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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-213402(P2017-213402A)
(43)【公開日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】外科用接近器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20171110BHJP
【FI】
   A61B17/02
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-151773(P2017-151773)
(22)【出願日】2017年8月4日
(62)【分割の表示】特願2016-52978(P2016-52978)の分割
【原出願日】2006年10月12日
(31)【優先権主張番号】60/726,826
(32)【優先日】2005年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/745,730
(32)【優先日】2006年4月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/803,346
(32)【優先日】2006年5月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/803,965
(32)【優先日】2006年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/828,089
(32)【優先日】2006年10月4日
(33)【優先権主張国】US
【公序良俗違反の表示】
特許法第64条第2項第4号の規定により図面の一部または全部を不掲載とする。
(71)【出願人】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100082821
【弁理士】
【氏名又は名称】村社 厚夫
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ブルスタッド ジョン アール
(72)【発明者】
【氏名】アルブレヒト ジェレミー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヒラル ネイビル
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン ゲアリー エム
(72)【発明者】
【氏名】ハート チャールズ シー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160AA12
4C160MM22
4C160NN22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】体壁を横切って体腔内への外科用道具、例えば外科医の手による封止状態の接近を容易にする外科用接近器具を提供すること。
【解決手段】環状であってかつ開口部が設けられたキャップ54を有し、前記キャップに結合されて前記キャップの全開口部を覆って封止するゲルパッド60を有し、前記キャップは、前記キャップの環状周囲に沿った少なくとも一つの隙間を有し、前記少なくとも一つの隙間は前記キャップの少なくとも一つの第一端部と少なくとも一つの第2端部を形成し、前記少なくとも一つの隙間は第1のより大きい周囲から第2のより小さい周囲まで前記キャップの中の移行を容易にし、さらに、前記キャップの第1端部の近傍に旋回可能に結合されたラッチ、及び前記キャップの第2端部の近傍に配置されたラッチレシーバーを有する外科用接近器具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体壁に配置されて、そこを貫通する道具の挿入を容易にしかつ該道具との封止関係を維持するようになった外科用接近器具であって、
環状であってかつ開口部が設けられたキャップを有し、
前記キャップに結合されて前記キャップの全開口部を覆って封止するゲルパッドを有し、前記キャップは、前記キャップの環状周囲に沿った少なくとも一つの隙間を有し、前記少なくとも一つの隙間は前記キャップの少なくとも一つの第一端部と少なくとも一つの第2端部を形成し、前記少なくとも一つの隙間は第1のより大きい周囲から第2のより小さい周囲まで前記キャップの中の移行を容易にし、さらに
前記キャップの第1端部の近傍に旋回可能に結合されたラッチ、及び前記キャップの第2端部の近傍に配置されたラッチレシーバーを有することを特徴とする外科用接近器具。
【請求項2】
前記ラッチレシーバーが、平行チャネルの壁によって形成されたチャンネルを有し、前記チャンネルが前記ラッチを取り外し可能に受け入れるようになっている、請求項1記載の外科用接近器具。
【請求項3】
前記ラッチが、前記ラッチのヒンジでない端部に配置された拡大ヘッドを有するシャフトを包含し、該拡大ヘッドの周囲は該シャフトの周囲より大きく、
前記ラッチの前記ヘッドは、前記チャネルに係合し、前記チャネル内に保持され、
前記チャネルの幅は、前記ラッチの前記ヘッドより小さく、そして
前記チャネルの壁は、弾性を有し、前記ラッチの前記ヘッドを受け入れている間前記壁が屈曲して互いに離れる、請求項2記載の外科用接近器具。
【請求項4】
前記チャネルが、前記平行壁の少なくとも一方から他のチャネルの壁の方向へ延びた少なくとも一つの隆起部を有し、前記ラッチは、前記ノッチレシーバーのチャネル内で前記ラッチを取り外し可能に固定するために前記少なくとも一つのノッチを有する、請求項3記載の外科用接近器具。
【請求項5】
前記ラッチが、前記チャネルと係合して前記ラッチレシーバーのチャネル内に保持されるための圧縮可能な部分を有する、請求項2記載の外科用接近器具。
【請求項6】
体壁に配置されて、そこを貫通する道具の挿入を容易にしかつ該道具との封止関係を維持するようになった外科用接近器具であって、
環状であってかつ開口部が設けられたキャップを有し、
前記キャップに結合されてキャップの全開口部を覆って封止するゲルパッドを有し、前記キャップは、前記キャップの環状周囲に沿った少なくとも一つの隙間を包含し、該少なくとも一つの隙間は前記キャップの少なくとも一つの第1端部と少なくとも一つの第2端部を形成し、前記少なくとも一つの隙間は第1のより大きい周囲から第2のより小さい周囲まで前記キャップ内の移行を容易にし、さらに
前記キャップの前記少なくとも一つの第1端部を前記キャップの前記少なくとも一つの第2端に結合するようになったスクイーズリリース形バックルを有することを特徴とする外科用接近器具。
【請求項7】
前記スクイーズリリース形バックルが、前記キャップの前記少なくとも一つの第1端部から延びた第1の棘付き部分と、前記キャップの前記少なくとも一つの第2端部から延びた第2の受け入れ部とを有し、前記スクイーズリリース形バックルの前記棘付き部分と前記受け入れ部が互いに噛み合い関係で係合するように形成されている、請求項6に記載の外科用接近器具。
【請求項8】
さらに、環状であって、前記体壁に対して配置されるリテーナを有する、請求項1又は6に記載の外科用接近器具。
【請求項9】
前記キャップが前記第1のより大きい周囲にあるとき、前記リテーナが前記キャップの前記開口に挿入されているかまたは取り去さられており、また
前記キャップの前記開口部内にある前記リテーナによって前記キャップの前記周囲を前記第2のより小さい周囲に移行すること、及び維持手段によって前記キャップの周囲を前記第2のより小さい周囲に維持することによって、前記リテーナを前記キャップに固定的に結合する、請求項8に記載の外科用接近器具。
【請求項10】
体壁に配置されて、そこを貫通する道具の挿入を容易にしかつ該道具との封止関係を維持するようになった外科用接近器具であって、
環状であって、開口部が設けられたキャップを有し、
前記キャップに結合され、前記道具を挿入するようになっており、前記キャップの全開口部を覆い封止するゲルパッドを有し、
環状であり前記体壁に対して置かれたリテーナを有し、さらに
前記リテーナに旋回可能に結合され、前記キャップに係合するようになった少なくとも一つのラッチを有し、
前記少なくとも一つのラッチは、前記少なくとも一つのラッチから直角に延びて前記キャップと係合するようになった隆起部を有している外科用接近器具。
【請求項11】
前記キャップが、さらに前記少なくとも一つのラッチ上の前記隆起部を受ける少なくとも一つの噛み合い部を有する、請求項10に記載の外科用接近器具。
【請求項12】
体壁に配置されて、そこを貫通する道具の挿入を容易にしかつ該道具との封止関係を維持するようになった外科用接近器具であって、
環状であって、開口部が設けられたキャップを有し、
前記キャップに結合されて前記道具を挿入するようになっており、前記キャップの全開口部を覆い封止するゲルパッドを有し、
環状であって、前記体壁に対して置かれるようになったリテーナを有し、さらに
前記リテーナを前記キャップに取り外し可能に結合され、前記リテーナの外側周囲から前記リテーナの平らで環状の面から直角に延びた少なくとも一つの弾性スナップを有し、該弾性スナップが該スナップから直角にかつ半径方向内向きに延びた隆起部を有する、外科用接近器具。
