特開2017-211098(P2017-211098A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-211098(P2017-211098A)
(43)【公開日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】廃棄物処理設備
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20171102BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20171102BHJP
【FI】
   F28F9/02 G
   F28D7/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-102314(P2016-102314)
(22)【出願日】2016年5月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】坂田 晃治
(72)【発明者】
【氏名】都築 良太
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA10
3L103BB06
3L103CC27
3L103DD08
3L103DD44
(57)【要約】
【課題】伝熱管の熱膨張により管板にかかる反力を低減することができ、さらには伝熱面積が減少することなく管板を効率的に冷却できる熱交換器を備えた廃棄物処理設備を提供する。
【解決手段】熱処理炉と、熱処理炉の煙道に設置され排ガスCの保有熱により熱処理炉の燃焼用空気Dを予熱する熱交換器と、を備えている廃棄物処理設備であって、熱交換器3は、燃焼用空気Dの流入部42及び流出部43を備えたケーシング39と、ケーシング39の上下両側に夫々固着された上部管板34及び下部管板35と、各管板34,35に支持されると共に筒状ケーシング33に配置され排ガスCが流れる複数の伝熱管36とを備え、伝熱管36の一端部は各管板34,35の何れか一方に固着されたガイド管37に摺動するように構成され、伝熱管36の他端部は各管板34,35の何れか他方に固着支持されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理炉と、当該熱処理炉の煙道に設置され排ガスの保有熱により前記熱処理炉の燃焼用空気を予熱する熱交換器と、を備えている廃棄物処理設備であって、
前記熱交換器は、燃焼用空気の流入部及び流出部を備えたケーシングと、前記ケーシングの上端側及び下端側にそれぞれ固着された上部管板及び下部管板と、前記上部管板及び前記下部管板に支持されるとともに前記ケーシングに配置され排ガスが流れる複数の伝熱管と、を備えて構成され、
前記伝熱管の一端部は前記上部管板または前記下部管板の何れか一方に固着されたガイド管と摺動するとともに、前記伝熱管の他端部は前記上部管板または前記下部管板の何れか他方に固着支持された熱交換器を備えている廃棄物処理設備。
【請求項2】
前記ガイド管は前記伝熱管を内挿または外挿可能なように構成されている請求項1記載の廃棄物処理設備。
【請求項3】
前記ケーシングは略鉛直の筒状であり、前記伝熱管が当該ケーシングの軸線方向に配置されている請求項1または2記載の廃棄物処理設備。
【請求項4】
前記ガイド管は前記上部管板または前記下部管板のうち排ガスの流入側の管板に設けられている請求項1から3の何れかに記載の廃棄物処理設備。
【請求項5】
前記ガイド管は前記上部管板または前記下部管板のうち排ガスの流出側の管板に設けられ、前記燃焼用空気の流入部は排ガスの流入側に設けられている請求項1から3の何れかに記載の廃棄物処理設備。
【請求項6】
前記上部管板または前記下部管板のうち排ガスの流入側の管板に対向して前記ケーシングの内側に、当該ケーシングまたは伝熱管に対して間隙が形成されるように仕切管板が配置され、当該管板と前記仕切管板との間に冷却用空気が供給される冷却空間が形成されている請求項1から5の何れかに記載の廃棄物処理設備。
【請求項7】
前記上部管板または前記下部管板のうち前記ガイド管を備えた管板に対向して前記ケーシングの内側に、当該ケーシングまたは伝熱管に対して間隙が形成されるように仕切管板が配置され、当該管板と前記仕切管板との間に冷却用空気が供給される冷却空間が形成されている請求項1から5の何れかに記載の廃棄物処理設備。
【請求項8】
前記仕切管板は前記ケーシングの内壁または前記伝熱管の何れか一方にのみ固着され、前記冷却空間に供給された冷却用空気が前記ケーシングの内壁または前記伝熱管の何れか他方と前記仕切管板との間隙から流出するように構成されている請求項6または7記載の廃棄物処理設備。
【請求項9】
前記排ガスの圧力をP1、前記燃焼用空気の圧力をP2、前記冷却用空気の圧力をP3とするとき、P1<P2<P3に設定されている請求項6から8の何れかに記載の廃棄物処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物を用いた生物処理等で生じる有機性汚泥は、固液分離され任意の含水率に調整された後に焼却炉や溶融炉、シャフト炉等の熱処理炉を備えた廃棄物処理設備で焼却或いは溶融処理されている。このような熱処理炉で生じる排ガスの保有熱で熱処理炉に供給する燃焼用空気を予熱するため、熱処理炉の煙道には熱交換器が配置されている。
