(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-213535(P2017-213535A)
(43)【公開日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】ガス吸着材粒子、その製造方法、これを用いたガス吸着体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/04 20060101AFI20171110BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20171110BHJP
B01J 20/32 20060101ALI20171110BHJP
B01D 53/28 20060101ALI20171110BHJP
B01J 20/06 20060101ALI20171110BHJP
C23C 2/04 20060101ALI20171110BHJP
C23C 2/34 20060101ALI20171110BHJP
B32B 5/16 20060101ALI20171110BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20171110BHJP
【FI】
B01J20/04 B
B01J20/28 Z
B01J20/32
B01D53/28
B01J20/06 B
C23C2/04
C23C2/34
B32B5/16
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-110262(P2016-110262)
(22)【出願日】2016年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福崎 智数
(72)【発明者】
【氏名】永山 健一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 研二
【テーマコード(参考)】
4D052
4F100
4G066
4K027
【Fターム(参考)】
4D052AA02
4D052CA04
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4D052GB12
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4F100GB48
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4G066FA40
4K027AA15
4K027AB41
4K027AC13
4K027AC86
4K027AE12
4K027AE23
4K027AE32
(57)【要約】
【課題】より効果的に可燃性ガスの発生量を低減させつつ、ガス吸着性能の低下を避けることができるガス吸着材粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】添加材粒子15表面をターゲットガスの吸着能を有するとともに水分によって不活性化されるガス吸着性金属16の層でより均一に覆うようにした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分吸着能を有する添加材粒子と、
前記添加材粒子の表面に形成され、ターゲットガスの吸着能を有するとともに水分によって不活性化される金属の層と
を備え、
前記金属の層の平均厚さは、37μm以下である
ことを特徴とするガス吸着材粒子。
【請求項2】
前記添加材粒子の90質量%以上は、酸化カルシウムであり、
前記金属の90質量%以上は、Ba−Li合金である
ことを特徴とする請求項1に記載のガス吸着材粒子。
【請求項3】
前記添加材粒子と前記金属との総量に対する前記金属の含有量は、45質量%以下である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス吸着材粒子。
【請求項4】
前記金属の層の平均厚さは、0.65μm以上37μm以下である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス吸着材粒子。
【請求項5】
前記金属の層の平均厚さは、1.3μm以上6.6μm以下である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス吸着材粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス吸着材粒子を製造する方法であって、
不活性ガス雰囲気中で、
前記添加材粒子を前記金属の融点以上の温度に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程で加熱された前記添加材粒子に、前記金属を添加する添加工程と、
前記添加工程で金属が添加された前記添加材粒子を混合して前記添加材粒子の表面を前記金属で覆う混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物を冷却する冷却工程と
