【解決手段】反転部50から搬送された用紙Pを受け入れると、この用紙Pを搬入位置から搬出位置まで一枚ずつ移動させながら所定時間貯留し、第2印刷部70の印刷タイミングに合せて再給紙を行う貯留部60を備えている。貯留部60に搬入された用紙Pは、第1搬送手段61によって内方にある用紙移動手段62まで吸引搬送され、保持部62eで搬入側端部が保持されながら搬入位置から搬出位置まで移動するが、用紙移動手段62の保持部62eで保持された用紙Pの搬入側端部よりも前方の位置で用紙Pを下方(印刷済み面)側から支持する湾曲形成手段64によって、用紙幅方向に沿って連続する湾曲部P1が形成される。
前記湾曲形成手段は、前記貯留部内に搬入された用紙を搬入位置から搬出位置まで移動させる用紙移動手段と、前記搬出位置まで移動した用紙を前記第2印刷部に搬送する第2搬送手段との間で、且つ前記第2搬送手段の搬出面から突出して設けられていることを特徴とする請求項1記載の両面印刷装置。
前記湾曲形成手段は、前記保持部で支持された用紙を用紙幅方向からみたときに該用紙の略中央付近で支持するように配置されていること特徴とする請求項1又は2記載の両面印刷装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。また、この実施の形態によって本発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者等により考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれるものとする。
【0020】
本明細書において、「用紙搬送方向」とは、印刷媒体となる用紙Pが両面印刷装置1内で搬送される方向であり、「用紙幅方向」とは、用紙搬送方向と直交する方向である。
つまり、A3用紙の長辺側を搬送方向に沿って搬送する場合、長辺方向が用紙搬送方向と一致し、短辺方向が用紙幅方向と一致する。
【0021】
なお、用紙搬送方向は、装置内で用紙Pを搬送する方向によってその向きが変わる。例えば、用紙Pが第1印刷部40から反転部50を介して貯留部60に搬入されたときは、該用紙Pが貯留部60に搬入する方向、用紙Pが貯留部60から第2印刷部70に再給紙されるときは、用紙Pが貯留部60から第2印刷部70に搬出される方向が、それぞれ用紙搬送方向となる。
【0022】
また、用紙Pにおける第1印刷部40が印刷を施す一方の印刷面を「第一面」とし、第2印刷部70が印刷を施す他方の印刷面を「第二面」とする。
よって、第1印刷部40で印刷された直後の用紙Pの表面は第一面であり、裏面は第二面となる。また、第1印刷部40で印刷が施された第一面が反転部50で反転された後に第2印刷部70に再給紙された際は、印刷済みの第一面が裏面となり、印刷されていない第二面が表面となる。
【0023】
さらに、用紙Pが貯留部60に搬入したときに保持部62eによって保持される先端部を「搬入側端部」とし、この搬入側端部と反対側であって第2印刷部70に再給紙される際の先端部を「搬出側端部」とする。
【0024】
[装置構成]
まず、本発明に係る両面印刷装置1の構成について、
図1〜3の何れかを参照しながら説明する。
図1や
図2に示すように、両面印刷装置1は、画像読取部10と、給紙部20と、製版部30と、第1印刷部40と、反転部50と、貯留部60と、第2印刷部70と、排紙部80と、設定表示部90と、記憶部100と、制御部110とを備えている。
【0025】
−画像読取部−
画像読取部10は、両面印刷装置1の上部に設けられ、原稿を照射する光を発する光源や、原稿からの反射光を受光して光電変換するCCDイメージセンサなどを有し、原稿の画像を光学的に読み取って画像データを生成する。
【0026】
画像読取部10は、原稿から画像を光学的に読み取り、この取り込んだ画像データを画素毎に二値化処理されたデータ(原稿データ)を生成して制御部110に出力する。
【0027】
−給紙部−
