(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-212884(P2017-212884A)
(43)【公開日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】養殖方法及び養殖場
(51)【国際特許分類】
A01K 63/00 20170101AFI20171110BHJP
A01K 61/10 20170101ALI20171110BHJP
A01K 63/06 20060101ALI20171110BHJP
【FI】
A01K63/00 C
A01K61/00 A
A01K63/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-106994(P2016-106994)
(22)【出願日】2016年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104CA01
2B104CB10
2B104CB12
2B104CB13
2B104EG05
(57)【要約】
【課題】 過大なコスト増を伴うことなく給餌による水質悪化を抑制できる魚の養殖方法及び養殖場を提供する。
【解決手段】 水槽2と、前記水槽2を2つの領域2a、2bに仕切る仕切板9を有する養殖場1における養殖方法であって、前記水槽2の水位を前記仕切板9よりも高くしてから、一方の前記領域2aに餌の一部を投入する第1ステップと、前記水槽2の水位を前記仕切板9よりも低くしてから、前記一方の領域2aに追加の餌を投入する第2ステップと、前記第2ステップの後で水位を前記仕切板9よりも高くする第3ステップとを有する養殖方法とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの領域を有する水槽と、前記2つの領域の間の連絡を制御する仕切手段を有する養殖場における養殖方法であって、
前記2つの領域を連絡させた状態で、一方の前記領域に餌の一部を投入する第1ステップと、
前記2つの領域の連絡を絶った状態で、前記一方の領域に残りの餌を投入する第2ステップと、
前記第2ステップの後で前記2つの領域を連絡させる第3ステップと
を有することを特徴とする養殖方法。
【請求項2】
2つの領域を有する水槽と、前記2つの領域の間の連絡を制御する仕切手段を有する養殖場。
【請求項3】
前記仕切手段が、前記水槽の水位よりも高い高さと、前記水槽の水位よりも低い高さに高さを変えることができる仕切板であることを特徴とする請求項2に記載の養殖場。
【請求項4】
前記水槽の底面に、餌集積場所と、前記餌集積場所に向けて下降する傾斜が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の養殖場。
【請求項5】
前記水槽の上部を覆う天井と、前記水槽の内部に光を照射する照明を更に有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の養殖場。
【請求項6】
前記天井を支持する柱の断面形状が円形であることを特徴とする請求項5に記載の養殖場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給餌による水質汚染の問題に対処した養殖方法及び養殖場に関する。
【背景技術】
【0002】
陸上養殖に関する技術としては、例えば、特許文献1がある。特許文献1では、陸上養殖における水温や水質の管理方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−021919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
魚の養殖では、魚が食べ残した餌による水質悪化が問題となる。餌等の有機物は有害ガス等の原因となり、養殖魚がダメージを受けたり伝染性疾病に罹ったりする。養殖では、狭い水槽に過密状態で魚を入れ、大量の餌を与えることが多く、その場合、水質悪化の問題がより大きくなる。また、陸地に生け簀を設けて養殖を行う陸上養殖では、海水をそのまま利用できる海面養殖と異なり、水質浄化のために頻繁に水の入れ替えを行うと、コスト負担が大きくなる。
【0005】
特許文献1は、陸上養殖における水温や水質の管理方法を開示するものであるが、給餌による水質悪化に対処する技術は開示されていない。
【0006】
本発明は、過大なコスト増を伴うことなく給餌による水質悪化を抑制できる魚の養殖方法及び養殖場を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、2つの領域を有する水槽と、前記2つの領域の間の連絡を制御する仕切手段を有する養殖場における養殖方法であって、前記2つの領域を連絡させた状態で、一方の前記領域に餌の一部を投入する第1ステップと、前記2つの領域の連絡を絶った状態で、前記一方の領域に残りの餌を投入する第2ステップと、前記第2ステップの後で前記2つの領域を連絡させる第3ステップとを有することを特徴とする養殖方法とした。また、2つの領域を有する水槽と、前記2つの領域の間の連絡を制御する仕切手段を有する養殖場とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、第1ステップで一方の領域(給餌領域)に魚を集め、第2ステップで2つの領域の連絡を絶ってから給餌を行う。給餌領域でのみ給餌を行うので、給餌が効率的となって食べ残しが少なくなるばかりでなく、食べ残しが水槽全体に広がらないので水質悪化を抑制できる。食べ残しの収集も容易にすることができる。2つの領域の連絡は、水槽の水位よりも高い状態と、水槽の水位よりも低い状態になるように、高さを変えることができる仕切板を用いて制御することができる。水位を上下させることで制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の1実施形態に係る養殖場1を示す概略図を示す。