【請求項13】
前記キャップと前記リテーナが噛み合い状態になったとき、前記少なくとも一つの弾性スナップが、前記キャップの対応リップ部分上を半径方向外向きに曲がるように形成され、前記少なくとも一つのスナップの隆起部が前記キャップの前記リップ部分を通過し前記少なくとも一つの隆起部が前記キャップの受け部と係合した後、前記少なくとも一つの弾性スナップが中立位置に戻るようなっている、請求項12に記載の外科用接近器具。
【請求項14】
体壁に配置されて、そこを貫通する道具の挿入を容易にしかつ該道具との封止関係を維持するようになった外科用接近器具であって、
環状であって、開口部が設けられたキャップを有し、
前記キャップに結合されて前記キャップの全開口部を覆い封止するゲルパッドを有し、
環状であり前記体壁に対して置かれるようになったリテーナを有し、さらに
前記リテーナを前記キャップに取り外し可能に結合し、前記キャップの周囲からから直角に延び、前記リテーナの対応リップ部分と係合するように形成され、前記スナップから直角方向にかつ半径方向内向きに延びた隆起部を有する少なくとも一つのスナップを有する、外科用接近器具。
【請求項15】
前記キャップと前記リテーナが噛み合い関係になったとき、前記少なくとも一つのスナップが半径方向外向きに曲って前記少なくとも一つのスナップの前記隆起部が前記リテーナの前記対応リップ部分上を滑動し、前記少なくとも一つのスナップが前記リテーナのリップ部分を通過して前記少なくとも一つのスナップの隆起部が前記リテーナのリップ部分と係合した後、前記少なくとも一つのスナップが中立位置に戻る、請求項14に記載の外科用接近器具。
【請求項16】
体壁に配置されて、そこを貫通する道具の挿入を容易にしかつ該道具との封止関係を維持するようになった外科用接近器具であって、
環状であって、開口部が設けられたキャップを有し、
前記キャップに結合されて前記道具を挿入され、前記キャップの全開口部を覆い封止するようになったゲルパッドを有し、さらに
前記キャップが、前記キャップの環状周囲に沿った少なくとも一つの隙間を有し、該少なくとも一つの隙間は、前記キャップの少なくとも一つの第1の端部と少なくとも一つの第2の端部を形成し、前記少なくとも一つの隙間は、第1のより大きな周囲から第2のより小さな周囲まで移行することを容易にする、外科用接近器具。
【請求項17】
さらに、環状であって体壁に対して配置されるリテーナを有し、
前記キャップが前記第1のより大きい周囲にあるとき、前記リテーナが前記キャップの開口に挿脱可能であり、また
前記リテーナは、前記キャップの周囲を前記キャップの前記開口内にある前記リテーナによって前記第2のより小さい周囲に移行することによって前記キャップに固定的に結合し、前記キャップの周囲が前記第2のより小さい周囲に保持される、請求項16に記載の外科用接近器具。
【請求項18】
前記キャップが、さらに、内側円筒壁を有し、前記ゲルパッドが、前記キャップの前記内側円筒壁に直接結合される、請求項1,6,10,12、14及び16のうちの一項に記載の外科用接近器具。
【請求項19】
さらに、前記ゲルパッドの表面に配置され、前記キャップの前記周囲に結合された弾性部材を有し、前記ゲルパッドは前記キャップと異なった材料で作られ、前記キャップは前記弾性部材と異なった材料でつくられた、請求項1,6,10,12、14及び16のうちの一項に記載の外科用接近器具。
【請求項20】
前記ゲルパッドが、エラストマーゲルから作られ、前記キャップがポリカーボネイトから作られた、請求項18または19に記載の外科用接近器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に、体壁を横切って体腔内への外科用道具、例えば外科医の手による封止状態の接近を容易にする器具に関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかの外科分野では、体腔又は体内空間を封止できるが、外科用道具、例えばガイドワイヤ、内視鏡、更に外科医の手の導入を可能にする機構体又は器具を提供することが要望されている。これら外科分野の代表例は、腹腔鏡手術であり、この腹腔鏡手術は、腹腔内の術部に到達するために腹壁を通って挿入される外科用道具を利用する。腹腔内の術部周りの空間を広げるために、代表的には、注入ガスが導入されて腹腔をインフレートさせると共に腹壁を持ち上げる。腹腔の加圧は、気腹術と呼ばれている。この関係で、腹腔又は体内空間を封止する必要性が、たとえ道具が存在している場合であっても気腹術を維持する必要から生じる。
【0003】
腹腔鏡手術において道具の接近を可能にするために一般にトロカールが用いられている。かかるトロカールは、道具が存在していない場合にはガスの漏れを阻止するゼロシールを有し、道具が存在している場合にはガスの漏れを阻止する道具シールを有する手の込んだ封止構造体を備えている。残念ながら、かかる道具シールは、狭い範囲の道具直径にしか対応することができない。広い範囲に対応するのが望ましい場合には多数のシール対を用意しなければならなかった。
【0004】
或る道具、例えば外科医の手は、トロカールによる接近を行うには大きすぎる。これらの状況下において、ハンド支援型腹腔鏡的シールが提供された。かかる器具は、大きく且つ重くて扱いにくく、大抵の場合、所要の封止機構を提供するには効果的ではない。他の接近器具、例えばトーイ−ボルスト型(Touhy-Borst)シールが用いられているが、これらは、例えばガイドワイヤの必要とするような非常に小径の接近のために用いられているに過ぎない。
【0005】
先行技術の器具の各々には、器具を使用するのを困難にし又は厄介にする欠点がある。例えば、トーイ−ボルスト型シールは、使用するのに2つの手を必要とし、又、ガイドワイヤ又は他の器具をまさに導入しようとするときにシールを形成するわけではない。現行のトロカールシール及びハンド支援型シールは、2つの弁を必要とし、一方の弁は、道具が存在している場合に道具シールを形成し、他方の弁は、道具が存在していない場合にゼロシールを形成する。例えば、ハンド支援型器具では、外科医の腕の周りを封止するのに手の込んだ機構体が必要である。腕を取り出すと、血液又は注入ガスの漏れを阻止するのに別個のゼロシールが必要であった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、体壁に設けられた切開部に対して配置されるようになった外科用接近器具のゲルキャップ部分を製造する方法に関する。この方法は、開口部が貫通して設けられた環状キャップを用意するステップと、モールドキャビティを備えた注型モールドを用意するステップと、溶剤を用意するステップと、スチレンとゴムの比が33/67のスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンのポリマーを用意するステップと、溶剤とポリマーを混合して約90重量%の溶剤及び約10重量%のポリマーのスラリを形成するステップと、スラリを真空チャンバ内でガス抜きするステップと、モールドキャビティをスラリで充填するステップと、スラリ及びモールドを加熱して、ついにはスラリが約130℃〜約250℃の範囲の温度になるようにし、モールド及びスラリを温度範囲内に維持し、ついにはスラリがゲルの状態に変化するようにするステップと、ゲルをほぼ周囲室温まで冷却するステップと、硬化したゲルをモールドから取り出すステップとを有する。
【0007】
一形態では、溶剤を用意するステップは、鉱油を用意するステップを含む。別の形態では、ガス抜きステップは、約0.79メートル水銀柱の真空をスラリに加えるステップを含む。別の形態では、ガス抜きステップは、スラリをガス抜きしながらスラリを攪拌するステップを含む。別の形態では、本方法は、スラリがモールド内にある間にスラリをガス抜きするステップを更に有する。別の形態では、本方法は、モールドキャビティをスラリで充填する前にスラリを予熱するステップを更に有する。別の形態では、冷却ステップは、ゲルを水中に浸漬するステップを含む。別の形態では、冷却ステップは、ゲルを空冷するステップを含む。別の形態では、本方法は、複数のガス入りバルーンをモールドキャビティ内のスラリ中に差し込むステップを更に有する。別の形態では、差し込みステップは、バルーンをモールドキャビティの実質的に中心付近でスラリ中に差し込むステップを含む。別の形態では、差し込みステップは、バルーンをモールドキャビティの中心を越える領域全体にわたってモールドキャビティ周りにランダムにスラリ中に分散させるステップを含む。別の形態では、本方法は、複数の固形物体をモールドキャビティ内のスラリ中に差し込むステップと、複数の固形物体をゲルの硬化後に取り出すステップとを更に有する。別の形態では、差し込みステップは、球をモールドキャビティの中心付近でスラリ中に差し込むステップを含む。別の形態では、差し込みステップは、固形物体をモールドキャビティの実質的に中心付近でスラリ中に差し込むステップを含む。別の形態では、差し込みステップは、固形物体をモールドキャビティの中心を越える領域全体にわたってモールドキャビティ周りにランダムにスラリ中に分散させるステップを含む。別の形態では、本方法は、ゲルキャップをガンマ線滅菌法で滅菌するステップを更に有する。別の形態では、本方法は、スラリ及びモールドを加熱しながらスラリを遠心機で混ぜるステップを更に有する。