を備えたことを特徴とするガス吸着材粒子の製造方法。
【請求項7】
前記混合工程で、水と反応させたときに発生する可燃性ガスの発生量が前記金属のグラム当たり200cc/g未満となるように、前記添加材粒子に対して前記金属が配合される
ことを特徴とする請求項6に記載のガス吸着材粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス吸着材粒子を含有するガス吸着材層と、
前記ガス吸着材層の表面に形成され、水分吸着材を含有する被覆層とを備えた
ことを特徴とするガス吸着体。
【請求項9】
前記被覆層は、さらに酸素及び水素を吸着可能な被覆層用ガス吸着材を含む
ことを特徴とする請求項8に記載のガス吸着体。
【請求項10】
前記水分吸着材は、酸化カルシウムであり、
前記被覆層用ガス吸着材は、酸化チタン及び酸化パラジウムである
ことを特徴とする請求項9に記載のガス吸着体。
【請求項11】
ペレット形状を有する
ことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のガス吸着体。
【請求項12】
前記被覆層の最大厚さは、1mm以上60mm以下である
ことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載のガス吸着体。
【請求項13】
前記被覆層の最大厚さは、2mm以上40mm以下である
ことを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載のガス吸着体。
【請求項14】
前記被覆層の最大厚さは、5mm以上20mm以下である
ことを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載のガス吸着体。
【請求項15】
請求項8〜14のいずれか1項に記載のガス吸着体を製造する方法であって、
不活性ガス雰囲気中で、
前記ガス吸着材粒子を、圧粉して前記ガス吸着材層を得る圧粉工程と、
前記ガス吸着材層の表面を前記水分吸着材を含む被覆材で覆う被覆工程と、
前記被覆材で覆われた前記ガス吸着材層をさらに加圧して前記被覆層を形成する成形工程とを備えた
ことを特徴とするガス吸着体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス吸着材粒子、その製造方法、これを用いたガス吸着体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー推進の要請から、家電製品や設備機器で優れた断熱効果を有する真空断熱材が求められている。真空断熱材として、グラスウールやシリカ粉末などの微細空隙を有する芯材を、ガスバリア性を有する外装材で覆い、外装材の内部を減圧密封したものが知られている。真空断熱材には、その優れた断熱効果を長期に亘って維持するために、外部から侵入する水蒸気や酸素、窒素などのガスを除去するための吸着材が前記芯材とともに減圧密封されている。
【0003】
このような吸着材のうち、例えば窒素ガス吸着材としてBa−Li合金を用いた真空断熱材が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開1996−159377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、Ba−Li合金は、消防法の第3類に属する禁水性物質であり、水と激しく反応してガス吸着性能を失うとともに、水素ガスを発生する。そのため、例えば使用済み家電製品の破砕処理時には、粉塵の飛散を防ぐために散水処理が行われるところ、真空断熱材の破砕に伴って露出したガス吸着性金属が水と反応して水素を急激に大量発生し、発火・爆発を引き起こす危険性がある。
【0006】
そこで、散水処理時等に発生する水素ガス量を安全な量まで減少させるために、Ba−Li合金に吸水性材料等の添加材を混合して、単位質量当たりに含まれる合金量を減少させることが行われている。しかしながら、本願発明者らの知見によれば、これら添加材の量が多くなると、その添加材に含有される僅かな水分によって、Ba−Li合金は容易に失活してしまい、そもそも目的とするガス吸着性能を発揮できなくなることが判った。
【0007】
そこで、本願発明者らは、鋭意検討の結果、添加材の粒子表面をガス吸着能を有する金属で覆った混合粒子を用いることにより、ガス吸着性能の低下を抑えつつ、可燃性ガスの発生量を低減し得ることを見出し、既に出願を行っている(特願2014−217230)。
【0008】
本発明では、さらに効果的にガス吸着性能の低下を抑えつつ可燃性ガスの発生量を低減させることができるガス吸着材粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明の他の目的は、当該ガス吸着材粒子を用いたガス吸着体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明では、添加材粒子表面を、ターゲットガスの吸着能を有するとともに水分によって不活性化される金属の層でより均一に覆うようにした。
