【解決手段】半導体基板102のゲートトレンチ108にゲート絶縁膜125を介して埋め込まれたゲート電極122と、ゲートトレンチ108の側方に形成されたダミートレンチ109と、ゲートトレンチ108とダミートレンチ109との間に形成されたn
型コレクタ領域104とを含む半導体装置101において、ダミートレンチ109に上面128を有する埋め込み絶縁膜126を埋め込み、埋め込み絶縁膜126の上方領域にエミッタ電極132を埋め込んで、ダミートレンチ109の側面115においてp
前記半導体装置は、一対の前記ダミートレンチと、当該一対のダミートレンチの間に挟まれたゲートトレンチを含むトレンチ単位を有する、請求項2に記載の半導体装置。
前記p型フローティング領域は、前記p型ベース領域よりも深く形成され、前記ダミートレンチの下方に回り込むオーバーラップ部を含む、請求項5に記載の半導体装置。
前記半導体装置は、一対の前記ゲートトレンチと、当該一対の前記ゲートトレンチの間に挟まれたダミートレンチを含むトレンチ単位を有する、請求項2に記載の半導体装置。
前記p型フローティング領域は、前記p型ベース領域よりも深く形成され、前記エミッタトレンチの下方に回り込むオーバーラップ部を含む、請求項10に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置1の模式的な平面図である。
図2は、
図1の切断面II−IIから見た断面図である。
図3は、
図1の切断面III−IIIから見た断面図である。
図4(a)(b)は、
図1の半導体装置の内部構造を説明するための図であって、
図4(a)は斜視図、
図4(b)は平面図をそれぞれ示している。
【0019】
半導体装置1は、IGBTを備えるデバイスであって、本発明の半導体層の一例としての半導体基板2を含む。半導体基板2は、たとえば、50μm〜200μmの厚さのn
−型シリコン基板であってよい。
半導体基板2は、その裏面3側から順にp
+型コレクタ領域4、n型バッファ領域5およびn
−型ドリフト領域6が積層された構造を有している。p
+型コレクタ領域4が半導体基板2の裏面3全体に露出し、n
−型ドリフト領域6が半導体基板2の表面7の一部に選択的に露出している。
【0020】
p
+型コレクタ領域4のp型ドーパントとしては、たとえば、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)等を使用できる(以下、同じ)。一方、n型バッファ領域5およびn
−型ドリフト領域6のn型ドーパントとしては、たとえば、N(窒素)、P(リン)、As(ひ素)等を使用できる(以下、同じ)。
また、p
+型コレクタ領域4のドーパント濃度は、たとえば、1×10
15cm
−3〜2×10
19cm
−3である。一方、n型バッファ領域5のドーパント濃度は、たとえば、1×10
15cm
−3〜5×10
17cm
−3であり、n
−型ドリフト領域6のドーパント濃度は、1×10
13cm
−3〜5×10
14cm
−3である。
【0021】
半導体基板2の表面7には、アクティブ領域8および非アクティブ領域9が、互いに隣り合って設定されている。
半導体基板2の表面7側には、アクティブ領域8および非アクティブ領域9に跨る複数のゲートトレンチ10が形成されている。この実施形態では、複数のゲートトレンチ10は、アクティブ領域8と非アクティブ領域9との境界を横切るストライプ状に形成され、半導体基板2の表面7に沿う横方向に一対ずつのトレンチ単位11として配置されている。互いに隣り合うトレンチ単位11のピッチP
1は、たとえば、4μm〜20μmである。また、一対のゲートトレンチ10において、一方のゲートトレンチ10と他方のゲートトレンチ10とのピッチP
2(ゲートトレンチ10の中心点同士の距離)は、たとえば、2μm〜7μmであり、間隔L
1(ゲートトレンチ10の側面間の距離)は、たとえば、1μm〜6μmである。
【0022】
アクティブ領域8において一対のゲートトレンチ10の間には、p型ベース領域12が形成され、さらにp型ベース領域12の表面部にn
+型エミッタ領域13が形成されている。p型ベース領域12は、一方のゲートトレンチ10と他方のゲートトレンチ10によって共有されている。一方、n
+型エミッタ領域13は、一方および他方のゲートトレンチ10の側面に沿って一つずつ形成され、半導体基板2の表面7に露出している。また、p型ベース領域12の表面部には、一対のn
+型エミッタ領域13に挟まれるようにp
+型ベースコンタクト領域25が形成されている。p
+型ベースコンタクト領域25のドーパント濃度は、たとえば、5×10
18cm
−3〜1×10
20cm
−3である。
【0023】
n
+型エミッタ領域13は、
図4(a)(b)に示すように、ゲートトレンチ10の側面から半導体基板2の表面7に沿う横方向に引き出された引き出し部26を選択的に有している。引き出し部26は、たとえば、ゲートトレンチ10の長手方向に沿って一定の間隔を空けて配置されている。この実施形態のように一対のn
+型エミッタ領域13が設けられる場合、各n
+型エミッタ領域13の引き出し部26は、
図4(b)に示すように、一方および他方の端部が互いに対向するように配置されていてもよいし、一方の引き出し部26の端部および他方の引き出し部26の端部が、ゲートトレンチ10の長手方向に沿って交互に配置されていてもよい(図示せず)。前者の対向配置の場合、p
+型ベースコンタクト領域25における引き出し部26で挟まれた部分は、他の部分よりも選択的に幅が狭い括れ部27となっている。
【0024】
また、この実施形態では、p型ベース領域12とn
−型ドリフト領域6との界面がゲートトレンチ10の底部に設定されていて、p型ベース領域12は、半導体基板2の比較的深くまで拡散形成されている。
また、p型ベース領域12のドーパント濃度は、たとえば、1×10
16cm
−3〜1×10
18cm
−3であり、n
+型エミッタ領域13のドーパント濃度は、1×10
19cm
−3〜5×10
20cm
−3である。
【0025】
また、半導体基板2の表面7側において一対のゲートトレンチ10の間には、アクティブ領域8および非アクティブ領域9に跨る複数(
図1〜
図3では3本)のエミッタトレンチ14が形成されている。この実施形態では、複数のエミッタトレンチ14は、アクティブ領域8と非アクティブ領域9との境界を横切るストライプ状(ゲートトレンチ10に平行)に形成され、半導体基板2の表面7に沿う横方向に互いに等しい間隔を空けて配置されている。互いに隣り合うエミッタトレンチ14の間隔L
2(エミッタトレンチ14の側面間の距離)は、たとえば、3μm以下、好ましくは、0.8μm〜3μmである。また、複数のエミッタトレンチ14は、ゲートトレンチ10と同じ深さで形成されている。これにより、エミッタトレンチ14をゲートトレンチ10と同一工程で形成することができるので、製造工程を簡略化することができる。
【0026】
複数のエミッタトレンチ14のうち、ゲートトレンチ10に隣り合うトレンチ(ゲートトレンチ10との間にトレンチを介さずに対向するトレンチ)は、ゲートトレンチ10との間にn
−型ドリフト領域6を介して2μm以下の間隔L
