【解決手段】研磨材Gが混入された加工用流体(Q)をノズル(21)から噴射させて加工するアブレシブウォータージェット加工装置(1)であって、ノズル(21)に加工用流体を供給する加工用流体供給装置(31)と、ノズルに研磨材Gを供給して加工用流体に混入する研磨材供給装置4と、を有し、研磨材供給装置4は、研磨材Gを貯留する貯留ホッパ(41)と、貯留ホッパ(41)とノズル(21)を連通する研磨材供給配管42と、研磨材供給配管42を流通する研磨材Gの流量を求める研磨材流量測定装置7と、を備え、研磨材流量測定装置7は、研磨材Gが流通する研磨材供給配管42に向けて送信したマイクロ波Mを受信して研磨材Gの流量を計測する。
前記研磨材流量測定装置は、前記研磨材供給配管において前記ノズルに対する距離よりも前記貯留ホッパに対する距離の方が近い上流側を流通する前記研磨材の流量を計測すること、
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアブレシブウォータージェット加工装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、研磨材供給配管内の圧力は、ウォータージェットの噴射圧力や研磨材の流量によって大きく変動し、その結果、一時的に研磨材の供給量が不足または過剰になり、ワークの仕上がり品質にむらが生じる場合がある。特に、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の加工において、ウォータージェット加工中に研磨材の供給量が不足すると、CFRPの積層部にデラミネーションが発生し、不具合を発生させてしまう。
【0006】
このため、このような事態を避けて適正量の研磨材が安定して供給されているかどうかを把握する方法として、例えば、研磨材貯留タンク内の研磨材の質量の時間変化を計測し、その計測結果から単位時間当たりの研磨材の供給量を求めることが考えられるが、研磨材の流量をリアルタイムで把握することは難しいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、前記した問題点を解決すべく、前記問題発生を未然に防ぐ手段として、有効な研磨材の流量をリアルタイムで把握することができるアブレシブウォータージェット加工装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、研磨材が混入された加工用流体をノズルから噴射させて加工するアブレシブウォータージェット加工装置であって、前記ノズルに前記加工用流体を供給する加工用流体供給装置と、前記ノズルに前記研磨材を供給して前記加工用流体に混入する研磨材供給装置と、を有し、前記研磨材供給装置は、前記研磨材を貯留する貯留ホッパと、この貯留ホッパと前記ノズルを連通する研磨材供給配管と、この研磨材供給配管を流通する前記研磨材の流量を求める研磨材流量測定装置と、を備え、前記研磨材流量測定装置は、前記研磨材が流通する前記研磨材供給配管に向けて送信したマイクロ波を受信して当該研磨材の流量を計測すること、を特徴とする。
【0009】
本発明に係るアブレシブウォータージェット加工装置は、前記研磨材流量測定装置によって、前記研磨材が流通する前記研磨材供給配管に向けて送信したマイクロ波を受信して当該研磨材の流量を求めることで、一時的に研磨材の供給量が不足または過剰になったとしても、研磨材供給配管を流通する研磨材の流量をリアルタイムで把握することができる。
【0010】
研磨材の流量は、例えば、研磨材供給配管を流通する研磨材の密度(研磨材が流通して搬送される単位容積の空気中に含まれる多数の研磨材の全体質量)と速度とをパラメータとして算出することができる。研磨材は、密度が高いほどマイクロ波の周波数変化量が大きくなるので出力電圧は低くなり、密度が低いほどマイクロ波の周波数変化量が小さいので出力電圧は高くなる特性を有する。
【0011】
