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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-213678(P2017-213678A)
(43)【公開日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】ドリルチャック
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/12 20060101AFI20171110BHJP
【FI】
   B23B31/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-109082(P2017-109082)
(22)【出願日】2017年6月1日
(31)【優先権主張番号】10 2016 110 111.7
(32)【優先日】2016年6月1日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】516049733
【氏名又は名称】レーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ヘンクスベアガー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス バウマン
(72)【発明者】
【氏名】ペーター シェンク
【テーマコード(参考)】
3C032
【Fターム(参考)】
3C032BB03
3C032BB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ドリルチャックを改良して、接線方向打撃機構の使用時にも確実に機能するようにすること。
【解決手段】係止装置7は、ほぼ相対回動不能に、しかしチャックボディ2に関して軸方向に移動可能に支承された係止スリーブ8から形成されており、係止スリーブ8は、少なくとも1つのロック部材を有しており、ねじ山付きリング5またはねじ山付きリング5に結合された部分に、少なくとも1つのロック切欠きが少なくとも1つのロック部材を収容するために対応配置されており、少なくとも1つのロック部材は、チャックボディ2に関して軸方向で移動可能に支承された締付けスリーブ1を用いて、少なくとも1つのロック切欠きに噛み合う、ロック配置に対応する位置と、少なくとも1つのロック切欠きから解除された、解除配置に対応する位置との間で調節可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接線方向に負荷可能な打撃穿孔スピンドル(1)において作動するドリルチャックであって、前記打撃穿孔スピンドル(1)に結合されるか、または結合可能なチャックボディ(2)を備え、該チャックボディ(2)内には、チャック軸線(3)に対して傾斜して延びる爪ガイド部(4)が形成されており、該爪ガイド部(4)内に、ねじ山付きリング(5)を用いて調節可能な締付け爪(6)がガイドされており、さらに前記ねじ山付きリング(5)にトルクを伝達するように連結可能な締付けスリーブ(11)と、係止装置(7)とを備え、該係止装置(7)は、前記チャックボディ(2)に関する前記ねじ山付きリング(5)の相対回動を可能にする解除配置と、前記相対回動を妨害または阻止するロック配置との間で移動可能である、ドリルチャックにおいて、
前記係止装置は、ほぼ相対回動不能に、しかし前記チャックボディ(2)に関して軸方向に移動可能に支承された係止スリーブ(8)から形成されており、該係止スリーブ(8)は、少なくとも1つのロック部材(9)を有しており、前記ねじ山付きリング(5)または該ねじ山付きリング(5)に結合された部分に、少なくとも1つのロック切欠き(10)が前記少なくとも1つのロック部材(9)を収容するために対応配置されており、前記少なくとも1つのロック部材(9)は、前記チャックボディ(2)に関して軸方向で移動可能に支承された締付けスリーブ(11)を用いて、前記少なくとも1つのロック切欠き(10)に噛み合う、前記ロック配置に対応する位置と、前記少なくとも1つのロック切欠き(10)から解除された、前記解除配置に対応する位置との間で移動可能であることを特徴とする、接線方向に負荷可能な打撃穿孔スピンドル(1)において作動するドリルチャック。
【請求項2】
前記係止装置(7)は、前記ロック配置において、前記ドリルチャックの解除に対応する回動方向でも、前記ドリルチャックの後締付けに対応する回動方向でも前記相対回動を阻止するように、構成されている、請求項1記載のドリルチャック。
