【課題】光変調器又はレーザ素子の変調特性が変化した場合であっても、パルス振幅変調方式を用いた光多値伝送の正確性を向上できる光送信装置及び光送信装置の駆動調整方法を提供する。
【解決手段】パルス振幅変調方式を用いた光多値伝送用の光送信装置1は、レーザ光を変調して光信号を出力する光変調器と、光変調器の温度及び使用時間の少なくとも一方を測る計測素子と、少なくとも一方の変化に対応する複数の変調特性データを格納するメモリと、光変調器の計測結果に応じた変調特性データをメモリから取得する制御部と、取得された変調特性データに基づいて、光信号の各レベル間の発光強度差が所定の比率になるように、光変調器に入力される電気信号の各レベルの振幅を設定する振幅制御部と、を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高速かつ大容量の光通信システムを実現するために、パルス振幅変調(PAM:PulseAmplitude Modulation)方式を用いた光多値伝送技術が検討されている。例えば、信号強度によって4つのレベルに区別される4値パルス振幅変調信号(PAM4信号)を用いて光多値伝送を行う場合、まずPAM4信号を光変調器に入力するための電気信号(駆動信号)に変換する。この電気信号は、PAM4信号によって規定されたレベルに応じた振幅の波形を有している。次に、電気信号を光変調器に入力することにより、レーザ光を受光した光変調器は、変調されたレーザ光(光信号)を出力する。この光信号を光受信器が受信して電気信号に復調し、当該電気信号のレベルを検出することにより、PAM4信号を用いた光多値伝送が実施される。なお、直接変調型の場合、レーザ素子に電気信号を直接入力することによって、光信号を出力する。
【0005】
ところで、光変調器(又はレーザ素子)に入力される電気信号の振幅と、光信号の発光強度との関係(変調特性)は、入力される電気信号の振幅によっては非線形性を示すことがある。このため、電気信号の振幅によっては、光信号における理論的な発光強度(出力光強度)と実際の発光強度との間にずれが生じることがある。このずれが発生することによって、光信号における理論的なレベルと実際のレベルとが異なってしまうことがある。この場合、光多値伝送が正確に実施されない課題がある。
【0006】
また、光変調器(又はレーザ素子)の変調特性は、温度及び使用時間によって変化する。このため、光変調器の温度上昇や光変調器の使用時間増加に伴い、上記課題がより顕著になる。
【0007】
本発明は、光変調器又はレーザ素子の変調特性が変化した場合であっても、パルス振幅変調方式を用いた光多値伝送の正確性を向上できる光送信装置及び光送信装置の駆動調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る光送信装置は、半導体レーザと、3つ以上の異なる振幅レベルを有する駆動信号を半導体レーザに出力する駆動回路と、半導体レーザの温度に基づいて、駆動信号のそれぞれの振幅レベルを変化させ、半導体レーザの光多値出力の各振幅レベルの差が小さくなる制御をなす振幅制御部と、を備える。
【0009】
本発明の他の一側面に係る光送信装置は、パルス振幅変調方式を用いた光多値伝送用の光送信装置であって、レーザ光を変調して光信号を出力する光変調器と、光変調器の温度及び使用時間の少なくとも一方を測る計測素子と、少なくとも一方の変化に対応する複数の変調特性データを格納するメモリと、光変調器の計測結果に応じた変調特性データをメモリから取得する制御部と、取得された変調特性データに基づいて、光信号の各レベル間の発光強度差が所定の比率になるように、光変調器に入力される電気信号の各レベルの振幅を設定する振幅制御部と、を備える。
【0010】
本発明の他の一側面に係る光送信装置は、パルス振幅変調方式を用いた光多値伝送用の光送信装置であって、レーザ素子と、レーザ素子の温度及び使用時間の少なくとも一方を計測する計測素子と、少なくとも一方の変化に対応する複数の変調特性データを格納するメモリと、レーザ素子の計測結果に応じた変調特性データをメモリから取得する制御部と、取得された変調特性データに基づいて、レーザ素子から出力される光信号の各レベル間の発光強度差が所定の比率になるように、レーザ素子に入力される電気信号の各レベルの振幅を設定する振幅制御部と、を備える。
【0011】
本発明の他の一側面に係る駆動調整方法は、半導体レーザと、3つ以上の異なる振幅レベルを有する駆動信号を半導体レーザに出力する駆動回路と、備える、光送信装置の駆動調整方法であって、半導体レーザの温度に基づいて、駆動信号のそれぞれの振幅レベルを変化させ、半導体レーザの光多値出力の各振幅レベルの差が小さくなる制御をなすステップを含む。