【0003】
図12(a)には、このような用途に用いられる従来の熱交換器が示されている。受熱側流体となる燃焼用空気の流入部101及び流出部102を備えた筒状ケーシング100と、筒状ケーシング100の上端側及び下端側にそれぞれ溶着された上部管板103及び下部管板104と、上部管板103及び下部管板104に溶着支持されるとともに筒状ケーシング100に縦姿勢で配置され、放熱側流体である排ガスが流れる複数の伝熱管105とを備えたシェルアンドチューブ式の熱交換器である。
【0004】
複数の伝熱管を束ねて支持する上下の管板103,104は、伝熱管105の荷重や高温の排ガスに起因する伝熱管105の熱膨張によって生じる反力を受ける重要な強度部材であり、特に伝熱管105の膨張によって管板103,104が歪み、破損すると、熱交換器の気密性が損なわれ、設備の安定稼働が妨げられる虞があった。特に、省エネルギー化を図るべく受熱側流体である燃焼用空気の出口温度を高く設定する場合には、放熱側流体である排ガスの入口温度も極力高いことが望ましく、管板103,104等の構造部材の熱負荷による損傷リスクが高くなる虞があった。
【0005】
そこで、図12(b)に示すように、特許文献1には、焼却炉等の熱源装置の高温排ガスを導入する排ガス導入室201と、外筒200内に形成されると共に上記高温排ガスと予熱空気を熱交換する熱交換室202と、熱交換された低温排ガスを排出する排ガス排出室203から成り、上記排ガス導入室201と熱交換室202を隔てる高温側管板204と、上記熱交換室202と排ガス排出室203を隔てる低温側管板205と、上下端部が上記高温側管板204と低温側管板205にそれぞれ接続されて、上記排ガス導入室201および上記排ガス排出室203に連通する複数の伝熱管206と、上記高温側管板204の上記熱交換室202側に設置される副室207と、該副室207に予熱用空気を導入する予熱空気導入口208と、上記副室207から上記熱交換室202に延設されて、上記予熱用空気を該熱交換室202の下方に流出せしめるリターンパイプ209と、上記熱交換室202から予熱用空気を排出して上記熱源装置に供給する予熱空気排出口210と、から構成される多管式熱交換器が提案されている。
【0006】
また、図12(c)に示すように、特許文献2には、被加熱流体の流入口301と流出口302とを設けてある外筒部300と、熱源流体が流入する流入ヘッダ303と、熱源流体が流出する流出ヘッダ304と、前記流入ヘッダ303と前記流出ヘッダ304とを連通接続する複数の伝熱管305とを備え、前記外筒部300の一端側に、高温側管板部306を介して、前記流入ヘッダ303を接続するとともに、前記外筒部300の他端側に、低温側管板部307を介して、前記流出ヘッダ304を接続して、前記伝熱管305を前記外筒部300の内側に挿通し、前記高温側管板部306に、前記外筒部300側の第1管板310と前記流入ヘッダ303側の第2管板311とを設けて、前記第1管板310と前記第2管板311との間に、管板冷却用流体が通流可能な冷却用空間312を形成してある多管式熱交換器が提案されている。
【0007】
当該多管式熱交換器は、前記冷却用空間312と前記外筒部300の内部とを連通する貫通孔313を前記第1管板310の略中央に設けて、圧力差を利用して、前記被加熱流体を前記管板冷却用流体として前記貫通孔313から前記冷却用空間に取り入れるとともに、前記冷却用空間312を通流させることで、前記高温側管板部を冷却可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−144999号公報
【特許文献2】特許第4194595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1,2に開示された多管式熱交換器は何れも放熱側流体の入口側の管板を二重管板に構成し、二重管板で囲まれた領域に冷却空気を供給して管板を冷却する構成で、専用の送風ファンを用いて外部から冷却用空気を供給する構成(図12(b)参照)、または受熱側空気の一部を分岐して内部から冷却用空気を供給する構成(図12(c)参照)が採用されている。
【0010】
上述した従来のシェルアンドチューブ式の熱交換器によれば、上部管板の熱負荷が低減されるようになるため、高温の排ガスを熱源として用いることができるが、伝熱管が配列される中心部にリターンパイプ209(図12(b)参照)や貫通孔313(図12(c)参照)が設けられるため、伝熱管1本分の伝熱面積が減少していた。
【0011】
また、伝熱管の両端が上下の管板に溶着されていたため、伝熱管が熱膨張することにより管板が曲げ応力を受ける構造に変わりなく、破損を招く虞が解消されるものではなかった。