【請求項3】
前記係止スリーブ(8)は、複数のロック部材(9)を備えたロッククラウン(12)を有しており、前記ねじ山付きリング(5)に、複数のロック切欠き(10)を備えた収容クラウン(13)が対応配置されている、請求項1または2記載のドリルチャック。
【請求項4】
前記係止スリーブ(8)が、支持区分(14)を有しており、前記締付けスリーブ(11)が、少なくとも前記ロック配置において前記支持区分(14)に負荷を加える支持ショルダ(15)を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載のドリルチャック。
【請求項5】
前記支持区分(14)は、前記少なくとも1つのロック部材(9)に形成されている、請求項4記載のドリルチャック。
【請求項6】
前記係止スリーブ(8)が、非円形の横断面のガイド区分(16)を有しており、該ガイド区分(16)が、前記チャックボディ(2)の、対応する非円形のチャックボディ区分(17)においてガイドされている、請求項1から5までのいずれか1項記載のドリルチャック。
【請求項7】
前記係止スリーブ(8)が、前記締付け爪(6)のための貫通部(18)を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載のドリルチャック。
【請求項8】
前記係止スリーブ(8)に、戻しばね(19)により負荷が加えられている、請求項1から7までのいずれか1項記載のドリルチャック。
【請求項9】
前記戻しばね(19)が、前記チャックボディ(2)の環状鍔において、または前記チャックボディ(2)に関して軸方向で固定されたスリーブ部分(20)において支持されている、請求項8記載のドリルチャック。
【請求項10】
前記ねじ山付きリング(5)は複数の部分から形成されていて、連行スリーブ(21)と、前記締付け爪(6)に噛み合う締付けリング(22)とから成っており、前記少なくとも1つのロック切欠き(10)が、前記締付けリング(22)に相対回動不能に結合された前記連行スリーブ(21)に形成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のドリルチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接線方向に負荷可能な打撃穿孔スピンドル(Schlagbohrspindel)において作動するドリルチャックであって、打撃穿孔スピンドルに結合されるかまたは結合可能なチャックボディを備え、該チャックボディ内に、チャック軸線に対して傾斜して延びる爪ガイド部が形成されており、該爪ガイド部内に、ねじ山付きリングを用いて調節可能な締付け爪がガイドされており、さらにねじ山付きリングにトルクを伝達するように連結可能な締付けスリーブと、係止装置とを備え、該係止装置は、チャックボディに関するねじ山付きリングの相対回動を可能にする解除配置と、この相対回動を妨害するかまたは阻止するロック配置との間で調節可能である、ドリルチャックに関する。
【0002】
冒頭で述べた形式のドリルチャックは、独国特許出願公開第102013111731号明細書(DE102013111731A1)から看取され得る。上掲の明細書に示された丸型爪ドリルチャックは、軸方向で操作可能な係止装置を有しており、該係止装置は、ねじ山付きリングの、チャックボディに対する相対回動を妨害するかまたは阻止することが望ましい。これによって、締付け爪が穿孔装置の運転時に解除も付加的な緊締もされないことが保証されることが望まれる。しかしこのドリルチャックでは、打撃穿孔運転またはインパクトドライバ運動時に係止装置がロック配置から解除配置へと移行され得ることが判った。このことは一方では工具の解除をもたらし、他方ではドリルチャックの極端な緊締をもたらし得る。
【0003】
独国特許第102010062014号明細書(DE102010062014B3)には、接線方向打撃機構を含む手持ち式工作機械が示されている。上掲の明細書の段落26には、接線方向打撃機構が詳しく説明されているので、接線方向打撃機構に関してはこの箇所を参照されたい。接線方向打撃機構は、通常、打撃穿孔スピンドルを有しており、該打撃穿孔スピンドルには、アンビルが対応して配置されている。このアンビルは、打撃穿孔スピンドルに相対回動不能に結合されている。さらに、機械駆動装置は、回転しながら部分的に接線方向で打撃する運動をアンビルを介して打撃穿孔スピンドルに伝達するハンマを有している。この運転時に一時的に強く高められたトルクが、打撃穿孔スピンドルに連結されたドリルチャックボディに作用する。この高められたトルクによって、ドリルチャックの係止装置が無効にされる虞がある。
