【実施例】
【0044】
本発明の一実施例として、自走式台車を駆動装置の駆動部とした場合の放射能表面汚染密度測定装置を
図1及び
図2に示す。
図1は、本装置の概略全体構成図であり、
図2は
図1の測定装置の制御系を説明する概略模式図である。
図3は、測定移動経路の作成時のモニタ表示の例を示す模式図である。
【0045】
本実施例による放射能表面汚染密度測定装置1は、自走式台車と該台車に搭載された測定を行うための機器とで移動測定部2が構成されている。即ち、自走式台車としての駆動モータを搭載したクローラ台車10上に、多関節ロボットアーム3と、3Dレーザースキャナ等の形状測定用スキャナ5と進行方向の前後位置に設置され、制御部20へ映像を送る撮影装置としての2つの監視カメラ(6a,6b)とが設置され、多関節ロボットアーム3の先端には放射線検出器4が取り付けられている。
【0046】
これら移動測定部2が制御部20によって駆動制御される。制御部20は、モニタ付きパーソナルコンピュータ21を備え、監視カメラ(6a,6b)からの映像をモニタMで確認しながら、クローラ台車10を遠隔操作によって被検物100の近傍まで移動、近接させる。
【0047】
多関節ロボットアーム3としては、少なくとも5軸の多関節機構のものとすることによってアーム先端の放射線検出器4を自在に所望位置へ移動させることができる。例えば、クローラ台車10の上面に固定されたベース部Bに水平方向回動軸と第1の垂直方向回動軸を介して接続された第1アームA1と、第1アームA1の先端に第2の垂直方向回動軸を介して接続された第2アームA2と、第2アームA2の先端に第3の垂直方向回動軸を介して接続されたリストWと、リストWの先端部に第3の垂直方向回動軸と直交方向の回動軸を介して垂直面上で捻ねられる方向に回動可能に回動接続された保持部Hとを備え、この保持部Hに放射線検出器4を取り付ける構成が挙げられる。
【0048】
多関節ロボットアーム3は、これら回動軸をそれぞれ駆動させる回転角センサ付きサーボモータSを制御部20側から制御することによって、アーム先端を所望の経路に沿って移動させることができる。このような多関節ロボットアーム3の駆動を、制御盤22内のPLCを介して制御する場合、予め決定された経路をPLCに操作部23のタッチパネルを介してプログラム設定しておけば、制御部20からの開始指令により、該プログラムに従って多軸コントローラ24、サーボアンプ25を介して各回転軸のサーボモータSが駆動制御され、多関節ロボットアーム3の先端に取り付けられた放射線検出器4の所定経路上における移動が自動的に遂行される。
【0049】
パーソナルコンピュータ21は、演算部26として形状測定用スキャナ5による測定信号に基づいて被検物100に対応する3Dモデルを作成し、該3Dモデルの表面形状に対する放射線検出器4の間隔と測定位置を演算し、その結果から被検物100の表面に沿った移動経路を決定する測定経路演算処理装置と、前記経路に沿って移動しながら測定された放射線検出器4からの放射線測定信号を演算処理して被検物の放射能表面汚染密度を求める放射能演算処理装置とを含むものである。
【0050】
以上の構成を備えた本実施例の放射能表面汚染密度測定装置1による被検物100に対する放射線表面密度測定の動作は以下の通りである。
1:監視カメラ6aの映像に基づいてクローラ台車10の駆動部を遠隔操作により制御して、例えば放射能管理区域内にある被検物100の近傍まで、移動、近接させる。
2:形状測定用スキャナ4により被検物100の表面に対してレーザービームを所定の走査領域内でスキャンさせ、被検物100の表面上の複数の測定対象点迄の距離を測定し、その距離情報とレーザービームの角度情報とに基づいて、各測定対象点の3次元座標データを点群データとして取得する。
3:パーソナルコンピュータ21にて、得られた点群データから以下の手順により3Dモデルを形成する。
(a)1面スキャン分の点群データを、互いに隣接する3点の三角面の集合体である「ポリゴンデータ」に変換して立体的な面情報を3Dモデルとして取得する。
(b)作成された面情報は平均化、標準化して極端な凹凸を減らす。
(c)放射線検出器4の外形状と比較し、該検出器4が干渉する面形状部分を特定し、補正可能な場合は面情報を修正し、補正不可能な場合は測定不能部分として測定対象領域から削除する。
(b)スキャン面が複数で点群データが複数面分ある場合は、境界領域の形状測定位置情報と点群テータの特徴点に基づいて面情報同士を結合し、一つの大きな統合面情報に変換する。
【0051】
4:得られた3Dモデルの表面形状から以下の手順による放射線検出器の測定移動経路を決定する。
(a)放射線検出器4の測定可能範囲仕様に基づいて測定漏れが発生しない被検物表面に対する放射線量測定間隔を決定する。
