特開2017-211347(P2017-211347A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-211347放射能表面汚染密度測定装置および該測定装置による放射能表面汚染密度測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-211347(P2017-211347A)
(43)【公開日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】放射能表面汚染密度測定装置および該測定装置による放射能表面汚染密度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/169 20060101AFI20171102BHJP
【FI】
   G01T1/169 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-106612(P2016-106612)
(22)【出願日】2016年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000230940
【氏名又は名称】日本原子力発電株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592031318
【氏名又は名称】富士古河E&C株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】近江 正
(72)【発明者】
【氏名】中島 定雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 浩
(72)【発明者】
【氏名】中田 正宏
(72)【発明者】
【氏名】及川 志郎
(72)【発明者】
【氏名】竹山 信一
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA10
2G188AA15
2G188DD23
2G188DD24
2G188EE27
2G188EE37
2G188GG02
2G188GG04
2G188GG06
(57)【要約】
【課題】簡便な装置構成で検査対象物の様々な形状、大きさに対応してより精度良く且つ効率的に放射能表面汚染の検査ができる放射能汚染表面密度測定装置と測定方法の提供。
【解決手段】放射線検出器と形状測定用スキャナと被検物に対して予め定められた経路に沿って該放射線検出器を移動させる移動機構とを搭載した駆動部を被検物に近接移動させる駆動装置と、各検出器と駆動装置を駆動制御する制御部とを備え、制御部は、形状測定用スキャナの測定信号に基づいて被検物の3Dモデルを作成し、その表面形状に対する放射線検出器による放射線測定位置を演算して求め、該演算結果から前記経路を決定する測定経路演算処理装置と、前記経路に沿って測定された放射線検出器からの放射線測定信号を演算処理して被検物の放射能汚染表面密度を求める放射能演算処理装置と、少なくとも前記3Dモデルと各測定結果及び演算結果を表示するモニタ装置とを有するものとした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物の放射線を測定する放射線検出器と、
前記被検物の表面形状を計測する非接触式の形状測定用スキャナと、
前記放射線検出器を支持し、前記被検物の表面に対して予め定められた経路に沿って該放射線検出器を移動させる移動機構と、
前記経路を決定し、前記移動機構を駆動制御する制御部と、を備えた放射能表面汚染密度測定装置であって、
前記制御部は、
前記形状測定用スキャナからの測定信号に基づいて前記被検物に対応する3Dモデルを作成し、その表面形状に対する前記放射線検出器による放射線測定位置を演算して求め、該演算結果から前記経路を決定する測定経路演算処理装置と、
前記移動機構によって前記経路に沿って移動しながら測定された放射線検出器からの放射線測定信号を演算処理して被検物の放射能表面汚染密度を求める放射能演算処理装置と、
少なくとも前記3Dモデルと前記放射線検出器による測定結果および前記放射能演算処理装置による演算結果を表示するモニタ装置と、を有するものであり、
前記放射線検出器及び前記移動機構と前記形状測定用スキャナとを搭載した駆動部を前記制御部による駆動制御で前記被検物に対して近接可能に移動させる駆動装置をさらに備えていることを特徴とする放射能表面汚染密度測定装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、前記駆動部に少なくともその移動方向の領域を撮影する撮影装置を更に備え、
前記制御部は、前記モニタ装置に表示される前記撮影装置からの映像に基づいて前記駆動部を遠隔操作により前記被検物に対して近接方向へ移動させる遠隔操作機構を有することを特徴とする請求項1に記載の放射能表面汚染密度測定装置。
【請求項3】
前記駆動装置は、前記駆動部として搭載された駆動源によって走行する自走式台車を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射能表面汚染密度測定装置。
【請求項4】
前記駆動装置は、前記駆動部として前記被検物が存在する室内の天井面に沿って移動するトロリーを備えたクレーン装置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射能表面汚染密度測定装置。