さらに、研磨材は、例えば、研磨材供給配管を流通する研磨材と送信したマイクロ波が同じ方向に流れている場合、研磨材の速度が大きいほどマイクロ波の周波数変化量が小さく、研磨材の速度が小さいほどマイクロ波の周波数変化量が大きくなる特性を有する。
【0012】
このため、本発明に係るアブレシブウォータージェット加工装置は、研磨材の流量(密度および流速)と出力電圧の対応関係を予め求めて設定しておくことで、受信したマイクロ波から得られた出力電圧に基づいて、研磨材の流量をリアルタイムに求めることができる。
【0013】
さらに、本発明に係るアブレシブウォータージェット加工装置は、研磨材の供給量が不足または過剰にならないように監視することができるので、研磨材供給不良によるワークの損傷を効果的に抑制することができる。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のアブレシブウォータージェット加工装置であって、前記研磨材流量測定装置は、前記マイクロ波を送信して受信するマイクロ波送受信手段と、前記受信したマイクロ波に基づく電圧を出力する電圧出力手段と、前記電圧出力手段によって出力された出力電圧と前記研磨材の流量との対応関係を予め記憶した電圧流量換算記憶手段と、この電圧流量換算記憶手段から取得した前記対応関係から前記研磨材の流量を求める研磨材流量算出手段と、を備えたこと特徴とする。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、前記反射波による電圧と前記研磨材の流量の対応関係を記憶した電圧流量換算記憶手段から取得した前記対応関係から前記研磨材の流量を求めることで、研磨材の流量をリアルタイムで算出することができる。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のアブレシブウォータージェット加工装置であって、加工用流体供給装置は、前記加工用流体を流通させ当該加工用流体を前記ノズルへ供給する加工用流体供給配管と、この加工用流体供給配管に設けられ前記加工用流体の流通を規制するバルブと、前記研磨材流量測定装置によって計測された研磨材の流量が予め設定された所定の閾値よりも減少した場合、前記バルブによって前記加工用流体の流通を停止させる研磨材流量監視手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、前記バルブによって前記加工用流体の流通を停止させる研磨材流量監視手段を備えたことで、研磨材の流量が予め設定された所定の閾値よりも減少した場合、加工用流体の流通を自動停止し、研磨材供給不良によるワークの損傷を迅速かつ効果的に抑制することができる。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアブレシブウォータージェット加工装置であって、前記研磨材流量測定装置は、前記研磨材供給配管において前記ノズルに対する距離よりも前記貯留ホッパに対する距離の方が近い上流側を流通する前記研磨材の流量を計測すること、を特徴とする。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、前記研磨材供給配管の上流側を流通する前記研磨材の流量を計測することで、下流側よりも研磨材の流通状態が安定する上流側で計測するため、よりバラつきが少ない状態で研磨材の流量を計測することができる。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアブレシブウォータージェット加工装置であって、前記研磨材流量測定装置は、前記研磨材の流量を表示する流量表示装置を備えたこと、を特徴とする。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、前記流量表示装置を備えたことで、作業者が目視にて研磨材の流量をリアルタイムで容易に監視することができる。
