特開2017-212701(P2017-212701A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンリツ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2017212701-移動体端末アンテナ結合模擬回路 図000003
  • 特開2017212701-移動体端末アンテナ結合模擬回路 図000004
  • 特開2017212701-移動体端末アンテナ結合模擬回路 図000005
  • 特開2017212701-移動体端末アンテナ結合模擬回路 図000006
  • 特開2017212701-移動体端末アンテナ結合模擬回路 図000007
  • 特開2017212701-移動体端末アンテナ結合模擬回路 図000008
  • 特開2017212701-移動体端末アンテナ結合模擬回路 図000009
  • 特開2017212701-移動体端末アンテナ結合模擬回路 図000010
  • 特開2017212701-移動体端末アンテナ結合模擬回路 図000011
  • 特開2017212701-移動体端末アンテナ結合模擬回路 図000012
  • 特開2017212701-移動体端末アンテナ結合模擬回路 図000013
  • 特開2017212701-移動体端末アンテナ結合模擬回路 図000014
  • 特開2017212701-移動体端末アンテナ結合模擬回路 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-212701(P2017-212701A)
(43)【公開日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】移動体端末アンテナ結合模擬回路
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/391 20150101AFI20171102BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20171102BHJP
   H04B 17/17 20150101ALI20171102BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20171102BHJP
【FI】
   H04B17/391
   H04W88/02 151
   H04B17/17
   H04B17/29 200
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-106671(P2016-106671)
(22)【出願日】2016年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079337
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 誠志
(72)【発明者】
【氏名】大塚 尚宏
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067BB05
5K067BB22
5K067EE02
5K067EE32
5K067KK03
5K067LL11
(57)【要約】
【課題】4×4ポートの汎用型で、簡易な構成で小型且つ安価に形成できるようにする。
【解決手段】移動体端末1のアンテナ接続端子にケーブル接続可能な端末側ポート51a〜51dと、試験装置10″の信号端子にケーブル接続可能な試験側ポート52a〜52dと、端末側ポートとそれに対応する試験側ポートの間にそれぞれ2つずつ縦列的に挿入された合計8つの3ポート型カプラ61〜68と、これら3ポート型カプラのうち端末側ポートに接続されている4つの3ポート型カプラの各第3ポート間に接続された4ポート型カプラ70とを有し、試験側ポートに入力される試験用下り信号を対応する端末側ポートに出力させ、移動体端末1の特定のアンテナ接続端子から特定の端末側ポートに入力された上り信号を4等分し、その一つを特定のアンテナ接続端子に対応する試験側ポートに出力させ、別の3つを特定の端末側ポート以外の3つの端末側ポートに出力させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象の移動体端末(1)の複数のアンテナ接続端子(1a〜1d)にケーブル接続可能な第1〜第4の端末側ポート(51a〜51d)と、
前記第1〜第4の端末側ポートにそれぞれ対応して設けられ、前記移動体端末の試験に必要な試験用下り信号を受けるための第1〜第4の試験側ポート(52a〜52d)とを有し、
前記試験側ポートに入力された試験用下り信号を対応する前記端末側ポートに出力するとともに、前記移動体端末の特定のアンテナ接続端子から出力されて特定の前記端末側ポートに入力された上り信号を4分配し、その一つを前記特定の端末側ポートに対応する試験側ポートに出力し、別の3つを前記特定の端末側ポート以外の3つの端末側ポートに出力して、前記移動体端末の複数のアンテナ接続端子にアンテナが接続された場合のアンテナ間結合による上り信号の回り込みを再現させる移動体端末アンテナ結合模擬回路であって、
第1ポートに入力された信号を第2ポート、第3ポートに等分配し、該第2ポート、第3ポートに入力された信号を合成して前記第1ポートから出力する第1〜第8の3ポート型カプラ(61〜68)と、
第1ポート、第2ポートに入力された信号をそれぞれ等分配し互いに合成して第3ポート、第4ポートから出力し、該第3ポート、第4ポートに入力された信号をそれぞれ等分配し互いに合成して前記第1ポート、第2ポートから出力する4ポート型カプラ(70)とを有し、
前記第1の端末側ポート(51a)と前記第1の3ポート型カプラ(61)の第1ポートの間、該第1の3ポート型カプラの第2ポートと前記第2の3ポート型カプラ(62)の第1ポートの間、該第2の3ポート型カプラの第2ポートと前記第1の試験側ポート(52a)の間がそれぞれ接続され、
前記第2の端末側ポート(51b)と前記第3の3ポート型カプラ(63)の第1ポートの間、該第3の3ポート型カプラの第2ポートと前記第4の3ポート型カプラ(64)の第1ポートの間、該第4の3ポート型カプラの第2ポートと前記第2の試験側ポート(52b)の間がそれぞれ接続され、
前記第3の端末側ポート(51c)と前記第5の3ポート型カプラ(65)の第1ポートの間、該第5の3ポート型カプラの第2ポートと前記第6の3ポート型カプラ(66)の第1ポートの間、該第6の3ポート型カプラの第2ポートと前記第3の試験側ポート(52c)の間がそれぞれ接続され、
前記第4の端末側ポート(51d)と前記第7の3ポート型カプラ(67)の第1ポートの間、該第7の3ポート型カプラの第2ポートと前記第8の3ポート型カプラ(68)の第1ポートの間、該第8の3ポート型カプラの第2ポートと前記第4の試験側ポート(52d)の間がそれぞれ接続され、
前記第2の3ポート型カプラの第3ポートと前記第4の3ポート型カプラの第3ポートの間、前記第6の3ポート型カプラの第3ポートと前記第8の3ポート型カプラの第3ポートの間が接続され、
さらに、前記第1の3ポート型カプラの第3ポートと前記4ポート型カプラの第1ポートの間、前記第3の3ポート型カプラの第3ポートと前記4ポート型カプラの第2ポートの間、前記第5の3ポート型カプラの第3ポートと前記4ポート型カプラの第3ポートの間、前記第7の3ポート型カプラの第3ポートと前記4ポート型カプラの第4ポートの間がそれぞれ接続されていることを特徴とする移動体端末アンテナ結合模擬回路。
