【解決手段】シート樹脂(10)の中央部を凸となるように加圧してシート樹脂(10)を曲げたまま、被供給物であるワーク(W)に対してシート樹脂(10)の中央部からシート樹脂(10)を押し付ける。ここでは、ローラ(15)によってシート樹脂(10)の中央部が加圧されてワーク(W)にシート樹脂(10)が押し付けられる。その後、ワーク(W)に対してシート樹脂(10)の外周部へ向かってシート樹脂(10)を押し付ける。ここでは、ローラ(15)によってワーク(W)にシート樹脂(10)を押し付ける際に、ローラ(15)を一方向に移動させた後、ローラ(15)を他方向に移動させる。
請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂供給方法によって前記シート樹脂が供給された前記被供給物を成形金型にセットし、前記成形金型のキャビティ内で前記シート樹脂を加熱および加圧させることを特徴とする樹脂成形方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウェハや大型基板の樹脂成形(樹脂封止)において用いられるシート樹脂が特に大判の場合、適切な状態で供給(セット)することが困難である。例えば、ワークや成形金型などの被供給物に対してシート樹脂を適切な位置に供給しようとした場合、被供給物とシート樹脂との相対位置の位置ズレが発生しやすく、キャビティ内で樹脂が充填されるときに不要な樹脂流れが生じることが考えられる。また、シート樹脂の位置が予期せず大きくずれるとキャビティの外側領域(金型部分)でシート樹脂を挟み込んでしまうことが考えられる。このような状態で樹脂成形を行うと成形不良となるおそれがある。また、ワークやフィルムなどの被供給物とシート樹脂との間にエアが挟み込まれたままであると、成形時にそのエアが膨張し、成形不良の原因となるおそれもある。
【0005】
本発明の一目的は、シート樹脂を適切な状態で供給することのできる技術を提供することにある。なお、本発明の一目的および他の目的ならびに新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかにしていく。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。本発明の一解決手段に係る樹脂供給方法は、(a)シート樹脂の中央部を凸となるように加圧して前記シート樹脂を曲げたまま、被供給物に対して前記シート樹脂の中央部から前記シート樹脂を押し付ける工程と、(b)前記(a)工程の後に、前記被供給物に対して前記シート樹脂の外周部へ向かって前記シート樹脂を押し付ける工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
ここで、前記(a)工程では、ローラによって前記シート樹脂の中央部が加圧されて前記被供給物に前記シート樹脂が押し付けられ、前記(b)工程では、前記ローラによって前記被供給物に前記シート樹脂を押し付ける際に、前記ローラを一方向に移動させた後、前記ローラを他方向に移動させることがより好ましい。これによれば、シート樹脂と被供給物との間のエアを外側に押し出しながら被供給物に対してシート樹脂を供給することができる。
【0008】
また、前記(a)工程では、前記被供給物の中央部に前記シート樹脂の中央部を位置合わせして、前記被供給物に前記シート樹脂を押し付けることがより好ましい。これによれば、被供給物とシート樹脂との相対位置の位置ズレが発生し難くなり、被供給物に対してシート樹脂を適切な位置に供給することができる。
【0009】
また、前記(a)工程および前記(b)工程では、前記シート樹脂の前記被供給物側とは反対側にある保護フィルムを介して前記被供給物に対して前記シート樹脂を押し付け、前記(b)工程の後に、前記保護フィルムを剥離することがより好ましい。これにより、押し付けられるシート樹脂を保護することができる。
【0010】
また、前記シート樹脂が供給された前記被供給物を成形金型にセットし、前記成形金型のキャビティ内で前記シート樹脂を熱硬化させることがより好ましい。また、前記被供給物がワークまたはリリースフィルムであることがより好ましい。
【0011】
被供給物に対してシート樹脂が適切な位置に供給されているので、キャビティの外側領域(金型部分)でシート樹脂の挟み込みを防止することができる。また、樹脂成形においてシート樹脂が成形金型のキャビティ内で充填されるときに不要な樹脂流れの発生を防止することができる。このようにシート樹脂を適切な位置に供給することで、樹脂成形において成形不良の発生を防止することができる。また、エアの挟み込みを防止することで、樹脂成形においてボイドなどの成形不良の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。本発明の一解決手段によれば、シート樹脂を適切な状態で供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0015】
