【課題】放熱特性に優れ、モジュール化が容易であり、小型化にとって好適なインテリジェントパワーモジュール、電気自動車またはハイブリッドカー、およびインテリジェントパワーモジュールの組み立て方法を提供する。
【解決手段】IPM101は、放熱装置110と、放熱装置110上の装着面110a上に配置された取り付けフレーム120と、取り付けフレーム120に基づいて装着され、半導体デバイスを封止したパワー半導体モジュール130(130
前記断熱シート上に、前記熱伝導樹脂によって保持された前記パワー半導体モジュールの動きを規制する押さえ板をさらに備えることを特徴とする請求項1または3に記載のインテリジェントパワーモジュール。
前記押さえ板は、前記パワー半導体モジュールと前記駆動回路部とを電気的に繋ぐ配線を通す部分を備えることを特徴とする請求項5に記載のインテリジェントパワーモジュール。
前記押さえ板は、放熱性の金属薄板を備え、前記パワー半導体モジュールの発熱を放熱可能であることを特徴とする請求項5に記載のインテリジェントパワーモジュール。
前記断熱シート上に、前記半田によって固定された前記パワー半導体モジュールの発熱を放熱させる放熱板、およびまたは放熱シートをさらに備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のインテリジェントパワーモジュール。
前記放熱装置、前記取り付けフレーム、および前記駆動回路部は、複数個の前記パワー半導体モジュールに対して一体構造として配置されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のインテリジェントパワーモジュール。
前記パワー半導体モジュールは、IGBT、ダイオード、Si系MOSFET、SiC系MOSFET、GaN系FETのいずれかの半導体デバイス、または、複数の半導体デバイスを備えることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のインテリジェントパワーモジュール。
電気自動車またはハイブリッドカーのパワーコントロールユニットに用いられ、ECUからの制御信号に応じて動作することを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載のインテリジェントパワーモジュール。
前記放熱装置は、その内部に水冷式の冷却器を形成する工程、または及び、前記パワー半導体モジュールの装着面と反対側の面に空冷式の冷却器を取り付ける工程を有することを特徴とする請求項21〜24のいずれか1項に記載のインテリジェントパワーモジュールの組み立て方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、本実施の形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。ただし、平面図、側面図、底面図、断面図などは模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0016】
また、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置などを特定するものではない。実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
[第1の実施の形態]
(インテリジェントパワーモジュールの概略構成)
第1の実施の形態に係るインテリジェントパワーモジュール(IPM;Intelligent Power Module)101の平面構造は、
図1に示すように表わされる。なお、
図1では、一部の駆動回路部180などを透過して示している。また、その模式的分解構成図を
図7に示す。
【0018】
また、
図1中の図示矢印A方向から見た一側面構造は、
図2に示すように表わされ、
図1中の図示矢印B方向から見た他側面構造は、
図3に示すように表わされる。また、
図1中のIV−IV線に沿う断面構造は、
図4に示すように表わされ、
図1中のV−V線に沿う断面構造は、
図5に示すように表わされる。
【0019】
図1〜
図5において、IPM101は、放熱装置(例えば、アルミニウム(Al)製のヒートシンクなどの放熱板(冷却板)またはウォータージャケット(WJ)などの冷却器であっても良い)110と、放熱装置110上の装着面110a上に配置された取り付けフレーム120と、取り付けフレーム120をガイド部材として、フレーム枠122内の装着面110aに装着された複数個(例えば、3個)のパワー半導体モジュール130(モールド型パワーモジュール130
1・130
2・130
3 以下「各パワー半導体モジュール130
n」と称す)と、各パワー半導体モジュール130
nのパッケージ132上に断熱シート150、押さえ板160S、および放熱シート170を順に介して搭載された駆動回路部(ゲートドライブ基板、例えばFR−4、6層)180とを備える。
【0020】
すなわち、第1の実施の形態に係るIPM101は、放熱装置110と、放熱装置110上の装着面110a上に配置された取り付けフレーム120と、取り付けフレーム120に基づいて装着され、半導体デバイスを封止したパワー半導体モジュール130(130
1・130
2・130
3)と、パワー半導体モジュール130上に断熱シート150を介して搭載され、パワー半導体モジュール130を駆動する駆動回路部180とを備える。
【0021】
放熱装置110上に装着される各パワー半導体モジュール130
nは、装着面110aに配置された取り付けフレーム120によって、その接合位置が予め規定される。これにより、IPM101の組み立ての自動化・無人化などが図られる(詳細については後述する)。
【0022】
また、取り付けフレーム120は、放熱装置110の剛性を高め、放熱装置110のねじれや反りなどを抑える効果もある。
【0023】
ここで、放熱装置110の装着面110aには、予め、接合部材としての熱伝導樹脂により形成される熱伝導樹脂層210Tを備える。熱伝導樹脂層210Tとしては、例えばシート状またはペースト状のサーマルコンパウンドなどで形成されるものであっても良い。熱伝導樹脂層210Tを適用した場合、装着される各パワー半導体モジュール130
nは固定されず、保持されたような状態(接合が不安定なもの)となる。
【0024】
第1の実施の形態に係るIPM101においては、各パワー半導体モジュール130
nの接合の不安定さを解消するため、押さえ板160Sを、例えば、ばね性を有するステンレス鋼からなる金属薄板により形成することによって、各パワー半導体モジュール130
nの組み立て時の位置ずれや沈み込みなどの無駄な動きが規制される。
【0025】
すなわち、第1の実施の形態に係るIPM101は、放熱装置110上の装着面110a上に各パワー半導体モジュール130
nを接合する接合部材210Tを備え、接合部材210Tは、各パワー半導体モジュール130
nを放熱装置110上の装着面110a上に保持する熱伝導樹脂を備える。
【0026】
また、断熱シート150上には、駆動回路部180との間に、ばね性を有する金属薄板を備え、熱伝導樹脂210Tによって保持された各パワー半導体モジュール130
nの動きを規制する押さえ板160S、および放熱シート170をさらに備える。
【0027】
(インテリジェントパワーモジュールの詳細構成)
第1の実施の形態に係るIPM101は、例えば、各パワー半導体モジュール130
nに各々ツーインワン(2 in 1)タイプを採用することにより、シックスインワン(6 in 1)タイプのスイッチングモジュールを構成できる(詳細については、後述する)。スイッチングモジュールを構成するIPM101においては、各パワー半導体モジュール130
nを効率よく冷却でき、過熱による劣化を抑えることが可能である。
【0028】
すなわち、第1の実施の形態に係るIPM101は、放熱装置110と、放熱装置110上の装着面110a上に配置された取り付けフレーム120と、取り付けフレーム120に基づいて装着され、半導体デバイスを封止したパワー半導体モジュール130(各パワー半導体モジュール130
n)と、パワー半導体モジュール130上に断熱シート150を介して搭載され、パワー半導体モジュール130を駆動する駆動回路部180とを備え、パワー半導体モジュール130がツーインワンモジュールを構成するように複数個配置されて、シックスインワンモジュールタイプのインバータまたはコンバータを構成する。
【0029】
以下の説明においては、例えば、2 in 1タイプの3個のパワー半導体モジュール130
1・130
2・130
3により、6 in 1タイプのスイッチングモジュールを構成する場合について説明する。
【0030】
すなわち、各パワー半導体モジュール130
nが装着される放熱装置110は、
図7(g)に示すように、例えば、最大で3個のパワー半導体モジュール130
1・130
2・130
3を装着可能に構成される。放熱装置110は、例えば、Alにより直方体状に形成された放熱部112を有し、放熱部112の内部には冷却管113が蛇腹状に配置されている。放熱装置110は、冷却管113の冷却路115内を冷却水が循環することによって、各パワー半導体モジュール130
nを冷却する水冷式の冷却器となっている。
【0031】
放熱装置110は、放熱部112上の装着面110aの一端部に、冷却管113内に冷却水を取り込む取込口116が配置された注水部117が、装着面110aの他端部に、冷却管113内を循環した冷却水を排出する排出口118が配置された排水部119が、それぞれ設けられる。
【0032】
放熱装置110において、例えば
図1や
図2の矢印で示す方向に、冷却水が取込口116より冷却管113内に取り込まれ、冷却路115を通って、排出口118より排水されることによって、パワー半導体モジュール130の発熱が効率良く冷却される。冷却水としては、例えば、水、または水とエチレングリコールとを50%ずつの割合で混合させた混合液が用いられる。
