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特開2017-213954サービスホールカバーおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-213954(P2017-213954A)
(43)【公開日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】サービスホールカバーおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20171110BHJP
【FI】
   B60J5/00 501E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-107804(P2016-107804)
(22)【出願日】2016年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】手島 孝哉
(72)【発明者】
【氏名】本澤 進一
(57)【要約】
【課題】サービスホールカバーをインナーパネルに取り付ける作業効率と密封性とを向上させる。
【解決手段】サービスホールカバー30は、サービスホール18を覆った際にインナーパネル14の側になる発泡シート32と、該発泡シート32に接着した透明または半透明の硬質シート34とから構成される。発泡シート32の周縁近傍に、サービスホール18の開口縁部に嵌合可能な嵌合部36が形成されると共に、硬質シート34の周縁にフランジ部38が形成される。フランジ部38は、硬質シート34だけで形成されて、インナーパネルへ取り付けた際の密封性を高める接着部Hが設けられ、該接着部Hを透視可能となっている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のインナーパネルに開設したサービスホールを塞ぐサービスホールカバーにおいて、
前記サービスホールカバーは、前記サービスホールを塞いだ際に前記インナーパネルに接する側になる発泡シートと、該発泡シートに接着した透明または半透明の硬質シートとからなる積層シートを材料とし、
前記サービスホールカバーは、前記発泡シートの側に前記サービスホールと嵌合する嵌合部が形成されており、
前記サービスホールカバーの周縁には、前記嵌合部から外方へ延出するフランジ部が形成されており、
前記フランジ部は、前記サービスホールカバーの全周に亘って該フランジ部から前記発泡シートが除去された透明または半透明の硬質シートのみの部分を有している
ことを特徴とするサービスホールカバー。
【請求項2】
前記フランジ部における前記発泡シートが除去された透明または半透明の硬質シートの部分には、自己粘着性のシール材が取り付けられている請求項1記載のサービスホールカバー。
【請求項3】
前記フランジ部における前記発泡シートが除去された透明または半透明の硬質シートの部分は、前記サービスホールカバーが前記サービスホールを塞いだ際に、前記インナーパネルとは反対側に凹ませた溝部が前記サービスホールカバーの全周に亘って設けられる請求項1または2記載のサービスホールカバー。
【請求項4】
前記フランジ部における前記発泡シートが除去された透明または半透明の硬質シートの部分は、前記サービスホールカバーが前記サービスホールを塞いだ際に、前記インナーパネルとは反対側に離間する段差部が前記サービスホールカバーの全周に亘って設けられる請求項1または2記載のサービスホールカバー。
【請求項5】
車両のインナーパネルに開設したサービスホールを塞ぐサービスホールカバーの製造方法において、
透明または半透明の硬質シートおよび発泡シートを重ねた積層シートを加熱して、該積層シートを軟化させる工程と、
前記サービスホールの輪郭形状に対応する第1成形面が形成された第1型部と、この第1型部の第1成形面に対応する第2成形面を形成した第2型部との間に、前記軟化した積層シートをその発泡シートが前記第1型部に指向する状態で介在させる工程と、
前記第1型部と第2型部とを閉成して、前記積層シートを狭圧することで、該積層シートに前記サービスホールの輪郭形状に沿った嵌合部と該嵌合部から外方へ延出するフランジ部とを備えた前記サービスホールカバーを形成する工程と、
前記第1型部および第2型部を開放して前記サービスホールカバーを脱型した後に、該サービスホールカバーの全周に亘っている前記フランジ部から前記発泡シートを除去することで、該フランジ部に透明または半透明の前記硬質シートのみの部位を露出させるようにした
ことを特徴とするサービスホールカバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サービスホールカバーおよびその製造方法に関し、更に詳細には、前記サービスホールカバーでインナーパネルに開設したサービスホールを塞ぐに際して、該サービスホールカバーを該インナーパネルへ取り付ける作業の効率と密封性を向上させ得る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、各種電装品等を組み込む作業等の便宜のために、所要寸法の大きさのサービスホールが開設されている。例えば、車両用ドア10は、図12に示すように、車両外側になるアウターパネル12と、車両内側になるインナーパネル14とからなり、両パネル12,14の間に、垂直に昇降するウィンドウ16や該ウィンドウ16をモータで昇降させる機構等の電装品(図示せず)を介在させる空間15が画成されている。前記インナーパネル14の適所には、所要寸法の大きさのサービスホール(開口部)18が開設され、前記ウィンドウ昇降機構等の電装品を前記空間15内に組み込む際に、作業者の手が該空間15へ容易に到達して組み込み作業をなし得るようになっている。なお、図12において符号20は、前記ドア10におけるインナーパネル14の外側(車両の内側になる)をカバーするドア内装パネルを示している。
【0003】