【請求項2】
前記4ポート型カプラは、
第1ポートに入力された信号を第2ポート、第3ポートに等分配し、該第2ポート、第3ポートに入力された信号を合成して前記第1ポートから出力する第9、第10の3ポート型カプラ(71、72)の第1ポート同士が接続されて形成され、前記第9の3ポート型カプラ(71)の第2、第3ポートが、前記4ポート型カプラの前記第1、第2ポートとして、前記第1の3ポート型カプラの第3ポート、前記第3の3ポート型カプラの第3ポートにそれぞれ接続され、前記第10の3ポート型カプラ(72)の第2、第3ポートが、前記4ポート型カプラの前記第3、第4ポートとして、前記第5の3ポート型カプラの第3ポート、前記第7の3ポート型カプラの第3ポートにそれぞれ接続されていることを特徴する請求項1記載の移動体端末アンテナ結合模擬回路。
【請求項3】
前記第2の3ポート型カプラの第3ポートと前記第4の3ポート型カプラの第3ポートの間、前記第6の3ポート型カプラの第3ポートと前記第8の3ポート型カプラの第3ポートの間、前記第1の3ポート型カプラの第3ポートと前記4ポート型カプラの第1ポートの間および前記第3の3ポート型カプラの第3ポートと前記4ポート型カプラの第2ポートの間に、それぞれ可変減衰器(81〜84)が挿入されていることを特徴とする請求項1記載の移動体端末アンテナ結合模擬回路。
【請求項4】
前記第2の3ポート型カプラの第3ポートと前記第4の3ポート型カプラの第3ポートの間、前記第6の3ポート型カプラの第3ポートと前記第8の3ポート型カプラの第3ポートの間、前記第5の3ポート型カプラの第3ポートと前記4ポート型カプラの第3ポートの間および前記第7の3ポート型カプラの第3ポートと前記4ポート型カプラの第4ポートの間に、それぞれ可変減衰器(81〜84)が挿入されていることを特徴とする請求項1記載の移動体端末アンテナ結合模擬回路。
【請求項5】
前記第2の3ポート型カプラの第3ポートと前記第4の3ポート型カプラの第3ポートの間、前記第6の3ポート型カプラの第3ポートと前記第8の3ポート型カプラの第3ポートの間および前記第9の3ポート型カプラの第1ポートと前記第10の3ポート型カプラのトの第1ポートの間に、それぞれ可変減衰器(81〜83)が挿入されていることを特徴とする請求項2記載の移動体端末アンテナ結合模擬回路。
【請求項6】
試験対象の移動体端末(1)の複数のアンテナ接続端子(1a〜1d)にケーブル接続可能な第1〜第4の端末側ポート(51a〜51d)と、
前記第1〜第4の端末側ポートにそれぞれ対応して設けられ、前記移動体端末の試験に必要な試験用下り信号を受けるための第1〜第4の試験側ポート(52a〜52d)とを有し、
前記試験側ポートに入力された試験用下り信号を対応する前記端末側ポートに出力するとともに、前記移動体端末の特定のアンテナ接続端子から出力されて特定の前記端末側ポートに入力された上り信号を4分配し、その一つを前記特定の端末側ポートに対応する試験側ポートに出力し、別の3つを前記特定の端末側ポート以外の3つの端末側ポートに出力して、前記移動体端末の複数のアンテナ接続端子にアンテナが接続された場合のアンテナ間結合による上り信号の回り込みを再現させる移動体端末アンテナ結合模擬回路であって、
第1ポートに入力された信号を第2ポート、第3ポートに等分配し、該第2ポート、第3ポートに入力された信号を合成して前記第1ポートから出力する第1〜第4の3ポート型カプラ(61、63、65、67)と、
第1ポート、第2ポートに入力された信号をそれぞれ等分配し互いに合成して第3ポート、第4ポートから出力し、該第3ポート、第4ポートに入力された信号をそれぞれ等分配し互いに合成して前記第1ポート、第2ポートから出力する第1〜第3の4ポート型カプラ(75、76、70)とを有し、
前記第1の端末側ポート(51a)と前記第1の3ポート型カプラ(61)の第1ポートの間、該第1の3ポート型カプラの第2ポートと前記第1の4ポート型カプラ(75)の第2ポートの間、該第1の4ポート型カプラの第4ポートと前記第1の試験側ポート(52a)の間がそれぞれ接続され、
前記第2の端末側ポート(51b)と前記第2の3ポート型カプラ(63)の第1ポートの間、該第2の3ポート型カプラの第2ポートと前記第1の4ポート型カプラ(75)の第3ポートの間、該第1の4ポート型カプラの第1ポートと前記第2の試験側ポート(52b)の間がそれぞれ接続され、
前記第3の端末側ポート(51c)と前記第3の3ポート型カプラ(65)の第1ポートの間、該第3の3ポート型カプラの第2ポートと前記第2の4ポート型カプラ(76)の第2ポートの間、該第2の4ポート型カプラの第4ポートと前記第3の試験側ポート(52c)の間がそれぞれ接続され、
前記第4の端末側ポート(51d)と前記第4の3ポート型カプラ(67)の第1ポートの間、該第4の3ポート型カプラの第2ポートと前記第2の4ポート型カプラ(76)の第3ポートの間、該第2の4ポート型カプラの第1ポートと前記第4の試験側ポート(52d)の間がそれぞれ接続され、
さらに、前記第1の3ポート型カプラ(61)の第3ポートと前記第3の4ポート型カプラ(70)の第1ポートの間、前記第2の3ポート型カプラ(63)の第3ポートと前記第3の4ポート型カプラの第2ポートの間、前記第3の3ポート型カプラ(65)の第3ポートと前記第3の4ポート型カプラの第3ポートの間、前記第4の3ポート型カプラ(67)の第3ポートと前記第3の4ポート型カプラの第4ポートの間がそれぞれ接続されていることを特徴とする移動体端末アンテナ結合模擬回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やスマートフォン等の移動体端末との間で基地局と同様の通信を行い、移動体端末の試験を行なうシステムにおいて、複数のアンテナ接続端子を有する移動体端末に対してケーブル接続環境で、アンテナ接続環境におけるアップリンク信号(上り信号)の回り込み状況を再現させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体端末の試験を行なう場合、実際の使用環境と同様に試験装置と移動体端末とが互いのアンテナを介して通信を行なうアンテナ接続環境と、試験装置の信号端子と移動体端末のアンテナ接続端子の間をケーブル接続して通信を行なうケーブル接続環境とがある。
【0003】
図9は、例えばMIMO方式やキャリアアグリゲーション方式のように、基地局との間で複数のアンテナを用いて通信を行なう移動体端末1を、アンテナ接続環境で試験する場合のシステムを示すものであり、移動体端末1のアンテナ接続端子1a、1bにアンテナ2a、2bが接続され、これを試験する試験装置10側の信号端子10a、10bにもアンテナ12a、12bが接続されている。なお、ここでは、汎用性を考慮して、移動体端末1のアンテナ接続端子1a、1bおよび試験装置10の信号端子10a、10bを送受兼用として説明する。
【0004】
試験装置10は、送受信部11で生成した試験用のダウンリンク信号(下り信号)DL1を、サーキュレータ11aおよび信号端子10aを介してアンテナ12aから放射し、ダウンリンク信号DL2を、サーキュレータ11bおよび信号端子10bを介してアンテナ12bから放射する。
【0005】
移動体端末1は、ダウンリンク信号DL1、DL2をアンテナ2a、2bで受信し、それに応答するアップリンク信号UL1、UL2をそれぞれのアンテナ2a、2bから放射する。
【0006】
