【解決手段】ノックアウト機構は、筒状部材の深さ方向に沿って移動可能に形成され、筒状部材内に突出する突出位置、および筒状部材内から退出する退出位置の間で変位可能に設けられたノックアウトピストンと、該ノックアウトピストンを変位可能に支持するシリンダとを有し、成形後の缶体を缶体保持部の前記筒状部材から排出させる排出位置において、基材の他面側に隣接して、ノックアウトピストンを退出位置から突出位置に向けて変位させるピストン変位手段を設けたことを特徴とする。
前記ガスバルブは、前記ターンテーブルの回転方向に沿った前記排出位置の次位置から前記導入位置までの間の何れか1つ以上の位置に更に形成され、前記導入位置の次位置から前記排出位置の前位置までの間には形成させないことを特徴とする請求項4記載の缶成形装置。
前記ガスバルブは、前記排出位置から、前記筒状部材に成形前の缶体を導入する導入位置までの間にそれぞれ形成され、前記ガス圧調整手段は、前記ガスバルブを介して前記シリンダ内にガスを送り込み、また、前記シリンダ内を吸気して、前記ノックアウトピストンを前記突出位置から前記退出位置に向けて変位させることを特徴とする請求項4または5記載の缶成形装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の缶排出機構を含む缶成形装置について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0020】
まず最初に、缶体の一例であるボトル缶の製造工程の一連の流れを説明する。
図1は、ボトル缶の製造工程の一例を段階的に示したフローチャートである。
図2は、各工程における缶体形状の変化を示す模式図である。
ボトル缶は、板材打ち抜き工程S1、カッピング工程(絞り工程)S2、DI工程(絞りしごき工程)S3、トリミング工程S4、印刷・塗装(缶外面)工程S5、塗装(缶内面)工程S6、ネッキング工程S7をこの順に経て、製缶される。
【0021】
板材打ち抜き工程S1では、例えば、Al合金材料からなる圧延材を打ち抜いて、
図2(a)に示されるような、円板状の板材(ブランク)Wを成形する(打ち抜き加工する)。カッピング工程(絞り工程)S2では、
図2(b)に示されるように、板材Wをカッピングプレスによって絞り加工(カッピング加工)して、カップ状体(缶基材)W1に成形する。DI工程(絞りしごき工程)S3では、DI加工装置によって、
図2(c)に示されるように、カップ状体W1にDI加工(再絞りしごき加工)を施して、缶胴11と缶底14とが一体の有底筒状の缶体W2を成形する。
【0022】
トリミング工程S4では、缶体W2の開口端部11aの高さが不均一であるため、トリミング装置を用いて開口端部11aのトリミング加工を行ない、
図4(d)に示すような、缶胴11の開口端部11aの高さが全周にわたって均等に揃えられた、トリミング加工後の缶体W3を成形する。
【0023】
この後、缶体W3を洗浄して潤滑油等を除去した後に、表面処理を施して乾燥し、次いで、
図2(e)に示すように、缶体W3の外面側11bの印刷および塗装を行い(印刷・塗装(缶外面)工程S5)、その後、缶体W3の内面側11cの塗装を行う(塗装(缶内面)工程S6)。
【0024】
次に、ネッキング金型を用いて、缶胴11の開口端部11a側に、滑らかに傾斜するようにくびれた形状をなすネック部12を成形する(ネッキング工程S7)。更に、ネック部12の開口端部に、ネジツール(成形具)を用いて、キャップの形状に合わせたネジ溝13(
図2(g)を参照)がネック部12に形成される(ネジ成形工程S8)。本実施形態である缶成形装置は、こうしたネッキング工程S7やネジ成形工程S8で用いられるネッキング加工装置である。このようなネッキング加工装置によって、缶胴11の開口端部11a側に、くびれたネック部12を有する缶体(ボトル缶)10が製造される(
図2(f)を参照)。
【0025】
以上のような各工程を経て得られた缶体(ボトル缶)10は、その後、内部に飲料等の内容物が充填され、更にネジ溝13と嵌合してネック部12の開口を覆うキャップが取り付けられ、缶体10の内部が密封される。