3(エミッタトレンチ14の側面とゲートトレンチ10の側面との距離)を隔てて配置されている。つまり、当該エミッタトレンチ14とゲートトレンチ10との間には、深さ方向全域に渡ってn
−型ドリフト領域6が介在している。
【0027】
また、アクティブ領域8において複数のエミッタトレンチ14の各間には、p型フローティング領域15が形成されている。p型フローティング領域15は、電気的にフローティング状態が保たれた半導体領域であり、ゲートトレンチ10に隣り合うエミッタトレンチ14によって、ゲートトレンチ10と分離されている。p型フローティング領域15は、この実施形態では、p型ベース領域12と同じ深さで形成されている。つまり、p型フローティング領域15とn
−型ドリフト領域6との界面がエミッタトレンチ14の底部に設定されていて、p型フローティング領域15は、半導体基板2の比較的深くまで拡散形成されている。これにより、p型ベース領域12とp型フローティング領域15を同一工程で形成することができるので、製造工程を簡略化することができる。
【0028】
また、p型フローティング領域15のドーパント濃度は、たとえば、5×10
15cm
−3〜1×10
18cm
−3である。
一方、非アクティブ領域9において、一対のゲートトレンチ10の間の領域および複数のエミッタトレンチ14の各間の領域にはいずれも、n
−型ドリフト領域6がその全域に渡って広がっている。
【0029】
ゲートトレンチ10およびエミッタトレンチ14には、絶縁膜16(たとえば、酸化シリコン(SiO
2))を介してゲート電極17および埋め込み電極18がそれぞれ埋め込まれている。ゲート電極17および埋め込み電極18は、たとえば、ポリシリコン等の導電材料からなる。絶縁膜16は、ゲートトレンチ10の内面、半導体基板2の表面7およびエミッタトレンチ14の内面に沿って一体的に形成されている。絶縁膜16のゲートトレンチ10内の部分は、ゲート絶縁膜19として機能する。また、エミッタトレンチ14の複数の埋め込み電極18は、非アクティブ領域9において、コンタクト部20によって一括して接続されている。コンタクト部20は、複数のエミッタトレンチ14を横切る方向に複数の埋め込み電極18間に跨って配置されている。
【0030】
半導体基板2の表面7には、たとえば、ホウ素リンシリケートガラス(BPSG)、酸化シリコン(SiO
2)等の絶縁材料からなる層間膜21が積層されている。層間膜21には、アクティブ領域8においてn
+型エミッタ領域13およびp
+型ベースコンタクト領域25を選択的に露出させるコンタクトホール22が形成されている。n
+型エミッタ領域13は、引き出し部26がコンタクトホール22から選択的に露出している。また、層間膜21には、非アクティブ領域9においてコンタクト部20を選択的に露出させるコンタクトホール23が形成されている。
【0031】
層間膜21上には、エミッタ電極24が積層されている。エミッタ電極24は、コンタクトホール22,23を介して、p
+型ベースコンタクト領域25、n
+型エミッタ領域13およびコンタクト部20にそれぞれ接続されている。エミッタトレンチ14内の埋め込み電極18は、コンタクト部20を介してエミッタ電極24と接続されることとなる。
この半導体装置1によれば、ゲート電極17が埋め込まれたゲートトレンチ10(以下、「ゲート接合トレンチ」という)が、埋め込み電極18が埋め込まれたエミッタトレンチ14(以下、「エミッタ接合トレンチ」という)によってp型フローティング領域15から分離されている。これにより、p型フローティング領域15とゲート接合トレンチとの接合を防止することができる。そのため、ゲート接合トレンチとp型フローティング領域15との間の浮遊容量をなくすことができる。
【0032】
一方、ゲート接合トレンチが深さ方向全域に渡って接合しているn
−型ドリフト領域6はp
+型コレクタ領域4と共に接地されるものである。そのため、スイッチング動作時に、ゲート接合トレンチとn
−型ドリフト領域6との間の容量変化が安定するので、ノイズが発生し難い。これらの結果、スイッチング動作時のノイズの発生およびスイッチング損失を低減することができる。
【0033】
また、エミッタ接合トレンチと、ゲート接合トレンチとの間隔L
3が2μm以下であるので、耐圧を良好に保持することもできる。
また、この半導体装置1では、コンタクト部20を非アクティブ領域9に配置することで、アクティブ領域8において、エミッタ電極24と半導体基板2との間に比較的厚い層間膜21を介在させることができる。そのため、アクティブ領域8での絶縁破壊を防止することができる。
【0034】
図5は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置41の模式的な断面図である。
図5において、前述の
図2および
図3に示された各部と対応する部分には同一の参照符号を付して示す。
前述の第1実施形態では、p型ベース領域12とn
−型ドリフト領域6との界面がゲートトレンチ10の底部に設定されていて、p型ベース領域12は、半導体基板2の比較的深くまで拡散形成されていた。これに対し、第2実施形態の半導体装置41では、p型ベース領域42とn
−型ドリフト領域6との界面がゲートトレンチ10の中央部もしくは上部に設定されていて、p型ベース領域42は、半導体基板2の比較的浅くに拡散形成されている。
【0035】
また、半導体装置41は、複数のエミッタトレンチ14の各間において、p型ベース領域42よりも深く形成されたp型フローティング領域43を含む。p型フローティング領域43は、エミッタトレンチ14の底部に対して半導体基板2の裏面3側に膨出する底部44と、ゲートトレンチ10に隣り合うエミッタトレンチ14の下方に回り込むオーバーラップ部45とを有している。オーバーラップ部45は、当該エミッタトレンチ14の幅方向中央に対してゲートトレンチ10の近い側に位置する端部46を有している。この端部46は、エミッタトレンチ14に対してゲートトレンチ10側にはみ出ていないことが好ましい。
【0036】
次に、半導体装置41の製造方法について説明する。
図6A〜
図6Gは、
図5の半導体装置41の製造工程を工程順に説明するための図である。
半導体装置41を製造するには、
図6Aに示すように、n
−型の半導体基板2(n
−型ドリフト領域6)の表面7にマスク47が形成される。マスク47には、表面7におけるp型フローティング領域43に形成すべき領域を選択的に露出させる開口が形成されている。そして、このマスク47を介して、半導体基板2の表面7に対してp型ドーパントがイオン注入(インプラ)される。これにより、イオン注入領域48が形成される。
【0037】
次に、
図6Bに示すように、半導体基板2が選択的にエッチングされることによって、ゲートトレンチ10およびエミッタトレンチ14が同時形成される。
次に、