試験装置10の送受信部11は、移動体端末1のアンテナ2a、2bから出力されたアップリンク信号UL1、UL2をサーキュレータ11a、11bを介して受信し、周波数変換処理および復調処理などを行なう。試験装置10は、この復調結果に基づき、移動体端末1の動作を調べる。
【0007】
上記アンテナ接続環境の場合、外来信号の影響を排除するために、試験装置10のアンテナ12a、12bと移動体端末1(アンテナ2a、2bを含む)とを、外部に対して電磁的にシールドされ、且つ内部での不要な反射が無い空間(電波暗箱)に設置する必要があり、システムが大掛かりとなる。また、試験環境内での信号減衰の程度等を定量的に正しく把握することが困難で、正確な測定が行なえないという問題がある。
【0008】
これに対し、試験装置と移動体端末とをケーブルで接続して通信を行なうケーブル接続環境では、外来信号や空間反射の影響を受けず、信号減衰の程度もケーブルの減衰量等から正確に把握でき、正確な測定が可能である。
【0009】
上記移動体端末1の試験をケーブル接続環境で行なう場合、図10に示す試験装置10′のように、送受信部11と信号端子10a、10bの間に信号合成部13を設ける。
【0010】
信号合成部13は、アンテナ接続環境において試験対象の移動体端末1の各アンテナ2a、2bで受信されてアンテナ接続端子1a,1bにそれぞれ入力される受信信号を模擬的に生成するものであり、その合成処理については、MIMO方式やキャリアアグリゲーション方式等の方式に応じた処理を行なう。
【0011】
例えば、MIMO方式を含む場合には、2系統のダウンリンク信号DL1、DL2に、試験装置側と移動体端末1の間のアンテナ間の伝搬路の特性(試験条件として設定する)に応じた減衰や遅延を与えて合成して、アンテナ接続環境において移動体端末1のアンテナ2a、2bでそれぞれ受信される信号(以下、個々のダウンリンク信号を含めて試験用下り信号と記す)DLA、DLBを模擬的に生成し、サーキュレータ11a、11b、信号端子10a、10bおよびケーブルCa、Cbを介して、移動体端末1のアンテナ接続端子1a、1bにそれぞれ入力させる。
【0012】
また、移動体端末1のアンテナ接続端子1a、1bから出力されるアップリンク信号UL1、UL2は、ケーブルCa、Cb、信号端子10a、10b、サーキュレータ11a、11bを介して送受信部11に入力される。
【0013】
このように構成された試験装置10′であれば、基地局と移動体端末との間で行なわれる通信を、アンテナ接続環境と同等の条件で試験することが可能である。
【0014】
ところが、移動体端末1のアンテナ2a、2bは極めて近い位置にあるので、その一方のアンテナから放射されたアップリンク信号が他方のアンテナを介して端末内に回り込む現象が発生する。
【0015】
ここで、移動体端末がFDD方式の通信に用いるアップリンク信号とダウンリンク信号の周波数差が、800MHz以上のキャリア周波数に対して数10MHz程度しかない場合には、回り込むアップリンク信号をアンテナやそれに続く回路の周波数特性によって減衰させることが困難であり、そのアップリンク信号の回り込みの影響でダウンリンク信号の受信品質が低下する恐れがある。
【0016】
また、複数の異なる周波数帯を用いて通信を行なうキャリアアグリゲーション(CA)方式を用いる移動体端末の場合、周波数帯毎のアンテナ接続端子を有し、周波数帯が近い場合には、一方の周波数帯のアップリンク信号が他方の周波数帯のダウンリンク信号に近くなり、その影響で上記同様にダウンリンク信号の受信品質を低下させる恐れがある。また、一方の周波数帯のアップリンク信号と他方のアップリンク信号の相互変調によって生じるスプリアスがいずれかの周波数帯のダウンリンク信号の周波数と重なる、あるいは近接してその受信品質を低下させる恐れがある。
【0017】
また、一方の周波数帯のアップリンク信号の周波数と他方の周波数帯のダウンリンク信号の周波数が大きく離間している場合であっても、例えば図11の(a)のように、周波数帯B1のアップリンク信号UL1(基本波成分UL1r)に含まれる高調波成分UL1hがアンテナ間結合によって回り込み、その回り込み成分UL1h′が、図11の(b)のように、周波数帯B2のダウンリンク信号DL2に重なる、あるいは近接する場合がある。ここで、受信試験におけるダウンリンク信号DL2のレベルは、アップリンク信号に比べて格段に低く、その高調波の回り込み成分のレベルも十分高いため、その回り込み成分によりダウンリンク信号の受信品質が低下する恐れがある。
【0018】
このような受信品質の低下は試験環境によるものではなく、移動体端末自体のアンテナ間結合によるものであるので、移動体端末の動作を評価する一つの項目となる。
【0019】
しかし、上記構成の試験装置10′では、移動体端末1の複数のアンテナ間の結合によるアップリンク信号の回り込みの状況を再現することができないという問題がある。
【0020】
携帯電話等の通信機器における規格を定めている3GPP規格には、このような移動体端末のアンテナ間結合に関する測定システムについて規定されていないが、適用可能な技術として、非特許文献1の3GPP TS 36.508 V12.8.0の490ページには、移動体端末への試験用下り信号に、信号発生器で生成した妨害波(変調波や搬送波)を加算して、移動体端末に与える構成が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】3GPP TS 36.508 V12.8.0 p490
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記非特許文献1の技術を用い、移動体端末が出力するアップリンク信号と同じ周波数で且つ同様の変調方式で変調された妨害信号を信号発生器で生成して、試験用下り信号に加えて移動体端末に与える構成が考えられる。
【0023】
しかしながら、このような構成では、移動体端末自身が出力したアップリンク信号と全く相関のない信号を用いることになり、移動体端末自身が実際に出力したアップリンク信号による影響を正しく把握することが困難である。
【0024】
また、よりシンプルな方法として、移動体端末の特定のアンテナ接続端子から出力されたアップリンク信号を、カプラ等を用いて別のアンテナ接続端子に帰還することで、移動体端末の複数のアンテナ間の結合を模擬する方法が考えられる。
【0025】
図12はその試験システムの一例を示すものであり、前記試験装置10′と移動体端末1の間に、移動体端末アンテナ結合模擬回路(以下、アンテナ結合模擬回路と記す)20を設けている。
【0026】
このアンテナ結合模擬回路20は、2つの端末側ポート20a、20bと、2つの試験側ポート20c、20dを有する2×2ポート型のものであり、信号の分配、合成機能を有する2つの3ポート型カプラ(以下、単にカプラと記す)21、22によって構成される。
【0027】
カプラ21、22は、第1ポートに入力された信号を第2ポート、第3ポートに等分配し、第2ポート、第3ポートに入力された信号を合成して第1ポートから出力する機能を有しており、このアンテナ結合模擬回路20では、カプラ21、22の第1ポートが、端末側ポート20a、20bを介して移動体端末1のアンテナ接続端子1a、1bにそれぞれ接続され、カプラ21、22の第2ポートが試験側ポート20c、20dを介して試験装置10′の信号端子10a、10bにそれぞれ接続され、カプラ21、22の第3ポート同士が接続されている。
【0028】
