側ヒートシンク29を冷却することができる。
【0026】
図4及び
図5に示すように、電動装置11は、シャッター駆動機構50と、昇降機構52と、エジェクト機構54と、制御部56とを装置筐体33内に備える。
【0027】
シャッター駆動機構50は、シャッター部材27及びシャッター部材40を開閉駆動する機構部である。シャッター駆動機構50は、図示しない電動モータやこの電動モータによってシャッター部材40やシャッター開閉部材58を動作させるラックギアやリンク部材等を有する。シャッター開閉部材58は、薄板状部材である。シャッター駆動機構50は、制御部56の制御下にシャッター部材40をスライド移動させて開閉する。さらにシャッター駆動機構50は、電動装置11に接続された携帯用情報機器12の底面16aの孔部16bを挿通したシャッター開閉部材58を回転駆動し、シャッター部材27も開閉させる。
【0028】
昇降機構52は、受熱側ヒートシンク32を昇降駆動する機構部である。昇降機構52は、図示しない電動モータやこの電動モータによって受熱側ヒートシンク32を昇降させるガイド部材等を有する。昇降機構52は、制御部56の制御下に受熱側ヒートシンク32を昇降させる。昇降機構52によって昇降する水冷ジャケット構造の受熱側ヒートシンク32とラジエータ44及び循環ポンプ46との間の配管47は柔軟性を持ったホース状部材で構成されている。
【0029】
エジェクト機構54は、電動装置11に接続された携帯用情報機器12を取り外す際に係合レバー30及びエジェクト部材42を駆動する機構部である。
図4に示すように、エジェクト機構54は、電動モータ60と、ラックギア(駆動部材)62と、揺動アーム(移動部材)64と、スライド部材66とを有する。
【0030】
電動モータ60は、その出力軸となるウォームギア60aがウォームホイール68を介してラックギア62に連結されている。ラックギア62は、装置筐体33の内面上で前後方向に移動可能に設けられ、ピニオンギアとなるウォームホイール68によって進退駆動される。
【0031】
揺動アーム64は、左右方向に延在する長尺なアーム状部材である。揺動アーム64は、略中央に設けられた揺動軸64aを中心に揺動可能である。揺動アーム64の揺動範囲は、ストッパ部65によって規制されている(
図7A〜
図7Cも参照)。揺動アーム64の一端側には受圧部64bが設けられている。受圧部64bは、ラックギア62の後端部に設けられた押圧部62aによって押圧される部分である。受圧部64bには、押圧部62aからの押圧力を伝達可能且つ吸収可能な緩衝機構70が設けられている。揺動アーム64は、ラックギア62が後側に移動した場合に
図4中で時計回りに揺動し、ラックギア62が前側に移動した場合に
図4中で反時計回りに揺動する。揺動アーム64の他端側には、スライド部材66が連結されている。
【0032】
スライド部材66は、揺動アーム64が揺動した際にこれに伴って前後方向に移動する。スライド部材66は、係合解除部66aと、押上部66bとを有する。係合解除部66aは、係合レバー30を解除方向に移動させる部分である。押上部66bは、図示しない傾斜面による押圧作用によってエジェクト部材42を押し上げる部分である。スライド部材66は、揺動アーム64が時計方向に揺動した際に前側に移動する。スライド部材66は、前側に移動する際、係合穴31に対して係合状態にある係合レバー30を係合解除部66aによって移動させて係合状態を解除した後、エジェクト部材42を押上部66bによって押し上げる。これにより、携帯用情報機器12の底面16aがエジェクト部材42によって押し上げられ、携帯用情報機器12が載置面34a上でポップアップする。
【0033】
制御部56は、電動装置11の全体的な制御を行うと共に、水冷ユニット48、シャッター駆動機構50、昇降機構52及びエジェクト機構54を駆動制御する。制御部56は、係合レバー30によってオンオフされる装着センサ72及び携帯用情報機器12の底面16aによってオンオフされるオンセンサ73の検出信号を受けて、電動装置11を待機状態から動作状態に切換制御する。本開示において待機状態とは、例えば電動装置11に携帯用情報機器12が接続されていない状態で、装着センサ72からの検出信号を受信可能な状態である。この待機状態では、水冷ユニット48、シャッター駆動機構50、昇降機構52及びエジェクト機構54は停止状態にある。本開示において動作状態とは、例えば電動装置11に携帯用情報機器12が接続されている状態で、水冷ユニット48による冷却運転が実行されている状態である。シャッター駆動機構50、昇降機構52及びエジェクト機構54の各動作も動作状態時に実行される。さらに制御部56は、支持部材35L,35Rによってオンオフされる図示しない取外しセンサの検出信号を受けて、電動装置11を動作状態から待機状態に切換制御する。
