【解決手段】靴カバー90で被覆された靴92を人間の足が装着した状態で、靴の爪先側の領域を載置する第1支持面12と、靴92の踵側に生成される靴カバー90の弛み部90aをクランプして下方に移動可能な第1クランパ30と、第1支持面12の踵側に定義される空間内で、移動により上下方向に伸長した弛み部90aに接触しつつ踵側から爪先側に向かって水平方向に移動可能なストリッパ40と、を備える。ストリッパ40によって靴カバー90を靴92の踵側の下部から剥離する。
前記靴カバーの爪先側に設けられ、前記靴カバーの爪先をクランプして前記第1支持面から離間する方向に移動可能な第2クランパを更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の剥離装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
又、以下に示す本発明の第1の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る剥離装置は、
図1に示すように、靴カバー90を装着した靴92(
図2参照。)の靴底面側のうち爪先側の領域が載置される第1支持面12と、靴カバー90の踵側の弛み部90aをクランプして下方に移動可能な第1クランパ30と、靴カバー90を靴92から剥ぎ取るストリッパ40を備える。第1支持面12は、箱状の支持台10の上部に天井部として有している。第1クランパ30は、
図5に示すように、靴92を乗せていない無負荷時や靴92を乗せた瞬間等のタイミングにおいては支持台10の第1支持面12と平行になる上面を有している。しかし、靴カバー90を靴92から剥ぎ取る動作が開始されると、第1クランパ30は靴カバー90の靴底面側のうち踵側の下側の領域において支持台10が存在しない空間に、第1支持面12の端面側を支点として下垂する回転移動機構を伴っている。ストリッパ40は、移動により空間内で上下方向に伸長した弛み部90aに接触しつつ踵側から爪先側に向かって水平方向に移動可能とすることにより、靴カバー90を剥ぎ取る動作をする。
【0013】
第1の実施形態において、靴カバー90は、
図2(a)に示すように、外縁に伸縮性を有するゴムが設けられた差し込み口91から足部を差し込んだ靴92の足首の高さから下の足部全体を収納した靴底面及び靴側面を包む構造のものを例示しているが、
図2に限定されるものではない。
図1に示した剥離装置は、
図2(a)に例示した靴カバー90の差し込み口91から足を挿入した靴92を靴カバー90で被覆した状態で用いられる。
【0014】
図2に例示した靴カバー90は、例えば、不織布を主素材として製造されているものが知られている。靴カバー90は、例えばMサイズ及びLサイズといったように、ある程度の大きさの範囲に含まれる足に広く対応できる。そのため靴カバー90を装着した際、靴92の周囲にかなり大きな余裕が生じる場合が多く、
図2(b)に示すように、医療サンダル等の靴92の上から靴カバー90を被せた状態で足を地面から上げ、足を空中に保持すると靴92の踵部分の下側の領域が下垂する場合が発生する。この下垂する踵部分の下側の領域を「踵側の弛み部90a」と定義する。
【0015】
図1に示すように、第1の実施形態に係る支持台10は、平板状の部材を、部材の厚みが視認できる方向(
図1の右下方向)から見てほぼU字状(コの字状)をなす箱形である。支持台10は、凹部を箱の内側にして、U字の底部の上面が最上面となると共に、U字の対向する一対の側部(側壁面)が、土台部100の上面上にそれぞれほぼ鉛直に起立するように設けられている。支持台10の天井部の上面となる第1支持面12は平坦である。
【0016】
第1の実施形態に係る可動支持板20は、平面パターンでほぼ長方形状である。靴カバー90を脱ぐ方の靴底面の後側(踵側)が位置する可動支持板20の上面を、第1支持面12の上面に連続させ、この可動支持板20の上面を第2支持面22として定義している。可動支持板20の第2支持面22は、靴92を乗せていない無負荷時や靴92を乗せた瞬間のタイミングにおいては、支持台10の第1支持面12とほぼ同じ高さに位置している。このため、可動支持板20は、支持台10の底部の足の前後方向に沿った一端側に、無負荷時や靴92を乗せた瞬間等のタイミングにおいては、第2支持面22が支持台10の第1支持面12と連続する一面を構成するように設けられている。
