【課題】トランジスタおよび定電圧ダイオードが1チップ化されてなる半導体装置であって、低消費電力であり、かつIC等の外部デバイスに関する逆電圧防止および過電圧保護を発現できる半導体装置を提供する。
型ドレイン領域23との間のn型ボディ領域24、およびn型ボディ領域24に対向するゲート電極28を含むトランジスタ構造を有する半導体層22と、半導体層22に設けられた定電圧ダイオード29であって、p
型ソース領域25に接続されたn型部35およびゲート電極28に接続されたp型部34を有する定電圧ダイオード29とを含み、トランジスタ構造および定電圧ダイオード29が1チップ化されている、半導体装置を提供する。
p型ソース領域、p型ドレイン領域、前記p型ソース領域と前記p型ドレイン領域との間のn型ボディ領域、および前記n型ボディ領域に対向するゲート電極を含むトランジスタ構造を有する半導体層と、
前記半導体層に設けられた定電圧ダイオードであって、前記p型ソース領域に接続されたn型部および前記ゲート電極に接続されたp型部を有する定電圧ダイオードとを含み、
前記トランジスタ構造および前記定電圧ダイオードが1チップ化されている、半導体装置。
前記トランジスタ構造は、前記ゲート電極が前記半導体層に形成されたゲートトレンチに埋め込まれたポリシリコンからなるトレンチゲート構造を含む、請求項6に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置1の模式的な平面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る半導体装置1の模式的な底面図である。なお、
図1では、半導体装置1の構造を理解し易いように、パッケージ内部を透視して示している。
半導体装置1は、いわゆる面実装が可能な比較的小型の半導体装置として構成されている。半導体装置1の大きさの一例を挙げると、縦方向の寸法Lが0.6mm程度、幅方向の寸法Wが0.4mm程度、厚さ方向の寸法が0.36mm程度である。
【0018】
半導体装置1は、半導体素子2、主リード3、第1副リード4、第2副リード5、第1ワイヤ6、第2ワイヤ7および樹脂パッケージ8を含む。
半導体素子2は、いわゆるトランジスタとして構成されている。半導体素子2の表面には、ゲートメタル9およびソースメタル10が形成されている。なお、
図1および
図2では図示しないが、半導体素子2の裏面には、ドレイン電極11(後述)が形成されている。
【0019】
主リード3は、樹脂パッケージ8の長手方向一端部に配置されている。その反対側の長手方向他端部において、樹脂パッケージ8の両角部には、それぞれ、第1副リード4および第2副リード5が配置されている。
主リード3は、半導体素子2を裏面側から支持しており、ドレイン電極11(後述)と電気的に接続されている。主リード3は、平面視において、略四角形のメイン部12と、当該メイン部12の端面から選択的に突出した複数の突出部13とを含む。
【0020】
メイン部12は、その表面14に半導体素子2がボンディングされ、その裏面15は、樹脂パッケージ8の外面から露出している。
図1から明らかなように、メイン部12の表面14と裏面15の大きさを比べると、表面14が裏面15よりも大きくなっている。たとえば、裏面15は、その外縁が半導体素子2を取り囲むように半導体素子2よりも若干大きいサイズで構成され、表面14は、当該裏面15よりもさらに大きいサイズで構成されている。つまり、メイン部12は、裏面15を構成する半導体素子2の支持領域が選択的に厚く形成されており、この領域の一部が裏面15として樹脂パッケージ8の外面から露出している。裏面15は、半導体装置1のドレイン端子として使用される。
【0021】
突出部13は、たとえば、メイン部12において第1副リード4および第2副リード5の反対側の端面、および当該端面の側方の両端面から突出している。つまり、この実施形態では、メイン部12において第1副リード4および第2副リード5に対向する端面を除く全ての端面から突出部13が突出している。各突出部13は、樹脂パッケージ8の外面から露出している。
【0022】
第1副リード4は、平面視において、四角形に形成されている。第1副リード4の表面16には、第1ワイヤ6が接続されている。第1ワイヤ6は、ゲートメタル9に接続されている。これにより、第1副リード4は、第1ワイヤ6を介してゲートメタル9に電気的に接続されている。第1副リード4は、メイン部12と同様に、裏面17を構成する領域が選択的に厚く形成されており、この領域の一部が裏面17として樹脂パッケージ8の外面から露出している。また、第1副リード4の2つの側面18,18は、樹脂パッケージ8の角部を形成するように樹脂パッケージ8の外面から露出している。樹脂パッケージ8の外面から露出する裏面17および側面18,18は、半導体装置1のゲート端子として使用される。