この構成によれば、移動体端末1から出力されたアップリンク信号UL1は、カプラ21で等分配され、その一方が試験装置10′に入力され、他方がカプラ22に入力され、試験装置10′からの試験用下り信号DLBと合成されて移動体端末1のアンテナ接続端子1bに帰還される。また、同様に移動体端末1から出力されたアップリンク信号UL2は、カプラ22で等分配され、その一方が試験装置10′に入力され、他方がカプラ21に入力され、試験装置10′からの試験用下り信号DLAと合成されて移動体端末1のアンテナ接続端子1aに帰還される。
【0029】
上記したアンテナ結合模擬回路20は2×2ポート型であるが、高速通信実現のために近年の移動体端末は4つ程度のアンテナを有している場合が多い。これに対応するためには、上記アンテナ結合模擬回路20を汎用性の高い4×4ポート型に拡張する必要がある。
【0030】
図13は、4×4ポート型に拡張したアンテナ結合模擬回路30の構成を示すものであり、移動体端末1の4つのアンテナ接続端子1a〜1dにケーブル接続可能な4つの端末側ポート30a〜30dと、試験装置10″の4つの信号端子10a〜10dにケーブル接続可能な4つの試験側ポート30e〜30hを有している。なお、試験装置10″は、前記試験装置10′を4ポート型に拡張したものである。
【0031】
このアンテナ結合模擬回路30の場合も前記同様に、分配、合成機能を有する3ポート型カプラを用いているが、1つのアンテナ接続端子から出力されるアップリンク信号を、試験装置10″側と他の3つのアンテナ接続端子に分配するために、3つ1組のカプラを用いている。
【0032】
つまり、カプラ31、34、37、40の第1ポートが端末側ポート30a〜30dを介して移動体端末1のアンテナ接続端子1a〜1dにそれぞれ接続され、カプラ31、34、37、40の第2ポートが、カプラ32、35、38、41の第1ポートにそれぞれ接続され、カプラ31、34、37、40の第3ポートが、カプラ33、36、39、42の第1ポートにそれぞれ接続され、カプラ32、35、38、41の第2ポートが、試験側ポート30e〜30hを介して試験装置10″の信号端子10a〜10dにそれぞれ接続されている。
【0033】
また、カプラ32、35の第3ポート同士、カプラ33の第2ポートとカプラ38の第3ポートの間、カプラ33、41の第3ポート同士、カプラ36、39の第2ポート同士、カプラ36の第3ポートとカプラ42の第2ポートの間、カプラ39、42の第3ポート同士が接続されている。
【0034】
この構成のアンテナ結合模擬回路30では、アンテナ接続端子1aから出力されたアップリンク信号UL1が、3つのカプラ31〜33により4分配され、その一つが信号端子10aに入力され、別の一つがカプラ35、34を経由してアンテナ接続端子1bに入力され、別の一つがカプラ38、37を経由してアンテナ接続端子1cに入力され、最後の一つがカプラ41、40を経由してアンテナ接続端子1dに入力されることになる。
【0035】
同様に、アンテナ接続端子1bから出力されたアップリンク信号UL2が3つのカプラ34〜36により4分配され、その一つが信号端子10bに入力され、別の一つがカプラ32、31を経由してアンテナ接続端子1aに入力され、別の一つがカプラ39、37を経由してアンテナ接続端子1cに入力され、最後の一つがカプラ42、40を経由して、アンテナ接続端子1dに入力されることになる。
【0036】
同様に、アンテナ接続端子1cから出力されたアップリンク信号UL3が3つのカプラ37〜39により4分配され、その一つが信号端子10cに入力され、別の一つがカプラ33、31を経由してアンテナ接続端子1aに入力され、別の一つがカプラ36、34を経由してアンテナ接続端子1bに入力され、最後の一つがカプラ42、40を経由して、アンテナ接続端子1dに入力されることになる。
【0037】
同様に、アンテナ接続端子1dから出力されたアップリンク信号UL4が3つのカプラ40〜42により4分配され、その一つが信号端子10dに入力され、別の一つがカプラ33、31を経由してアンテナ接続端子1aに入力され、別の一つがカプラ36、34を経由してアンテナ接続端子1bに入力され、最後の一つがカプラ39、37を経由して、アンテナ接続端子1cに入力されることになる。
【0038】
したがって、移動体端末1のアンテナ接続端子1a〜1dの一つから出力されるアップリンク信号は、2つのカプラにより1/4の電力(−6dB)に分けられて、他の3つのアンテナ接続端子に帰還されることになり、ケーブルロスなどを考慮しても、実際の移動体端末1のアンテナ間の結合度(−10dB)に近い環境での試験が可能となる。
【0039】
しかしながら、上記構成の4×4ポート型のアンテナ結合模擬回路30では、カプラが12個必要であり、しかも、カプラ間を接続する接続部材(ケーブルやコネクタ等)が14組必要となる。一般的に数GHzの信号を伝送する接続部材としてセミリジットケーブル等を用いるが、このような、かさばって扱いにくいセミリジットケーブルからなる接続部材を用いて多くのカプラ間を接続する構成では、回路が複雑化し大型となりコスト高となる。
【0040】
本発明は、この課題を解決し、4×4ポートの汎用型でありながら、より簡易な構成で、小型に且つ安価に形成できるアンテナ結合模擬回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0041】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の移動体端末アンテナ結合模擬回路は、
試験対象の移動体端末(1)の複数のアンテナ接続端子(1a〜1d)にケーブル接続可能な第1〜第4の端末側ポート(51a〜51d)と、
前記第1〜第4の端末側ポートにそれぞれ対応して設けられ、前記移動体端末の試験に必要な試験用下り信号を受けるための第1〜第4の試験側ポート(52a〜52d)とを有し、
前記試験側ポートに入力された試験用下り信号を対応する前記端末側ポートに出力するとともに、前記移動体端末の特定のアンテナ接続端子から出力されて特定の前記端末側ポートに入力された上り信号を4分配し、その一つを前記特定の端末側ポートに対応する試験側ポートに出力し、別の3つを前記特定の端末側ポート以外の3つの端末側ポートに出力して、前記移動体端末の複数のアンテナ接続端子にアンテナが接続された場合のアンテナ間結合による上り信号の回り込みを再現させる移動体端末アンテナ結合模擬回路であって、
第1ポートに入力された信号を第2ポート、第3ポートに等分配し、該第2ポート、第3ポートに入力された信号を合成して前記第1ポートから出力する第1〜第8の3ポート型カプラ(61〜68)と、
第1ポート、第2ポートに入力された信号をそれぞれ等分配し互いに合成して第3ポート、第4ポートから出力し、該第3ポート、第4ポートに入力された信号をそれぞれ等分配し互いに合成して前記第1ポート、第2ポートから出力する4ポート型カプラ(70)とを有し、
前記第1の端末側ポート(51a)と前記第1の3ポート型カプラ(61)の第1ポートの間、該第1の3ポート型カプラの第2ポートと前記第2の3ポート型カプラ(62)の第1ポートの間、該第2の3ポート型カプラの第2ポートと前記第1の試験側ポート(52a)の間がそれぞれ接続され、
前記第2の端末側ポート(51b)と前記第3の3ポート型カプラ(63)の第1ポートの間、該第3の3ポート型カプラの第2ポートと前記第4の3ポート型カプラ(64)の第1ポートの間、該第4の3ポート型カプラの第2ポートと前記第2の試験側ポート(52b)の間がそれぞれ接続され、
前記第3の端末側ポート(51c)と前記第5の3ポート型カプラ(65)の第1ポートの間、該第5の3ポート型カプラの第2ポートと前記第6の3ポート型カプラ(66)の第1ポートの間、該第6の3ポート型カプラの第2ポートと前記第3の試験側ポート(52c)の間がそれぞれ接続され、
