前記板金部材は前記前下パイプ材と結合され、フロアとの締結用孔を有することを特徴とするシートフレームは、前方を上下のパイプ材と板金部材で固定するため、横倒れ荷重に強く、座面下のトレイ収納空間も確保できる。
【背景技術】
【0002】
車両において、シート下の空間を利用することが行われている。特許文献1では、飲料用缶などの冷却又は加熱装置をシートアンダートレイに空調からのダクトを配置することで実現するという内容である。
【0003】
加熱冷却といった機能を有さず、単に物の収納場所としてのシートアンダートレイについても発明が開示されている。特許文献2では、シートアンダートレイが振動などで飛び出さないようなロック機構について開示されている。
【0004】
一方、車両のシートは、様々な外力が加わっても一定以上の強度を有することが求められる。特許文献3には、前後にスライドするタイプのシートの横倒れ荷重に対する強度向上に関する発明が開示されている。ここでは、車両前後に配置するロアアーム同士を、ロアアームの前後でロッドによって連結することで、略矩形枠形状に形成されるクッションフレームが開示されている。
【0005】
特許文献3ではさらに、ロッドとロアアームの接合部分にブラケットをそれぞれ配置し、そのブラケットがスライドレールに連結する構造において、各ブラケットは、ロアアームに対して離間状態にすることで、横倒れ荷重に対する耐性が向上する点が開示されている。このように、車両のシート構造においては、横倒れ荷重に対する耐性は重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
座面の下にトレイを配置する構造においては、トレイを収納する空間を確保する必要がある。一方で、上記のように横倒れ荷重に対する耐性の確保も必要である。さらに、強度と収納空間を確保するために、シートフレームの重量が重くなる、若しくは嵩高い構造になってしまっては、車両全体の燃費低下につながってしまう。
【0008】
したがって、座面下にトレイを有するシートの場合、そのシートフレームには、トレイを収納する空間の確保、横倒れ荷重の向上、軽量で小型の構造が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたものである。具体的に本発明に係るシートフレームは、
座面下の左右に前後方向に配置されたシートフレームにおいて、
前記シートフレーム前部の上下位置を橋渡し結合する前上パイプ材および前下パイプ材と、
下方を結合する板金部材があり、
前記板金部材は前記前下パイプ材と結合され、フロアとの締結用孔を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るシートフレームは、左右のメインフレーム同士の固定には、後方を後支持フレームで床面に固定することに加えて、前方を上下のパイプ材と板金部材で固定するため、横倒れ荷重がかかっても、十分な耐性を有している。
【0011】
また、前方は上下のパイプ材で固定するので、メインフレームを固定するパイプ材の直径を細くすることができる。したがって、上下のパイプ材の間にトレイを収納する空間を確保することができる。
【0012】
また、シートフレームの前方下部は左右のメインフレーム同士を板金部材で連結する。そしてこの板金部材には、床面との結合に用いる結合孔が必要数だけ設けることができる。したがって、シートフレームと床面との固定を強固にすることができる。また、下パイプ材は、板金部材に溶接などで結合されているので、嵩高くならず背を低くできる。その結果、トレイのスペース確保に有利となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明に係るシートフレームについて図面および実施形態を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
【0015】
また、本明細書においては、前方(若しくは前方側)とは車両の前方をいい、後方(若しくは後方側)とは車両の後方を指す。また、上方とは、車内から見てルーフ側をいい、下方とはフロア側をいう。
【0016】
図1に本発明に係るシートフレームが適用されるシート90の外観を例示する。本発明に係るシートフレーム1(
図2参照)は座面92下にトレイ94が配置されるタイプのシートに適用される。
図1(a)はトレイ94が座面92下に収容されている状態であり、
図1(b)はトレイ94が引き出されている状態を示す。なお、符号91はシートバックである。
【0017】
このシート90は、連座状態に配置されている状態を示しているが、2座以上のシート90が並列に配置されていてもよい。また、複数のシートの中で、1座分だけに本発明に係るシートフレーム1を適用してもよい。
【0018】
また、本発明に係るシートフレーム1は前部座席と後部座席のいずれに適用してもよい。しかし、後部座席に適用する方が望ましい場合が多い。以下の説明では、後部座席に適用する場合について説明する。
【0019】
図2にシートフレーム1の外観を示す。このシートフレーム1の上部にシートクッション(座面)92やシートバック91(
図1参照)が配置される。シートフレーム1は、左右のメインフレーム10a、10bと、メインフレーム10a、10b間を連結するパイプ材12a、12bと、メインフレーム10a、10bの後端を支持する後支持フレーム14a、14bと、前方を支持する前支持フレーム16a、16bと、メインフレーム10a、10bの前方同士を連結している板金部材18で構成されている。なお、符号12cは、建付け精度確保のための棒材である。