前記インナーパネル14のサービスホール18は開口部であるから、前記両パネル12,14の空間15へ各種電装品を組み付ける作業が終了すると、該サービスホール18は、例えばポリエチレン(PE)シートに吸遮音材を貼り付けたサービスホールカバー21で覆われる。具体的には、前記ポリエチレンシートからなるサービスホールカバー21は、前記サービスホール18の開口形状に倣った形状であって、かつ該サービスホール18の開口寸法より若干大きい寸法に設定されている。そして、前記サービスホール18を有する前記インナーパネル14の外周縁に、自己粘着性のシール材(例えば、ブチルゴム系粘着剤である所謂ブチルテープ)を粘着した後、前記サービスホールカバー21を前記自己粘着性のシール材に当てがって押圧することでインナーパネル14に貼り付ける。これにより前記サービスホール18は、前記サービスホールカバー21により全面的に覆われる。なお、車両走行時の音や前記電装品が発する音等を吸収乃至遮蔽するために、前記サービスホールカバー21に適宜の吸遮音材が設けられることは前述した通りである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平3−24365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記インナーパネル14に開設したサービスホール18は、前述したように、例えば車両用ドア10の空間15に電装品等を組み込むための大きな開口部であるから、該開口部を経て車両走行時の各種騒音が車内へ侵入して来てしまう。このため、適宜の吸遮音材を取り付けた前記サービスホールカバー21で前記サービスホール18を塞ぐのであるが、前述のように自己粘着性のシール材を使用して前記インナーパネル14の周縁に接着してから取り付ける必要があるため、作業性が悪く煩雑である、という難点がある。
【0006】
そこで、前述した従来のサービスホールカバー21に内在する課題を解決するため出願人は、硬質シートおよび発泡シートを重ねて立体形状に成形した積層構造のサービスホールカバーを提案して別途出願した。この別途出願したサービスホールカバーは、サービスホールを塞いだ状態でインナーパネルへの取り付けが簡単にでき、取付作業の効率が向上して極めて有用である。しかし、別途出願に係る前記サービスホールカバーを厳しい止水性能を担保した状態で前記インナーパネルに取り付けるためには、該カバーと該パネルとの間にブチルテープのような自己粘着性のシール材を介在させる必要がある。しかし、別途出願に係る前記サービスホールカバーの片面を構成する前記発泡シートは、不透明な素材であるために、当該カバーを前記インナーパネルに取り付けた状態では前記自己粘着性のシール材の状態を確認できない。そこで、前記サービスホールカバーをインナーパネルに取り付ける状態において、前記自己粘着性のシール材の位置を視認し得るようにしておけば、作業効率の向上が図られ、しかも両部材間の密封性も確保されて便利である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明は、車両のインナーパネルに開設したサービスホールを塞ぐサービスホールカバーにおいて、
前記サービスホールカバーは、前記サービスホールを塞いだ際に前記インナーパネルに接する側になる発泡シートと、該発泡シートに接着した透明または半透明の硬質シートとからなる積層シートを材料とし、
前記サービスホールカバーは、前記発泡シートの側に前記サービスホールと嵌合する嵌合部が形成されており、
前記サービスホールカバーの周縁には、前記嵌合部から外方へ延出するフランジ部が形成されており、
前記フランジ部は、前記サービスホールカバーの全周に亘って該フランジ部から前記発泡シートが除去された透明または半透明の硬質シートのみの部分を有していることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、サービスホールカバーは、発泡シートに形成した嵌合部をサービスホールの開口縁部に嵌合させることで、該サービスホールを覆った状態でインナーパネルに取り付けることができ、取り付け作業性の向上を図り得る。また、フランジ部は、透明または半透明の硬質シートのみの部位を有するので、前記サービスホールカバーをインナーパネルに取り付ける際に、該フランジ部を介して透視し得るので作業性が更に向上する。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記フランジ部における前記発泡シートが除去された透明または半透明の硬質シートの部分には、自己粘着性のシール材が取り付けられていることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、前記サービスホールの周縁部とフランジ部との間に自己粘着性のシール材が介在しているので、該サービスホールカバーとインナーパネルとの密封性を確保することができる。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記フランジ部における前記発泡シートが除去された透明または半透明の硬質シートの部分は、前記サービスホールカバーが前記サービスホールを塞いだ際に、前記インナーパネルとは反対側に凹ませた溝部が前記サービスホールカバーの全周に亘って設けられることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、前記フランジ部の硬質シート部に設けた凹状の溝部に前記自己粘着性のシール材が安定的に収容され、該フランジ部とインナーパネルとの良好な接着が実現される。
【0010】
請求項4に係る発明では、前記フランジ部における前記発泡シートが除去された透明または半透明の硬質シートの部分は、前記サービスホールカバーが前記サービスホールを塞いだ際に、前記インナーパネルとは反対側に離間する段差部が前記サービスホールカバーの全周に亘って設けられることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、前記フランジ部の硬質シート部に設けた段差部に前記自己粘着性のシール材が安定的に収容され、該フランジ部とインナーパネルとの良好な接着が実現される。
【0011】
前記課題を解決し得るサービスホールカバーを製造する方法として、請求項5に係る発明では、車両のインナーパネルに開設したサービスホールを塞ぐサービスホールカバーの製造方法において、
透明または半透明の硬質シートおよび発泡シートを重ねた積層シートを加熱して、該積層シートを軟化させる工程と、
前記サービスホールの輪郭形状に対応する第1成形面が形成された第1型部と、この第1型部の第1成形面に対応する第2成形面を形成した第2型部との間に、前記軟化した積層シートをその発泡シートが前記第1型部に指向する状態で介在させる工程と、
前記第1型部と第2型部とを閉成して、前記積層シートを狭圧することで、該積層シートに前記サービスホールの輪郭形状に沿った嵌合部と該嵌合部から外方へ延出するフランジ部とを備えた前記サービスホールカバーを形成する工程と、