【0004】
したがって本発明の課題は、冒頭で述べた形式のドリルチャックを改良して、接線方向打撃機構の使用時にも確実に機能するようにすることである。
【0005】
この課題は、独立請求項1の特徴部に記載の特徴を有するドリルチャックにより解決される。この場合、本発明によれば、係止装置は、ほぼ相対回動不能な、しかしチャックボディに関して軸方向に移動可能に支承された係止スリーブから形成されている。係止スリーブは少なくとも1つのロック部材を有している。この場合、ねじ山付きリングに、または該ねじ山付きリングに結合された部分に少なくとも1つのロック切欠きが少なくとも1つのロック部材を収容するために対応配置されている。さらに、少なくとも1つのロック部材が、チャックボディに関して軸方向に移動可能に支承された締付けスリーブを用いて、少なくとも1つのロック切欠きに噛み合った、ロック配置に対応する位置と、少なくとも1つのロック切欠きから解除された、解除配置に対応する位置との間で調節可能である。この構成には、ドリルチャックが接線方向打撃機構を備えた穿孔機においても使用され得るという利点が結びついている。接線方向打撃機構を備えた穿孔機の運転時に、本発明に係るドリルチャックが意図せずにロック位置から解除位置へとずらされないことが保証されている。
【0006】
これに関連して、係止装置が、ロック配置において相対回動を、ドリルチャックの解除に対応する回動方向でもドリルチャックの後締付けに対応する回動方向でも阻止するように構成されていると有利であることが判った。先行技術から公知のドリルチャックでは、係止装置は穿孔工具の後締付けを許容するように構成されている。したがって公知のドリルチャックでは、回動する締付け爪および該締付け爪に作用する遠心力に基づいて生じる締付け力損失は、後締付けにより補償されることが望ましい。この後締付けは、本発明では阻止されている。なぜならば、接線方向に負荷される打撃穿孔スピンドルの使用時には、ドリルチャックが過度に締め付けられて、使用された工具がもはや解除され得なくなるほど、トルクが高いからである。
【0007】
この場合、少なくとも1つのロック部材が、噛み合っている位置において、少なくとも1つのロック切欠きに形状接続式に噛み合っていると有利である。
【0008】
強化された係止装置を形成するために、係止スリーブが、複数のロック部材を備えるロッククラウンを有していて、ねじ山付きリングに、複数のロック切欠きを備えた収容クラウンが対応配置されていると有利であることが判った。有利にはロック部材の個数はロック切欠きの個数に一致する。
【0009】
係止装置の容易な操作を提供するために、係止スリーブが支持区分を有しており、締付けスリーブが、少なくともロック配置において支持区分に負荷を加えるための支持ショルダを有していると特に有意であることが判った。締付けスリーブが、解除配置でも係止スリーブにより支持されていることも可能である。締付けスリーブの軸方向の調節により、同様に係止スリーブの軸方向の調節も行われる。択一的には、締付けスリーブに連行溝も形成されている。この連行溝内に係止スリーブの支持区分が、締付けスリーブに関して回動可能に収容されている。
【0010】
さらに、支持区分が有利には少なくとも1つのロック部材に形成されている。これにより、ドリルチャックおよび特に係止装置が極めてコンパクトに形成され得る。
【0011】
係止スリーブが、非円形の横断面のガイド区分を有していて、ガイド区分が、チャックボディの、対応する非円形のチャックボディ区分においてガイドされていると有利である。これにより、係止スリーブが確実に、噛み合っている位置と解除された位置との間でチャックボディに沿って移動することができる。有利には、チャックボディの横断面が、係止スリーブの領域において六角形に成形されている。この場合、角の別の個数も可能である。重要であるのは、係止スリーブがチャックボディに対して相対回動不能に支承されていることだけである。
【0012】
ドリルチャックをその軸方向の長さにおいてできるだけ短く形成することができるように、係止スリーブが締付け爪のための貫通部を有していると有利であることが判った。
【0013】