前記第4の端末側ポート(51d)と前記第7の3ポート型カプラ(67)の第1ポートの間、該第7の3ポート型カプラの第2ポートと前記第8の3ポート型カプラ(68)の第1ポートの間、該第8の3ポート型カプラの第2ポートと前記第4の試験側ポート(52d)の間がそれぞれ接続され、
前記第2の3ポート型カプラの第3ポートと前記第4の3ポート型カプラの第3ポートの間、前記第6の3ポート型カプラの第3ポートと前記第8の3ポート型カプラの第3ポートの間が接続され、
さらに、前記第1の3ポート型カプラの第3ポートと前記4ポート型カプラの第1ポートの間、前記第3の3ポート型カプラの第3ポートと前記4ポート型カプラの第2ポートの間、前記第5の3ポート型カプラの第3ポートと前記4ポート型カプラの第3ポートの間、前記第7の3ポート型カプラの第3ポートと前記4ポート型カプラの第4ポートの間がそれぞれ接続されていることを特徴とする。
【0042】
また、本発明の請求項2記載の移動体端末アンテナ結合模擬回路は、請求項1記載の移動体端末アンテナ結合模擬回路において、
前記4ポート型カプラは、
第1ポートに入力された信号を第2ポート、第3ポートに等分配し、該第2ポート、第3ポートに入力された信号を合成して前記第1ポートから出力する第9、第10の3ポート型カプラ(71、72)の第1ポート同士が接続されて形成され、前記第9の3ポート型カプラ(71)の第2、第3ポートが、前記4ポート型カプラの前記第1、第2ポートとして、前記第1の3ポート型カプラの第3ポート、前記第3の3ポート型カプラの第3ポートにそれぞれ接続され、前記第10の3ポート型カプラ(72)の第2、第3ポートが、前記4ポート型カプラの前記第3、第4ポートとして、前記第5の3ポート型カプラの第3ポート、前記第7の3ポート型カプラの第3ポートにそれぞれ接続されていることを特徴する。
【0043】
また、本発明の請求項3記載の移動体端末アンテナ結合模擬回路は、請求項1記載の移動体端末アンテナ結合模擬回路において、
前記第2の3ポート型カプラの第3ポートと前記第4の3ポート型カプラの第3ポートの間、前記第6の3ポート型カプラの第3ポートと前記第8の3ポート型カプラの第3ポートの間、前記第1の3ポート型カプラの第3ポートと前記4ポート型カプラの第1ポートの間および前記第3の3ポート型カプラの第3ポートと前記4ポート型カプラの第2ポートの間に、それぞれ可変減衰器(81〜84)が挿入されていることを特徴とする。
【0044】
また、本発明の請求項4記載の移動体端末アンテナ結合模擬回路は、請求項1記載の移動体端末アンテナ結合模擬回路において、
前記第2の3ポート型カプラの第3ポートと前記第4の3ポート型カプラの第3ポートの間、前記第6の3ポート型カプラの第3ポートと前記第8の3ポート型カプラの第3ポートの間、前記第5の3ポート型カプラの第3ポートと前記4ポート型カプラの第3ポートの間および前記第7の3ポート型カプラの第3ポートと前記4ポート型カプラの第4ポートの間に、それぞれ可変減衰器(81〜84)が挿入されていることを特徴とする。
【0045】
また、本発明の請求項5記載の移動体端末アンテナ結合模擬回路は、請求項2記載の移動体端末アンテナ結合模擬回路において、
前記第2の3ポート型カプラの第3ポートと前記第4の3ポート型カプラの第3ポートの間、前記第6の3ポート型カプラの第3ポートと前記第8の3ポート型カプラの第3ポートの間および前記第9の3ポート型カプラの第1ポートと前記第10の3ポート型カプラのトの第1ポートの間に、それぞれ可変減衰器(81〜83)が挿入されていることを特徴とする。
【0046】
また、本発明の請求項6記載の移動体端末アンテナ結合模擬回路は、
試験対象の移動体端末(1)の複数のアンテナ接続端子(1a〜1d)にケーブル接続可能な第1〜第4の端末側ポート(51a〜51d)と、
前記第1〜第4の端末側ポートにそれぞれ対応して設けられ、前記移動体端末の試験に必要な試験用下り信号を受けるための第1〜第4の試験側ポート(52a〜52d)とを有し、
前記試験側ポートに入力された試験用下り信号を対応する前記端末側ポートに出力するとともに、前記移動体端末の特定のアンテナ接続端子から出力されて特定の前記端末側ポートに入力された上り信号を4分配し、その一つを前記特定の端末側ポートに対応する試験側ポートに出力し、別の3つを前記特定の端末側ポート以外の3つの端末側ポートに出力して、前記移動体端末の複数のアンテナ接続端子にアンテナが接続された場合のアンテナ間結合による上り信号の回り込みを再現させる移動体端末アンテナ結合模擬回路であって、
第1ポートに入力された信号を第2ポート、第3ポートに等分配し、該第2ポート、第3ポートに入力された信号を合成して前記第1ポートから出力する第1〜第4の3ポート型カプラ(61、63、65、67)と、
第1ポート、第2ポートに入力された信号をそれぞれ等分配し互いに合成して第3ポート、第4ポートから出力し、該第3ポート、第4ポートに入力された信号をそれぞれ等分配し互いに合成して前記第1ポート、第2ポートから出力する第1〜第3の4ポート型カプラ(75、76、70)とを有し、
前記第1の端末側ポート(51a)と前記第1の3ポート型カプラ(61)の第1ポートの間、該第1の3ポート型カプラの第2ポートと前記第1の4ポート型カプラ(75)の第2ポートの間、該第1の4ポート型カプラの第4ポートと前記第1の試験側ポート(52a)の間がそれぞれ接続され、
前記第2の端末側ポート(51b)と前記第2の3ポート型カプラ(63)の第1ポートの間、該第2の3ポート型カプラの第2ポートと前記第1の4ポート型カプラ(75)の第3ポートの間、該第1の4ポート型カプラの第1ポートと前記第2の試験側ポート(52b)の間がそれぞれ接続され、
前記第3の端末側ポート(51c)と前記第3の3ポート型カプラ(65)の第1ポートの間、該第3の3ポート型カプラの第2ポートと前記第2の4ポート型カプラ(76)の第2ポートの間、該第2の4ポート型カプラの第4ポートと前記第3の試験側ポート(52c)の間がそれぞれ接続され、
前記第4の端末側ポート(51d)と前記第4の3ポート型カプラ(67)の第1ポートの間、該第4の3ポート型カプラの第2ポートと前記第2の4ポート型カプラ(76)の第3ポートの間、該第2の4ポート型カプラの第1ポートと前記第4の試験側ポート(52d)の間がそれぞれ接続され、
さらに、前記第1の3ポート型カプラ(61)の第3ポートと前記第3の4ポート型カプラ(70)の第1ポートの間、前記第2の3ポート型カプラ(63)の第3ポートと前記第3の4ポート型カプラの第2ポートの間、前記第3の3ポート型カプラ(65)の第3ポートと前記第3の4ポート型カプラの第3ポートの間、前記第4の3ポート型カプラ(67)の第3ポートと前記第3の4ポート型カプラの第4ポートの間がそれぞれ接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0047】
このように構成されているため、本発明の請求項1の移動体端末アンテナ結合模擬回路は、移動体端末のアンテナ接続端子のいずれかから出力されて例えば第1の端末側ポートに入力された上り信号が、第1の3ポート型カプラにより等分配され、その一方が、第2の3ポート型カプラに入力されてさらに等分配され、その一方が第1の試験側ポートに出力され、他方が第4の3ポート型カプラ、第3の3ポート型カプラを経由して、第2の端末側ポートに出力される。また、第1の3ポート型カプラにより等分配された他方の信号は、4ポート型カプラにより等分配されて、それぞれ第5の3ポート型カプラ、第7の3ポート型カプラを経由して第3の端末側ポート、第4の端末側ポートに出力される。移動体端末の他のアンテナ接続端子から他の端末側ポートに入力される上り信号についても同様に分配されて、その他のアンテナ接続端子に帰還される。