【0033】
なお、放熱装置110の冷却管113は、放熱部112の短手方向と平行に折り返し配置されるものであっても良いし、長手方向と平行に折り返し配置されるものであっても良い。また、冷却管113は省略することもでき、放熱部112の内部を全面的に冷却水が循環する構成としても良い。また、注水部117および排水部119は、放熱部112の長手方向と平行に配置される場合に限らず、短手方向と平行に配置されるようにしても良い。若しくは、注水部117および排水部119は、放熱部112に対して、所定の角度により回動自在に設けることも可能である。
【0034】
放熱部112の一方の両端部には、それぞれ、断熱シート150および押さえ板160Sを、ネジなどの固定具190によって固定するための台座部114を備える。台座部114間が、各パワー半導体モジュール130
nを装着するための装着面110aとなる。
【0035】
装着面110a上には、各パワー半導体モジュール130
nを装着する前に、予め、熱伝導樹脂層210Tが形成される。熱伝導樹脂層210Tには、各パワー半導体モジュール130
nの、例えば、各パッケージ21の裏面側に露出する、ヒートスプレッダとしての銅プレート層(図示省略)が接合される。
【0036】
取り付けフレーム120は、
図1〜
図5に示すように、例えば、3個のパワー半導体モジュール130
1・130
2・130
3を装着可能な樹脂フレームであって、フレーム枠122内に3個の開口部124
1・124
2・124
3を有する。3個の開口部124
1・124
2・124
3は、各パワー半導体モジュール130
nのパッケージ132のサイズとほぼ同じか、少し大きい。これにより、各パワー半導体モジュール130
nは、取り付けフレーム120に基づいて放熱部112の装着面110a上に案内されることにより、熱伝導樹脂層210Tを介して、フレーム枠122によって規定された開口部124
1・124
2・124
3内にそれぞれ接合される。
【0037】
また、取り付けフレーム120は、
図7(f)に示すように、フレーム枠122上に、断熱シート150、押さえ板160S、放熱シート170、および駆動回路部180を、ネジなどの固定具192によって固定するための複数の固定部126を備える。例えば、フレーム枠122の短手方向の両端部には各2個の固定部126を備え、開口部124
1・124
2間および開口部124
2・124
3間には各1個の固定部126を備える。
【0038】
ここで、各パワー半導体モジュール130
nは、
図6に示すように、同一構造を有し、例えば、図示を省略した半導体デバイスを含むパワー素子(チップ)の外囲をモールド樹脂などにより封止した方形状のパッケージ132を備える。ここでは一例として、3つの端子電極(O・P・N)134・136・138を1本ずつ備えた3端子型構造の各パワー半導体モジュール130
nを示している。また、3端子型構造において、例えば、5つのリード端子(SS・GS・S・T1・T2)140を2組ずつ備えた各パワー半導体モジュール130
nを例示している。
【0039】
リード端子140としては、例えば、ソースセンス信号用のリード端子SS、ゲートセンス信号用のリード端子GS、ソース信号用のリード端子S、および、各パワー半導体モジュール130
nが内蔵するサーミスタなどの温度測定信号用のリード端子T1・T2を備える。
【0040】
すなわち、各パワー半導体モジュール130
nは、例えばパッケージ132の、第1の辺に沿って設けられた出力端子電極(O)134と、パッケージ132の第1の辺に対向する第3の辺に設けられたドレイン端子電極(P)136および接地電位端子電極(N)138とを備える。また、パッケージ132の第1、第3の辺と直交する第2の辺に沿って設けられたリード端子(SS・GS・S・T1・T2)140と、第4の辺に沿って設けられたリード端子(SS・GS・S・T1・T2)140とが、それぞれパッケージ132の外部に延出され、さらにパッケージ132に対してほぼ垂直な上部方向に折り曲げられている。
【0041】
要するに、各パワー半導体モジュール130
nの詳細については後述するが、それぞれ、2個の半導体デバイスを内蔵した2 in 1タイプとなっている。
【0042】
また、各パワー半導体モジュール130
nは、3つの端子電極134・136・138を、放熱部112の長手方向のどちらに向けて配置するようにしても良い。
【0043】
パッケージ132上に配置される断熱シート150および押さえ板160Sは、
図7(d)および
図7(c)に示すように、各パワー半導体モジュール130
nの各リード端子(SS・GS・S・T1・T2)140がそれぞれ挿通される複数の開口部152・162を有する。なお、放熱シート170および駆動回路部180も同様に、各リード端子(SS・GS・S・T1・T2)140がそれぞれ挿通される複数の開口部を有するが、便宜上、ここでの図示は省略する。
【0044】
また、押さえ板160Sは、
図7(c)に示すように、固定具190がそれぞれ挿通される複数の貫通孔166を有する。なお、断熱シート150も同様に、固定具190がそれぞれ挿通される複数の貫通孔を有していても良い。
【0045】
また、断熱シート150、押さえ板160S、放熱シート170、および駆動回路部180は、
図7(d)〜
図7(a)に示すように、固定具192がそれぞれ挿通される複数の貫通孔154・164・174・184を有する。
【0046】
放熱シート170には、例えば、放熱性を有するシリコン樹脂などの放熱性樹脂が用いられる。放熱シート170を介して、押さえ板160Sと駆動回路部180とが強固に接合されることにより、駆動回路部180の高い放熱性が確保される。すなわち、駆動回路部180で発生した熱の一部は、放熱シート170によって吸収された後、押さえ板160Sより放熱される。
【0047】
なお、断熱シート150、放熱シート170、および駆動回路部180は、いずれも各パワー半導体モジュール130
nに対して一体構造物として配置される構成に限らず、例えば各パワー半導体モジュール130
nごとに分割して配置される構成としても良い。
【0048】
(インテリジェントパワーモジュールの組み立て)
第1の実施の形態に係るIPM101の模式的分解鳥瞰構成は、
図7(a)〜
図7(g)に示すように表わされる。
【0049】
ここで、
図7(a)〜
図7(g)を参照して、第1の実施の形態に係るIPM101を製造する際の組み立て方法について説明する。
【0050】
まず、
図7(g)に示すように、予め、放熱部112の装着面110aに熱伝導樹脂層210Tを形成した放熱装置110を準備する。
【0051】
次に、
図7(f)に示すように、熱伝導樹脂層210Tを形成した装着面110a上の所定の位置に、取り付けフレーム120を配置する。
【0052】
次に、取り付けフレーム120の各開口部124
1・124
2・124
3内に、各パワー半導体モジュール130
nをそれぞれ装着させて、熱伝導樹脂層210Tにより装着面110a上に接合させる。この際、
図7(e)に示すように、各パワー半導体モジュール130
nの各リード端子(SS・GS・S・T1・T2)140は、予め折り曲げられている。
【0053】
次に、
図7(d)に示すように、装着面110a上に接合された各パワー半導体モジュール130
nのパッケージ132上に、各リード端子(SS・GS・S・T1・T2)140が開口部152をそれぞれ挿通するようにして、断熱シート150を装着させる。
【0054】
次に、
図7(c)に示すように、断熱シート150上に、各パワー半導体モジュール130
nの各リード端子(SS・GS・S・T1・T2)140が開口部162をそれぞれ挿通するようにして、押さえ板160Sを装着させる。
【0055】
この状態において、押さえ板160Sをネジなどの固定具190によって取付穴が設けられた台座部114に固定させることにより、各パワー半導体モジュール130
nを熱伝導樹脂層210Tが設けられた装着面110a上に固定できる。すなわち、各パワー半導体モジュール130
nは、ばね性を有する押さえ板160Sによって、熱伝導樹脂層210Tが設けられた装着面110aに対して抑え付けられたような状態となる。これにより、接合部材に熱伝導樹脂層210Tを採用する場合においても、後段の組み立て工程、例えば駆動回路部180の搭載などの工程を、各パワー半導体モジュール130
nを安定に固定させた良好な状態で実施することが可能となる。
【0056】
次に、
図7(b)に示すように、押さえ板160S上に、各パワー半導体モジュール130
nの各リード端子(SS・GS・S・T1・T2)140が開口部(図示省略)をそれぞれ挿通するようにして、放熱シート170を装着させる。
【0057】
次に、
図7(a)に示すように、放熱シート170上に、各パワー半導体モジュール130
nの各リード端子(SS・GS・S・T1・T2)140が開口部(図示省略)をそれぞれ挿通するようにして、駆動回路部180を搭載させる。そして、駆動回路部180は、各パワー半導体モジュール130
nの各リード端子(SS・GS・S・T1・T2)140との接続が必要に応じて行われる。
【0058】
最後に、駆動回路部180、放熱シート170、押さえ板160S、および断熱シート150を、取り付けフレーム120のフレーム枠122上の固定部126に、ネジなどの固定具192によって一括して固定させることによって、
図1〜
図5に示したIPM101が完成する。
【0059】
このように、第1の実施の形態に係るIPM101によれば、例えば、放熱装置110上に装着される各パワー半導体モジュール130
nの接合位置が、装着面110a上に配置された取り付けフレーム120によって予め規定されるので、各パワー半導体モジュール130
nの装着面110a上への装着を高精度化・自動化できる。
【0060】