【0023】
第2副リード5は、平面視において、四角形に形成されている。第2副リード5の表面19には、第2ワイヤ7が接続されている。第2ワイヤ7は、ソースメタル10に接続されている。これにより、第2副リード5は、第2ワイヤ7を介してソースメタル10に電気的に接続されている。第2副リード5は、メイン部12と同様に、裏面20を構成する領域が選択的に厚く形成されており、この領域の一部が裏面20として樹脂パッケージ8の外面から露出している。また、第2副リード5の2つの側面21,21は、樹脂パッケージ8の角部を形成するように樹脂パッケージ8の外面から露出している。樹脂パッケージ8の外面から露出する裏面20および側面21,21は、半導体装置1のソース端子として使用される。
【0024】
そして、主リード3、第1副リード4および第2副リード5は、たとえばCuからなる金属板に対してエッチング等のパターニングを施すことによって一括して形成することができる。
樹脂パッケージ8は、半導体素子2と、主リード3、第1副リード4および第2副リード5の一部ずつと、第1ワイヤ6と、第2ワイヤ7とを覆っており、たとえば黒色のエポキシ樹脂からなる。
【0025】
図3は、
図1の半導体素子2の模式的な平面図である。
図4は、
図3のIV−IV切断面における断面を示す図である。
図5は、定電圧ダイオード29の平面形状を説明するための模式図である。
半導体素子2は、トレンチゲート構造のp型チャネルMISFETを備える素子であって、半導体層22、p
−型ドレイン領域23、n型ボディ領域24、p
+型ソース領域25、n
+型ボディコンタクト領域26、ゲート絶縁膜27、ゲート電極28、定電圧ダイオード29、層間絶縁膜30、ゲートメタル9、ソースメタル10およびドレイン電極11を含む。
【0026】
半導体層22は、たとえば、p
+型基板31と、当該p
+型基板31上に半導体結晶を成長させることによって形成されたp
−型エピタキシャル層32とを含んでいてもよい。p
+型基板31およびp
−型エピタキシャル層32は、この実施形態ではシリコン(Si)からなるが、その他の半導体(たとえば、SiC、GaN等)からなっていてもよい。p
+型基板31に関して、その厚さは40μm〜250μm程度であってもよいし、そのp型不純物濃度は1×10
21cm
−3〜1×10
22cm
−3程度であってもよい。一方、p
−型エピタキシャル層32に関して、その厚さは3μm〜8μm程度であってもよいし、そのp型不純物濃度は1×10
16cm
−3〜1×10
17cm
−3程度であってもよい。また、半導体層22には、主にトランジスタ構造が配置されるアクティブ領域40と、当該アクティブ領域40を取り囲む外周領域41が設定されている。
【0027】
p
−型ドレイン領域23は、アクティブ領域40においてp
−型エピタキシャル層32の大部分を占める不純物領域である。後述するように、この実施形態では、n型ボディ領域24、p
+型ソース領域25およびn
+型ボディコンタクト領域26といった不純物領域がp
−型エピタキシャル層32に選択的に形成されているが、これらの不純物領域24〜26を除くp
−型の領域がp
−型ドレイン領域23であってよい。したがって、p
−型ドレイン領域23は、1×10
16cm
−3〜1×10
17cm
−3のp型不純物濃度を有していてもよい。
【0028】
n型ボディ領域24は、アクティブ領域40においてp
−型エピタキシャル層32の表面部に選択的に形成された不純物領域である。これにより、半導体素子2には、p
−型ドレイン領域23とn型ボディ領域24とのpn接合部からなるpnダイオード(寄生ダイオード51)が内蔵されている。また、n型ボディ領域24は、2×10
16cm
−3〜2×10
17cm
−3のn型不純物濃度を有していてもよい。
【0029】
p
+型ソース領域25は、n型ボディ領域24の表面部に形成された不純物領域である。また、p
+型ソース領域25は、1×10
21cm
−3〜5×10
21cm
−3のp型不純物濃度を有していてもよい。
n
+型ボディコンタクト領域26は、p
−型エピタキシャル層32の表面からp
+型ソース領域25を通過してn型ボディ領域24に達する不純物領域である。これにより、n型ボディ領域24は、n
+型ボディコンタクト領域26を介して、p