給紙部20は、用紙Pが積層される給紙台21と、この給紙台21から最上位置の用紙Pのみを一枚ずつ搬送させる1次給紙手段22と、1次給紙手段22によって搬送された用紙Pの斜行補正を行った後、第1印刷部40の第1ドラム41の回転に同期させ第1ドラム41と第1プレスローラ46との間に所定タイミングで搬送する2次給紙手段23とを備えている。
【0028】
なお、本実施形態では、給紙部20から搬出される用紙PがA4用紙のときは用紙Pの長辺側を、A3用紙では長辺側をそれぞれ用紙搬送方向に沿って搬送し、第1印刷部40と第2印刷部70で印刷処理が施される。さらに、用紙Pのサイズは、A4サイズやA3サイズに限らず第1印刷部40及び第2印刷部70で印刷可能なサイズであればよく、用紙Pの搬送方向も用紙Pの種類に応じて適宜設定可能となっている。
【0029】
−製版部−
製版部30は、図示しないレールによって
図1におけるX方向に移動自在に支持されており、制御部110からの制御により、製版するドラム位置に応じてマスタを供給する破線で示した位置と、第2印刷部70に製版したマスタを供給する実線で示した位置とを選択的に移動して画像読取部10により読み取られた画像データ若しくは両面印刷装置1と有線又は無線接続される不図示の外部端末(例えば、PC(personal computer )、タブレット端末やスマートフォンのような携帯型通信端末)から受け取った画像データに基づいてマスタを穿孔製版する。
【0030】
−第1印刷部−
第1印刷部40は、図示しないモータにより所定方向に回転する第1ドラム41と、この第1ドラム41の外周面に設けられ、マスタの先端をクランプするクランプ部42とを備えている。
【0031】
また、第1ドラム41の内部には、インクが所定量充填されたインクボトル43と、ドラム周壁の内周面に接するインク供給ローラ44と、このインク供給ローラ44に対しインクボトル43から供給されたインクを所定量供給するドクターローラ45とが設けられている。
【0032】
給紙部20から給紙された用紙Pは、第1ドラム41の回転に同期して第1ドラム41の下方位置に配置された第1プレスローラ46で第1ドラム41に着版されたマスタに圧接される。これにより、マスタの穿孔からインクが押し出されて画像が用紙Pの第一面に印刷され、その後、反転部50へと搬送される。
【0033】
なお、第1印刷部40に搬送される用紙Pは、第1ドラム41の基準位置と、第1ドラム41の回転に応じて一定周期で出力されるパルス信号とから得られる第1ドラム41の回転角度に基づくタイミングで給紙部20から給紙される。
【0034】
−反転部−
反転部50は、円弧状の軌跡に沿って配設された4個のプーリー51と、この4個のプーリー51の外周に架け渡されてプーリー51の回転に伴って移動する環状ベルト52と、用紙Pを環状ベルト52に吸引させる吸引手段53とを備えている。
【0035】
反転部50は、第1印刷部40で印刷された用紙Pを吸引手段53で吸引しつつ、用紙Pをプーリー51の回転に伴って環状ベルト52上を円弧状の軌道に沿って貯留部60へ搬送する。反転部50によって搬送される用紙Pは、円弧状の軌跡で移動することになるため、第一面が裏面側に反転する。
【0036】
−貯留部−
貯留部60は、反転部50から搬送された用紙Pを受け入れると、この用紙Pを搬入位置から搬出位置まで一枚ずつ移動させながら所定時間貯留し、第2印刷部70の印刷タイミングに合せて再給紙を行う。
【0037】
貯留部60は、
図3又は
図4に示すように、反転部50から搬送された用紙Pを吸引搬送しながら受け入れる第1搬送手段61と、第1搬送手段61で搬送された用紙Pの搬入側端部を一部保持する保持部62eを有する用紙移動手段62と、用紙移動手段62によって搬入位置から搬出位置まで搬送された用紙Pを第2印刷部70に再給紙(搬出)する第2搬送手段63とを備えている。
【0038】
また、貯留部60における覆板60aの内面を、搬入時に用紙Pがその上を移動する搬入面60bとして、支持板60cの内面を、搬出時に用紙Pがその上を移動する搬出面60dとして有している。さらに、搬入面60bの上端と搬出面60dの上端との距離が、搬入面60bの下端と搬出面60dの下端との距離よりも短くなるように、覆板60a及び支持板60cを配置する。すなわち、