【0034】
制御部56は、例えばCPU等の処理装置にプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア及びハードウェアを併用して実現してもよい。
【0035】
図6は、緩衝機構70の構成例を示す分解斜視図である。
図7Aは、ラックギア62による押圧力が揺動アーム64に付与されていない状態を示す平面図である。
図7Bは、
図7Aに示す状態からラックギア62が後方に移動し、揺動アーム64が揺動した状態を示す平面図である。
図7Cは、
図7Bに示す状態から緩衝機構70によって電動モータ60の慣性回転によるラックギア62の移動が吸収された状態を示す平面図である。
【0036】
図6及び
図7A〜
図7Cに示すように、緩衝機構70は、揺動アーム64に対して相対移動可能な状態で2本のコイルばね80によって弾性支持された当接部82を有する。当接部82の左右両側には、前後方向の長孔82aが設けられている。各長孔82aには、揺動アーム64にねじ止めされたガイドピン84が挿通されている。当接部82は、ガイドピン84が長孔82a内を摺動することで揺動アーム64に対して長孔82aの範囲内で相対移動可能である。各コイルばね80は、一端部が揺動アーム64の側壁64cに支持され、他端部が当接部82の筐体内に形成された穴部に挿入されて該当接部82に支持されている。当接部82のラックギア62の押圧部62aと当接する部分である当接端面82bが、揺動アーム64の受圧部64bとして機能する。
【0037】
揺動アーム64は、揺動軸64aと緩衝機構70との間に設けられたストッパ部65により、その揺動範囲が規制されている。ストッパ部65は、揺動アーム64に形成された円弧状孔部64dに軸部65aが挿通されたピン状部材である。軸部65aは、円弧状孔部64dを挿通し、装置筐体33の内面に固定されている。ストッパ部65は、軸部65aが円弧状孔部64d内を摺動することで揺動アーム64の揺動範囲を規制する。
【0038】
図7A及び
図7Bに示すように、ラックギア62が後方に移動して押圧部62aが当接部82の当接端面82b(受圧部64b)を押圧した際、揺動アーム64の揺動がストッパ部65によって規制されるまでの間はコイルばね80は収縮しない。従って、ラックギア62からの押圧力が揺動アーム64に確実に伝達され、揺動アーム64が円滑に揺動する。これに対し、
図7B及び
図7Cに示すように、揺動アーム64の揺動がストッパ部65によって規制された後は、ラックギア62が後方に移動するとコイルばね80が収縮し、当接部82が揺動アーム64に対して後方に相対移動する。従って、ラックギア62からの押圧力が緩衝機構70で吸収される。
【0039】
当接部82を揺動アーム64に対して弾性支持するためのコイルばね80(本開示では2本のコイルばね80の合計)の弾性力は、ラックギア62によって揺動アーム64を移動させてスライド部材66(係合レバー30)を移動させるのに必要な力よりも大きく設定されている。さらにコイルばね80の弾性力は、ピニオンギアとなるウォームホイール68とラックギア62との間の歯車の伝達力よりも小さく設定されている。
【0040】
次に、電子機器システム10の動作について説明する。
【0041】
図8は、
図4に示す状態からエジェクトボタン37が操作された状態を示す平面図である。
【0042】
先ず、電動装置11に携帯用情報機器12が装着されていない状態では、シャッター部材27によって放熱側ヒートシンク29が閉じられ、シャッター部材40によって受熱側ヒートシンク32が閉じられた状態にある。このためユーザが誤って放熱側ヒートシンク29や受熱側ヒートシンク32に接触することがない。この際、電動装置11は待機状態にあり、制御部56は装着センサ72及びオンセンサ73からの検出信号の待受状態にある。
【0043】
次に、待機状態にある電動装置11に携帯用情報機器12を装着する際には、
図5に示すように各係合レバー30を携帯用情報機器12の係合穴31に挿入させつつ、コネクタ24とコネクタ25を接続する。これにより、コネクタ24とコネクタ25が電気的に接続される。さらに係合レバー30が係合穴31に係合することによって電動装置11からの携帯用情報機器12の離脱が阻止された状態となる。