図6Cに示すように、半導体基板2が熱酸化されることによって、ゲートトレンチ10およびエミッタトレンチ14の内面を含む表面全域に犠牲酸化膜49が形成される。そして、犠牲酸化膜49で覆われた半導体基板2をアニール処理することによって、イオン注入領域48中のp型ドーパントが拡散する(ドライブイン)。このアニール処理は、p型ドーパントがエミッタトレンチ14の下方に回り込む条件で行われる。これにより、p型フローティング領域43が形成される。この際、半導体基板2が犠牲酸化膜49で覆われているので、基板表面からのイオン抜けを防止することができるので、p型ドーパントを効率よく拡散させることができる。
【0038】
次に、
図6Dに示すように、犠牲酸化膜49が剥離される。
次に、
図6Eに示すように、半導体基板2が熱酸化されることによって、ゲートトレンチ10およびエミッタトレンチ14の内面を含む表面全域に絶縁膜16(ゲート絶縁膜19)が形成される。
次に、
図6Fに示すように、ポリシリコン等の電極材料がゲートトレンチ10およびエミッタトレンチ14に埋め込まれる。これにより、ゲート電極17および埋め込み電極18が同時に形成される。
【0039】
次に、
図6Gに示すように、半導体基板2の表面7に対して選択的にn型およびp型ドーパントがイオン注入および拡散されることによって、p型ベース領域42、n
+型エミッタ領域13およびp
+型ベースコンタクト領域25が順に形成される。
その後、半導体基板2の表面7側に層間膜21およびエミッタ電極24等が形成された後、半導体基板2の裏面3に対して選択的にn型およびp型ドーパントがイオン注入および拡散されることによって、n型バッファ領域5およびp
+型コレクタ領域4が順に形成される。
【0040】
以上のような工程を経ることによって、
図5に示す半導体装置41が得られる。なお、
図6A〜
図6Gでは半導体装置41の製造工程の一部を表したに過ぎず、当該製造工程は、
図6A〜
図6Gで示されなかった工程を含んでいてもよい。
この半導体装置41によれば、エミッタ接合トレンチの底部までp型フローティング領域43(オーバーラップ部45)が形成されているので、スイッチングオフ動作時にエミッタ接合トレンチに負荷するコレクタ−エミッタ電圧を緩和することができる。そのため、急峻な電圧変化(dv/dt)に対してデバイスの破壊を防止することができる。
【0041】
また、p型ベース領域42よりも深いp型フローティング領域43によって耐圧を向上できる一方、p型ベース領域42は浅くてもよいので、p型ベース領域42の深さを適切に設計することによってチャネル長(ゲートトレンチ10の深さ方向の長さ)を短くしてオン電圧の上昇を抑制することもできる。
むろん、第1実施形態の半導体装置1と同様の効果を達成することもできる。
【0042】
図7は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置51の模式的な断面図である。
図8は、
図7の半導体装置51の内部構造を説明するための斜視図である。
図7および
図8において、前述の
図2〜
図5に示された各部と対応する部分には同一の参照符号を付して示す。
前述の第1および第2実施形態では、エミッタ電極24は、半導体基板2の表面7においてp
+型ベースコンタクト領域25およびn
+型エミッタ領域13に接続されていた。これに対し、第3実施形態の半導体装置51は、p型ベース領域42において半導体基板2の表面7からn
+型エミッタ領域13を貫通して形成されたコンタクトトレンチ52と、当該コンタクトトレンチ52の底面に形成されたp
+型ベースコンタクト領域53とをさらに含む。コンタクトトレンチ52は、ゲートトレンチ10の長手方向に沿って一定の幅で形成されている。n
+型エミッタ領域13は、コンタクトトレンチ52の側面に露出しており、p
+型ベースコンタクト領域53は、コンタクトトレンチ52の底面に露出している。p
+型ベースコンタクト領域53のドーパント濃度は、たとえば、5×10
18cm
−3〜1×10
20cm
−3である。
【0043】
そして、エミッタ電極24は、コンタクトトレンチ52に入り込み、コンタクトトレンチ52の側面においてn
+型エミッタ領域13に接続されている。また、コンタクトトレンチ52の底面において、p
+型ベースコンタクト領域53を介してp型ベース領域42に接続されている。
この半導体装置51によれば、コンタクトトレンチ52の側面をn
+型エミッタ領域13とのコンタクトのための領域として有効利用することができるので、n
+型エミッタ領域13に対するエミッタ電極24の接合面積を十分確保することができる。これにより、n
+型エミッタ領域13の平面面積を犠牲にすることができるので、一対のゲートトレンチ10における一方および他方のゲートトレンチ10の間隔L
1を微細化して、従来に比べて微細なp型ベース領域42を形成することができる。ゲートトレンチ10の微細化の結果、デバイスの短絡耐量とオン電圧とのトレードオフの関係を改善することができるので、電荷促進効果を向上させることができる。よって、低電流域におけるV
CE(sat)を改善することができる。
【0044】
むろん、第1および第2実施形態の半導体装置1,41と同様の効果を達成することもできる。
図9は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置61の模式的な断面図である。
図9において、前述の
図2および
図3に示された各部と対応する部分には同一の参照符号を付して示す。
【0045】
前述の第1実施形態では、一対のゲートトレンチ10の間には、エミッタトレンチ14が複数形成され、複数のエミッタトレンチ14の各間にp型フローティング領域15が形成されていた。これに対して、第4実施形態の半導体装置61では、一対のゲートトレンチ10の間にエミッタトレンチ62が1つ形成され、p型フローティング領域15は省略されている。
【0046】
この半導体装置61によっても、第1実施形態の半導体装置1と同様の効果を達成することができる。
図10は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置71の模式的な断面図である。
図10において、前述の
図2および
図3に示された各部と対応する部分には同一の参照符号を付して示す。
【0047】
前述の第1実施形態では、複数の埋め込み電極18を一括して接続するコンタクト部20は、非アクティブ領域9に配置されていた。これに対し、第5実施形態の半導体装置71は、アクティブ領域8において、複数のエミッタトレンチ14を横切る方向に複数の埋め込み電極18間に跨って配置されたコンタクト部72を含む。また、層間膜21には、当該コンタクト部72を選択的に露出させるコンタクトホール73が形成されている。したがって、エミッタトレンチ14の複数の埋め込み電極18は、アクティブ領域8において、コンタクト部72によって一括して接続されている。
【0048】
この半導体装置71によっても、第1実施形態の半導体装置1と同様の効果を達成することができる。
図11は、本発明の第6実施形態に係る半導体装置の模式的な断面図である。
図12は、
図11の破線で囲まれた部分の拡大図である。
半導体装置101は、IGBTを備えるデバイスであって、本発明の半導体層の一例としての半導体基板102を含む。半導体基板102は、たとえば、50μm〜200μmの厚さのn
−型シリコン基板であってよい。
【0049】