【0012】
本発明の他の一側面に係る駆動調整方法は、パルス振幅変調方式を用いた光多値伝送用の光送信装置の駆動調整方法であって、レーザ光を変調する光変調器の温度及び使用時間の少なくとも一方を計測するステップと、光変調器の計測結果に応じた光変調器の変調特性データを取得するステップと、取得された変調特性データに基づいて、光変調器から出力される光信号の各レベル間の発光強度差が所定の比率になるように、光変調器に入力される電気信号の各レベルの振幅を設定するステップと、を備える。
【0013】
本発明の他の一側面に係る駆動調整方法は、パルス振幅変調方式を用いた光多値伝送用の光送信装置の駆動調整方法であって、レーザ素子の温度及び使用時間の少なくとも一方を計測するステップと、レーザ素子の計測結果に応じたレーザ素子の変調特性データを取得するステップと、取得された変調特性データに基づいて、レーザ素子から出力される光信号の各レベル間の発光強度差が所定の比率になるように、レーザ素子に入力される電気信号の各レベルの振幅を設定するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光変調器又はレーザ素子の変調特性が変化した場合であっても、パルス振幅変調方式を用いた光多値伝送の正確性を向上できる光送信装置及び光送信装置の駆動調整方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0017】
本発明の一実施形態は、半導体レーザと、3つ以上の異なる振幅レベルを有する駆動信号を半導体レーザに出力する駆動回路と、半導体レーザの温度に基づいて、駆動信号のそれぞれの振幅レベルを変化させ、半導体レーザの光多値出力の各振幅レベルの差が小さくなる制御をなす振幅制御部と、を備える光送信装置である。
【0018】
また、本発明の他の一実施形態は、半導体レーザと、3つ以上の異なる振幅レベルを有する駆動信号を半導体レーザに出力する駆動回路と、備える、光送信装置の駆動調整方法であって、半導体レーザの温度に基づいて、駆動信号のそれぞれの振幅レベルを変化させ、半導体レーザの光多値出力の各振幅レベルの差が小さくなる制御をなすステップを含む、を備える駆動調整方法である。
【0019】
この光送信装置及びその駆動調整方法では、半導体レーザの温度に基づいて、駆動信号のそれぞれの振幅レベルを変化させ、半導体レーザの光多値出力の各振幅レベルの差を小さくする。これにより、半導体レーザの温度の変化に応じてその変調特性が変化した場合であっても、出力される光信号における理論的な発光強度と実際の発光強度との間に生じるずれを抑制でき、パルス振幅変調方式を用いた光多値伝送の正確性を向上できる。
【0020】
また、本発明の他の一実施形態は、パルス振幅変調方式を用いた光多値伝送用の光送信装置であって、レーザ光を変調して光信号を出力する光変調器と、光変調器の温度及び使用時間の少なくとも一方を測る計測素子と、少なくとも一方の変化に対応する複数の変調特性データを格納するメモリと、光変調器の計測結果に応じた変調特性データをメモリから取得する制御部と、取得された変調特性データに基づいて、光信号の各レベル間の発光強度差が所定の比率になるように、光変調器に入力される電気信号の各レベルの振幅を設定する振幅制御部と、を備える光送信装置である。
【0021】
また、本発明の他の一実施形態は、パルス振幅変調方式を用いた光多値伝送用の光送信装置の駆動調整方法であって、レーザ光を変調する光変調器の温度及び使用時間の少なくとも一方を計測するステップと、光変調器の計測結果に応じた光変調器の変調特性データを取得するステップと、取得された変調特性データに基づいて、光変調器から出力される光信号の各レベル間の発光強度差が所定の比率になるように、光変調器に入力される電気信号の各レベルの振幅を設定するステップと、を備える駆動調整方法である。
【0022】
この光送信装置及びその駆動調整方法では、光変調器の温度及び使用時間の少なくとも一方を考慮した光変調器の変調特性から、光信号の各レベル間の発光強度差が所定の比率になるように、電気信号の各レベルの振幅を設定する。これにより、光変調器の温度及び使用時間の少なくとも一方の変化に応じてその変調特性が変化した場合であっても、出力される光信号における理論的な発光強度と実際の発光強度との間に生じるずれを抑制でき、パルス振幅変調方式を用いた光多値伝送の正確性を向上できる。
【0023】
