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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-213769(P2017-213769A)
(43)【公開日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】ブロー成形装置及びブロー成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/42 20060101AFI20171110BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20171110BHJP
   B29C 49/48 20060101ALI20171110BHJP
【FI】
   B29C49/42
   B29C49/04
   B29C49/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-109011(P2016-109011)
(22)【出願日】2016年5月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 優
(72)【発明者】
【氏名】前野 宏明
【テーマコード(参考)】
4F202
4F208
【Fターム(参考)】
4F202AG08
4F202AG12
4F202AH16
4F202AH17
4F202CA15
4F202CK52
4F202CK85
4F202CK86
4F208AG08
4F208AG12
4F208AH16
4F208AH17
4F208LA09
4F208LG23
4F208LG37
4F208LN15
(57)【要約】
【課題】 ピンチオフ(閉塞)の際にパリソンが偏平になることがなく、品質の高い製品を成形することが可能で、パリソンの引っかかりによる成形不良が発生することのないブロー成形装置及びブロー成形方法を提供する
【解決手段】 型締めにより両端に開口部を有するキャビティが形成され、当該キャビティの一方の開口部から円筒状のパリソンが挿入される金型と、他方の開口部を開閉するシャッタ機構とを有する。シャッタ機構は、互いに隣接する面を摺動面とする複数のシャッタ部材を有し、これらシャッタ部材の前記摺動面が互いに接するように環状に組み合わされて構成されている。また、シャッタ機構がn個のシャッタ部材を有する場合、各シャッタ部材は、半球面を1/nに分割した凹部を有し、閉状態において半球面の凹部が形成される。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締めによりキャビティが形成され、少なくと1つの開口部を有する金型と、前記開口部を開閉するシャッタ機構とを有し、
前記シャッタ機構は、互いに隣接する面を摺動面とする複数のシャッタ部材を有し、これらシャッタ部材の前記摺動面が互いに接するように環状に組み合わされて構成されていることを特徴とするブロー成形装置。
【請求項2】
前記金型において、型締めにより両端に開口部を有するキャビティが形成され、当該キャビティの一方の開口部から円筒状のパリソンが挿入され、
前記シャッタ機構は他方の開口部を開閉することを特徴とする請求項1記載のブロー成形装置。
【請求項3】
開閉操作により前記各シャッタ部材が連動し、開状態または閉状態とされることを特徴とする請求項1または2記載のブロー成形装置。
【請求項4】
前記シャッタ機構がn個のシャッタ部材を有する場合、各シャッタ部材は、半球面を1/nに分割した凹部を有し、
閉状態において半球面の凹部が形成されることを特徴とする請求項3記載のブロー成形装置。
【請求項5】
前記シャッタ機構が、4個または6個のシャッタ部材を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のブロー成形装置。
【請求項6】
型締めした金型のキャビティの開口部においてパリソンをシャッタ機構で閉塞してブロー成形するブロー成形方法であって、
前記シャッタ機構は、互いに隣接する面を摺動面とする複数のシャッタ部材を有するとともに、これらシャッタ部材の前記摺動面が互いに接するように環状に組み合わせることにより構成され、
当該シャッタ機構の開閉操作により、パリソンの端部が閉塞されることを特徴とするブロー成形方法。
【請求項7】