半導体基板102は、その裏面103側から順にp
+型コレクタ領域104、n型バッファ領域105およびn
−型ドリフト領域106が積層された構造を有している。p
+型コレクタ領域104が半導体基板102の裏面103全体に露出し、n
−型ドリフト領域106が半導体基板102の表面107の一部に選択的に露出している。
p
+型コレクタ領域104のp型ドーパントとしては、たとえば、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)等を使用できる(以下、同じ)。一方、n型バッファ領域105およびn
−型ドリフト領域106のn型ドーパントとしては、たとえば、N(窒素)、P(リン)、As(ひ素)等を使用できる(以下、同じ)。
【0050】
また、p
+型コレクタ領域104のドーパント濃度は、たとえば、1×10
15cm
−3〜2×10
19cm
−3である。一方、n型バッファ領域105のドーパント濃度は、たとえば、1×10
15cm
−3〜5×10
17cm
−3であり、n
−型ドリフト領域106のドーパント濃度は、1×10
13cm
−3〜5×10
14cm
−3である。
半導体基板102の表面107側には、複数のゲートトレンチ108および複数のダミートレンチ109が互いに隣り合って形成されている。この実施形態では、一対のダミートレンチ109と、一対のダミートレンチ109の間に挟まれたゲートトレンチ108とを含むトレンチ単位110が、半導体基板102の表面107に沿う横方向に間隔を空けて複数配置されている。これにより、ゲートトレンチ108およびダミートレンチ109は、全体としてストライプ状に形成されている。
【0051】
互いに隣り合うトレンチ単位110のピッチP
1は、たとえば、2μm〜7μmである。また、各トレンチ単位110において、ゲートトレンチ108とその両側のダミートレンチ109との間隔L
1(ゲートトレンチ108の側面とダミートレンチ109の側面との距離)はそれぞれ、2μm以下であることが好ましい。
各トレンチ単位110において、ゲートトレンチ108の両側(各ダミートレンチ109との間の領域)には、p型ベース領域111が形成され、さらにp型ベース領域111の表面部にn
+型エミッタ領域112およびp
+型ベースコンタクト領域113が形成されている(
図12参照)。この実施形態では、p型ベース領域111とn
−型ドリフト領域106との界面がゲートトレンチ108の中央部もしくは上部に設定されていて、p型ベース領域111は、半導体基板102の比較的浅くに拡散形成されている。
【0052】
n
+型エミッタ領域112およびp
+型ベースコンタクト領域113は、ゲートトレンチ108とダミートレンチ109との間の領域において互いに隣接して配置されている。具体的には、n
+型エミッタ領域112がゲートトレンチ108の両側面114に沿って一つずつ形成され、p
+型ベースコンタクト領域113が各ダミートレンチ109の側面115に沿って一つずつ形成されている。これにより、n
+型エミッタ領域112は、半導体基板102の表面107およびゲートトレンチ108の側面114に露出している。一方、p
+型ベースコンタクト領域113は、半導体基板102の表面107およびダミートレンチ109の側面115に露出している。
【0053】
また、p型ベース領域111のドーパント濃度は、たとえば、1×10
16cm
−3〜1×10
18cm
−3である。n
+型エミッタ領域112のドーパント濃度は、1×10
19cm
−3〜5×10
20cm
−3である。p
+型ベースコンタクト領域113のドーパント濃度は、たとえば、5×10
18cm
−3〜1×10
20cm
−3である。
また、半導体基板102の表面107側において隣り合うトレンチ単位110の間には、複数(
図11では3本)のエミッタトレンチ116が形成されている。この実施形態では、複数のエミッタトレンチ116は、たとえばストライプ状(ゲートトレンチ108およびダミートレンチ109に平行)に形成され、半導体基板102の表面107に沿う横方向に互いに等しい間隔を空けて配置されている。互いに隣り合うエミッタトレンチ116の間隔L
2(エミッタトレンチ116の側面間の距離)は、たとえば、3μm以下、好ましくは、0.8μm〜3μmである。また、複数のエミッタトレンチ116は、ゲートトレンチ108およびダミートレンチ109と同じ深さで形成されている。これにより、エミッタトレンチ116を、ゲートトレンチ108およびダミートレンチ109と同一工程で形成することができるので、製造工程を簡略化することができる。
【0054】
複数のエミッタトレンチ116のうち、ダミートレンチ109に隣り合うトレンチ(ダミートレンチ109との間にトレンチを介さずに対向するトレンチ)は、ダミートレンチ109との間に0.5μm〜20μmの間隔L
3(エミッタトレンチ116の側面とダミートレンチ109の側面との距離)を隔てて配置されている。
また、半導体基板102には、p型フローティング領域117が形成されている。p型フローティング領域117は、エミッタトレンチ116を介して対向する、互いに隣り合うトレンチ単位110のダミートレンチ109で挟まれた領域に広がっている。p型フローティング領域117は、電気的にフローティング状態が保たれた半導体領域であって、ゲートトレンチ108に隣り合うダミートレンチ109によって、ゲートトレンチ108と分離されている。p型フローティング領域117は、この実施形態では、p型ベース領域111よりも深く形成されている。
【0055】
p型フローティング領域117は、エミッタトレンチ116の底部に対して半導体基板102の裏面103側に膨出する底部118と、ダミートレンチ109の下方に回り込むオーバーラップ部119とを有している。オーバーラップ部119は、当該ダミートレンチ109の幅方向中央に対してゲートトレンチ108の近い側に位置する端部120を有している。この端部120は、エミッタトレンチ116に対してゲートトレンチ108側にはみ出ていないことが好ましい。
【0056】
また、p型フローティング領域117のドーパント濃度は、たとえば、5×10
15cm
−3〜1×10
18cm
−3である。
ゲートトレンチ108、ダミートレンチ109およびエミッタトレンチ116には、絶縁膜121(たとえば、酸化シリコン(SiO
2))を介してゲート電極122、第1埋め込み電極123および第2埋め込み電極124がそれぞれ埋め込まれている。ゲート電極122、第1埋め込み電極123および第2埋め込み電極124は、たとえば、ポリシリコン等の導電材料からなる。絶縁膜121は、ゲートトレンチ108の内面、ダミートレンチ109の内面、半導体基板102の表面107およびエミッタトレンチ116の内面に沿って一体的に形成されている。絶縁膜121のゲートトレンチ108内の部分は、ゲート絶縁膜125として機能する。また、第1埋め込み電極123および第2埋め込み電極124は、後述するエミッタ電極132に電気的に接続されている。
【0057】