前記第1型部および第2型部を開放して前記サービスホールカバーを脱型した後に、該サービスホールカバーの全周に亘っている前記フランジ部から前記発泡シートを除去することで、該フランジ部に透明または半透明の前記硬質シートのみの部位を露出させるようにしたことを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、請求項1の発明に係るサービスホールカバーを効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るサービスホールカバーによれば、サービスホールカバーを構成する硬質シートを透明または半透明にすると共に、該カバーの周縁のフランジ部において発泡シートを除去して該硬質シートの透明または半透明の部位を露出させるようにしてあるので、該サービスホールカバーをインナーパネルに取り付ける状態で接着部を確認することができて作業効率が向上し、しかも両部材間の密封性も確保することができる。また、本発明に係るサービスホールカバーの製造方法によれば、前記サービスホールカバーが簡単かつ効率的に製造される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は、本発明の一実施例に係るサービスホールカバーを背面側から観察した斜視図であり、(b)は、該サービスホールカバーを正面側から観察した斜視図である。
図2】サービスホールカバーをインナーパネルに取り付けてサービスホールを塞いだ状態で示す概略図である。
図3】(a)は、サービスホールカバーの正面図であり、(b)は、該サービスホールカバーの背面図である。
図4図3(a)のIV−IV線断面図であって、C1部を拡大して示してある。
図5図2のV−V線断面図であって、C2部を拡大して示してある。
図6】(a)は、第1成形型および第2成形型からなるサービスホールカバーの成形装置の断面図であって、両成形型を開放した状態で示してあり、(b)は、両成形型を閉成した状態を示す断面図である。
図7】(a)は、第1成形型および第2成形型により発泡シートおよび硬質シートを挟んで予備成形品を真空成形している状態を示す断面図であり、(b)は、(a)におけるC3部の拡大図である。
図8】(a)は、両成形型を開放して、成形された予備成形品を脱型した状態を示す断面図であり、(b)は、予備成形品の周縁部のトリミング作業を示している。
図9】別形態の係合爪部が設けられたサービスホールカバーを、インナーパネルに取り付けてサービスホールを塞いだ状態を示す断面図であって、C4部を拡大して示してある。
図10】サービスホールカバーにおけるフランジ部の全周に形成されてインナーパネルと反対側に凹む溝部に自己粘着性のシール材を介在させた断面図であって、C2部を拡大して示してある。
図11】サービスホールカバーにおけるフランジ部の全周に形成されてインナーパネルと反対側に離間する段差部に自己粘着性のシール材を介在させた断面図であって、C2部を拡大して示してある。
図12】従来の車両用ドアの概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係るサービスホールカバーおよびその製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下に説明する。実施例では、図12に示す車両用ドアのインナーパネルに開設したサービスホールを塞ぐサービスホールカバーについて説明するが、該インナーパネルは車両用ドアに付帯するパネルに限るものではない。なお、以後の説明では、インナーパネルに対してサービスホールカバーを取り付けた状態を基準として横方向および縦方向を規定すると共に、該インナーパネルの厚み方向を前後方向と云い、また車内側を指向する方向を前側と云うものとする。
【0015】
(サービスホール18について)
例えば、車両用ドア10のインナーパネル14は鋼板をプレス成形したものであって、図2に示すように、該インナーパネル14には複数(実施例では2つ)のサービスホール18が開設されている。前記サービスホール18は、前述したように前記アウターパネル12とインナーパネル14との空間15に電装品等を組み込むための作業用開口部であって、実施例に係るサービスホールカバー30は、前記インナーパネル14の右上部に開設されたサービスホール18(18A)を塞ぐものである。このサービスホール18(18A)は、横長の開口部として形成されており、その内縁を、上縁部18a、下縁部18bおよび左右の側縁部18c,18dと称する。そして、上縁部18aは略横方向に直線状に延在すると共に、右側縁部18dは縦方向に直線状に延在している。また、左側縁部18cは縦方向において湾曲して延在すると共に、下縁部18bは横方向において雲形に延在している。
【0016】
(当受け部22について)
また、図2および図5に示すように、前記インナーパネル14には、前記サービスホール18の開口縁部の周りを囲んで一段窪んだ形状になっている当受け部22が設けられている。この当受け部22は、図5に示すように、前記サービスホール18を塞いだ状態で前記サービスホールカバー30をインナーパネル14に取り付けた際に、該サービスホールカバー30の外周に沿設したフランジ部38(後述)を安定的に当接させると共に、係合爪部40(後述)を係合させるものである。
【0017】
(サービスホールカバー30について)
実施例のサービスホールカバー30は、殊に図4に示すように、硬質シート34と、該硬質シート34に重ね合わせた発泡シート32とからなる2層の積層シートとして構成されている。このサービスホールカバー30は、図6図8に示す各工程を経て製造されるもので、該工程で前記発泡シート32と硬質シート34とは熱接着される(後述)。そして、図5に示すように、前記サービスホール18を塞いだ状態でサービスホールカバー30をインナーパネル14に取り付けた際に、前記発泡シート32の面は前記インナーパネル14に接する側(後側)になり、前記硬質シート34は車内の側(前側)となる。なお、発泡シート32および硬質シート34が熱接着されたサービスホールカバー30は、立体形状に形成されており、前記サービスホール18を塞いで前記空間15へ突出する嵌合部36と、該嵌合部36の外周囲に沿設されたフランジ部38と、該フランジ部38の後側に設けられた係合爪部40とを備えている(何れも後述)。このサービスホールカバー30は、前記フランジ部38および係合爪部40をサービスホール18の開口縁部(当受け部22)に係合させることで、前記インナーパネル14に取り付けられて該サービスホール18を完全に閉塞する。
【0018】
(硬質シート34について)