【0010】
すなわち、ここに開示するガス吸着材粒子は、水分吸着能を有する添加材粒子と、前記添加材粒子の表面に形成され、ターゲットガスの吸着能を有するとともに水分によって不活性化される金属の層とを備え、前記金属の層の平均厚さは、37μm以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、前記金属の層が、より均一に前記添加材粒子表面に形成されているから、効果的にターゲットガスを吸着することができ、延いてはターゲットガスの吸着速度を速めることができる。また、添加材粒子表面に前記金属を均一に配置させることにより、可燃性ガスの発生量も低減させることができる。なお、前記金属の層の平均厚さは、より好ましくは0.65μm以上37μm以下、特に好ましくは1.3μm以上6.6μm以下である。 好ましい態様によれば、前記添加材粒子の90質量%以上は、酸化カルシウムである。これにより、水分を吸着して金属の優れたガス吸着性能を維持し、可燃性ガスの発生量を効果的に低減させることができる。また、前記金属の90質量%以上は、Ba−Li合金である。これにより、減圧環境下において効果的に窒素を吸着させることができる。
【0012】
ここに、Ba−Li合金は、水と反応すると下記式(1),(2)に従って水素ガスを発生する。
【0013】
2Li + 2H
2O → 2LiOH + H
2 (295cc/g)・・・(1)
Ba + 2H
2O → Ba(OH)
2 + H
2 (147cc/g)・・・(2)
前記式(1),(2)によれば、例えば、バルク状又は粒子上の合金を圧縮成形して塊となし、これを水分と反応させたとすると、Ba−Li合金のグラム当たり442ccの水素ガスが発生する。
【0014】
消防法の第3類の危険物(自然発火性物質及び禁水性物質)に該当するか否かを判断する試験に関する危険性判断基準によれば、水との反応により水素等の可燃性ガスを200cc/g以上発生させる固体は、禁水性物質に分類される。従って、当該基準を満たす観点から、水と反応させたときに発生する可燃性ガスの発生量が前記金属のグラム当たり200cc/g未満となるように、前記添加材粒子に対して前記金属が配合されていることが好ましい。
【0015】
好ましい態様によれば、前記添加材粒子と前記金属との総量に対する前記金属の含有量は、45質量%以下である。これにより、可燃性ガスの発生量を効果的に低減させることができる。
【0016】
ここに開示するガス吸着材粒子の製造方法は、前記ガス吸着材粒子を製造する方法であって、不活性ガス雰囲気中で、前記添加材粒子を前記金属の融点以上の温度に加熱する加熱工程と、前記加熱工程で加熱された前記添加材粒子に、前記金属を添加する添加工程と、前記添加工程で金属が添加された前記添加材粒子を混合して前記添加材粒子の表面を前記金属で覆う混合工程と、前記混合工程で得られた混合物を冷却する冷却工程とを備えたことを特徴とする。本発明によれば、前記金属の層をより均一に前記添加材粒子表面上に形成することができ、より効果的なガス吸着材粒子をもたらすことができる。
【0017】
ここに開示するガス吸着体は、前記ガス吸着材粒子を含有するガス吸着材層と、前記ガス吸着材層の表面に形成され、水分吸着材を含有する被覆層とを備えたことを特徴とする。これにより、外部から侵入する水分を吸着することができるから、前記ガス吸着材層の水分吸着による窒素吸着性能低下を抑えることができる。
【0018】
好ましい態様によれば、前記被覆層は、さらに酸素及び水素を吸着可能な被覆層用ガス吸着材を含む。これにより、真空断熱材内部の水分、酸素、水素および窒素が吸着可能となり長期にわたり内部の真空度を維持できる。
【0019】
好ましい態様によれば、前記水分吸着材は、酸化カルシウムであり、前記被覆層用ガス吸着材は、酸化チタン及び酸化パラジウムである。これにより、真空断熱材内部の窒素などのターゲットガスに加え、水分、酸素及び水素が吸着可能となり長期にわたり内部の真空度を維持できる。
【0020】
好ましい態様では、ガス吸着体はペレット形状を有している。これにより、ガス吸着対のハンドリング性能が向上し得る。
【0021】
なお、前記被複層の最大厚さは、好ましくは1mm以上60mm以下、より好ましくは2mm以上40mm以下、特に好ましくは5mm以上20mm以下である。これにより、ガス吸着材層のターゲットガスの吸着性能及びガス吸着体のハンドリング性能が向上し得る。
【0022】