【請求項5】
前記測定経路演算処理装置は、前記放射線検出器を被検物の表面に対して最大検出効率となる間隔で正対させた状態を維持させながら前記被検物表面に沿って移動させる経路および向きを演算して求めるものであることを特徴とする請求項1に記載の放射能表面汚染密度測定装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記経路上の各測定位置とその各測定位置での前記放射線検出器による測定結果に基づいて予め定められた様式の測定記録表を作成し、該測定記録表を前記モニタ装置にて表示可能および印刷装置へ出力可能に保存する測定記録表作成部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の放射能表面汚染密度測定装置。
【請求項7】
前記請求項1に記載の放射能表面汚染密度測定装置による放射能表面汚染密度測定方法であって、
前記駆動装置の前記放射線検出器及び前記移動機構と前記形状測定用スキャナとを搭載した前記駆動部を被検物に近接移動させる接近工程と、
前記形状測定用スキャナにより被検物の表面形状を測定するスキャナ工程と、
前記スキャナ工程により得られた測定データに基づいて3Dモデルを作成する3Dモデル作成工程と、
前記3Dモデルの表面形状に基づいて、前記放射線検出器の測定時の前記被検物の表面に対する最大検出効率となる間隔および向きと該放射線検出器による複数の放射線測定位置とを求める演算工程と、
前記求められた放射線測定位置の点群から、前記放射線検出器の測定移動時の前記経路を形成する経路決定工程と、
前記移動機構を駆動制御して、前記放射線検出器を前記経路に沿って移動させながら該経路上の各測定位置で放射線測定を行う放射線測定工程と、を備えていることを特徴とする放射能表面汚染密度測定方法。
【請求項8】
前記放射線測定工程での前記経路に沿った前記放射線検出器の移動は、各放射線検出位置で対向する被検物の表面上の点からの法線に前記放射線検出器の検出面の中心軸が重なるように角度が調整され、該検出面を被検物表面に正対させた最大検出効率状態で行うことを特徴とする請求項7に記載の放射能表面汚染密度測定方法。
【請求項9】
前記スキャナ工程は、前記形状測定用スキャナの予め定められた基準点と基準座標とに基づいて前記被検物の表面上の複数の点の3次元座標位置を求め、これら座標データを点群データとして蓄積するものであり、
前記法線の方向は、前記点群データのうちの少なくとも3点のデータから求めることを特徴とする請求項8に記載の放射能表面汚染密度測定方法。
【請求項10】
前記放射線測定工程にて測定された放射線量を予め定められた放射線量レベルごとに色分けし、前記3Dモデルに重ね合わせて前記モニタ装置に表示させる工程をさらに備えていることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の放射能表面汚染密度測定方法。
【請求項11】
被検物毎に、前記経路上の各測定位置とその各測定位置での前記放射線検出器による検出結果とに基づいて、予め定められた様式の測定記録表を作成する測定記録表作成工程をさらに備えていることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の放射能表面汚染密度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な形状、大きさの放射能検査対象物品に対して精度良く正確に且つ効率的に放射能汚染の有無またはその表面汚染密度を検査できる放射能表面汚染密度測定装置および測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所など管理区域から非管理区域へ搬出される物品は、その表面に対して放射線物質の汚染(放射能汚染)の有無が検査される。このような対象物品の検査を行う装置としては、放射線検出器が固定され検査対象物との距離および検出器への放射線入射角がその形状によって変動することから測定効率を保守的に設定せざるを得ない物品搬出モニタや、測定者が手動で検査対象物品の表面形状に沿って検出器を移動させ表面汚染密度を直接測定する表面汚染測定用サーベメータなどが使用されている。
【0003】
物品搬出モニタは、搬送されてくる検査対象物品に対して放射線検出器によってモニタリングを行うモニタ部と、検査対象物品を載せたトレイをモニタ部へ搬入する、またモニタリング後にモニタ部から搬出するコンベア等の搬送機構とを備えている(特許文献1及び2参照)。サーベメータは、検査対象物品に対して測定者が手動で直接測定できるものであり、一般にも広く市販されている。
【0004】
検出器には、電離箱式、シンチレーション式、GM(ガイガーミュラー)式、ガスフロー式、また中性子線専用タイプ等、種々の様式のものがあり、検知しようとする放射線の種類や強さに応じて適宜選択されて使用される。
【0005】
なお、これら放射線検出器によって得られる計数値は、意味のある表面汚染量、例えば単位面積当たりの放射能の強さである放射能表面汚染密度へと過小評価とならないように適切に換算されて評価されるものである。例えば、1分間に検出(カウント)された放射線の個数としての計数量(単位cpm)から、所定の換算式を介して、単位面積当たりにおける1秒間に崩壊する原子の個数としての放射能面密度(単位Bq/cm)へ換算し、これを放射能表面汚染密度として評価できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−64714号公報