【0026】
図3は、缶排出機構を含む缶成形装置(ネッキング加工装置)を示す外観斜視図である。また、
図4は、ターンテーブルとその周縁部分を示す外観斜視図である。更に、
図5は、ターンテーブルの一部を示す要部拡大斜視図である。
缶成形装置(ネッキング加工装置)20は、前述したネッキング工程S7やネジ成形工程S8に用いる缶成形装置であり、回転軸(図示略)や往復動機構(図示略)を備えた本体部21と、この本体部21の回転軸に軸着されたターンテーブル23と、このターンテーブル23に対向するように配されたダイテーブル24とを備えている。また、ターンテーブル23の中心方向の近傍には、摺動リング部材25および固定リング部材26が形成されている。
【0027】
ターンテーブル23は、例えばリング状の平板を備えたテーブル本体(基材)23Aの一面側23aに、缶体のボトム部分を保持可能な複数の缶体保持部31が円環状に配列されたものからなる。このターンテーブル23は、本体部21に形成されたインデックス(図示略)によって回転可能に支持され、回転軸周りを間欠的に回転する。缶体保持部31の構成は後ほど詳述する。
【0028】
摺動リング部材25および固定リング部材26は、それぞれに形成された給気溝や給気管(図示略)によって、ターンテーブル23とともに回転する摺動リング部材25を介して、後述する缶体保持部31の缶体保持機構33(
図7参照)にガス圧を加えることができる。
【0029】
ダイテーブル24は、例えばリング状の平板を備えたテーブル本体24Aのうち、ターンテーブル23に対向する一面側24aに、複数の成型金型41が円環状に配列されたものからなる。このダイテーブル24は、往復動機構(図示略)によって、成形方向であるX軸に沿って移動可能に形成されている。即ち、ダイテーブル24とターンテーブル23との間隔を狭めたり広げたりするように往復動する。なお、ターンテーブル23は、回転することなくX軸に沿って往復動だけ行う。
【0030】
成型金型41は、ターンテーブル23において缶体保持部31に、例えばネック部が未成型の缶体を押し込む缶体挿入位置P1(
図6参照)に対向する位置から、ターンテーブル23の回転方向(
図6中の反時計回り方向Q)に沿って、徐々に缶体10のネック部12(
図2参照)が形成されるように、段階的に成形形状を変化させた複数の成型金型41,41…から構成されている。また、最終段の成型金型41に続けて、ネック部12によって狭められた開口端部にネジ溝13(
図2(g)を参照)を形成するためのネジツール(成形具)61が形成されていてもよい。
【0031】
図6は、ターンテーブルをダイテーブル側から平面視した時の平面図である。
本実施形態のターンテーブル23は、反時計回り方向Qに向けて間欠的に回転する。そして円環状に配された複数の缶体保持部31,31…のうち、ターンテーブル23の外縁部に配されたスターホイール51Aに隣接する位置に達した缶体保持部31は、前工程から送られたネック部が未形成の缶体が押し込まれる(缶体挿入位置P1)。
【0032】
また、スターホイール51Bに隣接する位置に達した缶体保持部31からは、保持されているネック部12が形成された缶体10が押し出される(缶体排出位置P2)。これら缶体挿入位置P1や缶体排出位置P2にある缶体保持部31に対しては、後述する缶体保持機構33やノックアウト機構34が作用する。
【0033】
図7は、缶体保持部の一例を示す要部破断斜視図である。また、
図8は、缶体保持部が缶体排出位置にある時の状態を示す断面図である。また、
図9は、ターンテーブルの缶体挿入位置付近を裏面側から見た時の要部拡大斜視図である。また、
図10は、ターンテーブルの缶体排出位置付近を表面側から見た時の一部破断斜視図である。
缶成形装置(ネッキング加工装置)20は、本発明の缶排出機構40を備えている。缶排出機構40は、缶体10を挿入可能な筒状部材32と、この筒状部材32の深さ方向に沿って移動可能に形成され、筒状部材32内に突出する突出位置(
図8参照)および筒状部材32内から退出する退出位置(