【0017】
無負荷時や靴92を乗せた瞬間等のタイミングで説明すると、可動支持板20が支持台10に接する第1端部と反対側の第2端部側から、第1端部側に向かって水平方向に伸びる溝部24が可動支持板20に形成されている。溝部24は上方からみて靴92の幅方向の中央に沿って、U字を形成するように第2端部から第1端部に向かう経路の途中まで延びる貫通溝である。溝部24は、靴92の前後方向に沿ってほぼ平行の内壁で可動支持板20を貫通しており、溝部24のなす空間を介して靴カバー90の踵側の弛み部90aが下垂する。
【0018】
可動支持板20は、図示を省略するが、支持台10側の第1端部がヒンジやピン結合等を用いて支持台10に回転自在に連結されており、連結部を支点として、支持台10と反対側の第2端部が支持台10の第1支持面12とほぼ同じ高さから下側に変位するように回転移動する。可動支持板20には、図示を省略する第1駆動装置が接続され、可動支持板20は第1駆動装置により回転移動する。
【0019】
第1クランパ30は、可動支持板20の下面上に取り付けられている。第1クランパ30は、
図3(a)に示すように、1面が開口した直方体状の箱型の本体31と、この本体31の1面に設けられた開口部から突出するように互いに間隔を空けて並設されたいずれも四角柱状の第1アーム32及び第2アーム33と、を備える。
【0020】
第1アーム32の本体31と反対側の端部の、第2アーム33に対向する側面上には第1保持部34が設けられている。第1保持部34は例えば金属等の所望の剛性を有する材料で構成し、互いに平行な台形の上底面と下底面を有する台形柱として構成できる。説明の便宜上、第1クランパ30の本体31に近い側の第1保持部34及び第2保持部35のそれぞれの底面を構成している台形の底辺を「上底」と定義し、この「上底」と対になる台形の底辺を「下底」と定義する。
【0021】
第1保持部34の底面の台形の形状は、上底が下底より長い。すなわち第1保持部34の上面及び下面は、本体31側から第1アーム32が延びる方向に従って、平面パターンで、幅が短くなる台形となっており、台形柱の斜面を利用することによって、第1保持部34の第2アーム33側の端面の接触面積が拡大されている。
【0022】
第2アーム33の本体31と反対側の端部の、第1アーム32に対向する側面上には、台形の底面を有する台形柱状の第2保持部35が設けられている。第2保持部35は、第1保持部34と同様に、金属等の所望の剛性を有する材料から構成され、第1保持部34を平面パターンで180度回転させた状態に一致する。
【0023】
台形柱である第2保持部35の底面がなす台形の形状は、下底が上底より長い。すなわち第2保持部35は、第1保持部34と対称的に、本体31から第2アーム33が延びる方向に従って、平面パターンで、幅が長くなり、第2保持部35の第1アーム32側の端面の接触面積が拡大されている。
【0024】
第1保持部34の第2アーム33側の端面には、靴カバー90の弛み部90aを挟んで保持する力を強化する第1保持強化部36が設けられている。同様に、第2保持部35の第1アーム32側の端面には、第1保持強化部36と等価な構成の第2保持強化部37が設けられている。第1保持強化部36及び第2保持強化部37としては、例えば摩擦力が高められた耐水ペーパー(耐水性紙やすり)等を採用できる。具体的には、例えば粒度120番手(♯120)程度の研磨剤が塗布された紙やすり等を使用すればよい。
【0025】
耐水ペーパーの表面には、多数の研磨用粒子が不規則に並設されているので、粒子1個1個が靴カバー90を挟み込むための突起をなし、突起同士が複雑に噛み合うことにより摩擦力を高め、靴カバー90の弛み部90aを強固に挟んで保持できる。特に靴カバー90の主素材が不織布である場合、不織布は沢山の糸状素材を編み込んだ構造であるため、耐水ペーパーの研磨用粒子が、不織布の編み込みの隙間に絡まることにより、弛み部90aに対する保持力を強化できる。