【0020】
また、トレイ94(
図1参照)を出し入れするために、左右のメインフレーム10a、10bの下方には、ガイド体20a、20bが配置され、トレイ94を閉じた状態で固定するためのストライカー12bsが、メインフレーム10a、10bの前端同士を結合する前上パイプ材12bに取り付けられていてもよい。
【0021】
ストライカー12bsは、前上パイプ材12bとほぼ平行に配置されたロック体12bsmと、ロック体受け12bsfで構成されている。ロック体受け12bsfは、前上パイプ材12bに溶接接続している。またロック体受け12bsfとロック体12bsmも溶接で連結されている。
【0022】
メインフレーム10a、10bは、断面逆U字状若しくはハット状で、略直線状に形成された金属部材である。軽量化のために強度が許す範囲内で肉抜きのための貫通孔が貫穿されていてもよい。メインフレーム10a、10bは左右の一対で構成される。メインフレーム10a、10bはその長手方向を前後方向に向け、所定の間隔でほぼ平行に配置される。
【0023】
メインフレーム10a、10bの後端には、後支持フレーム14a、14bが連結される。後支持フレーム14a、14bは、第1後支持フレーム14aと第2後支持フレーム14bの2種類で構成されている。
【0024】
第1後支持フレーム14aと第2後支持フレーム14bの違いは、メインフレーム10a、10b後端から車両の床面までの高さの違いである。車両では、インナーベルトがシート内側に取り付けられる。第2後支持フレーム14bは、ベルトアンカが設置される方向に配置される。そこで、ベルトアンカの強度を確保するために、第2後支持フレーム14bは高さが低く設定されている。したがって、左右の座席では、第1後支持フレーム14aと第2後支持フレーム14bの取付けが逆になっている。
【0025】
なお、第1後支持フレーム14aと第2後支持フレーム14bには、床面との締結のための締結用孔(図示せず)が貫穿されている。また、第1後支持フレーム14aも第2後支持フレーム14bにもガイド体20a、20bを掛止するための溝(図示せず)が形成されている。
【0026】
メインフレーム10a、10bの後支持フレーム14a、14bより前方であって、メインフレーム10a、10bの中央よりも後ろ側(メインフレーム10a、10bの後部)には、棒材12cが左右のメインフレーム10a、10bの間を橋絡している。すでに述べたように、棒材12cは、メインフレーム10a、10b間の建付け精度を確保するためのものである。
【0027】
左右のメインフレーム10a、10bの前端には、前支持フレーム16a、16bが連結される。前支持フレーム16a、16bは、断面L字状の2つのフレーム部材を互いに嵌合するように組み合わせ1面が開口した箱形状に形成された前端部材で形成される。この前支持フレーム16a、16bの上面16au、16buの裏側にメインフレーム10a、10bの前端上面が重ね合わされ固定される。この固定は、ボルト止めでもよいし、溶接でもよい。
【0028】
なお、前支持フレーム16a、16bは、メインフレーム10a、10bとの結合部分の直下にガイド体20a、20bの端部を掛止する溝(図示せず)が形成されている。
【0029】
左右のメインフレーム10a、10bの前端同士は、前上パイプ材12bで連結される。なお、前上パイプ材12bは、前支持フレーム16a、16b同士を連結することで、間接的に左右のメインフレーム10a、10bを連結している。メインフレーム10a、10bは上下方向にはあまり幅を有していないので、前上パイプ材12bを直接接合するブラケット部分がないからである。前支持フレーム16a、16bの下端には、左右の前支持フレーム16a、16b同士を連結する前下パイプ材12aと板金部材18が配置される。
【0030】
図3(a)には、板金部材18が床面と接続される部分の側面断面図を示す。後部座席の床面100は前方から後方に向かってせり上がり、所定の高さから水平面101となる。後部座席は、床面100からせり上がり、続く略平坦な水平面101に固定される。
【0031】
シートフレーム1の前支持フレーム16a、16b(
図2参照)は床面100からのせり上がりから水平面101の境界から後方に設置される。板金部材18は、断面L字状に形成された板材で、床のせり上がり面に一方の面(板金部材前面18a)が沿う角度で前支持フレーム16a、16bに固定される。他方の面(板金部材後面18b)の端は、水平面101に合わせて水平に形成されている。この部分を水平縁部18cと呼ぶ。床面100のせり上がり面に沿った板金部材前面18aには、床との固定のための固定用の締結用孔18hが貫穿されている。
【0032】
図3(b)には、板金部材18だけの斜視図を示す。板金部材18の中央付近には、前下パイプ材12aを抱持する折り返し形状18sが形成されている。折り返し形状18sは、前下パイプ材12aの下方を支持する下側折り返し形状18saと前下パイプ材12aの上側を支持する上側折り返し形状18sbで構成されている。
【0033】
上側折り返し形状18sbは、板金部材後面18bの両端を所定の幅だけ折り返して形成する。下側折り返し形状18saは、上側折り返し形状18sbの両内側に所定の幅分だけ、水平より上側に折り返す。この折り返す角度は、上側折り返し形状18sbも下側折り返し形状18saでも板金部材後面18bに対してほぼ垂直に折り返してよい。