−型エピタキシャル層32の表面側から電気的に接続可能となっている。また、n
+型ボディコンタクト領域26は、1×10
21cm
−3〜5×10
21cm
−3のn型不純物濃度を有していてもよい。
【0030】
そして、半導体層22には、半導体層22の表面からp
+型ソース領域25およびn型ボディ領域24を貫通してp
−型ドレイン領域23に達するゲートトレンチ59が形成されている。ゲートトレンチ59は、p
−型エピタキシャル層32の表面部において格子状に形成されていてもよいし、ストライプ状に形成されていてもよい。これにより、複数のn型ボディ領域24は、平面視において行列状、ストライプ状に配列されていてもよい。n型ボディ領域24においては、ゲートトレンチ59の側面部にチャネル領域33が形成されている。
【0031】
ゲート絶縁膜27は、たとえば酸化シリコン(SiO
2)からなり、ゲートトレンチ59の内面に形成されている。ゲート絶縁膜27は、アクティブ領域40に加えて、外周領域41にも延びて形成されている。つまり、アクティブ領域40および外周領域41には、同一工程で形成された絶縁膜が形成されている。この実施形態では外周領域41上の絶縁膜もゲート絶縁膜27と称しているが、当該ゲート絶縁膜27はトランジスタ構造のスイッチングに寄与するものではないので、他の名称で呼んでもよい。
【0032】
ゲート電極28は、たとえばポリシリコンからなり、ゲート絶縁膜27を介してゲートトレンチ59に埋め込まれている。ゲート電極28は、ゲート絶縁膜27を介してチャネル領域33に対向している。
定電圧ダイオード29は、この実施形態ではポリシリコンからなり、ゲート絶縁膜27上に形成されている。定電圧ダイオード29は、ゲート電極28と同じ工程で形成することができる。定電圧ダイオード29は、
図5に示すように、外周領域41に沿って半導体素子2の周縁部に形成された外周ダイオードとして構成されている。外周ダイオードとしての定電圧ダイオード29は、その全体が外周領域41内に配置されていてもよいし、
図4および
図5に示すように、その一部が外周領域41内に配置され、残りがアクティブ領域40に配置されていてもよい。つまり、定電圧ダイオード29は、アクティブ領域40と外周領域41との間に跨って形成されていてもよい。
【0033】
定電圧ダイオード29は、p型部34およびn型部35を含む。p型部34およびn型部35は、それぞれ、ポリシリコン膜内の不純物領域によって構成されており、定電圧ダイオード29は、互いに隣接する一対のp型部34およびn型部35で構成されている。p型部34およびn型部35は、それぞれ、アクティブ領域40を取り囲む環状に形成されている。これにより、これらの間のpn接合部36は、アクティブ領域40を取り囲む環状の一体構造となっている。また、この実施形態では、p型部34およびn型部35は、それぞれ、互いに同じ幅W
1および幅W
2を有していてもよい。また、配置形態に関して、n型部35がp型部34よりも内側に配置されていてもよい。後述するように、p型部34がゲートメタル9に接続されることから、p型部34を外側にしておくことで、半導体素子2の周縁部に引き回されたゲートフィンガー42(後述)との接続構造を簡易にすることができる。たとえば、ゲートフィンガー42から直下にコンタクトを延ばすだけでよい。
【0034】
定電圧ダイオード29の降伏電圧Vzは、たとえば10V以下、好ましくは、6.8V〜8Vに設定されている。この範囲の降伏電圧Vzは、たとえば、p型部34のp型不純物濃度およびn型部35のn型不純物濃度を適宜設定することによって実現できる。たとえば、p型部34のp型不純物濃度を1×10
16cm
−3〜1×10
17cm
−3とし、n型部35のn型不純物濃度を1×10
21cm
−3〜5×10
21cm
−3とすることによって実現できる。
【0035】
層間絶縁膜30は、たとえば酸化シリコン(SiO
2)からなり、ゲート電極28および定電圧ダイオード29を覆うように、p
−型エピタキシャル層32上に形成されている。層間絶縁膜30には、p
+型ソース領域25およびn
+型ボディコンタクト領域26を露出させるコンタクトホール37、定電圧ダイオード29のp型部34を露出させるコンタクトホール38、および定電圧ダイオード29のn型部35を露出させるコンタクトホール39が形成されている。
【0036】
ゲートメタル9およびソースメタル10は、層間絶縁膜30上に形成された電極膜で構成されている。ゲートメタル9およびソースメタル10は、層間絶縁膜30上に電極膜の材料(たとえば、Alを含む金属)をスパッタ法等によって堆積させた後、当該電極膜に対してエッチング等のパターニングを施すことによって形成することができる。つまり、ゲートメタル9およびソースメタル10は、同じ工程で形成されてもよい。