前記硬質シート34は、図1(b)、図3および図4に示すように、サービスホールカバー30における前記嵌合部36およびフランジ部38を構成している。この硬質シート34は、透明または半透明合成樹脂製のシート材であり、前記フランジ部38は、一部が発泡シート32が除去されていることで、前側から後側が透視可能となっている。実施例の硬質シート34は、ソリッドのポリエチレン(PE)を材質としている。従って、前記硬質シート34は形状保持性を有している。また、前記嵌合部36およびフランジ部38が立体形状に形成されることで外力に対して適度の剛性を有し、外力により撓み変形や曲げ変形が発現した場合でも、この外力が解除された際には弾性的に元の形状に復帰するようになっている。なお、前記硬質シート34の厚みは0.3〜1.5mmの範囲が好ましい。
【0019】
(発泡シート32について)
前記発泡シート32は、図1(a)、図3(b)および図4に示すように、サービスホールカバー30の嵌合部36の部分に設けられている。また、該サービスホールカバー30のフランジ部38には該発泡シート32が設けられていない部位を有する。この発泡シート32は、発泡成形された合成樹脂のシート材である。実施例の発泡シート32は、前記硬質シート34にポリエチレンを採用しているため、ポリエチレン(PE)を発泡成形した軟質のシート材を材質とし、所要の弾力性および柔軟性を備えている。前記発泡シート32は、独立気泡構造の発泡シートであって、通気性、吸水性および透湿性を有していない。従って、車両走行時に発生する各種騒音を吸収・遮蔽する機能や防水機能に優れている。そして、発泡シート32は厚み方向での圧縮変形が可能である。また、発泡シート32の厚みは2.0〜15.0mmの範囲が好ましい。
【0020】
(嵌合部36について)
前記サービスホールカバー30の嵌合部36は、図1図3および図4に示すように、前記硬質シート34および発泡シート32から形成されている。この嵌合部36は、サービスホールカバー30により前記インナーパネル14を塞ぐと、該サービスホール18の内部へ進入して前記空間15に臨む凸形状になっていて、底板部36aと、該底板部36aを囲んで環状に延在する側板部36bとからなる。前記底板部36aは、前記サービスホール18より若干小さい寸法に設定されると共に、該サービスホール18の開口輪郭に略合致した外形輪郭を有している。前記底板部36aは、外縁部分よりも中央部分が前方に位置するよう湾曲している。また、前記側板部36bは、底板部36aの外縁に連なって前方へ立ち上がっている。そして、前記側板部36bの前縁は、前記サービスホール18の開口輪郭形状と略同じ形状となっている。このように凸形状になっている嵌合部36は、図5に示すように、前記サービスホールカバー30をインナーパネル14に取り付ける際に、前記サービスホール18内に進入して、前記底板部36aが該インナーパネル14よりも後側(アウターパネル12の側)に位置する。
【0021】
(フランジ部38について)
前記フランジ部38は、殊に図4に示すように、前記サービスホールカバー30の周縁に延設されている。すなわちフランジ部38は、前記嵌合部36の前縁から延出して斜め外方へ偏向する部分になっており、前記硬質シート34と前記発泡シート32とが圧着されている。そして、前記フランジ部38の一部または全部からは、図5に示すように、全周に亘って前記発泡シート32が除去されている。その結果として、前記フランジ部38は、透明または半透明の硬質シート34のみの硬質シート部を、前記嵌合部36の全周または前記サービスホールカバー30の全周に亘り露出している。更に、図5に示すように、前記フランジ部38における前記硬質シート部の後面に、前記嵌合部36を囲むシール部として機能する自己粘着性のシール材(例えばブチルテープ)Hが設けられている。従って、前記フランジ部38は、前記サービスホールカバー30をインナーパネル14に取り付ける際に、前記当受け部22に対し前側から当接するため、該サービスホールカバー30が前記空間15内へ入り込むことを規制する。そして、前記サービスホールカバー30をインナーパネル14に取り付けた状態では、前記フランジ部38における前記硬質シート部が、前記自己粘着性のシール材Hを介して前記当受け部22に押し付けられるため、該フランジ部38は自己粘着性のシール材Hにより該当受け部22に接着される。このように、前記サービスホール18の周囲が前記自己粘着性のシール材Hにより封止されるので、前記サービスホールカバー30とインナーパネル14との密封性が確保される。すなわち、車両用ドア10の前記空間15内に浸入した雨水が前記サービスホール18からインナーパネル14の前側(車内)へ入り込むのが防止される。また、外部騒音が車内へ侵入するのも低減できる。
【0022】
(係合爪部40について)
前記係合爪部40は、図1図5(殊に図4の拡大部)に示すように、前記嵌合部36を形成する側板部36bにおいて、前記発泡シート32に一体成形されたものである。この係合爪部40は、前記サービスホールカバー30の嵌合部36を前記サービスホール18に当てがって押し込んだ際に、該サービスホール18の開口周縁において前記インナーパネル14の後面に係合することで、該サービスホールカバー30が該インナーパネル14から前側へ離脱することを規制する。実施例のサービスホールカバー30には、前記係合爪部40が、前記嵌合部36の周方向へ断続的に複数(実施例では5個)形成されている。前記5つの係合爪部40の夫々は、前記サービスホール18の開口縁に沿って位置する前記当受け部22の後側に係合して、該当受け部22の前側に前記フランジ部38が密着した状態を維持する。また、各係合爪部40が前記当受け部22の後側に係合することで、車両走行中の振動や車両用ドア10を閉めた際の衝撃がサービスホールカバー30に伝達された場合でも、該サービスホールカバー30がインナーパネル14から離脱するのを防止し得る。
【0023】
前記各係合爪部40は、図7(b)を参照して製造方法の個所で後述するように、前記嵌合部36を形成する側板部36bにおいて、前記発泡シート32を部分的に外方へ膨出させて形成される。各係合爪部40は、発泡シート32において、前記嵌合部36の側板部36bを構成する部分に形成されるもので、該発泡シート32だけで形成されている。そして、前記発泡シート32の膨出により形成された各係合爪部40の内側には、硬質シート34との間に空洞42が形成されている。これにより、前記係合爪部40は硬質シート34に接着されておらず、前記空洞42の存在により弾性変形を容易に生じせる。
【0024】
(自己粘着性のシール材Hについて)
前記自己粘着性のシール材Hは、未加硫のブチルゴムをベースとしたテープ状のシーリング剤である。この自己粘着性のシール材Hは、前記インナーパネル14に設けた前記当受け部22に対して、前記サービスホールカバー30におけるフランジ部38の硬質シート部を接着する。なお、前記自己粘着性のシール材Hは、柔軟性に富むと共に容易な変形が可能であり、前記サービスホール18の周縁部に位置する前記当受け部22とフランジ部38における硬質シート部の後面との隙間を適切に埋めて、前記サービスホールカバー30とインナーパネル14との間の密封性を確保することができる。