【0022】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアブレシブウォータージェット加工装置であって、前記研磨材は、ガーネットであること、を特徴とする。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、ガーネットは、誘電率が空気よりも格段に高く、空気中に流通されるガーネットと空気との誘電率の差を検出しやすいので、前記研磨材としてガーネットを使用することによって、ジルコンビーズを使用する場合よりも研磨材の流量の計測精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るアブレシブウォータージェット加工装置は、研磨材の流量をリアルタイムで把握することができる。このため、研磨材の供給量が不足または過剰にならないように監視して、研磨材供給不良によるワークの損傷を効果的に抑制することができる。
このため、特に、CFRPの加工において、ウォータージェット加工中に研磨材の流量が低下することによって発生しやすい積層部のデラミネーションを効果的に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態に係るアブレシブウォータージェット加工装置1について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
アブレシブウォータージェット加工装置1は、
図1に示すように、加工用流体Qに研磨材Gを混入し、アブレシブヘッド2に装着されたノズル21からウォータージェットJを噴射させて、加工槽Rの内で水中にクランプされたワークWを切断加工する加工装置である。
【0027】
アブレシブウォータージェット加工装置1は、ノズル21に加工用流体Qを供給する加工用流体供給装置31と、ノズル21に研磨材Gを供給して加工用流体Qに混入する研磨材供給装置4と、加工用流体Qを噴射させる圧力を制御する噴射圧力制御装置32と、制御装置9と、を備えている。
【0028】
アブレシブウォータージェット加工装置1は、ステンレス、MC(モノマー・キャスティング)ナイロン、CFRP、およびチタン合金等の多種多様な材質にハニカム形状や歯車形状等の自在な多種形状の加工を行うことができる。
また、アブレシブウォータージェット加工装置1は、水中で加工を行うことによって、騒音や粉塵等、作業環境への負荷も最小限にとどめることができる。
【0029】
加工用流体Qは、取り扱いの容易性から水を使用しているが、ノズル21から噴射させるウォータージェットJの収束性を向上させる増粘材を添加することもできる。
【0030】
[加工用流体供給装置]
加工用流体供給装置31は、30〜400MPaに加圧した加工用流体Q(超高圧水)をアブレシブヘッド2に供給する装置であり、アブレシブヘッド2に連通する高圧配管31aと、アブレシブヘッド2に供給する加工用流体Qを規制するバルブであるオンオフバルブ31bと、図示しない高圧ポンプと、研磨材Gの流量が減少した場合に加工用流体Qの流通を停止させる研磨材流量監視手段31cと、を備えている。
【0031】
研磨材流量監視手段31cは、研磨材流量測定装置7によって計測された研磨材Gの流量が予め設定された所定の閾値よりも減少した場合は、オンオフバルブ31bを閉じて加工用流体Qの流通を自動停止させる制御装置である。
【0032】
噴射圧力制御装置32は、アブレシブヘッド2に供給する加工用流体Qの圧力を調整して、ノズル21から噴射させるウォータージェットJの噴射圧力を制御する装置であり、図示しない減圧弁を備え、ワークWの材質や用途に応じて適宜調整できるようになっている。
【0033】
アブレシブヘッド2は、高圧配管31aから加工用流体Qが導入される超高圧水導入口22と、この超高圧水導入口22からノズル21まで連通する超高圧水流路23と、この超高圧水流路23に連通して研磨材Gが導入される研磨材導入口24と、を備えている。
【0034】
かかる構成により、加工用流体供給装置31により加工用流体Qが超高圧水導入口22から超高圧水流路23を通ってノズル21まで供給され、研磨材供給装置4およびエアパージ装置5により適量の研磨材Gが研磨材導入口24から導入されて、加工用流体Qに研磨材Gが混入される。そして、この研磨材Gが混入された加工用流体QがウォータージェットJとなってノズル21から噴射されるようになっている。