型締めした金型のキャビティの一方の開口部からキャビティ内に円筒状のパリソンを挿入し、他方の開口部においてパリソンをシャッタ機構で閉塞してブロー成形することを特徴とする請求項6記載のブロー成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締めした金型のキャビティ開口端からキャビティ内に円筒状のパリソンを挿入し、ブロー成形するブロー成形装置及びブロー成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジン内ダクト等のように、中空で長さの長い成形体を成形する技術として、いわゆるサクションブローが提案されている。サクションブローは、型締めした金型のキャビティ開口端からキャビティ内に円筒状のパリソンを挿入し、ブロー成形する技術であり、屈曲する成形体を簡単に成形することができるという利点を有する。
【0003】
サクションブローでは、例えば特許文献1に開示されるように、上端部及び下端部に開口部を有するとともに、屈曲した円筒状のキャビティを形成し、加熱装置を内蔵した一対の金型と、キャビティの上端開口部上に設置され、加熱エアーの供給口を有する上部シャッター機構を備えた加熱エアー供給装置と、金型のキャビティの下端部に接続する下部シャッター機構を有する吸引装置とを有するブロー成形装置を用いる。
【0004】
特許文献2にも、同様の装置が開示されている。特許文献2に開示される装置は、開閉自在にして型閉め時に、ブロー成形品の主要部を形成するキャビティたる屈曲空洞部を備える一対の主金型と、該主金型の上側で盤状体の外周面にパリソンを締着させる喰い切り突起を備える一対のスライド金型とを有するブロー金型と、ブロー金型の下方に配され、該ブロー金型の屈曲空洞部の下端開口に対向してエア吸引をなし得るようにした吸引器とを具備する。
【0005】
いずれの装置においても、キャビティの下端部においてパリソンを閉塞するシャッタ機構が必須である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−104613号公報
【特許文献2】特開平7−195497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述のブロー成形装置において、シャッタ機構については、これまでほとんど検討されておおらず、一対のシャッタ部材でパリソンの端部を挟み込んで閉塞するのが一般的である。一対のシャッタ部材で溶融状態のパリソンを挟み込むことで、いわゆるピンチオフされて閉塞される。
【0008】
しかしながら、一対のシャッタ部材でパリソンをピンチオフすると、パリソンが偏平に押し潰されることになり、パリソン端部近傍において、成形品肉厚の不均一化等が発生するおそれがある。肉厚の不均一化は、成形品の品質を大きく損なう要因となる。
【0009】
また、一対のシャッタ部材でピンチオフするシャッタ機構の場合、パリソンが引っかかり易いという問題もある。一対のシャッタ部材を開閉するシャッタ機構では、シャッタ部材が開いた待機状態にあると、開口の周辺に溝が平坦面として広く露呈することになり、ここにパリソンの先端が当たってしまうことがある。サクションブローにおいては、パリソンが屈曲してキャビティ内に挿通されることが多く、金型の下端から真っ直ぐに垂下させることが難しい。そのため、前記平坦面にパリソンの先端が引っかかり易い。パリソンの先端が平坦面に当たったままの状態で垂下させると、意図しない凹凸や折れ、曲がりが発生し、極端な場合、正常な成形が難しくなる。
【0010】
これを解消するための対策として、パリソンを予め偏肉させたり、射出速度/吸引量を変化させたりといった成形条件の調整や、影響が出なくなる長さまで成形品を長くするといった修正を行うことも考えられるが、工程が煩雑になったり生産性が低下する等、課題も多い。
【0011】
本発明は、上述した従来の実情に鑑みてなされたものであり、ピンチオフ(閉塞)の際にパリソンが偏平になることがなく、品質の高い製品を成形することが可能なブロー成形装置及びブロー成形方法を提供することを目的とする。また、本発明は、パリソンの引っかかりによる成形不良が発生することのないブロー成形装置及びブロー成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するために、本発明のブロー成形装置は、型締めによりキャビティが形成され、少なくと1つの開口部を有する金型と、前記開口部を開閉するシャッタ機構とを有し、前記シャッタ機構は、互いに隣接する面を摺動面とする複数のシャッタ部材を有し、これらシャッタ部材の前記摺動面が互いに接するように環状に組み合わされて構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のブロー成形方法は、型締めした金型のキャビティの開口部においてパリソンをシャッタ機構で閉塞してブロー成形するブロー成形方法であって、前記シャッタ機構は、互いに隣接する面を摺動面とする複数のシャッタ部材を有するとともに、これらシャッタ部材の前記摺動面が互いに接するように環状に組み合わせることにより構成され、当該シャッタ機構の開閉操作により、パリソンの端部が閉塞されることを特徴とする。