図7参照)の間で変位可能に設けられたノックアウトピストン45と、このノックアウトピストン45を退出位置から突出位置に向けて変位させるピストン変位手段の一例であるガスバルブ(ピストン変位手段)56,56…を有し、このガスバルブ(ピストン変位手段)56,56…は、缶体10を筒状部材32から排出させる缶体排出位置P2(
図6参照)に選択的に形成されている。
【0034】
缶体保持部31は、例えば、
図4(d)に示すトリミング加工後の缶体W3の下部(ボトム部分)を受け止める筒状部材32と、この筒状部材32の内周面32a側に形成された缶体保持機構33と、筒状部材32の底面32b側に形成されたノックアウト機構34とを備えている。筒状部材32の底面32bには、このノックアウト機構34を構成するノックアウトピストン45を貫通させる開口32hが形成されている。
【0035】
缶体保持機構33は、筒状部材32の内周面32aに一部が露呈される伸縮部材42を備えている。伸縮部材42は、例えば、ゴムなどの弾性部材からなり、断面矩形で内部に中空部42aが形成されたリング状部材である。こうした伸縮部材42には、外部から中空部42a内にガス圧を加えるための第一ガス圧調整手段43が摺動リング部材25および固定リング部材26と、給気管35とを介して接続されている。
【0036】
第一ガス圧調整手段43は、例えば、圧縮空気を伸縮部材42の中空部42a内に加えるコンプレッサーから構成される。こうした第一ガス圧調整手段43は、ターンテーブル23に形成された缶体保持部31の位置に応じてその動作が制御される。第一ガス圧調整手段43から伸縮部材42へのガスの供給の開閉制御は、摺動リング部材25と固定リング部材26との相対的な回転位置の変化によって行われる。
【0037】
図11(a)に示すように、缶体保持機構33は、第一ガス圧調整手段43(
図7参照)から伸縮部材42の中空部42a内にガス圧が加えられない状態では、伸縮部材42は本来の形状を保つ。この状態では、筒状部材32の内周面32aから伸縮部材42が突出することがないので、缶体W3の周面に伸縮部材42が当接しない。こうした
図11(a)に示す状態が、筒状部材32に導入された缶体10が缶体保持機構33に係止(保持)されない缶体解放位置とされている。
【0038】
一方、
図11(b)に示すように、第一ガス圧調整手段43(
図8参照)から伸縮部材42の中空部42a内にガス圧が加えられた状態では、伸縮部材42の中空部42a内のガス圧が高められる。これによって、伸縮部材42のうち、筒状部材32の内周面32aに露出した部分が内周面32aから突出(膨出)し、筒状部材32の内周面32aの直径を狭める。この状態では、伸縮部材42の突出部分42bが缶体W3のボトム部分の周面に接し、缶体W3は膨出した伸縮部材42によって挟持される。こうした
図11(b)に示す状態が、筒状部材32に導入された缶体10が缶体保持機構33に係止(保持)された缶体保持位置とされている。
【0039】
ノックアウト機構34は、ノックアウトシリンダ(シリンダ)44と、このノックアウトシリンダ44内で
図7中のX方向に沿って移動可能に支持されたノックアウトピストン45とを備えている。ノックアウトシリンダ44は、略円筒形のシリンダ空間Sを有している。なお、ノックアウトシリンダ(シリンダ)44には、ノックアウトピストン45の移動によりノックアウトシリンダ44内で圧縮された空気を開放するために、調圧穴(ガス抜き穴)58が形成されている。調圧穴58は、例えば、ノックアウトシリンダ44の内部と外部とを連通させる貫通穴であればよい。また、ノックアウトピストン45は、筒状部材32の底面32bに形成された開口32hを介して筒状部材32の内部に挿脱可能に構成されている。
【0040】
ターンテーブル23のテーブル本体(基材)23Aのうち、缶体保持部31が配置された部位には、テーブル本体(基材)23Aの一面側23aと他面側23bとを連通させる開口54が形成されている。こうした開口54は、ノックアウトシリンダ44に形成されたシリンダ空間Sと連通し、このシリンダ空間S内にテーブル本体(基材)23Aの他面側23bから、圧縮空気などのガスによるガス圧を印加できるようにする。