【0035】
[研磨材供給装置]
研磨材供給装置4は、研磨材Gを貯留する圧力容器からなる貯留ホッパ41と、この貯留ホッパ41とアブレシブヘッド2を連通する研磨材供給配管42と、研磨材供給配管42を流通する研磨材Gに圧送圧力を負荷するエアパージ装置5と、貯留ホッパ41に研磨材Gを補充するための研磨材補充装置6と、研磨材供給配管42を流通する研磨材Gの流量を求める研磨材流量測定装置7と、を備えている。
【0036】
研磨材流量測定装置7は、
図2に示すように、マイクロ波M(M1,M2)を送信(符号M1を参照)して受信(符号M2を参照)するマイクロ波送受信手段71と、受信したマイクロ波M2に基づく電圧を出力する電圧出力手段72と、電圧出力手段72によって出力された出力電圧と研磨材Gの流量との対応関係(
図3(b)参照)を記憶した電圧流量換算記憶手段73と、電圧流量換算記憶手段73から取得した対応関係から研磨材Gの流量を求める研磨材流量算出手段74と、研磨材流量算出手段74によって算出した流量を表示する流量表示装置75と、を備えている。
【0037】
研磨材流量測定装置7は、マイクロ波送受信手段71によって、研磨材Gが流通する研磨材供給配管42に向けてマイクロ波M1を送信し反射するマイクロ波M2を受信して、マイクロ波M2の出力電圧に基づいて研磨材Gの流量を計測する装置である。
【0038】
なお、本実施形態に係る研磨材流量測定装置7は、反射するマイクロ波M2の出力電圧に基づいて研磨材Gの流量を計測するが、これに限定されるものではなく、マイクロ波M2の出力電力、または出力電流に基づいて研磨材Gの流量を計測してもよい。
【0039】
マイクロ波送受信手段71は、研磨材Gが流通する研磨材供給配管42に向けてマイクロ波M1を送信するマイクロ波送信装置71aと、マイクロ波送信装置71aから送信されたマイクロ波M1の反射波であるマイクロ波M2を受信するマイクロ波受信装置71bと、を備えている。
【0040】
マイクロ波送受信手段71は、研磨材供給配管42においてノズル21に対する距離よりも貯留ホッパ41に対する距離の方が近い研磨材供給配管42の上流側に配設され、研磨材流量測定装置7は、研磨材供給配管42の上流側を流通する研磨材Gの流量を計測するようになっている。
【0041】
かかる構成によれば、研磨材流量測定装置7は、研磨材供給配管42における下流側よりも研磨材Gの流通状態が安定する上流側で計測するため、よりバラつきが少ない状態で研磨材Gの流量を計測することができる。
【0042】
つまり、研磨材供給配管42における上流側に配設された貯留ホッパ41から研磨材Gが適正な所定量だけ排出されるため、研磨材供給配管42における下流側よりも貯留ホッパ41の排出口41cにより近い上流側の方が研磨材Gの流通状態が安定しやすくなる。このため、研磨材流量測定装置7は、研磨材供給配管42における研磨材Gの流通状態が安定する上流側で計測することで、よりバラつきが少ない状態で安定して研磨材Gの流量を計測することができる。
【0043】
[研磨材Gの流量と出力電圧の対応関係]
電圧出力手段72は、マイクロ波送信装置71aから送信されたマイクロ波M1が研磨材Gから反射する反射波(M2)に基づいて電圧を出力する電圧変換手段である。
具体的には、研磨材Gの流量は、例えば、研磨材供給配管42を流通する研磨材Gの密度(研磨材Gが流通して搬送される単位容積の空気中に含まれる多数の研磨材Gの全体質量)と速度、および研磨材供給配管42の直径をパラメータとして算出することができる。
【0044】
研磨材Gは、密度が高いほどマイクロ波M2の周波数変化量が大きくなるので、電圧出力手段72からの出力電圧は低くなり、密度が低いほどマイクロ波M2の周波数変化量が小さいので出力電圧は高くなる特性を有する。
このため、研磨材Gの密度と出力電圧は、一定の関係にあることが理解される(研磨材Gの密度と出力電圧の関係)。
【0045】