さらに、係止スリーブに、戻しばねにより負荷が加えられていると有利であることが判った。これにより係止スリーブは、戻しばねにより常に噛み合った位置の方向へと押圧される。言い換えると、ドリルチャックは、ロック配置へ移動される必要性を有している。ドリルチャックが解除配置へと移行されると、ロック部材をロック切欠きから押し出すために、ユーザは締付けスリーブを能動的に戻しばねのばね力に抗して軸方向に移動させなければならない。締付けスリーブの解放時に少なくとも1つのロック部材が対応するロック切欠きに整合しないことが生じると、接線方向打撃機構を備えたドリルチャックの作動時に、ロック部材はロック切欠きに関して、再び互いに整合するまで回動させられる。この場合、この場合、戻しばねは、ロック部材を自動的に噛み合った位置へと戻すように押圧する。これにより、ロック位置がユーザにより能動的に生ぜしめられない場合でも、ドリルチャックが自動的に解除位置からロック位置へと移動することが保証されている。
【0014】
有利には、戻しばねは、チャックボディの環状鍔において、またはチャックボディに関して軸方向に固定されたスリーブ部分において支持されている。
【0015】
ドリルチャックの組立てを容易にするために、ねじ山付きリングが複数部分から形成されており、連行スリーブと、締付け爪に噛み合った締付けリング(実際のねじ山付きリング)とから成っていると有利であることが判った。連行スリーブは、相対回動不能にかつ締付けリングに関して軸方向で固定されており、これにより当業者であれば、両方の部分が単独の一体的な部分として、つまり唯1つの複合的なねじ山付きリングとして形成されていてもよいことが判る。
【0016】
以下に、本発明を図面に示した実施の形態につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るドリルチャックをロック配置で示す縦断面図である。
図2図1に示したドリルチャックを解除配置で示す縦断面図である。
図3図1に示したIII−III線の断面図である。
図4図2に示したIV−IV線の断面図である。
図5図1に示したドリルチャックを、締付けスリーブおよびスリーブ部分なしに示す側面図である。
図6】本発明に係るドリルチャックの別の実施の形態を示す図である。
図7】本発明に係るドリルチャックの別の実施の形態を示す図である。
【0018】
図面には、チャックボディ2を備えたドリルチャックが示されている。チャックボディ2は、接線方向で付加可能な打撃穿孔スピンドル1において作動するために設けられている。図1から図5に示した実施の形態では、打撃穿孔スピンドル1は、チャックボディ2に固く結合されおり、チャックボディ2に一体的に形成されている。打撃穿孔スピンドル1は、接線方向打撃機構のアンビルのための接続部23を有している。この接続部23は本実施の形態では、アンビルの回動固定された位置を設定する2つの扁平加工部24により形成されている。図6および図7に示した実施の形態では、択一的なスピンドル収容部25がチャックボディ2内に形成されている。スピンドル収容部25には、対応する打撃穿孔スピンドル1が接続可能である。図6に示した実施の形態では、収容部ねじ山26を備えてスピンドル収容部25が成形されており、図7に示した実施の形態では、非円形の横断面を有するスピンドル収容部25がスピンドル頸部を収容するために成形されている。
【0019】
ドリルチャックの全ての実施の形態において、チャック軸線3に対して傾斜して延びる複数の爪ガイド部4が形成されている。これらの爪ガイド部4内に複数の締付け爪6がガイドされている。締付け爪6は、歯列27を有している。歯列27は、ねじ山付きリング5の締付けねじ山28に噛み合っている。ねじ山付きリング5は、示された実施の形態では複数の部分から形成されており、連行スリーブ21と、締付け爪6に噛み合っている締付けリング22(実際のねじ山付きリング)とから成っている。これらの締付け爪6は、その間に工具収容部を形成する。ねじ山付きリング5の回動は、締付け爪6の間に配置されている穿孔工具またはドライバ工具を締め付けるかまたは解放するために、締付け爪6の開放または閉鎖を生ぜしめる。ねじ山付きリング5を外部から回動させることができるように、トルクを伝達するように連結可能な締付けスリーブ11が設けられている。この締付けスリーブ11は、ユーザによって有利には手で操作可能である。
【0020】
例示的に図示されたドリルチャックは、さらに係止装置7を有している。この係止装置7は、チャックボディ2に関するねじ山付きリング5の相対回動を可能にする解除配置もしくは締付け配置と、チャックボディ2に関するねじ山付きリング5のこの相対回動を妨害または阻止するロック配置との間で調節可能である。
【0021】