【
図3】
図2のY−Y断面で見た水槽2の底面の様子を示す。
【
図4】
図2のZ−Z断面で見た水槽2の底面の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の1実施形態に係る養殖場1を示す概略図である。
図2は、
図1のX−X断面図を示す。
図3は、
図2のY−Y断面で見た水槽2の底面の様子を示す。
図4は、
図2のZ−X断面で見た水槽2の底面の様子を示す。
【0011】
養殖場1は、地中に埋設された水槽2を有する。水槽2は、コンクリートやプラスチック等で形成し得る。水槽2は、給餌領域2aと非給餌領域2bを有する。給餌領域2aは、給餌をする領域であり、非給餌領域2bは、それ以外の領域である。
【0012】
水槽2と地盤の間には、捨てコン又は砕石層3を設けることができる。養殖場1は、水槽2の上部を覆う天井4と、天井4を支える柱5を有してもよい。天井4を有することで、低コストで水槽2内の水温を一定に保つことができる。地中の温度は季節によらず概ね一定なので(例えば、約13度)、養殖場の魚は休眠せずに一年中成長し続けることができる。天井4の上に地層6を設ければ、養殖場1の敷地を駐車場や公園や菜園等として利用することができる。地層6は、例えば、アスファルト、土等とするとよい。遮水性を高めるため、水槽2の内側や天井4の上などを遮水シート7で覆うとよい。天井4を設ける場合、魚の成長や活動に必要な光を照射するため、LED等の照明8を設けるとよい。柱5の断面形状を図のように円形にすると、魚が柱5にぶつかっても怪我をしないので好ましい。
【0013】
養殖場1は更に仕切板9を有する。仕切板9は、給餌領域2aと非給餌領域2bを仕切る場所に位置する。仕切板9は、仕切手段の一例である。仕切板9は、上下動が可能である。
図1では、仕切板9の高さが水位(水面10の高さ)よりも低い。よって、2つの領域2a、2bが連絡した状態である。(両領域2a、2bの間を魚が自由に行き来することができる。)仕切板9を上昇させ、仕切板9の高さを水位よりも高くすることで、2つの領域2a、2bの連絡を絶つことができる。(両領域2a、2bの間を魚が自由に行き来できなくなる。)
【0014】
養殖場1での養殖方法は、仕切板9が水位よりも低い状態で給餌領域2aに餌11の一部を投入する第1ステップと、仕切板9を水位より上まで上げてから給餌領域2aに残りの餌11を投入する第2ステップと、第2ステップの後に仕切板9を水位より下まで下げる第3ステップを有する。第1ステップにより、水槽2内の魚を給餌領域2aに集めることができる。第2ステップは、魚が給餌領域2aに集まったことを確認してから実行するとよい。魚を給餌領域2aに集めた状態で給餌を行うことで、給餌の効率が高くなり、餌の無駄が少なくなる。また、給餌領域2aでのみ給餌を行うので、水槽2の全体に餌を蒔く場合よりも水質の悪化が少なくて済み、食べ残しの餌の回収も容易になる。第3ステップにより、水槽2内で魚が再び自由に泳げるようになる。第3ステップは、魚が餌を食べ終わったと判断してから実行するとよい。
【0015】
水槽2の掃除方法としては、仕切板9が水位よりも低い状態で非給餌領域2bに少量の餌を撒き、魚が非給餌領域2bに移動したところで仕切板9を水位より上げて給餌領域2aと非給餌領域2bで水の行き来ができないようにしてから、給餌領域2aの水をきれいな水に取り替えることができる。
【0016】
養殖場1は、食べ残しの餌11の回収を容易化するための餌集積場所12及び傾斜13a、13bを更に有するとよい。餌集積場所12は、水槽2の底面に設けた窪みとすることができる。本実施形態の養殖場1では、水槽2の左端から中央に向かって下降する傾斜13a(
図1参照)と、水槽2の両側から餌集積場所12に向かって下降する傾斜13b(
図3参照)が設けられている。食べ残しの餌は、
図2の矢印に示すように、傾斜13a、13bに従って餌集積場所12に集ってくる。餌集積場所12の餌11はバキュームパイプ等で回収することができる。これにより、餌11による水質悪化を更に防止できる。餌11の回収は、第2ステップで行ってもよく、第3ステップで行ってもよい。
【0017】
養殖場1は、水槽2の汚れ(魚の糞、死骸、餌の食べ残し等)を回収し易くするための傾斜13cと回収溝14を更に有するとよい。汚れが傾斜13cで回収溝14に集まるので、掃除がし易くなる。回収溝14の汚れはバキュームパイプ等で回収できる。
【0018】
上記実施形態では、領域2a、2b間の連絡を制御するために、仕切板9を上げ下げする場合を説明したが、注水/排水等によって水面10を上げ下げしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、魚等の養殖場及び養殖方法に適用できる。特に陸上養殖場に好適に適用できる。
【符号の説明】
【0020】
1・・・養殖場
2・・・水槽
2a・・・給餌領域
3・・・捨てコン又は砕石層
4・・・天井
5・・・柱
6・・・地層
7・・・遮水シート
8・・・照明
9・・・仕切板
10・・・水面
11・・・餌
12・・・餌集積場所
13a、13b・・・傾斜