【0048】
つまり、本発明の請求項1の移動体端末アンテナ結合模擬回路は、汎用的な4×4ポート型であるにも関わらず、端末側ポートとそれに対応する試験側ポートの間にそれぞれ2つずつ縦列的に挿入された合計8つの3ポート型カプラと、これら3ポート型カプラのうち端末側ポートに接続されている4つの3ポート型カプラの各第3ポート間に接続された4ポート型カプラの合計9つのカプラで構成でき、そのカプラ間を接続するためのケーブルやコネクタなどの接続部材の数も10組で済む。
【0049】
このため、従来回路と比べて、カプラ数で3/4、カプラ間接続部材数で5/7だけ小型化できる。
【0050】
また、本発明の請求項2のように、4ポート型カプラを、第1ポート同士が接続された2つの3ポート型カプラで構成した場合でも、10個の3ポート型カプラで構成でき、それらのカプラ間を接続するためのケーブルやコネクタなどの接続部材の数も11組で済む。
【0051】
また、本発明の請求項3〜5のように、帰還させる上り信号の経路に可変減衰器を挿入することで、移動体端末の擬似的なアンテナ間結合度を変化させることができ、その結合度の変化に対する移動体端末の動作を容易に把握できる。
【0052】
また、本発明の請求項6では、請求項1の第2、第4の3ポート型カプラおよび第6、第8の3ポート型カプラをそれぞれ一つの4ポート型カプラに置き換えてほぼ同等の機能を実現している。
【0053】
つまり、この請求項6の移動体端末アンテナ結合模擬回路は、汎用的な4×4ポート型であるにも関わらず、4つの3ポート型カプラと3つの4ポート型カプラの合計7つのカプラで構成でき、そのカプラ間を接続するためのケーブルやコネクタなどの接続部材の数も8組で済み、従来回路と比べて、カプラ数で7/12、カプラ間接続部材数で4/7だけ小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の実施形態の構成図
図2】本発明の実施形態の要部を変更した構成図
図3】可変減衰器を加えた構成図
図4】可変減衰器を加えた別の構成図
図5】可変減衰器を加えた別の構成図
図6】本発明の実施形態の別の使用形態を示す図
図7】本発明の実施形態の別の使用形態を示す図
図8】本発明の別の実施形態を示す図
図9】アンテナ接続環境の試験システムを示す図
図10】ケーブル接続環境の試験システムを示す図
図11】移動体端末のアンテナ間結合の影響を説明するための図
図12】2×2ポート型回路の構成例を示す図
図13】4×4ポート型回路の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用したアンテナ結合模擬回路50を含む試験システムの構成を示している。
【0056】
この試験システムは、前記した試験装置10″とアンテナ結合模擬回路50により構成され、基地局との間で4つのアンテナを用いて送受信を行なう通信方式に対応した移動体端末1を試験対象とするものであり、移動体端末1には、4つのアンテナ接続端子1a〜1dが設けられている。なお、実際のアンテナ接続端子には、送受信兼用のものと受信専用のものがあるが、ここでは汎用性を考慮して送受信兼用とする。
【0057】
前記したように、試験装置10″は、移動体端末1の試験に必要なダウンリンク信号を生成し、それらを合成等して得られる試験用下り信号DLA〜DLDを4つの信号端子10a〜10dから出力するとともに、移動体端末1のアンテナ接続端子1a〜1dから出力されるアップリンク信号(上り信号)UL1〜UL4を、それぞれ信号端子10a〜10dを介して受けて受信復調し、その結果に基づいて移動体端末1の動作を試験する。
【0058】
アンテナ結合模擬回路50は、移動体端末1の複数のアンテナ接続端子1a〜1dと、試験装置10″に設けられた4つの信号端子10a〜10dとの間にケーブルを介して接続され、試験装置10″からの試験用下り信号DLA〜DLDを、移動体端末1のアンテナ接続端子1a〜1dにそれぞれ与え、移動体端末1の特定のアンテナ接続端子から出力されたアップリンク信号を電力で4等分してその一つを試験装置10″の特定のアンテナ接続端子に対応する特定の信号端子に与えるとともに、残りの3つを移動体端末1の特定のアンテナ接続端子以外の3つのアンテナ接続端子に帰還させる。
【0059】
これを実現するために、実施形態のアンテナ結合模擬回路50は、移動体端末1の4つのアンテナ接続端子1a〜1dにそれぞれケーブル接続可能な第1〜第4の端末側ポート51a〜51dと、これら端末側ポートにそれぞれ対応し、試験装置10″の4つの信号端子10a〜10dにそれぞれケーブル接続可能な第1〜第4の試験側ポート52a〜52dと、各端末側ポート51a〜51dとそれに対応する各試験側ポート52a〜52dの間にそれぞれ2つずつ縦列的に挿入された合計8つの3ポート型カプラ61〜68と、これら3ポート型カプラのうち端末側ポートに接続されている4つの3ポート型カプラのポート間に接続された4ポート型カプラ70とを有している。
【0060】
3ポート型カプラ61〜68は、第1ポートに入力された信号を等分配して第2ポート、第3ポートから出力し、それら第2ポート、第3ポートに入力された信号を合成して第1ポートから出力する分配合成機能を有する。その一例としてウィルキンソン型カプラ等を用いることができる。
【0061】
また、4ポート型カプラ70は、第1ポート、第2ポートに入力された信号をそれぞれ等分配し互いに合成して第3ポート、第4ポートから出力し、第3ポート、第4ポートに入力された信号をそれぞれ等分配し互いに合成して第1ポート、第2ポートから出力する分配合成機能を有する。その一例として4ポート型の方向性結合器(ハイブリッド結合器)等を用いることができる。
【0062】
そして、これらの3ポート型カプラ61〜68および4ポート型カプラ70は、以下のように接続されている。
【0063】
即ち、第1の端末側ポート51aと第1の3ポート型カプラ61の第1ポートの間、その第1の3ポート型カプラ61の第2ポートと第2の3ポート型カプラ62の第1ポートの間、その第2の3ポート型カプラ62の第2ポートと第1の試験側ポート52aの間がそれぞれケーブル等の接続部材を介して接続されている。
【0064】
同様に、第2の端末側ポート51bと第3の3ポート型カプラ63の第1ポートの間、その第3の3ポート型カプラ63の第2ポートと第4の3ポート型カプラ64の第1ポートの間、その第4の3ポート型カプラ64の第2ポートと第2の試験側ポート52bの間がそれぞれ接続され、第3の端末側ポート51cと第5の3ポート型カプラ65の第1ポートの間、その第5の3ポート型カプラ65の第2ポートと第6の3ポート型カプラ66の第1ポートの間、その第6の3ポート型カプラ66の第2ポートと第3の試験側ポート52cの間がそれぞれ接続され、第4の端末側ポート51dと第7の3ポート型カプラ67の第1ポートの間、その第7の3ポート型カプラ67の第2ポートと第8の3ポート型カプラ68の第1ポートの間、その第8の3ポート型カプラ68の第2ポートと第4の試験側ポート52dの間がそれぞれ接続されている。
【0065】