【0037】
ゲートメタル9は、ゲートフィンガー42と、ゲートパッド43とを含む。
ゲートフィンガー42は、
図3に示すように、平面視において、半導体素子2の周縁部に沿って略四角環状に形成されており、ゲートフィンガー42に取り囲まれた領域に、アクティブ領域40が設定されている。ゲートフィンガー42は、コンタクトホール38を介して定電圧ダイオード29のp型部34に接続されている。また、ゲートフィンガー42は、層間絶縁膜30に形成されたコンタクトホール(図示せず)を介して、ゲート電極28にも接続されている。
【0038】
ゲートパッド43は、ゲートフィンガー42の一つの角部に設けられている。ゲートパッド43は、ゲートフィンガー42と一体的に連なるように形成されている。ゲートパッド43には、前述の第1ワイヤ6が接続される。
ソースメタル10は、ゲートフィンガー42およびゲートパッド43に取り囲まれた領域内に配置されている。このソースメタル10と、ゲートフィンガー42およびゲートパッド43とは、電極膜のエッチングによって形成された除去領域44によって隔てられている。ソースメタル10は、コンタクトホール37を介してp
+型ソース領域25およびn
+型ボディコンタクト領域26に接続されると共に、コンタクトホール39を介して定電圧ダイオード29のn型部35に接続されている。
【0039】
ドレイン電極11は、たとえばゲートメタル9およびソースメタル10と同じ材料からなり、p
+型基板31の裏面全面に形成されていてもよい。
以上説明した半導体装置1は、たとえば携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器全般に搭載されるIC(Integrated Circuit)の保護素子として好適に使用することができ、特に、比較的小型の半導体装置であることから、小型化が促進される携帯電話、スマートフォンに最適である。
【0040】
次に、
図6を参照して半導体装置1による回路保護の動作を説明する。
図6は、
図1の半導体装置1が接続された保護回路の一部を示す図である。なお、
図6の保護回路図は、
半導体装置1の一使用例に過ぎず、半導体装置1の接続形態は
図6の構成に限らない。
図6に示す保護回路45は、IC46および半導体装置1を含む。
IC46は、たとえば、スマートフォンの電源管理IC、送受信制御IC等、各種汎用ICであってよい。IC46は、たとえば、電源端子47(Vcc)、出力端子48(OUT)およびグランド端子49(GND)を有している。電源端子47は電源50に接続され、グランド端子49はグランド電位に接地されている。
【0041】
半導体装置1のドレイン端子D(
図2の主リード3)は、IC46の出力端子48に接続され、ソース端子S(
図2の第2副リード5)は、半導体装置1の出力端子OUTとして負荷(図示せず)に接続されている。また、半導体装置1のゲート端子G(
図2の第1副リード4)は、グランド電位に接地されている。
図6によれば、保護回路45において、ドレイン端子Dが正(+)、ソース端子Sが負(−)となる電圧が印加されることになる。つまり、p
−型ドレイン領域23が正(+)、p
+型ソース領域25が負(−)となる電圧を印加されることになるから、半導体素子2に内蔵される寄生ダイオード51に順方向バイアスが印加されることになる。これにより、当該寄生ダイオード51を介してドレイン端子D側からソース端子S側に電流が流れる。ドレイン端子D側からソース端子S側に電流が流れることで、ソースがゲートに対して正の電位となり(つまり、ゲートがソースに対して負となる)、これによりゲート電極28の直下のn型のチャネル領域33(
図4参照)に正孔が誘起されてトランジスタがオン状態になる。
【0042】
ここで、
図7は、MOSFETとショットキーバリアダイオード(SBD)の消費電力を比較するための図である。
図7において、(1)、(2)および(3)の実線は、それぞれ、1006サイズ(縦×横=1.0mm×0.6mm)のショットキーバリアダイオード、2512サイズ(縦×横=2.5mm×1.2mm)のショットキーバリアダイオードおよび0604サイズ(縦×横=0.6mm×0.4mm)のpチャネル型MOSFETの電流と消費電力との関係を示している。