(実施形態1)
本発明の実施形態に係る樹脂供給方法について、
図1〜
図7を参照して説明する。
図1〜
図7は、樹脂供給方法の説明図であり、被供給物に供給されるシート樹脂10を中心とした模式的断面を示す。なお、本実施形態では、被供給物としてワークWを用いる。
【0016】
まず、
図1に示すように、シート樹脂10を準備する。シート樹脂10は、例えばエポキシ系などの熱硬化性樹脂をシート状に半硬化(Bステージ)させて成形したものである。シート樹脂10は、この両面(一方面を上面、他方面を下面とする)に貼り付けられた保護フィルム11、11を有する。保護フィルム11は、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)をフィルム状に成形したものである。このようなシート樹脂10は、例えばリールに巻き付けられており、適宜のサイズ(樹脂量)に裁断加工される。
【0017】
続いて、
図2に示すように、シート樹脂10の下面側の保護フィルム11を剥離する。これにより、シート樹脂10の下面がワークWと接するよう露出される。続いて、
図3に示すように、樹脂シート10が供給されるワークW(被供給物)を準備し、これをステージ12にセットする。ワークWは、例えばキャリア13(ウェハ、テンポラリキャリア、基板など)上にチップ部品14(例えばチップ状の半導体などの電子部品)がマトリクス状に設けられたものである。
【0018】
そして、シート樹脂10の上面側の中央部を加圧してシート樹脂10を曲げる。なお、シート樹脂10は、
図3に示すように中央部分が凸となるような折り曲げる状態のみならず、中央部分が湾曲して凸となるように曲げることもできる。同図に示す場合において、具体的には、図示しないハンドによりシート樹脂10の両端を保持しながら、その中央部をローラ15によって加圧することで、シート樹脂10の中央部が下側に凹まされて(換言すると、凸となるようにされて)、シート樹脂10がV字状に折り曲げられる。このため、シート樹脂10の中央部をワークWの中央部に位置合わせ(センタリング)することが容易となる。なお、ローラ15としては、例えば、金属性、ゴム製又はプラスチック製の円筒状部材の中心に軸を設けてその円筒状部材を回転可能に構成されたものを用いることができる。これにより、シート樹脂10上からローラ15で加圧してエアを押し出すことができる。また、上述の円筒状部材として、多数の空孔を含むスポンジ状の材質を用いることもできる。これによれば、シート樹脂10を被供給物の凹凸に倣わせながらセットすることができる。また、ローラ15を用いない加圧方法としては、弾性部材を用いたり、エアブローとしての押し付けや空気圧による加圧で行ったりすることができる。
【0019】
続いて、
図4に示すように、シート樹脂10を折り曲げたまま、シート樹脂10の中央部からワークWに対してシート樹脂10を押し付ける。本実施形態では、押し付け用のローラ15によって、シート樹脂10の上面側(ワークW側とは反対側)にある保護フィルム11を介してワークWに対してシート樹脂10を押し付けている。保護フィルム11を介して押し付けることでローラ15とシート樹脂10との接触によりこれらが汚れることから保護することができる。具体的には、シート樹脂10がローラ15に接触することにより、シート樹脂10の成分がローラ15に付着するのを防止することができる。また、例えば、ローラ15に付着した付着物をシート樹脂10の表面に転写してしまうことも防止することができる。また、ローラ15によってシート樹脂10の中央部がワークWの中央部に位置合わせされた状態でシート樹脂10の中央部が加圧される。そして、加圧されたまま、ワークWにシート樹脂10が押し付けられる。これにより、例えばワークWとシート樹脂10とを一端側において位置合わせしてセットするような場合と比較して、ワークWとシート樹脂10との相対位置の位置ズレが発生し難くなり、シート樹脂10を適切な位置に供給することができるようになる。例えば、一端側において位置合わせしてセットするような場合では、最初に位置合わせしたときの位置や角度により、ワークWとシート樹脂10とが全体として大きくズレてしまうことが考えられる。しかしながら、ワークWとシート樹脂10とをそれぞれの中央に位置合わせすることでズレを小さくすることができる。
【0020】
続いて、
図5、
図6および