【0014】
シャッタ機構を、環状に組み合わせたシャッタ部材の摺動により開閉する構造とすることにより、絞り機構のように開口が次第に縮径され、パリソンが閉塞される。したがって、一対のシャッタ部材で挟み込んでピンチオフする場合と異なり、パリソンが偏平化することがない。また、シャッタ部材が開いた待機状態において、露呈する溝(平坦面)の面積が小さいので、パリソン先端の引っかかりが抑えられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ピンチオフ(閉塞)の際にパリソンが偏平になることがなく、品質の高い製品を成形することが可能なブロー成形装置及びブロー成形方法を提供することが可能である。また、パリソンの引っかかりによる成形不良が発生することのないブロー成形装置及びブロー成形方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】サクションブロー成形装置の一例を示すものであり、パリソン挿入前の状態を示す図である。
図2】サクションブロー成形装置の一例を示すものであり、パリソンの挿入状態を示す図である。
図3】一対のシャッタ部材を突き合わせてパリソンをピンチオフするシャッタ機構の一例を示す概略平面図であり、(A)は開状態、(B)は閉状態を示す。
図4】一対のシャッタ部材を突き合わせてパリソンをピンチオフするシャッタ機構の待機状態における平坦面を説明する図であり、(A)は概略平面図、(B)は概略側面図、(C)は概略正面図である。
図5】本発明を適用したシャッタ機構の一例を示す概略平面図であり、(A)は開状態、(B)は閉状態を示す。
図6図5に示すシャッタ機構のシャッタ部材を示す図である。
図7図5に示すシャッタ機構の待機状態を示す図であり、(A)は概略平面図、(B)は概略側面図、(C)は概略正面図である。
図8図5に示すシャッタ機構の閉状態を示す図であり、(A)は概略平面図、(B)は概略側面図、(C)は概略正面図である。
図9図5に示すシャッタ機構の動作を示す概略平面図であり、(A)は開状態、(B)は移行状態、(C)は閉状態を示す。
図10】シャッタ部材を4個としたシャッタ機構の一例を示す図であり、開状態を示す概略平面図である。
図11】シャッタ部材を4個としたシャッタ機構の一例を示す図であり、閉状態を示す概略平面図である。
図12図3のシャッタ機構を有するブロー成形装置で成形される製品を模式的に示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は底面図である。
図13図5のシャッタ機構を有するブロー成形装置で成形される製品を模式的に示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用したブロー成形装置及びブロー成形方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、サクションブローを実施するためのブロー成形装置の一例を簡略化して示すものである。本実施形態のブロー成形装置は、図1に示すように、一対の金型1,2を型締めし、それにより形成される金型キャビティ3内にパリソン4を挿入した後、パリソン4の上端及び下端を封止し、パリソン4内に空気を吹き込んでブロー成形を行う。
【0019】
金型キャビティ3は、製品形状に応じて屈曲部等を有し、パリソン4は、金型キャビティ3の入り口である上方の開口端3aから金型キャビティ3内へと挿入する。図2は、パリソン4を金型キャビティ3へ挿入した状態を示すものである。
【0020】