図7に示すように、(1)および(2)のショットキーバリアダイオードでは、増加傾向にあるICの消費電流に合わせて消費電力を抑えるために1006サイズから2512サイズへと大型化する必要があるのに対し、MOSFETは、2512サイズに比べてかなり小型な0604サイズでも低消費電力である。
【0043】
したがって、半導体装置1をIC46に接続して使用すれば、ダイオードに比べて損失が少なく低消費電力であるトランジスタ構造に順方向電流を流すことができるので、小型なチップを採用することができる。その結果、電子機器等のIC46の保護素子として半導体装置1を使用すれば省スペース化を図ることができる。
一方、IC46によって制御される負荷が誘導性であるときには、負荷に流れる電流を遮断すると、負荷に逆起電力が発生する。この逆起電力に起因して、p
+型ソース領域25側が正(+)となる電圧が、p
+型ソース領域25−p
−型ドレイン領域23間にかかる場合がある。このような場合には、寄生ダイオード51に逆方向バイアスが印加されることになるので、IC46の内部回路に電流が流れず、IC46を保護することができる。この際、定電圧ダイオード29のpn接合部36にも逆方向バイアスが印加されることになる。したがって、当該負荷の逆起電力が大きい場合や、静電気、サージ電圧等の大電圧が印加されたときには、定電圧ダイオード29がツェナー降伏し、逆電流が定電圧ダイオード29を介してゲート側(グランド電位側)に流れるので、大電流がIC46へ流れることを防止することができる。
【0044】
以上より、電子機器等のIC46の保護素子として半導体装置1を使用すれば、低消費電力でありながら、IC46に関する逆電圧防止および過電圧保護を発現することもできるので、保護素子としての保護機能を維持することができる。しかも、トランジスタ構造と定電圧ダイオード29が1チップ化されているので、これらが別々のチップとして搭載する場合に比べて、さらなる省スペース化を図ることができる。
【0045】
一方で、
図7で示したように、ダイオードは小型になるほど消費電力が大きくなるので、小型化した半導体装置1においては、定電圧ダイオード29の消費電力(損失)を考慮することが好ましい。
ここで、
図8および
図9を参照して、この実施形態に係る半導体装置1における定電圧ダイオード29の損失低減について説明する。
図8は、外周ダイオードとパッドダイオードの有効面積の違いを説明するための図である。
図9は、外周ダイオードとパッドダイオードの消費電力を比較するための図である。なお、
図8では、このセクションで説明するために必要な半導体素子2の平面構成を強調して示しているため、
図1と大きさや形状等が一致していない。
【0046】
図8に示すように、紙面左側の半導体素子61では定電圧ダイオード29がゲートパッド43の外周に形成されたパッドダイオードとして構成されている一方、紙面右側の半導体素子2は、前述した外周ダイオードとして構成されている。この場合、半導体素子2やゲートパッド43等のサイズにも依るが、定電圧ダイオード29が外周ダイオードとして構成されていれば、たとえば、パッドダイオードとして構成されている場合に比べて、pn接合部36(
図4および
図5参照)の面積が50%増える。その結果、pn接合部36のジャンクション抵抗を低減できるので、
図9に示すように、消費電力を101mWから84mWへ低減することができる。すなわち、定電圧ダイオード29での損失を低減できるので、定電圧ダイオード29の熱破壊を防止でき、半導体装置1の信頼性を高めることができる。なお、
図9で示した消費電力の具体的な数値は、損失低減の効果を説明するために挙げた一例である。
【0047】
定電圧ダイオード29の損失を低減できる反面、アクティブ領域40を取り囲むように定電圧ダイオード29が配置されるので、トランジスタ構造のセルの配置領域が、パッドダイオードを採用する場合に比べて制限される。たとえば、pn接合部の面積を50%増加させると、アクティブ領域40の面積に関して20%の減少が見込まれる。
しかしながら、
図8におけるアクティブ領域40の面積減少量の見込み値は、
図10Aの参考構造として示されたESD保護ダイオードのように、トランジスタ構造を保護するために双方向ツェナーダイオード52を搭載する半導体素子の構造を前提にするものである。この構造では、双方向ツェナーダイオード52が複数のp型部53およびn型部54の繰り返し構造を有するため、比較的幅広なダイオード配置スペースが必要になる。
【0048】
これに対し、この実施形態の定電圧ダイオード29は、
図10Bに示すように、互いに隣接する一対のp型部34およびn型部35で構成されていることから、ダイオード配置スペースを狭くでき、その削減分のスペースをトランジスタ構造のセル配置スペースに充当することができる。その結果、