別の形態では、本方法は、ゲルをキャップに結合するステップを更に有する。別の形態では、結合ステップは、シアノアクリレートを用いてゲルをキャップに結合するステップを含む。別の形態では、キャップを用意するステップは、プラスチック材料で作られたキャップを用意するステップを含む。別の形態では、結合ステップは、溶剤をゲルに塗布してゲル中のポリスチレンを溶解させるステップと、溶剤をキャップに塗布してキャップのプラスチックを溶解させるステップと、ゲルをキャップに接触させて化学結合がゲルとキャップとの間に生じることができるようにするステップとを含む。別の形態では、キャップを用意するステップは、円筒形内壁を備えたキャップを用意するステップを含み、キャップの開口部は、円筒形内壁により構成され、キャップは、ポリマー材料で作られる。結合ステップは、硬化したゲルをキャップの円筒形内壁に結合するステップを含む。別の形態では、注型モールドを用意するステップは、キャップの円筒形内壁よりも小さな周囲及びキャップの円筒形内壁の高さよりも高い高さを有するゲルスラグを生じさせるよう構成されたモールドを用意するステップを含む。別の形態では、本方法は、ゲルスラグをキャップの円筒形内壁内に配置するステップを更に有する。別の形態では、結合ステップは、ゲルスラグをキャップの円筒形内壁に圧縮成形するステップを含む。別の形態では、結合ステップは、ゲルスラグ及びキャップをゲルのポリスチレン及びキャップのポリマーが結合を形成するのに十分な温度まで加熱するステップを含む。別の形態では、本方法は、キャップをモールドキャビティ内に配置するステップを更に有する。充填ステップは、キャップが収納されたモールドキャビティをスラリで充填してスラリがキャップに接触するようにするステップを含む。加熱ステップは、スラリ、キャップ、及びモールドを加熱して、ついにはスラリがゲルの状態に変化するようにするステップを含む。ゲルが、キャップに結合されたゲルは、ゲルキャップを形成する。冷却ステップは、ゲルキャップを冷却するステップを含む。取り出しステップは、ゲルキャップをモールドから取り出すステップを含む。別の形態では、キャップを用意するステップは、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンから成るキャップを用意するステップを含み、加熱ステップは、スラリ、キャップ、及びモールドを約130℃よりも高い温度に加熱し、約130℃を超える温度を維持し、ついには結合がキャップとモールドとの間に形成されるようにするステップを含む。別の形態では、キャップを用意するステップは、ポリカーボネートから成るキャップを用意するステップを含み、加熱ステップは、スラリ、キャップ、及びモールドを約150℃の温度まで加熱し、温度を維持し、ついには結合がキャップとモールドとの間に形成されるようにするステップを含む。
【0008】
本発明の上記特徴及び利点並びに他の特徴及び利点は、関連の図面を参照して行われる実施形態の説明により明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の腹腔鏡検査用ハンド接近器具の平面図側斜視図である。
図2図1の腹腔鏡検査用ハンド接近器具の底面図側斜視図である。
図3】硬さが漸変している領域を有するゲルパッドを備えたゲルキャップの平面図である。
図4】ガス入りポケットが分散状態で設けられているゲルを備えたゲルキャップの側面図である。
図5】ガス入りポケットが分散状態で設けられているゲルを備えたゲルキャップの平面図である。
図6】ガス入りポケットが分散状態で設けられているゲルを備えたゲルキャップの平面図である。
図7】ガス入りポケットが分散状態で設けられているゲルを備えたゲルキャップを含む腹腔鏡検査用ハンド接近器具の側面図である。
図8】多部品構成型キャップの平面図側斜視図であり、多部品構成型キャップがこれを形成する部品の端部内に成形されたスクイーズ形バックルコネクタを有する状態を示す図である。
図9】一端に雄型スクイーズリリース形バックルコネクタ継手及び他端部に雌型スクイーズリリース形バックルコネクタ継手を有するキャップの部品のうちの1つの平面図側斜視図である。
図10】隙間を有するキャップの平面図側斜視図であり、ラッチが隙間の一方の側に回動自在に結合され、ラッチを受け入れる溝が隙間の他方の側に設けられている状態を示す図である。
図11】キャップをリテーナに解除自在に結合するためのラッチを備えたキャップの平面図側斜視図である。
図12図11のキャップの側面図である。
図13】キャップ及びリテーナを有する本発明の腹腔鏡検査用ハンド接近器具の平面図側斜視図であり、リテーナがリテーナをキャップに解除自在に結合する複数のスナップを有する状態を示す図である。
図14図13のキャップの平面図側斜視図である。
図15図13のリテーナの平面図側斜視図である。
図16図13のキャップとリテーナとの間の相互作用を説明する断面図である。
図17】キャップ及びリテーナを有する本発明の腹腔鏡検査用ハンド接近器具の平面図側斜視図であり、キャップがキャップをリテーナに解除自在に結合する複数のスナップを有する状態を示す図である。
図18図17のキャップの平面図側斜視図である。
図19図17のリテーナの平面図側斜視図である。
図20図17のキャップとリテーナとの間の相互作用を説明する断面図である。
図21】ゲルキャップ、リテーナ、スリーブ及び保持リングを備えた腹腔鏡検査用ハンド接近器具の側面図であり、ストリング又はテザーの形態をした複数のスタビライザが保持リングからゲルキャップまで延びている状態を示す図である。
図22】ゲルキャップ、リテーナ、スリーブ及び保持リングを備えた腹腔鏡検査用ハンド接近器具の側面図であり、ガセット又はウェブの形態をした複数のスタビライザが保持リングからゲルキャップまで延びている状態を示す図である。
図23】ゲルキャップ、リテーナ、スリーブ及び保持リングを備えた腹腔鏡検査用ハンド接近器具の平面図側斜視図であり、布がゲルキャップの表面上に一体化されている状態を示す図である。
図24図23のハンド腹腔鏡検査用接近器具の部分側面図である。
図25】ゲルキャップ、リテーナ、スリーブ及び保持リングを備えた腹腔鏡検査用ハンド接近器具の平面図側斜視図であり、ゲルキャップが布により構成されたキャビティを有し、ゲルパッドがこのキャビティ内に収容されている状態を示す図である。
図26】ゲルキャップ、リテーナ、スリーブ及び保持リングを備えた腹腔鏡検査用ハンド接近器具の底面図側斜視図であり、ゲルパッドが互いに上下に密着した多尖頭付きローブを備えている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図2には、本発明の一形態の外科用ハンド接近器具50が示されている。この器具は、リテーナ52及びキャップ54を有している。キャップ54とリテーナ52は、両方共実質的に環状であり、又、これら両方には開口部が貫通して設けられている。リテーナ52は、体壁に当てて配置されるようになっている。リテーナ52は、一形態では、剛性であり、細長いスリーブ56と関連すると共に(或いは)この細長いスリーブに結合可能である。外科用ハンド接近器具50は、体壁に設けられた切開部に対して配置されるようになっている。外科用ハンド接近器具50は又、接近器具を通る道具の挿入及び道具との封止関係の維持を容易にする。
【0011】
一形態では、細長いスリーブ56は、切開部を通って、取り付け状態の保持リング58が体腔の内側部分に接触し、体腔の外部のリテーナ52と保持リングとの間に張力をもたらす箇所まで延びている。リテーナ52は又、一形態では、細長いスリーブ56の一部分を支持し又は違ったやり方でこの細長いスリーブの一部分が体腔の外部に位置したままであるようにすることができる。加うるに、リテーナ52、保持リング58及び細長いスリーブ56は、一緒になって、切開部を外科手技中、拡張して隔離することができる。一形態では、細長いスリーブ56及びその特徴は、例えば2004年11月30日に出願された米国特許出願第10/516,198号明細書に記載されている開創器型器具であり、この米国特許出願を参照により引用し、その開示内容全体が本明細書に記載されているものとして引用する。
【0012】
図示のように、リテーナ52及び保持リング58は、円形であるが、当業者であれば理解されるように、これらは、互いに異なる寸法形状のものであって良い。リテーナ52は、一形態では、剛性であっても良く可撓性であっても良くこれら両方の組み合わせであっても良い。保持リング58は、体腔内への挿入を容易にするよう可撓性であるのが良い。以下に詳細に説明するように、接近器具50は、キャップ54とリテーナ52を互いに結合するようになった結合手段を有する。
【0013】
ゲルパッド60は、ガス密導管がキャップとスリーブ56との間に形成されるようキャップ54に結合され、これに取り付けられ、このキャップを備え又はこれと一体であるのが良い。ゲルパッド66は、キャップ54の開口部全体を覆ってこれを封止する。一形態では、ゲルパッドは、ゲルパッド60を通る接近部分又は通路を形成する複数の相互に交差するデッドエンド形スリット62,64を有している。フォームゴム又は他のこれに類似した種類の弾性材料とは異なり、ゲルパッド60は、これを貫通して挿入された種々の寸法形状の手又は道具の周りにガス密シールをもたらす。
【0014】