ここに開示するガス吸着体の製造方法は、前記ガス吸着体を製造する方法であって、不活性ガス雰囲気中で、前記ガス吸着材粒子を、圧粉して前記ガス吸着材層を得る圧粉工程と、前記ガス吸着材層の表面を前記水分吸着材を含む被覆材で覆う被覆工程と、前記被覆材で覆われた前記ガス吸着材層をさらに加圧して前記被覆層を形成する成形工程とを備えたことを特徴とする。これにより、可燃性ガスの発生を効果的に抑えつつ、金属のターゲットガス吸着性能の低下を効果的に抑えることができるガス吸着体をもたらすことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように、本発明によると、可燃性ガスの発生量を低減させながら、ガス吸着性能の低下を避け得るガス吸着材粒子、その製造方法、及び当該ガス吸着材粒子を用いたガス吸着体、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るガス吸着体を備えた真空断熱材の一例を示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すガス吸着体の構成を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る吸着性組成物の製造方法を説明するためのフロー図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係るガス吸着体の製造方法を説明するためのフロー図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す圧粉工程における圧粉方法を示す図である。
【
図6】
図6は、
図4に示す成形工程における成形方法を示す図である。
【
図7】
図7は、窒素吸着のための測定装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るガス吸着体7を備えた真空断熱材1を示す。
【0027】
真空断熱材1は、
図1に示すように、グラスウールやシリカ粉末などの微細空隙を有する芯材6と、その内部に配置されたガス吸着体7とを2枚の外装材2で挟むように内包、密閉するように構成されている。真空断熱材1は、例えば冷蔵庫、冷凍庫、給湯容器、自動車用断熱材、建造物用断熱材、自動販売機、保冷箱、保温箱、保冷車等に使用され得る。
【0028】
外装材2は、芯材6を空気や水分から隔離する役割を果たし、ガスバリア性を有する材料であれば、従来の如何なるものも利用できる。例えば、熱可塑性樹脂からなるプラスチックフィルムや金属箔等をラミネート加工することでバリア性を付与したラミネートフィルム等を用いることができる。具体的には、
図1に示すように、熱溶着フィルム5と、中間層のガスバリアフィルム4と、最外層の表面保護フィルム3を有する構成とすることができる。熱溶着フィルム5は、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂、又はこれらの混合物等が挙げられる。ガスバリアフィルム4は、アルミニウムや銅等の金属箔や、ポリエチレンテレフタレートフィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合体に、アルミニウムや銅等の金属原子や、アルミナやシリカ等の金属酸化物を蒸着したフィルム等が使用できる。表面保護フィルム3は、例えば、ポリアミド(ナイロン)(PA)、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。また、外装材2は、上述のようなラミネートフィルムでなくてもよく、例えば、金属容器やガラス容器、樹脂と金属の積層されたガスバリア容器のようなものであってもよい。例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、金属蒸着フィルムなどの一種又は二種以上のフィルムをラミネートした容器等を使用することができる。
【0029】
芯材6は、
図1に示すように、外装材2の内部に配置されており、真空断熱材1の骨格としての役割を有するとともに、ガス吸着体7が適用される空間を形成する。芯材6の材質としては、特に限定されず、具体的には例えば、グラスウール、ロックウール、アルミナ繊維、熱伝導率の低い金属からなる金属繊維等の無機繊維;ポリエステルやポリアミド、アクリル、ポリオレフィン、アラミドなどの合成繊維や木材パルプから製造されるセルロース、コットン、麻、ウール、シルクなどの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維等の有機繊維等を使用することができる。前記芯材材料は、単独で使用されても又は2種以上の混合物であってもよい。これらのうち、グラスウールが好ましい。これらの材料からなる芯材は、繊維自体の弾性が高く、また繊維自体の熱伝導率が低く、なおかつ工業的に安価である。
【0030】
図1のガス吸着体7は、
図2に示すように、ガス吸着材層10’と、このガス吸着材層10’を被覆する被覆層11’とよりなる圧縮成形体を、例えばガス透過性開放部を有するハードケース、又はガス透過性フィルム等のカバー体12内に収納した構成を備えている。ガス透過性開放部の一例としては、ハードケースの上端の開放面がある。
【0031】
ガス吸着材層10’は、ターゲットガスの吸着性能を有する層であり、吸着性組成物(ガス吸着材粒子)10を含有する。