【0025】
(成形装置50について)
次に、前述したサービスホールカバー30を製造する成形装置50について説明する。実施例のサービスホールカバー30は、図6に示す成形装置50により成形される。この成形装置50は、第1成形型(第1型部)52と、図示省略した作動手段の作動により該第1成形型52に対して近接・離間移動して開閉するよう配設された第2成形型(第2型部)54とを備えている。この第2成形型54は、作動手段の作動に基づいて、第1成形型52に近接して閉成した成形位置(図6(b)、図7(a)参照)および該第1成形型52から離間して開放した開放位置(図6(a)、図8(a)参照)の間を開閉する。また、成形装置50は、サービスホールカバー30を構成する前記発泡シート32および硬質シート34を重ね合わせた状態で両シート32,34の端縁を把持するシート把持体56を備えている。すなわち、成形装置50は、前記シート把持体56により重ね合わせた積層状態に把持した平坦状の発泡シート32および平坦状の硬質シート34を、第1成形型52および第2成形型54で挟み込むことで、立体形状をなす前記サービスホールカバー30を成形する。
【0026】
(第1成形型52について)
前記成形装置50の第1成形型52は、図6に示すように、第2成形型54に対向する部位(上部)に、上方へ向いた第1成形面58が設けられている。この第1成形面58は、凹凸状をなしており、前記シート把持体56に把持された発泡シート32の下側外面が押し付けられる。そして第1成形面58は、サービスホールカバー30の前記嵌合部36に対応する第1キャビティ型面58aが形成されていると共に、前記フランジ部38に対応する第2キャビティ型面58bが形成されている。そして、前記フランジ部38の硬質シート部(硬質シート34のみの部分)に対応する部位が、該発泡シート32を硬質シート34に押し付けずに離間させ得るように、後述の第2コア型面70bとの間隔を積層シートPの厚みより大きくしている。
【0027】
また、前記第1成形型52の第1成形面58には、前記サービスホールカバー30の各係合爪部40を成形するための複数(実施例では5つ)の係合爪用凹部60が形成されている。各係合爪用凹部60は、前記第1キャビティ型面58aの側壁面に、各係合爪部40の外面形状を反転した凹状に形成されている。そして、図6(b)および図7に示すように、前記第1成形型52と第2成形型54とを閉成した状態において、前記係合爪用凹部60とそれに対応する第1コア型面70a(後述)との間に形成されるクリアランスは、加熱前の前記積層シートPの厚みより大きくなるよう寸法設定してある。従って、第1成形型52と第2成形型54とを閉成した状態で真空成形を行うと、前記係合爪用凹部60により発泡シート32に形成された前記係合爪部40および硬質シート34の間に、前記空洞42が形成される。
【0028】
そして、第1成形型52には、前記第1成形面58における前記第1キャビティ型面58a、第2キャビティ型面58bおよび各係合爪用凹部60の所要位置に、複数の第1吸引孔(吸引孔)62が開口形成されている。各第1吸引孔62は、第1成形型52内に形成された第1通気路64を介して、該第1成形型52の外面に開口形成された第1排気孔66と連通している。更に、第1成形型52には、前記第1排気孔66から空気を吸引する第1吸気装置68が配設されている。すなわち、第1成形型52は、第1吸気装置68を作動させることで第1成形面58の各第1吸引孔62から空気を吸引して、前記発泡シート32を、該第1成形面58の第1キャビティ型面58a、第2キャビティ型面58bおよび各係合爪用凹部60に密着させて真空成形する真空成形型である。
【0029】
(第2成形型54について)
前記成形装置50の第2成形型54には、図6に示すように、前記第1成形型52の第1成形面58に対向する外部輪郭を有する第2成形面70が設けられている。前記第2成形面70は、前記サービスホールカバー30の前面の形状を反転した凸状をなしており、前記シート把持体56に把持された硬質シート34の上側外面が押し付けられる。更に詳しくは、前記第2成形面70は、サービスホールカバー30の前記嵌合部36の前側に対応する第1コア型面70aと、該サービスホールカバー30の前記フランジ部38の前側に対応する第2コア型面70bとからなる。すなわち、図6(b)に示すように、前記第1成形型52と第2成形型54とを相対的に閉成すると、前記第1成形面58の第1キャビティ型面58aと前記第2成形面70の第1コア型面70aとが対向すると共に、該第1成形面58の第2キャビティ型面58bと該第2成形面70の第2コア型面70bとが対向するように構成されている。そして、前記第2成形面70の第1コア型面70aは、前記成形位置において、前記第1成形面58の第1キャビティ型面58aに対して、前記サービスホールカバー30(積層シートP)の厚みに基づいた間隔で対向する。具体的には、前記第1成形面58の第1キャビティ型面58aと第2成形面70の第1コア型面70aとの間隔は、積層シートPの厚み(発泡シート32の厚みと硬質シート34の厚みとを合わせた厚み)より僅かに小さく設定されている。また、前記第2成形面70の第2コア型面70bは、前記成形位置において、前記フランジ部38の硬質シート部(硬質シートのみの部分)に対応する部位が、前記第1成形面58の第2キャビティ型面58bに対して、前記サービスホールカバー30(積層シートP)の厚みよりも大きい間隔で対向するようになっている。
【0030】
また、図6(a)に示すように、第2成形型54には、前記第2成形面70における第1コア型面70aおよび第2コア型面70bの所要位置に、複数の第2吸引孔(吸引孔)72が開口形成されている。各第2吸引孔72は、第2成形型54内に形成された第2通気路74を介して、該第2成形型54の外面に開口形成された第2排気孔76と連通している。更に、第2成形型54には、前記第2排気孔76から空気を吸引する第2吸気装置78が配設されている。すなわち、第2成形型54は、第2吸気装置78を作動させることで第2成形面70の各第2吸引孔72から空気を吸引して、前記硬質シート34を該第2成形面70に密着させて真空成形を行う。
【0031】