すなわち、第1の実施の形態に係るIPM101の組み立て方法は、放熱装置110上の装着面110a上に取り付けフレーム120を取り付ける工程と、取り付けフレーム120に基づいて装着され、半導体デバイスを封止したパワー半導体モジュール130を装着する工程と、パワー半導体モジュール130上に、断熱シート150を介して、パワー半導体モジュール130を駆動する駆動回路部180を搭載する工程とを有する。
【0061】
また、装着面110aに、パワー半導体モジュール130を保持させるための熱伝導樹脂層210Tを形成する工程と、断熱シート150上に、熱伝導樹脂層210Tによって保持されたパワー半導体モジュール130の動きを規制する押さえ板160Sを配置する工程と、押さえ板160S上に放熱シート170を配置する工程とをさらに有する。
【0062】
(インテリジェントパワーモジュールの自動組み立て)
第1の実施の形態に係るIPM101の組み立てにおいて、自動組み立て装置800によりパワー半導体モジュール130を放熱装置110に対して自動装着する際の模式的鳥瞰構成は、
図8に示すように表わされる。
【0063】
図8に示すように、自動組み立て装置800は、例えば、搬送路810、ロボットアーム820、作業台830を有し、パワー半導体モジュール130を放熱装置110上に自動装着する。
【0064】
搬送路810は、例えば、装着面110a上の熱伝導樹脂層210Tに取り付けフレーム120が予め配置された複数の放熱装置110を、一定の間隔および一定の速度により、図示矢印C方向に搬送する。
【0065】
ロボットアーム820は、例えば、第1アーム部822と、第2アーム部824と、作業ユニット826とを備える。ロボットアーム820は、搬送路810の近傍に配設されると共に、第1アーム部822が回動自在に設けられる。第1アーム部822の先端部には、第2アーム部824が図示矢印D方向へ上下動可能に支持されている。第2アーム部824は、先端部に作業ユニット826が着脱自在に取り付けられる。第2アーム部824は、例えば図示矢印E方向に伸縮自在な構成としても良い。
【0066】
作業ユニット826は、作業の種類や組み立て部品の種類などに応じて交換可能なものであって、ここでは、例えば吸着器828によってパワー半導体モジュール130を吸引して持ち運ぶことが可能な作業ユニットを例示している。作業ユニット826の吸着器828は、例えば図示矢印F方向に昇降動作可能な構成としても良い。
【0067】
また、作業ユニット826は、放熱装置110上の装着面110a上に配置された取り付けフレーム120の各開口部124
1・124
2・124
3の位置などを認識するための、例えばセンサーカメラ(図示省略)を備える。
【0068】
このような構成のロボットアーム820は、例えば、離れた場所に配置されたコンピュータ(PC)からの遠隔操作によって高精度に制御可能である。
【0069】
また、ロボットアーム820は、例えばキャスターなどにより自動組み立て装置800の配置換えや組み立てるIPMの変更などに伴って移動が容易な構成としても良い。
【0070】
作業台830は、ロボットアーム820や搬送路810の近傍に移動自在に配設され、その台上の収納ケース832内には、ロボットアーム820によって放熱装置110上に自動装着される複数のパワー半導体モジュール130が予め用意されている。収納ケース832内の複数のパワー半導体モジュール130は、自動的に補充されるように構成することも可能である。
【0071】
第1の実施の形態に係るIPM101の製造に適用可能な自動組み立て装置800によれば、まず、ロボットアーム820の第1・第2アーム部822・824が作業台830の方向に移動され、作業ユニット826が作業台830上に位置したところで、例えば、収納ケース832内から1つのパワー半導体モジュール130が吸着器828によって取り出される。そして、取り出された1つのパワー半導体モジュール130は、ロボットアーム820の動作に伴って、搬送路810上の所定の装着位置まで運ばれる。
【0072】
一方、搬送路810上には複数の放熱装置110が搬送移動されており、未装着状態の1つの放熱装置110が搬送路810上の所定の装着位置に到達した時点の、例えば第1のタイミングにおいて、ロボットアーム820によって、1つ目のパワー半導体モジュール130が取り付けフレーム120の第1の開口部124
1内に自動装着される。
【0073】
同様にして、1つの放熱装置110が搬送路810上の所定の装着位置に到達した時点の、例えば第2のタイミングにおいて、2つ目のパワー半導体モジュール130が取り付けフレーム120の第2の開口部124
2内に自動装着され、さらに、例えば第3のタイミングにおいて、3つ目のパワー半導体モジュール130が取り付けフレーム120の第3の開口部124
3内に自動装着される。
【0074】
このように、パワー半導体モジュール130の装着は、ロボットアーム820を用いることにより、取り付けフレーム120に基づいて、各開口部124
1・124
2・124
3に対して自動的に行われる。
【0075】
なお、パワー半導体モジュール130を装着するタイミングや順番などは上記に制限されるものではなく、例えば、装着は放熱装置110の搬送を停止させた状態で実施するものであっても良い。
【0076】
こうして、3つのパワー半導体モジュール130が全て装着されて装着状態となった放熱装置110は、さらに搬送路810上を搬送され、次工程の、例えば断熱シート150の搭載工程へと送られる。
【0077】
第1の実施の形態に係るIPM101は、その組み立て工程において、少なくとも放熱装置110上へのパワー半導体モジュール130の装着が自動化されることによって量産化や低廉化などが可能となる。
【0078】
なお、組み立ての自動化は、パワー半導体モジュール130を装着する工程に限らず、例えば、放熱装置110上の装着面110a上に熱伝導樹脂層210Tを形成する工程、装着面110a上に取り付けフレーム120を配置する工程、パワー半導体モジュール130のパッケージ132上に断熱シート150を配置する工程、断熱シート150上に押さえ板160Sを配置する工程、押さえ板160S上に放熱シート170を配置する工程、或いは、放熱シート170上に駆動回路部180を搭載する工程のうち、いずれか1つ以上の工程であっても良い。または、固定具190・192を取り付ける工程であっても良い。
【0079】
すなわち、第1の実施の形態に係るIPM101の組み立て方法は、自動組み立て装置800を備え、各工程のうち、少なくともいずれか1つの工程が自動組み立て装置800を用いて実施される。
【0080】
また、自動組み立て装置800はロボットアーム820を備え、各工程のうち、少なくとも取り付けフレーム120に基づいて、パワー半導体モジュール130を装着する工程は、ロボットアーム820を用いて実施される。
【0081】
以上のような構成により、第1の実施の形態に係るIPM101は、放熱特性に優れ、モジュール化が容易であり、小型化にとって好適なものとすることができる。
【0082】
すなわち、第1の実施の形態に係るIPM101によれば、水冷式の冷却器としての構造を有する放熱装置110上にパワー半導体モジュール130を装着するようにしたので、優れた放熱特性を確保できる。
【0083】
また、パワー半導体モジュール130上にばね性を有する押さえ板160Sを配置するようにしたことによって、パワー半導体モジュール130の接合に熱伝導樹脂層210Tを用いる場合にも、パワー半導体モジュール130の位置ずれなどを防止でき、IPM101の歩留まりの低下を改善できる。
【0084】
しかも、放熱装置110上の装着面110a上に取り付けフレーム120を配置するようにしたことによって、パワー半導体モジュール130の装着の高精度化が可能となり、IPM101の信頼性の向上が図れる。
【0085】
さらには、放熱装置110上の装着面110a上に配置した取り付けフレーム120をガイド役に、パワー半導体モジュール130を装着できるようにしたことによって、パワー半導体モジュール130の装着の自動化が可能となり、量産化や低廉化といったIPM101の生産性を向上させることができる。
【0086】
また、第1の実施の形態に係るIPMを、例えば車載用とする場合においては、高性能化・高機能化と共に、より一層の安全性を確保しつつ、高効率のシステムの開発が可能になる。
【0087】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係るIPM201は、第1の実施の形態に係るIPM101とほぼ同一の構造を備える(
図1参照)。具体的には、第2の実施の形態に係るIPM201は、接合部材としての半田を備える半田層210Sを用い、押さえ板160Sを放熱板160Aに変更するようにしたものである。それ以外は第1の実施の形態に係るIPM101と同一の構造であるため、同一部分には同一の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0088】
第2の実施の形態に係るIPM201の模式的分解鳥瞰構成は、
図9(a)〜
図9(g)に示すように表わされる。
【0089】
すなわち、第2の実施の形態に係るIPM201は、放熱装置110上の装着面110a上に各パワー半導体モジュール130
nを接合する接合部材210Sを備え、接合部材210Sは、各パワー半導体モジュール130
nを装着面110a上に固定する半田を備える。
【0090】
また、断熱シート150上には、駆動回路部180との間に、放熱性を有する金属薄板を備え、半田層210Sによって固定された各パワー半導体モジュール130
nの発熱を放熱する放熱板160A、および放熱シート170をさらに備える。
【0091】
ここで、
図9(a)〜
図9(g)を参照して、第2の実施の形態に係るIPM201を製造する際の組み立て方法について説明する。
【0092】
まず、
図9(g)に示すように、予め、放熱部112の装着面110aに半田層210Sを形成した放熱装置110を準備する。
【0093】