【0044】
この装着動作時、係合レバー30は、その頂面が係合穴31の縁部に摺接することで、レバーばね30aの付勢力に抗して係合穴31に対する係合方向とは反対方向に一旦移動する。そして、頂面が係合穴31の縁部を乗り越えると、係合レバー30はレバーばね30aの付勢力によって係合方向に移動し、係合穴31に係合する。従って、装着センサ72は、その検出スイッチ72aが係合レバー30に当接してオン信号を発信した状態から、オフ信号を発信した後、再びオン信号を発信する。なお、オンセンサ73は携帯用情報機器12の底面16aによって押圧されることで下降し、オン信号を発信する。
【0045】
制御部56は、装着センサ72から順に発せられたオフ信号、オン信号の検出信号と、オンセンサ73からのオン信号の検出信号とを受けると、電動装置11を待機状態から動作状態に切り換える。オンセンサ73を省略し、電動装置11を待機状態から動作状態に切り換えるための検出は、装着センサ72のみを用いてもよい。
【0046】
電動装置11が動作状態に切り換えられると、制御部56の制御下に先ずシャッター駆動機構50が動作してシャッター部材27とシャッター部材40が開かれる。次に、昇降機構52が動作し、受熱側ヒートシンク32が上昇して放熱側ヒートシンク29に圧接され、両者が密着する。その後、制御部56は、循環ポンプ46及び送風ファン49を所定の回転数で駆動制御する。これにより携帯用情報機器12の発熱体43で発生した熱は、放熱側ヒートシンク29から受熱側ヒートシンク32を経由し、ラジエータ44から外部に放熱される。
【0047】
次に、携帯用情報機器12を電動装置11から取り外す際には、エジェクトボタン37を操作することでドッキング解除操作を行う。このドッキング解除操作は、携帯用情報機器12のキーボード20や図示しないマウス等の入力手段によるソフトウェア上での入力操作によって行われてもよい。
【0048】
ドッキング解除操作が行われると、制御部56は、エジェクト機構54を動作させて係合レバー30を係合穴31から離脱させると共に、エジェクト部材42を押し上げて携帯用情報機器12を載置面34a上でポップアップさせる。これにより、携帯用情報機器12と電動装置11との装着状態が解除される。
【0049】
具体的には、制御部56の制御下に電動モータ60が回転駆動される。そうすると、ウォームギア60a及びウォームホイール68を介してラックギア62が
図8に示すように後方に向かって移動する。緩衝機構70の当接部82が移動するラックギア62によって押圧されると、コイルばね80が実質的に剛体として機能するため、当接部82と揺動アーム64が一体となり、揺動アーム64が図中で時計回りに揺動する(
図7A及び
図7B参照)。これにより、スライド部材66が前進し、係合解除部66aによって係合レバー30の係合穴31に対する係合状態が解除される。続いて、押上部66bによってエジェクト部材42が押し上げられ、携帯用情報機器12が載置面34a上でポップアップし、電動装置11との装着状態が解除される。揺動アーム64がストッパ部65によって規制されるまで揺動し、電動装置11と携帯用情報機器12の装着状態が解除されると、ラックギア62が位置検出センサ86によって検出され、電動モータ60が停止される。つまり位置検出センサ86は、揺動アーム64の移動範囲を検出するセンサとして機能する。電動モータ60の停止後、揺動アーム64はレバーばね30a又は揺動アーム64に設けられた図示しないばねの付勢力によってラックギア62を押圧移動させつつ元の位置に戻る。
【0050】
ところで、電動モータ60のような電気駆動のモータでは、駆動が停止された後も僅かな時間ではあるがモータ自体の慣性によって回転が継続される。つまり制御部56からの停止信号を受けた後も一定時間は電動モータ60が慣性によって回転を継続する。このため、揺動アーム64の揺動がストッパ部65によって規制された後も電動モータ60が回転を継続してラックギア62が移動を続け、ラックギア62とピニオンギアとなるウォームホイール68との間で歯車間の歯飛びを生じ、衝撃音を発生する場合がある。一方、この歯飛びを回避するためには、揺動アーム64の揺動範囲を拡大することが考えられるが、設置スペース等の問題で困難である場合もある。
【0051】