従って、実施例の成形装置50は、図7(a)および図7(b)に示すように、前記第1成形型52および第2成形型54が相対的に閉成した型閉め状態において、該第1成形型52の第1成形面58における第1キャビティ型面58aと該第2成形型54の第2成形面70における第1コア型面70aとの間では、硬質シート34と発泡シート32とを挟み込むように構成されている。これにより、発泡シート32が厚み方向に適宜圧縮されて、該発泡シート32および硬質シート34が互いに押し付けられる。一方、実施例の成形装置50は、前記型閉め状態において、該第1成形型52の第1成形面58における第2キャビティ型面58bと該第2成形型54の第2成形面70における第2コア型面70bとの間では、その一部または全部が前記嵌合部36の全周に亘って、前記硬質シート34と発泡シート32とを圧着させないように構成されている。すなわち、第2キャビティ型面58bと第2コア型面70bとの間では、前記発泡シート32が第1成形型52の真空吸引により該第2キャビティ型面58bに密着する一方、前記硬質シート34が第2成形型54の真空吸引により該第2コア型面70bに密着して、両シート52,54が互いに離間して隙間が画成される部位が出来る(図7(b)参照)。
【0032】
(加熱手段について)
実施例の成形装置50には、前記シート把持体56で把持した平坦状の積層シートPの発泡シート32および硬質シート34を、所定の成形温度まで加熱する加熱手段(図示せず)を備えている。この加熱手段は、前記第1成形型52および第2成形型54によりサービスホールカバー30を成形する前に、発泡シート32を前記嵌合部36および係合爪部40の形状に変形可能な状態まで加熱して軟化させるものである。また、硬質シート34を、前記嵌合部36およびフランジ部38の形状に変形可能な状態まで加熱して軟化させる。但し、前記発泡シート32および硬質シート34は、軟化する状態までに温度制御されるに止まり、この段階では両シート32,34が熱接着されるものではない。
【0033】
(サービスホールカバー30の製造方法について)
次に、図6図8を引用して、前記成形装置50による実施例のサービスホールカバー30の製造方法について説明する。なお、前記発泡シート32および硬質シート34は、予め所要寸法に裁断されている。
【0034】
(発泡シート32および硬質シート34の軟化工程)
先ず、前記発泡シート32および硬質シート34を前記シート把持体56,56により重ね合わせた状態で把持する。このようにシート把持体56,56で把持した積層シートP(発泡シート32および硬質シート34)を、図示しないヒータ等の加熱手段により加熱して軟化させる。なお、シート把持体56で把持した積層シートPは、発泡シート32および硬質シート34を重ね合わせただけであり、両シート32,34は互いに接着してはいない。
【0035】
(発泡シート32および硬質シート34のセット)
次に、図6(a)に示すように、前記第2成形型54を、第1成形型52の上方へ開放して開放位置に待機させる。そして、前記シート把持体56,56を第1成形型52の上方へ移動させ、加熱により軟化状態にある前記積層シートP(発泡シート32および硬質シート34)を、発泡シート32を該第1成形型52に指向させると共に硬質シート34を第2成形型54に指向させた状態で、該第1成形型52の第1成形面58の上方に位置させる。
【0036】
(発泡シート32および硬質シート34の成形工程)
次に、前記第1成形型52に配設した前記第1吸気装置68および前記第2成形型54に配設した前記第2吸気装置78を夫々作動させた状態で、第2成形型54を開放位置から成形位置に向けて閉成させる。ここで、第2成形型54が成形位置まで閉成する直前の適宜タイミングにおいて、前記シート把持体56,56で把持された積層シートPの発泡シート32が、第1成形型52の第1成形面58に接触する。この際に、図7(a)および図7(b)に示すように、前記各第1吸引孔62から空気が真空吸引されていることで、発泡シート32は、第1成形面58における第1キャビティ型面58a、第2キャビティ型面58bおよび各係合爪用凹部60に真空吸引されて密着し、該第1キャビティ型面58a、第2キャビティ型面58bおよび各係合爪用凹部60の外面に沿った立体形状に真空成形される。
【0037】
一方、第2成形型54が成形位置まで移動する直前のタイミングにおいて、前記シート把持体56で把持された積層シートPの硬質シート34が、第2成形型54の第2成形面70に接触する。この際に、図7(a)および図7(b)に示すように、前記各第2吸引孔72から空気が真空吸引されていることで、硬質シート34は、第2成形面70における第1コア型面70aおよび第2コア型面70bに真空吸引されて密着し、該第1コア型面70aおよび第2コア型面70bの外面に沿った立体形状に真空成形される。
【0038】
次に、図7に示すように、前記第2成形型54を前記成形位置まで閉成させて、第1成形型52の第1成形面58に密着した発泡シート32と、第2成形型54の第2成形面70に密着した硬質シート34とを、該第1成形型52および第2成形型54によって厚み方向の両側から挟圧する。これにより前記硬質シート34および発泡シート32は、前記嵌合部36において、前記各係合爪部40を除いた部分で相互に密着する。これにより、厚み方向から挟まれた発泡シート32および硬質シート34は、加圧されると共に軟化状態にあるために、前記係合爪部40の形成部分およびフランジ部38の形成部分の一部を除いた部分が全面的に密着し融着することで熱接着がなされる。
【0039】
前記第1成形型52および第2成形型54を型閉めした状態で所定時間に亘り保持することで、第1成形型52および該第2成形型54で押圧された前記発泡シート32と硬質シート34との互いに密着した部分を熱接着する。これにより、発泡シート32と硬質シート34とが接着している前記嵌合部36と、該硬質シート34から離間した前記発泡シート32からなる各係合爪部40と、該発泡シート32および硬質シート34が部分的に接着されないフランジ部38とが立体形状をなす予備成形品Wが成形される。
【0040】
(予備成形品の脱型工程)
所定時間の経過後に、図8(a)に示すように、前記第2成形型54を前記第1成形型52から離間させて型開きし、シート把持体56,56を第1成形型52から離間させることで、成形された予備成形品Wを該第1成形型52から脱型する。なお、第1成形型52の各係合爪用凹部60により真空成形された各係合爪部40は、予備成形品Wの脱型方向において該第1成形型52の第1成形面58と重なっており、各係合爪部40の空洞42が容易に弾性変形することで、第1成形型52から予備成形品Wの離脱が許容される。
【0041】
(トリミング工程)