図3に示すように、貯留部60が略扇形状の外形を有することになる。
【0039】
第1搬送手段61は、反転部50によって搬送された用紙Pを貯留部60内の搬入位置(搬入された用紙Pが移動できる覆板60aの搬入面60b上の最も下方な位置)まで搬入面60b上を移動させて搬入する。
【0040】
第1搬送手段61は、覆板60aに固定されて略密閉状態のハウジング61aと、ハウジング61a内で所定間隔を空けて配置された一対のプーリー61bと、一対のプーリー61bに掛け渡され、不図示の駆動手段によるプーリー61bの回転に伴って移動する無端状の環状ベルト61cと、支軸を中心に回転自在であり搬入面60bから突出可能な強制剥離爪61dと、ハウジング61a外に配置されハウジング61a内の空気を排出して負圧状態にさせる吸引手段61eとを備えている。
【0041】
第1搬送手段61は、吸引手段61eによって搬入面60bに露出する環状ベルト61cに形成された複数の貫通孔から外気を流入させてハウジング61a内を負圧状態とすることで用紙Pを吸引し、不図示の駆動手段がプーリー61bを駆動させて、第一面が印刷された用紙Pを貯留部60の内方に向けて搬送させる。そして、用紙Pが用紙移動手段62の保持部62eに保持されると、強制剥離爪61dで用紙Pを環状ベルト61cから剥離する。
【0042】
用紙移動手段62は、搬入位置まで搬入された用紙Pの搬入側端部を順次保持し、この搬入側端部同士が互いに所定隙間を空けた状態で各用紙Pを搬出位置(搬送された用紙Pが移動できる搬出面60d上の最も下方な位置)に移動させるものである。
【0043】
用紙移動手段62は、一方が搬入面60b近傍に配置され、他方が搬出面60d近傍に配置された一対のプーリー62aと、この一対のプーリー62aの外周に掛け渡されて、不図示の駆動手段によるプーリー62aの回転に伴って移動する環状ベルト62bとを備えている。
【0044】
また、この環状ベルト62bの全外周面には、複数のプレート62cが互いに所定間隔を空けて略垂直に立設している。この各プレート62cは、隣接するプレート62cに向けて延びる弾性変形可能な爪片62dを有している。そして、プレート62cと、爪片62dで、貯留部60内で用紙Pを保持する保持部62eを構成する。
【0045】
用紙移動手段62は、用紙Pが搬入位置まで搬入される毎の所定タイミングで間欠的に動作する。用紙Pが搬入面60b上を移動すると、用紙Pの搬入側端部がプレート62c間の凹部62fに一枚ずつ挿入され、用紙Pが環状ベルト62bに当接する。搬入面60b近傍では、搬入面60b側のプレート62cがプーリー62aの周方向を向き、搬出面60d側のプレート62cが環状ベルト62bに対して略垂直を向くため、凹部62fの寸法が広がり、用紙Pの搬入側端部をプレート62c間の凹部62fに挿入できる。
【0046】
用紙Pが搬入された後、不図示の駆動手段が所定のタイミングでプーリー62aを間欠的に回転させることにより、搬入面60bの近傍で凹部62fに用紙Pが挿入された搬入面60b側のプレート62cが搬出面60d側へ移動して環状ベルト62bに対して略垂直となる。これにより、凹部62fの寸法が狭くなり、搬出面60d側の爪片62dが搬入側端部に当接して弾性変形することで搬入側端部が、搬入面60b側のプレート62cと搬出面60d側の爪片62dとによって保持される。
【0047】
用紙移動手段62は、不図示の駆動手段が所定のタイミングでプーリー62aを間欠的に回転させて搬入位置に搬入された用紙Pを順次保持し、各搬入側端部同士が所定隙間を空けた状態で搬入面60bから搬出面60dへ間欠的に順次移動させる。搬入位置から搬出位置までの移動することで、用紙Pの印刷された面(第一面)が乾燥する。
【0048】
プーリー62aがさらに間欠的に回転し、搬出面60d側のプレート62cが搬出面60d近傍まで移動すると、搬出面60d側のプレート62cがプーリー62aの周方向を向き、再び凹部62fの寸法が広くなり、用紙Pの搬入側端部の保持が順次解除される。搬出位置は、前述の通り、搬送された用紙Pが移動できる搬出面60d上の最も下方な位置であり、本実施形態では、用紙Pの搬入側端部の保持が解除された後、搬出面60dに移動した位置である。