本発明の他の一実施形態は、パルス振幅変調方式を用いた光多値伝送用の光送信装置であって、レーザ素子と、レーザ素子の温度及び使用時間の少なくとも一方を計測する計測素子と、少なくとも一方の変化に対応する複数の変調特性データを格納するメモリと、レーザ素子の計測結果に応じた変調特性データをメモリから取得する制御部と、取得された変調特性データに基づいて、レーザ素子から出力される光信号の各レベル間の発光強度差が所定の比率になるように、レーザ素子に入力される電気信号の各レベルの振幅を設定する振幅制御部と、を備える。
【0024】
また、本発明の他の一実施形態は、パルス振幅変調方式を用いた光多値伝送用の光送信装置の駆動調整方法であって、レーザ素子の温度及び使用時間の少なくとも一方を計測するステップと、レーザ素子の計測結果に応じたレーザ素子の変調特性データを取得するステップと、取得された変調特性データに基づいて、レーザ素子から出力される光信号の各レベル間の発光強度差が所定の比率になるように、レーザ素子に入力される電気信号の各レベルの振幅を設定するステップと、を備える駆動調整方法である。
【0025】
この光送信装置及びその駆動調整方法では、レーザ素子の温度及び使用時間の少なくとも一方を考慮したレーザ素子の変調特性から、光信号の各レベル間の発光強度差が所定の比率になるように、電気信号の各レベルの振幅を設定する。これにより、レーザ素子の温度及び使用時間の少なくとも一方の変化に応じてその変調特性が変化した場合であっても、出力される光信号における理論的な発光強度と実際の発光強度との間に生じるずれを抑制でき、パルス振幅変調方式を用いた光多値伝送の正確性を向上できる。
【0026】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る光送信装置を示す概略構成図である。
図1に示されるように、光送信装置1は、パルス振幅変調方式(PAM方式)を用いた光多値伝送に用いられる、間接変調型の装置である。このため、光送信装置1は、入力された信号をパルス振幅変調信号(PAM信号)に変換し、当該PAM信号に基づいた光信号(出力光)を出力する。本実施形態では、PAM信号として4値パルス振幅変調信号(PAM4信号)が用いられる。光送信装置1は、レーザ素子2と、光変調器3と、計測素子4と、集積回路5と、外部端子6とを備えている。
【0028】
レーザ素子2は、光多値出力可能な半導体レーザである。レーザ素子2は、光変調器3に向かうレーザ光L1を出力する。レーザ光L1の発光強度(出力光強度)の上限値は、APC制御によって設定されてもよい。なお、レーザ素子2は、集積回路5によってオンオフ制御がなされてもよい。
【0029】
光変調器3は、レーザ素子2と光学的に結合しており、入力された電気信号(駆動信号)の振幅に応じてレーザ光L1を光信号L2に変調し、外部へ出力する。光変調器3によって変調された光信号L2は、PAM4信号によって規定されたレベルに応じた発光強度を有する信号である。光変調器3に入力される電気信号の振幅と、光変調器3から出力される光信号L2の発光強度との関係(変調特性)は、光変調器3の温度によって変化する。
【0030】
ここで、
図2を用いながら温度によって変化する光変調器3の変調特性について説明する。
図2は、計測される温度に応じた光変調器3の変調特性を示すグラフである。
図2において、横軸は電気信号の振幅(単位V)を示し、縦軸は光変調器3から出力される光信号L2の発光強度(単位dBm、光信号L2の振幅とも言う)を示す。
図2に示されるように、光変調器3の温度が例えば常温である場合、光変調器3は変調特性21を示す。また、光変調器3の温度が例えば比較的高温である場合、光変調器3は変調特性22を示す。変調特性21と変調特性22とを比較すると、例えば電気信号の振幅の下限値及び光信号L2の発光強度の上限値が互いに異なっている。
【0031】
図1に戻って、計測素子4は、光変調器3の温度を測る素子であり、例えばサーミスタである。
【0032】
集積回路5は、指定された演算を行うと共に種々のデータを格納するチップであり、光変調器3、計測素子4、及び外部端子6に電気的に接続されている。集積回路5は、単一のチップから構成されてもよいし、複数のチップから構成されてもよい。集積回路5は、メモリ11と、制御部12と、振幅制御部13と、パルス振幅変調信号生成部14と、駆動回路部15とを備えている。
【0033】
以下では、具体例として
図3及び
図4を用いながら、集積回路5のメモリ11と、制御部12と、振幅制御部13と、パルス振幅変調信号生成部14と、駆動回路部15とを説明する。
図3(a)は、後述する駆動調整方法が実施された光変調器3の変調特性21を示すグラフであり、