【特許文献2】特許第4853725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
放射能汚染の検査対象物品としては、筆記用具、書類等の小さな物品から、工具、各種測定器、さらに大型の配管、機器など、多岐にわたり、その形状、表面積の大きさにおいて多種多様な物品が対象となる。従って、検査装置もこれらの物品の形状に応じる必要がある。
【0008】
しかしながら、物品搬出モニタで測定を行う場合、モニタ部では複数の放射線検出器を設置し、さらに遮蔽壁で囲むという大がかりな設備の構築が必要であった。また、装置に入るサイズまで減容、分割した後にモニタ部へ搬送されるため、測定前準備の段取りに非常に手間がかかるという問題があった。例えば、直径500cmの容器の胴を構成していた大きな板が検査対象物品である場合、この大きな板を作業者が取り扱える20kg程度以下(10cm四方程度)の小片に切断してから測定しなければならないため、切断作業に多大な時間と労力を要していた。このような放射能表面汚染密度測定のための切断作業は、管理区域からの搬出作業のネックとなっていた。
【0009】
さらに、モニタ部での測定においては、放射線検出器が固定されているため、測定方法は簡易であるが、測定装置内に置いた対象物の位置によって検出器と対象物の距離、角度が異なることから検出器の測定効率が変動し、同一物品でも置いた場所によって係数率が変動する。このため、測定効率の設定において、どの位置においても過小評価とならないよう安全側の設定とせざるを得なかった。即ち、放射能表面汚染密度の測定において、保守的に安全側に大きな測定値を算出する設定としている。この結果、本来放射性廃棄物に該当しない物品も保守的に放射性廃棄物として判定され、処理が必要となる或いは管理区域からの搬出が不可となる場合があり、全体として放射性廃棄物処理量が増加するという問題があった。
【0010】
一方、サーベメータは、本来作業環境中の外部放射線モニタリングを行うことを目的とした簡易な測定器であり、放射線検出器は測定者により測定対象物に近接させることが可能であり、放射能表面汚染密度を正確に検出し、通常手元の本体液晶画面に測定結果の瞬時値が表示されるが記録が作成されない機器がほとんどである。しかしながら、この測定器を使用した場合、測定結果は書面記録として残らないため、公的な記録として利用するには、記録の作成および別途立会人による測定値記録の確認が必要となる場合があり、人手と煩雑な手間がかかる非効率的なものであった。
【0011】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、装置構成が簡便でありながら、検査対象物品に対してその様々な形状、大きさに対応してより精度良く且つ効率的に放射能表面汚染の有無を検査できる放射能表面汚染密度測定装置および該測定装置による放射能表面汚染密度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る放射能表面汚染密度測定装置は、被検物の放射線を測定する放射線検出器と、
前記被検物の表面形状を計測する非接触式の形状測定用スキャナと、
前記放射線検出器を支持し、前記被検物の表面に対して予め定められた経路に沿って該放射線検出器を移動させる移動機構と、
前記経路を決定し、前記移動機構を駆動制御する制御部とを備えた放射能表面汚染密度測定装置であって、
前記制御部は、
前記形状測定用スキャナからの測定信号に基づいて前記被検物に対応する3Dモデルを作成し、その表面形状に対する前記放射線検出器による放射線測定位置を演算して求め、該演算結果から前記経路を決定する測定経路演算処理装置と、
前記移動機構によって前記経路に沿って移動しながら測定された放射線検出器からの放射線測定信号を演算処理して被検物の放射能表面汚染密度を求める放射能演算処理装置と、
少なくとも前記3Dモデルと前記放射線検出器による測定結果および前記放射能演算処理装置による演算結果を表示するモニタ装置と、を有するものであり、
前記放射線検出器及び前記移動機構と前記形状測定用スキャナとを搭載した駆動部を前記制御部による駆動制御で前記被検物に対して近接可能に移動させる駆動装置をさらに備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明に係る放射能表面汚染密度測定装置は、請求項1に記載の放射能表面汚染密度測定装置において、前記駆動装置は、前記駆動部に少なくともその移動方向の領域を撮影する撮影装置を更に備え、
前記制御部は、前記モニタ装置に表示される前記撮影装置からの映像に基づいて前記駆動部を遠隔操作により前記被検出物に対して近接移動させる遠隔操作機構を有するものである。
【0014】
請求項3に記載の発明に係る放射能表面汚染密度測定装置は、請求項1又は2に記載の放射能表面汚染密度測定装置において、前記駆動装置は、前記駆動部として搭載された駆動源によって走行する自走式台車を有しているものである。
【0015】