【0012】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、伝熱管の熱膨張により管板にかかる反力を低減することができ、さらには伝熱面積が減少することなく管板を効率的に冷却できる熱交換器を備えた廃棄物処理設備を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明による廃棄物処理設備の第一特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、熱処理炉と、当該熱処理炉の煙道に設置され排ガスの保有熱により前記熱処理炉の燃焼用空気を予熱する熱交換器と、を備えている廃棄物処理設備であって、前記熱交換器は、燃焼用空気の流入部及び流出部を備えたケーシングと、前記ケーシングの上端側及び下端側にそれぞれ固着された上部管板及び下部管板と、前記上部管板及び前記下部管板に支持されるとともに前記ケーシングに配置され排ガスが流れる複数の伝熱管と、を備えて構成され、前記伝熱管の一端部は前記上部管板または前記下部管板の何れか一方に固着されたガイド管と摺動するとともに、前記伝熱管の他端部は前記上部管板または前記下部管板の何れか他方に固着支持された熱交換器を備えている点にある。
【0014】
上部管板または下部管板の何れか一方にガイド管が固着され、伝熱管の一端部が当該ガイド管との間で摺動可能に配置され、伝熱管の他端部が他方の管板に固着支持される。管板に固着支持された伝熱管が熱応力によって管軸方向に膨張する場合でも、ガイド管に対して伝熱管が摺動して、上部管板及び下部管板の何れにも直接的に大きな反力が作用することがないので、両管板に大きな歪みが発生することがない。従って、管板等の構造部材の熱的ストレスによる損傷リスクを低減しながらも、排熱の回収効率を上げて省エネルギー化を図ることができる廃棄物処理設備が得られる。
【0015】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記ガイド管は前記伝熱管を内挿または外挿可能なように構成されている点にある。
【0016】
伝熱管がガイド管に内挿されると、ガイド管の内周壁に沿って伝熱管の外周壁が摺動し、伝熱管がガイド管に外挿されると、ガイド管の外周壁に沿って伝熱管の内周壁が摺動し、何れの構成であっても伝熱管の管軸方向への膨張に対して上部管板及び下部管板の何れにも直接的に大きな反力が作用することがない。
【0017】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記ケーシングは略鉛直の筒状であり、前記伝熱管が当該ケーシングの軸線方向に配置されている点にある。
【0018】
伝熱管がケーシングの軸線方向つまり略鉛直方向に配置されているため、伝熱管が自重によって軸線と交差する方向に撓むようなことがなく、その結果ガイド管と伝熱管との接触部が偏ることなく略均等に摺動するようになる。
【0019】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記ガイド管は前記上部管板または前記下部管板のうち排ガスの流入側の管板に設けられている点にある。
【0020】
放熱側流体となる高温の排ガスの流入側の管板にはそれだけ大きな熱負荷が掛かる。そのような管板に伝熱管が摺動可能なガイド管が設けられているので、伝熱管の熱膨張に起因する熱負荷が当該管板に直接作用することがなくなるので、破損の虞が大幅に低減されるようになる。
【0021】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記ガイド管は前記上部管板または前記下部管板のうち排ガスの流出側の管板に設けられ、前記燃焼用空気の流入部は排ガスの流入側に設けられている点にある。
【0022】
排ガスの流出側の管板にガイド管を設ける場合でも、熱膨張する伝熱管がガイド管に対して摺動するので、伝熱管の熱膨張に起因する熱負荷が排ガスの流入側の管板に直接作用することがなくなる。しかも、排ガスの流入側に設けられた流入部から流入した熱交換前の低温の燃焼用空気によって、高温の排ガスの流入側の管板も効果的に冷却されるようになる。
【0023】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記上部管板または前記下部管板のうち排ガスの流入側の管板に対向して前記ケーシングの内側に、当該ケーシングまたは伝熱管に対して間隙が形成されるように仕切管板が配置され、当該管板と前記仕切管板との間に冷却用空気が供給される冷却空間が形成されている点にある。
【0024】
排ガスの流入側の管板と当該管板に対向して配置された仕切管板との間の空間が冷却用空間となり、当該冷却用空間に供給された冷却用空気によって排ガスの流入側の管板が効果的に冷却されるようになる。そして、冷却用空気は筒状ケーシングと仕切管板との間隙または伝熱管と仕切管板との間隙を介して受熱側流体となる燃焼用空気に合流するので、従来のリターンパイプ209(図12(b)参照)や貫通孔313(図12(c)参照)等といった特段の通流部を設けていた空間にも伝熱管を配することができるようになり、伝熱面積を増大することができるようになる。
【0025】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記上部管板または前記下部管板のうち前記ガイド管を備えた管板に対向して前記ケーシングの内側に、当該ケーシングまたは伝熱管に対して間隙が形成されるように仕切管板が配置され、当該管板と前記仕切管板との間に冷却用空気が供給される冷却空間が形成されている点にある。