【0032】
吸着性組成物10は、水分吸着能を有する添加材粒子15と、前記添加材粒子の表面に形成され、ターゲットガスの吸着能を有するとともに水分によって不活性化されるガス吸着性金属(金属)16の層とを備える。前記ガス吸着性金属16の層は、ガス吸着性金属16が添加材粒子15の表面に付着された状態で形成されており、本明細書において「付着」とは、ガス吸着性金属16によって添加材粒子15が被覆されている状態をいい、ガス吸着性金属と添加材粒子15との間の金属結合等、ガス吸着性金属と添加材粒子15との間の化学結合、又は、ガス吸着性金属と添加材粒子15との間の物理的な結合等、ガス吸着性金属16と添加材粒子15との間の界面の状態に対する、本発明を実施する上での制限はない。
【0033】
前記ガス吸着性金属16は、ターゲットガスの種類に応じて適宜選択される。ターゲットガスが窒素の場合には、Li、V及びZrの少なくとも一種、例えば、金属Li、及び/又は、Li合金である。Li合金の中でもLiとアルカリ土類金属との合金、特に、Ba−Li合金が窒素の吸収特性が高いことから好ましい。また、ガス吸着性金属16は、複数種類の上記金属及び合金の混合物であってよいが、減圧環境下において効果的に窒素を吸着させる観点から、ガス吸着性金属16の90質量%以上はBa−Li合金であることが好ましい。
【0034】
前記添加材粒子15は、ガス吸着性金属16の濃度、即ち、ガス吸着体7の単位質量当たりの金属量を調整するものである。この結果、添加材粒子15によって、ガス吸着体7の単位質量当たりの金属含有量が低減されるため、例えば、ガス吸着体7の廃棄処理時に吸着性組成物10が水と反応しても、その反応速度が制限されるため、一気に規制値以上の可燃性ガスが発生することを抑制することができる。添加材粒子15としては、金属のガス吸着能に影響がないものから選択されればよく、格別限定されるものではないが、窒素ガス吸着性金属の場合には、併用されることが多い無機酸化物がよい。無機酸化物の中でも、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム等のアルカリ土類金属の酸化物が好ましい。この中でも、酸化カルシウムは、水蒸気圧の極めて低い環境においても水分を吸着する。添加材粒子15は、複数種類の上記無機酸化物の混合物であってよいが、水分を吸着してガス吸着性金属16の優れたガス吸着性能を維持するとともに、可燃性ガスの発生量を効果的に低減させる観点から、添加材粒子15の90質量%以上は酸化カルシウムであることが好ましい。ガス吸着体7が使用される環境の状態を維持するため、吸湿性無機酸化物を、ガス吸着体7とは別に、或いはガス吸着体7に含ませるようにしてもよい。なお、吸着性組成物10のガス吸着能を損なわないようにする観点から、添加材粒子15の粒径は500μm以下であることが望ましい。下限は、特段制限されず、現存する添加材粒子15の最小粒径で構わない。
【0035】
例えば、添加材粒子15が酸化カルシウム等の無機酸化物である場合は、その水分吸着特性から、加熱処理された後であっても、ガス吸着体7を製造する過程で大気中の水分を不可避的に吸収する。従って、ガス吸着性金属と添加材粒子15を単に混合しただけでは、前記水分によって、ガス吸着性金属が容易に失活してしまう。しかしながら、本発明者が鋭意検討したところ、ガス吸着性金属がガス吸着能を有する活性な状態で添加材粒子15の表面に、既述の通り、付着させることにより、ガス吸着能の活性を維持できることが明らかとなった。これは、添加材粒子15の表面が金属で被覆されることによって、添加材粒子15の吸湿反応が抑えられた結果であると考えられる。なお、添加材粒子15は、ガス吸着性金属の濃度を制御するものであるため、ガス吸着性金属に対して、「母材」、或いは、「基材」ともいい得る。
【0036】
前記添加材粒子15の表面に形成された前記ガス吸着性金属16の層の平均厚さは、好ましくは37μm以下、より好ましくは0.65μm以上37μm以下、特に好ましくは1.3μm以上6.6μm以下である。これにより、ガス吸着性金属16の層が、より均一に前記添加材粒子15表面に形成されているから、上述の散水処理等により吸着材粒子に水が接触した場合であっても、金属層の厚みが薄く一度に発生する水素ガス量が少ないため、可燃性ガスの発生量を低減させることができる。なお、本明細書において、前記ガス吸着性金属16の層の平均厚さとは、前記添加材粒子15及び前記ガス吸着性金属16の各々粒子半径、密度及び質量に基づいて、前記添加材粒子15の1個当たりに形成される前記ガス吸着性金属16の層の厚さを算出したものをいう。
【0037】
ガス吸着材層10’の形状は、特に限定されず、ペレット形状、ブロック形状、球状等など種々の形状を取り得るが、好ましくは、ハンドリング性能向上の観点から、ペレット形状である。ガス吸着材層10’の大きさは、ターゲットガスの吸着性能及びハンドリング性能向上の観点から、直径又は長径が好ましくは3mm以上50mm以下、より好ましくは5mm以上30mm以下、特に好ましくは7mm以上20mm以下であり、ガス吸着材層10’の最大厚さ又は短径が好ましくは0.5mm以上50mm以下、より好ましくは1mm以上30mm以下、特に好ましくは2mm以上10mm以下である。なお、圧縮成形体は、粒状、或いは、ペレット状の塊状体としても形成され得る。この塊状体の複数を芯材6中に分散させてもよい。