【0041】
また、テーブル本体(基材)23Aの他面側23bのうち、開口54が形成された部分には、ターンテーブル23とともに回転する矩形のスペーサプレート55が複数配列形成されている。こうしたそれぞれのスペーサプレート55には、テーブル本体(基材)23Aに形成された開口54と連通する開口54aが形成されている。
【0042】
ターンテーブル23を構成するテーブル本体(基材)23Aの他面側23bには、更に円板状の固定支持板57が形成されている。固定支持板57は、回転しない固定部材であり、例えば、テーブル本体(基材)23Aの他面側23bに、ターンテーブル23の回転を許容するように、スペーサプレート55を介してテーブル本体(基材)23Aに対して回転可能に形成されている。
【0043】
固定支持板57のうち、成形後の缶体10を缶体保持部31から排出させる缶体排出位置P2(
図6参照)に対応する(重なる)部位から、ターンテーブル23の回転方向Qに沿って缶体挿入位置P1(
図6参照)に対応する(重なる)位置までの間には、ピストン変位手段を構成するガスバルブ(ピストン変位手段)56,56…が形成されている。本実施形態では、ガスバルブ(ピストン変位手段)56,56…は、固定支持板57における缶体排出位置P2、缶体挿入位置P1、およびこの間の位置の3つの位置に対応する(重なる)部位のそれぞれに形成されている(
図9参照)。
【0044】
一方、こうしたガスバルブ(ピストン変位手段)56は、ターンテーブル23の回転方向Qに沿った缶体挿入位置P1(
図6参照)の次位置から、缶体排出位置P1の前位置までの間には形成しない。即ち、ダイテーブル24に成型金型41やネジツール61が配された位置に対向する位置には、ガスバルブ(ピストン変位手段)56は形成しない。
【0045】
ガスバルブ(ピストン変位手段)56は、バルブ本体60と、バルブ本体60の一端側に形成された接続管62と、インナーボディ64と、取付部材65とを備えている。
インナーボディ64は、バルブ本体60内に支持され、内部に圧力内管63が形成されている。圧力内管63は、一端側が接続管62に接続され、他端側が固定支持板57に形成された開口54において開口端として露呈される。取付部材65は、このガスバルブ(ピストン変位手段)56を、固定支持板57に形成された開口54と重なる位置に係止する。
【0046】
こうしたガスバルブ(ピストン変位手段)56の接続管62は、第二ガス圧調整手段(ガス圧調整手段)46に連通されている。第二ガス圧調整手段46は、例えば、圧縮空気を送り込むコンプレッサーや、吸気を行うポンプなどから構成されている。これにより、ノックアウトシリンダ44に形成されたシリンダ空間Sは、ガスバルブ(ピストン変位手段)56を介して第二ガス圧調整手段46によってその内圧が制御される。
【0047】
ガスバルブ(ピストン変位手段)56は、ターンテーブル23のテーブル本体(基材)23Aに形成された開口54を介して、第二ガス圧調整手段(ガス圧調整手段)46とノックアウトシリンダ44のシリンダ空間Sとを連通させる。これによって、シリンダ空間Sは、第二ガス圧調整手段46の動作によって、そのガス圧が高められ、あるいは内部の空気が吸気される。
【0048】
例えば、第二ガス圧調整手段(ガス圧調整手段)46から圧縮空気が供給されると、ガスバルブ(ピストン変位手段)56からテーブル本体(基材)23Aの開口54を介してノックアウトシリンダ44のシリンダ空間Sにガス圧が印加される。これによって、例えばノックアウトピストン45が退出位置(
図7参照)にある時に、ノックアウトシリンダ44に移動可能に支持されているノックアウトピストン45が、シリンダ空間Sの内圧上昇によって突出位置(
図8参照)に変位する。
【0049】