【0026】
第1クランパ30は、
図9に示すように可動支持板20の回転に連動して下方に回転移動して、靴カバー90の弛み部90aを、上下方向及び左右方向に伸長させる。この回転移動の回転角は、第1クランパ30の下側への変位量が多すぎて不織布製の靴カバー90が大きく破断することなく、弛み部90aの伸長状態を保持可能な大きさに設定されている。
【0027】
第1アーム32は、図示を省略するが、本体31の内側で、第1保持部34側と反対側の端部がピン結合等により連結され、連結された箇所を支点として
図3(b)に示すように、第1保持部34側の端部が第2アーム33に向かって移動するように回転自在である。また第2アーム33も、第1アーム32と対称的に、本体31の内側で、第2保持部35側と反対側の端部がピン結合等により連結され、連結された箇所を支点として第2保持部35側の端部が第1アーム32に向かって移動するように回転自在である。
【0028】
そのため、第1アーム32及び第2アーム33が同時に内側に向かって回転すると、第1保持部34及び第2保持部35が密着する。第1保持部34の端面及び第2保持部35の端面を互いに噛み合わせた状態を示す形状が、平面パターンで矩形をなす。第1クランパ30は、産業用加工装置として多用される、いわゆるロボットアーム等を用いて実現できる。
【0029】
図1及び
図4に示したように、可動支持板20の支持台10と反対側の後側にはストリッパ40が設けられている。このストリッパ40に接続するように、土台部100の上面の上方には、ストリッパ40を水平方向に移動する第3駆動装置41が設けられている。
【0030】
図1に示したようにストリッパ40は、平面パターンでほぼ長方形状であり、
図1から分かるようにストリッパ40の上面は、可動支持板20の第2支持面22とほぼ同じ高さで設けられている。ストリッパ40は、
図1に示したように可動支持板20の左右方向の幅に重畳する幅を包含するように、可動支持板20より長い。
【0031】
第3駆動装置41は、いずれも符号の付記を省略するが、土台部100の上面の上方の左右方向の両端のそれぞれに、ヘッドプーリとテールプーリからなるプーリ対を左右対称的に配置している。左右のプーリ対は、前後方向に間隔を空けてそれぞれヘッドプーリとテールプーリを回転自在に設けられている。プーリ対には、それぞれのヘッドプーリとテールプーリを連結するコンベヤベルトが架け渡されている。
【0032】
ヘッドプーリとテールプーリの少なくとも一方には、図示を省略するが、正逆両方の回転力を供給可能な電動モータ等が接続されている。ヘッドプーリ及びテールプーリとしては通常のプーリの他に、ギアやスプロケット等の円盤状の部材を採用でき、コンベヤベルトとしてはコンベヤチェーン等を採用できる。ストリッパ40は、幅方向の両端の下面にそれぞれ設けられた四角柱状又は板状等の取付部材を介して、第3駆動装置41のコンベヤベルトの上に載置されている。
【0033】
図5の手前側に表示されているヘッドプーリ及びテールプーリが、例えば反時計方向に回転することにより、
図5の手前側のコンベヤベルトがストリッパ40を支持台10に向かって前側に移動させる。また
図5の手前側のヘッドプーリ及びテールプーリが時計方向に回転することにより、コンベヤベルトがストリッパ40を支持台10から離れるように後側に移動させる。図示を省略しているが、
図5の紙面の裏側に存在するヘッドプーリ及びテールプーリ(
図1参照。)が時計方向に回転することにより、紙面の裏側のコンベヤベルトがストリッパ40を支持台10に向かって前側に移動させる。また紙面の裏側のヘッドプーリ及びテールプーリが反時計方向に回転することにより、コンベヤベルトがストリッパ40を支持台10から離れるように後側に移動させる。このように、第3駆動装置41は、ヘッドプーリ及びテールプーリの回転方向の正逆を切り換えることにより、ストリッパ40が支持台10に近接離間する。