【0038】
被覆層11’は、水分吸着材17を含む。水分吸着材17は、前記添加材粒子15と同様に吸水性を有する材料であれば、特に限定されず、例えば、吸水性能向上の観点から、好ましくは酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム等のアルカリ土類金属の酸化物を用いることができる。これにより、ガス吸着材層10’の水との直接的な接触を防ぐことができ、水分による吸着特性の低下を防ぐことができる。被覆層11’は、さらに酸素及び水素の少なくとも一方を吸着可能な被覆層用ガス吸着材18を含む。このような被覆層用ガス吸着材18は、具体的には例えば、酸化チタン、酸化パラジウム又はこれらの混合物である。これにより、真空断熱材内部の窒素などのターゲットガスに加え、水分、酸素、水素等が吸着可能となり真空断熱材内部の真空度を長期にわたって保つことができる。
【0039】
被覆層11’の最大厚さは、ガス吸着材層10’のターゲットガスの吸着性能向上及びガス吸着体7のハンドリング性能向上の観点から、好ましくは1mm以上60mm以下、より好ましくは2mm以上40mm以下、特に好ましくは5mm以上20mm以下である。なお、本明細書において、被覆層11’の最大厚さは、ガス吸着材層10’のサイズ、ガス吸着体7のサイズ及びカバー体12の厚さから、又は、ガス吸着材層10’のサイズ及びガス吸着材層10’の周囲に被覆層11’を形成して得られる後述する成形体のサイズから算出される。
【0040】
ガス吸着体7の形状は、ガス吸着材層10’の表面に均一な厚さの被覆層11’を形成することにより、ガス吸着材層10’の形状と同様の形状とすることができる。また、被覆層11’は、部分的に厚さの異なる構成としてもよい。この場合には、ガス吸着体7の形状は、ガス吸着材層10’と同様の又は異なるペレット形状、ブロック形状、球状等の種々の形状とすることができる。
【0041】
本発明のガス吸着体7を真空断熱材1などの減圧環境に含ませることによって、例えば真空断熱材1の芯材6の微細空隙など減圧環境下に残存するガスや、減圧環境に大気から侵入するガスを長期に亘り吸収して、減圧環境の低熱伝導率を維持することができる。「減圧環境」とは、大気圧に比較して小さい圧力環境であることを意味し、真空断熱環境を実現するために、例えば、100Pa以下、好ましくは10Pa以下、さらに、好ましくは、0.01Pa程度である。なお、本発明のガス吸着体7は、冷蔵庫に使用され得ることから、ガス吸着性能は、低温環境(摂氏マイナス30度前後)でも、維持されることが好ましい。
【0042】
−吸着性組成物の製造方法−
図3に、吸着性組成物10の製造工程を示す。なお、以下の製造工程は、吸着性組成物10の劣化・発火を抑制する観点から、全て不活性ガス雰囲気中で行う。不活性ガスは、例えば純度99.99%以上のアルゴンガス等である。
【0043】
図3に示すように、まず添加材粒子15を予め加熱する(加熱工程、S1)。加熱手段は、具体的には例えばホットプレート、オーブン等の加熱手段が使用することができる。
【0044】
加熱温度は、後で添加する金属を溶融させるため、当該金属の融点以上の温度とし、好ましくは200℃以上1500℃以下、より好ましくは300℃以上1200℃以下、特に好ましくは400℃以上800℃以下である。前記添加材粒子15として酸化カルシウム、前記ガス吸着性金属としてBa−Li合金を用いた吸着性組成物10の場合には、Ba−Li合金を十分溶融させ、酸化カルシウム中に均一に分散させて、十分に混合させる観点から、好ましくは400℃以上600℃以下、より好ましくは450℃以上550℃以下、特に好ましくは480℃以上520℃以下である。
【0045】
加熱時間は、添加材粒子15全体を均一に加熱させる観点から、好ましくは10秒以上5分以下、より好ましくは20秒以上3分以下、特に好ましくは30秒以上1分以下である。
【0046】
次に、上述のごとく加熱した添加材粒子15中にガス吸着性金属16を添加する(添加工程、S2)。そして、当該ガス吸着性金属16が溶融した状態で全体を均一に混ざり合うまで混合し、添加材粒子15の表面をガス吸着性金属16で覆って、添加材粒子15の表面にガス吸着性金属16の層を形成する(混合工程、S3)。混合手段は、例えば自動乳鉢、混合ミル等の混合手段を使用することができる。
【0047】