【0026】
ガイド管を備えた管板と当該管板に対向して配置された仕切管板との間の空間が冷却用空間となり、当該冷却用空間に供給された冷却用空気によって排ガスの流入側の管板が効果的に冷却されるようになる。そして、冷却用空気は筒状ケーシングと仕切管板との間隙または伝熱管と仕切管板との間隙を介して受熱側流体となる燃焼用空気に合流し、或いはガイド管を介して伝熱管に流入するので、従来のリターンパイプ209(図12(b)参照)や貫通孔313(図12(c)参照)等といった特段の通流部を設けていた空間にも伝熱管を配することができるようになり、伝熱面積を増大することができるようになる。
【0027】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第六または第七の特徴構成に加えて、前記仕切管板は前記ケーシングの内壁または前記伝熱管の何れか一方にのみ固着され、前記冷却空間に供給された冷却用空気が前記ケーシングの内壁または前記伝熱管の何れか他方と前記仕切管板との間隙から流出するように構成されている点にある。
【0028】
筒状ケーシングに対して間隙を隔てて仕切管板を配置する場合には、伝熱管に仕切り板を固着することができ、その場合には熱膨張によって伸びる伝熱管とともに筒状ケーシングに対して相対移動することになり仕切管板が異常に歪むようなこともない。また、伝熱管に対して間隙を隔てて仕切管板を配置する場合には、筒状ケーシングに仕切り板を固着することができ、その場合には熱膨張によって伸びる伝熱管に対して相対移動することになり仕切管板が異常に歪むようなこともない。
【0029】
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第六から第八の何れかの特徴構成に加えて、前記排ガスの圧力をP1、前記燃焼用空気の圧力をP2、前記冷却用空気の圧力をP3とするとき、P1<P2<P3に設定されている点にある。
【0030】
排ガスの圧力P1と燃焼用空気の圧力P2と冷却用空気の圧力P3との間に、少なくともP1<P2<P3の関係が成立すれば、冷却用空間に供給された冷却用空気が滞留することなく、筒状ケーシングと仕切管板との間隙または伝熱管と仕切管板との間隙を介して受熱側流体となる燃焼用空気に合流し、或いは摺動部を構成するガイド管を介して伝熱管に確実に流入するようになり、小量の冷却用空気であっても十分な冷却効果が得られるようになる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明によれば、伝熱管の熱膨張により管板にかかる反力を低減することができ、さらには伝熱面積が減少することなく管板を効率的に冷却できる熱交換器を備えた廃棄物処理設備を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】(a)は本発明の熱交換器の縦断面図、(b)は図1(a)のB−B線で断面図
図2】本発明による熱交換器が組み込まれた廃棄物処理設備の説明図
図3】下部支持、伝熱管内挿の向流熱交換器の実施例の説明図
図4】下部支持、伝熱管外挿の向流熱交換器の実施例の説明図
図5】下部支持、向流熱交換器の実施例の説明図
図6】上部支持、向流熱交換器の実施例の説明図
図7】上部支持、並流熱交換器の実施例の説明図
図8】冷却空間を持たない熱交換器の別実施例で(a)は下部支持、向流熱交換器の説明図で(b)は上部支持、並流熱交換器の説明図
図9】冷却空間を持たない熱交換器の別実施例で(a)は下部支持、並流熱交換器の説明図で(b)は上部支持、向流熱交換器の説明図
図10】冷却空間を持たない熱交換器の別実施例で(a)は下部支持、向流熱交換器の説明図で(b)は上部支持、向流熱交換器の説明図
図11】別実施形態を示し、本発明による熱交換器が組み込まれた廃棄物処理設備の説明図
図12】従来の熱交換器の説明図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明による熱交換器及び廃棄物処理設備の実施形態を説明する。
図2には、汚泥等の廃棄物を焼却処理する廃棄物処理設備1が示されている。廃棄物処理炉の一例である流動床式焼却炉2と、流動床式焼却炉2で生じた排ガスの保有熱により燃焼用空気を予熱する熱交換器3と、煙道に沿って配置された集塵機9や排煙処理塔10等の排ガス処理設備と、処理後の排ガスを排気する煙突12等を備えている。排煙処理塔10の下流側には炉内を負圧に維持する誘引送風機11が設けられ、誘引送風機11によって誘引された排ガスが煙突12から排気される。
【0034】
流動床式焼却炉2は、空気供給機構Aとなる押込み送風機6から供給される高温空気によって形成される流動床で、炉内に投入された汚泥を加熱し、ガス化された汚泥をフリーボード部で燃焼させる処理炉である。
【0035】
押込み送風機6から供給された燃焼用空気が、熱交換器3で800〜1000℃の排ガスと熱交換されて500〜750℃に予熱された後に、流動床式焼却炉2に供給されて流動床が形成される。
【0036】