請求項4に記載の発明に係る放射能表面汚染密度測定装置は、請求項1又は2に記載の放射能表面汚染密度測定装置において、前記駆動装置は、前記駆動部として前記被検物が存在する室内の天井面に沿って移動するトロリーを備えたクレーン装置であることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明に係る放射能表面汚染密度測定装置は、請求項1に記載の放射能表面汚染密度測定装置において、前記測定経路演算処理装置は、前記放射線検出器を被検物の表面に対して最大検出効率となる間隔で正対させた状態を維持させながら前記被検物表面に沿って移動させる経路および向きを演算して求めるものであることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明に係る放射能表面汚染密度測定装置は、請求項1に記載の放射能表面汚染密度測定装置において、前記制御部は、前記経路上の各測定位置とその各測定位置での前記放射線検出器による測定結果に基づいて予め定められた様式の測定記録表を作成し、該測定記録表を前記モニタ装置にて表示可能および印刷装置へ出力可能に保存する測定記録表作成部をさらに備えていることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明に係る放射能表面汚染密度測定方法は、請求項1に記載の放射能表面汚染密度測定装置による放射能表面汚染密度測定方法であって、
前記駆動装置の前記放射線検出器及び前記移動機構と前記形状測定用スキャナとを搭載した前記駆動部を被検出物に近接移動させる接近工程と、
前記形状測定用スキャナにより被検物の表面形状を測定するスキャナ工程と、
前記スキャナ工程により得られた測定データに基づいて3Dモデルを作成する3Dモデル作成工程と、
前記3Dモデルの表面形状に基づいて、前記放射線検出器の測定時の前記被検物の表面に対する最大検出効率となる間隔および向きと該放射線検出器による複数の放射線測定位置とを求める演算工程と、
前記求められた放射線測定位置の点群から、前記放射線検出器の測定移動時の前記経路を形成する経路決定工程と、
前記移動機構を駆動制御して、前記放射線検出器を前記経路に沿って移動させながら該経路上の各測定位置で放射線測定を行う放射線測定工程と、を備えているものである。
【0019】
請求項8に記載の発明に係る放射能表面汚染密度測定方法は、請求項7に記載の放射能表面汚染密度測定方法において、前記放射線測定工程での前記経路に沿った前記放射線検出器の移動は、各放射線検出位置で対向する被検物の表面上の点からの法線に前記放射線検出器の検出面の中心軸が重なるように角度が調整され、該検出面を被検物表面に正対させた最大検出効率状態で行うものである。
【0020】
請求項9に記載の発明に係る放射能表面汚染密度測定方法は、請求項8に記載の放射能表面汚染密度測定方法において、前記スキャナ工程は、前記形状測定用スキャナの予め定められた基準点と基準座標とに基づいて前記被検物の表面上の複数の点の3次元座標位置を求め、これら座標データを点群データとして蓄積するものであり、
前記法線の方向は、前記点群データのうちの少なくとも3点のデータから求めることを特徴とするものである。
【0021】
請求項10に記載の発明に係る放射能表面汚染密度測定方法は、請求項7〜9のいずれか1項に記載の放射能表面汚染密度測定方法において、前記放射線測定工程にて測定された放射線量を予め定められた放射線量レベルごとに色分けし、前記3Dモデルに重ね合わせて前記モニタ装置に表示させる工程を更に備えているものである。
【0022】
請求項11に記載の発明に係る放射能表面汚染密度測定方法は、請求項7〜10のいずれか1項に記載の放射能表面汚染密度測定方法において、前記経路上の各測定位置とその各測定位置での前記放射線検出器による検出結果とに基づいて、予め定められた様式の測定記録表を作成する測定記録表作成工程をさらに備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の放射能表面汚染密度測定装置は、先に測定された被検物の表面形状から作成された3Dモデルを利用して、移動機構による放射線検出器の被検物表面に沿って近接した測定移動経路を決定することができるため、被検物に対して解体分割等の加工作業を行う必要が無く、また手持ち操作で被検物に沿って放射線検出器を移動させる必要が無く、被検物の放射能表面汚染の評価を測定効率が高く安全裕度を極小としてかつ自動的に行うことができるという効果がある。これによって、手間やコストの掛かる前処理工程も必要なくなり、作業員の被ばく量も大幅に低減できるため、より安全で効率的な放射能表面汚染評価を実現できる。また、表面線量のより正確な測定が可能となり、廃棄対象となる被検物を適切に判別でき、放射性廃棄物の対象となる物量が低減するため、余分な廃棄処理作業や処理量の発生を回避することができ、全体的に廃棄物の処理コストが抑えられる。さらに、このような正確な測定により、低線量率の環境下でも、従来は測定者に負担が大きかった長時間の測定を必要とせず、その負担を低減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例による放射能表面汚染密度測定装置の概略全体構成図である。
図2図1の測定装置の制御系を説明する概略模式図である。
図3図1の測定装置の制御部における測定移動経路の作成時のモニタ表示の例を示す模式図である。