吸着性組成物10におけるガス吸着性金属16と添加材粒子15との配合割合は、ガス吸着体が使用される環境におけるガス濃度の目標値を達成し得る観点、吸着体を設ける空間の体積に対する制限、ガス吸着体7を排気する際における水と金属の反応による可燃性ガスの発生率に対する低減等の要求から適宜決定されればよい。ガス吸着性金属16に対して添加材粒子15が多いと、可燃性ガスの発生率は小さくなるが、添加材粒子15によって、ガス吸着性金属16の可燃性ガス吸着能が低下する可能性や、ガス吸着体7の容量が増加する可能性がある。一方、ガス吸着性金属16に対して添加材粒子15が少なくなると、添加材粒子15によって、ガス吸着性金属16の可燃性ガス吸着能が低下する虞はなく、そして、ガス吸着体7の容量も増加する虞はないものの、可燃性ガスの発生率が大きくなる可能性がある。そこで、既述の通り、吸着性組成物10を水と反応させた際に、急激に発生し得る可燃性ガスの発生量を規制値(200cc/g)未満になる範囲で、添加材粒子15とガス吸着性金属16との配合割合を適宜調整すればよい。具体的には例えば、添加材粒子15とガス吸着性金属16との総量に対して、ガス吸着性金属16を好ましくは45質量%以下、より好ましくは1質量%以上45質量%以下、特に好ましくは2質量%以上10質量%以下で混合することで、発生する可燃性ガスを規制値以下にすることが可能である。
【0048】
そして、前記混合工程S3で得られた混合物を室温まで冷却し、吸着性組成物10を得る(冷却工程、S4)。なお、冷却手段は例えば自然冷却などの手段を用いることができる。
【0049】
本製造方法によれば、全ての添加材粒子15を予め均一に加熱しているため、添加する全てのガス吸着性金属16の溶融が速やかに促進され、添加材粒子15とガス吸着性金属16とがより均一に混合される。そうして、添加材粒子15表面により均一な厚さでガス吸着性金属16の層が形成される。これにより、本発明によれば、前記ガス吸着性金属16の層が、より均一に前記添加材粒子15表面に形成されるから、吸着性組成物10の製造工程においても前記添加材粒子15による大気中の水分等の吸湿反応が抑えられ、延いてはガス吸着性金属16のガス吸着能の低下がより効果的に抑制される。また、添加材粒子15表面に前記ガス吸着性金属16を配置させることにより、可燃性ガスの発生量も低減させることができる。
【0050】
−ガス吸着体の製造方法−
図4に示すように、上述のごとく得られた吸着性組成物10を用いてガス吸着体7を製造する。なお、本工程も、吸着性組成物10及びガス吸着体7の劣化・発火を抑制する観点から、全て不活性ガス雰囲気中で行う。不活性ガスは、例えば純度99.99%以上のアルゴンガスである。
【0051】
まず、吸着性組成物10を、例えば
図5のような加圧成形機20を用いて圧粉成形し、ガス吸着材層10’を得る(圧粉工程、S11)。
図5に示すように、加圧成形機20の上パンチ22と下パンチ23とが配置されたダイ21中に吸着性組成物10を入れ、シリンダ(図示せず)が上パンチ22の情報から下降することにより下パンチ23の下側に配置された可動フレーム(図示せず)との間で加圧成形され、ガス吸着材層10’が得られる。ガス吸着材層10’の形状は、特に限定されず、例えば、ペレット形状、リング形状等である。加圧力は、ガス吸着材層10’の形状を保持する観点から、好ましくは10kN以上100kN以下、より好ましくは20kN以上80kN以下、特に好ましくは30kN以上60kN以下である。
【0052】
そして、前記得られた圧粉体を被覆材11で覆い(被覆工程、S12)、加圧してペレット形状等に成形し、被覆層11’を形成する(成形工程、S13)。
【0053】
被覆材11は、被覆層11’を構成するものであるため、被覆層11’に含有される材料を含むことができる。具体的には、上述のごとく、水分吸着材17を含む。水分吸着材17は、前記添加材粒子15と同様に吸水性を有する材料であれば、特に限定されず、例えば、吸水性能向上の観点から、好ましくは酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム等のアルカリ土類金属の酸化物を用いることができる。被覆材11は、さらに酸素及び水素の少なくとも一方を吸着可能な被覆層用ガス吸着材18を含む。このような被覆層用ガス吸着材18は、具体的には例えば、酸化チタン、酸化パラジウム又はこれらの複合体である。これにより、真空断熱材内部の窒素などのターゲットガスに加え、水分、酸素、水素等が吸着可能となり真空断熱材内部の真空度を長期にわたって保つことができる。被覆材11が被覆層用ガス吸着材18を含有する場合には、被覆材11中における水分吸着材17の含有量は、吸水性能向上の観点から、好ましくは96質量%以上99質量%以下、より好ましくは97質量%以上99質量%以下、特に好ましくは98質量%以上99%以下であり、被覆材11中における被覆層用ガス吸着材18の含有量は、酸素及び/又は水素の吸着性能向上の観点から、好ましくは1質量%以上4質量%以下、より好ましくは1質量%以上3質量%以下、特に好ましくは1質量%以上2質量%以下である。
【0054】
具体的には例えば、
図6に示すように、加圧成形機20’の上パンチ22’と下パンチ23’とが配置されたダイ21’中に、ガス吸着材層10’が被覆材11に覆われるようにこれらを入れる。そして、