一形態では、ゲルパッド60の構成材料であるゲル材料は、エラストマーゲルである。幾つかのかかるゲルが、2003年3月20日に出願された米国特許出願第10/381,220号明細書に記載されており、この米国特許を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書に記載されているものとして引用する。トリブロック(triblock)コポリマーをミッドブロック(midblock)用の溶剤と混合することによりゲルを調製することができる。エンドブロック(endblock)は、代表的には、熱可塑性材料、例えばスチレンであり、ミッドブロックは、熱硬化性ポリマー、例えばイソプレン又はブタジエン、例えばスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)である。一形態では、用いられる溶剤は、鉱油である。この混合物又はスラリを加熱すると、ミッドブロックが溶けて鉱油及び不溶性エンドブロック形態のネットワークになる。結果的に得られるネットワークは、親ポリマーと比べてゴム状弾性(エラストマー特性)が向上している。一形態では、用いられるトリブロックコポリマーは、KRATON G1651であり、これは、スチレンとゴムの比が33/67である。ゲルは、いったん形成されると、実質的に永続的であり、エンドブロックの性状により、それ以降は熱可塑性エラストマーとして処理可能である。混合物又はスラリは、これがゴムになる最低温度、即ち、最低ゲル化温度(MGT)を有する。この温度は、一形態では、熱可塑性エンドブロックのガラス転移温度に数度プラスした温度に一致している。例えば、KRATON G1651と鉱油の混合物のMGTは、約120℃である。スラリがMGTに達し、ゲル状態への転移が起こると、ゲルは、一層透明になり、それにより、ゲル状態へのスラリの転移が実質的に完了した時期及びゲルを冷却できるかどうかを目で見て確認するための手段が得られる。トリブロックに加えて、スチレンが化学式の一端にのみ存在する材料のジブロック(diblock)形態、例えばスチレン−エチレン/ブチレン(SEB)も又使用できる。
【0015】
完全なゲルの状態になるスラリの質量が所与である場合、スラリの塊全体をMGTまで加熱し、すると、スラリの塊は、エンドブロックが相互連結マトリックスを形成するのに十分な時間の間、MGTの加熱状態のままである。スラリは、MGTを超える温度でゲルの状態でなり続け、ついには、スラリ/ゲルは、スラリ/ゲル内の成分が分解し又は酸化し始める温度に達するようになる。例えば、スラリ/ゲルを250℃を超える温度に加熱し、スラリ/ゲル中の鉱油は、揮発性になって酸化し始めることになる。酸化により、ゲルは、茶色になって油状になる場合がある。
【0016】
所与の量のスラリがゲルを形成する速度は、スラリの塊全体がMGTに達する速度で決まる。また、MGTよりも高い温度を適用した状態では、この速度は、エンドブロックネットワークがより迅速に広がって生じるので一段と高められる。
【0017】
また、種々の中間特性を達成するために種々の基本的配合物を互いに混ぜ合わしてアロイを作ることができる。例えば、KRATON G1701Xは、70%のSEBと30%のSEBSの混合物であり、全体的なスチレンとゴムの比は、28/72である。理解できるように、各々が本発明の特定の実施形態に利点をもたらすことができるほぼ無限の数の組み合わせ、アロイ及びスチレンとゴムの比を処方することができる。これら利点としては、代表的には、ジュロメータが低いこと、伸び率が高いこと及び引き裂き強さが良好であることが挙げられる。
【0018】
ゲル材料は、シリコーン、軟質ウレタン、更に、発泡剤の添加により所望の密封性をもたらす可能性のある硬質のプラスチックを更に含むのが良いことが想定される。シリコーン材料は、エレクトロニクスのカプセル封入用に現在用いられている種類のものであるのが良い。硬質のプラスチックとしては、PVC、イソプレン、KRATONニート(neat)及び他のKRATON/油混合物が挙げられる。KRATON/油混合物では、鉱油に代えて例えば植物油、石油及びシリコーン油のような油を用いることができる。
【0019】
想定されるゲル材料のうちの任意のものを改質して種々の特性、例えば、減摩性の向上、外観の向上及び創部保護の向上を達成するのが良い。添加剤をゲル中に直接混ぜ込んでも良く又は表面処理剤として塗布しても良い。他の化合物をゲルに添加してその特性を変え又は結合部位又は表面電荷を提供することによりその後の表面の改質を助けるのが良い。加うるに、油を主成分とする着色剤をスラリに添加すると、色の異なるゲルを作ることができる。
【0020】
一形態では、本明細書において説明するキャップの種々の実施形態に用いられる混合物/スラリは、約90重量%の鉱油及び約10重量%のKRATON G1651で構成される。熱力学的な観点からは、この混合物は、鉱油と同様に挙動する。鉱油は、相当高い熱容量を有し、したがって、約130℃では、均質ゲルを形成するのに十分1ポンドのスラリを加熱するのに3時間又は4時間かかる場合がある。いったん形成されると、ゲルを同一のものであって良く、ゲルに見掛けの有害な効果が無い場合、できる限り迅速に冷却するのが良い。この冷却は、一形態では、冷水への浸水によって達成される。別の形態では、ゲルを空冷しても良い。当業者であれば認識されるように、当該技術分野において周知の他の冷却法を用いることができ、かかる他の冷却法は、本発明の範囲に含まれるものと想定される。
【0021】
KRATON/油混合物の特性の多くは、成分の重量比の調節により変化することになる。一般に、鉱油の割合が多ければ多いほど、混合物の硬さがそれだけ一層低くなり、KRATONの割合が高ければ高いほど、混合物の硬さはそれだけ一層高くなる。結果的に得られるゲルが軟質過ぎる場合、これが原因となって、患者の腹腔をガス注入した場合、手術中ゲルキャップの過度のテンティング又はドーミング(中高そり)が生じる場合がある。過度のテンティング又はドーミングによりスリット62,64が開く場合があり、それにより漏れ経路が生じる。加うるに、ゲルが軟質過ぎる場合、適度のシールが得られない恐れがある。しかしながら、ゲルは、外科医にとって快適であると同時に道具の存在と道具の不存在の両方において良好な封止をもたらすほど十分軟質であるべきである。
【0022】
スラリが長期間にわたってそのままになっている場合、コポリマー、例えばKRATON及び溶剤、例えば鉱油は、分離する場合がある。スラリを例えば剪断率の高い刃で混ぜ合わせてスラリを一層均質にするのが良い。しかしながら、スラリの混合により、スラリに空気が導入され又は追加される場合がある。空気をスラリから除去するため、スラリをガス抜きするのが良い。一形態では、スラリを真空中で、例えば真空チャンバ内でガス抜きするのが良い。一形態では、印加される真空は、0.79メートル(29.9インチ)水銀柱又は約1気圧であるのが良い。スラリが真空下にある状態でスラリを攪拌して空気の除去を容易にするのが良い。真空内でのガス抜き中、スラリは、一般に膨張し、次に泡立ち、そして減容する。泡立ちが実質的に止むと、真空を中断するのが良い。スラリを真空チャンバ内でガス抜きすることにより、スラリの容積が約10%減少する。スラリのガス抜きは、乾燥状態のゲルが酸化する恐れを減少させるのに役立つ。
【0023】
スラリのガス抜きは、結果として得られるゲルを硬くする傾向がある。ガス抜きされたスラリが、約91.6重量%の鉱油及び約8.4%重量%のKRATON G1651で構成され、11:1の比になっており、その結果として、ゲルは、ガス抜きされず、約90重量%の鉱油及び約10重量%のKRATON G1651で構成され、9:1の比になっているスラリで作られたゲルとほぼ同じ硬さを有することになる。
【0024】
鉱油は、KRATONよりも低い密度のものであり、これら2つの成分は、混合後互いに分離し、軽い鉱油は、容器の上部に上昇する。この分離は、静的なスラリを数時間かけてゲルの状態にしようとする場合に起こることがある。分離により、結果的に得られたゲルは、頂部のところの鉱油の濃度が高く、底部のところの鉱油の濃度が低く、例えば、非均質ゲルとなる場合がある。分離速度は、加熱されているスラリの深さ又はヘッド高さの関数である。不均質ゲルに対する均質ゲルの決定又は結果を行うには、スラリの質量とヘッド高さ、ゲルの硬化温度及びゲルへのエネルギーの伝達速度を組み合わせて考慮する。
【0025】
本発明のキャップ70の一特徴は、特定の領域74〜80においてテキスチャが互いに異なるゲルパッド72を備えた状態で図3に示されている。例えば、一形態では、ゲルパッド72は、第1の軟質閉鎖性の中央封止領域74、第1の領域よりは弾性が低い第2の領域76、第2の領域よりは弾性が低い第3の領域78、第3の領域よりは弾性が低い第4の領域80等を有している。より詳細に説明すると、ゲルパッド72は、互いに異なる弾性を備えた3つ以上の同心領域を有するのが良く、各領域の弾性は、第1の中央領域74から距離が増大するにつれて減少している。弾性又は柔軟性が漸次低くなる領域は、支持構造体、例えばキャップ70へのゲルパッド72の確実な取り付けを可能にする一方で、ゲルパッドの中央部分のところ又はその付近での軟質で柔軟性の一層高い材料の所望の閉鎖性を保持する。
【0026】