また、研磨材Gの密度は、研磨材Gの粒径と数を用いて表すことができるため、研磨材Gの粒径を予め設定した粒径(例えば150μm)とすれば、所定の粒径における研磨材Gの流量と出力電圧の関係を実験的に求めておくことで、この出力電圧から研磨材Gの流量をより高精度に算出することができる。
【0046】
研磨材Gの密度は、研磨材供給装置4によって、適正な許容範囲内に管理することが可能である。研磨材Gの密度を適正な許容範囲内に管理すれば、研磨材Gの流量は、研磨材Gの速度と研磨材供給配管42の直径とをパラメータとして算出することができる。
【0047】
研磨材Gは、例えば、研磨材供給配管42を流通する研磨材Gと送信したマイクロ波M1が同じ方向に流れている場合は、研磨材Gの速度が大きいほど研磨材Gから反射したマイクロ波M2の周波数変化量が小さく、研磨材Gの速度が小さいほど反射したマイクロ波M2の周波数変化量が大きくなる特性を有する。
このため、例えば、マイクロ波M2の周波数変化量を電圧(出力電圧)に変換すれば、研磨材Gの速度と出力電圧は、一定の関係にあることが理解される(研磨材Gの流速と出力電圧の関係)。
【0048】
具体的に、研磨材Gの流量と出力電圧の対応関係について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る研磨材流量測定装置7における研磨材Gの流量(横軸)と電圧出力手段72から出力された出力電圧(縦軸)との対応関係を実験的に示し、(a)は、研磨材Gの実測流量に対して出力電圧のバラつき幅と平均出力電圧(Ave[V])との関係を示す表であり、(b)は、研磨材Gの実測流量と平均出力電圧(Ave[V])との関係を示すグラフである。
【0049】
ここで、研磨材Gの実測流量は、所定の時間内(60秒間)に流れる研磨材Gの重量(g)をバッファタンクに貯留して計測したものである。
図3(b)に示すように、平均出力電圧(Ave[V])と研磨材Gの実測流量とが比例関係にあることがわかる。
【0050】
電圧流量換算記憶手段73は、アブレシブウォータージェット加工装置1における研磨材供給配管42を流通する研磨材Gの流量と出力電圧との対応関係を記憶する記憶手段である。
【0051】
研磨材流量算出手段74(
図1参照)は、電圧出力手段72から出力された出力電圧に基づいて、電圧流量換算記憶手段73に記憶された出力電圧と研磨材Gの流量の対応関係から研磨材Gの流量を算出する演算手段である。
例えば、研磨材流量算出手段74は、
図3(b)に示すように、例えば、電圧出力手段72の電圧出力が0〜3.8V(電圧出力レンジ)である場合において、電圧出力手段72から出力された出力電圧が2.00Vであるときは、研磨材Gの流量を185g/minとして算出する。
【0052】
流量表示装置75は、研磨材流量算出手段74が求めた研磨材Gの流量をリアルタイムで表示する装置であり、デジタル表示とアナログメータを併用したり、時系列でグラフに表示したりすることができる。
【0053】
ただし、
図3に示す出力電圧は、研磨材流量測定装置7における測定対象である研磨材Gの大きさ、研磨材Gの材質に起因する誘電率(
図4を参照して後記する)、その他、研磨材供給配管42(
図1参照)の径、使用環境の温度条件等の種々の要因によって変動する。
【0054】
このため、本発明の実施形態に係るアブレシブウォータージェット加工装置1に適用する場合は、実測流量の範囲等の使用目的や研磨材供給配管42(
図1参照)の径等の使用条件に合わせて、キャリブレーション、および電圧出力手段72から出力された出力電圧レンジ(ゲイン)を調整することが望ましい(
図5〜
図6を参照して後記する)。
【0055】
[研磨材Gの誘電率と出力電圧の関係]
研磨材Gは、誘電率が高く流量の検出感度が向上するためガーネットを好適に適用することができるが、ワークWの種類や用途に応じて適宜選択され、アルミナ等を使用してもよい。
【0056】
ガーネットは、誘電率が空気よりも格段に高いと想定される。研磨材Gとしてガーネットを使用することで、研磨材流量測定装置7による出力電圧の感度が向上し、研磨材Gの流量の計測精度を向上させることができる。