そして、第1の実施の形態に係るIPM101の場合と同様に、取り付けフレーム120の配置(f)、パワー半導体モジュール130の接合(e)、断熱シート150の装着(d)の各工程を実施した後、
図9(c)に示すように、断熱シート150上に放熱板160Aを装着・固定させる。
【0094】
ここで、放熱装置110上の装着面110a上には半田層210Sが設けられており、半田層210Sを介してパワー半導体モジュール130を接合させるようにした場合には、装着される各パワー半導体モジュール130
nの位置を固定させることが可能となる。そのため、ばね性を有する押さえ板160Sは必要なく、断熱シート150上には、Alなどの高い放熱性を有する金属薄板を備える放熱板160Aが配置される。
【0095】
この後、第1の実施の形態に係るIPM101の場合と同様に、放熱シート170の装着(b)、駆動回路部180の搭載(a)などの各工程が行われて、第2の実施の形態に係るIPM201が完成する。
【0096】
すなわち、第2の実施の形態に係るIPM201の組み立て方法は、放熱装置110上の装着面110a上に取り付けフレーム120を配置する工程と、取り付けフレーム120に基づいて、半導体デバイスを封止したパワー半導体モジュール130を装着する工程と、パワー半導体モジュール130上に、断熱シート150を介して、パワー半導体モジュール130を駆動する駆動回路部180を搭載する工程とを有する。
【0097】
また、装着面110aに、パワー半導体モジュール130を固定させるための半田層210Sを形成する工程と、断熱シート150上に、半田層210Sによって固定されたパワー半導体モジュール130の発熱を放熱させる放熱板160Aを配置する工程と、放熱板160A上に放熱シート170を配置する工程とをさらに有する。
【0098】
このように、第2の実施の形態に係るIPM201によっても、IPM101の場合と同様に、放熱特性に優れ、モジュール化が容易であり、小型化にとって好適なものとすることができる。
【0099】
また、IPM101の場合と同様に、IPM201によれば、信頼性や生産性の向上が可能となる。
【0100】
また、IPM201の製造工程において、少なくとも放熱装置110上へのパワー半導体モジュール130の装着が、ロボットアーム820などを備えた自動組み立て装置800(
図8参照)により自動化されることによって量産化や低廉化などが可能となる。
【0101】
すなわち、第2の実施の形態に係るIPM201の組み立て方法は、自動組み立て装置800を備え、各工程のうち、少なくともいずれか1つの工程が自動組み立て装置800を用いて実施される。
【0102】
また、自動組み立て装置800はロボットアーム820を備え、各工程のうち、少なくとも取り付けフレーム120に基づいて、パワー半導体モジュール130を装着する工程は、ロボットアーム820を用いて実施される。
【0103】
なお、第2の実施の形態に係るIPM201においては、放熱板160Aおよび放熱シート170は必須の構成要件ではなく、省略することもできる。
【0104】
すなわち、第2の実施の形態に係るIPM201は、放熱装置110と、放熱装置110上の装着面110a上に配置された取り付けフレーム120と、取り付けフレーム120に基づいて装着され、半導体デバイスを封止したパワー半導体モジュール130(各パワー半導体モジュール130
n)と、パワー半導体モジュール130上に断熱シート150を介して搭載され、パワー半導体モジュール130を駆動する駆動回路部180とを備える。
【0105】
また、第2の実施の形態に係るIPMを、例えば車載用とする場合においては、高性能化・高機能化と共に、より一層の安全性を確保しつつ、高効率のシステムの開発が可能になる。
【0106】
[第3の実施の形態]
(インテリジェントパワーモジュールの概略構成)
第3の実施の形態に係るIPM301の平面構造は、
図10に示すように表わされる。なお、
図10では、一部の駆動回路部180などを透過して示している。
【0107】
また、
図10中のXI−XI線に沿う断面構造は、
図11に示すように表わされ、
図10中のXII−XII線に沿う断面構造は、
図12に示すように表わされる。また、第3の実施の形態に係るIPM301の模式的分解鳥瞰構成は、
図13(a)〜
図13(g)に示すように表わされる。
【0108】
なお、第3の実施の形態に係るIPM301において、第1の実施の形態に係るIPM101と同一部分には同一の符号を付し、詳しい説明は省略する(
図1参照)。具体的には、第3の実施の形態に係るIPM301は、
図13(a)および
図13(g)に示すように、放熱装置として、放熱板(例えば、Al製のヒートシンクなどの放熱板(冷却板))310と、放熱板310に取り付けられたウォータージャケット(WJ)などの冷却器312とを備えるようにしたものであって、それ以外は第1の実施の形態に係るIPM101とほぼ同一の構造を備える。
【0109】
すなわち、第3の実施の形態に係るIPM301は、放熱装置(放熱板310+冷却器312)と、放熱板310上の装着面310a上に配置された取り付けフレーム120と、取り付けフレーム120に基づいて装着され、半導体デバイスを封止したパワー半導体モジュール130(各パワー半導体モジュール130
n)と、パワー半導体モジュール130上に断熱シート150を介して搭載され、パワー半導体モジュール130を駆動する駆動回路部180とを備える。
【0110】
ここで、放熱板310の非装着面(裏面)に装着可能な冷却器312は、
図10〜
図12に示すように、内部に複数の冷却壁322によって仕切られた複数の冷却路325を備える。複数の冷却路325は、冷却器312の長手方向に沿って平行に配置されている。冷却器312は、冷却路325内を冷却水が通過することによって、各パワー半導体モジュール130
nを冷却する。冷却器312は、一端部に冷却路325内に冷却水を取り込む取込口316が、他端部に冷却路325内を通過した冷却水を排出する排出口318が、それぞれ設けられる。
【0111】
放熱板310の一方向の両端部314には、それぞれ、断熱シート150および押さえ板160Sを、ネジなどの固定具190によって固定するための固定部320を備える。両端部314間が、各パワー半導体モジュール130
nを装着するための装着面310aとなり、熱伝導樹脂層(接合部材)210Tを備える。
【0112】
すなわち、第3の実施の形態に係るIPM301は、放熱板310上の装着面310a上に各パワー半導体モジュール130
nを接合する接合部材210Tを備え、接合部材210Tは、各パワー半導体モジュール130
nを放熱板310の装着面310aに保持する熱伝導樹脂を備える。
【0113】
また、断熱シート150上には、駆動回路部180との間に、ばね性を有する金属薄板を備え、熱伝導樹脂210Tによって保持された各パワー半導体モジュール130
nの動きを規制する押さえ板160S、および放熱シート170をさらに備える。
【0114】
また、第3の実施の形態に係るIPM301の組み立て方法は、放熱板310上の装着面310a上に取り付けフレーム120を配置する工程と、取り付けフレーム120に基づいて、半導体デバイスを封止したパワー半導体モジュール130を装着する工程と、パワー半導体モジュール130上に、断熱シート150を介して、パワー半導体モジュール130を駆動する駆動回路部180を搭載する工程とを有する。
【0115】
また、装着面310aに、パワー半導体モジュール130を保持させるための熱伝導樹脂層210Tを形成する工程と、断熱シート150上に、熱伝導樹脂層210Tによって保持されたパワー半導体モジュール130の動きを規制する押さえ板160Sを配置する工程と、押さえ板160S上に放熱シート170を配置する工程とをさらに有する。
【0116】
このように、第3の実施の形態に係るIPM301によっても、IPM101の場合と同様に、放熱特性に優れ、モジュール化が容易であり、小型化にとって好適なものとすることができる。
【0117】
また、IPM101の場合と同様に、IPM301によれば、信頼性や生産性の向上が可能となる。
【0118】
また、IPM301の組み立て工程において、少なくとも放熱板310上へのパワー半導体モジュール130の装着が、ロボットアーム820などを備えた自動組み立て装置800(
図8参照)により自動化されることによって量産化や低廉化などが可能となる。
【0119】
すなわち、第3の実施の形態に係るIPM301の組み立て方法は、自動組み立て装置800を備え、各工程のうち、少なくともいずれか1つの工程が自動組み立て装置800を用いて実施される。
【0120】
また、自動組み立て装置800はロボットアーム820を備え、各工程のうち、少なくとも取り付けフレーム120に基づいて、パワー半導体モジュール130を装着する工程は、ロボットアーム820を用いて実施される。
【0121】
なお、第3の実施の形態に係るIPM301においては、第1の実施の形態に係るIPM101に適用する場合に限らず、第2の実施の形態に係るIPM201に適用することも可能である。すなわち、IPM301は、放熱板310の装着面310aに半田層(接合部材)210Sによりパワー半導体モジュール130を固定させるように構成しても良く、その場合には、放熱板160Aおよび放熱シート170を省略することも可能である。
【0122】
また、第3の実施の形態に係るIPMを、例えば車載用とする場合においては、高性能化・高機能化と共に、より一層の安全性を確保しつつ、高効率のシステムの開発が可能になる。
【0123】
[第3の実施の形態の変形例]
(インテリジェントパワーモジュールの概略構成)
第3の実施の形態の変形例に係るIPM303の平面構造は、
図14に示すように表わされる。なお、
図14では、一部の駆動回路部180などを透過して示している。
【0124】
また、
図14中のXV−XV線に沿う断面構造は、
図15に示すように表わされ、
図14中のXVI−XVI線に沿う断面構造は、