一形態では、ゲルパッド72は、ゲルパッドが遠心力の作用で成形され又は形成される勾配のある同心部分74〜80を有している。ゲル形成中、スラリを遠心機内で混ぜる。ゲルパッド72を形成しながらスラリを回転させることにより、密度の分離が生じ、この場合、スラリの密度の高いトリブロックが回転中のスラリを収容している容器の周囲に向かって移動し、鉱油は、中心に向かって濃度が増大する。このように、完成状態の部品の外部には硬いゲルが形成され、完成状態の部品の中央部分には軟質のゲルが形成され、このことは、腹腔鏡手術のためのハンド接近シールにおいては有用である。
【0027】
一形態では、薄い円形部品に代えて長い平べったい矩形の部品が用いられる。矩形部品と関連して3つの従来型回転軸線が存在する。第1の軸線は、部品の長軸及び短軸に垂直な部品の中央を通る。第1の軸線回りの回転により、矩形の短辺の中点回りのゲルの回転の場合と同様に部品の端部のところのゲルの密度が高くなる。しかしながら、矩形の長軸回りの回転により、矩形の長辺の縁に沿って高い密度のゲルが生じる。回転を回転成形の場合と同様処理中に変更することができ、この場合、部品は、処理中多数の軸線回りに回転する。回転軸線は、部品のセントロイドと交差する必要はなく又は部品それ自体内に位置する必要はない。
【0028】
密度の軽いトリブロック及び密度の高い鉱油を選択することによりゲルパッド70の逆のテキスチャレイアウトを達成することができる。所望の効果に基づいて他の成分も追加することができ、かかる成分としては、例えば着色剤のような添加物、不活性充填材料、互いに異なる油、互いに異なるトリブロック又はジブロックコポリマー、ポリマー、可塑剤、装飾品等が挙げられる。
【0029】
一形態では、重いプラスチックコンポーネント82は、ゲルパッド72又はスラリを備え、これらプラスチックコンポーネントは、中心から遠ざかってゲルの外側領域に向かって引き寄せられ、プラスチック材料の特定の分量及び油と一緒に中央領域74から出る。ゲルパッド72の外側領域76〜80は、密度が高く、中央領域74よりも重いプラスチック材料を含む。ゲルパッド72について特定の勾配部分が達成されると、回転を遅くし、ゲルパッドを放冷させる。
【0030】
一形態では、一方の側に軟質ゲルを有し、他方の側にこれよりも硬いゲルを有する不均質ゲルパッドは、重力の方向につれて変化する場合のあるゲル中へのエネルギー入力のタイミングに見合って経時的に密度が分離された状態で達成される。
【0031】
図4図7では、キャップ90が、複数のガス入りポケット94を備えたゲルパッド92を有している。ポケット94は、軽量フォーム又はバルーンの存在により又はゲルパッド92が硬化した後に取り出される球又は他の形状の固形物体周りにゲルを注型し又は成形することによって形成できる。モールドキャビティをスラリで充填する前か後かのいずれかにフォーム、バルーン、球又は他の形状物をモールドキャビティ内に挿入するのが良い。一形態では、ゲルパッド92の実質的に中心周りのガスポケット94の配置状態により、ゲルパッドが軽量化されると共に閉鎖性を保持しながら外科医の手又は道具の通過に対する抵抗が減少する。ゲルパッド92の別の特徴は、ゲルパッドの中心を越える領域全体を通じてガスポケット94のよりランダムな分散配置を想定しており、それにより、ゲルパッドの全体的重量が減少する。
【0032】
本発明の種々の形態におけるゲルパッド又はゲルキャップをガンマ線滅菌するのが良い。ゲルパッド及びゲルパッドを備えた器具については例えば酸化エチレンによる殺菌に対してガンマ線による滅菌を行った方が相対的又は比較的単純であることが望ましい。しかしながら、ガンマ線滅菌下では、大きな気泡がゲル中に生じる場合があり、それにより滅菌された器具に潜在的な外見上又は美感上の問題が生じる。気泡は、99%以上が室内空気であり、したがって、スラリ中の溶存空気の除去は、スラリをゲルの状態に形成する前に行われる。例えば、スラリを上述したように真空を介してガス抜きして熱によりゲルの状態にするのが良い。気泡は、ガンマ線滅菌中、依然としてゲル中に生じる場合があるが、約24時間〜約72時間の期間で消失する一形態では、室温における鉱油中の溶存ガスの割合は、約10%である。ゲル中の空気の除去は、ゲルを硬くする追加の効果を有する。しかしながら、これは、ガンマ線滅菌中、ガンマ線により引き起こされるゲルに対する軟化効果によって相殺される。
【0033】
ゲルパッドをガンマ線滅菌する場合、ゲルは、約90重量%の鉱油及び約10重量%のKRATONを含む場合がある。上述したように、スラリのガス抜きは、ゲルを硬くする効果を有する。しかしながら、ガンマ線は、このゲルを、ガス抜き及びガンマ線滅菌が行われない約90重量%の鉱油及び約10重量%のKRATONを含むゲルと実質的に同一の硬さに軟化する。
【0034】
一形態では、ゲルパッド60をキャップ54に結合し又は違ったやり方で結び付け又は取り付けるのにシアノアクリレート、例えば、SUPERGLUE 又はKRAZY GLUEを用いるのが良い。グルーは、トリブロックのゴム成分かスチレン成分かのいずれかにくっつくことができ、結合は、ゲル材料それ自体よりも強固である場合が多い。別の形態では、溶剤を用いてキャップ中のプラスチックを溶かすと共にゲルパッド中のポリスチレンを溶かすのが良い。溶剤の溶液をスプレー形態か浸漬形態かのいずれかでゲルパッド及びキャップに塗布する。事実上、溶液は、キャップのプラスチックとゲルパッド中のポリスチレンの両方を溶解させて化学結合がこれら2つの間に生じるようにし、この化学結合は、溶剤が蒸発しても残存する。
【0035】
ポリエチレンを鉱油中に溶解させてゲルパッドに塗布するのが良い。鉱油は、蒸発せず、経時的にゲルパッド中に吸収されてポリエチレン層をゲルパッドに与え、このポリエチレン層は、幾つかの有利な特性を有する場合がある。
【0036】
一形態では、ゲルパッド60は、DYNAFLEX又はKRATONポリマー支持構造体、例えばキャップ54中に注型する。KRATONポリマー又はこれに類似した材料をキャップ中に用いることにより、ゲルパッド60とキャップ54との間のリング付着性を達成することができる。ゲルパッド60中のポリスチレンは、酸化ポリフェニレン(PPO)、ポリスチレン及び他のポリマーとの付着性を達成するものであることが分かる。
【0037】
注型法では、ゲルパッド60及びキャップ54を約130℃を超える温度まで加熱し、そして数時間、例えば約3〜4時間この温度に保持する。用いられる温度は、キャップ204を変形させるほどではない。
【0038】
キャップ54は、一形態では、ポリマー、例えばポリエチレン(PE)から成る。一形態では、ポリエチレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)若しくは高密度ポリエチレン(HDPE)又は超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である。一形態では、キャップ54は、ポリマー、例えばポリカーボネートで作られるのが良く、射出成形を含む方法によってこのキャップを製作することができる。
【0039】
ゲルは、鉱油から成る。PEは、鉱油よりも分子量が大きい。PEを高い温度で鉱油中に溶かす。したがって、PE及びゲルパッド60中の鉱油がこれら両方を約130℃を超える温度に加熱してこの温度状態に保持しているときに互いに混ざり合うので、PEとゲルパッドとの間の結合が形成される。
【0040】
一形態では、キャップ54は、ポリカーボネートから成る。キャップ54のポリカーボネートは、130℃ではゲルパッド60と結合を形成しない。しかしながら、注型中、温度を数分間約150℃に上げることにより、結合がゲルパッド60とキャップ54との間で生じる。したがって、ゲルパッド60及びキャップ54をゲルのポリスチレンとカーボネートの両方がこれらの融点を同時に超える温度まで加熱することにより、結合がゲルパッドとキャップとの間に生じることができる。変形例として、ゲルパッド60及びキャップ54をポリカーボネート製のキャップのガラス転移温度まで又はその近くの温度まで加熱してゲルパッドとキャップとの間に結合を形成しても良い。
【0041】
図8図10を参照すると、キャップ100,130は、キャップを環状周囲に沿って少なくとも1つの隙間101,132を有している。少なくとも1つの隙間101,132は、キャップ100,130の少なくとも1つの第1の端103,134及び少なくとも1つの第2の端105,138を形成している。隙間101,132は、第1の大きな周囲から第2の小さな周囲へのキャップ中の移行を容易にする。以下に詳細に説明するように、キャップ100,130は、キャップを第2の小さな周囲に維持する手段を有する。キャップ100,130を第1の大きな周囲に設定する場合、リテーナ52(図1)をキャップの開口部内に挿入し又はこれから取り出すのが良い。リテーナ52(図1)は、リテーナがキャップの開口部内に位置決めされている状態でキャップの周囲を第2の小さな周囲に移行させ、キャップの周囲を維持手段によって第2の小さな周囲に維持することによりキャップ100,130にしっかりと結合できる。
【0042】