図7に示すように、ワークWに対してシート樹脂10の外周部へ向かってシート樹脂10を押し付けて、シート樹脂10を供給する。具体的には、ローラ15によってワークWにシート樹脂10を押し付ける際に、ローラ15を一方向に移動させた後(
図5参照)、ローラ15を他方向に移動させる(
図6参照)。これにより、シート樹脂10とワークWとの間のエアを外側に押し出しながらワークWに対してシート樹脂10を供給(セット)することができる(
図7参照)。すなわち、シート樹脂10とワークWとの間のエアを排出しながらワークWに対してシート樹脂10を沿わせて貼り付けるように供給することができる。本実施形態では、保護フィルム11を用いているので、ローラ15によって押し付けられるシート樹脂10等を保護することができる。その後、ワークWに供給されたシート樹脂10の上面側の保護フィルム11が剥離される。また、ワークWとシート樹脂10とをそれぞれの中央に位置合わせてからローラ15を移動させているため、位置ズレを起こすことなくセットすることができる。例えば、ワークWにおけるチップ部品14の凹凸にシート樹脂10が倣って貼り付けられるようなときには、シート樹脂10のそのものの長さでワークWを覆った状態とならず、一端側において位置合わせしてセットするような場合では、最初に位置合わせすべき位置が不明となり易く、ワークWとシート樹脂10とが全体として大きくズレてしまうことも考えられる。これに対して、ワークWとシート樹脂10とをそれぞれの中央に位置合わせてからローラ15を移動させているため、適宜の位置からセットすることができるため好ましい。
【0021】
なお、ワークWにシート樹脂10を貼り付けるように供給するにあたり、真空環境下で行ってもよい。例えば、ワークWをチャンバ内に配置し、例えば真空ポンプを備える減圧機構でチャンバ内を減圧しながらワークWにシート樹脂10を貼り付けるようにして押し付ける。これにより、真空チャンバ内に配置されたワークWに対してシート樹脂10とワークWとの間のエアをより排出することができる。また、ワークWにシート樹脂10を貼り付けた後に減圧を解除して圧力を上昇させることで加圧し、ワークWに対してシート樹脂10を密着させることができる。
【0022】
次に、本発明の実施形態に係る樹脂成形方法について、
図8および
図9を参照して説明する。
図8および
図9は、成形金型50を備える成形装置を用いた樹脂成形方法の説明図であり、シート樹脂10を中心とした模式的断面を示す。なお、樹脂成形方法は、前述の樹脂供給方法と区別しなくともよく、樹脂供給方法を含んでもよい。
【0023】
まず、
図8に示すように、成形金型50を備える成形装置を用意する。成形金型50は、型開閉可能な一対の金型(上型となる一方の金型51および下型となる他方の金型52)を備える(
図8では型閉じした状態を示す)。成形金型50の開閉には、例えば、固定プラテンに対して、電動モータ駆動のトグルリンクによって可動プラテンを進退動させる公知のプレス機構(型開閉機構)が用いられ、金型51が固定プラテン、金型52が可動プラテンに組み付けられる。また、成形金型50の加熱に用いられるヒータが内蔵される。
【0024】
また、成形金型50は、金型51に金型キャビティ53(型閉じされてキャビティCを構成する)を備える。金型51は、キャビティ駒54と、キャビティ駒54が挿入される貫通孔55aを有するクランパ55とを備えて構成される。そして、キャビティ駒54の下面およびクランパ55(貫通孔55a)の内面で囲まれて、凹状の金型キャビティ53が構成される。また、金型52は、ワークWがセットされるセット部56(クランプ面、パーティング面でもある)を備える。
【0025】
キャビティ駒54は、貫通孔55a内でクランパ55に対して相対的に可動するよう構成される。例えば、キャビティ駒54やクランパ55の上方にあるベース(図示せず)に対して、キャビティ駒54がスプリングを介して保持され、クランパ55が固定して保持されることで、型開閉動作に伴ってキャビティ駒54が可動される。
【0026】
続いて、成形金型50が型開きした状態で、シート樹脂10が供給されたワークWを成形金型50にセットし、金型51および金型52を近づけていき型閉じした状態とする(
図8参照)。これにより、ワークW(キャリア13)が金型51(クランパ55)と金型52(セット部56)とで挟まれ、金型キャビティ53の開口部が閉塞されてキャビティCが形成される。ここでは、シート樹脂10を金型51側に向けてセット部56にワークWが位置合わせしてセットされ、キャビティC(金型キャビティ53)内にワークWのチップ部品14と共にシート樹脂10が収容される。また、型閉じの際には、例えば真空ポンプを備える減圧機構によって、キャビティCが減圧されてエアが排出される。また、セット部56にセットされるワークWは、例えば真空ポンプを備える吸引機構によって、吸着保持されてもよい。