また、第2の3ポート型カプラ62の第3ポートと第4の3ポート型カプラ64の第3ポートの間、第6の3ポート型カプラ66の第3ポートと第8の3ポート型カプラ68の第3ポートの間が接続され、さらに、第1の3ポート型カプラ61の第3ポートと4ポート型カプラ70の第1ポートの間、第3の3ポート型カプラ63の第3ポートと4ポート型カプラ70の第2ポートの間、第5の3ポート型カプラ65の第3ポートと4ポート型カプラ70の第3ポートの間、第7の3ポート型カプラ67の第3ポートと4ポート型カプラ70の第4ポートの間がそれぞれ接続されている。
【0066】
なお、ここでは、第1〜第4の端末側ポート51a〜51dと、3ポート型カプラ61、63、65、66の各第1ポートとを区別しているが、第1〜第4の端末側ポート51a〜51dが3ポート型カプラ61、63、65、66の各第1ポートと共通でよく、また、同様に第1〜第4の試験側ポート52a〜52dが3ポート型カプラ62、64、66、68の各第2ポートと共通でよい。
【0067】
このように構成されたアンテナ結合模擬回路50では、移動体端末1の特定のアンテナ接続端子から出力されたアップリンク信号は4分配されて、その一つが対応する信号端子に出力され、残り3つが他のアンテナ接続端子に帰還される。
【0068】
例えば、図1に示しているように、第1の端末側ポート51aに入力されたアップリンク信号UL1が、第1の3ポート型カプラ61により2つの信号ULla、UL1bに等分配され、その一方UL1aが、第2の3ポート型カプラ62に入力されてさらに2つの信号ULlc、UL1dに等分配され、その一方ULlcが第1の試験側ポート52aに出力され、他方UL1dが第4の3ポート型カプラ64、第3の3ポート型カプラ63を経由して、第2の端末側ポート51bに出力される。
【0069】
また、第1の3ポート型カプラ61により等分配された他方の信号UL1bは、4ポート型カプラ70により2つの信号ULle、UL1fに等分配されて、それぞれ第5の3ポート型カプラ65、第7の3ポート型カプラ67を経由して第3の端末側ポート51c、第4の端末側ポート51dに出力される。移動体端末1の他のアンテナ接続端子から他の端末側ポートに入力されるアップリンク信号についても同様に、その他のアンテナ接続端子に帰還される。
【0070】
したがって、移動体端末1のアンテナ接続端子1aには、試験用下り信号DLAと、アンテナ接続端子1b、1c、1dから出力されたアップリンク信号UL2、UL3、UL4の合成分ULAが出力され、同様に、アンテナ接続端子1bには、試験用下り信号DLBと、アンテナ接続端子1a、1c、1dから出力されたアップリンク信号UL1、UL3、UL4の合成分ULBが出力され、アンテナ接続端子1cには、試験用下り信号DLCと、アンテナ接続端子1a、1b、1dから出力されたアップリンク信号UL1、UL2、UL4の合成分ULCが出力され、アンテナ接続端子1dには、試験用下り信号DLDと、アンテナ接続端子1a、1b、1cから出力されたアップリンク信号UL1、UL2、UL3の合成分ULDが出力されることになる。これによって移動体端末1のアンテナ接続環境におけるアンテナ間結合が模擬された状態で、移動体端末1に対する試験を行なうことができる。
【0071】
つまり、このアンテナ結合模擬回路50は、汎用的な4×4ポート型であるにも関わらず、8つの3ポート型カプラ61〜68と1つの4ポート型カプラ70の合計9つのカプラで構成でき、そのカプラ間を接続するためのケーブルやコネクタなどからなる接続部材も10組で済む。
【0072】
このため、従来回路と比べて、カプラ数で3/4、カプラ間接続部材数で5/7だけ構成が簡易化され、小型に形成できる。
【0073】
また、このアンテナ結合模擬回路50では、いずれのアンテナ接続端子から出力されたアップリンク信号についても2つのカプラを経由することにより4分配されて、その3つが他のアンテナ接端子に帰還される。つまりカプラによる分配で電力が6dB下がり、それにケーブル等の接続ロスが加わることになる。
【0074】
実際の移動体端末1のアンテナ間の結合度は−10dB程度であることが知られており、帰還されるアップリンク信号の元の電力に対する減衰量が10dBを大きく越えると実環境に対応した試験が行なえないが、本発明のアンテナ結合模擬回路50では、接続ロスを4dB程度まで許容でき、実環境に対応した試験が行なえる。
【0075】
前記実施形態では、4ポート型カプラ70が単独構造の例を示したが、図2に示すアンテナ結合模擬回路50のように、4ポート型カプラ70を、前記した第1〜第8の3ポート型カプラ61〜68と同等の第9、第10の3ポート型カプラ71、72の第1ポート同士を接続して形成することができる。この場合、第9の3ポート型カプラ71の第2、第3ポートを、4ポート型カプラ70の第1、第2ポートとして、第1の3ポート型カプラ6の第3ポート、第3の3ポート型カプラ63の第3ポートにそれぞれ接続し、第10の3ポート型カプラ72の第2、第3ポートを、4ポート型カプラ70の第3、第4ポートとして、第5の3ポート型カプラ65の第3ポート、第7の3ポート型カプラ67の第3ポートにそれぞれ接続すればよい。
【0076】
この構成でも、従来回路に比べて、カプラ数で10/12、カプラ間接続部材数で11/14だけ構成が簡易化され、小型に形成できる。また使用するカプラを全て3ポート型で共通化できる利点がある。
【0077】
また、アップリンク信号の帰還量(アンテナ間結合度)を可変できるようにすれば、アンテナ結合度の変化に対する移動体端末1の動作を把握できて便利である。
【0078】
この場合には、例えば図3図5のように、試験用下り信号は減衰させず、帰還するアップリンク信号のみに任意の減衰を与えられる経路に可変減衰器81〜84を挿入し、擬似的なアンテナ間結合度が−10dBより低い値から−10dBを超える値となるように減衰量を可変しながら、移動体端末の動作確認を行なえばよい。
【0079】
図3の回路例は、第2の3ポート型カプラ62の第3ポートと第4の3ポート型カプラ64の第3ポートの間、第6の3ポート型カプラ66の第3ポートと第8の3ポート型カプラ68の第3ポートの間、第1の3ポート型カプラ61の第3ポートと4ポート型カプラ70の第1ポートの間および第3の3ポート型カプラ63の第3ポートと4ポート型カプラ70の第2ポートの間に、それぞれ可変減衰器81〜84を挿入している。
【0080】
図4の回路例では、可変減衰器81、82の挿入位置は図3の例と同じであるが、可変減衰器83、84を、第5の3ポート型カプラ65の第3ポートと4ポート型カプラ70の第3ポートの間および第7の3ポート型カプラ67の第3ポートと4ポート型カプラ70の第4ポートの間に挿入している。
【0081】
また、図5の回路例では、可変減衰器81、82の挿入位置は図3図4の例と同じであるが、可変減衰器83を、4ポート型カプラ70を構成する第9、第10の3ポート型カプラ71、72の第1ポートの間に挿入している。この場合、可変減衰器の数が3つで済む。
【0082】
上記実施形態では、接続対象の移動体端末1のアンテナ接続端子が4つの場合について説明したが、接続対象のアンテナ接続端子が3つ以下の場合でも対応可能である。
【0083】
例えば、図6のように、接続対象が、移動体端末1の2つのアンテナ接続端子1a、1bと試験装置10″の2つの信号端子10a、10bの場合、第1〜第4の端末側ポート51a〜51dのいずれか一つの端末側ポート51x(ここでは51x=51a)をアンテナ接続端子1aに接続し、第1〜第4の試験側ポート52a〜52dのうち、端末側ポート51xと組みをなす試験側ポート52x(ここでは52x=52a)を、アンテナ接続端子1aに与える試験用下り信号DLAを出力する信号端子10aに接続する。同様に、第1〜第4の端末側ポート51a〜51dのうち端末側ポート51x(ここでは51x=51a)以外の端末側ポート51y(ここでは51y=51b)をアンテナ接続端子1bに接続し、第1〜第4の試験側ポート52a〜52dのうち、端末側ポート51yと組みをなす試験側ポート52y(ここでは52y=52b)を、アンテナ接続端子1bに与える試験用下り信号DLBを出力する信号端子10bに接続する。