図8及び図9を参照すると、キャップ100は、キャップ内に成形され又は違ったやり方でキャップに結合されたスクイーズリリース形バックル102を有している。キャップ100は、第1の弧状体108及び第2の弧状体110を有し、第1の弧状体と第2の弧状体は、第1及び第2の隙間101によって互いに分離されている。第1の弧状体108は、第1の端から延びる第1の棘付き部分112を有し、この第1の棘付き部分は、第2の弧状体110の第2の端から延びている第2の受け具又は受け入れ部分とスナップ嵌め嵌合関係をなして挿入されるようになっており、それにより、キャップ100の少なくとも1つの第1の端103がキャップの少なくとも1つの第2の端105に結合される。もう1つの棘付き部分112が、第2の弧状体110の第1の端から延びているのが良く、この棘付き部分は、第1の弧状体108の第2の端105から延びている別の受け入れ部分114とスナップ嵌め嵌合関係をなして操作的に挿入される。別の形態では、第1の弧状体108は、この弧状体の各端に設けられた棘付き部分112を有し、第2の弧状体110は、第2の弧状体の各端に設けられた対応の受け入れ部分114を有している。
【0043】
第1の弧状体108と第2の弧状体110を互いに隣接して配置して第1の弧状体の第1の端103が第2の弧状体の第2の端105と対応し、第1の弧状体の第2の端105が第2の弧状体の第1の端103と対応するようになっているが、互いにスナップ嵌めされる前の状態において、これら弧状体は、リテーナ52(図1)をこれら2つの弧状体相互間に配置できるよう第1の大きな周囲を構成する。棘付き部分112は、対応の受け具114と嵌合し、これら2つの弧状体を互いに結合する。各棘付き部分は、複数本の弾性アーム122を有し、これら弾性アームのうちの2つからは突起124が延びている。各受け具114は、棘付き部分からの突起124に係合する対応の側壁126を有し、それにより、アーム122は、アームが受け具により構成されたチャネル128内に滑り込むと、互いに向かって撓む。突起124が側壁126の端を通過すると、アーム122は、互いから遠ざかるよう撓むことができる。突起124の縁部と側壁126の端の縁部の係合又は接触により、アーム108,110は、互いに離脱するのが阻止される。2つの弧状体108,110を互いに結合することにより、画定される周囲は、リテーナ52(図1)を捕捉し又は保持するよう第2の小さな周囲に減少する。アーム122を互いに向かって撓ませることにより、棘付き部分112は、対応の受け具114の側壁から離脱して受け具から滑り出ることができ、それにより、弧状体108,110は、リテーナ52(図1)から分離して離脱することができる。
【0044】
図示していないが、キャップ100とリテーナ52(図1)の相互結合を助け又はキャップ及び(又は)リテーナの他の寸法形状の採用を可能にするよう各弧状体内に追加の棘付き部分と受け具のスナップ嵌合部を設けるのが良い。一形態では、キャップ100は、単一の隙間101を有し、この場合、単一の棘付き部分112及び単一の受け入れ部分114が設けられる。一形態では、単一の棘付き部分112及び単一の受け入れ部分114を備えたキャップ100は、弧状体の別の部分に設けられたヒンジ又はピボットを備えるのが良い。
【0045】
次に図10を参照すると、キャップ130は、キャップの周囲の一部に沿って隙間又は開口部132を有している。ラッチ136が、キャップ130の開口部132の第1の端134の近くでキャップにヒンジ式に又は回動自在に結合されている。開口部132の第2の対向した端138の近くで実質的に互いに平行なチャネル壁142,144により構成されたラッチ受け具、例えば孔又はチャネル140が、ラッチ136を解除自在に受け入れるよう構成されている。ラッチ136は、一端がキャップ130に結合されたシャフト146及びラッチの非ヒンジ止め端部に設けられていて、シャフトの周長又は直径よりも大きな周長又は直径を備えた拡大又は球状ヘッド148を有している。ラッチ136のヘッド148は、これを掴むことができるよう構成されており、ラッチは、ヘッドがチャネル壁142,144によって構成されたチャネル140に嵌合してこの中に保持されるよう旋回される。チャネル140の幅は、ラッチ136のヘッド148の直径よりも小さく、チャネル壁142,144は、ラッチのヘッドの受け入れ時に、壁が撓んで互いに遠ざかるよう弾性である。代替的に又は追加的に、ヘッド148の幾つかの部分は、ヘッドをチャネル140内に受け入れてこれを保持できるよう縮むことができる。一形態では、1つ又は2つ以上の突起が、チャネル壁142,144のうち一方又はこれら両方から延びていて、ヘッド148に設けられた切欠きに嵌合し、又は、これらを逆の関係にしてラッチ136をチャネル140に固定する。
【0046】
このように、ラッチ136が開いた状態で又はチャネル140に嵌合していない状態で、キャップ130の最初の周囲は、キャップのこの周囲内へのリテーナ52(図1)の簡単な配置を可能にする。ラッチ136を作動することにより、キャップ130が閉じられ、キャップにより定められた周囲のサイズが減少し、それによりキャップがリテーナ52(図1)に固定される。
【0047】
図8図10に戻ってこれらを参照すると、キャップ100,130が分離可能又は接合されていない状態では、キャップの内側周囲内へのそれぞれのリテーナ52(図1)の配置が容易になる。次にキャップを接合し又は再結合すると、リテーナとキャップが互いに固定される。したがって、当業者であれば認識されるように、他形式の結合又は嵌合方式を利用してキャップ及び(又は)リテーナの別々の部分を結合し又は接合して、キャップ及びリテーナを収納し又はキャップとリテーナを互いに固定する周囲を閉じ又は構成することができ、又、これらを逆の関係にしても良い。一形態では、キャップとリテーナを互いに固定するよう別々の部分を互いに再結合する結合方式及び(又は)嵌合方式を備えたリテーナ又はリテーナとキャップの両方は、分離可能である。
【0048】
図11及び図12では、リテーナ150は、リテーナをキャップ54(図1及び図2)に解除自在に結合する1つ又は2つ以上のラッチ152を有する。一形態では、複数のラッチ152が、リテーナ150の周囲に沿って間隔を置いて設けられている。ラッチ152は、リテーナ150にヒンジ止めされ又は回動自在に結合され、これらラッチは、リテーナの周囲に沿って互いに間隔を置いて設けられている。一形態では、ラッチは各々、一体ヒンジでリテーナ150に結合されている。第1の位置では、ラッチ152は、リテーナと実質的に同一平面内に位置する関係をなしてリテーナ150の周囲から側方に延びている。各ラッチ152は、ラッチから実質的に垂直に延びる突起156を有している。キャップ54をリテーナ150上に置き又は嵌めた後且つ(或いは)これらを逆の関係にした後、ラッチ152を作動させてキャップとリテーナを互いに結合する。具体的に説明すると、ラッチ152をキャップに向かって第2の位置まで回転させ、この第2の位置では、ラッチは、リテーナをキャップに結合するためにキャップ54の一部分又は縁部に係合する。一形態では、キャップ54の係合部分は、ラッチ152の突起をキャップに固定する開口部、孔、切欠き、段部、突起又は他のこれらに類似した形式の受け具又は係合方式である。
【0049】
一形態では、ラッチ152のうちの1つ又は2つ以上は、リテーナ150をキャップに結合するようキャップ54から側方に延びる突起又は突出部を対応関係をなして受け入れる切欠き又は開口部を有する。追加的に又は代替的に、図示していないが、キャップは、キャップの周囲に沿ってヒンジ止めされていて、キャップとリテーナを互いに解除自在に結合するようリテーナの幾つかの部分又は縁部に係合する1つ又は2つ以上のラッチを有するのが良い。
【0050】
次に図13図16を参照すると、リテーナ160は、リテーナとキャップ164を互いに解除自在に結合する1つ又は2つ以上の弾性スナップ162を有している。スナップ162は、リテーナの実質的に平坦な環状面166から見て実質的に垂直の方向にリテーナ160の外周部又は縁部から延びている。リテーナ160の平坦な環状面166は、スリーブ56(図1及び図2)をリテーナに固定する。一形態では、環状面166は、スリーブ56を捕捉してこれを張力下でリテーナ160に固定する突起又はフックを有している。また、リテーナ160の縁部は、スリーブ56の保持及びリテーナの取り扱いを助けるよう僅かに隆起している。
【0051】
多数のスナップ162をリテーナ160の周囲に沿って互いに間隔を置いて設けるのが良い。一形態では、各スナップに隣接して位置するリテーナ160の縁部の幾つかの部分は、高くなっており、それにより、各スナップの各側に側壁部分167が形成されている。側壁部分167は、スナップ162を保護すると共にリテーナ160とキャップ164がいったん互いに結合されると、これら相互間の結合を強化し又は補強する。加うるに、側壁部分167は、リテーナ160の取り扱い及びキャップ164へのリテーナ160の結合を容易にする。リテーナ160の側壁部分167を受け入れるよう対応の開口部又は切欠き169がキャップ164の縁部に沿って設けられている。
【0052】