なお、このノックアウトピストン45の退出位置は、本実施形態ではノックアウトピストン45の先端部分が筒状部材32の底面32bとほぼ同一となる位置に設定しているが、これ以外にも、例えば、ノックアウトピストン45の先端部分まで筒状部材32から完全に抜け出た位置であってもよい。また、缶体10を筒状部材32に挿入させる際に、缶体10の缶底14がノックアウトピストン45の先端部分に当接して所定の保持位置まで挿入できないことが無いような範囲で、ノックアウトピストン45の先端部分が筒状部材32の底面32bから突出した位置に退出位置を設定してもよい。
また、ノックアウトピストン45の突出位置は、缶体10の缶底14にノックアウトピストン45の先端部分が接して、缶体10が筒状部材32から完全に抜け出る位置までノックアウトピストン45が突出する範囲に設定されればよい。
【0050】
また、例えば、第二ガス圧調整手段(ガス圧調整手段)46によって吸気が行われると、ガスバルブ(ピストン変位手段)56からテーブル本体(基材)23Aの開口54を介してノックアウトシリンダ44のシリンダ空間Sが吸気される。これによって、例えばノックアウトピストン45が突出位置(
図8参照)にある時に、ノックアウトシリンダ44に移動可能に支持されているノックアウトピストン45が、シリンダ空間Sの減圧によって退出位置(
図7参照)に変位する。
【0051】
固定支持板57は、ガスバルブ(ピストン変位手段)56が取り付けられた部位以外の領域では、スペーサプレート55に対して所定の隙間が形成され、スペーサプレート55の開口55aおよびテーブル本体(基材)23Aの開口54を介してシリンダ空間S内を大気圧状態にする。
【0052】
以上のような構成の本実施形態の缶成形装置20の作用を説明する。
缶成形装置(ネッキング加工装置)20によって、例えば、前工程で成型した缶体W3(
図2(e)参照)の開口側に対して絞り加工を行い、ネック部12を缶体10(
図2(f)参照)を製造する際には、例えば、前工程でボトム部の絞り加工を行った缶体を缶体挿入位置P1(
図6参照)にある缶体保持部31の筒状部材32内に挿入する。
【0053】
こうした缶体挿入時において、缶体挿入位置P1にある缶体保持部31は、ノックアウトシリンダ44のシリンダ空間S内が第二ガス圧調整手段46によって吸気され、ノックアウトピストン45が筒状部材32内から退出した退出位置にされている。また、缶体保持機構33を構成する伸縮部材42は、第一ガス圧調整手段43からガス圧を加えない状態にされ、筒状部材32の内周面32aから伸縮部材42が突出しない缶体解放位置(
図9(a)参照)にある。
【0054】
そして、缶体保持部31の筒状部材32内に缶体10が挿入されたら、第一ガス圧調整手段43から伸縮部材42の中空部42a内にガス圧が加えられ、伸縮部材42の中空部42a内のガス圧が高められる。これにより、伸縮部材42のうち、筒状部材32の内周面32aに露出した部分が内周面32aから突出(膨出)する。そして、缶体解放位置にあった缶体保持機構33は、伸縮部材42が筒状部材32の内周面32aの直径を狭めた缶体保持位置(
図9(b)参照)に変位する。これにより、筒状部材32内に導入された缶体W3の周面が伸縮部材42の突出部分42bによって挟持される。
【0055】
また、缶体W3の挿入前に、予め第二ガス圧調整手段46、例えば吸気ポンプによってノックアウトシリンダ44のシリンダ空間S内が吸気される。これにより、ノックアウトピストン45が、筒状部材32内から退出した退出位置にされる。
【0056】
なお、ノックアウトピストン45は、この缶体挿入位置P1に達する前の缶体排出位置P2において突出位置にされており、ノックアウトピストン45が突出位置にある状態て、この缶体挿入位置P1において缶体W3を缶体保持部31に挿入する油圧などの押圧力によって、ノックアウトピストン45を退出位置に押し込む構成にすることもできる。この場合、第二ガス圧調整手段46から吸気の機能を割愛することができる。缶体W3を缶体保持部31に押し込む押圧力によってノックアウトピストン45を退出位置に押し込む構成にする場合、この缶体挿入位置P1においては、シリンダ空間S内が大気解放される構成にすればよい。
【0057】