【0049】
第2搬送手段63は、用紙移動手段62によって貯留部60内の搬入位置から搬出位置まで移動した用紙Pを第2印刷部70に搬送する。つまり、用紙移動手段62によって搬出位置まで移動した用紙Pは、保持部62eで保持された搬入側端部と反対側の搬出側端部を先端として搬出方向に沿って第2印刷部70に再給紙される。なお、貯留部60に貯留された時点で用紙Pは表裏が反転されているため、第2搬送手段63で搬送される用紙Pの表面は未印刷の第二面であり、裏面が印刷済みの第一面となる。
【0050】
第2搬送手段63は、支持板60cに固定されて略密閉状態のハウジング63aと、ハウジング63a内で所定間隔を空けて配置された一対のプーリー63bと、一対のプーリー63bに掛け渡され、不図示の駆動手段によるプーリー63bの回転に伴って移動する無端状の環状ベルト63cと、ハウジング63a外に配置されハウジング63a内の空気を排出して負圧状態にさせる吸引手段63dとを備えている。
【0051】
また、第2搬送手段63は、用紙移動手段62によって移動した用紙Pの両側端(右端、左端)の位置決めをする一対の位置決め板63eを備えている。この位置決め板63eは、搬入面60b側から搬出面60d側に向けて間隔が狭くなるように略八の字状に配設されている。これは、用紙Pが、反転部50の環状ベルト52に吸い付けられただけの状態で搬送されるため、搬送時に搬入面60b上の搬入位置に搬入された用紙Pの左右方向への位置ずれを考慮するためである。
また、位置決め板63eの基端部(支持板60cに取り付けられる部分)の間隔は、用紙移動手段62による用紙Pのずれを考慮して、使用する用紙Pの幅方向の長さよりも若干広くなるように配置されている。これは、用紙移動手段62によって移動する用紙Pの左右方向への位置ずれをある程度許容し、搬出位置近傍まで搬送された用紙Pが位置決め板63eに乗り上げないようにするためである。
【0052】
よって、位置決め板63eを略八の字形状とすることで、位置ずれを起こした用紙Pの第一面が、位置決め板63eの搬入面60b側の端部と衝突することなく、用紙Pが位置決め板63eの間に移動して位置決めがされる。
【0053】
また、環状ベルト63cで吸引搬送された用紙Pは、ピックアップローラ63fでピックアップされ、レジストローラ63gで用紙Pの斜行補正をした後に第2印刷部70の印刷タイミングに合せて搬送される。
【0054】
貯留部60は、用紙移動手段62によって搬入位置から搬出位置近傍まで移動した用紙Pに対し、用紙Pの用紙幅方向に沿って連続する湾曲部P1を形成する湾曲形成手段64を備えている。
【0055】
上述した〔発明が解決しようとする課題〕でも説明したように、両面印刷を行う際に反転部50で表裏が反転された用紙Pを用紙移動手段62によって移動する場合、用紙Pの搬入側端部の一部のみが保持部62eによって保持されている。そのため、特に腰の弱い用紙Pでは、移動時の空気抵抗、装置駆動による振動、機器内の静電気などにより用紙姿勢にバラつきが生じてしまうという問題があった。
【0056】
そこで、本発明では、支持板60cの搬出面60dにおける用紙移動手段62と第2搬送手段63との間に、用紙移動手段62によって移動する用紙Pを下方(裏面となる第一面側)から支持して用紙幅方向に沿って連続する湾曲部P1を形成する湾曲形成手段64を設けている。
湾曲形成手段64により用紙Pに湾曲部P1が形成されることで、用紙Pが腰付けされ用紙Pの形状も略一定となり保持部62eで保持された用紙Pの姿勢が安定するため、用紙移動手段62で移動した用紙Pが第2搬送手段63の吸引手段63dで吸引搬送される際に、適正な搬送位置(用紙着地位置)から搬送することができるようになる。
【0057】
次に、湾曲形成手段64の形態例について
図5を参照しながら説明する。
なお、以下に示す形態例は一例であり、用紙移動手段62によって用紙Pが搬出位置まで移動したときに用紙Pを下方から支持して湾曲部P1が形成可能な構成であれば特に限定されない。