また、この実施形態では、ゲート電極122および第2埋め込み電極124はそれぞれのトレンチ108,116を開口端まで埋め戻しているのに対して、第1埋め込み電極123は、ダミートレンチ109の深さ方向途中まで埋め戻している。これにより、ダミートレンチ109には、第1埋め込み電極123の上方領域に電極のない空間が形成されている。そして、この空間を開口端まで埋め戻すように、埋め込み絶縁膜126がダミートレンチ109に埋め込まれている。
【0058】
埋め込み絶縁膜126は、たとえば、ホウ素リンシリケートガラス(BPSG)、酸化シリコン(SiO
2)等の絶縁材料からなり、0.5μm以上の厚さを有している。埋め込み絶縁膜126およびその下の絶縁膜121には、ダミートレンチ109の側面115におけるp
+型ベースコンタクト領域113を露出させる除去部127が選択的に形成されている。すなわち、埋め込み絶縁膜126は、ダミートレンチ109の側面115に連なるように、半導体基板102の表面107よりも低い位置の上面128を選択的に有しており、この上面128と表面107との間のダミートレンチ109の側面115の領域にp
+型ベースコンタクト領域113が露出している。
【0059】
半導体基板102の表面107には、たとえば、ホウ素リンシリケートガラス(BPSG)、酸化シリコン(SiO
2)等の絶縁材料からなる層間膜129が積層されている。層間膜129は、埋め込み絶縁膜126と一体的に形成されている。層間膜129には、半導体基板102の表面107およびダミートレンチ109の開口端に跨るコンタクトホール130が形成されている。このコンタクトホール130は、半導体基板102の表面107でn
+型エミッタ領域112およびp
+型ベースコンタクト領域113を露出させ、ダミートレンチ109の側面115(除去部127)でp
+型ベースコンタクト領域113を露出させる。つまり、p
+型ベースコンタクト領域113は、表面107と側面115との交差によって形成されるダミートレンチ109の角部131に露出している。なお、n
+型エミッタ領域112は、ゲートトレンチ108の側面114から半導体基板102の表面107に沿う横方向に引き出された引き出し部を選択的に有していて、この引き出し部のみがコンタクトホール130から選択的に露出していてもよい。
【0060】
層間膜129上には、本発明のコンタクト電極の一例としてのエミッタ電極132が積層されている。エミッタ電極132は、コンタクトホール130に入り込み、半導体基板102の表面107においてn
+型エミッタ領域112に接続され、ダミートレンチ109の角部131においてp
+型ベースコンタクト領域113に接続されている。
次に、半導体装置101の製造方法について説明する。
図13A〜
図13Kは、
図11および
図12の半導体装置101の製造工程を工程順に説明するための図である。なお、
図13A〜
図13Fが
図11に対応する断面を示し、
図13G〜
図13Kが
図12に対応する断面を示している。
【0061】
半導体装置101を製造するには、
図13Aに示すように、n
−型の半導体基板102(n
−型ドリフト領域106)の表面107にマスク160が形成される。マスク160には、表面107におけるp型フローティング領域117に形成すべき領域を選択的に露出させる開口が形成されている。そして、このマスク160を介して、半導体基板102の表面107に対してp型ドーパントがイオン注入(インプラ)される。これにより、イオン注入領域161が形成される。
【0062】
次に、
図13Bに示すように、半導体基板102が選択的にエッチングされることによって、ゲートトレンチ108、ダミートレンチ109およびエミッタトレンチ116が同時形成される。
次に、
図13Cに示すように、半導体基板102が熱酸化されることによって、ゲートトレンチ108、ダミートレンチ109およびエミッタトレンチ116の内面を含む表面全域に犠牲酸化膜162が形成される。そして、犠牲酸化膜162で覆われた半導体基板102をアニール処理することによって、イオン注入領域161中のp型ドーパントが拡散する(ドライブイン)。このアニール処理は、p型ドーパントがダミートレンチ109の下方に回り込む条件で行われる。これにより、p型フローティング領域117が形成される。この際、半導体基板102が犠牲酸化膜162で覆われているので、基板表面からのイオン抜けを防止することができるので、p型ドーパントを効率よく拡散させることができる。
【0063】
次に、
図13Dに示すように、犠牲酸化膜162が剥離される。
次に、
図13Eに示すように、半導体基板102が熱酸化されることによって、ゲートトレンチ108、ダミートレンチ109およびエミッタトレンチ116の内面を含む表面全域に絶縁膜121(ゲート絶縁膜125)が形成される。
次に、
図13Fに示すように、ポリシリコン等の電極材料がゲートトレンチ108、ダミートレンチ109およびエミッタトレンチ116に埋め込まれる。これにより、ゲート電極122、第1埋め込み電極123および第2埋め込み電極124が同時に形成される。
【0064】
次に、
図13Gに示すように、半導体基板102の表面107に対して選択的にn型およびp型ドーパントがイオン注入および拡散されることによって、p型ベース領域111およびn
+型エミッタ領域112が順に形成される。
次に、
図13Hに示すように、第1埋め込み電極123を上面からエッチングすることによって、ゲート電極122および第2埋め込み電極124の埋め込み状態を維持したまま、第1埋め込み電極123のみが選択的に掘り下げられる。
【0065】
次に、
図13Iに示すように、半導体基板102の表面107上に、ホウ素リンシリケートガラス(BPSG)、酸化シリコン(SiO
2)等の絶縁材料を堆積させることによって、第1埋め込み電極123の上方空間が当該絶縁材料で埋め戻されると共に、表面107が当該絶縁材料で覆われる。これにより、埋め込み絶縁膜126および層間膜129が同時に形成される。
【0066】
次に、
図13Jに示すように、層間膜129および埋め込み絶縁膜126を選択的にエッチングすることによって、コンタクトホール130および除去部127が同時に形成される。
次に、
図13Kに示すように、コンタクトホール130内に露出した半導体基板102の表面107に対してp型ドーパントが選択的にイオン注入および拡散される。これにより、p
+型ベースコンタクト領域113が形成される。
【0067】
その後、半導体基板102の表面107側にエミッタ電極132等が形成された後、半導体基板102の裏面103に対して選択的にn型およびp型ドーパントがイオン注入および拡散されることによって、n型バッファ領域105およびp
+型コレクタ領域104が順に形成される。
以上のような工程を経ることによって、
図11および
図12に示す半導体装置101が得られる。なお、
図13A〜
図13Kでは半導体装置101の製造工程の一部を表したに過ぎず、当該製造工程は、
図13A〜
図13Kで示されなかった工程を含んでいてもよい。
【0068】
この半導体装置101によれば、ダミートレンチ109の側面115をp