係止装置7は、チャックボディ2に関して実質的に相対回動不能に配置された係止スリーブ8を有している。しかしこの係止スリーブ8は、軸方向でチャックボディ2に関して移動可能に支承されている。係止スリーブ8は、少なくとも1つのロック部材9を有している。この場合、図示された実施の形態では、係止スリーブ8は、複数のロック部材9を備えたロッククラウン12を有している(図5)。さらに、係止装置7は、ねじ山付きリング5、この場合はその連行スリーブ21に対応配置された少なくとも1つのロック切欠き10を少なくとも1つのロック部材9を収容するために有している。図示された実施の形態では、連行スリーブ21は、複数のロック切欠き10を備えた収容クラウン13を有している。この場合、ロック切欠き10の個数はロック部材9の個数に相当する。
【0022】
図1および図2に示した対比図から判るように、締付けスリーブ11はチャックボディ2に関して軸方向で調節可能に支承されている。軸方向で前方に向かって、つまりドリルチャックの、打撃穿孔スピンドル1とは反対の側に向かう方向で、締付けスリーブ11は、有利には回動可能に支承された保護キャップ29により支持されている。保護キャップ29自体は、止め輪30によりチャックボディ2に固定されている。後方に向かって、つまりドリルチャックの、打撃穿孔スピンドル1に面した側に向かう方向で、締付けスリーブ11の運動は有利にはチャックボディ2のストッパ31により制限されている。しかし、締付けスリーブ11の運動がねじ山付きリング5により制限されることも可能である。
【0023】
締付けスリーブ11の、打撃穿孔スピンドル1に面した側には、支持ショルダ15が形成されている。この支持ショルダ15は、示された実施の形態では、内側に位置する環状鍔として成形されている。この環状鍔は、たとえば簡単な形式で、締付けスリーブ11の旋盤加工により製造され得る。この支持ショルダ15には、係止スリーブ8の支持区分14が支持されているので、締付けスリーブ11の軸方向の移動時に、係止スリーブ8の連行が行われる。係止スリーブ8を軸方向で前方に向かってかつ軸方向で後方に向かって連行することができるように、択一的には、支持ショルダ15が締付けスリーブ11に形成された環状溝として成形されていることも可能である。締付けスリーブ11の軸方向の移動により、係止スリーブ8に対応配置されたロック部材9が、少なくとも1つのロック切欠き10に噛み合う、ロック配置に対応する位置と、少なくとも1つのロック切欠き10から解除された、解除配置に対応する位置との間で調節され得る。
【0024】
係止スリーブ8に設けられた支持区分14もしくは複数の支持区分14は、この実施の形態では、各ロック部材9に形成されている。この場合、支持区分14は、チャック軸線3に関して半径方向に突出する鍔の形態で成形されている。支持区分14もしくは鍔は、ロック配置または解除配置において、少なくとも部分的に締付けスリーブ11の支持ショルダ15に沿ってガイドされ、これにより、ねじ山付きリング5の、チャックボディ2に関する相対回動を可能にすることができる。
【0025】
係止スリーブ8には、軸方向で後方に向かって戻しばね19によって負荷が加えられているので、この戻しばね19の戻し力は係止スリーブ8に常に締付け爪6に向かう方向で作用している。言い換えると、ロック部材9を備えたロッククラウン12が、戻しばね19によって、ロック切欠き10を備えた収容クラウン13内に押し込まれる。したがって、ねじ山付きリング5の回動後に、ロック部材9がロック切欠き10に整合しないようにロッククラウン12が位置決めされている場合、ロッククラウン12はねじ山付きリング5に係合しないで、単に当接している。今、ドリルチャックが接線方向のインパクトドライバ運転または接線方向の打撃穿孔運転で駆動されると、ねじ山付きリング5をチャックボディ2に関して、ひいては係止スリーブ8に関して調節するトルクが作用する。しかしこの調節は、ロック部材9がロック切欠き10に整合し、かつロッククラウン12が戻しばね19の力により噛み合った位置へと調節されるまでしか行われない。この噛み合った位置では、チャックボディ2に関するねじ山付きリング5の相対回動が、ドリルチャックの解除に対応する回動方向でも、ドリルチャックの後締付けに対応する回動方向でも阻止されている。
【0026】
係止スリーブ8に戻し力を作用させる戻しばね19は軸方向で後方に向かって、チャックボディに関して軸方向で固定されているスリーブ部分20において支持されている。このスリーブ部分は、有利にはチャックボディ2に圧着されている。この場合、チャックボディは、このために、細かい歯列32を有している(図5)。この細かい歯列32は、圧入すべきスリーブ部分20の材料内に埋め込まれるので、両構成部材は互いに固く結合されている。この場合、スリーブ部分20は、打撃穿孔スピンドル1とは反対に向いた側に、ガイド鍔33を有している。このガイド鍔33において締付けスリーブ11の端部区分34がガイドされている。