【0084】
また、例えば、図7のように、接続対象が、移動体端末1の3つのアンテナ接続端子1a〜1cと試験装置10″の3つの信号端子10a〜10cの場合、図6の接続形態に加えて、前記第1〜第4の端末側ポート51a〜51dのうち、端末側ポート51x、51y以外の端末側ポート51z(ここでは51z=51c)をアンテナ接続端子1cに接続し、第1〜第4の試験側ポート52a〜52dのうち、端末側ポート51zと組みをなす試験側ポート52z(ここでは52z=52c)を、アンテナ接続端子1cに与える試験用下り信号DLCを出力する信号端子10cに接続すればよい。なお、上記接続例において、アンテナ接続端子や信号端子に接続されない端末側ポートおよび試験側ポートは、分配されたアップリンク信号の反射等が起きないように整合終端しておく。
【0085】
上記したいずれの接続例においても、特定のアンテナ接続端子から出力されたアップリンク信号は、二つのカプラによる等分配処理で1/4の電力に分けられて特定のアンテナ接続端子以外のアンテナ接続端子へ帰還されることになり、前記したようにケーブル等の接続ロスや可変減衰器81〜84の挿入により、移動体端末1のアンテナ実装状態でのアンテナ間結合度(−10dB)を大きく越えない範囲で試験することができる。
【0086】
前記実施形態では、4つの試験側ポート52a〜52dに入力される試験用下り信号を、端末側ポート51a〜61dにそれぞれ接続された3ポート型カプラ61、63、65、67の第2ポートに与えるとともに、3ポート型カプラ61、63間および3ポート型カプラ65、67間でアップリンク信号を帰還させる機能を、4つの3ポート型カプラ62、64、66、68によって実現していたが、図8に示すアンテナ結合模擬回路50′のように、これら4つの3ポート型カプラ62、64、66、68の代わりに、2つの4ポート型カプラ75、76を用いて同等の機能を実現させることも可能である。
【0087】
4ポート型カプラ75、76は、前記4ポートカプラ70と同様に、第1ポートおよび第2ポートに入力された信号をそれぞれ2等分して互いに合成して第3ポートおよび第4ポートに出力し、第3ポートおよび第4ポートに入力された信号をそれぞれ2等分して互いに合成して第1ポートおよび第2ポートに出力する機能を有しており、このアンテナ結合模擬回路50′では、3ポート型カプラ61の第2ポートと4ポート型カプラ75の第2ポートの間、3ポート型カプラ63の第2ポートと4ポート型カプラ75の第3ポートの間、4ポート型カプラ75の第4ポートと試験側ポート52aとの間および4ポート型カプラ75の第1ポートと試験側ポート52bとの間がそれぞれ接続されている。
【0088】
また同様に、3ポート型カプラ65の第2ポートと4ポート型カプラ76の第2ポートの間、3ポート型カプラ67の第2ポートと4ポート型カプラ76の第3ポートの間、4ポート型カプラ76の第4ポートと試験側ポート52cとの間および4ポート型カプラ76の第1ポートと試験側ポート52dとの間がそれぞれ接続されている。
【0089】
したがって、この構成の場合、例えば端末側ポート51aに入力されたアップリンク信号UL1は、3ポート型カプラ61で2等分され、その一方UL1aが4ポート型カプラ75の第2ポートに入力されてさらに2等分され、第3ポート、第4ポートに出力され、その一方UL1cが試験側ポート52aに出力され、他方UL1dが3ポート型カプラ63を介して端末側ポート51bに帰還されることになる。他の端末側ポート51b〜51dに入力されたアップリンク信号UL2〜UL3についても同等の処理がなされ、前記実施形態と同様に、一つの端末側ポートに入力されるアップリング信号について、2つのカプラでの等分配による6dB分の減衰を与えて、別の3つの端末側ポートに帰還できる。
【0090】
また、例えば、試験側ポート52aに入力される試験用下り信号DLAは、4ポート型カプラ75の第4ポートに入力されて2等分され、その一方が第2ポートに出力され、3ポート型カプラ61を介して試験側ポート52aに対応する端末側ポート51aに与えられる。他の試験側ポート52b〜52dに入力される試験用下り信号DLBについても同様の処理がなされる。
【0091】
なお、試験側ポート52aに入力される試験用下り信号DLAの残り半分は4ポート型カプラ75から試験側ポート52bに出力され、試験側ポート52bに入力される試験用下り信号DLBの残り半分は4ポート型カプラ75から試験側ポート52aに出力され、試験側ポート52cに入力される試験用下り信号DLCの残り半分は4ポート型カプラ76から試験側ポート52dに出力され、試験側ポート52dに入力される試験用下り信号DLDの残り半分は4ポート型カプラ76から試験側ポート52cに出力されるが、試験装置側では、自身が送出した試験用下り信号と移動体端末1から送出されたアップリンク信号とを分離する機能を有しているので試験を問題なく行なう事ができる。
【0092】
この実施形態のアンテナ結合模擬回路50′は、汎用的な4×4ポート型であるにも関わらず、4つの3ポート型カプラ61、63、65、67と3つの4ポート型カプラ70、75、76の合計7つのカプラで構成でき、そのカプラ間を接続するためのケーブルやコネクタなどの接続部材の数も8組で済み、従来回路と比べて、カプラ数で7/12、カプラ間接続部材数で4/7だけ小型化できる。
【0093】
なお、この実施形態のアンテナ結合模擬回路50′においても、前記実施形態で図2に示したように、4ポート型カプラ70を2つの3ポート型カプラ71、72で構成することができる。
【0094】
また、前記実施形態で図3図5に示したように、上り信号(アップリング信号)の帰還ラインに可変減衰器を挿入することも可能である。ただし、図8に示した実施形態において点線で示しているように、図3図5と同様に4ポート型カプラ70の入出力ラインに可変減衰器83、84を挿入することについては問題ないが、4ポート型カプラ75、76と3ポート型カプラの61、63、65、67との接続ラインに可変減衰器81、82を挿入した場合、上り信号だけでなく試験用下り信号についても可変減衰器による減衰が生じるので、その減衰分を見込んで試験用下り信号の入力強度を設定する必要がある。
【0095】
なお、上記各実施形態において、3ポート型カプラ61〜68、71、72の第2ポートと第3ポートは機能的に同等であって区別する必要はなく、また、4ポート型カプラ70、75、76の第1ポートと第2ポートも機能的に同等であって区別する必要はなく、同様に、第3ポートと第4ポートも機能的に同等であって区別する必要はない。
【符号の説明】
【0096】
1……移動体端末、1a〜1d……アンテナ接続端子、10″……移動体端末試験装置、10a〜10d……信号端子、50、50′……移動体端末アンテナ結合模擬回路、51a〜51d……端末側ポート、52a〜52d……試験側ポート、61〜68、71、72……3ポート型カプラ、70、75、76……4ポート型カプラ、81〜84……可変減衰器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13