【0027】
本実施形態では、前述したように、ワークWに対してシート樹脂10を適切な位置に供給しているため、型閉じする際には、キャビティCの外側領域(クランパ55)でシート樹脂10が挟み込まれるのを防止することができる。したがって、樹脂成形において成形不良の発生を防止することができる。
【0028】
続いて、
図9に示すように、成形金型50のキャビティC内でシート樹脂10を加熱および加圧させる。具体的には、成形金型50に内蔵されたヒータ(図示せず)によってシート樹脂10が溶融樹脂Rとなり、更なる型閉じ動作により可動するキャビティ駒54によって溶融樹脂RがキャビティC内で充填され、所定条件下で加熱および加圧される。これにより、ワークWに樹脂成形がなされ、型開きした成形金型50から成形品としてのワークWが取り出される。なお、ワークWを成形金型50にセットする前にはシート樹脂10の上面側の保護フィルム11を剥離せずに、成形金型50から取り出した後にその保護フィルム11を剥離させてもよい。
【0029】
本実施形態では、前述したように、ワークWに対してシート樹脂10を適切な位置に供給しているため、樹脂成形においてシート樹脂10(溶融樹脂R)が成形金型50のキャビティC内で充填されるときに不要な樹脂流れの発生を防止することができる。また、前述したように、シート樹脂10とワークWとの間でエアの挟み込みが防止されて、ワークWにシート樹脂10が供給されているため、ボイドなどの成形不良の発生を防止することができる。
【0030】
(実施形態2)
本発明の実施形態に係る樹脂供給方法について、
図10〜
図14を参照して説明する。
図10〜
図14は、樹脂供給方法の説明図であり、被供給物に供給されるシート樹脂10を中心とした模式的断面を示す。なお、本実施形態では、被供給物としてリリースフィルムFを用い、前記実施形態1と相違する点を中心に説明する。
【0031】
まず、
図10に示すように、シート樹脂10を準備する。このように、前記実施形態1とは異なり、両面に保護フィルム11、11が貼り付いていないシート樹脂10を用いることもできる。なお、このような保護フィルム11が貼り付けられていないシート樹脂10としては、同図に示す工程の前に保護フィルム11を剥離しておいてもよいし、顆粒樹脂等からシート樹脂10を製造してもよい。
【0032】
続いて、
図11に示すように、樹脂シート10が供給されるリリースフィルムF(被供給物)を準備し、これをステージ12にセットする。リリースフィルムFは、例えば、剥離性、耐熱性、柔軟性、伸展性を有するフィルム材から構成される。リリースフィルムFとしては、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジンなどが好適に用いられる。
【0033】
このリリースフィルムFは、フィルム搬送用治具20で吸着保持された状態でステージ12にセット(載置)される。フィルム搬送用治具20は、中央部に形成された貫通孔20aおよび外周部に形成されたエア吸引孔20bを有して、環状に構成されている。エア吸引孔20bは、例えば真空ポンプを備える吸引機構(図示せず)と接続され、吸引機構の駆動によりリリースフィルムFを吸引する。このため、フィルム搬送用治具20によれば、リリースフィルムFの中央部が貫通孔20aから露出するよう、リリースフィルムFの外周部が例えばエア吸引孔20bによって吸着保持される。なお、フィルム搬送用治具20としては、リリースフィルムFの外周部を挟み込みなどの機械的な方法により保持してもよい。
【0034】
また、
図11に示すように、貫通孔20aから露出するリリースフィルムFの中央部に金属板21をセットしてもよい。この金属板21は、成形品を構成する一部となり、放熱板や電磁波等の遮蔽板などとして用いられる。なお、金属板21に限らず、他のフィルムをリリースフィルムFにセットしてもよい。
【0035】
また、シート樹脂10の上面側の中央部を加圧してシート樹脂10を折り曲げる。シート樹脂10の中央部をローラ15によって加圧することで、シート樹脂10の中央部が下側に凹まされて、シート樹脂10がV字状に折り曲げられる。このため、シート樹脂10の中央部をリリースフィルムFの中央部に位置合わせ(センタリング)することが容易となる。
【0036】
続いて、
図12に示すように、シート樹脂10を折り曲げたまま、シート樹脂10の中央部からリリースフィルムFに対してシート樹脂10を押し付ける。具体的には、ローラ15によってシート樹脂10の中央部がリリースフィルムFの中央部に位置合わせされた状態でシート樹脂10の中央部が加圧される。そして、加圧されたまま、リリースフィルムFにシート樹脂10が押し付けられる。これにより、上述の実施形態と同様に、リリースフィルムFとシート樹脂10との相対位置の位置ズレが発生し難くなる。