図4】本発明の別の形態の実施例による放射能表面汚染密度測定装置を建屋内透過状態で示す概略全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態においては、被検物の放射線を測定する放射線検出器と、前記被検物の表面形状を計測する非接触式の形状測定用スキャナと、前記放射線検出器を支持し、被検物に対して予め定められた経路に沿って該放射線検出器を移動させる移動機構と、前記経路を決定し、前記移動機構を駆動制御する制御部と、を備えた放射能表面汚染密度測定装置として、前記制御部が、形状測定用スキャナからの測定信号に基づいて前記被検物に対応する3Dモデルを作成し、その表面形状に対する前記放射線検出器による放射線測定位置を演算して求め、該演算結果から前記経路を決定する測定経路演算処理装置と、前記移動機構によって前記経路に沿って移動しながら測定された放射線検出器からの放射線測定信号を演算処理して被検物の放射能表面汚染密度を求める放射能演算処理装置と、少なくとも前記3Dモデルと前記放射線検出器による測定結果および前記放射能演算処理装置による演算結果を表示するモニタ装置と、を有するものであり、さらに、前記放射線検出器及び前記移動機構と前記形状測定用スキャナとを搭載して前記制御部による駆動制御で前記被検物に対して近接可能に移動する駆動装置を備えているものである。
【0026】
以上の構成により、本実施形態においては、まず、駆動装置を移動させて該駆動装置に搭載された放射線検出器および移動機構、形状測定用スキャナを被検物の近くに位置づけた後、制御部で駆動制御される移動機構を介して放射線検出器を被検物に対してその表面に近接して外形に沿って放射線を測定し、放射能表面汚染密度を求めることができるため、従来の物品搬出モニタのように複数の放射線検出器を設置して遮蔽壁で囲むような設備の構築は必要なく、また従来は測定前に減容や分割を行っていた大型の被検物でも、このような面倒な段取りや手間のかかる準備は不要となる。さらに手動で携帯用のサーベメータを使用する場合のように放射線測定時に作業者が被検物の近傍に行く必要もなくなる。
【0027】
従って、本実施形態の測定装置によれば、装置構成が簡便に済み、加えて作業者が被検物の近傍に行く必要がなく、また被検物に手を加えることなくそのままの形態で、その表面形状に対応して従来より精度良く放射能表面汚染の検出を効率的に行うことができるため、測定作業に掛かる人員も時間も従来より大幅に低減されると共に、本来放射性廃棄物に該当しない物品も放射性廃棄物として判定されて必要以上に放射性廃棄物が増加するおそれも低減されるため、全体的に作業の効率化と費用の削減に寄与する。しかも、測定前準備が不要となる分、作業者が被検物を扱う時間も省かれ、被検物が放射能汚染されたものであった場合に、線量被ばく量が低減される。
【0028】
さらに、表面汚染が極めて低い場合には、従来は放射線検出器の移動速度を遅くして測定時間が長時間におよんでいたが、本実施形態の測定装置においては、測定経路演算処理装置が、記放射線検出器を被検物の表面に対して最大検出効率となる間隔で正対させた状態を維持させながら前記被検物表面に沿って移動させる経路および向きを演算して求めるものとすることで、被検物の表面に対して法線方向に放射線検出器を最大検出効率となる間隔まで近接させ、その間隔を保持して表面形状に沿わせて放射線検出機を正対して移動させながら放射線測定を行うことができるため、高い測定効率でバラツキの小さい安定した測定精度で結果が得られる。
【0029】
また、制御部に、放射線検出器による各測定位置とその各測定位置での測定結果とに基づいて、公的記録とすることのできる予め定められた様式の測定記録表を自動的に作成できる測定記録表作成部を設けておくことが望ましい。この場合、作成された測定記録表は、後に呼び出してモニタ装置上で参照したり、任意に装置外のプリンタへ出力して印刷できるものとする。これによって、別途人手による煩雑な作業による記録の作成や立会人による測定値記録の確認が必要となくなり、非効率的な作業が省かれる。
【0030】
なお、本実施形態における放射線検出器を移動させる移動機構としては、被検物の表面形状の様々な起伏、凹凸に沿って放射線検出器を3次元的に移動させられる機構であれば良く、例えば、多関節ロボットアームが好ましい。多関節ロボットアームに関しては、既に各種のものが市販されているが、アーム長さと可動域等のタイプを適宜選択することによって、被検物に対する測定装置の距離が比較的大きい場合や、被検物が大型のものである場合にも対応できる。
【0031】
また、測定装置の少なくとも放射線検出器とこれを移動させる移動機構及び形状測定用スキャナという測定部分のみを被検物に対して接近させられる構成とすれば、それほど大型の多関節ロボットアームでなくても、制御部から離れた場所の被検物の近傍まで前記測定部分を近接移動させ、被検物の表面に近接させた放射線測定を行うことができる。この場合、制御部による駆動制御で被検物に対して近接方向に移動できる駆動部に、放射線検出器及び移動機構と形状測定用スキャナとを搭載した駆動装置を備えれば良い。
【0032】
また、このような駆動部の近接移動は、予め設定されたプログラムにより初期位置から被検物近傍まで移動できる構成とすることも可能であるが、より確実な移動のために、駆動部に少なくともその移動方向の領域を撮影する撮影装置を備え、モニタ装置に表示される撮影装置からの映像に基づいて制御部により駆動部の駆動制御を行って遠隔操作によって任意の場所へ移動できる構成とすれば良い。