図11に示すように、トランジスタ(MOSFET)の消費電力を、たとえば17%低減でき、トランジスタの低消費電力も維持することができる。さらに、一対のp型部34およびn型部35で構成された定電圧ダイオード29とすることで、双方向ツェナーダイオード52に比べて、降伏電圧Vzを下げることができている。
【0049】
なお、本発明の一実施形態に係る定電圧ダイオードは、一例として、
図13の半導体素子62のように、p
−型エピタキシャル層32内に配置された一対のp
+型不純物領域55およびn型不純物領域56で構成された定電圧ダイオード58であってもよい。
図13において、n型不純物領域56の表面部に形成されたn
+型不純物領域57は、n型不純物領域56にコンタクトをとるための不純物領域である。
【0050】
また、定電圧ダイオード29は、
図14に示すように、外周領域41に沿って交互に配置されたp型部34およびn型部35の繰り返し構造からなる構成であってもよい。この場合は、互いに分離された複数のp型部34および複数のn型部35のそれぞれに、ソース側およびゲート側からコンタクトをとる必要がある。
また、半導体素子2のトランジスタの構造は、トレンチゲート構造に限らず、トレンチプレーナゲート構造であってもよい。
【0051】
次に、半導体装置の他の実施形態について説明する。
図15は、本発明の他の実施形態に係る半導体装置71の斜視図である。
図16は、半導体装置71の正面図である。
図17は、半導体装置71の背面図である。
図18は、半導体装置71の平面図である。
図19は、半導体装置71の底面図である。
図20は、半導体装置71の右側面図である。
図21は、半導体装置71の左側面図である。
図22は、
図18のXXII−XXII切断面における断面を示す図である。
【0052】
半導体装置71は、WL−CSP(Wafer Level−Chip Size Package:ウエハレベルチップサイズパッケージ)のパッケージ構造を有している。すなわち、半導体装置71は、前述の半導体素子2がチップサイズレベルのパッケージとして構成されたものであり、前述の半導体層22の一例としての平面視長方形状の半導体基板72を有しており、当該半導体基板72の外形サイズとほぼ同じサイズで構成されている。
【0053】
たとえば、
図15に示すように、半導体装置71の長さLは0.50mm未満(好ましくは、0.40mm以上)であり、幅Wは0.40mm未満(好ましくは、0.30mm以上)であり、厚さDは0.15mm未満(好ましくは、0.10mm以上)である。
たとえば、半導体装置71の長さLが0.50mmであり幅Wが0.40mmである場合、半導体装置71の平面面積は0.20mm
2である。また、半導体装置71の長さLが0.40mmであり幅Wが0.30mmである場合、半導体装置71の平面面積は0.12mm
2である。つまり、半導体装置71は、0403サイズの非常に小型なパッケージ構造を有している。
【0054】
また、半導体装置71の厚さが0.15mm未満であることで、半導体装置71が傾いて実装されても、半導体装置71の側面の通常位置からの出っ張り量を小さくすることができる。これにより、半導体装置71が高密度実装された場合でも、隣接する半導体装置との接触を抑止することができる。
半導体装置71がWL−CSPのパッケージ構造を有することから、以下において、半導体装置71および半導体基板72の形状、サイズ、他の構成要素の配置位置等を説明したときに、当該説明の主体は、他方に置き換えてもよい。たとえば、平面視四角形状の半導体基板72は、平面視四角形状の半導体装置71と置き換えてもよいし、半導体基板72の周縁部にパッドが配置されているという説明は、半導体装置71の周縁部にパッドが配置されているという説明に置き換えてもよい。
【0055】
直方体形状の半導体基板72は、表面72Aと、表面72Aの反対側の裏面72Bと、表面72Aと裏面72Bとの間の4つの側面72C,72D,72E,72Fとを有し、表面72Aおよび側面72C〜72Fは、表面絶縁膜(図示せず)で覆われていてもよい。半導体基板72の4つの側面72C〜72Fのうち、側面72C,72Eが半導体基板72の長辺121に沿う側面であり、側面72D,72Fが半導体基板72の短辺122に沿う側面である。隣接する側面72C〜72Fの各交差部には、半導体基板72の角部74CD,74DE,74EF,74FCが形成されている。
【0056】