また、各キャップ162は、スナップから実質的に垂直に且つ半径方向内方に延びる突起168を有している。キャップ54をリテーナ150上に置き又は嵌めた後且つ(或いは)これらを逆の関係にした後、これら両方を互いに握りしめる。スナップ162は、キャップとリテーナを互いに嵌合関係の状態にする際、半径方向外方に撓み又は歪んでキャップ164の対応の受け入れ部分170、例えばリップ部分又は縁部上を摺動するよう構成されている。スナップ162は又、スナップの突起168がキャップ164の受け入れ部分170を通過した後、中立位置に向かって戻ってスナップの突起がキャップの受け入れ部分170に係合する構成されている。受け入れ部分170は、一形態では、スナップ162の突起168をキャップ164に固定する開口部、孔、切欠き、段部、突起又は他のこれらに類似した形式の受け具又は係合方式である。変形例として、スナップ162のうちの1つ又は2つ以上は、リテーナ160のスナップをキャップ164に固定するようキャップから延びる突起又は突出部(図示せず)を対応関係をなして受け入れる切欠き又は開口部(図示せず)を有する。キャップ164及びリテーナ160は、各々、射出成形により作られるのが良い。加うるに、キャップ164及びリテーナ160は、各々、ポリカーボネート材料で作られるのが良い。
【0053】
一形態では、図17図20に示されているように、キャップ180は、キャップをリテーナ184に解除自在に結合する1つ又は2つ以上のスナップ182を有している。スナップ182は、リテーナ184の部分188、例えば対応のリップ部分及び(又は)縁部に係合できるようキャップ180の周囲から垂直に延びている。各スナップ182は、このスナップから実質的に垂直に且つ半径方向内方に延びる突起186を有している。キャップ180をリテーナ184上に置き又は嵌めた後且つ(或いは)これらを逆の関係にした後、これら両方を互いに握りしめる。スナップ182は、キャップ180とリテーナを互いに嵌合関係にする際に半径方向外方に撓み又は歪んでリテーナ184のリップ又は縁部188上を摺動し、それにより、スリーブ56をキャップとリテーナとの間に配置した状態でキャップ、リテーナ及びスリーブを固定する。各スナップ182は、突起186がリテーナ184のリップ部分188を通過した後に中立位置に向かって戻ってスナップの突起がリテーナのリップ部分に係合するよう構成されている。
【0054】
次に図1図20を参照すると、一形態として上述したリテーナ及びキャップは、剛性であり、それにより、製造上の利点が得られると共に器具の組み立てが容易になる。また、一形態では、キャップ54,70,90,100,130,164,180は、ゲルパッド60が結合された円筒形内壁172(図14参照)を有し、或いは、ゲルパッドは、キャップに違ったやり方で結合され又は取り付けられる。このように、ゲルパッド60は、スリーブ56の内部の「スケルトン(骨組み)」に取り付けられ、器具と創部、切開部及び(又は)体腔との間に封止領域をもたらす。また、スリーブ、キャップ及びリテーナを互いに結合し又は交差させることにより、器具と体との間に別の封止領域が得られる。
【0055】
ゲルパッド60を円筒形内壁172に固定することにより、ゲルパッド及び対応のキャップ54,70,90,100,130,164,180の厚さが、器具の全体的フットプリントと一緒に最小限に抑えられる。器具の厚さ及び全体的サイズの減少により、器具が軽量化されると共に手の容易な交換が可能になる。また、ゲルパッドの厚さを減少させると共にゲルパッドがキャップと実質的に面一をなし又はこの中に引っ込められることができるようにした状態では、ガス注入中、体及び器具に加えられるガス圧力によって生じる「ドーミング」(中高そり)現象は、減少する。
【0056】
本発明の種々の形態(図11図20)では、リテーナ150,160は、リテーナの外周部に沿って設けられた隆起縁部158,174を有している。また、隆起縁部159,190が、一形態では、リテーナ150,184の内周部に沿って設けられている。内周部は、スリーブを挿通させる開口部157,192を画定している。外側隆起縁部158,174は、キャップとリテーナとの間の解除自在な結合関係を維持し又は固定するのを助ける。一形態では、溝129(図8)が、キャップの周囲に沿って延びていて、外側隆起縁部を受け入れてキャップとリテーナとの間の結合関係を一段と促進するようになっている。同様に、内側隆起縁部は、リテーナとスリーブとの間の解除自在の結合関係を維持し又は固定するのを助ける。内側隆起縁部も又、円筒形内壁及び(又は)ゲルパッド、スリーブ及びリテーナ相互間の封止を容易にする。一形態では、切欠き又は互いに間隔を置いた谷部又は開口部155(図11)が、内側隆起縁部159に沿って設けられており、それにより、円筒形内壁、ゲルパッド及びリテーナ相互間の引っかかりが減少するので円筒形内壁及び(又は)ゲルパッドとリテーナの係合が容易になる。
【0057】
上述の取り付け手段のうちの幾つかは、リテーナ又はリテーナ上のコンポーネントをキャップが解除自在に結合されたスリーブに直接組み込むよう改造可能である。同様に、キャップをリテーナ及び(又は)スリーブに直接組み込んでこれらコンポーネント相互間に解除不能な結合関係を生じさせても良い。
【0058】
一形態では、ゲルパッド60をキャップ54中に注型してゲルキャップ66を形成するには、キャップを注型モールドのモールドキャビティ内に配置する。モールドキャビティは、キャップ54の環状壁の支持体を有するのが良い。モールドをアルミニウム、銅、真鍮又は良好な熱消散特性を備えた他のモールド材料で作るのが良い。しかしながら、当業者であれば認識されるように、低い熱消散特性を備えた他のモールド材料であっても合格レベルの部品が作れ、これらも本発明の範囲に含まれるものと想定される。
【0059】
キャップ54を収納したモールドキャビティをスラリで満たしてスラリがキャップに接触するようにする。モールドキャビティ内の空所をスラリで充填するのを容易にするため、スラリを例えば約52℃(125°F)まで予熱するのが良い。スラリをMGTよりも低い温度まで予熱することにより、スラリの粘度が低下し、それによりスラリは、一層容易に流動することができる。上述したように、スラリを真空内でガス抜きしているのが良い。モールドキャビティを充填してモールドキャビティの充填中に導入されている可能性のある空気を除去し、モールド内のボイド内へのスラリの流れを容易にした後、スラリを再びモールド内でガス抜きするのが良い。キャップ54及びスラリの入ったモールドに例えばオーブンで熱を加え、ついには、スラリが約150℃の温度に達するようにする。上述したように、スラリは、約120℃でゲルの状態になるが、150℃では、ゲルは、ポリカーボネート製のキャップ54に結合することができる。キャップ54を構成するために用いられる材料に応じて、結合は、約150℃以外の温度で生じることができる。キャップ54を120℃よりも低い融点を有する材料で構成した場合、ゲルパッド60、例えばゲルスラグ60を別個に成形し、次にキャップに結合するのが良い。モールドに設けられたスリットの形態をしたインサートを用いることによりスリット62,64をゲルパッド60中に成形するのが良い。
【0060】
ゲルパッド60の温度がいったん約150℃に達すると、ゲルキャップ66を例えば空冷、冷水浸漬又は当該技術分野において周知である他の冷却手段によって冷却するのが良い。150℃では、ゲルパッドは、軟らかく、これを冷却中に変形させた場合、ゲルパッドは、その変形状態で硬化する。ゲルパッド60を変形させる恐れを減少させるため、ゲルキャップ66をモールド内で冷却するのが良い。冷却時間は、モールドの寸法形状、ゲルの量、冷却媒体の温度及び量、冷却媒体の特性及びモールド材料を含む種々のパラメータに基づいて様々であって良い。一例として、冷却時間は、空冷の場合約2時間であり、水の中で冷却する場合約15分であるのが良い。冷却を空気で行うにせよ水で行うにせよいずれにせよ、ゲルの最終的な特性は、実質的に同一である。ゲルキャップ66を代表的にはほぼ周囲室温まで冷却するが、これよりも低い温度まで冷却しても良い。ゲルキャップ66をゲルの凝固点、即ち、約0℃まで冷却した場合、ゲルは、凝固して硬くなる。これは、例えば二次作業でゲルパッド60をキャップ54に結合する他の手段にとって有利である場合がある。ゲルの硬化後、ゲルキャップ66をモールドからいつでも取り出すことができる。
【0061】
ゲルパッド60は、モールドから取り出されると、代表的には、粘着性の表面を有している。ゲルキャップ66を粉末、例えばコーンスターチで被覆して硬化したゲルパッド60の粘着性を実質的に減少させ又は無くすのが良い。
【0062】
上述したように、別の形態では、ゲルパッド60をキャップ54とは別個に成形して二次作業、例えば結合によりキャップに結合しても良い。一形態では、ゲルパッド60をキャップ54の円筒形内壁よりも小さな外周を有するゲルスラグ60中にキャップの高さよりも高い高さまで成形するのが良い。ゲルパッド60は、キャップ54とは別個に成形されているので、ゲルパッドが約120℃に達してスラリからゲルへの転移を終えると共にゲルが実質的に透明になるまでスラリを加熱する必要があるだけである。次に、ゲルスラグ60をキャップ54の円筒形内壁内に配置するのが良い。ゲルスラグ60を冷却すると共に(或いは)凝固させ、その後、これをキャップ54の円筒形内壁内に配置しても良い。ゲルスラグ60をゲルスラグが長手方向に圧縮された状態で圧縮成形によりキャップ54に結合しても良く、その結果、ゲルスラグの外周部が膨張してキャップの円筒形内壁に圧接するようにする。ゲルスラグ60及びキャップ54をゲルのポリスチレン及びキャップのポリマーがゲルとキャップとの間に結合を形成するのに十分な温度まで加熱する。ゲルスラグ60をキャップ54とは別個に成形し、後でゲルスラグをキャップに熱結合することは、キャップがMGTよりも低い融点を有する材料で構成されている場合に特に有用である。かかる状況では、まず最初にゲルスラグ60を成形し、キャップ54を溶解させないでこれをキャップ54に熱結合するのが良い。