【0037】
続いて、
図13および
図14に示すように、リリースフィルムFに対してシート樹脂10の外周部へ向かってシート樹脂10を押し付けて、シート樹脂10を供給する。具体的には、ローラ15によってリリースフィルムFにシート樹脂10を押し付ける際に、ローラ15を一方向に移動させた後(
図13参照)、ローラ15を他方向に移動させる(
図14参照)。これにより、シート樹脂10とリリースフィルムFとの間のエアを外側に押し出しながらリリースフィルムFに対してシート樹脂10を供給(セット)することができる。本実施形態においては、平坦なリリースフィルムFに対して平坦なシート樹脂10を供給するときにエアを挟み込んでしまうことなくセットすることができる。これによれば、後述する樹脂成形の工程において挟み込まれたエアが膨張して成形品に跡が残ってしまうような不具合を防止することもできる。
【0038】
次に、本発明の実施形態に係る樹脂成形方法について、
図15〜
図18を参照して説明する。
図15〜
図18は、成形金型50Aを備える成形装置を用いた樹脂成形方法の説明図であり、シート樹脂10を中心とした模式的断面を示す。
【0039】
まず、
図15に示すように、成形金型50Aを備える樹脂成形装置を用意する。成形金型50Aでは、前記実施形態1で示した成形金型50の金型51、52(すなわちキャビティC)が上下逆に構成され、上型が金型52、下型が金型51となっている。
【0040】
続いて、成形金型50Aが型開きした状態で、ワークWを成形金型50Aにセットする。金型52のセット部56にセットされるワークWは、例えば真空ポンプを備える吸引機構によって、吸着保持される。また、シート樹脂10が供給されたリリースフィルムFは、フィルム搬送用治具20によって吸着保持された状態で成形金型50Aの内部まで搬送されてくる。
【0041】
続いて、フィルム搬送用治具20を下降させ、シート樹脂10が供給されたリリースフィルムFを成形金型50Aの金型51(下型)にセットする。具体的には、キャビティ駒54とクランパ55との間などをエア吸引孔とし、これに接続される真空ポンプを備える吸引機構(図示せず)を用いて、リリースフィルムFを金型51に吸着保持する。この際、シート樹脂10および金属板21が金型キャビティ53に収容される。その後、フィルム搬送用治具20は成形金型50Aの内部から退出させられる。
【0042】
続いて、
図17に示すように、金型51および金型52を近づけていき型閉じした状態とする。これにより、リリースフィルムFを介してワークW(キャリア13)が金型51(クランパ55)と金型52(セット部56)とで挟まれ、金型キャビティ53の開口部が閉塞されてキャビティCが形成される。リリースフィルムFに対してシート樹脂10を適切な位置に供給しているため、型閉じする際には、例えばシート樹脂10を適切な位置に供給できなかった場合にキャビティCの外側領域(クランパ55)でシート樹脂10が挟み込まれてしまうような事態を防止することができる。したがって、樹脂成形において成形不良の発生を防止することができる。
【0043】
続いて、
図18に示すように、成形金型50AのキャビティC内でシート樹脂10を加熱および加圧させる。具体的には、成形金型50Aに内蔵されたヒータ(図示せず)によってシート樹脂10が溶融樹脂Rとなり、更なる型閉じ動作により可動するキャビティ駒54によって溶融樹脂RがキャビティC内で充填され、所定条件下で加熱および加圧される。これにより、ワークWに樹脂成形がなされ、型開きした成形金型50Aから成形品としてのワークWが取り出される。この際、リリースフィルムFを用いているので、ワークWを容易に取り出すことができる。このような本実施形態でも、例えば、上述したようなエアの挟み込みによる不具合の発生も防止することもできるほか、ボイドなどの成形不良の発生を防止することができるなど、前記実施形態1と同様の作用、効果がある。
【0044】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0045】
前記実施形態では、被供給物としてワークやリリースフィルムに適用した場合について説明したが、成形金型にも適用することができる。例えば、成形金型のキャビティ内にシート樹脂を直接供給することができる。
【0046】
また、前記実施形態では、一つの被供給物に一つのシート樹脂を供給する場合について説明したが、一つの被供給物に複数のシート樹脂(例えば一つのシート樹脂が分割されたもの)を供給することができる。その際、例えば、複数のシート樹脂のそれぞれに対応するよう設けられた複数のローラを用いることができる。