熱交換器3で燃焼用空気を高温化するために、より高温の排ガスを導入すると、熱交換器3に極めて大きな熱負荷がかかるという問題がある。本発明による廃棄物処理設備は、この様な熱負荷に対する対策が施された熱交換器3が組み込まれている。
【0037】
図1(a),(b)には本発明による熱交換器3の断面が示されている。熱交換器3は、燃焼用空気流入部50及び燃焼用空気流出部43を備えた断面円形の筒状ケーシング39と、筒状ケーシング39の上端側及び下端側にそれぞれ固着、具体的には溶着(以下の説明でも、「溶着」と表現する)された上部管板34及び下部管板35と、上部管板34及び下部管板35に支持されるとともに筒状ケーシング39に縦姿勢、具体的には鉛直姿勢で配置され排ガスCが流れる複数の伝熱管36とを備えている。
【0038】
伝熱管36の上端部は上部管板34に溶着されたガイド管37に内挿された摺動部38を有するとともに、伝熱管36の他端部は下部管板35に溶着支持されている。
【0039】
筒状ケーシング39の上端側には伝熱管36に排ガスCを流入する排ガス流入ヘッダ部48が設けられ、下端側には伝熱管36を通った排ガスCを集めて流出する排ガス流出ヘッダ部47が設けられている。
【0040】
筒状ケーシング39の内側は、伝熱管36の長手方向に沿って互い違いに複数枚のバッフルプレート40が配設されている。通風路であるジャケット部33に設けられた燃焼用空気流入路31から流入した燃焼用空気Dは、バッフルプレート40に沿って蛇行しながら上昇し、燃焼用空気流出部32へ流出する。すなわち、この蛇行流路が空気流路41を形成している。
【0041】
排ガス流入ヘッダ部48から流入した排ガスCは、摺動部38を経て伝熱管36を流下し、流出ヘッダ部47に流出する。筒状ケーシング39の下部に形成されたジャケット部33の燃焼用空気流入部31から流入した燃焼用空気Dは、空気流路41を流れて筒状ケーシング39の上部に配置されたジャケット部33の燃焼用空気流出部32から流出する。伝熱管36を流下する放熱側流体である排ガスと、空気流路41を上昇する受熱側流体である燃焼用空気との間で熱交換が行なわれる向流方式の熱交換器3が構成されている。
【0042】
上部管板34に対向して間隔を空けて仕切管板49が配置され、上部管板34と仕切管板49との間に冷却空間44が形成されている。冷却空間44に備えた開口部42から燃焼用空気Dが供給され、熱交換前の高温の排ガスで加熱される上部管板34及び上部管板34の近傍が冷却されるように構成されている。
【0043】
本実施形態では、熱交換器3は全長約12m、直径約2mの筒状ケーシング39の中に直径約70mmの伝熱管36が120本収納されている。伝熱管36は軸心方向約10mの長さに形成され、熱膨張時には約100mm前後の伸張が許容される。
【0044】
図3に基づいて、摺動部38及び冷却機構について詳述する。
上部管板34には伝熱管36の挿通位置と対応する位置に複数の開孔が形成され、各開孔に短尺のガイド管37が挿通され、ガイド管37の周部が上部管板34の各開孔で溶着固定されている。
【0045】
下部管板35に下端側が溶着固定された伝熱管36の上端側がガイド管37に内挿されて摺動部38が構成されている。伝熱管36に排ガスが流入して加熱され、軸心方向に伝熱管36が伸長すると、伝熱管36の上端側がガイド管37に沿って上方に伸長するため、上部管板34及び下部管板35が伝熱管36の熱膨張による反力を受けることがなく、従って上部管板34及び下部管板35に発生する歪みが軽減される。図3には、熱により膨張(伸長)した伝熱管36が破線で示されている。
【0046】
ガイド管37は、伝熱管36が常温状態の収縮時であっても加熱状態の伸張時であっても、伝熱管36が内挿された状態が保持できるような長さに形成されていればよい。また、ガイド管37の内径は伝熱管36の外径と略同サイズか、僅かに大きなサイズに形成され、伝熱管36の伸張時にガイド管37の内周部と摺動して伸長できるようなサイズに形成されていればよい。
【0047】
上部管板34との間で冷却空間44を形成する仕切管板49には各伝熱管36を挿通する複数の開孔が形成され、各開孔と各伝熱管36とが互いに溶着されている。また、仕切管板49の外周部は筒状ケーシング39と溶着されることなく非常に僅かな隙間が形成された状態で開放されている。
【0048】
従って、各伝熱管36に排ガスが流下して昇温し、伝熱管36が熱膨張して軸心方向に伸びると、伝熱管36の熱膨張に伴って仕切管板49が伝熱管36と一体で筒状ケーシング39に対して相対移動するように構成されている。従って、伝熱管36の熱膨張に伴って仕切管板49に反力が生じることもない。
【0049】
図1に示すように、燃焼用空気供給用のジャケット部33に冷却用空気供給用のジャケットが連接形成されている。冷却用空気供給用のジャケットに形成された冷却用空気流入部30から供給された冷却用空気が筒状ケーシング39の上端側に形成された開口部42から冷却空間44に供給され、上部管板34及びその周辺が冷却され、以て上部管板34に掛かる熱負荷を軽減するように構成されている。
【0050】
つまり、上部管板34と仕切管板49とで仕切られる冷却空間44及び冷却用空気供給用のジャケットによって冷却機構が構成されている。