【0057】
研磨材流量測定装置7は、研磨材供給配管42内で空気中を流通するガーネットと空気の誘電率の差を検出して、空気中を流通するガーネットの流量を測定する。研磨材Gとして使用されるガーネットは、誘電率が空気よりも格段に高いと想定されるため、ガーネットと空気の誘電率の差を検出しやすいので、ジルコンビーズを使用する場合に比較して、感度が向上し、研磨材Gの流量の計測精度を向上させることができる。
【0058】
図4は、研磨材流量測定装置7における測定感度を検証するために、研磨材Gとしてガーネットを使用した場合における出力感度(V)とジルコンビーズを使用した場合における出力感度(V)とを比較したグラフであり、(a)は、ガーネットの出力特性を示し、(b)は、ジルコンビーズの出力特性を示す。
【0059】
具体的には、
図4(a)は、研磨材供給配管42に研磨材Gとして、粒径がφ0.15mmのガーネットを0.013g(重量)を投下した場合における出力電圧V(縦軸)を示し、
図4(b)は、粒径がφ0.15mmのジルコンビーズを略同量0.011g(重量)を投下した場合における出力電圧V(縦軸)を示す。
【0060】
図4(a)に示すように、ガーネットは出力電圧が約3Vであるのに対し、
図4(b)に示すように、ジルコンビーズは出力電圧が約1Vであるから、ガーネットの方がジルコンビーズよりも出力感度が3倍程度高いことがわかる。
【0061】
[研磨材流量測定装置の動作]
本発明の実施形態に係るアブレシブウォータージェット加工装置1における研磨材流量測定装置7の動作について、
図5と
図6を参照しながら説明する。
図5は、電圧出力手段72の電圧出力レンジに対して、研磨材Gの流量(g/min)における電圧出力手段72から出力された出力電圧の割合(%)を示すグラフであり、縦軸が出力電圧の割合(%)、横軸が時間(sec)である。
【0062】
図5における電圧出力手段72の電圧出力レンジは、アブレシブウォータージェット加工装置1の仕様等に応じて初期設定されるが、研磨材供給配管42(
図1参照)の径等の使用条件に合わせてキャリブレーションを行ってから、ゲインを調整して、例えば、電圧出力レンジを0〜11.3Vとしたものである。
【0063】
なお、
図5では、便宜上、50gの研磨材Gを50秒かけて50秒間で均等に供給するようにした研磨材Gの流量を実測流量50(g/min)として表示したため、研磨材Gの流量によって40〜50秒経過後は実測流量が低下して計測されたので、計測データとしては採用せずに無視するものとする。また、実際に使用する研磨材Gの流量(g/min)は、必要に応じて、適宜補正した数値を適用するものとする。
【0064】
図6は、本発明の実施形態に係るアブレシブウォータージェット加工装置1における研磨材Gの実測流量(g/min)に対する電圧出力手段72から出力された出力電圧(V)の対応関係、および電圧出力手段72の電圧出力レンジに対する出力電圧の割合(%)を示し、(a)は、研磨材Gの実測流量に対して出力電圧のバラつき幅と平均出力電圧(Ave[V])の関係を示す表であり、(b)は、研磨材Gの実測流量と電圧出力手段72の電圧出力レンジに対する出力電圧の割合(%)を示すグラフである。
【0065】
図5と
図6に示すように、研磨材Gの実測流量(g/min)が増加するにつれて、電圧出力手段72の電圧出力レンジに対する出力電圧の割合(%)が高くなり、出力電圧のバラつき幅が増加する傾向があるが(
図5参照)、
図6(a)に示すように、キャリブレーションやゲイン調整によって、出力電圧のバラつき幅を抑制することができる。
【0066】
このようにして、アブレシブウォータージェット加工装置1は、研磨材Gの流量(密度および流速)と出力電圧の対応関係を予め設定することで、電圧出力手段72から出力された出力電圧(V)から研磨材Gの流量を求めることができる。
【0067】
例えば、