図16に示すように表わされる。また、第3の実施の形態の変形例に係るIPM303の模式的分解鳥瞰構成は、
図17(a)〜
図17(g)に示すように表わされる。
【0125】
なお、第3の実施の形態の変形例に係るIPM303において、第3の実施の形態に係るIPM301と同一部分には同一の符号を付し、詳しい説明は省略する(
図10参照)。具体的には、第3の実施の形態の変形例に係るIPM303は、
図17(g)に示すように、放熱装置として、放熱板(例えば、Al製のヒートシンクなどの放熱板(冷却板))310と、放熱板310に取り付けられた放熱器330とを備えるようにしたものであって、それ以外は第3の実施の形態に係るIPM301とほぼ同一の構造を備える。
【0126】
ここで、放熱板310の非装着面(裏面)に装着可能な放熱器330は、
図14〜
図16に示すように、複数枚の冷却フィン(放熱フィンまたは平板フィン)330Fを備える。
【0127】
すなわち、第3の実施の形態の変形例に係るIPM303は、放熱装置(放熱板310+放熱器330)と、放熱板310上の装着面310a上に配置された取り付けフレーム120と、取り付けフレーム120に基づいて装着され、半導体デバイスを封止したパワー半導体モジュール130(各パワー半導体モジュール130
n)と、パワー半導体モジュール130上に断熱シート150を介して搭載され、パワー半導体モジュール130を駆動する駆動回路部180とを備える。
【0128】
また、第3の実施の形態の変形例に係るIPM303は、放熱板310の装着面310aに各パワー半導体モジュール130
nを接合する接合部材210Tを備え、接合部材210Tは、各パワー半導体モジュール130
nを放熱板310の装着面310aに保持する熱伝導樹脂を備える。
【0129】
また、断熱シート150上には、駆動回路部180との間に、ばね性を有する金属薄板を備え、熱伝導樹脂210Tによって保持された各パワー半導体モジュール130
nの動きを規制する押さえ板160S、および放熱シート170をさらに備える。
【0130】
また、第3の実施の形態の変形例に係るIPM303の組み立て方法は、放熱板310上の装着面310a上に取り付けフレーム120を配置する工程と、取り付けフレーム120に基づいて、半導体デバイスを封止したパワー半導体モジュール130を装着する工程と、パワー半導体モジュール130上に、断熱シート150を介して、パワー半導体モジュール130を駆動する駆動回路部180を搭載する工程とを有する。
【0131】
また、装着面310aに、パワー半導体モジュール130を保持させるための熱伝導樹脂層210Tを形成する工程と、断熱シート150上に、熱伝導樹脂層210Tによって保持されたパワー半導体モジュール130の動きを規制する押さえ板160Sを配置する工程と、押さえ板160S上に放熱シート170を配置する工程とをさらに有する。
【0132】
このように、第3の実施の形態の変形例に係るIPM303によっても、IPM301の場合と同様に、放熱特性に優れ、モジュール化が容易であり、小型化にとって好適なものとすることができる。
【0133】
また、IPM301の場合と同様に、IPM303によれば、信頼性や生産性の向上が可能となる。
【0134】
また、IPM303の製造工程において、少なくとも放熱板310上へのパワー半導体モジュール130の装着が、ロボットアーム820などを備えた自動組み立て装置800(
図8参照)により自動化されることによって量産化や低廉化などが可能となる。
【0135】
すなわち、第3の実施の形態の変形例に係るIPM303の組み立て方法は、自動組み立て装置800を備え、各工程のうち、少なくともいずれか1つの工程が自動組み立て装置800を用いて実施される。
【0136】
また、自動組み立て装置800はロボットアーム820を備え、各工程のうち、少なくとも取り付けフレーム120に基づいて、パワー半導体モジュール130を装着する工程は、ロボットアーム820を用いて実施される。
【0137】
なお、第3の実施の形態の変形例に係るIPM303において、放熱器330としては、冷却フィンに限らず、例えば
図18に示すような、複数本の冷却ピン(放熱ピン)330Pを備えるものであっても良い。
【0138】
もちろん、IPM303は、放熱板310上の装着面310a上に半田層(接合部材)210Sによりパワー半導体モジュール130を固定させるように構成しても良く、半田層210Sを用いる場合には、放熱板160Aおよび放熱シート170を省略することも可能である。
【0139】
また、第3の実施の形態の変形例に係るIPMを、例えば車載用とする場合においては、高性能化・高機能化と共に、より一層の安全性を確保しつつ、高効率のシステムの開発が可能になる。
【0140】
(適用例1)
次に、第1の実施の形態に係るIPM101を例に、適用例について説明する。
【0141】
図19は、第1の実施の形態に係るIPM101を、例えば、電気自動車またはハイブリッドカーのパワーコントロールユニットに搭載した場合を例示するものであって、駆動回路部180は、1次側回路部180Aと2次側回路部180Bとから構成される。
【0142】
1次側回路部180Aには、絶縁トランス181(181
1・181
2・181
3・181
4・181
5・181
6)の1次コイル(L1)、スイッチレギュレータ182、LDO(Low Drop Out)183、温度モニタ回路184、短絡保護回路185、電圧降下検出回路186、および絶縁カプラ(フォトカプラ)187(187
1・187
2・187
3・187
4・187
5・187
6)の受光部側が設けられる。絶縁トランス181の1次コイル(L1)は、スイッチレギュレータ182に共通に接続され、スイッチレギュレータ182およびLDO183は、例えば、電気自動車またはハイブリッドカーのバッテリ64に接続される。絶縁カプラ187の受光部側には、温度モニタ回路184、短絡保護回路185、および電圧降下検出回路186が共通に接続される。
【0143】
2次側回路部180Bには、絶縁トランス181の2次コイル(L2)、ゲートドライバ188、および絶縁カプラ187の発光部側が設けられる。絶縁トランス181の2次コイル(L2)は、ゲートドライバ188、温度モニタ回路184、短絡保護回路185、および電圧降下検出回路186に共通に接続される。絶縁カプラ187の発光部側には、ゲートドライバ188が接続される。
【0144】
ゲートドライバ188および温度モニタ回路184は、LDO183とパワー半導体モジュール130(各パワー半導体モジュール130
n)との間に接続される。また、ゲートドライバ188、温度モニタ回路184、短絡保護回路185、および電圧降下検出回路186は、電気自動車またはハイブリッドカーのECU(Engine Control Unit)62に接続される。
【0145】
なお、ゲートドライバ188は、複数の高圧側のドライブ回路HS1・HS2・HS3と複数の低圧側のドライブ回路LS4・LS5・LS6とを有し、後述する電源回路から正負の電源が供給される。
【0146】
このような構成を有する駆動回路部180の平面パターン構成(基板構成)は、
図20(a)および
図20(b)に示すように表わされる。なお、
図20(a)は、駆動回路部180の表側(上面)180Sの平面パターン構成を示す概略図であり、
図20(b)は、表側180Sの平面パターン構成を透過した状態で裏側(下面)180Rの平面パターン構成を示す概略図である。
【0147】
すなわち、第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能な各パワー半導体モジュール130
n上に搭載される駆動回路部180は、例えば、複数個の各パワー半導体モジュール130
nに対して共通に設けられる。駆動回路部180は矩形形状を有し、長手方向に沿って配置された1次側回路部180Aと、1次側回路部180Aに隣接配置された2次側回路部180Bとを備える。
【0148】
1次側回路部180Aの表側180Sによって、上述のスイッチレギュレータ182およびLDO183を含む電源回路などが構成される。裏側180Rには、温度モニタ回路184、短絡保護回路185、および電圧降下検出回路186などが配置される。
【0149】
2次側回路部180Bでは、ゲートドライバ188の複数の高圧側のドライブ回路HS1・HS2・HS3と複数の低圧側のドライブ回路LS4・LS5・LS6とが交互に配置される。
【0150】
2次側回路部180Bの各ドライブ回路HS1・HS2・HS3・LS4・LS5・LS6は、1次側回路部180Aと2次側回路部180Bとにまたがって配置された絶縁トランス181
1〜181
6をそれぞれに介して、1次側回路部180Aの表側180Sの電源回路と共通に接続される。また、各ドライブ回路HS1・HS2・HS3・LS4・LS5・LS6は、1次側回路部180Aと2次側回路部180Bとにまたがって配置された絶縁カプラ187
1〜187
6をそれぞれに介して、1次側回路部180Aの裏側180Rの温度モニタ回路184・短絡保護回路185・電圧降下検出回路186と共通に接続される。
【0151】
ここで、第1の実施の形態に係るIPM101を適用して構成され、例えば、電気自動車またはハイブリッドカーの3相交流モータ部(図示省略)を駆動するための、3相交流インバータ101Aの概略構成について説明する。この3相交流インバータ101Aは、半導体デバイスQ1〜Q6にSiC MOSFET(Silicon Carbide Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を適用するようにした場合の例である。
【0152】
図21に示すように、3相交流インバータ101Aは、3相交流モータ部のU相、V相、W相に対応して、U相のインバータ(SiC MOSFET Q1・Q4)、V相のインバータ(SiC MOSFET Q2・Q5)、W相のインバータ(SiC MOSFET Q3・Q6)が接続されている。