パリソン4は、熱可塑性樹脂を溶融した溶融樹脂を樹脂押出ヘッドから円筒状(チューブ状)に押し出すことにより形成されるものである。使用する熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではなく、成形が可能なものであれば如何なるものであってもよく、例示するならば、例えばポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂の他、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル等のエンジニアリング・プラスチック等が好適である。
【0021】
前述の通り、サクションブローにおいては、パリソン4の上端及び下端を封止し、パリソン4内に空気を吹き込んでブロー成形を行う。そのため、例えば、金型1,2の下端の開口部には、パリソン4を封止するためのシャッタ機構5が設けられている。このシャッタ機構5を開閉操作することで、パリソン4を閉塞する。
【0022】
シャッタ機構5としては、一対のシャッタ部材を突き合わせてパリソンをピンチオフするシャッタ機構が一般的であり、先ず、この一対のシャッタ部材を突き合わせてパリソンをピンチオフするシャッタ機構について説明する。
【0023】
一対のシャッタ部材を突き合わせてパリソンをピンチオフするシャッタ機構は、図3及び図4に示すように、各金型1,2に対応して2分割され、金型1,2の型締めに伴ってこれらが突き合わされた後、シャッタ部材が駆動されて、開閉動作が行われる。
【0024】
したがって、当該シャッタ機構は、一対のシャッタ部材11,12を有するとともに、各シャッタ部材11,12を駆動する駆動機構13,14、各シャッタ部材11,12を収容する形の外筐部15,16、及びシャッタ部材11,12の底面を支持する支持部17,18とを有している。
【0025】
シャッタ部材11,12は、金型の一部を駒にしたものであり、それぞれ半球面を2分割した凹部11a,12aを有しており、シャッタ部材11,12が突き合わされることで、半球面状の凹部が構成される。また、各シャッタ部材11,12は、支持部17,18上をスライドすることになるが、これら支持部17,18には、それぞれ半円形状の孔部17a,18aが形成されており、これらが突き合わされた時に円形の開口部を構成するようになっている。金型キャビティ3内に挿入されたパリソン4は、金型キャビティ3の下端からこの支持部17,18の孔部内へと挿入され、その状態でシャッタ部材11,12をスライドさせて突き合せることで、パリソン4の下端が閉塞される。
【0026】
すなわち、図3(A)に示すように、シャッタ部材11,12が離間して開状態の時に、支持体16,17の円形の孔部(孔部16a,17a)内にパリソン4が挿入される。次いで、図3(B)に示すように、駆動機構13,14によりシャッタ部材11,12が外筐部15,16内において支持部17,18上をスライドし、互いに突き当てられる。その結果、溶融状態のパリソン4の下端がピンチオフされ、閉塞される。
【0027】
ただし、前述のような一対のシャッタ部材を突き合わせてパリソンをピンチオフするシャッタ機構では、パリソン4は一対のシャッタ部材11,12に挟み込まれる形でピンチオフされるため、押し潰されて偏平になり易い。パリソン4が偏平になると、ピンチオフされたパリソン4の端部近傍において、成形品肉厚の不均一化等が発生するおそれがある。
【0028】
また、前述のような一対のシャッタ部材を突き合わせてパリソンをピンチオフするシャッタ機構では、パリソン4の先端が引っかかり易いという問題もある。このことについて、図4を参照して詳細に説明する。
【0029】
図4において、(A)はシャッタ機構の概略平面図、(B)は概略側面図、(C)は概略正面図である。また、図4は、シャッタ部材11,12が後退した開状態(待機状態)である。一対のシャッタ部材を突き合わせてパリソンをピンチオフするシャッタ機構において、シャッタ部材11,12が後退した状態では、支持体17,18の上面17b,18bが露出する。露出する上面17b,18bの面積は、図4(A)に斜線領域として示すように、大きなものとなる。
【0030】
この露出する支持体16,17の上面16b,17bは平坦面であり、パリソン4が挿入される孔部16a,17aの両側にパリソン4の先端に対向する形で存在する。したがって、孔部16a,17aの両側に存在する平坦面の面積が大きければ大きいほど、パリソン4の先端が引っかかる確率が高くなり、成形の大きな障害となる。
【0031】
そこで、本発明のブロー成形装置では、シャッタ機構として、カメラの絞り機構と類似する新たな機構を採用することとする。以下、本発明のブロー成形装置のシャッタ機構について説明する。