【0058】
<形態例1>
図5(a)に示すように、形態例1の湾曲形成手段64は、用紙Pと当接して用紙幅方向に沿って連続する湾曲部P1を形成する支持軸64aと、この用紙Pに対して適切な位置で湾曲部P1が形成されるように支持軸64aを搬出面60dから所定高さ突出させた状態で支持する支持部材64bとで構成されている。つまり、支持軸64aが、用紙Pに湾曲部P1を形成する湾曲形成手段として機能することになる。
【0059】
支持軸64aは、円柱形状をなす軸材であり、用紙幅方向に沿って延在するとともに、搬出面60dから所定高さ(数センチ程度)突出した位置で支持部材64bによって支持された状態で設けられている。この支持軸64aは、支持部材64bに対して固定又は回転自在に軸支されていてもよい。
また、支持軸64aは、用紙Pと当接した際に線接触となるため搬送時の摩擦を差程考慮する必要はないが、用紙Pを搬送する際に搬送の妨げとならないように、その表面を滑らかに加工して用紙Pとの摩擦を小さくした方がより好ましい。
【0060】
さらに、支持軸64aの用紙支持領域を、使用する用紙Pの幅方向よりも広くする(すなわち、使用する用紙Pの用紙幅方向よりも長尺に延在させる)ことで、用紙Pに対して湾曲部P1が形成しやすくなる。
【0061】
支持軸64aの設置位置は、用紙移動手段62の保持部62eで保持された用紙Pの搬入側端部(つまり、保持部62eによる保持位置)より前方であり、且つ第2搬送手段63の吸引手段63dの位置よりも手前側に設置される。
【0062】
なお、用紙Pに形成する湾曲部P1は、用紙Pを用紙幅送方向側からみたときに該用紙Pの中央付近(すなわち、用紙搬送方向に沿う用紙側端の略中間位置)に形成すると、湾曲部P1を中心に用紙姿勢が最も安定する形状となる。
そのため、形態例1の湾曲形成手段64は、使用する用紙Pを搬送方向側からみたときに該用紙Pの中央付近に湾曲部P1が形成されるように設置するのが好ましい。
【0063】
また、使用する用紙サイズが複数ある場合は、複数種の用紙Pの中から中間サイズの用紙Pを搬送方向側からみたときの略中央付近に合せて支持軸64aを設置すればよい。
【0064】
<形態例2>
図5(b)に示すように、形態例2の湾曲形成手段64は、用紙Pと当接して用紙幅方向に沿って連続する湾曲部P1を形成する板材64cと、この用紙Pに対して適切な位置で湾曲部P1が形成されるように板材64cを搬出面60dから所定高さ突出させた状態で支持する支持部材64dとで構成されている。つまり、板材64cが、用紙Pに湾曲部P1を形成する湾曲形成手段として機能することになる。
【0065】
板材64cは、用紙搬送方向に所定の幅を持つ長方形状の板であり、用紙幅方向に沿って延在するとともに、搬出面60dから所定高さ(数センチ程度)突出した位置で支持部材64dによって支持された状態で設けられている。また、第2搬送手段63によって用紙Pが吸引搬送される際に、板材64cの角が用紙Pの紙面と接触して搬送の妨げとならないようにするため、板材64cの角をR形状に丸めて滑らかにするのがよい。
【0066】
さらに、板材64cの用紙支持領域を、使用する用紙Pの幅方向よりも広くする(すなわち、使用する用紙Pの用紙幅方向よりも長尺に延在させる)ことで、用紙Pに対して湾曲部P1が形成しやすくなる。
【0067】
板材64cの設置位置は、用紙移動手段62の保持部62eで保持された用紙Pの搬入側端部(つまり、保持部62eによる保持位置)より前方であり、且つ第2搬送手段63の吸引手段63dの位置よりも手前側に設置される。
【0068】
なお、用紙Pに形成する湾曲部P1は、用紙Pを用紙搬送幅側からみたときに該用紙Pの中央付近(すなわち、用紙搬送方向に沿う用紙側端の略中間位置)に形成すると、湾曲部P1を中心に用紙姿勢が最も安定する形状となる。
そのため、形態例2の湾曲形成手段64も形態例1の湾曲形成手段64と同様、使用する用紙Pを搬送方向側からみたときに該用紙Pの中央付近に湾曲部P1が形成されるように設置するのが好ましい。
【0069】