【0034】
但し、ストリッパ40は
図5に示したような無負荷状態等のタイミングにおいては、可動支持板20とほぼ同じ高さに位置する。このため、
図9に示すように、主面が水平状態の可動支持板20が回転して、可動支持板20のストリッパ40側の端部が下方に移動することにより、支持台10とストリッパ40との間に空間が形成された状態において、
図13に示すように、ストリッパ40は支持台10に接近する。
【0035】
支持台10の第1支持面12上の前側(
図1において左上側)における左右方向の一端には、第2クランパ50及び第2クランパ50を前後方向に移動させる第2駆動装置51が設けられている。第2駆動装置51は、符号の付記を省略するが、支持台10の前後方向に沿って延びる細長い直方体状のガイド部を有する。ガイド部は、支持台10の前端から更に前側に突出して延びるように設けられ、ガイド部には、両端間に前後方向に沿って延びる溝が形成されている。
【0036】
この溝の内側には、図示を省略するが、前後両方向に摺動自在なスライダが設けられている。スライダには、ガイド部の長手方向に直交する方向に沿って延びる長方形板状の吊り下げ部材が備えられている。吊り下げ部材の長手方向の一端(
図1において右上側の端部)がスライダに連結され、吊り下げ部材の長手方向の他端(
図1において左下側の端部)が溝から外側に突出し、ガイド部の長手方向に直交する方向(
図1において左下方向)に延びている。この吊り下げ部材の他端に第2クランパ50が、支持台10の第1支持面12に接触しないように空中に吊り下げられている。
【0037】
第2クランパ50は、スライダの移動に連動して、前後方向にスライド自在である。第2クランパ50は、靴カバー90の爪先側を挟んで保持する。第2クランパ50の他の構造は、
図3に示した第1クランパ30の構造と等価であるため、重複説明を省略する。
【0038】
土台部100の上面上で、支持台10の前側には、収納箱60が設けられている。収納箱60は、開口部の上方に、第2駆動装置51のガイド部の支持台10から突出した部分が位置するように配置されている。収納箱60には、剥離された靴カバー90が投げ込まれることになる。
【0039】
図1に示したように、第1の実施形態に係る剥離装置には、可動支持板20、第1クランパ30、ストリッパ40及び第2クランパ50のそれぞれに接続された制御装置70が設けられている。また制御装置70には、制御装置70に指令を入力するコントローラ80が接続して設けられている。
【0040】
制御装置70は、
図4に示すように、可動支持板20の移動を第1駆動装置23を介して制御する第1移動制御部29と、第1クランパ30のクランピング動作を制御する第1クランパ制御部39と、を備える。また制御装置70は、ストリッパ40の移動を第3駆動装置41を介して制御する第3移動制御部49と、第2クランパ50のクランピング動作を制御する第2クランパ制御部59bと、第2クランパ50の移動を第2駆動装置51を介して制御する第2移動制御部59aと、を備える。
【0041】
(剥離動作)
次に、本発明の第1の実施形態に係る剥離方法を、
図5〜
図20を参照して説明する。尚、以下に示す断面図では、説明の便宜のため、靴カバー90、靴92や足等の一部について断面表示を省略する。
【0042】
まず
図5に示すように、靴カバー90を装着した一方の靴92を第1支持面12及び第2支持面22の上に載置すると、靴カバー90の弛み部90aが可動支持板20の溝部24に差し込まれる。
【0043】
そして
図6に示すように、弛み部90aが溝部の中で下垂するのを利用して、弛み部90aの先端を第1クランパ30の第1アーム32の第1保持強化部36及び第2アーム33の第2保持強化部37の間に配置する。また
図6の状態を踵側の背面から見た状態を
図7に示す。尚、以下の説明で用いるそれぞれの背面図では、説明の便宜のため、第1保持強化部36及び第2保持強化部37、並びに、ストリッパ40及びコンベヤベルト等の表示を適宜省略する。