+型ベースコンタクト領域113として有効利用することができるので、p型ベース領域111に対するエミッタ電極132の接合面積を、半導体基板102の表面107およびダミートレンチ109の側面115の両面で十分確保することができる。これにより、p型ベース領域111の平面面積を犠牲にすることができるので、ゲートトレンチ108とダミートレンチ109との間隔L
1を微細化して、従来に比べて微細なp型ベース領域111を形成することができる。しかも、ダミートレンチ109は、ゲートトレンチ108と同一のマスクを使用して形成することができるため、ゲートトレンチ108に対する位置ずれが生じない。そして、エミッタ電極132のアライメントは、ダミートレンチ109の平面面積を含めたエリアに合わせればよいので、簡単にとることができる。
【0069】
具体的には、まず、半導体基板102を同一のマスクを用いてエッチングすることによって、ゲートトレンチ108、ダミートレンチ109およびエミッタトレンチ116を同時に形成する(
図13B)。次に、これらのトレンチ108,109,116にポリシリコンを埋め込むことによって、ゲート電極122、第1埋め込み電極123および第2埋め込み電極124を形成する(
図13F)。次に、ダミートレンチ109を選択的に露出させるマスクを半導体基板102上に形成し、このマスクを介して、ダミートレンチ109内のポリシリコンの上部を選択的にエッチング除去する。これにより、ダミートレンチ109の第1埋め込み電極123の上方領域に空間を形成する(
図13H)。次に、たとえばCVD法によってBPSG等の絶縁材料を半導体基板102上に堆積させることによって層間膜129を形成する(
図13I)。絶縁材料の一部は、ダミートレンチ109内に埋め込み絶縁膜126として入り込む。次に、コンタクトホール130を形成するためのマスクを、半導体基板102に対してアライメントする。この際、コンタクトホール130の端部はダミートレンチ109を覆ってもよいので、アライメントは、半導体基板102の表面107およびダミートレンチ109の平面面積を含めた広いエリアでとることができる。そして、当該マスクを介して、層間膜129および埋め込み絶縁膜126を連続してエッチングする。これにより、コンタクトホール130および除去部127を同時に形成する(
図13J)。この後、層間膜129をマスクとしてp型ドーパントをイオン注入してp
+型ベースコンタクト領域113を自己整合的に形成すれば、ダミートレンチ109の角部131にp
+型ベースコンタクト領域113を確実に形成することができる(
図13K)。しかも、コンタクトホール130を比較的広く形成できるので、タングステン(W)等の埋め込み性の良いプラグを用いなくても、アルミニウム(Al)等を用いたエミッタ電極132の一部をプラグとして利用することができる。
【0070】
以上のようなトレンチ構造の微細化の結果、デバイスの短絡耐量とオン電圧とのトレードオフの関係を改善することができるので、電荷促進効果を向上させることができる。よって、低電流域におけるV
CE(sat)を改善することができる。
また、この半導体装置101によれば、ゲート電極122が埋め込まれたゲートトレンチ108(以下、「ゲート接合トレンチ」という)が、n
+型エミッタ領域112に接続された第1埋め込み電極123が埋め込まれたダミートレンチ109(以下、「エミッタ接合トレンチ」という)によってp型フローティング領域117から分離されている。これにより、p型フローティング領域117とゲート接合トレンチとの接合を防止することができる。そのため、ゲート接合トレンチとp型フローティング領域117との間の浮遊容量をなくすことができる。
【0071】
一方、ゲート接合トレンチが深さ方向に渡って接合しているn
−型ドリフト領域106はp
+型コレクタ領域104と共に接地されるものである。そのため、スイッチング動作時に、ゲート接合トレンチとn
−型ドリフト領域106との間の容量変化が安定するので、ノイズが発生し難い。これらの結果、スイッチング動作時のノイズの発生およびスイッチング損失を低減することができる。
【0072】
また、エミッタ接合トレンチと、ゲート接合トレンチとの間隔L
1が2μm以下であるので、耐圧を良好に保持することもできる。
さらに、この半導体装置101によれば、エミッタ接合トレンチの底部までp型フローティング領域117(オーバーラップ部119)が形成されているので、スイッチングオフ動作時にエミッタ接合トレンチに負荷するコレクタ−エミッタ電圧を緩和することができる。そのため、急峻な電圧変化(dv/dt)に対してデバイスの破壊を防止することができる。
【0073】
また、p型ベース領域111よりも深いp型フローティング領域117によって耐圧を向上できる一方、p型ベース領域111は浅くてもよいので、p型ベース領域111の深さを適切に設計することによってチャネル長(ゲートトレンチ108の深さ方向の長さ)を短くしてオン電圧の上昇を抑制することもできる。
図14は、本発明の第7実施形態に係る半導体装置141の模式的な断面図である。
図15は、
図14の破線で囲まれた部分の拡大図である。
図14および
図15において、前述の
図11および
図12に示された各部と対応する部分には同一の参照符号を付して示す。
【0074】
前述の第6実施形態では、トレンチ単位110は、一対のダミートレンチ109と、一対のダミートレンチ109の間に挟まれたゲートトレンチ108とを含んでいた。これに対し、第7実施形態の半導体装置141は、一対のゲートトレンチ142と、一対のゲートトレンチ142の間に挟まれたダミートレンチ143とを含むトレンチ単位144を有している。この場合、ゲートトレンチ142とエミッタトレンチ116との間隔L
3(ゲートトレンチ142の側面とエミッタトレンチ116の側面との距離)は、2μm以下であることが好ましい。
【0075】
各トレンチ単位144において、ダミートレンチ143の両側(各ゲートトレンチ142との間の領域)には、p型ベース領域145が形成され、さらにp型ベース領域145の表面部にn
+型エミッタ領域146およびp
+型ベースコンタクト領域147が形成されている(
図15参照)。この実施形態では、p型ベース領域145とn
−型ドリフト領域106との界面がゲートトレンチ142の中央部もしくは上部に設定されていて、p型ベース領域145は、半導体基板102の比較的浅くに拡散形成されている。
【0076】
n
+型エミッタ領域146およびp
+型ベースコンタクト領域147は、ゲートトレンチ142とダミートレンチ143との間の領域において互いに隣接して配置されている。具体的には、n
+型エミッタ領域146が各ゲートトレンチ142の側面148に沿って一つずつ形成され、p
+型ベースコンタクト領域147がダミートレンチ143の両側面149に沿って一つずつ形成されている。これにより、n
+型エミッタ領域146は、半導体基板102の表面107およびゲートトレンチ142の側面148に露出している。一方、p
+型ベースコンタクト領域147は、半導体基板102の表面107およびダミートレンチ143の側面149に露出している。
【0077】