図4(a)は、後述する駆動調整方法が実施された光変調器3の変調特性22を示すグラフである。
図3(a)及び
図4(a)において、横軸は電気信号の振幅(単位V)を示し、縦軸は光信号L2の発光強度(単位dBm)を示す。また、
図3(b)及び
図4(b)は、光変調器3に入力される電気信号のアイパターンであり、
図3(c)及び
図4(c)は、光信号L2のアイパターンである。
【0034】
メモリ11は、出荷時に種々のデータが予め格納されているROM(Read OnlyMemory)である。メモリ11には、光変調器3の変調特性データが格納されている。この変調特性データは、例えば光送信装置1の出荷前(製造段階)に計測され、光変調器3の温度に対応する複数の変調特性を含むデータである。
【0035】
制御部12は、計測素子4による光変調器3の計測結果に応じた変調特性データを取得する。例えば、制御部12は、計測素子4による光変調器3の計測結果に応じた変調特性データとして、メモリ11に格納された変調特性21を取得する。
【0036】
振幅制御部13は、取得された光変調器3の変調特性データに基づいて、光信号L2の各レベル間の発光強度差が所定の比率になるように、光変調器3に入力される電気信号の各レベルの振幅を設定する。例えば、振幅制御部13は、取得された変調特性データに基づいて、光信号L2が取り得る発光強度の範囲を取得する。次に、振幅制御部13は、取得した発光強度の範囲を所定の比率になるように3分割する。このとき、上記発光強度の範囲を3分割するための4つの分割点(光信号L2の各レベルに相当)を設定する。そして、設定した4つの分割点に対応する電気信号の4つの振幅を取得する。なお、「所定の比率」は、例えば通信規格にて予め定められた比率であり、メモリ11に格納されている。以下では、振幅制御部13によって設定された電気信号によって示される各レベルの振幅を、単に「振幅情報」とも呼称する。
【0037】
ここで、振幅制御部13の機能の一例を具体的に説明する。まず、振幅制御部13は、例えば計測素子4による光変調器3の計測結果に応じてメモリ11から変調特性21を取得した場合、当該変調特性21に基づいて光信号L2の発光強度の範囲を−20dBm〜−2dBmに決定する(
図3(a)を参照)。次に、振幅制御部13は、決定した発光強度の範囲を所定の比率に3分割する。下記駆動調整方法においては、決定した発光強度の範囲が均等に分割される。このため、振幅制御部13は、変調特性21において光信号L2の発光強度が−20dBmである点を第0レベルを示す分割点と設定し、変調特性21において光信号L2の発光強度が−14dBmである点を第1レベルを示す分割点と設定し、変調特性21において光信号L2の発光強度が−8dBmである点を第2レベルを示す分割点と設定し、変調特性21において光信号L2の発光強度が−2dBmである点を第3レベルを示す分割点と設定する。これにより、第0レベルと第1レベルとの発光強度差B4、第1レベルと第2レベルとの発光強度差B5、及び第2レベルと第3レベルとの発光強度差B6は、それぞれ−6dBmになる(
図3(c)も併せて参照)。そして、振幅制御部13は、第0〜第3レベルをそれぞれ示す分割点に対応する電気信号の各レベルの振幅(−2.5V、−1.25V、−0.75V、及び0.5V)を取得する(
図3(b)も併せて参照)。
【0038】
また、振幅制御部13は、例えば計測素子4による光変調器3の計測結果に応じてメモリ11から変調特性22を取得した場合、当該変調特性22に基づいて光信号L2の発光強度の範囲を−20dBm〜−6.5dBmに決定する(
図4(a)を参照)。次に、振幅制御部13は、決定した発光強度の範囲を均等に分割する。このため、振幅制御部13は、変調特性22において光信号L2の発光強度が−20dBmである点を第0レベルを示す分割点と設定し、変調特性22において光信号L2の発光強度が−15.5dBmである点を第1レベルを示す分割点と設定し、変調特性22において光信号L2の発光強度が−11dBmである点を第2レベルを示す分割点と設定し、変調特性22において光信号L2の発光強度が−6.5dBmである点を第3レベルを示す分割点と設定する。これにより、第0レベルと第1レベルとの発光強度差B4、第1レベルと第2レベルとの発光強度差B5、及び第2レベルと第3レベルとの発光強度差B6は、それぞれ−4.5dBmになる(
図4(c)も併せて参照)。換言すると、振幅制御部13は、光変調器3の温度に基づいて、電気信号のそれぞれの振幅レベルを変化させ、各振幅レベルの差が小さくなる制御をなす。そして、振幅制御部13は、第0〜第3レベルをそれぞれ示す分割点に対応する電気信号の各レベルの振幅(−1V、約−0.4V、約−0.2V、及び0.5V)を取得する(