【0034】
このようにして、
図3(a)で示すように、板金部材18のすぐ後ろ側に前下パイプ材12aは、抱持される。なお、前下パイプ材12aは、この状態で板金部材18に溶接される。したがって、前下パイプ材12aと板金部材18は、高さを低く構成することができ、また、床面100との結合も強固である。
【0035】
以上のように、本発明のシートフレーム1は、メインフレーム10a、10bの前端には前支持フレーム16a、16bが、後端には後支持フレーム14a、14bが配置され、メインフレーム10a、10bの後部は床面100と固定され、メインフレーム10a、10bの前部は前支持フレーム16a、16bが上方では前上パイプ材12bが、そして下方では板金部材18に溶接された前下パイプ材12aで連結されているので、横倒し荷重に対して強度を有するとともに、前上パイプ材12bおよび前下パイプ材12a(板金部材18)との間に空間を有するので、トレイスペースを確保することもできる。
【0036】
なお、本発明に係るシートフレーム1はシートアンダートレイ94が装着される。そのための構造について以下に説明する。
【0037】
すでに述べたように、左右のメインフレーム10a、10bの後支持フレーム14a、14bおよび前支持フレーム16a、16bには、ガイド体20a、20bを掛止するための溝が形成されている。そこで、シートフレーム1を組み上げる際に、ガイド体20a、20bをこれらの溝に掛止させる。つまり、
図2に示すように、メインフレーム10a、10bの直下にガイド体20a、20bが配置される。
【0038】
ガイド体20a、20bは、上ガイド体と下ガイド体が一体に形成されたものである。上ガイド体と下ガイド体の間をトレイ94のスライド部が走行することで、トレイ94の出し入れがスムースに行える。
【0039】
図4には、トレイ94を示す。
図4(a)はトレイ94の正面図であり、
図4(b)はトレイ94の側面図である。トレイ94は上面が開口した矩形箱状のトレイ本体94aと、トレイ本体94aの前面の取付け部94bに取り付けられた前カバー94cと、トレイ本体94aの左、右上端それぞれに左、右に張り出すように取り付けられたスライド部94sと、前カバー94cのほぼ中央に上端が左右方向の支軸を中心に回転自在に取り付けられた操作レバー94dとを備えている。また、取付け部94bの下端には2個のローラ94rが回転自在に取り付けられている。
【0040】
なお、
図4(b)では、シートフレーム1の前上パイプ材12bがトレイ94後方に存在しており、トレイ94を前方に引き出した状態を示していることがわかる。
【0041】
トレイ94は、トレイ本体94aより左右に張り出したスライド部94sが、ガイド体20a、20bの上ガイド体と下ガイド体の間を摺動することで、シート90に対して前後方向だけに動くことができる。また、ローラ94rが床面100上を転動するため、トレイ94はスムーズに座面92下の収納スペースに出し入れできる。
【0042】
図5には、前カバー94cの中央に設けられた操作レバー94dの断面を示す。前上パイプ材12bに固定されているストライカー12bsのロック体12bsmが、操作レバー94d内にあるので、
図5はトレイ94が座面92下のスペースに収納された状態であるのがわかる。
【0043】
アンダートレイ94の前部の取付け部94bの上部中央に断面凹状の収納部95が形成される。この収納部95の前面には、開口95aが形成される。操作レバー94dの後面上端部に後方に延出して形成された作動部94daの後端94dbが開口95aに挿入され、操作レバー94dの回転操作に伴って作動部94daの後端94dbが開口95a内を上下動するようになっている。
【0044】
収納部95には、収納部95の深さよりも長尺の規制体96が収納部95の上下動自在に配設されている。この規制体96の下半部には、上下方向のコイルばね97を配置可能な中空部96aが形成されている。コイルばね97の上端および下端は、収納部95の下面および中空部96aの上面にそれぞれ当接され、中空部96a内に規制体96を上方に付勢する。
【0045】
また、規制体96の前面下端部には、前方に突出して突出部96bが一体形成され、この突出部96bの上面が操作レバー94dの作動部94daの後端94db下面に係合し、かつ、規制体96の前面上端がシートフレーム1のストライカー12bsのロック体12bsmに切離自在に当接するように規制体96が配設されている。
【0046】
操作レバー94dを回動させると、作動部94daの後端94dbが開口95aを上下動する。すると、操作レバー94dの作動部94daの後端94db下面が規制体96の前面下端部に前方に突出した突出部96bを下方に下げ、規制体96が下がる。そして、前上パイプ材12bに固定されたストライカー12bsのロック体12bsmとの係止が外れ、トレイ94は、前後に可動となる。
【0047】
以上のように、本発明のシートフレーム1は、メインフレーム10a、10bの前端に設置される前端部材同士を上方では前上パイプ材12b、下方では、前下パイプ材12aと板金部材18で結合し、メインフレーム10a、10b同士の後端は後支持フレーム14a、14bで床面100と固定されるので、横倒し荷重に対した強い耐性を有する。また、前上パイプ材12bと前下パイプ材12aの間にトレイ94用のスペースを確保することができる。