また、使用する用紙サイズが複数ある場合は、複数種の用紙Pの中から中間サイズの用紙Pを搬送方向側からみたときの略中央付近に合せて板材64cを設置すればよい。
【0070】
<形態例3>
図5(c)に示すように、形態例3の湾曲形成手段64は、用紙Pと当接して用紙幅方向に沿って連続する湾曲部P1を形成する突起64fを、用紙幅方向に沿って並設させた構成である。つまり、突起64fが、用紙Pに湾曲部P1を形成する湾曲形成手段として機能することになる。
【0071】
突起64fは、搬出面60dの面から所定高さ(数センチ程度)突出して設けられており、用紙Pとの当接部分が、用紙Pとの摩擦を低減させるようにその表面が滑らかに加工されている。
【0072】
突起64fの設置位置は、用紙移動手段62の保持部62eで保持された用紙Pの搬入側端部(つまり、保持部62eによる保持位置)より前方であり、且つ第2搬送手段63の吸引手段63dの位置よりも手前側において、用紙幅方向に所定間隔を空けて並設される。
【0073】
図示の例では、用紙幅方向に沿って4つの突起64fが設けられている。この4つの突起64fのうち、用紙幅方向における外側にある2つの突起64fは、A3用紙の長辺を搬出方向に沿って搬送した場合に該用紙の用紙側端近傍を支持するものであり、内側にある2つの突起64fは、A4用紙の長辺を搬出方向に沿って搬送した場合に該用紙の用紙側端近傍を支持するように配置されている。
【0074】
なお、用紙Pに形成する湾曲部P1は、用紙Pを用紙幅方向側からみたときに該用紙Pの中央付近(すなわち、用紙搬送方向に沿う用紙側端の略中間位置)に形成すると、湾曲部P1を中心に用紙姿勢が最も安定する形状となる。
そのため、形態例3の湾曲形成手段64も形態例1、2の湾曲形成手段64と同様、使用する用紙Pを搬送方向側からみたときに該用紙Pの中央付近に湾曲部P1が形成されるように設置するのが好ましい。
【0075】
また、
図5(c)の例では、A4用紙とA3用紙を搬送したときの用紙幅に合せて突起64fを設けた構成であるが、使用する用紙Pの幅方向のサイズに合せて突起64fの設置箇所や設置数を適宜設定することができる。また、突起64fのサイズも、複数サイズの用紙Pに対応可能なように用紙幅方向に所定長さ連続する凸状部材としてもよい。
【0076】
次に、湾曲形成手段64によって用紙Pに湾曲部P1が形成されるまでの流れ(湾曲形成手段64の作用)について説明する。
図6では、形態例1の湾曲形成手段64を例にとり、用紙移動手段62で移動した用紙Pに湾曲部P1が形成される際の用紙Pの形状変化を示している。
【0077】
図6(a)に示すように、用紙移動手段62によって搬入位置から搬出位置近傍まで移動した用紙Pは、
図6(b)に示すように、支持軸64aと当接する。支持軸64aに当接した用紙Pは、用紙移動手段62によってさらに搬出位置まで移動すると、
図6(c)に示すように、用紙Pに形成された斜行した撓みが矯正されるとともに、用紙Pの用紙幅方向に沿って連続する湾曲部P1が形成される。
【0078】
このように、用紙移動手段62で移動する際に、用紙Pの一部に斜行した撓みが形成されたとしても、湾曲形成手段64によって湾曲部P1が形成されることで用紙姿勢を一定の形状に矯正させることができる。
【0079】
よって、湾曲形成手段64によって湾曲部P1が形成された用紙Pは、湾曲部P1によって腰付けされて用紙姿勢が安定しているため、第2搬送手段63で吸引搬送するときも適正な搬送位置で吸引搬送されるようになる。
【0080】
また、
図7に示すように、形態例1の湾曲形成手段64における支持軸64aや形態例2の湾曲形成手段64における板材64cには、用紙Pと当接して用紙Pに帯電する静電気を除去する除電部材64gを設けることもできる。この除電部材64gにより、用紙Pと湾曲形成手段64とが当接した際、用紙Pに帯電する静電気が除去できるため、静電気を起因とする搬送不良や印刷不良を防止することができる。
【0081】
−第2印刷部−
第2印刷部70は、図示しないモータにより所定方向に回転する第2ドラム71と、この第2ドラム71の外周面に設けられ、マスタの先端をクランプするクランプ部72とを備えている。