この後、ターンテーブル23の間欠的な回転によって、缶体保持部31に支持された缶体10の開口端側が、ダイテーブル24に円環状に配列された成型金型41,41…に順次押し付けられ、段階的に絞り加工される。これによって、ターンテーブル23が1回転する間に、缶体10にネック部12(
図2(f)参照)が形成される。
【0058】
こうした成型金型41,41…およびネジツール61による缶体W3の加工を行う間(缶体保持部31が缶体挿入位置P1から缶体排出位置P2に至るまでの間)、缶体保持部31の筒状部材32内に導入された缶体10は、缶体保持機構33の伸縮部材42によって缶体10がボトム部分の周面で保持(係止)される。
【0059】
また、成型金型41,41…およびネジツール61による缶体W3の加工を行う間、ノックアウトシリンダ44の後端側を外部に露呈させるテーブル本体(基材)23Aに形成された開口54には、シリンダ空間S内の内圧を変化させる第二ガス圧調整手段46に繋がるガスバルブ(ピストン変位手段)56が配置されないので、エアー漏れなどによってシリンダ空間Sの内圧が高まり、予期せぬタイミングでノックアウトピストン45が突出して加工途中の缶体が脱落することを防止することができる。
【0060】
一連の成型金型41,41…およびネジツール61によるネック部12の加工やネジ溝13の形成が完了した缶体10を保持する缶体保持部31が缶体排出位置P2に達すると、缶体保持機構33が第一ガス圧調整手段43(
図7参照)から伸縮部材42に向けてガス圧の印加を停止させる。こうした伸縮部材42に加わるガス圧の制御は、摺動リング部材25と固定リング部材26との相対的な回転位置の変化によって行われる。伸縮部材42に向けてガス圧が加えない状態にすることで、伸縮部材42は筒状部材32の内周面32aから突出することがない本来の形状に戻り、缶体10の挟持を行わない缶体解放位置(
図11(a)参照)に変位する。
【0061】
そして、第二ガス圧調整手段(ガス圧調整手段)46からガスバルブ(ピストン変位手段)56を介してノックアウトシリンダ44のシリンダ空間S内にガス圧が印加される。これによって、例えばノックアウトピストン45が退出位置(
図7参照)にある時に、ノックアウトシリンダ44に移動可能に支持されているノックアウトピストン45が、シリンダ空間Sの内圧上昇によって突出位置(
図8参照)に変位する。
これにより、缶体保持部31の筒状部材32から、加工後の缶体10が排出され、次工程に送られる。
【0062】
缶体10が缶体保持部31排出された後、缶体排出位置P2から缶体挿入位置P1のいずれかの位置において、第二ガス圧調整手段(ガス圧調整手段)46からガスバルブ(ピストン変位手段)56を介してノックアウトシリンダ44のシリンダ空間S内を吸気する。これによって、ノックアウトシリンダ44に移動可能に支持されているノックアウトピストン45が、シリンダ空間Sの減圧によって退出位置(
図7参照)に変位する。
【0063】
以上のように、本実施形態の缶成形装置20では、缶体を缶体保持部31から排出する位置と挿入する位置までの間だけに、ノックアウトピストン45を動作させるガスバルブ(ピストン変位手段)56を形成したので、缶体の加工途中に予期せずノックアウトピストン45が筒状部材32内に突出し、加工途中の缶体を脱落させるといった誤作動を確実に防止することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0065】
例えば、上述した実施形態では、シリンダ空間内のガス圧を高めたり吸気したりすることで、ノックアウトピストンを動作させているが、これ以外にも、例えば、カム機構やバネ機構などの機械的な動作装置によって、ノックアウトピストンを直接操作してもよい。また、ソレノイドなどの電磁移動機構を用いることもできる。
【0066】
また、例えば、上述した実施形態では、ダイテーブル24に配列された複数の成型金型41として、缶体の開口端側にくびれたネック部を形成する金型の例を挙げたが、成型金型はこれに限定されるものでは無く、缶体に任意の形状を付与する金型であればよい。また、ボトルキャップ取付のためのネジ加工ユニットなど、任意の缶体加工ユニットを配置することもできる。