(b)作成した3Dモデルの端を基準に、先に決定した測定間隔で、被検物表面との距離を一定にした放射線検出器4の目標測定位置を決定する。
(c)決定された目標測定位置を元に、例えば
図3に示すように、これら測定位置を結ぶ放射線検出器4の移動経路としてロボットアーム先端部の移動経路Rを作成する。このとき、放射線検出器の感度、必要測定時間に基づいて、経路R上の移動速度を設定する。また、各測定位置において、より正しい放射線量の測定が行えるように、被検物の測定対象点に対して該対象点の法線が常に放射線検出器の検出面の中心軸と重なる向きとなるように移動の伴う姿勢制御のため向き情報も設定する。
5:多関節ロボットアーム3を駆動制御して、アーム先端を作成された移動経路Rに従って設定された移動速度で移動させ、経路上の各測定位置で正しい向きに姿勢制御された放射線検出器4により順次放射線量を測定する。
6:放射線検出器4により測定された結果は、制御部20において予め設定しておいた放射線量レベルごとに色分けし、モニタM上で3Dモデルに重ね合わせて表示する。同時に、測定された放射線量データから放射能表面汚染評価値として放射能表面汚染密度を求め、被検物100が管理区域外へ搬出可能かどうか判断し、表示する。放射線量データあるいは放射能表面汚染密度等の測定データは記録される。測定データを記録することによって、将来、過去の測定データとして閲覧、確認可能とする。
7:被検物100の放射能表面汚染の評価が完了した後、クローラ台車10を再び遠隔操作で駆動制御し、被検物100から離反方向に移動させ、次の測定対象物となる別の被検物の近傍へ移動させる。
【0052】
以上の工程を同様に繰り返すことによって、被検物自体を放射線管理区域内から移動させることなく、その場で、しかも解体分割等の加工作業を行う必要無く、そのままの大きさ、形状のものに対して、順次、多数の対象物の放射能表面汚染を自動的に行うことができる。従って、従来の場合よりも作業員の被ばく量を大幅に低減できる。
【0053】
なお、本実施例では、パーソナルコンピュータ21において、上記のように測定データは随時記録されるものであるが、これら測定データに基づいて、被検物毎に公的な記録とすることのできる所定様式の測定記録表を作成し、これを記憶しておく測定記録表作成部27を備えているものとした。従って、必要に応じて特定の被検物の測定記録表をモニタ装置Mに表示したり、印刷することができる。該測定記録表においては、測定結果から各測定位置における放射線汚染の判定を併記するものとすれば、モニタ装置M上で3Dモデルを同時に参照することによって、汚染判定がされた測定位置を3Dモデル上の部位として容易に確認することも可能となる。
【0054】
次に、
図1とは異なる形態の放射能表面汚染密度測定装置31として、駆動装置が建屋内に設置されたXYクレーン装置40である場合の例を
図4の概略構成図に建屋内透過状態で示す。このXYクレーン装置40は、建屋50の室内に設置されていた、或いは放射線測定用に仮設されたものであり、室内の左右側壁の上部に平行に対向して取り付けられた一対の第1走行レール41と、第1走行レール41に沿ってX軸方向に水平移動可能に該一対の第1走行レール41を渡るように横架された第2走行レール42と、第2走行レール42に沿ってY軸方向に水平移動可能に該第2走行レール42に設置されたトロリー43とを備えたものである。
【0055】
第2走行レール42とトロリー43の天井面に沿ったXY軸方向の移動は、それぞれに搭載されたモータ(不図示)の駆動制御によって行われる。また、トロリー43には下向きに伸びる吊下軸44が延設されており、この吊下軸44に、形状測定用スキャナ35が測定方向を下向きとして装着されていると同時に、多関節ロボットアーム33が下向きに取り付けられている。そして多関節ロボットアーム33の先端に下垂状態で放射線検出器34が取り付けられている。従って、この場合、このトロリー43と該トロリー43に搭載された測定機器とで移動測定部32が構成されている。
【0056】
XYクレーン装置40の駆動は、通常、室内の操作部45の操作ボタンで手動操作により行われるが、放射能表面汚染密度測定装置31の駆動装置としては、室外の制御部20によって制御可能な構成とする。
【0057】
以上の構成を備えた放射能表面汚染密度測定装置31においては、建屋50の室内に存在するタンクや電気盤などの大型であったり大重量である構造物を被検物(101,102)とする場合、XYクレーン装置40の第2走行レール42およびトロリー44のXY軸方向の移動を駆動制御することによって、移動測定部32を被検物の直上まで近づけることができ、被検物を移動させることなくその形状測定と該測定結果に基づいて得られた表面形状に沿った放射線測定を精度良く行うができる。