また、半導体基板102には、p型フローティング領域150が形成されている。p型フローティング領域150は、複数のエミッタトレンチ116の各間に広がっている。p型フローティング領域150は、電気的にフローティング状態が保たれた半導体領域であって、ゲートトレンチ142に隣り合うエミッタトレンチ116によって、ゲートトレンチ142と分離されている。p型フローティング領域150は、この実施形態では、p型ベース領域145よりも深く形成されている。
【0078】
p型フローティング領域150は、エミッタトレンチ116の底部に対して半導体基板102の裏面103側に膨出する底部151と、ゲートトレンチ142に隣り合うエミッタトレンチ116の下方に回り込むオーバーラップ部152とを有している。オーバーラップ部152は、当該エミッタトレンチ116の幅方向中央に対してゲートトレンチ142の近い側に位置する端部153を有している。この端部153は、エミッタトレンチ116に対してゲートトレンチ142側にはみ出ていないことが好ましい。
【0079】
このようなp型フローティング領域150は、たとえば、前述のp型フローティング領域117と同様に形成することができる。
ダミートレンチ143には、絶縁膜121を介して第1埋め込み電極154が埋め込まれている。第1埋め込み電極154は、たとえば、ポリシリコン等の導電材料からなり、ゲート電極122に電気的に接続されている。また、第1埋め込み電極154は、ダミートレンチ143の深さ方向途中まで埋め戻している。これにより、ダミートレンチ143には、第1埋め込み電極154の上方領域に電極のない空間が形成されている。そして、この空間を開口端まで埋め戻すように、埋め込み絶縁膜155がダミートレンチ143に埋め込まれている。
【0080】
埋め込み絶縁膜155は、たとえば、ホウ素リンシリケートガラス(BPSG)、酸化シリコン(SiO
2)等の絶縁材料からなり、0.5μm以上の厚さを有している。埋め込み絶縁膜155およびその下の絶縁膜121には、ダミートレンチ143の両側面149におけるp
+型ベースコンタクト領域147を露出させる除去部156が選択的に形成されている。すなわち、埋め込み絶縁膜155は、ダミートレンチ143の両側面149に連なるように、半導体基板102の表面107よりも低い位置の上面157を選択的に有しており、この上面157と表面107との間のダミートレンチ143の両側面149の領域にp
+型ベースコンタクト領域147が露出している。
【0081】
層間膜129には、ダミートレンチ143を挟んで対向するp型ベース領域145に跨るコンタクトホール158が形成されている。このコンタクトホール158は、半導体基板102の表面107でn
+型エミッタ領域146およびp
+型ベースコンタクト領域147を露出させ、ダミートレンチ143の両側面149(除去部156)でp
+型ベースコンタクト領域147を露出させる。つまり、p
+型ベースコンタクト領域147は、表面107と側面149との交差によって形成されるダミートレンチ143の両角部159に露出している。なお、n
+型エミッタ領域146は、ゲートトレンチ142の側面148から半導体基板102の表面107に沿う横方向に引き出された引き出し部を選択的に有していて、この引き出し部のみがコンタクトホール158から選択的に露出していてもよい。
【0082】
そして、エミッタ電極132は、コンタクトホール158に入り込み、半導体基板102の表面107においてn
+型エミッタ領域146に接続され、ダミートレンチ143の両角部159においてp
+型ベースコンタクト領域147に接続されている。
この半導体装置141によっても、第6実施形態の半導体装置101と同様の効果を達成することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の各実施形態の開示から把握される上記特徴は、異なる実施形態間でも互いに組み合わせることができる。
また、前述の実施形態では、半導体装置1,41,51,61,71,101,141が備えるIGBTの構成のみを図示したが、本発明の半導体装置は、IGBT以外の素子(たとえば、MOSFET、ダイオード等)をIGBTの形成領域とは異なる領域に備えていてもよい。
【0084】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
なお、この明細書および図面の記載から、特許請求の範囲に記載した発明以外にも、以下のような特徴が抽出され得る。
すなわち、半導体装置は、半導体層と、前記半導体層に形成された複数のゲートトレンチと、前記複数のゲートトレンチにゲート絶縁膜を介して埋め込まれたゲ
ート電極と、各前記ゲートトレンチの側方において、前記半導体層の表面側から前記ゲートトレンチの深さ方向に順に配置されたn
+型エミッタ領域、p型ベース領域およびn
−型ドリフト領域と、前記n
−型ドリフト領域に対して前記半導体層の裏面側に配置されたp
+型コレクタ領域と、互いに隣り合う前記複数のゲートトレンチの間に形成されたエミッタトレンチと、前記エミッタトレンチに絶縁膜を介して埋め込まれ、前記n
+型エミッタ領域と電気的に接続された埋め込み電極とを含み、前記エミッタトレンチは、前記ゲートトレンチとの間にn
−型ドリフト領域を介して2μm以下の間隔を隔てて配置されている。
【0085】
この構成によれば、ゲート電極が埋め込まれたゲートトレンチ(以下、「ゲート接合トレンチ」という)がn
−型ドリフト領域と接合している。そのため、半導体層にp型フローティング領域が形成されていても、当該p型フローティング領域とゲート接合トレンチとの接合を防止することができる。これにより、ゲート接合トレンチとp型フローティング領域との間の浮遊容量をなくすことができる。一方、ゲート接合トレンチに接合しているn
−型ドリフト領域はp
+型コレクタ領域と共に接地されるものである。そのため、スイッチング動作時に、ゲート接合トレンチとn
−型ドリフト領域との間の容量変化が安定するので、ノイズが発生し難い。これらの結果、スイッチング動作時のノイズの発生およびスイッチング損失を低減することができる。
【0086】
また、埋め込み電極が埋め込まれたエミッタトレンチ(以下、「エミッタ接合トレンチ」という)と、ゲート接合トレンチとの間隔が2μm以下であるので、耐圧を良好に保持することもできる。
なお、p型フローティング領域は、半導体層に形成されていても、形成されていなくてもよい。ただし、前記エミッタトレンチが複数形成された半導体層にp型フローティング領域が形成される場合、当該p型フローティング領域は、前記複数のエミッタトレンチの間に形成されていることが好ましい。つまり、p型フローティング領域は、最もゲート接合トレンチに近いエミッタ接合トレンチ同士で挟まれた領域内に形成されていることが好ましい。
【0087】
前記p型フローティング領域は、前記p型ベース領域と同じ深さで形成されていてもよい。この場合、p型フローティング領域をp型ベース領域と同一工程で形成することができるので、製造工程を簡略化することができる。
一方、前記p型フローティング領域は、前記p型ベース領域よりも深く形成されていてもよい。この場合、前記p型フローティング領域は、前記複数のエミッタトレンチのうち前記ゲートトレンチに最も近いエミッタトレンチの下方に回り込むオーバーラップ部を含むことが好ましい。