成形された予備成形品Wは、図8(b)に示すように後工程において、硬質シート34は、シート把持体56で把持されていた不要部分を、カッター等の切断手段によりトリミングする。また、発泡シート32は、前記フランジ部38における硬質シート34と接着されていない部分を切除する。これにより、前記サービスホール18(18A)の輪郭形状よりも一回り大きいサイズの外部輪郭をなすサービスホールカバー30が成形される。
【0042】
(インナーパネル14へのサービスホールカバー30の取り付け)
前記成形装置50により成形された実施例のサービスホールカバー30は、前記サービスホール18(18A)が開設されたインナーパネル14への取り付け前に、前記フランジ部38の前記発泡シート32が切除されて硬質シート34のみとなった部位(硬質シート部)の後面(インナーパネル14の当受け部22に対向する面)に、前記嵌合部36を囲むように環状に自己粘着性のシール材Hを貼着する。ここで、前記フランジ部38の硬質シート部は、前述したように透明または半透明の硬質シート34だけで形成されているので、該フランジ部38の後面に貼着した前記自己粘着性のシール材Hを、該フランジ部38の前側から透視することができる。
【0043】
前記自己粘着性のシール材Hをフランジ部38の後面に貼着したサービスホールカバー30は、図5に示すように、インナーパネル14に対して、サービスホール18に前記嵌合部36を整合させた状態で前側から押し付けて取り付ける。この際に、サービスホールカバー30に形成された各係合爪部40は、サービスホール18の開口縁部に当接するようになる。この状態で、サービスホールカバー30を後方へ更に押すことにより、サービスホール18の開口縁部に押された各係合爪部40は、前記空洞42の空間が潰されて弾性変形する。これにより、各係合爪部40は、潰れるように弾性変形することでサービスホール18を通過することが許容され、弾性変形した状態で該サービスホール18を通過してインナーパネル14の後側へ移動する。そして、各係合爪部40は、サービスホール18からインナーパネル14の後方へ抜け出ると、該サービスホール18の開口縁部による押し付けが解除されることで元の形状に弾性復帰する。
【0044】
図5に示すように、前記各係合爪部40は、前記空洞42の空間がもとの容積に拡大するように弾性復帰することで、サービスホール18の開口縁部に沿って延在する前記当受け部22に対し、インナーパネル14の後側から係止する。一方、サービスホールカバー30の前記フランジ部38が、前記当受け部22に対してインナーパネル14の前側から押し付けられるので、自己粘着性のシール材Hが前記当受け部22に貼着される。従って、サービスホールカバー30は、フランジ部38および各係合爪部40が前記当受け部22を挟んで前後から当接および係止することで、該フランジ部38がサービスホール18の開口縁部を囲むように環状に接着されて、サービスホール18を塞いだ状態でインナーパネル14に取り付けられる。
【0045】
図2および図5に示すように、インナーパネル14に取り付けられた実施例のサービスホールカバー30は、発泡シート32がサービスホール18からドア空間15内に露出している。また、サービスホールカバー30は、フランジ部38がサービスホール18の開口縁部に沿って自己粘着性のシール材Hにより接着されると共に、発泡シート32からなる各係合爪部40が該当受け部22に後側から弾力的に当接することで、インナーパネル14に弾力的に掛止される。これにより、サービスホールカバー30は、サービスホール18の外周囲をフランジ部38で封止した状態で該サービスホール18を塞ぐようになる。従って、サービスホールカバー30は、空間15内に入った雨水がサービスホール18を介してインナーパネル14の前側へ進入することを防止する。また、サービスホールカバー30は、車両の外部から空間15内に進入した車外騒音を発泡シート32で吸収、遮断し得るので、車外騒音がサービスホール18から車内へ入るのを低減させる。
【0046】
また、実施例のサービスホールカバー30は、前記フランジ部38の後面に貼着した前記自己粘着性のシール材Hを、インナーパネル14に取り付ける際および取り付けた際にサービスホールカバー30の前側から確認可能である。これにより、前記自己粘着性のシール材Hが、前記フランジ部38の後面に対して環状に貼着されているか否かを確認することが可能であり、また該フランジ部38に貼着した自己粘着性のシール材Hにより、サービスホールカバー30とインナーパネル14との間の密封性が向上する。
【0047】
従って、実施例のサービスホールカバー30によれば、発泡シート32と硬質シート34とが接着された2層の積層構造となっているので、該硬質シート34により形状保持性が確保される。そして、前記発泡シート32と硬質シート34は、前記各係合爪部40が形成された部分を除く部分で接着されているため、両シート32,34が剥離することが防止される。
【0048】
そして、車両用ドア10のインナーパネル14に取り付けたサービスホールカバー30は、一方の面となる発泡シート32がサービスホール18に臨んでいるので、車両走行時の車外騒音を吸収・遮断し、該車外騒音がサービスホール18を介して車内へ入り込むことを低減させる。従って、実施例のサービスホールカバー30は、別途の吸遮音材を後付けすることは必ずしも要求せず、コスト低減を図り得る。また、前記サービスホールカバー30は、各係合爪部40を前記サービスホール18の開口縁部に沿った当受け部22に嵌合させるだけで、該サービスホール18を塞いだ状態でインナーパネル14に取り付けることができ、取り付け作業性の向上を図り得る。
【0049】
また、実施例のサービスホールカバー30の各係合爪部40は、前記嵌合部36の側板部36bにおいて、前記発泡シート32を部分的に外方へ膨出させることにより形成される。従って、発泡シート32の膨出部分と硬質シート34との間に空洞42が形成されているので、各係合爪部40は、空洞42により弾性変形が容易に発現する。これにより、インナーパネル14に対してサービスホールカバー30を取り付ける際には、各係合爪部40が弾性変形し易いことで、該インナーパネル14に対する当該サービスホールカバー30の取り付け作業が格段に容易となる。また、インナーパネル14に対してサービスホールカバー30を適切な姿勢で取り付けることができる。
【0050】
また、実施例のサービスホールカバー30には、前記サービスホール18の内部へ進入する嵌合部36が形成されていることで、サービスホールカバー30が立体形状をなしており、該サービスホールカバー30の剛性を高めることができる。そして、嵌合部36がサービスホール18の内部へ進入することで、サービスホールカバー30がインナーパネル14の外側(前側)へ突出しないので、インナーパネル14と該インナーパネル14に取り付けられるドア内装パネル20との間隔を狭めることができ、車両用ドア10を車体に閉成した際に車内を広くすることができる。
