特開2017-213639(P2017-213639A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-213639ロボット減速機の状態監視装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-213639(P2017-213639A)
(43)【公開日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】ロボット減速機の状態監視装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20171110BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20171110BHJP
【FI】
   B25J19/06
   G05B23/02 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-109058(P2016-109058)
(22)【出願日】2016年5月31日
【新規性喪失の例外の表示】申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(72)【発明者】
【氏名】川 井 淳
(72)【発明者】
【氏名】吉 村 雅 人
(72)【発明者】
【氏名】原 田 正
(72)【発明者】
【氏名】福 田 克 海
【テーマコード(参考)】
3C223
3C707
【Fターム(参考)】
3C223AA12
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB03
3C223FF35
3C223FF46
3C223GG01
3C223HH02
3C707BS09
3C707HS27
3C707HT26
3C707KS37
3C707LW03
3C707MS15
3C707MS24
(57)【要約】
【課題】ハーモニックドライブで構成されたロボット減速機の劣化状態を適切に監視すること。
【解決手段】本装置1は、ロボット10のモータ電流を計測するための電流計測手段2と、モータ電流の計測データを記憶するための記憶手段3と、記憶手段3に記憶された複数の計測データを比較するためのデータ比較手段4と、を備える。電流計測手段2は、ロボット10の同一内容の動作に関してモータ電流を計測する。データ比較手段4は、同一内容の動作の中の停止維持状態に関する複数の計測データを比較する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの減速機の劣化状態を監視するための状態監視装置であって、
前記ロボットのモータ電流を計測するための電流計測手段と、
前記モータ電流の計測データを記憶するための記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の計測データを比較するためのデータ比較手段と、を備え、
前記電流計測手段は、前記ロボットの同一内容の動作に関して前記モータ電流を計測するように構成されており、
前記データ比較手段は、前記同一内容の動作の中の停止維持状態に関する前記複数の計測データを比較するように構成されている、ロボット減速機の状態監視装置。
【請求項2】
前記データ比較手段は、前記同一内容の動作の中の停止維持状態に関する前記複数の計測データの変動幅が所定値を超えるか否かを判断するための判断手段を含む、請求項1記載のロボット減速機の状態監視装置。
【請求項3】
前記判断手段によって前記複数の計測データの変動幅が所定値を超えたと判断された場合に警報を発するための警報手段をさらに備える、請求項2記載のロボット減速機の状態監視装置。
【請求項4】
前記データ比較手段で比較される前記複数の計測データを重畳して表示するための表示手段をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のロボット減速機の状態監視装置。
【請求項5】
ロボットの減速機の劣化状態を監視する状態監視方法であって、
前記ロボットのモータ電流を計測する電流計測工程と、
前記モータ電流の計測データを記憶する記憶工程と、
前記記憶工程で記憶された複数の計測データを比較するデータ比較工程と、を備え、
前記電流計測工程において、前記ロボットの同一内容の動作に関して前記モータ電流を計測し、
前記データ比較工程において、前記同一内容の動作の中の停止維持状態に関する前記複数の計測データを比較する、ロボット減速機の状態監視方法。
【請求項6】
前記データ比較工程は、前記同一内容の動作の中の停止維持状態に関する前記複数の計測データの変動幅が所定値を超えるか否かを判断する判断工程を含む、請求項5記載のロボット減速機の状態監視方法。
【請求項7】
前記判断工程において前記複数の計測データの変動幅が所定値を超えたと判断された場合に警報を発する警報工程をさらに備える、請求項6記載のロボット減速機の状態監視方法。
【請求項8】
前記データ比較工程で比較される前記複数の計測データを重畳して表示する表示工程をさらに備える、請求項5乃至7のいずれか一項に記載のロボット減速機の状態監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの減速機の劣化状態を監視するための状態監視装置および方法に係り、特に、ハーモニックドライブ(登録商標)で構成された減速機の劣化状態を監視するための状態監視装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットの減速機は、運転時間の経過とともに摩耗等により劣化するため、劣化状態を監視して、減速機の故障を未然に防止することが必要である。