【0044】
次に
図8に示すように、コントローラ80を用いて、第1クランパ制御部39を介して第1クランパ30に、第1アーム32及び第2アーム33を、第1保持部34及び第2保持部35が接触するように回転させる指令を与える。第1保持部34及び第2保持部35が第1保持強化部36及び第2保持強化部37を介して噛み合うことにより、靴カバー90の弛み部90aが強固に保持される。
【0045】
次に
図9に示すように、コントローラ80を用いて、第1移動制御部29を介して第1駆動装置23に、可動支持板20を剥ぎ取り側の端部が下方に移動するように回転移動させる指令を与える。可動支持板20が下方に回転することにより、靴カバー90の下方に空間が形成される。この形成された空間内で靴カバー90の弛み部90aが上下に伸長して張り渡される。
【0046】
またこの上下方向の伸長に伴って、弛み部90aの上部が、
図10に示すように、第1支持面12の高さで、踵の幅に依存して左右方向にも伸長するので逆三角形に広がり、靴92の踵側の部分から靴カバー90が外れる。尚、
図10では靴カバー90の差し込み口91の口ゴムが強く締め付けていると共に、足首の高さで踵の上部が後側に突出して形成される凸部が存在するため、靴カバー90は下側に引っ張られて逆三角形に広がっていても、未だ靴92から完全には外れない場合を例示している。
【0047】
次に
図11に示すように、コントローラ80を用いて、第2移動制御部59aを介して第2駆動装置51に、第2クランパ50を、靴カバー90に近接するように水平移動させる指令を与える。次に
図12に示すように、コントローラ80を用いて、第2クランパ制御部59bを介して第2クランパ50に、第1アーム52及び第2アーム53を、第1保持部54及び第2保持部55が第1保持強化部及び第2保持強化部を介して接触するように回転させる指令を与える。第1保持部54及び第2保持部55が噛み合うことにより、靴カバー90の爪先側の先端が挟まれて保持される。
【0048】
次に
図13に示すように、コントローラ80を用いて、第3移動制御部49を介して第3駆動装置41に、ストリッパ40を、靴カバー90に近接するように水平移動させて送り出す指令を与える。上下方向及び左右方向に伸長した弛み部90aの中央の領域に、ストリッパ40が喰い込み、靴カバー90の伸長した踵側の領域には、靴底面に沿った方向に力が負荷される。
図13中には、靴カバー90に力が負荷されることにより、靴カバー90の踵側の上部が足首より下に脱落して、踵の上部及び靴92の一部が露出した状態が例示されている。
【0049】
次に
図14に示すように、コントローラ80を用いて、ストリッパ40を、更に水平移動させて送り出す指令を与える。靴カバー90の伸長した踵側の領域には、靴底面に沿った方向に力が更に継続して負荷されることにより、ストリッパ40が更に靴カバー90を爪先側に押し出す。
図14中には、ストリッパ40が更に靴カバー90に喰い込み、靴カバー90に更なる力が負荷されることにより、靴カバー90の踵側の領域が更に爪先側に送り込まれ、靴カバー90の差し込み口91が靴92の踵側の部分の下部から完全に離脱し、靴92の踵側の下部領域が露出した状態が例示されている。
【0050】
次に
図15に示すように、足を後方に引き、支持台10の第1支持面12から離間させれば、手を使うことなく、靴カバー90を靴92から剥離することができる。靴92が離間した後、
図16に示すように、コントローラ80を用いて、靴カバー90に喰い込んでいたストリッパ40を、支持台10から離れて、
図5に示した初期位置に復帰するように、水平移動させる指令を与える。
【0051】
次に
図17に示すように、コントローラ80を用いて、第1クランパ制御部39を介して第1クランパ30に、第1アーム32及び第2アーム33を、第1保持部34及び第2保持部35が離間するように回転させる指令を与える。第1保持部34及び第2保持部35が回転することにより、靴カバー90の弛み部90aが第1保持強化部36及び第2保持強化部37から開放される。