【0051】
冷却空間44に供給された冷却用空気は、上部管板34を冷却した後に、仕切管板49の外周部と筒状ケーシング39との間に形成された微小な隙間を通って空気流路41を流れる燃焼用空気に混入して流出し、或いは摺動部38を構成するガイド管37と伝熱管36との間の微小な隙間を通って排ガス側に流出する。冷却用空間44に供給される冷却用空気の流量は相対的に微量であるため、熱交換前の排ガスに混入しても排ガスの温度低下を引き起こすようなことはない。
【0052】
図4には、摺動部38及び冷却機構の他の例が示されている。
図3と同様に、上部管板34には伝熱管36の挿通位置と対応する位置に複数の開孔が形成され、各開孔に短尺のガイド管37が挿通され、ガイド管37の周部が上部管板34の各開孔で溶着固定されている。以下、図3と相違する点を詳述する。
【0053】
下部管板35に下端側が溶着固定された伝熱管36の上端側がガイド管37に外挿されて摺動部38が構成されている。伝熱管36に排ガスが流入して加熱され、軸心方向に伝熱管36が伸長すると、伝熱管36の上端側がガイド管37に沿って上方に伸長するため、上部管板34及び下部管板35が伝熱管36の熱膨張による反力を受けることがなく、従って図3と同様に、上部管板34及び下部管板35に発生する歪みが軽減される。
【0054】
ガイド管37は、伝熱管36が常温状態の収縮時であっても加熱状態の伸張時であっても、伝熱管36が外挿された状態が保持できるような長さに形成されていればよい。また、ガイド管37の外径は伝熱管36の内径と略同サイズか、僅かに小さなサイズに形成され、伝熱管36の伸張時にガイド管37の外周部と摺動して伸長できるようなサイズに形成されていればよい。図4には、熱により膨張(伸長)した伝熱管36が破線で示されている。
【0055】
図5には、摺動部38及び冷却機構のさらに他の例が示されている。
図3と同様に、上部管板34には伝熱管36の挿通位置と対応する位置に複数の開孔が形成され、各開孔に短尺のガイド管37が挿通され、ガイド管37の周部が上部管板34の各開孔で溶着固定されている。以下、図3と相違する点を詳述する。
【0056】
上部管板34との間で冷却空間44を形成する仕切管板49には各伝熱管36を挿通する複数の開孔が形成され、各開孔と各伝熱管36とが互いに僅かな隙間を隔てて開放されている。また、仕切管板49の外周部は筒状ケーシング39の内周部に溶着されている。
【0057】
従って、各伝熱管36に排ガスが流下して昇温し、伝熱管36が熱膨張して軸心方向に伸びると、伝熱管36の熱膨張に伴って仕切管板49と伝熱管36とが相対移動するように構成されている。従って、伝熱管36の熱膨張に伴って仕切管板49に反力が生じることもない。図5には、熱により膨張(伸長)した伝熱管36が破線で示されている。
【0058】
図6には、摺動部38及び冷却機構のさらに他の例が示されている。
下部管板35には伝熱管36の挿通位置と対応する位置に複数の開孔が形成され、各開孔に短尺のガイド管37が挿通され、ガイド管37の周部が下部管板35の各開孔で溶着固定されている。
【0059】
上部管板34に下端側が溶着固定された伝熱管36の下端側がガイド管37に内挿されて摺動部38が構成されている。伝熱管36に排ガスが流入して加熱され、軸方向に伝熱管36が伸長すると、伝熱管36の下端側がガイド管37に沿って下方に伸長するため、下部管板35及び上部管板34が伝熱管36の熱膨張による反力を受けることがなく、従って下部管板35及び上部管板34に発生する歪みが軽減される。
【0060】
伝熱管36の上端側を上部管板34で吊り下げ支持する構成であるため、伝熱管36が熱膨張により下方に伸長するのを許容すればよく、摺動部38で伝熱管36を安定した姿勢で支持できるようになる。この点で、下方で持ち上げ支持する図3から図5の態様と比較して有利となる。
【0061】
以上、向流の熱交換器を説明したが、本発明による熱交換器は向流に限るものではなく、並流で実現することもできる。
【0062】
図7には並流の熱交換器3の例が示されている。
排ガスCが下方から流入して上方に向かって流れ、燃焼用空気Dも熱交換器3の下部から流入して熱交換器3の上部へ蛇行しながら流れて熱交換を行うように構成されている。並流の熱交換器3の場合には冷却機構を用いた冷却用空気による冷却に加えて、燃焼用空気Dによる冷却効果も表れるので、高温の下部管板35を効果的に冷却することができるようになる。
【0063】
以上説明した各態様を適時組み合わせて熱交換器を構成することも可能である。即ち、熱交換器は、燃焼用空気の流入部及び流出部を備えた筒状ケーシングと、筒状ケーシングの上端側及び下端側にそれぞれ固着された上部管板及び下部管板と、上部管板及び下部管板に支持されるとともに筒状ケーシングに縦姿勢で配置され排ガスが流れる複数の伝熱管と、を備えて構成され、伝熱管の一端部は上部管板または下部管板の何れか一方に固着されたガイド管に内挿または外挿可能な摺動部で支持されるとともに、伝熱管の他端部は上部管板または下部管板の何れか他方に固着支持されている。
【0064】