【0033】
駆動装置としては、例えば、駆動部を自走式台車とする構成が挙げられる。この場合、該台車に放射線検出器及び移動機構と形状測定用スキャナとを載置すると共に駆動源を搭載し、この駆動源を制御することによって該台車を任意の場所まで走行させる構成とする。この台車の走行によって放射線検出器及び移動機構と形状測定用スキャナを被検物の近くまで移動させることができる。
【0034】
また、別の駆動装置として、クレーン装置からなるものが挙げられる。この場合、室内の天井面に沿って移動するトロリーを駆動部として、放射線検出器及び移動機構と形状測定用スキャナとを下垂状態で搭載する構成とすれば良い。例えば建屋などの建造物では、広い室内で大型構造物の設置、移動のためのXYクレーンが設置されていることがあるため、このような室内の構造物が被検物となる場合には、このXYクレーンを駆動装置として利用することができる。もちろん後付けで室内にクレーン装置を仮設して用いても良い。
【0035】
一般的なXYクレーンの構成は、室内の対向する左右側壁の上部の対向位置に平行に取り付けられた一対の第1走行レールと、この第1走行レールに横架されて該第1走行レールに沿って水平方向(X軸方向)に移動可能に設けられた第2走行レールと、この第2走行レールに沿って第1走行レールと直交方向(Y軸方向)に移動可能に設けられたトロリーとを備えたものである。したがって、該トロリーに放射線検出器を支持する移動機構と形状測定用スキャナとを下垂状態で搭載しておけば、第2走行レールとトロリーとの天井面に沿ったXY軸方向の移動によって、放射線検出器と形状測定用スキャナとを室内の検出物の直上まで近接させて位置付けることができ、上方から被検物に対する表面形状の計測および放射線の測定を行うことができる。
【0036】
また、本実施形態における形状測定用スキャナとしては、固定位置から非接触で被検物の表面をスキャンしてその形状を測定できるものであれば良いが、より短時間で高精度に測定できるものが望ましい。たとえば、建築物の寸法や形状計測や各種配管等の設備、道路、トンネル、地理空間の測量、構造体や物品の3Dモデルの作成など、現在広い分野で使用され、既に多くの市販品が存在する3Dレーザースキャナの採用が好ましい。
【0037】
3Dレーザースキャナは、レーザービームを発射して対象物からの反射をセンサで受光するものであり、対象物とセンサとの間をレーザーパルスが往復する時間から基準点と対象物の測定位置との間の距離を計測し、その距離情報とレーザービームを発射した方向に基づく角度情報とから計測対象点の3次元座標情報を取得する。このような3Dレーザースキャナで対象物である被検物に向けてある一面上でレーザービームを走査させることによって、多数の計測点の3次元座標情報が点群データとして得られ、これを面データに変換して被検物の3Dモデルを作成することができる。
【0038】
したがって、本実施形態の放射能表面汚染密度測定方法においては、形状測定用スキャナによる測定データの演算処理によって形成された3Dモデルの表面形状に基づいて、被検物の表面に対して、用いる放射線検出器による測定に適切な最大検出効率となる間隔と、その表面上に該表面から法線方向に前記間隔をもった複数の測定位置を求めれば、これら測定位置を結ぶことによって放射線検出器が移動する測定移動経路を決定することができる。
【0039】
なお、本実施形態においては、形状測定用スキャナは一つに限らず複数のスキャナを備えた構成としてもよい。この場合、各スキャナにより異なる向きから被検物の異なる面に対して形状測定を行うことによって一つの立体的な被検物に対して複数面の表面形状を取得することができる。3Dモデルの形成の際には、これら複数面の表面形状のデータを結合することによって、被検物の全方向にわたる3Dモデルを得ることもできる。
【0040】
制御部は、この経路上を放射線検出器、実際には検出面が移動するように、移動機構を駆動制御することができる。例えば、制御部において、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)に前記経路上を検出面が所定速度で移動する多関節ロボットアーム等の移動機構の駆動プログラムを設定することによって、該プログラムに従って該移動機構を自動的に駆動させることができる。
【0041】
そして制御部では、このように放射線検出器が前記経路上を移動しつつ各計測位置で計測した結果を演算処理して被検物の放射能表面汚染密度が求められ、この得られた放射能表面汚染密度を被検物の放射能表面汚染の評価値として判断することができる。
【0042】
なお、放射線検出器による測定を精度良く行うには、その検出面が被検物の表面に対して平行に移動すること、即ち測定時に検出面が被検物表面の測定対象点に正確に対向することが望まれる。その測定対象点のある被検物表面が平面であれば、該平面からの垂線に検出面の中心軸が重なる向きとすればよい。但し、測定対象点がある被検物表面が平面でなければ、その測定対象点を中心とした曲面の法線に前記中心軸が重なる向きとすれば良い。このようなある点における法線の向きは、前記曲面上の3点の位置から求めることができるが、形状測定用スキャナによって測定された被検物表面上の複数点の3次元座標データの点群データからその3点を選択して利用することができる。放射線検出器の検出面と被検物表面との適切な間隔は5mm〜10mm、より好ましくは5mmであり、この間隔を維持して検出器を移動させることが望まれる。