図4(b)も併せて参照)。
【0039】
パルス振幅変調信号生成部14は、外部端子6から入力される信号を、駆動回路部15に適合する信号に変換する。第1実施形態では、パルス振幅変調信号生成部14は、複数の端子を有する外部端子6から入力された一又は複数の変調信号をPAM4信号に変換する。
【0040】
駆動回路部15は、光変調器3に入力される電気信号を生成し出力する。例えば、まず駆動回路部15には、パルス振幅変調信号生成部14から出力されるPAM4信号と、振幅制御部13から出力される電気信号の振幅情報とが入力される。駆動回路部15は、PAM4信号と振幅情報とを合成することにより、PAM4信号によって規定されたレベルに応じた振幅を有する電気信号を生成し、光変調器3に当該電気信号を出力する。これにより上述したように、光変調器3は、駆動回路部15に入力されたPAM4信号に応じた発光強度を有する光信号L2を出力する。なお、駆動回路部15は、入力されるPAM4信号のレベルに応じて3つ以上(第1実施形態では4つ)の異なる振幅レベルを有する電気信号を光変調器3に出力する。
【0041】
次に、
図5を用いながら本実施形態に係る光送信装置1の駆動調整方法について説明する。
図5は、第1実施形態に係る光送信装置1の駆動調整方法を説明するフローチャートである。
【0042】
図5に示されるように、第1ステップとして、計測素子4によって光変調器3の温度を計測する(ステップS1)。ステップS1では、計測素子4による光変調器3の計測結果は、集積回路5の制御部12に入力される。
【0043】
次に、第2ステップとして、光変調器3の計測結果に応じた光変調器3の変調特性データを取得する(ステップS2)。ステップS2では、上記計測結果に応じた光変調器3の変調特性が、メモリ11から読み出される。
【0044】
次に、第3ステップとして、取得された変調特性データに基づいて、光信号L2の各レベル間の発光強度差が所定の比率になるように、電気信号の各レベルの振幅を設定する(ステップS3)。第1実施形態のステップS3では、例えば上述したように光信号L2の各レベル間の発光強度差が均等になる(すなわち、発光強度の範囲が均等に分割される)ように、電気信号の各レベルの振幅を設定する。これらのステップS1〜S3を経ることによって、光送信装置1の駆動調整方法が完了する。
【0045】
なお、上記駆動調整方法は、光送信装置1の駆動前だけではなく、光送信装置1の駆動中にも実施されてもよい。この場合、上記駆動調整方法は、光送信装置1の駆動中に連続して繰り返し実施されてもよいし、所定の間隔をあけて繰り返し実施されてもよい。
【0046】
次に、本実施形態に係る駆動調整方法が実施される光送信装置1の作用効果について説明する。上述したように、第1実施形態に係る光送信装置1の光変調器3の変調特性は、
図2に示されるように、光変調器3の温度によって変化する。このため、第1実施形態に係る駆動調整方法では、まず光変調器3の温度を測る。これにより、光変調器3の温度に応じた適切な変調特性データ(例えば、変調特性21又は22)を取得できる。そして、光変調器3の温度に応じた変調特性データを取得した後、当該変調特性データに基づいて電気信号の各レベルの振幅を設定することにより、光変調器3の温度に応じて電気信号の各レベルの振幅を適切に設定できる。このため、例えば高い消費電力のペルチェ素子等の冷却装置を用いないことによる光変調器3の温度変化に応じてその変調特性が変化した場合であっても、光変調器3に入力される電気信号のアイパターンと、光変調器3から実際に出力される光信号L2のアイパターンとの間にずれが生じることを抑制できる。これにより、出力される光信号L2における理論的な発光強度と実際の発光強度との間に生じるずれを抑制できる。したがって、第1実施形態によれば、光送信装置の駆動等によって光変調器3の温度が変化した場合であっても、パルス振幅変調方式を用いた光多値伝送の正確性を向上できる。
【0047】
なお、第1実施形態において、光変調器3の変調特性は、使用時間によっても変化する傾向にある。このため、例えば冷却装置等によって光変調器3の温度が完全に一定に保持されている場合、計測素子4は、光変調器3の温度ではなく、使用時間を計測してもよい。この場合、光変調器3の使用時間に応じた複数の変調特性が、変調特性データとしてメモリ11に格納されている。計測素子4による光変調器3の使用時間は、例えば単にタイマー等によって計測されてもよいし、光変調器3から出力される光信号L2の消光比の変化等から使用時間を推定して計測してもよい。光変調器3の使用時間を推定して計測する場合、計測素子4は、例えばフォトダイオード及び演算素子を有する。また、計測素子4は、光変調器3の温度及び使用時間の両方を計測してもよい。この場合、光変調器3の温度及び使用時間に応じた複数の変調特性が、変調特性データとしてメモリ11に格納されていてもよい。以上より、計測素子4は、光変調器3の温度及び使用時間の少なくとも一方を計測するとよい。