【0032】
本発明のブロー成形装置のシャッタ機構は、互いに隣接する面を摺動面とする複数のシャッタ部材を有し、これらシャッタ部材の前記摺動面が互いに接するように環状に組み合わされて構成されるものである。開閉操作により各シャッタ部材が摺動し、開状態または閉状態とされる。
【0033】
図5は、係るシャッタ機構の一例を示すものであり、図5(A)は開状態、図5(B)は閉状態を示す。本実施形態のシャッタ機構の場合、6個のシャッタ部材21〜26を駒として有しており、これらシャッタ部材21〜26が環状に組み合わされている。
【0034】
図6は、各シャッタ部材21〜26をバラバラにした状態を示すものであり、各シャッタ部材21〜26は、平面視台形状である。そして台形の底面に相当する面(以下、単に底面と称する。)及び台形の一方の斜面に相当する面(以下、単に斜面と称する。)が摺動面として機能する。すなわち、例えば1つのシャッタ部材21の底面21aに対して、隣接するシャッタ部材22の斜面22bが接し、シャッタ部材22はシャッタ部材21の底面21aに沿って摺動する。同様に、シャッタ部材22の底面22aに対して、隣接するシャッタ部材23の斜面23bが接し、シャッタ部材23は隣接するシャッタ部材22の底面22aに沿って摺動する。他のシャッタ部材も同様であり、シャッタ部材26の底面26aに対して、隣接するシャッタ部材21の斜面21bが接し、シャッタ部材21はシャッタ部材26の底面26aに沿って摺動する。
【0035】
また、各シャッタ部材21〜26は、それぞれ前記他のシャッタ部材と接する斜面とは反対の斜面側に凹部21c〜26cを有している。ここで形成される凹部は、シャッタ機構がn個のシャッタ部材を有する場合、半球面を1/nに分割した凹部である。本実施形態のシャッタ機構の場合、シャッタ部材を6個有することから、各シャッタ部材21〜26の凹部21c〜26cは、半球面を1/6に等分割した湾曲凹部である。閉状態において、各シャッタ部材21〜26の凹部21c〜26cが組み合わされることで半球面の凹部が形成される。
【0036】
図7及び図8に、開状態及び閉状態の詳細構造を示す。本実施形態のシャッタ機構は、図7及び図8に示すように、金型1,2の底面に取り付けられる筐体部31,32と、その中に収容されるシャッタ部材21〜26と、これらシャッタ部材21〜26を駆動する駆動機構33,34とを備えている。駆動機構33,34は、直動式のシリンダが伸縮するものであり、それぞれ駆動軸35,36を介してシャッタ部材21,24と接続されており、前記駆動軸35,36を介して駆動力がシャッタ部材21,24に伝達される。なお、各シャッタ部材21〜26は連動するため、駆動機構は1以上設ければよいが、動作の安定性を考慮すると、設定される駆動機構は2以上であることが好ましい。
【0037】
筐体部31,32は、円形のシャッタ部材収容部31A,32A、及び駆動軸収容部31B,32Bが凹部として形成されている。円形のシャッタ部材収容部31A,32Aには、環状に組み合わされたシャッタ部材21〜26が収容されており、その円形の内側壁面によりシャッタ部材21〜26の動作を規制している。駆動軸収容部31B,32Bは、駆動軸35,36の動作に対応して、幅広に形成されている。
【0038】
前記筐体部31,32は、底板部31C,32Cを有しており、前記シャッタ部材21〜26は、この底板部31C,32上でスライドする。また、底板部31C,32Cには、その中央部に筐体部31,32を突き合わせた時に円形となるような孔部31D,32Dが形成されており、この孔部31D,32D内にパリソン4が挿入される。
【0039】
図7に示す開状態では、シャッタ部材21〜26が開いた状態にあり、その中央部に空間が形成されている。そして、その空間内に前記底板部31C,32Cの孔部31D,32Dが臨んでいる。一方、図8に示す閉状態では、シャッタ部材21〜26が閉じており、前記底板部31C,32Cの孔部31D,32Dを塞ぐ形となっている。
【0040】
次に、本実施形態のシャッタ機構の動作について説明する。図9は、本実施形態のシャッタ機構の動作を示すものであり、図9(A)は開状態、図9(B)は移行状態、図9(C)は閉状態を示す。
【0041】
金型1,2による成形時には、シャッタ機構は開状態とするが、開状態では、図9(A)に示すように、環状に組み合わされたシャッタ部材21〜26は、隣接するシャッタ部材の底面の一端側に位置し、外周が六角形を呈している。また、環状に組み合わされたシャッタ部材21〜26の内周も六角形であり、底板部31C,32Cの孔部31D,32Dの外周に外接している。