【0027】
ドリルチャックをコンパクトに形成することができるように、係止スリーブ8は、特に図3から判るように、締付け爪6のための貫通部18を有している。図3では、係止スリーブ8が、非円形の横断面のガイド区分16を有していることも判る。このガイド区分16は、該ガイド区分16に対応する、チャックボディ2に設けられた非円形のチャックボディ区分17においてガイドされている。この実施の形態では、ガイド区分16およびチャックボディ区分17は、六角形に形成されているので、係止スリーブ8は軸方向でチャックボディ2に関して移動可能に、しかしチャックボディ2に関して相対回動不能に支承されている。
【0028】
図4および図5から判るように、ねじ山付きリング5、特にねじ山付きリング5の連行スリーブ21は、少なくとも1つの回動部材収容部35、この場合にはまさに3つの回動部材収容部35を有している。これらの回動部材収容部35内には、締付けスリーブ11に対応配置された少なくとも1つの回動部材36が収容可能である。この場合、回動部材収容部35の個数は、回動部材36の個数に一致する。回動部材36は、少なくとも解除配置において、ねじ山付きリング5の回動部材収容部35内に収容されている。この場合、締付けスリーブ11の回動、ひいては回動部材36の回動が、ねじ山付きリング5もしくは連行スリーブ21の連行をもたらす。
【0029】
以下に本発明に係るドリルチャックの機能形式をもう一度説明する。穿孔工具またはドライバ工具を工具収容部内に締め付けることができるように、ユーザにより締付けスリーブ11が打撃穿孔スピンドル1の方向に戻しばね19のばね力に抗して移動され得る。締付けスリーブ11は、その支持ショルダ15により係止スリーブ8の支持区分14を連行し、回動部材36は、連行スリーブ21の回動部材収容部35内に進入する。いま、締付けスリーブ11が、締付けに対応する回動方向でチャックボディ2に対して回動させられると、締付け爪6により形成された工具収容部が、該締付け爪6の締付け面が穿孔工具またはドライバ工具のシャフトに当て付けられるまで、締められる。締付けスリーブ11は、次いで自動的に戻しばね19のばね力により再び前方に向かって押圧される。ロック部材9がロック切欠き10に整合する限り、これによりドリルチャックは自動的にロック配置へと移行される。ロック部材9がロック切欠き10に整合しない場合、ロッククラウン12は収容クラウン13の端面上に当接している。しかし次いでドリルチャックの接線方向打撃運転時に、ロッククラウン12の、収容クラウン13に関する自動的な回動を引き起こすトルクが導入される。したがって、(たとえば短時間後に)ロック部材9が再びロック切欠き10に整合する場合、ロック部材9はロック切欠き10内に戻しばね19により作用する力に基づいて噛み合う。したがって、本発明に係るドリルチャックによりロック配置が自動的に生じる。
【0030】
ドリルチャックを再び解除するためには、締付けスリーブ11が改めて後方に向かって戻しばね19の力に抗して移動され得る。この場合、係止スリーブ8は、改めて連行され、これによりロック部材9が解除された位置へと移動する。いまや、解除配置において相対回動不能にねじ山付きリング5に結合された締付けスリーブ11が、穿孔工具またはドライバ工具が再び解放されるまで、解除に対応する回動方向に回動され得る。
【符号の説明】
【0031】
1 打撃穿孔スピンドル(接線方向の打撃穿孔スピンドル)
2 チャックボディ
3 チャック軸線
4 爪ガイド部
5 ねじ山付きリング
6 締付け爪
7 係止装置
8 係止スリーブ
9 ロック部材
10 ロック切欠き
11 締付けスリーブ
12 ロッククラウン
13 収容クラウン
14 支持区分
15 支持ショルダ
16 ガイド区分
17 チャックボディ区分
18 貫通部
19 戻しばね
20 スリーブ部分
21 連行スリーブ
22 締付けリング
23 接続部
24 扁平加工部
25 スピンドル収容部
26 収容部ねじ山
27 歯列
28 締付けねじ山
29 保護キャップ
30 止め輪
31 ストッパ(チャックボディ)
32 細かい歯列
33 ガイド鍔
34 端部区分
35 回動部材収容部
36 回動部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】