【0048】
(第2実施形態)
以下では、第2実施形態に係る光送信装置について説明する。第2実施形態の説明において第1実施形態と重複する記載は省略し、第1実施形態と異なる部分を記載する。つまり、技術的に可能な範囲において、第2実施形態に第1実施形態の記載を適宜用いてもよい。
【0049】
図6は、第2実施形態に係る光送信装置を示す概略構成図である。
図6に示されるように、光送信装置1Aは、第1実施形態の光送信装置1と異なり、レーザ素子2及び光変調器3を備えておらず、代わりにレーザ素子2Aを備えている直接変調型の装置である。このため、集積回路5における駆動回路部15から出力される電気信号は、レーザ素子2Aに直接入力され、変調光である光信号L2Aがレーザ素子2Aから直接出力される。レーザ素子2Aの変調特性は、その温度に応じて変化するので、計測素子4は、レーザ素子2Aの温度を計測する。なお、駆動回路部15は、入力されるPAM4信号のレベルに応じて3つ以上(第2実施形態では4つ)の異なる振幅レベルを有する電気信号をレーザ素子2Aに出力する。
【0050】
第2実施形態の集積回路5において、メモリ11は、レーザ素子2Aの変調特性データを予め格納している。制御部12は、計測素子4によるレーザ素子2Aの計測結果に応じた変調特性データをメモリ11から取得する。振幅制御部13は、制御部12によって取得されたデータに基づいて、レーザ素子2Aから出力される光信号L2Aの各レベル間の発光強度差が所定の比率になるように、レーザ素子2Aに入力される電気信号の各レベルの振幅を設定する。例えば、振幅制御部13は、レーザ素子2Aの温度に基づいて、電気信号のそれぞれの振幅レベルを変化させ、レーザ素子2Aの光多値出力の各振幅レベルの差が小さくなる制御をなす。
【0051】
このような第2実施形態に係る光送信装置1Aに対しても、第1実施形態に示される駆動調整方法を適用できる。換言すると、第2実施形態における駆動調整方法は、第1実施形態と同様にステップS1〜ステップS3を有している。第2実施形態のステップS1では、計測素子4によってレーザ素子2Aの温度を計測する。第2実施形態のステップS2では、レーザ素子2Aの計測結果に応じたレーザ素子2Aの変調特性データを取得する。第2実施形態のステップS3では、取得された変調特性データに基づいて、光信号L2Aの各レベル間の発光強度差が所定の比率になるように、電気信号の各レベルの振幅を設定する。
【0052】
以上より、第2実施形態に係る駆動調整方法が実施された光送信装置1Aにおいても、レーザ素子2Aの温度変化に応じた変調特性データを取得した後、当該変調特性データに基づいて電気信号の各レベルの振幅を設定することにより、レーザ素子2Aの温度に応じて電気信号の各レベルの振幅を適切に設定できる。したがって、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果が奏される。また、第2実施形態の計測素子4は、第1実施形態と同様に、レーザ素子2Aの使用時間を計測してもよいし、レーザ素子2Aの温度及び使用時間を計測してもよい。
【0053】
本発明による光送信装置及びその駆動調整方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、光信号L2の各レベル間の発光強度差は、必ずしも均等でなくてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、PAM信号としてPAM4信号が用いられているが、8値であるPAM8信号が用いられてもよいし、16値であるPAM16信号が用いられてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、光変調器3(又はレーザ素子2A)の温度は、制御されていないか、あるいは、完全に一定になるように制御されている。しかしながら、光変調器3(又はレーザ素子2A)の温度は、完全に一定ではなく、所定の範囲におさまるように制御されていてもよい。この場合であっても、上記駆動調整方法を実施することにより、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。