【0003】
一般的に、減速機の劣化をロボット動作中のモータ電流の波形から特定することは難しいため、従来は、保守点検時に減速機から採取したグリスの中の鉄粉の濃度に基づいて、減速機の劣化状態を特定している。
【0004】
しかしながら、減速機がハーモニックドライブで構成されている場合には、グリスの交換などの保守点検作業ができない。このため、ハーモニックドライブで構成された減速機においては、グリス中の鉄分濃度から劣化状態を把握することができない。
【0005】
また、特許文献1には、ロボットの駆動機構にかかる負荷をモニタして、ロボットの寿命予測、予防保守等に利用するようにした技術が提案されており、この従来提案の技術は、モータの駆動電流をサンプリングする手段を備えている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、サンプリングしたモータの駆動電流値を、モータ軸が出力する駆動トルクを算出するために使用するものであって、モータ電流の波形に基づいて減速機の劣化状態を監視するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3357143号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、ハーモニックドライブで構成されたロボット減速機の劣化状態を適切に監視することができる状態監視装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、ロボットの減速機の劣化状態を監視するための状態監視装置であって、前記ロボットのモータ電流を計測するための電流計測手段と、前記モータ電流の計測データを記憶するための記憶手段と、前記記憶手段に記憶された複数の計測データを比較するためのデータ比較手段と、を備え、前記電流計測手段は、前記ロボットの同一内容の動作に関して前記モータ電流を計測するように構成されており、前記データ比較手段は、前記同一内容の動作の中の停止維持状態に関する前記複数の計測データを比較するように構成されている、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記データ比較手段は、前記同一内容の動作の中の停止維持状態に関する前記複数の計測データの変動幅が所定値を超えるか否かを判断するための判断手段を含む、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記判断手段によって前記複数の計測データの変動幅が所定値を超えたと判断された場合に警報を発するための警報手段をさらに備える、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1乃至第3のいずれかの態様において、前記データ比較手段で比較される前記複数の計測データを重畳して表示するための表示手段をさらに備える、ことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第5の態様は、ロボットの減速機の劣化状態を監視する状態監視方法であって、前記ロボットのモータ電流を計測する電流計測工程と、前記モータ電流の計測データを記憶する記憶工程と、前記記憶工程で記憶された複数の計測データを比較するデータ比較工程と、を備え、前記電流計測工程において、前記ロボットの同一内容の動作に関して前記モータ電流を計測し、前記データ比較工程において、前記同一内容の動作の中の停止維持状態に関する前記複数の計測データを比較する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、前記データ比較工程は、前記同一内容の動作の中の停止維持状態に関する前記複数の計測データの変動幅が所定値を超えるか否かを判断する判断工程を含む、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の第7の態様は、第6の態様において、前記判断工程において前記複数の計測データの変動幅が所定値を超えたと判断された場合に警報を発する警報工程をさらに備える、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第8の態様は、第5乃至第7のいずれかの態様において、前記データ比較工程で比較される前記複数の計測データを重畳して表示する表示工程をさらに備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ハーモニックドライブで構成されたロボット減速機の劣化状態を適切に監視することができる状態監視装置および方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態によるロボット減速機の状態監視装置のブロック図を、監視対象の減速機を備えたロボットと共に示した図。
図2A図1に示したロボット減速機の状態監視装置の表示手段における表示画面の一例(減速機の劣化が無い状態)を示した図。