図6(b)に示すように、研磨材流量算出手段74は、電圧出力手段72から出力された出力電圧が電圧出力手段72の電圧出力レンジ(0〜11.3V)に対して、30%(2.36V)である場合は、研磨材Gの流量を200g/min、として算出する。
【0068】
[研磨材供給装置の構成]
貯留ホッパ41は、ノズル21に供給された加工用流体Qに混入する適量の研磨材Gを計量してノズル21に供給するための装置である。
貯留ホッパ41は、一定量の研磨材Gを貯留する圧力容器41aと、研磨材補充装置6から研磨材Gが補充される導入口41bと、研磨材Gを排出する排出口41cと、排出口41cの口径を調整するニードルバルブ41dと、ニードルバルブ41dを駆動するアクチュエータ41eと、を備えている。アクチュエータ41eは、例えば、エンコーダ付きの直動アクチュエータを使用して制御装置9で制御する。
【0069】
貯留ホッパ41のアクチュエータ41eにより、ニードルバルブ41dを開く方向(
図1の上方)に移動させると研磨材Gの供給量が増大し、ニードルバルブ41dを閉じる方向(
図1の下方)に移動させると研磨材Gの供給量が減少する。
【0070】
このようにして、研磨材供給装置4は、アクチュエータ41eによりニードルバルブ41dの動作を制御して排出口41cの口径を調整することで、ウォータージェットJに混入する適量の研磨材Gを排出口41cから排出して、研磨材供給配管42を流通する研磨材Gの密度を適正な許容範囲内に管理することができる。そして、排出口41cから排出された研磨材Gは、研磨材供給配管42を通ってエアパージ装置5によりアブレシブヘッド2まで圧送される。
【0071】
研磨材供給配管42は、貯留ホッパ41の排出口41cとアブレシブヘッド2の研磨材導入口24を連結する研磨材Gの供給路となる配管であり、エアパージ装置5から圧縮エアが導入される圧縮エア導入口42aを備えている。
【0072】
エアパージ装置5は、研磨材供給配管42および貯留ホッパ41に圧縮エアを供給して、この圧縮エアにより研磨材供給配管42を流通する研磨材Gに圧送圧力を負荷することによって増加するエアの流量を利用して、貯留ホッパ41に貯留された研磨材Gをアブレシブヘッド2まで圧送する装置である。
【0073】
エアパージ装置5は、エア源Aから貯留ホッパ41に連通する第1のエア流路L1と、この第1のエア流路L1から分岐して研磨材供給配管42に連通する第2のエア流路L2と、第2のエア流路L2を流通する圧縮エアの流量を計測する流量計測器51と、研磨材供給配管42を流通する圧縮エアの圧送圧力を制御する圧送圧力制御装置8と、を備えている。
【0074】
第1のエア流路L1は、エア源Aから空気圧縮機等からなるエア制御装置A1を介して所定の圧力に制御された圧縮エアを、圧送圧力制御装置8を介して貯留ホッパ41まで供給する流路である。
【0075】
第2のエア流路L2は、第1のエア流路L1と貯留ホッパ41との間から分岐して研磨材供給配管42まで連通する流路であり、第2のエア流路L2の途中には流量計測器51が配設されている。研磨材供給配管42に供給される圧縮エアは、流量計測器51で監視している。
【0076】
かかる構成により、エアパージ装置5は、エア源Aから供給された圧縮空気を第1のエア流路L1から貯留ホッパ41に供給し、第1のエア流路L1から分岐した第2のエア流路L2から研磨材供給配管42に圧縮エアを供給することで、ニードルバルブ41dが開いたときの研磨材Gの供給量を安定して制御することができる。
【0077】
つまり、研磨材供給配管42にエアパージ装置5から圧縮エアの供給を行う場合、第2のエア流路L2のみに供給すると、研磨材供給配管42内の圧力が貯留ホッパ41内の圧力より高くなり研磨材Gの供給が阻害されてしまうが、第1のエア流路L1に圧縮エアを供給することによって貯留ホッパ41と研磨材供給配管42の圧力が等しくなるので、安定した供給を行うことができる。
【0078】
また、エアパージ装置5は、研磨材供給配管42に供給される圧縮エアを流量計測器51で監視しているため、研磨材供給配管42に流通する圧縮エアの圧送圧力を好適に設定することができる。
【0079】