そして、上部管板または下部管板のうち排ガスの流入側の管板に対向して筒状ケーシングの内側に、当該筒状ケーシングまたは伝熱管に対して間隙が形成されるように仕切管板が配置され、当該管板と仕切管板との間に冷却用空気が供給される冷却空間が形成されていることが好ましい。
【0065】
また、上部管板または下部管板のうち摺動部を備えた管板に対向して筒状ケーシングの内側に、当該筒状ケーシングまたは伝熱管に対して間隙が形成されるように仕切管板が配置され、当該管板と仕切管板との間に冷却用空気が供給される冷却空間が形成されていることが好ましい。
【0066】
排ガスの圧力をP1、燃焼用空気の圧力をP2、冷却用空気の圧力をP3とするとき、P1<P2<P3に設定されていることが好ましい。排ガスの圧力P1と燃焼用空気の圧力P2と冷却用空気の圧力P3との間に、少なくともP1<P2<P3の関係が成立すれば、冷却用空間に供給された冷却用空気が滞留することなく、筒状ケーシングと仕切管板との間隙または伝熱管と仕切管板との間隙を介して受熱側流体となる燃焼用空気に合流し、或いは摺動部を構成するガイド管を介して伝熱管に確実に流入するようになり、小量の冷却用空気であっても十分な冷却効果が得られるようになる。
【0067】
尚、少なくとも冷却空間44に供給された冷却用空気が燃焼用空気側または排ガス側に混入して流れるような圧力関係に設定しておけばよく、必ずしもP1<P2<P3の関係が成立する必要があるわけではない。
【0068】
このように、冷却空間44に供給された冷却用空気を流すための特段の流路を仕切管板49の中央部に形成する必要が無いので、筒状ケーシング39の内部に伝熱管36を密に配置することができ、熱交換効率が高くしかも高温域に迄燃焼用空気を予熱できる熱交換器3を実現できるようになる。
【0069】
上述した実施形態は、図11に示した煙道上流側の熱交換器3及び下流側の熱交換5の何れにも同様の構成を採用することができる。
【0070】
さらに本発明の熱交換器の別実施形態を説明する。上述した実施形態では高温の管板側に冷却機構を設けた実施形態を示したが、冷却機構を備えていなくてもよい。すなわち、伝熱管36の一端部は上部管板34または下部管板35の何れか一方に固着されたガイド管37に内挿または外挿可能な摺動部38で支持されるとともに、伝熱管36の他端部は上部管板34または下部管板35の何れか他方に固着支持されていればよい。
【0071】
例えば、図8(a)に示すように、上部管板34に摺動部38が設けられ、排ガスCが上部管板34側から流入し、下部管板35側から燃焼用空気Dが流入する向流の熱交換器であってもよい。向流のため、排ガスC、燃焼用空気Dともに出入口の温度差が大きく、上部管板34には大きな熱負荷がかかるため、摺動部38を上部管板34側に配置する。また、図8(b)に示すように、下部管板35に摺動部38が設けられ、排ガスCが上部管板34側から流入し、上部管板34側から燃焼用空気Dが流入する並流の熱交換器3であってもよい。高温側排ガスCが流入する上部管板34は伝熱管36と溶着されているが、低温側燃焼空気Dを流入させることで上部管板34の熱負荷が緩和される。
【0072】
摺動部38が設けられているので、熱膨張する伝熱管36がガイド管37に対して摺動し、伝熱管36の熱膨張に起因する反力が各管板に直接作用することがなくなる。
【0073】
また、図9(a)に示すように、上部管板34に摺動部38が設けられ、排ガスCが下部管板35側から流入し、下部管板35側から燃焼用空気Dが流入する並流の熱交換器3であってもよい。高温側排ガスCが流入する下部管板35は伝熱管36と溶着されているが、低温側燃焼空気Dを流入させることで下部管板35の熱負荷が緩和される。また、図9(b)に示すように、下部管板35に摺動部38が設けられ、排ガスCが下部管板35側から流入し、上部管板34側から燃焼用空気Dが流入する向流の熱交換器3であってもよい。向流のため排ガスC、燃焼用空気Dともに出入口の温度差が大きく、下部管板35には大きな熱負荷がかかるため、摺動部38を下部管板35側に配置する。摺動部38により各管板に伝熱管36の熱膨張による反力が直接作用することもないという効果は上記別実施形態と同様である。
【0074】
さらに、図10(a)に示すように、上部管板34に摺動部38が設けられ、排ガスCが下部管板35側から流入し、上部管板34側から燃焼用空気Dが流入する向流の熱交換器3であってもよい。また、図10(b)に示すように、下部管板35に摺動部38が設けられ、排ガスCが上部管板34側から流入し、下部管板35側から燃焼用空気Dが流入する向流の熱交換器3であってもよい。
【0075】
但し、高温排ガスCの入口側であることと、高温側燃焼用空気Dの出口側であることから、図10(a)に示すような実施形態では下部管板35に、図10(b)に示すような実施形態では上部管板34に大きな熱負荷がかかる。そこで、このような実施形態の場合には、大きな熱負荷がかかる管板側に冷却機構を備えた方が好ましい。
【0076】
すなわち、本願発明の冷却機構が上部管板34または下部管板35のうち排ガスCの流入側の管板に対向して筒状ケーシング39の内側に、筒状ケーシング39または伝熱管36に対して間隙が形成されるように仕切管板が配置され、当該管板と仕切管板との間に冷却用空気が供給される冷却空間を形成されていればよい。