半導体基板72の表面72Aにおいて、長辺121側の一つの側面72Cに沿う第1周縁部75には、ドレインパッド77(第1パッド)が配置されている。ドレインパッド77は、第1周縁部75の両端角部74CD,74FCから間隔を空けた中央部に形成されており、ドレインパッド77と各角部74CD,74FCとの間には、一定間隔(たとえば、0.1mm〜0.15mm程度)の領域が設けられている。
【0057】
一方、第1周縁部75に対向する半導体基板72の第2周縁部76の一端角部74EFには、ソースパッド78(第2パッド)が配置され、第2周縁部76の他端角部74DEには、ゲートパッド79(第3パッド)が配置されている。
次に、ドレインパッド77、ソースパッド78およびゲートパッド79のレイアウトおよび形状について説明する。
【0058】
ドレインパッド77は、
図18に示すように、第2周縁部76の一端角部74EFの頂点V1を中心とし、半導体基板72の短辺122の長さ(
図15の幅W)を半径とする第1円弧80と、第2周縁部76の他端角部74DEの頂点V2を中心とし、半導体基板72の短辺122の長さ(
図15の幅W)を半径とする第2円弧81とを半導体基板72の表面72Aに描いたとき、第1円弧80の外側領域であって、かつ第2円弧81の外側領域に配置されている。そして、ドレインパッド77は、当該外側領域において、第1円弧80と第2円弧81との交点82から第1円弧80および第2円弧81それぞれに対して引いた1対の接線を二辺とする三角形状に形成されている。
【0059】
一方、ソースパッド78は、第1円弧80と同一の中心を有する扇形状に形成されている。ソースパッド78の半径R1は、たとえば、0.07mm〜0.13mm(好ましくは、0.10mm以上)である。たとえば、半径R1が0.07mmである場合、ソースパッド78の面積は3.85×10
−3mm
2であり、半径R1が0.10mmである場合、ソースパッド78の面積は7.85×10
−3mm
2である。
【0060】
また、ゲートパッド79は、第2円弧81と同一の中心を有する扇形状に形成されている。ゲートパッド79の半径R2は、たとえば、0.07mm〜0.13mm(好ましくは、0.10mm以上)である。たとえば、半径R2が0.07mmである場合、ゲートパッド79の面積は3.85×10
−3mm
2であり、半径R2が0.10mmである場合、ゲートパッド79の面積は7.85×10
−3mm
2である。
【0061】
また、ドレインパッド77、ソースパッド78およびゲートパッド79と、半導体基板72との間には、それぞれ、ドレイン配線膜83、ソース配線膜84およびゲート配線膜85が設けられている。これらは、たとえば、AlCu等の金属層からなり、必要に応じて、その表裏面にバリア層(たとえば、Ti、TiN等)が形成されていてもよい。また、ドレイン配線膜83、ソース配線膜84およびゲート配線膜85は、それぞれ、前述のp
−型ドレイン領域23、p
+型ソース領域25およびゲート電極28に電気的に接続されていてもよい。
【0062】
ゲート配線膜85は、
図18に示すように、ゲートパッド79よりも大きい相似形の平面視扇形状に形成されている。
ソース配線膜84は、
図18に示すように、半導体基板72の第2周縁部76側の略半分の領域を覆うように形成されている。具体的には、ゲート配線膜85を避けるように、ゲート配線膜85に対して長手方向における側面72F側に形成されるとともに、幅方向における側面72C側に形成されている。したがって、平面視扇形状のゲート配線膜85は、その円弧部分がソース配線膜84と隣り合っている。
【0063】
ドレイン配線膜83は、
図18に示すように、半導体基板72の第1周縁部75側の略半分の領域を覆うように形成されている。これにより、ソース配線膜84およびドレイン配線膜83は、互いにほぼ同じ面積の配線膜で形成されており、ソース側の配線抵抗とドレイン側の配線抵抗とをほぼ同じにすることができる。
次に、前述のドレインパッド77、ソースパッド78およびゲートパッド79のレイアウトおよび形状によって、半導体装置71の実装面積をどの程度減らすことができるかを、
図23を参照して説明する。
【0064】
図23は、半導体装置71と参考形態に係る半導体装置100とのチップサイズを比較するための図である。
図23では、明瞭化のため、
図15〜
図22に示した参照符号のうち、比較に必要な参照符号のみを示し、その他の参照符号は省略している。