【0043】
また、放射線検出器で測定された放射線量を予め定められた放射線量レベルごとに色分けし、前記3Dモデルに重ね合わせて前記モニタ装置に表示させることによって、目視により感覚的に被検物の放射能表面汚染の領域と評価を簡易的に判断することができる。
【実施例】
【0044】
本発明の一実施例として、自走式台車を駆動装置の駆動部とした場合の放射能表面汚染密度測定装置を図1及び図2に示す。図1は、本装置の概略全体構成図であり、図2図1の測定装置の制御系を説明する概略模式図である。図3は、測定移動経路の作成時のモニタ表示の例を示す模式図である。
【0045】
本実施例による放射能表面汚染密度測定装置1は、自走式台車と該台車に搭載された測定を行うための機器とで移動測定部2が構成されている。即ち、自走式台車としての駆動モータを搭載したクローラ台車10上に、多関節ロボットアーム3と、3Dレーザースキャナ等の形状測定用スキャナ5と進行方向の前後位置に設置され、制御部20へ映像を送る撮影装置としての2つの監視カメラ(6a,6b)とが設置され、多関節ロボットアーム3の先端には放射線検出器4が取り付けられている。
【0046】
これら移動測定部2が制御部20によって駆動制御される。制御部20は、モニタ付きパーソナルコンピュータ21を備え、監視カメラ(6a,6b)からの映像をモニタMで確認しながら、クローラ台車10を遠隔操作によって被検物100の近傍まで移動、近接させる。
【0047】
多関節ロボットアーム3としては、少なくとも5軸の多関節機構のものとすることによってアーム先端の放射線検出器4を自在に所望位置へ移動させることができる。例えば、クローラ台車10の上面に固定されたベース部Bに水平方向回動軸と第1の垂直方向回動軸を介して接続された第1アームA1と、第1アームA1の先端に第2の垂直方向回動軸を介して接続された第2アームA2と、第2アームA2の先端に第3の垂直方向回動軸を介して接続されたリストWと、リストWの先端部に第3の垂直方向回動軸と直交方向の回動軸を介して垂直面上で捻ねられる方向に回動可能に回動接続された保持部Hとを備え、この保持部Hに放射線検出器4を取り付ける構成が挙げられる。
【0048】
多関節ロボットアーム3は、これら回動軸をそれぞれ駆動させる回転角センサ付きサーボモータSを制御部20側から制御することによって、アーム先端を所望の経路に沿って移動させることができる。このような多関節ロボットアーム3の駆動を、制御盤22内のPLCを介して制御する場合、予め決定された経路をPLCに操作部23のタッチパネルを介してプログラム設定しておけば、制御部20からの開始指令により、該プログラムに従って多軸コントローラ24、サーボアンプ25を介して各回転軸のサーボモータSが駆動制御され、多関節ロボットアーム3の先端に取り付けられた放射線検出器4の所定経路上における移動が自動的に遂行される。
【0049】
パーソナルコンピュータ21は、演算部26として形状測定用スキャナ5による測定信号に基づいて被検物100に対応する3Dモデルを作成し、該3Dモデルの表面形状に対する放射線検出器4の間隔と測定位置を演算し、その結果から被検物100の表面に沿った移動経路を決定する測定経路演算処理装置と、前記経路に沿って移動しながら測定された放射線検出器4からの放射線測定信号を演算処理して被検物の放射能表面汚染密度を求める放射能演算処理装置とを含むものである。
【0050】
以上の構成を備えた本実施例の放射能表面汚染密度測定装置1による被検物100に対する放射線表面密度測定の動作は以下の通りである。
1:監視カメラ6aの映像に基づいてクローラ台車10の駆動部を遠隔操作により制御して、例えば放射能管理区域内にある被検物100の近傍まで、移動、近接させる。
2:形状測定用スキャナ4により被検物100の表面に対してレーザービームを所定の走査領域内でスキャンさせ、被検物100の表面上の複数の測定対象点迄の距離を測定し、その距離情報とレーザービームの角度情報とに基づいて、各測定対象点の3次元座標データを点群データとして取得する。
3:パーソナルコンピュータ21にて、得られた点群データから以下の手順により3Dモデルを形成する。
(a)1面スキャン分の点群データを、互いに隣接する3点の三角面の集合体である「ポリゴンデータ」に変換して立体的な面情報を3Dモデルとして取得する。
(b)作成された面情報は平均化、標準化して極端な凹凸を減らす。
(c)放射線検出器4の外形状と比較し、該検出器4が干渉する面形状部分を特定し、補正可能な場合は面情報を修正し、補正不可能な場合は測定不能部分として測定対象領域から削除する。
(b)スキャン面が複数で点群データが複数面分ある場合は、境界領域の形状測定位置情報と点群テータの特徴点に基づいて面情報同士を結合し、一つの大きな統合面情報に変換する。
【0051】
4:得られた3Dモデルの表面形状から以下の手順による放射線検出器の測定移動経路を決定する。
(a)放射線検出器4の測定可能範囲仕様に基づいて測定漏れが発生しない被検物表面に対する放射線量測定間隔を決定する。
(b)作成した3Dモデルの端を基準に、先に決定した測定間隔で、被検物表面との距離を一定にした放射線検出器4の目標測定位置を決定する。