【0153】
U相のインバータのSiC MOSFET Q1には、高圧側のドライブ回路HS1が、U相のインバータのSiC MOSFET Q4には、低圧側のドライブ回路LS4が、それぞれ接続される。同様に、V相のインバータのSiC MOSFET Q2には、高圧側のドライブ回路HS2が、V相のインバータのSiC MOSFET Q5には、低圧側のドライブ回路LS5が、それぞれ接続される。同様に、W相のインバータのSiC MOSFET Q3には、高圧側のドライブ回路HS3が、W相のインバータのSiC MOSFET Q6には、低圧側のドライブ回路LS6が、それぞれ接続される。
【0154】
図22に示す3相交流インバータ101Bは、
図21に示した3相交流インバータ101Aの回路構成をより詳細に示すもので、SiC MOSFET Q1〜Q6は、ボディダイオードBD1〜BD6をそれぞれ有する。また、SiC MOSFET Q1〜Q6のソース・ドレイン間には、フリーホイールダイオードDI1〜DI6がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0155】
なお、フリーホイールダイオードDI1〜DI6に代えて、例えばショットキーバリアダイオードをそれぞれ逆並列に接続するようにしても良い。
【0156】
(回路構成)
次に、第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能なパワー半導体モジュール130の回路構成例について、より具体的に説明する。
【0157】
ここでは、第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能なパワー半導体モジュール130
1であって、2個の半導体デバイスQ1・Q4が1つのパッケージ132内にモールドされた半導体パッケージ装置、いわゆる2 in 1タイプのモジュールについて説明する。
【0158】
半導体デバイスQ1・Q4として、SiC MOSFETを適用した2 in 1モジュール130Aの回路構成は、例えば
図23(a)に示すように表わされる。
【0159】
すなわち、2 in 1モジュール130Aは、
図23(a)に示すように、2個のSiC MOSFET Q1・Q4が1つのモジュールとして内蔵された、ハーフブリッジ内蔵モジュールの構成を備える。
【0160】
ここで、モジュールは、1つの大きなトランジスタとみなすことができるが、内蔵されているトランジスタが1チップまたは複数チップの場合がある。すなわち、モジュールには、1 in 1(ワンインワン)、2 in 1、4 in 1(フォーインワン)、6 in 1などがあり、例えば、1つのモジュール上において、2個分のトランジスタ(チップ)を内蔵したモジュールは2 in 1、2 in 1を2組み内蔵したモジュールは4 in 1、2 in 1を3組み内蔵したモジュールは6 in 1と呼ばれている。
【0161】
図23(a)に示すように、2 in 1モジュール130Aは、2個のSiC MOSFET Q1・Q4と、SiC MOSFET Q1・Q4に逆並列接続されるダイオードDI1・DI4が1つのモジュールとして内蔵されている。
図23(a)において、G1は、SiC MOSFET Q1のゲート信号用のリード端子であり、S1は、SiC MOSFET Q1のソース信号用のリード端子である。同様に、G4は、SiC MOSFET Q4のゲート信号用のリード端子であり、S4は、SiC MOSFET Q4のソース信号用のリード端子である。また、Pは、正側電源入力端子電極であり、Nは、負側電源入力端子電極であり、Oは、出力端子電極である。
【0162】
また、第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能なパワー半導体モジュール130
1であって、半導体デバイスQ1・Q4として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を適用した2 in 1モジュール130Bの回路構成は、
図23(b)に示すように表わされる。
【0163】
図23(b)に示すように、2 in 1モジュール130Bは、2個のIGBT Q1・Q4と、IGBT Q1・Q4に逆並列接続されるダイオードDI1・DI4が1つのモジュールとして内蔵されている。
図23(b)において、G1は、IGBT Q1のゲート信号用のリード端子であり、E1は、IGBT Q1のエミッタ信号用のリード端子である。同様に、G4は、IGBT Q4のゲート信号用のリード端子であり、E4は、IGBT Q4のエミッタ信号用のリード端子である。また、Pは、正側電源入力端子電極であり、Nは、負側電源入力端子電極であり、Oは、出力端子電極である。
【0164】
第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能なパワー半導体モジュール130
2に適用される半導体デバイスQ2・Q5、およびパワー半導体モジュール130
3に適用される半導体デバイスQ3・Q6についても同様であり、詳しい説明は省略する。
【0165】
(デバイス構造)
第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能なパワー半導体モジュール130
1のデバイス構造であって、半導体デバイスQ1・Q4として適用されるSiC MOSFET 130Aの模式的断面構造は、
図24(a)に示すように表わされ、IGBT 130Bの模式的断面構造は、
図24(b)に示すように表わされる。
【0166】
図24(a)に示すように、SiC MOSFET 130Aは、n- 高抵抗層からなる半導体基板31と、半導体基板31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたソース領域33と、pボディ領域32間の半導体基板31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体基板31の表面と反対側の裏面に配置されたn+ ドレイン領域37と、n+ ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
【0167】
図24(a)において、SiC MOSFET 130Aは、プレーナゲート型のnチャネル縦型SiC MOSFETで構成されているが、後述する
図28に示すように、トレンチゲート型のnチャネル縦型SiC T(Trench) MOSFET 130Cなどで構成されていても良い。
【0168】
または、第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能なパワー半導体モジュール130
1に適用される半導体デバイスQ1・Q4としては、SiC MOSFET 130Aの代わりに、GaN系FETなどを採用することもできる。
【0169】
第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能なパワー半導体モジュール130
2に適用される半導体デバイスQ2・Q5、およびパワー半導体モジュール130
3に適用される半導体デバイスQ3・Q6についても同様である。
【0170】
さらには、第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能なパワー半導体モジュール130に適用される半導体デバイスQ1〜Q6には、バンドギャップエネルギーが、例えば、1.1eV〜8eVの半導体を用いることができる。
【0171】
同様に、第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能なパワー半導体モジュール130
1であって、半導体デバイスQ1・Q4として適用されるIGBT 130Bは、
図24(b)に示すように、n- 高抵抗層からなる半導体基板31と、半導体基板31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたエミッタ領域33Eと、pボディ領域32間の半導体基板31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、エミッタ領域33Eおよびpボディ領域32に接続されたエミッタ電極36Eと、半導体基板31の表面と反対側の裏面に配置されたp+ コレクタ領域37Pと、p+ コレクタ領域37Pに接続されたコレクタ電極38Cとを備える。
【0172】
図24(b)において、IGBT 130Bは、プレーナゲート型のnチャネル縦型IGBTで構成されているが、トレンチゲート型のnチャネル縦型IGBTなどで構成されていても良い。
【0173】
第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能なパワー半導体モジュール130
1に適用される半導体デバイスQ1・Q4の例であって、ソースパッド電極SP、ゲートパッド電極GPを含むSiC MOSFET 130Aの模式的断面構造は、
図25に示すように表わされる。
【0174】
ゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続され、ソースパッド電極SPは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。また、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPは、
図25に示すように、SiC MOSFET 130Aの表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
【0175】
なお、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPの下方の半導体基板31内には、図示していないが、
図24(a)の中央部と同様に、微細構造のトランジスタ構造が形成されていても良い。