したがって、貯留ホッパ41に貯留された研磨材Gが研磨材供給配管42に排出されると、エアパージ装置5により、研磨材供給配管42を流通する研磨材Gに適切に制御された圧送圧力を負荷することができるため、貯留ホッパ41から適切量の研磨材Gをアブレシブヘッド2まで好適に圧送することができる。
【0080】
研磨材補充装置6は、貯留ホッパ41に貯留する研磨材Gを補充する装置であり、研磨材Gが貯留された圧力容器からなる研磨材タンク61と、この研磨材タンク61と貯留ホッパ41を連通する研磨材補充配管62と、研磨材タンク61内に圧縮エアを供給して、この圧縮エアにより研磨材補充配管62を流通する研磨材Gに圧送圧力を負荷するエア供給装置63と、を備えている。
【0081】
エア供給装置63は、エア源Aからエア制御装置A1を介してエア流路L3から0.4MPaの圧縮エアを研磨材タンク61に供給しているため、研磨材タンク61内の内圧により、研磨材タンク61から貯留ホッパ41まで研磨材Gが供給されるようになっている。
【0082】
ここで、エア流路L3から0.4MPaの圧縮エアを研磨材タンク61に供給しているのは、研磨材タンク61に負荷する内圧が研磨材補充配管62の先端部62aに到達するまでに減圧されて、研磨材補充配管62の先端部62aでは大気圧よりも若干高くなるように設定したものである。例えば、研磨材補充配管62の先端部62aにおいて、大気圧を基準として表示すると0.01MPaとする。
【0083】
研磨材補充配管62の先端部62aは、貯留ホッパ41の中で所定の高さに位置するように保持され、貯留ホッパ41の中には、常に一定量のレベルまで研磨材Gが貯留されるようになっている。
【0084】
つまり、研磨材タンク61に内圧を負荷しているため、研磨材Gが研磨材補充配管62の先端部62aに到達していない場合は、研磨材タンク61から貯留ホッパ41に研磨材Gが安定して補充される。
一方、貯留ホッパ41に貯留された研磨材Gの供給量が増大して、研磨材Gが研磨材補充配管62の先端部62aまで到達すると、研磨材補充配管62の先端部62aを塞ぐようになるため、大気圧に抗して研磨材Gを供給することができなくなり、研磨材Gの供給が停止するようになっている。
【0085】
圧送圧力制御装置8は、圧送圧力を段階的に制御する機能を有し、高圧エアパージ用レギュレータ81と、低圧エアパージ用レギュレータ82と、高圧エアパージと低圧エアパージを切り換える切換バルブ83と、を備えている。
【0086】
以上のように構成された本実施形態に係るアブレシブウォータージェット加工装置1は、研磨材流量測定装置7を備えたことで、以下のような作用効果を奏する。
すなわち、アブレシブウォータージェット加工装置1は、研磨材Gの流量と出力電圧の対応関係を予め求めて設定しておくことで、受信したマイクロ波M2から得られた出力電圧に基づいて、リアルタイムに研磨材Gの流量を求めることができる。
【0087】
そして、研磨材Gの流量が予め設定された所定の閾値よりも減少した場合は、オンオフバルブ31bを閉じて加工用流体Qの流通を停止させる研磨材流量監視手段31cを備えたことで、研磨材Gの供給量が不足した場合は自動停止させることができるため、研磨材供給不良によるワークWの損傷を迅速かつ確実に抑制することができる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、適宜変更して実施することが可能である。
例えば、本実施形態においては、研磨材Gの流量をより安定させるために研磨材供給装置4において圧送圧力を負荷するエアパージ装置5を設けたが、これに限定されるものではなく、構成を簡素化することを優先する場合はエアパージ装置5を設けなくてもよい。
【0089】
また、本実施形態において、研磨材Gの流量が予め設定された所定の閾値よりも減少した場合は、オンオフバルブ31bを閉じて加工用流体Qの流通を停止させたが、フィードバック制御によって加工用流体Qの流通を停止させずにアクチュエータ41eを操作して、ニードルバルブ41dを開く方向に移動させて研磨材Gの供給量を増加させてもよい。