まず、参考形態の半導体装置100のように、ソースパッド78およびゲートパッド79が、半導体基板72の短辺122において隣り合って配置される場合、半導体装置100のパッケージサイズは、たとえば、長さL=0.6mm、幅W=0.4mmとなる。これは、短辺方向のソース−ゲート間の短絡を避けるため、ソースパッド78とゲートパッド79との間の距離として、少なくともピッチP=0.2mmを確保するためである。また、ドレインパッド77が、短辺122の一端角部から他端角部に至る形状で形成されている。そのため、パッドレイアウトを変更しないでパッケージサイズを小さくすると、ソース−ゲート間のピッチPが0.2mmを下回り、実装時に、ソース−ゲート間の短絡という問題が生じる。一方、ソースパッド78およびゲートパッド79を長辺121において隣り合うように配置しても、パッド間の短絡の問題を解消することが難しい。なぜなら、このパッドレイアウトでは、参照符号「77´」および破線で示すように、ドレインパッド77が長辺121の一端角部から他端角部に至る形状となる。そのため、パッケージサイズの減少に伴い、ソース−ドレイン間、またはゲート−ドレイン間の短絡の問題が生じる。
【0065】
これに対し、前述の半導体装置71の構成では、ソースパッド78およびゲートパッド79が長辺121において隣り合うように配置されている。さらに、ドレインパッド77が、半導体基板72の長辺121の中央部に配置されており、ドレインパッド77と長辺121の両端角部74CD,74FCとの間には、一定間隔の領域が設けられている。これにより、ドレインパッド77とソースパッド78との距離(ピッチP1)、およびドレインパッド77とゲートパッド79との距離(ピッチP2)を、参考形態の半導体装置100に比べて長くすることができる。したがって、半導体装置71のパッケージサイズを、たとえば、長さL=0.44mm、幅W=0.32mmと小型化しても、ピッチP1およびピッチP2を、半導体装置100におけるソース−ゲート間のピッチPと同等の0.2mmに維持することができる。すなわち、パッド間に確保する距離は、半導体装置71のパッケージの短辺122の0.20/0.32=62.5%以上にある。少なくとも、パッケージの短辺122が0.40mmの場合、パッド間に確保する距離は、半導体装置71のパッケージの短辺122の0.20/0.40=50%以上にある。また、半導体装置71のパッケージサイズが1.41×10
−1mm
2であり、パッド半径R1、R2が0.10mmの場合、パッド面積が7.85×10
−3mm
2であるため、ソースパッド78およびゲートパッド79の面積(パッド面積)は、パッケージサイズの5%以上にある。そのため、実装時の短絡を避けながら、半導体装置100よりも半導体基板のサイズを小さくすることができる。これにより、小型化された半導体装置を提供することができる。
【0066】
また、半導体装置71では、
図18に示すように、ドレインパッド77が、それぞれ短辺122の長さを半径とする第1円弧80および第2円弧81の外側領域に配置されている。そのため、ピッチP1およびピッチP2として、少なくとも半導体装置71の短辺122の長さとソースパッド78およびゲートパッド79の大きさ(幅)との差に相当する長さを確保することができる。さらに、ドレインパッド77が、第1円弧80と第2円弧81との交点82から第1円弧80および第2円弧81それぞれに対して引いた1対の接線を二辺とする三角形状に形成されている。これにより、半導体装置71を小型化しながらも、ドレインパッド77に十分な接合面積を確保することができる。そのため、半導体装置71の実装時の固着強度の低下を抑えることもできる。
【0067】
半導体装置71の実装時の固着強度の確保に関して、さらに、ソースパッド78およびゲートパッド79が、それぞれ、第1円弧80および第2円弧81と同一の中心を有する扇形状に形成されている。これにより、ピッチP1およびピッチP2として0.2mmの長さを確保しながら、ソースパッド78およびゲートパッド79に十分な接合面積を確保することができる。
【0068】
以上、半導体装置71によれば、隣り合うパッド間のピッチおよびパッドの接合面積を十分確保しながら、参考形態の半導体装置100に比べて、実装面積を約40%程度も低減することができる。 以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、
図15〜
図22に示したパッケージ形態の場合には、半導体基板72には、表面72Aに沿う横方向にソース領域およびドレイン領域が間隔を空けて配置された横型のMISFETが形成されていてもよい。
【0069】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。