【0176】
さらに、
図26に示すように、中央部のトランジスタ構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜39上にソースパッド電極SPが延在して配置されていても良い。
【0177】
第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能なパワー半導体モジュール130
1に適用される半導体デバイスQ1・Q4の例であって、エミッタパッド電極EP、ゲートパッド電極GPを含むIGBT 130Bの模式的断面構造は、
図26に示すように表わされる。
【0178】
ゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続され、エミッタパッド電極EPは、エミッタ領域33Eおよびpボディ領域32に接続されたエミッタ電極36Eに接続される。また、ゲートパッド電極GPおよびエミッタパッド電極EPは、
図26に示すように、IGBT 130Bの表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
【0179】
なお、ゲートパッド電極GPおよびエミッタパッド電極EPの下方の半導体基板31内には、図示していないが、
図24(b)の中央部と同様に、微細構造のIGBT構造が形成されていても良い。
【0180】
さらに、
図26に示すように、中央部のIGBT構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜39上にエミッタパッド電極EPが延在して配置されていても良い。
【0181】
第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能なパワー半導体モジュール130
2に適用される半導体デバイスQ2・Q5、およびパワー半導体モジュール130
3に適用される半導体デバイスQ3・Q6についても同様である。
【0182】
半導体デバイスQ1〜Q6としては、SiC DI(Double Implanted) MOSFET、SiC T MOSFETなどのSiC系パワーデバイス、あるいはGaN系高電子移動度トランジスタ(HEMT: High Electron Mobility Transistor)などのGaN系パワーデバイスを適用可能である。また、場合によっては、Si系MOSFETやIGBTなどのパワーデバイスも適用可能である。
【0183】
―SiC DI MOSFET―
第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能なパワー半導体モジュール130に適用される半導体デバイスの例であって、SiC DI MOSFET 130Dの模式的断面構造は、
図27に示すように表わされる。
【0184】
図27に示すように、第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能なパワー半導体モジュール130に適用されるSiC DI MOSFET 130Dは、n- 高抵抗層からなる半導体基板31と、半導体基板31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn+ ソース領域33と、pボディ領域32間の半導体基板31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体基板31の表面と反対側の裏面に配置されたn+ ドレイン領域37と、n+ ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
【0185】
図27において、SiC DI MOSFET 130Dは、pボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn+ ソース領域33が、ダブルイオン注入(DII)で形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。
【0186】
ゲートパッド電極GPは、図示を省略しているが、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続される。また、ソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GPは、
図27に示すように、SiC DI MOSFET 130Dの表面を覆うように、パッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
【0187】
SiC DI MOSFETは、
図27に示すように、pボディ領域32に挟まれたn- 高抵抗層からなる半導体基板31内に、破線で示されるような空乏層が形成されるため、接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗R
JFETが形成される。また、pボディ領域32/半導体基板31間には、
図27に示すように、ボディダイオードBDが形成される。
【0188】
―SiC T MOSFET―
第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能なパワー半導体モジュール130に適用される半導体デバイスの例であって、SiC T MOSFETの模式的断面構造は、
図28に示すように表わされる。
【0189】
図28に示すように、第1の実施の形態に係るIPM101に適用可能なパワー半導体モジュール130に適用されるSiC T MOSFET 130Cは、n層からなる半導体基板31Nと、半導体基板31Nの表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn+ ソース領域33と、pボディ領域32を貫通し、半導体基板31Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁膜34および層間絶縁膜39U・39Bを介して形成されたトレンチゲート電極35TGと、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体基板31Nの表面と反対側の裏面に配置されたn+ ドレイン領域37と、n+ ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
【0190】
図28において、SiC T MOSFET 130Cは、pボディ領域32を貫通し、半導体基板31Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁膜34および層間絶縁膜39U・39Bを介してトレンチゲート電極35TGが形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。
【0191】
ゲートパッド電極GPは、図示を省略しているが、ゲート絶縁膜34上に配置されたトレンチゲート電極35TGに接続される。また、ソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GPは、
図28に示すように、SiC T MOSFET 130Cの表面を覆うように、パッシベーション用の層間絶縁膜39U上に配置される。
【0192】
SiC T MOSFET 130Cでは、SiC DI MOSFET 130Dのような接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗R
JFETは形成されない。また、pボディ領域32/半導体基板31N間には、
図27と同様に、ボディダイオードBDが形成される。
【0193】
(応用例)
第1の実施の形態に係るIPM101を用いて構成される3相交流インバータ40Aであって、半導体デバイスとしてSiC MOSFETを適用し、電源端子PL・接地端子NL間にスナバコンデンサCを接続した回路構成例は、
図29(a)に示すように表わされる。
【0194】
同様に、第1の実施の形態に係るIPM101を用いて構成される3相交流インバータ40Bであって、半導体デバイスとしてIGBTを適用し、電源端子PL・接地端子NL間にスナバコンデンサCを接続した回路構成例は、
図29(b)に示すように表わされる。
【0195】
第1の実施の形態に係るIPM101を電源Eと接続する際、接続ラインの有するインダクタンスLによって、SiC MOSFETやIGBTのスイッチング速度が速いため、大きなサージ電圧Ldi/dtを生ずる。例えば、電流変化di=300Aとし、スイッチングに伴う時間変化dt=100nsecとすると、di/dt=3×10
9(A/s)となる。
【0196】
インダクタンスLの値により、サージ電圧Ldi/dtの値は変化するが、電源Eに、このサージ電圧Ldi/dtが重畳される。電源端子PL・接地端子NL間に接続されるスナバコンデンサCによって、このサージ電圧Ldi/dtを吸収することができる。
【0197】
(具体例)
次に、
図30を参照して、半導体デバイスとしてSiC MOSFETを適用し、第1の実施の形態に係るIPM101を用いて構成した3相交流インバータ42Aについて説明する。
【0198】
図30に示すように、3相交流インバータ42Aは、駆動回路部180を備えたIPM101と、3相交流モータ部51と、電源もしくは蓄電池(E)53と、コンバータ55とを備える。IPM101は、3相交流モータ部51のU相、V相、W相に対応して、U相、V相、W相のインバータが接続されている。
【0199】
ここで、駆動回路部180は、SiC MOSFET Q1・Q4、SiC MOSFET Q2・Q5、およびSiC MOSFET Q3・Q6に接続されている。
【0200】
IPM101は、電源もしくは蓄電池(E)53が接続されたコンバータ55のプラス端子(+)Pとマイナス端子(−)Nとの間に接続され、インバータ構成のSiC MOSFET Q1・Q4、Q2・Q5、およびQ3・Q6を備える。また、SiC MOSFET Q1〜Q6のソース・ドレイン間には、フリーホイールダイオードDI1〜DI6がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0201】