【0052】
次に
図18に示すように、コントローラ80を用いて、第2移動制御部59aを介して第2駆動装置51に、第2クランパ50を、収納箱60に近接するように前方に水平移動させる指令を与える。第2クランパ50が靴カバー90をクランプした状態のまま前方に水平移動することにより、可動支持板20の第2支持面22上の領域、及び第1支持面12の可動支持板20側の領域に、靴カバー90が取り除かれた新たなスペースが形成される。尚、例えばこの新たなスペースに、まだ靴カバー90を装着したままの他方の足の靴を載置して、
図5〜
図18で説明した靴カバー90を靴から剥離する動作を始めることができる。
【0053】
次に
図19に示すように、第2クランパ50を所定の位置で停止させる。そして、コントローラ80を用いて、第2クランパ制御部59bを介して第2クランパ50に、第2クランパ50の第1アーム及び第2アームを、第2クランパ50の第1保持部及び第2保持部が離間するように回転移動させる指令を与える。第2クランパ50の第1保持部及び第2保持部が回転移動して互いに離間することにより、収納箱60の開口部の上方で、靴カバー90の先端が第1保持強化部及び第2保持強化部から開放される。靴カバー90は空中で開放された後、重力の作用で下方に落下し、収納箱60の内側に廃棄されることになる。
【0054】
本発明の第1の実施形態に係る剥離装置によれば、可動支持板20を第1クランパ30と共に下方に移動させることで、靴92の下側に空間を形成し、形成した空間に対して、靴92の後側の外側からストリッパ40を送り出し、靴底の直下を足の底面に沿って直線的に水平移動させる。このように部材の動きとしては、回転移動に伴う上側から下側への浅い移動と、水平方向における踵側から爪先側への短い直線移動とを組み合わせるだけであるので、駆動機構の寸法や出力等を少なく抑え、剥離装置のコンパクト化を図ることができる。
【0055】
また靴92の下側に空間を形成し、形成した空間を用いて靴カバー90を剥ぎ取る動作であるので、靴底面と第2支持面22の間に、剥ぎ取り中の靴カバー90が挟まる問題や、ストリッパ40を送り出す第3駆動装置41に過大な負荷がかかることを回避できる。また靴カバー90を靴92から剥ぎ取る方向は一方向に限定されるので、靴カバー90の内側で、靴カバー90と靴92との隙間に余裕を確保したまま、靴カバー90を靴92の踵側から取り外すことが可能になる。よって、例えば靴92の側面部分に靴カバー90が引っ掛かって、剥離動作に支障が生じることを抑制することができる。
【0056】
また靴カバー90が靴92の踵側の下部から離脱した後は、人為的に靴92を踵側に移動して靴カバー90から靴92を抜くように、剥離装置の機能を靴92の踵側から外す時点までの機能に限定している。よって剥離装置を構成する各部材のサイズを小さく抑えて装置全体の小型化を実現できると共に、製造負担を低減できる。
【0057】
また一方の足から剥離した使用済みの靴カバー90が、第2クランパ50によって収納箱60に廃棄される間の時間を用いて、他方の靴に装着した靴カバー90を剥離させることが可能である。この廃棄時間の活用により、両足の靴カバー90を脱ぎ終わるまでの作業時間を大きく短縮することができる。
【0058】
また第1の実施形態に係る剥離装置によれば、第1クランパ30の互いに対向する第1保持部34の端面及び第2保持部35の端面の接触面積が拡大されるように、第1保持部34及び第2保持部35が台形柱の斜面を、第1保持部34の端面及び第2保持部35の端面に利用している。そのため第1保持部34及び第2保持部35を互いに噛み合わせて保持する場合の密着性を大きく向上できる。
【0059】
また第1の実施形態に係る剥離装置によれば、第1保持強化部36及び第2保持強化部37として耐水ペーパーを採用する。耐水ペーパーの採用により、靴カバー90に血液等の液体が付着しても、この液体が金属製の第1保持部34及び第2保持部35の間に浸透して摩擦力が低下し、十分に保持できない状態を防止できる。
【0060】