【0082】
また、第2ドラム71の内部には、インクが所定量充填されたインクボトル73と、ドラム周壁の内周面に接するインク供給ローラ74と、このインク供給ローラ74に対しインクボトル73から供給されたインクを所定量供給するドクターローラ75とが設けられている。
【0083】
貯留部60から給紙された用紙Pは、第2ドラム71の回転に同期して第2ドラム71の下方位置に配置された第2プレスローラ76で第2ドラム71に着版されたマスタに圧接される。これにより、マスタの穿孔からインクが押し出されて画像が用紙Pの裏面に印刷され、その後、排紙部80へと搬送される。
【0084】
なお、第2印刷部70に搬送される用紙Pは、第2ドラム71の基準位置と、第2ドラム71の回転に応じて一定周期で出力されるパルス信号とから得られる第2ドラム71の回転角度に基づくタイミングで貯留部60から給紙される。
【0085】
−排紙部−
排紙部80は、第2印刷部70で裏面が印刷された用紙を搬送する排紙搬送手段81と、装置本体の側方に設けられ、印刷済みの用紙を積載する排紙台82とから構成される。また、排紙搬送手段81は、駆動ローラと従動ローラに掛け回された無端状の環状ベルト83に印刷済みの用紙を吸引手段84で吸着させた状態で排紙台82に順次搬送して積載する。
【0086】
−設定表示部−
設定表示部90は、両面印刷装置1の上部に設けられ、各種表示画面を表示する液晶表示パネルの前面に配置された感圧式あるいは静電式の透明なタッチパネルと、製版・印刷等の開始/停止を入力する選択キーや印刷枚数等を入力するためのテンキー等の各種操作キーとを備え、液晶表示パネルに表示された表示内容を見ながらユーザによる操作に基づく操作信号を制御部110に出力する。
【0087】
−記憶部−
記憶部100は、例えばROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置や、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive )などの補助記憶装置で構成されており、主に両面印刷装置1の各部を駆動するのに必要な各種情報(コンピュータプログラムやアプリケーションソフトウェアなど)を記憶する。
【0088】
制御部111は、例えばCPU(Central Processing Unit )やROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)又はこれらの機能を具備するMPU(Micro-Processing Unit )等のプロセッサで構成される。制御部110は、設定表示部90からの操作信号や記憶部100に記憶される各種駆動制御情報に従って両面印刷装置1を構成する各部の駆動制御を行っている。また、制御部110は、画像読取部10で読み取った原稿データや外部端末から受け取った原稿データに基づいてマスタの製版処理を実施するように製版部30を制御する。
【0089】
[動作について]
次に、上述した両面印刷装置1の動作について
図8を参照しながら説明する。
なお、以下の動作では、用紙Pの長辺を搬送方向に沿って搬送し、湾曲形成手段64として上述した形態例1の構成を用いた例とする。
【0090】
また、本実施形態に係る両面印刷装置1における用紙給紙時の処理、印刷時の処理、排紙時の処理については、従来装置と同様の処理を実施するためこれらの動作説明を省略し、本発明の特徴要件である湾曲形成手段64の作用効果が顕著となる、第一面が印刷済みの用紙Pが貯留部60に搬送されてから第2印刷部70に再給紙されるまでの動作について説明する。
【0091】
第1印刷部40で表面が印刷された一枚目の用紙Pが、反転部50を介して貯留部60に搬送されると、
図8(a)に示すように用紙Pの搬入側端部がプレート62c間の凹部62fに挿入され保持部62eに保持される。
【0092】