図2B図1に示したロボット減速機の状態監視装置の表示手段における表示画面の他の例(減速機の劣化がある状態)を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態によるロボット減速機の状態監視装置および状態監視方法について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示した本実施形態によるロボット減速機の状態監視装置1は、関節型ロボット10の減速機の劣化状態を監視するものであり、この関節型ロボットの減速機10は、ハーモニックドライブで構成されている。上述したように、ハーモニックドライブで構成された減速機の場合、グリスの交換などの保守点検作業ができないため、グリス中の鉄分濃度から劣化状態を把握することができない。
【0021】
なお、図1には垂直多関節型ロボット10を示しているが、本実施形態によるロボット減速機の状態監視装置の監視対象は、垂直多関節型ロボットの減速機に限られず、水平多関節型ロボットなどの各種のロボットについて、ハーモニックドライブで構成された減速機の劣化状態を監視することができる。
【0022】
図1に示したように、本実施形態によるロボット減速機の状態監視装置1は、ロボット10のアームを駆動するためのサーボモータの電流を計測するための電流計測手段2を備えている。そして、電流計測手段2で計測されたモータ電流の計測データは、記憶手段3に記憶される。
【0023】
ロボット減速機の状態監視装置1は、さらに、記憶手段3に記憶された複数の計測データを比較するためのデータ比較手段4を備えている。記憶手段3およびデータ比較手段4は、例えばCPUで構成することができる。
【0024】
本実施形態における電流計測手段2は、ロボット10の同一内容の動作に関してモータ電流を計測するように構成されている。すなわち、電流計測手段2は、繰り返し行われる同一内容のロボット動作について、サイクル毎のモータ電流を計測する。
【0025】
ここで、電流計測手段2によってモータ電流が計測される動作には、停止維持状態が含まれている。なお、停止維持状態とは、ロボット10の信号待ちなどの際のロボット停止時の状態であり、例えば、重力分のトルクをモータが補償して現在位置を保持する状態を含むものである。
【0026】
そして、データ比較手段4は、電流計測手段2で計測されて記憶手段に記憶された、同一内容の動作の中の停止維持状態に関する複数の計測データを比較するように構成されている。
【0027】
さらに、データ比較手段4は、同一内容の動作の中の停止維持状態に関する複数の計測データの変動幅が、所定値を超えるか否かを判断するための判断手段5を含んでいる。判断手段5は、例えば、同一内容の動作の中の停止維持状態に関する複数の計測データ(電流値)の最大値と最小値との差が、所定値を超えるか否かを判断する。
【0028】
判断手段5によって複数の計測データの変動幅が所定値を超えたと判断された場合には、判断手段5から警報手段6に信号が送られ、警報手段6から警報が発せられる。
【0029】
ロボット減速機の状態監視装置1は、さらに、データ比較手段4で比較される複数の計測データを重畳して表示するための表示手段7を備えている。
【0030】
図2Aおよび図2Bは、表示手段7による表示例を示しており、同一内容のロボット動作に関する複数の計測データが、表示画面上に重畳して表示されている。
【0031】
図2Aは、ハーモニックドライブで構成されたロボット減速機に劣化が生じていない場合の例であり、図2Bは、同ロボット減速機に劣化が生じている場合の例である。
【0032】
図2Aから分かるように、ロボット減速機に劣化が生じていない場合には、電流計測手段2によって計測された複数の計測データ(電流値)が、停止維持状態(中央の平坦な部分X)を含め、動作サイクルの全体にわたって略一致している。
【0033】
これに対して、ロボット減速機に劣化が生じている場合には、図2Bから分かるように、停止維持状態(中央の平坦な部分X)の前後の動作範囲においては複数の計測データが略一致しているが、停止維持状態中においては、複数の計測データにバラつきが生じている。
【0034】
そこで、本実施形態によるロボット減速機の状態監視装置1は、停止維持状態中の計測データ(電流値)の変動幅をデータ比較手段4で特定すると共に、同変動幅が所定値を超えるか否かを判断手段5で判断することとしている。
【0035】
判断手段5によって同変動幅が所定値を超えたと判断されると、警報手段6によって警報が発せられるので、同警報によって作業員は、ロボット減速機(ハーモニックドライブ)の交換時期が来たこと(或いは交換時期が近いこと)を知ることができる。
【0036】
以上述べたように、本実施形態によるロボット減速機の状態監視装置1によれば、グリス交換時の鉄粉濃度検出による劣化状態の監視という一般的な監視方法を適用できないハーモニックドライブで構成された減速機において、その劣化状態を適切に監視することができる。
【0037】
また、本実施形態によるロボット減速機の状態監視装置によれば、データ比較手段によって特定された停止維持状態中の計測データの変動幅を、随時記憶手段に記憶しておいて、同変動幅の経時変化を監視することにより、ロボット減速機(ハーモニックドライブ)の寿命予測を行うこともできる。
【符号の説明】
【0038】
1 ロボット減速機の状態監視装置
2 電流計測手段
3 記憶手段
4 データ比較手段
5 判断手段
6 警報手段
7 表示手段
10 関節型ロボット
図1
図2A
図2B