図5の加圧成形機20による操作と同様に、上パンチ22’と下パンチ23’との間で加圧成形し、ガス吸着材層10’の周囲に被覆層11’を形成する。出来上がった成形体の形状は、特に限定されず、ガス吸着材層10’と同様の形状であってよく、例えば、ペレット形状、リング形状等である。加圧力は、ガス吸着体7の形状を保持する観点から、好ましくは10kN以上100kN以下、より好ましくは20kN以上80kN以下、特に好ましくは30kN以上60kN以下である。
【0055】
最後に、前記成形体をハードケース等のカバー体12で被覆してガス吸着体7を得る(収納工程、S14)。
【0056】
これにより、可燃性ガスの発生を効果的に抑えつつ、金属のターゲットガス吸着性能の低下を効果的に抑えることができるガス吸着体をもたらすことができる。
【実施例】
【0057】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。表1に、実施例1〜5及び比較例1,2の構成及び測定結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
<実施例1>
Ar雰囲気下、酸化カルシウムCaO(平均粒径200μm、吉澤石灰工業製)2.45gを坩堝に入れ500℃のホットプレート上で15分加熱する。その後、加熱した酸化カルシウム中に、BaLi
4(平均粒径300μm以下、純度99%以上、高純度化学製)0.05gを添加し、BaLi
4を溶融させながら酸化カルシウムと均一になるまで混合した。室温まで冷却し酸化カルシウム表面にBaLi
4が付着した粒子状の吸着性組成物を得た。
【0060】
作製されたBaLi
4/CaO粒子(吸着性組成物10)のCaO粒子表面のBaLi
4層の平均厚さT
bcbは、以下の式(1)に基づいて算出した。
T
bcb={[(V
b/N
bc)+V
bcc]×[3/(4×3.14)]}
1/3−r
bcc・・・(1)
但し、以下の表2に示すように、V
bはBaLi
4の体積、N
bcはBaLi
4/CaO粒子の個数、V
bccはBaLi
4/CaO粒子1個当たりのCaO粒子部分の体積、及びr
bccはBaLi
4/CaO粒子におけるCaO粒子部分の半径(仮定)である。
【0061】
【表2】
【0062】
表2に示すように、本実施例において、BaLi
4/CaO粒子におけるBaLi
4層の平均厚さT
bcbは、前記式(1)を用いて1.3μmと算出される。
【0063】
次に、ガス吸着特性装置を用いて窒素ガスの吸着量を測定し、消防法第3類安全性試験に基づき水素ガス発生量を測定した。
【0064】
窒素吸着は
図7に示す装置を用いて測定した。試料室32にサンプル31を設置後、真空ポンプ36を用いて弁33a,33bを介して、気体溜め34及び試料室32を0.1Pa以下の真空とした。弁33a,33bを閉じた後、弁33cを開放して、容器37の窒素ガスを気体溜め34に導入し、60Paになるように調整した。弁33cを閉じた後、弁33bを開放し、試料室32に窒素ガスを導入し、窒素ガスの圧力変化を圧力測定ゲージ35により測定した。
【0065】
<実施例2〜4>
実施例2〜4はBaLi
4の濃度を3〜10wt%まで変化させた以外は実施例1と同様の方法により調製及び測定を行った。
【0066】
<実施例5>
実施例5は、実施例3で作製したBaLi
4/CaO粒子の圧粉体を用いてガス吸着体を作製したものである。すなわち、Ar雰囲気下、実施例3で作製したBaLi
4/CaO粒子0.5gを直径10mmφの円筒状のダイとパンチを用いて40kNの圧力でプレスし圧粉体を得た。次に、直径20mmφの円筒状のダイとパンチ用いてまず1gの酸化カルシウムを入れ、その上に圧粉体を置き、さらに上から1gの酸化カルシウムを入れ40kNの圧力でプレスしガス吸着体を得た。そして実施例1と同様の方法により測定を行った。
【0067】
<比較例1>
比較例1は、市販のBaLi
4吸着材を前記同様の手法で評価したものである。
【0068】
<比較例2,3>
比較例2,3は、BaLi
4を予めホットプレート上の坩堝中で500℃に加熱しておき、別途500℃に加熱しておいたCaOをBaLi
4中に加えた以外は、各々実施例3,4と同様の方法により調整及び測定を行った。
【0069】
<考察>
実施例1〜5の窒素吸着量は、比較例1のそれに比べて十分高い値を示し、水素発生量は比較例1のそれに比べて十分低い値を示すことが判る。
【0070】
また、比較例2に比べ、実施例3では、窒素吸着量が増加し、水素発生量が減少していることから、BaLi
4に対してCaOを添加するよりも、CaOにBaLi
4を添加する方が好ましいことが判る。このことは、後者の方が、BaLi
4がより均一にCaO中に混合されるためと考えられる。
【符号の説明】
【0071】
7 ガス吸着体
10 吸着性組成物(ガス吸着材粒子)
10’ ガス吸着材層
11 被覆材
11’ 被覆層
15 添加材粒子
16 ガス吸着性金属
17 水分吸着材
18 被覆層用ガス吸着材