(c)決定された目標測定位置を元に、例えば図3に示すように、これら測定位置を結ぶ放射線検出器4の移動経路としてロボットアーム先端部の移動経路Rを作成する。このとき、放射線検出器の感度、必要測定時間に基づいて、経路R上の移動速度を設定する。また、各測定位置において、より正しい放射線量の測定が行えるように、被検物の測定対象点に対して該対象点の法線が常に放射線検出器の検出面の中心軸と重なる向きとなるように移動の伴う姿勢制御のため向き情報も設定する。
5:多関節ロボットアーム3を駆動制御して、アーム先端を作成された移動経路Rに従って設定された移動速度で移動させ、経路上の各測定位置で正しい向きに姿勢制御された放射線検出器4により順次放射線量を測定する。
6:放射線検出器4により測定された結果は、制御部20において予め設定しておいた放射線量レベルごとに色分けし、モニタM上で3Dモデルに重ね合わせて表示する。同時に、測定された放射線量データから放射能表面汚染評価値として放射能表面汚染密度を求め、被検物100が管理区域外へ搬出可能かどうか判断し、表示する。放射線量データあるいは放射能表面汚染密度等の測定データは記録される。測定データを記録することによって、将来、過去の測定データとして閲覧、確認可能とする。
7:被検物100の放射能表面汚染の評価が完了した後、クローラ台車10を再び遠隔操作で駆動制御し、被検物100から離反方向に移動させ、次の測定対象物となる別の被検物の近傍へ移動させる。
【0052】
以上の工程を同様に繰り返すことによって、被検物自体を放射線管理区域内から移動させることなく、その場で、しかも解体分割等の加工作業を行う必要無く、そのままの大きさ、形状のものに対して、順次、多数の対象物の放射能表面汚染を自動的に行うことができる。従って、従来の場合よりも作業員の被ばく量を大幅に低減できる。
【0053】
なお、本実施例では、パーソナルコンピュータ21において、上記のように測定データは随時記録されるものであるが、これら測定データに基づいて、被検物毎に公的な記録とすることのできる所定様式の測定記録表を作成し、これを記憶しておく測定記録表作成部27を備えているものとした。従って、必要に応じて特定の被検物の測定記録表をモニタ装置Mに表示したり、印刷することができる。該測定記録表においては、測定結果から各測定位置における放射線汚染の判定を併記するものとすれば、モニタ装置M上で3Dモデルを同時に参照することによって、汚染判定がされた測定位置を3Dモデル上の部位として容易に確認することも可能となる。
【0054】
次に、図1とは異なる形態の放射能表面汚染密度測定装置31として、駆動装置が建屋内に設置されたXYクレーン装置40である場合の例を図4の概略構成図に建屋内透過状態で示す。このXYクレーン装置40は、建屋50の室内に設置されていた、或いは放射線測定用に仮設されたものであり、室内の左右側壁の上部に平行に対向して取り付けられた一対の第1走行レール41と、第1走行レール41に沿ってX軸方向に水平移動可能に該一対の第1走行レール41を渡るように横架された第2走行レール42と、第2走行レール42に沿ってY軸方向に水平移動可能に該第2走行レール42に設置されたトロリー43とを備えたものである。
【0055】
第2走行レール42とトロリー43の天井面に沿ったXY軸方向の移動は、それぞれに搭載されたモータ(不図示)の駆動制御によって行われる。また、トロリー43には下向きに伸びる吊下軸44が延設されており、この吊下軸44に、形状測定用スキャナ35が測定方向を下向きとして装着されていると同時に、多関節ロボットアーム33が下向きに取り付けられている。そして多関節ロボットアーム33の先端に下垂状態で放射線検出器34が取り付けられている。従って、この場合、このトロリー43と該トロリー43に搭載された測定機器とで移動測定部32が構成されている。
【0056】
XYクレーン装置40の駆動は、通常、室内の操作部45の操作ボタンで手動操作により行われるが、放射能表面汚染密度測定装置31の駆動装置としては、室外の制御部20によって制御可能な構成とする。
【0057】
以上の構成を備えた放射能表面汚染密度測定装置31においては、建屋50の室内に存在するタンクや電気盤などの大型であったり大重量である構造物を被検物(101,102)とする場合、XYクレーン装置40の第2走行レール42およびトロリー44のXY軸方向の移動を駆動制御することによって、移動測定部32を被検物の直上まで近づけることができ、被検物を移動させることなくその形状測定と該測定結果に基づいて得られた表面形状に沿った放射線測定を精度良く行うができる。
【符号の説明】
【0058】
1,31:放射能表面汚染密度測定装置
2,32:移動測定部
3,33:多関節ロボットアーム
B:ベース部
A1:第1アーム
A2:第2アーム
W:リスト
H:保持部
4,34:放射線検出器
5,35:形状測定用スキャナ
6a,6b:監視カメラ
10:クローラ台車
20:制御部
21:パーソナルコンピュータ
22:制御盤
23:操作部
24:多軸コントローラ
25:サーボアンプ
26:演算部
27:測定記録表作成部
M:モニタ
P:プリンタ
S:サーボモータ
40:XYクレーン装置
41:第1走行レール
42:第2走行レール
43:トロリー
44:吊下軸
45:操作盤
100,101,102:被検物
R:移動経路
図1
図2
図3
図4