また第1の実施形態に係る剥離装置の場合、第1保持部34の端面及び第2保持部35の端面の接触面積の拡大、及び、第1保持強化部36及び第2保持強化部37としての耐水ペーパーの採用により、第1アーム32及び第2アーム33に、大きな伝達力を付加して回転させる必要性が抑えられる。例えばウォームギアとこのウォームギアに接続したステッピングモータを用いて、ステッピングモータのトルクを増幅させるような必要がない。そのため、伝達力を増幅させる大掛かりな装置を必要としないので、装置の大型化を回避してコンパクトに実現できる。
【0061】
またウォームギアのギア比を用いて回転トルクを大きくする伝達力を増幅させる装置を使用する場合、トルク増大の代償として第1アーム32及び第2アーム33の動作速度が低下することが避けられない、又は避けるために別途の機構を追加しなければならない場合が多い。この点、第1の実施形態に係る剥離装置によれば、第1保持部34の端面及び第2保持部35の端面の接触面積の拡大、及び、第1保持強化部36及び第2保持強化部37としての耐水ペーパーの採用により、全体として保持力が高められている。よって第1クランパ30及び第2クランパ50として、ギア比を用いないロボットアーム等が使用可能であり、クランピング動作の速度低下を生じることなく、迅速に保持することができる。
【0062】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。したがって、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。
【0063】
例えば、
図1に示した第1の実施の形態に係る剥離装置の場合、可動支持板20は必須ではなく、支持台10のみを用いても靴92を載置することは可能である。しかし可動支持板20を支持台10と共に用いることにより、靴底面全体を広く安定して載置することができる。
【0064】
また
図1に示した第1の実施の形態に係る剥離装置の可動支持板20の下降動作は回転移動により行われたが、これに限定されることなく、例えば第2支持面22を水平に保ったまま下降する等の動作で実現されてもよい。
【0065】
また可動支持板20の溝部24の形状は、
図1に示した溝状のものに限定されることなく、靴カバー90の弛み部90aが下側に下垂できる限り、適宜変更して設計できる。また可動支持板20の溝部24を特段設けなくてもよく、例えば2枚の板状部材を左右方向に間隔を空けて並設し、この間隔を用いて靴カバー90の弛み部90aを下垂させるようにしてもよい。
【0066】
また靴92の爪先位置や踵位置を検出するセンサ等を制御装置70に接続して設け、一連の剥離動作に組み込んでもよく、その場合、剥離作業をより適切に実行できる。また制御装置70に、例えば第1クランパ30や可動支持板20のオン/オフ状態を点灯して表示するような状態表示装置を接続して設けてもよく、その場合、剥離作業を行う人間の作業をより容易にすることができる。
【0067】
また
図20に示すように、第1クランパ30aの第1保持部34a及び第2保持部35aが、台形柱ではなく、直方体形状であってもよい。また第1保持強化部36a及び第2保持強化部37aを、耐水ペーパー等ではなく、複数の四角錐形状の突起を多列配置して実現することもできる。
【0068】
図20に示した第1クランパ30aの場合、第1アーム32a及び第2アーム33aが回転移動して、第1保持部34a及び第2保持部35aが対向する端面同士、第1保持強化部36a及び第2保持強化部37aを介して接触することにより、靴カバー90の踵側の弛み部90aを強固に保持できる。第1保持部34a及び第2保持部35a、並びに、第1保持強化部36a及び第2保持強化部37a以外の構造は、
図3に示した第1クランパ30の構造と等価であるため、重複説明を省略する。
【0069】
以上のとおり本発明は、本明細書及び図面に記載していない様々な実施の形態等を含むとともに、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。