【0063】
図21及び図22を参照すると、キャップ54は、キャップに取り付けられ、これに形成され又はこれと一体のゲルパッド60を有し、このキャップは、スリーブ56に結合可能なリテーナ52に結合可能である。一形態では、細長いスリーブ56は、切開部を貫通して保持リング58に取り付けられ、この保持リングは、体腔の内側部分に接触し、体腔の外部に位置するリテーナ52と変形可能な保持リングとの間に張力をもたらす。複数のスタビライザ200〜206が、保持リング58からゲルパッド60まで延びている。
【0064】
一形態では、スタビライザ200,206は、体腔内の圧力の上昇に応答するゲルパッド60の過度の膨らみを阻止するような寸法形状になっている。スタビライザ200,202は、一形態では、保持リング58から延び、次にゲルパッド60を通り又はこの中に延びる複数本のストリング又はテザーを有している。スタビライザ204,206は、保持リング58とゲルパッド60との間に延びる複数の連続したゲルを主成分とするガセット又はウェブを有する。
【0065】
図23及び図24を参照すると、キャップ54は、引き伸ばし可能であり且つ(或いは)弾性である織成又は編成布210を有している。布210は、ゲルパッド60の表面211に組み込まれ又はこれに取り付けられると共にキャップ54の周囲に結合されている。布210は、体腔のインフレーションと関連した内部インフレーションガス圧力の影響を受けて生じるゲルパッド60又はキャップ54の「ドーミング」又は「弓反り」を抑制する支持体となる。一形態では、第1の布212をゲルパッド60の第1の表面214に一体化してキャップ54の周囲に結合するのが良く、第2の布216を第2の反対側の表面218に一体化してキャップに結合するのが良い。このようにすると、両方の方向に抑制支持体が設けられて手又は器具をゲルパッドに通して配置し又はこれから引っ込める際のゲルパッドの制御の及ばない変形が最小限に抑えられる。
【0066】
図25では、第1の布220が、キャップ54の周囲に結合され、第2の布222が、第1の布から距離を置いたところでキャップに結合されている。キャビティ224が、第1の布220と第2の布222との間の空間によって構成されている。ゲルパッド60をキャビティ224内に挿入するのが良く又は違ったやり方でキャビティ内に保持するのが良い。ゲルパッド60をキャップ54への結合に先立って、単独で処理して好ましい寸法形状及び硬さに形成するのが良い。一般にSEBSを処理するのに必要な温度は、関連のプラスチック構造体を実質的に変形させる場合がある。したがって、ゲルパッドを備えたキャップを構成するのに、別々の処理及びその後の組み立てが有用な場合がある。
【0067】
図26を参照すると、ゲルパッド60は、互いに上下に密着する多尖頭付きローブ230を有する。外科医の手又は器具を挿入させることができるチャネル232は、ゲルパッド60の個々のローブ相互間に形成されている。
【0068】
したがって、本発明は、ハンド接近器具及びその製造方法を提供している。本発明を或る特定の実施形態について説明したが、多くの追加の改造例及び変形例が当業者には明らかであろう。したがって、本発明を本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、具体的に説明した形態以外の寸法形状及び材料が様々に変更された形態で実施できることは理解されるべきである。かくして、本発明の実施形態は、あらゆる点において、例示として解されるべきであって、本発明を限定するものとして解されるべきではない。本発明の範囲は、本明細書の説明ではなく、特許請求の範囲の記載及びその均等範囲に基づいて定められる。
【0069】
本発明は、以下の側面も有する。
(1項)
体壁外側に配置されるようになった外科用接近器具であって、
開口部が設けられたキャップと、
キャップに結合されてキャップの開口部を封止するゲルパッドとを有し、
前記ゲルパッドは道具の存在と道具の不存在の両方において封止をもたらし、さらに、前記ゲルパッドはさらに、ゲルパッドの中心の閉塞性を維持しながら、ゲルパッドの重量を減少させかつゲルパッドを通り抜ける挿入された道具の抵抗を減少させるためにゲルパッドの中心付近にガス入りポケットを有することを特徴とする、外科用接近器具。
(2項)
前記ガス入りポケットは、前記ゲルパッド内の泡または気球によって形成されている、1項記載の外科用接近器具。
(3項)
さらに、前記ゲルパッドの表面と一体化され、弾力性があり伸長性がある材料を含む、1又は2項記載の外科用接近器具。
(4項)
前記弾力性があり伸長性がある材料が、織物である、3項記載の外科用接近器具。
(5項)
体壁外側に配置されるようになった外科用接近器具であって、
開口部が設けられたキャップと、
キャップに結合されてキャップの開口部を封止しかつ道具の存在と道具の不存在の両方において封止をもたらすゲルパッドと、さらに、
前記ゲルパッドへのエネルギー入力のタイミングに見合って経時的に密度が分離されて形成された、一方の側の軟質ゲルと他方の側のこれより硬いゲルを有する不均質ゲルパッドとを有することを特徴とする外科用接近器具。
(6項)
さらに、第1織物と、該第1織物から距離を置いてキャップに結合された第2織物を有し、第1織物と第2織物の間の間隔は空洞であり、前記ゲルパッドが前記第1織物と前記第2織物の間の空洞内に配置されている、1又は5項に記載の外科用接近器具。
(7項)
さらに、前記ゲルパッド内で一体した弾力性がありかつ伸長性がある材料を有する、1又は5項に記載の外科用接近器具。
(8項)
前記キャップが、該キャップの環状周囲に沿った隙間を有し、該隙間が前記キャップの第1端部と第2端部を形成し、かつ前記隙間が大きな周囲から小さい周囲へのキャップ中の移行を容易にする、1又は5項に記載の外科用接近器具。
(9項)
さらに、前記キャップの第1端部の近くで旋回可能に結合されたラッチを有する、8項に記載の外科用接近器具。
(10項)
さらに、前記キャップに取り外し可能に結合されたリテーナーを有する、1又は5項に記載の外科用接近器具。
(11項)
前記リテーナーが、本体壁を貫通して延びた細長いスリーブの近位端部分に結合されるようになっている、10項に記載の外科用接近器具。
(12項)
さらに、前記リテーナーに旋回可能に結合され前記キャップに係合するラッチを有する、11項に記載の外科用接近器具。
(13項)
前記ラッチが、該ラッチから直交方向へ延びかつ前記キャップに係合するようになった突起を有し、また前記キャップが前記ラッチの突起を受け入れる係合部分を有する、12項に記載の外科用接近器具。
(14項)
前記キャップが、さらに、前記隙間を閉じるキャップの第2端部に前記キャップの第1端部を結合するようになったバックル嵌合部を有する、8項に記載の外科用接近器具。
(15項)
前記バックル嵌合部が、前記キャップの第1端部から延びた棘付き部分と、前記キャップの第2端部から延びた受け入れ部分を有し、スクイーズリリース形バックル嵌合部の前記棘付き部分と前記受け入れ部分が噛み合い関係で互いに係合するようになっている、14項に記載の外科用接近器具。
(16項)
体壁に対して配置されるようになった外科用接近器具であって、
開口部が設けられ、キャップの環状外周に沿った隙間を有するキャップであって、該隙間がキャップの第1端部及び第2端部を形成し、該隙間がより大きい周囲からより小さい周囲へのキャップ内の移行を容易にする、前記キャップと、
前記キャップの第1端部の近くで前記キャップに旋回可能に結合されたラッチと、
前記キャップの第2端部の近く配置され、前記ラッチを開放可能に受け入れるようになったラッチ受け部と、
前記キャップに結合され前記キャップ内の開口を封止し、器具が存在する時も存在しない時も封止するゲルパッドと、
環状であって前記体壁に対して配置されるリテーナーであって、前記体壁を貫通して延びた細長いスリーブの近位部に結合された前記リテーナーとを有し、
前記キャップがより大きな周囲である時、前記リテーナーが、前記キャップの開口に出入りし、前記リテーナーが前記キャップの開口内に配置されたリテーナーのより小さい周囲に前記キャップの外周を移行させることによって前記キャップに固定的に結合され、前記ラッチを前記ラッチ受け部に係合することによってより小さい周囲のキャップの外周を維持することを特徴とする、外科用接近器具。
(17項)
前記ラッチが、キャップリングの第1端部に旋回可能に結合された第1端部を有するシャフトを備え、第2端部が拡大した圧縮可能ヘッドを有する、16項に記載の外科用接近器具。
(18項)
前記ラッチが、前記ラッチ受け部の対応ノッチと係合する突起を有する、16項に記載の外科用接近器具。
(19項)
さらに、細長いスリーブに遠位端部に結合された変形可能な保持リングを有する、11又は16項に記載の外科用接近器具。
(20項)
さらに、前記保持リングと前記ゲルパッドの間で延びたガセット又はウエブに基づく複数の連続ゲルを備えている、19項に記載の外科用接近器具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26