【0042】
シャッタ部材21〜26を閉状態とするには、駆動機構33を起動して駆動軸35によりシャッタ部材21を黒矢印方向にスライドさせる。同様に、駆動機構34を起動して駆動軸36によりシャッタ部材24を反対方向にスライドさせる。このシャッタ部材21のスライド及びシャッタ部材24のスライドに伴って、隣接するスライド部材22,23及びスライド部材25,26も連動して黒矢印方向にスライドする。
【0043】
図9(B)は、開状態から閉状態(あるいは、閉状態から開状態)への移行状態(中間状態)を示すものである。前記各シャッタ部材21〜26のスライドにより、環状に組み合わされたシャッタ部材21〜26の傾斜角度が次第に変わっていき、内周側六角形が次第に縮小していく。
【0044】
図9(C)は、閉状態を示すものである。閉状態では、シャッタ部材21〜26は、隣接するシャッタ部材の底面の反対側の端部に位置し、内周側の六角形の空間は閉じられた状態となる。この時、各シャッタ部材21〜26の凹部21c〜26cが円周上に配列され、組み合わされることで半球面の凹部が形成されている。
【0045】
閉状態から開状態に移行する場合は、これとは逆の動作が行われ、図9(C)に示す閉状態において、白矢印方向に駆動機構33を起動して駆動軸35によりシャッタ部材21を白矢印方向にスライドさせる。同様に、駆動機構34を起動して駆動軸36によりシャッタ部材24を反対方向にスライドさせる。このシャッタ部材21のスライド及びシャッタ部材24のスライドに伴って、隣接するスライド部材22,23及びスライド部材25,26も白矢印方向にスライドし、図9(B)の中間状態を経て、図9(A)の開状態となる。
【0046】
前述のシャッタ機構の動作において、開状態から閉状態へと移行する過程において、環状に組み合わされたシャッタ部材21〜26の内側の六角形空間が次第に縮小するが、これにより底板部31C,32Cの孔部31D,32D内に挿入されたパリソン4の外周も絞り込まれていく。そして、閉状態になると、内周側の六角形の空間は閉じられた状態となり、パリソン4の端部がピンチオフされる。
【0047】
前記パリソン4のピンチオフは、六角形空間が次第に縮小することで、6個のスライド部材21〜26により絞り込むように行われるため、例えば一対のシャッタ部材で挟み込んでピンチオフする場合と異なり、ピンチオフ後のパリソン4が偏平化することはない。
【0048】
また、前述のシャッタ機構において、開状態では、底板部31C,32Cの孔部31D,32D(円形の孔部)と、その外周に外接する環状に組み合わされたシャッタ部材21〜26の内周六角形の間の領域で、底板部31C,32Cがパリソン4の先端と対向する平坦面として露呈することになるが、その面積は一対のシャッタ部材を突き合わせてパリソンをピンチオフするシャッタ機構に比べて僅かなものであり、パリソン4の引っかかりを解消することができる。
【0049】
前述のシャッタ機構を組み込んだブロー成形装置の成形時のシャッタと金型動作の関係について説明すると、先ず、金型1,2の型開き状態では、シャッタ機構も分離された状態である。すなわち、それぞれ3個のシャッタ部材を収容した筐体部31,32は、互いに離間して分離された状態とされる。
【0050】
金型1,2の型締め時には、シャッタ機構も結合される。すなわち、3個のシャッタ部材を収容した筐体部31,32は、互いに突き合わされる。ブロー成形装置では、次にパリソンの吸引が行われるが、この時には、シャッタ機構のシャッタ部材21〜26は開状態とする。すなわち、図9(A)の状態とする。
【0051】
パリソン吸引後、駆動機構33,34によりシャッタ部材21〜26を連動させて駆動し、閉状態とする。すなわち、パリソンの端部をピンチオフし、閉塞する。成形終了後、金型1,2の型開きとともに、シャッタ機構も分離する。なお、成形後、製品(ブロー成形体)の取り出しの際は、シャッタ部材21〜26が開状態であるとシャッタ部材21〜26が製品と干渉することから、シャッタ部材21〜26を閉状態として金型1,2の型開きを行い、製品の取り出しを行う。
【0052】
以上、シャッタ部材を6個有するシャッタ機構について説明したが、シャッタ部材の数はこれに限られるわけではなく、3個以上であればよい。図10及び図11は、シャッタ部材を4個としたシャッタ機構の例を示すものである。図10は開状態、図11は閉状態である。なお、図10,11において、図5乃至図9に示されるシャッタ部材を6個としたシャッタ機構と同一の部材には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0053】