次に、
図31を参照して、半導体デバイスとしてIGBTを適用し、第1の実施の形態に係るIPM101を用いて構成した3相交流インバータ42Bについて説明する。
【0202】
図31に示すように、3相交流インバータ42Bは、駆動回路部180を備えたIPM101と、3相交流モータ部51と、電源もしくは蓄電池(E)53と、コンバータ55とを備える。IPM101は、3相交流モータ部51のU相、V相、W相に対応して、U相、V相、W相のインバータが接続されている。
【0203】
ここで、駆動回路部180は、IGBT Q1・Q4、IGBT Q2・Q5、およびIGBT Q3・Q6に接続されている。
【0204】
IPM101は、蓄電池(E)53が接続されたコンバータ55のプラス端子(+)Pとマイナス端子(−)Nとの間に接続され、インバータ構成のIGBT Q1・Q4、Q2・Q5、およびQ3・Q6を備える。また、IGBT Q1〜Q6のエミッタ・コレクタ間には、フリーホイールダイオードDI1〜DI6がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0205】
(適用例2)
適用例2は、例えば、第1の実施の形態に係るIPM101を、電気自動車またはハイブリッドカーのパワーコントロールユニットに搭載した場合の他の適用例を例示するものであって、パワーコントロールユニット60の回路ブロック構成は、
図32に示すように表わされる。
【0206】
図32に示すように、電気自動車またはハイブリッドカーのパワーコントロールユニット60に搭載可能なIPM101は、例えば、自動車用エンジンとなるモータ(図示省略)に3相の駆動電流を供給する3相交流インバータ60Aとして構成される。
【0207】
3相交流インバータ60Aは、電気自動車またはハイブリッドカーのパワーコントロールユニット60において、モータの駆動などをコントロールするECU62によって制御される。
【0208】
なお、上記した適用例や具体例などの記載においては、第1の実施の形態に係るIPM101を例に記載したが、これに限らず、他のIPMももちろん適用可能である。
【0209】
(適用例3)
適用例3は、例えば、第1の実施の形態に係るIPM101を、電気自動車のパワーコントロールユニット60に適用する場合を例示するものであって、モジュール用冷却系74を含む冷却機構部72の回路ブロック構成は、
図33に示すように表わされる。
【0210】
図33に示すように、電気自動車のパワーコントロールユニット60に適用可能な冷却機構部72は、例えば、自動車用エンジンとなるモータ(図示省略)に3相の駆動電流を供給する3相交流インバータとして構成されるIPM101を、モジュール用冷却系74を用いて冷却するように構成される。
【0211】
冷却機構部72において、モジュール用冷却系74は、ラジエータ76とポンプ78とを有する。ラジエータ76は、IPM101より熱を吸収することによって上昇した冷却水の温度を、ある温度まで低下させる。ポンプ78は、ラジエータ76によって一定の温度に保持された冷却水を、IPM101の放熱装置110に繰り返し供給する。
【0212】
このような構成を備える冷却機構部72は、例えば、電気自動車のパワーコントロールユニット60において、モータの駆動などをコントロールするECU62によって制御されるようにしても良いし、ECU62の制御によらず常にIPM101を冷却できるようにしても良い。
【0213】
なお、この冷却機構部72を、モータとは別に、自動車用エンジンを搭載したハイブリッドカーのパワーコントロールユニット60に適用する場合においては、
図34に示すように、IPM101をモジュール用冷却系74により冷却する場合に限らず、エンジン冷却用に搭載されているエンジン用ラジエータ86とポンプ88とを有するハイブリッド用冷却系84を用いて冷却するようにしても良い。ハイブリッド用冷却系84によってIPM101を冷却できるようにしたハイブリッドカーにおいては、モジュール用冷却系74による冷却とハイブリッド用冷却系84による冷却とをECU62によって切換可能に構成することは勿論のこと、冷却機構部72におけるモジュール用冷却系74の搭載を省略することも可能である。
【0214】
電気自動車のパワーコントロールユニット60またはハイブリッドカーのパワーコントロールユニット60においては、IPM101に限らず、上記したいずれの実施の形態に係るIPM201・301(IPM303を除く)も適用可能である。
【0215】
以上説明したように、本実施の形態によれば、放熱特性に優れ、モジュール化が容易であり、小型化にとって好適なIPMを実現できる。したがって、複数のパワー半導体モジュール130を効率よく冷却でき、チップが過熱により破壊されたり、配線が溶断されたりするのを抑制でき、より信頼性の高い電気自動車またはハイブリッドカーを提供することができる。
【0216】
すなわち、第1〜第3の実施の形態に係るIPM101・201・301・303を、例えば車載用とする場合においては、高性能化・高機能化と共に、より一層の安全性を確保しつつ、高効率のシステムの開発が可能になる。
【0217】
なお、本実施の形態において、モールド型パワーモジュールとしては、端子電極O・P・Nを1本ずつ備える3端子構造のパワー半導体モジュール130に限らず、例えば
図35に示すように、4端子構造のモールド型パワーモジュール600などであっても良い。
【0218】
ここで、SiC MOSFETを適用した2 in 1タイプの4端子構造のモールド型パワーモジュール600において、パッケージ602を形成後の平面構成(外観構造)は、
図35(a)に示すように表わされ、パッケージ602を形成前の平面パターン構成(内部構造)は、
図35(b)に示すように表わされる。
【0219】
すなわち、モールド型パワーモジュール600は、
図35(a)および
図35(b)に示すように、2個のSiC MOSFET Q1・Q4が内蔵されたハーフブリッジ内蔵モジュールの構成を備える。
図35(b)には、SiC MOSFET Q1・Q4が、それぞれ4チップ並列に配置されている例が示されている。例えば、SiC MOSFET Q1・Q4は、最大で5個のトランジスタ(チップ)を搭載することが可能であり、5チップの一部をダイオードDI用として使用することも可能である。
【0220】
モールド型パワーモジュール600は、例えば、パッケージ602に被覆されたセラミックス基板604の第1の辺に配置された正側電源入力端子D1(ドレイン端子電極P)および負側電源入力端子S4(接地電位端子電極N)と、第1の辺に隣接する第2の辺に配置されたゲート信号用のリード端子(ゲート信号端子電極)GT1・ソースセンス信号用のリード端子(ソース信号端子電極)SST1と、第1の辺に対向する第3の辺に配置された出力端子電極S1(O)・D4(O)と、第2の辺に対向する第4の辺に配置されたゲート信号用のリード端子GT4・ソースセンス信号用のリード端子SST4とを備える。
【0221】
図35(b)に示すように、ゲート信号用のリード端子GT1・ソースセンス信号用のリード端子SST1は、SiC MOSFET Q1のゲート信号電極パターンGL1・ソース信号電極パターンSL1に接続され、ゲート信号用のリード端子GT4・ソースセンス信号用のリード端子SST4は、SiC MOSFET Q4のゲート信号電極パターンGL4・ソース信号電極パターンSL4に接続される。
【0222】
SiC MOSFET Q1・Q4から信号基板624
1・624
4上に配置されたゲート信号電極パターンGL1・GL4およびソース信号電極パターンSL1・SL4に向けて、ゲート用ワイヤGW1・GW4およびソースセンス用ワイヤSSW1・SSW4が接続される。また、ゲート信号電極パターンGL1・GL4およびソース信号電極パターンSL1・SL4には、外部取り出し用のゲート信号用のリード端子GT1・GT4およびソースセンス信号用のリード端子SST1・SST4が半田付けなどによって接続される。
【0223】
4チップ並列に配置されたSiC MOSFET Q1・Q4のソースS1・S4は、上面板電極622
1・622
4によって共通に接続される。
【0224】
なお、図示が省略されているが、SiC MOSFET Q1・Q4のドレインD1・ソースS1間およびドレインD4・ソースS4間に逆並列にダイオードが接続されていても良い。
【0225】
また、本実施の形態に係るIPMのパワー半導体モジュールに適用可能なモールド型パワーモジュールとしては、SiC系パワーデバイス(半導体デバイス)に限らず、GaN系やSi系のパワーデバイスも採用可能である。
【0226】
また、樹脂モールドされたモールド型パワーモジュールに限らず、ケース型のパッケージによってパッケージングされたパワーモジュール(半導体パッケージ装置)にも適用可能である。
【0227】
さらには、パワーモジュールとしては、内蔵する半導体デバイスが1チップから構成されるものに限定されないことは勿論であり、例えば、
図36(a)および
図36(b)に示すパワーモジュール700のように、半導体デバイス(Q)の他にダイオードD1などの電子部品を含むものであっても良い。
【0228】
なお、パワーモジュール700において、パッケージ702を形成後の平面構成(外観構造)は、
図36(a)に示すように表わされ、回路構成は、
図36(b)に示すように表わされる。
【0229】
[その他の実施の形態]
上記のように、いくつかの実施の形態について記載したが、開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0230】
このように、本実施の形態は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。