一枚目の用紙Pが搬入されると、不図示の駆動手段が所定のタイミングでプーリー62aを間欠的に回転させ、搬入面60bの近傍で用紙Pを保持した保持部62eが搬出面60d側へと移動し、二枚目の用紙Pの搬入側端部がプレート62c間の凹部62fに挿入され保持部62eに保持される。
【0093】
以降、
図8(b)に示すように、用紙移動手段62は、不図示の駆動手段が所定のタイミングでプーリー62aを間欠的に回転して搬入位置に搬入された用紙Pを一枚ずつ保持部62eで保持しながら搬出位置まで移動させる。図示の例では、第1印刷部40で第一面が印刷された用紙Pが5枚搬入した状態である。
【0094】
次に、保持部62eで保持された一枚目の用紙Pが搬出位置近傍まで移動すると、
図8(c)に示すように湾曲形成手段64の支持軸64aと当接して用紙Pに湾曲部P1が形成される。
【0095】
用紙Pは、用紙移動手段62によって徐々に搬出位置へと移動し、その際に用紙Pの裏面(第一面)の一部が湾曲形成手段64の支持軸64aと当接し続けることで湾曲し始め、用紙Pの搬出側端部が搬出面60dに到達する頃には、用紙幅方向に沿った湾曲部P1が形成されるようになる。
【0096】
また、
図8(c)に示すように、続けて二枚目以降の用紙Pが順次移動することで、一枚目の用紙Pと同様、二枚目以降の用紙Pが重なった状態でそれぞれに湾曲部P1が形成される。
【0097】
そして、一枚目の用紙Pが搬出位置まで到達すると、第2搬送手段63の吸引手段63dによって用紙Pの搬出側端部付近が吸着され、所定のタイミングで第2印刷部70へと搬送される。なお、二枚目以降の用紙Pも一枚目と同様、搬出位置まで移動すると、第2搬送手段63によって所定タイミングで第2印刷部70に搬送される。
【0098】
以上説明したように、上述した両面印刷装置1は、反転部50から搬送された用紙Pを貯留部60に搬入すると、この用紙Pを搬入位置から搬出位置まで一枚ずつ移動させながら所定時間貯留し、第2印刷部70の印刷タイミングに合せて再給紙を行う。
【0099】
貯留部60に搬入された用紙Pは、第1搬送手段61によって内方にある用紙移動手段62まで吸引搬送され、保持部62eで搬入側端部が保持されながら搬入位置から搬出位置まで移動し、用紙移動手段62の保持部62eで保持された用紙Pの搬入側端部よりも前方の位置で用紙Pを下方(裏面となる第一面側)から支持する湾曲形成手段64によって、用紙幅方向に沿って連続する湾曲部P1が形成される。
【0100】
これにより、用紙移動手段62で移動する際に用紙Pの一部に傾斜した撓みが生じたとしても、湾曲形成手段64によって湾曲部P1が形成されることで、搬入位置から搬出位置まで移動する間に用紙Pが腰付けされ、さらに用紙Pの姿勢が一定形状に矯正されるため、第2搬送手段63の搬送する際に適正な搬送位置で吸引搬送することができる。
【0101】
また、湾曲部P1が、用紙Pを用紙幅方向からみたときの略中央付近に形成されるように湾曲形成手段64を設けることで、用紙Pの姿勢が安定して適正な搬送位置で第2搬送手段63による吸引搬送を行うことができる。
【0102】
さらに、湾曲形成手段64に除電部材64gを設けることで、用紙Pに帯電する静電気が除去されるため、静電気を起因とする搬送不良や印刷不良を未然に防止することができる。
【0103】
[その他の実施形態について]
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば以下に示すように使用環境等に応じて適宜変更して実施することもできる。また、以下の変更例を本発明の要旨を逸脱しない範囲の中で任意に組み合わせて実施することもできる。
【0104】
上述した形態では、湾曲形成手段64の構成として60cに設置した3つの形態(形態例1〜3)を示したが、湾曲形成手段64は、用紙移動手段62によって搬入位置から搬出位置まで移動した用紙Pに対して用紙幅方向に沿って連続する湾曲部P1が形成可能な構成であればよい。
【0105】
よって、湾曲形成手段64の他の形態例としては、例えば用紙移動手段62で移動する用紙Pの裏面となる第一面に対して所定風量のエアーを噴出して上述した形態例1〜3と同等、用紙Pに湾曲部P1を形成する構成としてもよい。