本例のシャッタ機構は、4個のシャッタ部材21〜24が連動して開閉操作が行われる。本例のシャッタ機構の場合、シャッタ部材を4個有することから、各シャッタ部材21〜24の凹部21c〜24cは、半球面を1/4に等分割した湾曲凹部である。閉状態において、各シャッタ部材21〜24の凹部21c〜24cが組み合わされることで半球面の凹部が形成される。
【0054】
また、本例のシャッタ機構の場合、図10に示すように、開状態において、環状に組み合わされた4個のシャッタ部材21〜24で囲まれる内側の空間は形状は正方形である。底板部31C,32Cの孔部31D,32Dに外接する形状が正方形であると、先の実施形態のように六角形である場合に比べて底板部31C,32Cがパリソン4の先端と対向する平坦面として露呈する面積は大きくなるが、一対のシャッタ部材を突き合わせてパリソンをピンチオフするシャッタ機構に比べると小さい。一方で、4個のシャッタ部材21〜24が連動して開閉操作が行われるシャッタ機構では、構成部品の数を削減することができ、より簡単な構成とすることができる。
【0055】
前述の各実施形態のシャッタ機構を採用することで、本発明のブロー成形装置及びブロー成形方法では、ピンチオフ(閉塞)の際にパリソンが偏平になることがなく、品質の高い製品を成形することが可能である。また、パリソンの引っかかりによる成形不良が発生することもない。
【0056】
図12は、一対のシャッタ部材を突き合わせてパリソンをピンチオフするシャッタ機構を有するブロー成形装置で成形される製品を模式的に示す図である。図12(A)は正面図、図12(B)は側面図、図12(C)は底面図である。
【0057】
一対のシャッタ部材を突き合わせてパリソン4をピンチオフした場合、パリソン4は両側からシャッタ部材で挟み込まれることになり、筒状部4aについては円筒形状であるが、バリ4bは正面から見た時には幅広で、側面から見た時には幅狭である。また、ピンチオフ後の閉塞したパリソン4の底面には、線状のピンチオフ部4cが形成される。ピンチオフ後のパリソン4は、偏平化し易く、図12(B)に示されるパリソン4のピンチオフ部4cの近傍において、角部となる箇所(特に、ピンチオフ部4cに対して直交方向の角部)が薄肉化し易い。扁平化に伴い、肉厚の不均一さが顕著になる傾向にある。
【0058】
これに対して、4個あるいは6個のシャッタ部材を環状に組み合わせたシャッタ機構によりパリソン4をピンチオフした場合、正面から見ても側面から見ても、バリ4bは細長い形状となる。また、ピンチオフ後の閉塞したパリソン4の底面のピンチオフ部4cも点状である。図13は、4個あるいは6個のシャッタ部材を環状に組み合わせてパリソンをピンチオフするシャッタ機構を有するブロー成形装置で成形される製品を模式的に示す図である。図13(A)は正面図、図13(B)は側面図、図13(C)は底面図である。
【0059】
ピンチオフ後のパリソン4において、ピンチオフ部4c近傍の角部が若干薄肉になることは図12の例と同様であるが、ピンチオフ部4cが点となることで、ピンチオフ部4cから角部分までの距離が全周において等しくなるため、肉厚が均一になる。また、4個あるいは6個のシャッタ部材を環状に組み合わせたシャッタ機構によりパリソン4をピンチオフした場合、ピンチオフ部4cを限りなく小さくすることができるので、見かけ上のブロー比を小さくすることができ、したがって、溶融張力が乏しい原料(例えば繊維強化された原料等)であっても、金型形状を低ブロー比になるように修正しなくとも成形することが可能となる。
【0060】
以上、本発明を適用した実施形態について説明してきたが、本発明がこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0061】
1,2 金型
3 金型キャビティ
4 パリソン
21〜26 シャッタ部材
21a〜26a 底面
21b〜26b 斜面
21c〜26c 凹部
31,32 筐体部
31A,32A シャッタ部材収容部
31B,32B 駆動軸収容部
31C,32C 底板部
31D,32D 孔部
33,34 駆動機構
35,36 駆動軸
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図9
図10
図11
図12
図13