【0077】
以上のような構成の廃棄物処理設備によれば、管板等の構造部材の熱負荷による損傷リスクを低減しながらも、排熱の回収効率を上げて省エネルギー化を図ることができるようになる。上記実施例では伝熱管36等は溶着による固着を行っていたが必ずしも溶着に限らず固定支持する構成になっていればよい。また、伝熱管36は完全な鉛直姿勢でなくても多少垂直方向に対して傾きを持っていてもよい。
【0078】
図11には、上述した何れかの構造を採用した熱交換器が組み込まれた廃棄物処理設備1の他の例が示されている。廃棄物処理設備1は、汚泥が貯留された汚泥貯留槽20と、汚泥投入機構21と、流動床式焼却炉2と、排ガス処理設備等を備えている。
【0079】
流動床式焼却炉2は、空気供給機構Aから供給される高温空気によって形成される流動床に汚泥投入機構21から供給される汚泥を投入して加熱し、ガス化された汚泥をフリーボード部で燃焼させる処理炉である。符号14aは、立上げ時に炉内を加熱する昇温バーナで、炉が昇温した後には符号14bの補助バーナで燃焼に必要な熱量を補って操炉される。
【0080】
流動床式焼却炉2の煙道に沿って、排ガスの保有熱により燃焼用空気を予熱する二つの熱交換器3,5、煤塵を捕集する集塵装置9、アルカリ剤を噴霧して排ガス中の酸性ガス成分を中和する排煙処理塔10等が順に配置されている。
【0081】
排煙処理塔10の下流側には炉内を負圧に維持する誘引送風機11が設けられ、誘引送風機11によって誘引された排ガスが煙突12から排気される。
【0082】
空気供給機構Aは、押込み送風機6と、タービン4a及びコンプレッサ4bを備えた過給機4と、熱交換器3,5とを備えて構成されている。押込み送風機6により予備圧縮された燃焼用空気がコンプレッサ4bの給気口に供給され、コンプレッサ4bで圧縮された空気が下流側の熱交換器5で予熱された後にタービン4aに供給され、タービン4aから排気された圧縮空気がさらに上流側の熱交換器3で予熱された後に流動床式焼却炉2に供給される。
【0083】
コンプレッサ4bで圧縮された空気は、熱交換器5で700〜1000℃の排ガスと熱交換されて500〜750℃に予熱された後にタービン4aに供給される。
【0084】
熱交換器5で予熱された圧縮空気がタービン4aに供給されることによってタービン4aが回転駆動され、さらに駆動軸と連結されたコンプレッサ4bが駆動されるようになる。タービン4aから排出された400〜650℃の圧縮空気はさらに熱交換器3で500〜700℃に予熱された後に、流動用空気つまり燃焼用空気として流動床式焼却炉2に供給されて流動床が形成される。
【0085】
タービン4aから排出された高温の燃焼用空気が熱交換器3でさらに加熱されて流動床式焼却炉に供給されるので、補助バーナ14bで燃焼される化石燃料の使用量が低減されるようになる。被燃焼物が有機性汚泥であれば、化石燃料を用いることなく自燃できるようになる。
【0086】
燃焼用空気を高温化するためにより高温の排ガスを導入すると、熱交換器3,5に極めて大きな熱負荷がかかるようになる。特に熱交換器3ではそれが顕著である。そのような熱交換器3,5として、上述した構造を備えた熱交換器を好適に用いることができるようになり、管板等の構造部材の熱的ストレスによる損傷リスクを低減しながらも、排熱の回収効率を上げて省エネルギー化を図ることができる廃棄物処理設備が実現できる。
【0087】
上述した実施形態は、熱処理炉として流動床式焼却炉2を採用した場合について説明したが、本発明が適用される焼却炉は流動床式焼却炉2に限らず、流動床式焼却炉2と同様に通気圧損が大きいシャフト炉等の他の形式の工業炉にも適用可能である。例えば、底部にコークスベッドが形成され、当該コークスベッドに燃焼用空気を供給する羽口が形成されたシャフト炉の上方から汚泥を投入して溶融するような熱処理炉やスクラップを投入して溶解するキュポラ等であっても、本発明が適用可能である。
【0088】
上述した実施形態は、何れも本発明の一例であり、当該記載により本発明が限定されるものではなく、それぞれの実施形態を適宜組み合わせてもよい。また、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0089】
1:廃棄物処理設備
2:流動床式焼却炉
3,5:熱交換器
4:過給機
4a:タービン
4b:コンプレッサ
6:押込み送風機
9:集塵装置
10:排煙処理塔
11:誘引送風機
12:煙突
14a:昇温バーナ
14b:補助バーナ
20:汚泥貯留槽
21:汚泥投入機構
30,31:燃焼用空気流入部
32:燃焼用空気流出部
33:ジャケット部
34:上部管板
35:下部管板
36:伝熱管
37:ガイド管
38:摺動部
39:筒状ケーシング
40:バッフルプレート
41:空気流路
42:冷却空気流入部
43:燃焼用空気流出部
44:冷却空間
45:排ガス流入口
46:排ガス流出口
47:流入ヘッダ部
48:流出ヘッダ部
49:仕切管板
50:燃焼用空気流入部
A:空気供給機構
C:排ガス
D:燃焼用空気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12