【0088】
この構成によれば、エミッタ接合トレンチの底部までp型フローティング領域(オーバーラップ部)が形成されているので、スイッチングオフ動作時にエミッタ接合トレンチに負荷するコレクタ−エミッタ電圧を緩和することができる。そのため、急峻な電圧変化(dv/dt)に対してデバイスの破壊を防止することができる。
また、p型ベース領域よりも深いp型フローティング領域によって耐圧を向上できる一方、p型ベース領域は浅くてもよいので、p型ベース領域の深さを適切に設計することによってチャネル長を短くしてオン電圧の上昇を抑制することもできる。
【0089】
前記オーバーラップ部は、前記エミッタトレンチの幅方向中央に対して前記ゲートトレンチの近い側に位置する端部を有していることが好ましい。
この構成により、エミッタ接合トレンチにかかるコレクタ−エミッタ電圧を、より良好に緩和することができる。
また、前記半導体装置は、前記半導体層に設定されたアクティブ領域および前記アクティブ領域に隣り合う非アクティブ領域と、前記非アクティブ領域において、前記複数のエミッタトレンチに埋め込まれた前記埋め込み電極間に跨るように前記半導体層上に配置され、前記複数の埋め込み電極に一括して接続するためのコンタクト部とを含むことが好ましい。
【0090】
この構成によれば、コンタクト部を非アクティブ領域に配置することで、アクティブ領域において半導体層の表面に比較的厚い絶縁膜を形成することができる。そのため、アクティブ領域での絶縁破壊を防止することができる。
前記複数のエミッタトレンチは、互いに3μm以下の間隔を隔てて配置されていてもよい。
【0091】
また、前記エミッタトレンチは、前記ゲートトレンチと同じ深さで形成されていることが好ましい。この場合、エミッタトレンチをゲートトレンチと同一工程で形成することができるので、製造工程を簡略化することができる。
また、前記ゲートトレンチは、前記半導体層の前記表面に沿う横方向に一対ずつ配置されており、前記一対のゲートトレンチは、共通の前記p型ベース領域を介して前記横方向に対向していてもよい。この場合、前記一対のゲートトレンチは、一方が他方に対して2μm〜7μmの間隔を隔てて配置されていてもよい。
【0092】
前記n
+型エミッタ領域は、1×10
19cm
−3〜5×10
20cm
−3のn型ドーパント濃度を有していてもよい。前記p型ベース領域は、1×10
16cm
−3〜1×10
18cm
−3のp型ドーパント濃度を有していてもよい。前記n
−型ドリフト領域は、1×10
13cm
−3〜5×10
14cm
−3のn型ドーパント濃度を有していてもよい。前記p
+型コレクタ領域は、1×10
15cm
−3〜2×10
19cm
−3のp型ドーパント濃度を有していてもよい。
【0093】
また、前記n
+型エミッタ領域は、前記ゲートトレンチの側面から前記半導体層の表面に沿う横方向に引き出された引き出し部を選択的に有していることが好ましい。
また、前記半導体装置は、前記ゲートトレンチとの間に前記n
+型エミッタ領域、前記p型ベース領域および前記n
−型ドリフト領域が形成されるように、前記ゲートトレンチの側方に所定の間隔を空けて形成されたダミートレンチと、前記ダミートレンチに埋め込まれ、前記半導体層の前記表面に対して前記ダミートレンチの底側に上面を有する埋め込み絶縁膜であって、前記ダミートレンチの側面における前記表面から前記上面までの部分に前記p型ベース領域の一部をコンタクト領域として選択的に露出させる埋め込み絶縁膜と、前記ダミートレンチの前記埋め込み絶縁膜の上方領域に埋め込まれ、前記ダミートレンチの前記側面において前記コンタクト領域に接続されたコンタクト電極とを含むことが好ましい。
【0094】
この構成によれば、ダミートレンチの側面をコンタクト領域として有効利用することができるので、p型ベース領域に対するコンタクト電極の接合面積を十分確保することができる。これにより、p型ベース領域の平面面積を犠牲にすることができるので、ゲートトレンチとダミートレンチとの間隔を微細化して、従来に比べて微細なp型ベース領域を形成することができる。しかも、ダミートレンチは、ゲートトレンチと同一のマスクを使用して形成することができるため、ゲートトレンチに対する位置ずれが生じない。そして、コンタクト電極のアライメントは、ダミートレンチの平面面積を含めたエリアに合わせればよいので、簡単にとることができる。
【0095】
また、トレンチ構造の微細化の結果、デバイスの短絡耐量とオン電圧とのトレードオフの関係を改善することができるので、電荷促進効果を向上させることができる。よって、低電流域におけるV
CE(sat)を改善することができる。
前記半導体装置は、前記ダミートレンチの前記埋め込み絶縁膜の下方領域に絶縁膜を介して埋め込まれた第1埋め込み電極をさらに含んでいてもよい。
【0096】
また、前記半導体装置は、一対の前記ダミートレンチと、当該一対のダミートレンチの間に挟まれたゲートトレンチを含むトレンチ単位を有していてもよい。
また、前記ダミートレンチは、前記第1埋め込み電極が前記n
+型エミッタ領域と電気的に接続されることによって前記エミッタトレンチを兼ねていることが好ましい。
また、前記半導体装置は、一対の前記ゲートトレンチと、当該一対の前記ゲートトレンチの間に挟まれたダミートレンチを含むトレンチ単位を有していてもよい。この場合、前記第1埋め込み電極は、前記ゲート電極と電気的に接続されていることが好ましい。
【0097】
また、前記埋め込み絶縁膜は、0.5μm以上の厚さを有していることが好ましい。
【実施例】
【0098】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
図2に示す半導体装置1の構造に関して、本発明の耐圧向上の効果を実証するため、ゲートトレンチ10とエミッタトレンチ14との間隔L
3が互いに異なる4種類のデバイスに対して耐圧試験を行った。結果を
図16に示す。
図16によると、トレンチ間隔L
3が0.8μmでは1472V、1.35μmでは1456V、2μmでは1435Vであり、いずれも良好な耐圧性能であることが確認できた。一方、トレンチ間隔L
3が2.8μmのデバイスは、耐圧が1320Vに留まり、トレンチ間隔L
3が2μm以下のデバイスに対して耐圧性能が劣っていた。
【0099】
次に、
図11に示す半導体装置101の構造に関して、短絡耐量とオン電圧(V
CE)とのトレードオフの関係の改善効果が、ゲートトレンチ108とダミートレンチ109との間隔L
1によってどのように変化するかを確認するため、当該間隔L
1が互いに異なる4種類のデバイスのV
CE−I
Cf特性を調べた。結果を
図17に示す。
図17において、デバイスA(トレンチ間隔L
1=2μm 一点鎖線)およびデバイスC(トレンチ間隔L
1=3.5μm 破線)とした。
【0100】
図17によると、トレンチ間隔L
1が狭いほど、立ち上がりのV
CE(sat)が低く、定常損失が低いことが確認できた(
図17の右下拡大図参照)。また、I
Cfの高電流域では、トレンチの微細化(p型ベース領域111の体積低減)によって飽和電流密度が低くなっており、短絡耐量が向上していることが確認できた。