これに対し、本開示では、揺動アーム64の揺動がストッパ部65によって規制された後は、緩衝機構70によって移動を続けるラックギア62からの押圧力を吸収することができる。具体的には、
図7Cに示すように、電動モータ60の慣性回転によるラックギア62からの押圧力が付与されると、コイルばね80が収縮する。その結果、当接部82は、揺動アーム64の側壁64cに当接するまで移動し、ラックギア62からの押圧力を吸収する。このため、ラックギア62とピニオンギアとなるウォームホイール68との間で歯車間の歯飛びが回避される。
【0052】
携帯用情報機器12がポップアップされた後は、携帯用情報機器12を載置面34a上から持ち上げる。そうすると、支持部材35L,35Rが
図1に示すように上昇し、取外しセンサがオフ信号を発信する。そこで、制御部56は昇降機構52を動作させ、受熱側ヒートシンク32を下降させて放熱側ヒートシンク29から離脱させる。続いて、制御部56はシャッター駆動機構50を動作させてシャッター部材27とシャッター部材40を閉じる。これにより、電動装置11からの携帯用情報機器12の取り外し動作が完全に完了するため、制御部56は電動装置11を再び動作状態から待機状態に切り換える。
【0053】
以上のように、本開示に係る電動装置11は、電動モータ60と、電動モータ60の駆動力を受けて進退する駆動部材であるラックギア62と、ラックギア62に押圧されて移動する移動部材である揺動アーム64と、揺動アーム64の移動範囲を規制するストッパ部65と、ラックギア62の押圧部62aによって押圧される揺動アーム64の受圧部64bに設けられ、揺動アーム64の移動がストッパ部65で規制される前はラックギア62の押圧力を揺動アーム64に伝達して該揺動アーム64を移動させる一方、揺動アーム64の移動がストッパ部65で規制された後はラックギア62の押圧力を吸収する緩衝機構70とを備える。
【0054】
従って、揺動アーム64の揺動範囲内では緩衝機構70がラックギア62からの押圧力を吸収せず、この押圧力が適切に揺動アーム64の移動力となる。一方、電動モータ60がその駆動が停止された後も慣性によって回転が継続され、ラックギア62が移動を継続した場合であっても、ラックギア62からの押圧力を緩衝機構70によって吸収することができる。このため、ラックギア62やその駆動源(電動モータ60やウォームホイール68)に大きな負荷が生じることが回避される。
【0055】
緩衝機構70はラックギア62の押圧部62aに設置し、その当接部82によって揺動アーム64の受圧部64bを押圧する構成としてもよい。つまり、当接部82は、ラックギア62に対して相対移動可能な状態でコイルばね80で弾性支持された状態で揺動アーム64の受圧部64bに当接可能に設けられてもよい。
【0056】
本開示では、緩衝機構70のコイルばね80(本開示では2本のコイルばね80の合計)の弾性力は、ラックギア62によって揺動アーム64を移動させてスライド部材66を移動させ、係合レバー30をレバーばね30aの付勢力に抗して移動させるのに必要な力よりも大きく設定されている。さらにコイルばね80の弾性力は、ピニオンギアとなるウォームホイール68とラックギア62との間の歯車の伝達力よりも小さく設定されている。これにより、ラックギア62で揺動アーム64を適切に移動させることができ、さらに揺動アーム64の揺動がストッパ部65によって規制された後はラックギア62からの押圧力を適切に吸収することができる。
【0057】
本開示では、移動部材である揺動アーム64の移動範囲を規制するストッパ部として、揺動アーム64に直接的に当接するストッパ部65を例示した。しかしながら、このようなストッパ部65を設けず、揺動アーム64の移動を受けて移動するスライド部材66や係合レバー30を揺動アーム64の移動範囲を規制するストッパ部として機能させることもできる。
【0058】
本開示では、緩衝機構70をラックギア62と揺動アーム64との間に設置した構成を例示した。しかしながら、緩衝機構は電動モータの駆動力を受けて進退する駆動部材と、この駆動部材によって押圧されて移動する移動部材との間であれば各種機械機構に利用できる。例えば、シャッター駆動機構50及び昇降機構52の動作にも電動モータを用いているため、この電動モータの慣性回転を吸収するために緩衝機構70を用いてもよい。
【0059】
なお、本発明は、上記した開示内容に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。