【0051】
更に、実施例のサービスホールカバー30は、前記フランジ部38の後面に貼着した前記自己粘着性のシール材Hを、当該カバー30をインナーパネル14に取り付けた状態において透視できるので、該自己粘着性のシール材Hによる密封が適切であるか否かを確認することができる。従って、サービスホールカバー30とインナーパネル14の密着状態の良否を、適時に簡単に確認できて便利である。
【0052】
一方、実施例のサービスホールカバーの製造方法によれば、透明または半透明の硬質シート34と発泡シート32とは、前記成形装置50の第1成形型52および第2成形型54を型閉めした状態の下で、フランジ部38が形成される部位において、その一部または全部が前記嵌合部36の周り全周またはサービスホールカバー30の周縁部全周に亘り接着されないようにした。これにより、発泡シートのみを切除し易くでき、フランジ部38に透明または半透明の硬質シート34だけの部位を形成することが容易となり、該フランジ部38を透視可能に構成することができる。従って、サービスホールカバー30をインナーパネル14に取り付けた状態において、フランジ部38をインナーパネル14の当受け部22に固定する自己粘着性のシール材Hによる密封状態を確認することを可能とする。
【0053】
そして、前述したサービスホールカバーの製造方法によれば、硬質シート34により形状保持性を有すると共に発泡シート32により吸遮音機能を有するサービスホールカバー30を成形することができる。また、サービスホールカバー30の成形と同時に発泡シート32に各係合爪部40を成形することができるので、製造コストを低減することができる。また、発泡シート32に成形された係合爪部40と硬質シート34との間に空洞42を形成することができるので、弾性変形が容易な該係合爪部40を成形することができる。これにより、車両用ドア10のインナーパネル14に対する取り付け作業を格段に容易にしたサービスホールカバー30を製造することができる。
【0054】
(変更例)
本発明に係るサービスホールカバーは、実施例に例示の形態に限らず種々の変更が可能である。
(1)実施例では、車体における車両用ドア10のインナーパネル14に開設されたサービスホール18を例示したが、本願のサービスホールカバーが取り付けられるサービスホールは、車両用ドア10以外のインナーパネルに開設されたサービスホールも対象とされる。
(2)インナーパネル14に開設されるサービスホール18は、車両用ドア10の形状や大きさに応じて開口形状、開口寸法、開口位置が異なっている。このため、サービスホールカバー30は、塞ぐ対象のサービスホール18に合わせて外形形状および寸法が異なる。
(3)発泡シート32に設けられる係合爪部40の数は、実施例で例示した5個に限るものではなく、サービスホールカバー30の形状やサイズに応じて6個以上または4個以下であってもよい。
(4)発泡シート32に形成される係合爪部40の断面形状は、実施例で例示した形状に限らない。例えば、図9に示すように、前方にいくにつれて突出量が大きくなる(後方にいくにつれて突出量が小さくなる)鉤状であってもよい。このような鉤状の係合爪部40の場合には、サービスホールカバー30をインナーパネル14に取り付ける際に、サービスホール18の開口縁部に対して該係合爪部40が引っ掛かり難くなり、該係合爪部40をサービスホール18の開口縁部に対して掛止し易くすることができる。
(5)図10に示すように、前記フランジ部38における前記発泡シート32が除去された透明または半透明の前記硬質シート34の部分は、前記サービスホールカバー30が前記サービスホール18を塞いだ際に、前記インナーパネル14とは反対側に凹ませた溝部38aが前記サービスホールカバー30の全周に亘って設けられる構成にしてもよい。なお、図10に示す場合は、前記フランジ部38における前記発泡シート32を前記溝部38aの開口幅だけ除去するのがよい。
(6)図11に示すように、前記フランジ部38における前記発泡シート32が除去された透明または半透明の硬質シート34の部分は、前記サービスホールカバー30が前記サービスホール18を塞いだ際に、前記インナーパネル14とは反対側に離間する段差部38bが前記サービスホールカバー30の全周に亘って設けられる構成にしてもよい。
(7)硬質シート34におけるフランジ部38の形成予定部位の発泡シート32と対向する側に、該発泡シート32との接着を不能とする接着防止剤を塗布して、第1成形型52と第2成形型54との型閉め時に発泡シート32および硬質シート34が押し付けられても、該フランジ部38の形成予定部位に該発泡シート32が接着されないようにしてもよい。
(8)実施例では、1つの嵌合部36を設けたサービスホールカバー30により、1つのサービスホール18を塞ぐ構成を例示したが、2つ以上の嵌合部36を設けた1つのサービスホールカバー30により、2つ以上のサービスホール18を塞ぐように構成してもよい。
(9)実施例では、ポリエチレン(PE)製の発泡シートおよびポリエチレン(PE)製の硬質シートを使用したサービスホールカバー30を例示したが、これら発泡シートおよび硬質シートの材質はこれに限るものではなく、熱可塑性樹脂(好ましくはオレフィン系樹脂)であればよい。但し、発泡シートおよび硬質シートは、互いに熱接着(融着)が可能な樹脂の組み合わせとすることが好ましく、例えばポリプロピレン(PP)の発泡シートとポリプロピレン(PP)のソリッドの硬質シートとしてもよい。
(10)発泡シートとしては、比重が0.015〜0.1、圧縮応力が35KPa〜90KPa(JIS K6767 圧縮歪25%)のものが好ましく、また硬質シートは、比重が0.9〜0.97、曲げ弾性率が780MPa(JIS K7171)以上のものが好ましい。
(11)成形装置50の第1成形型52および第2成形型54は、上下方向に近接、離間して開閉するものに限らず、第1成形型52および第2成形型54が横方向または斜め方向に近接、離間して開閉するものであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
14 インナーパネル,18 サービスホール,30 サービスホールカバー,
32 発泡シート,34 硬質シート,36 嵌合部,38 フランジ部,38a 溝部,
38b 段差部,40 係合爪部,52 第1成形型(第1型部),
54 第2成形型(第2型部),58 第1成形面,70 第2成形面,
H 自己粘着性のシール材(接着部),P 積層シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12