【解決手段】シートバックフレームを備える車両用シートのシートフレームにおいて、車両用シートの幅方向におけるシートバックフレームの両端部に配置されたサイドフレームと、サイドフレームの下端部同士を連結する下部メンバフレームと、を有し、車両用シートの幅方向における下部メンバフレームの端部には、該端部の先端に達するように形成された穴が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に示されるように、通常、リクライニング機構は、シートバックフレームの左右両端部に配置されたサイドフレーム、特に、シートクッションフレームと連結される下端部に取り付けられている。また、特許文献1では、アクチュエータの回り止めとしてのボルトをサイドフレームに締結するために、サイドフレームのうち、アクチュエータの配置スペース付近にボルト穴が形成されている。さらに、特許文献1では、サイドフレームにおいて上記のボルト穴が形成された部分に補強ブラケットが接合されている。
【0007】
上記の補強ブラケットをサイドフレームに接合させる場合には、当然ながら容易に取り付けられることが望ましい。しかし、補強ブラケットをサイドフレームに接合させる際には、リクライニング機構を駆動するために回転する上述のシャフトが補強プレートと干渉する虞がある。したがって、補強ブラケットについては、上記のシャフトとの干渉を避けながら容易にサイドフレームに接合させることが可能な形状となっていることが求められる。
【0008】
また、車両用シートの構成部品数について極力少ない方が望ましく、補強ブラケットを設ける構成において部品点数の削減を実現することが求められる。
また、補強ブラケットを溶接にてサイドフレームに接合する際には、アクチュエータ固定用のボルトと上述のシャフトとの位置関係が変動せずに安定するように溶接領域を設定する必要がある。その一方で、溶接作業が容易に行われるように補強ブラケットとサイドフレームとの溶接領域を設定することが望まれる。
また、補強ブラケットとサイドフレームとの接合状態を安定させるためには、補強ブラケット自体の剛性を確保する必要がある。そのため、アクチュエータの取り付け時に補強ブラケットがアクチュエータと干渉しないように配慮しつつ、補強ブラケットの剛性を向上させることが求められる。
さらに、アームレストを備える車両用シートにおいてサイドフレームに当該アームレストの回動軸が支持されているときには、アームレストの回動によってサイドフレームに生じる荷重を考慮して補強ブラケットを設ける必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、リクライニング機構駆動用のシャフトとの干渉を避けながらアクチュエータ取り付け用のブラケットをサイドフレームに容易に接合させることが可能な車両用シートのシートフレームを提供することである。
また、本発明の他の目的は、アクチュエータ取り付け用のブラケットを設けつつも部品点数の削減を実現することが可能な車両用シートのシートフレームを提供することである。
また、本発明の他の目的は、アクチュエータ取り付け用のブラケットを溶接にてサイドフレームに接合する際に、アクチュエータ固定用のボルトとリクライニング機構駆動用のシャフトとの位置関係が安定するように溶接領域が設定された車両用シートのシートフレームを提供することである。特に、溶接作業が容易に行われるように溶接領域が適切に設定された車両用シートのシートフレームを提供することである。
また、本発明の他の目的は、アクチュエータ取り付け用のブラケットがアクチュエータと干渉しないように配慮しながら当該ブラケットの剛性を向上させることが可能な車両用シートのシートフレームを提供することである。
さらに、本発明の他の目的は、アームレストを備える車両用シートにおいてアームレストの回動によってサイドフレームに生じる荷重を考慮した形状をなすアクチュエータ取り付け用のブラケットを備えた車両用シートのシートフレームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、本発明の車両用シートのシートフレームによれば、シートバックフレームを備える車両用シートのシートフレームであって、前記車両用シートの幅方向における前記シートバックフレームの両端部に配置されたサイドフレームと、前記サイドフレームの下端部同士を連結し、板材によって構成された下部メンバフレームと、を有し、前記幅方向における前記下部メンバフレームの端部には、該端部の先端に達するように形成された穴が設けられており、前記幅方向における前記下部メンバフレームの両端部の各々に前記穴が設けられており、前記下部メンバフレームのうち、前記幅方向において2つの前記穴の中間に位置する部分に、前記幅方向に沿って延出している補強部が設けられており、前記下部メンバフレームは、貫通穴を備えており、該貫通穴は、前記幅方向における前記補強部の端と並ぶ位置に形成されていることにより解決される。
また、本発明の他の車両用シートのシートフレームによれば、シートバックフレームを備える車両用シートのシートフレームであって、前記車両用シートの幅方向における前記シートバックフレームの両端部に配置されたサイドフレームと、前記サイドフレームの下端部同士を連結し、板材によって構成された下部メンバフレームと、を有し、前記幅方向における前記下部メンバフレームの端部には、該端部の先端に達するように形成された穴が設けられており、該穴が設けられた前記下部メンバフレームの前記端部は、該端部の外縁部が折れ曲がることで形成された端部折れ曲がり部を備えていることにより解決される。
【0011】
また、上記の車両用シートのシートフレームにおいて、前記サイドフレームは、前記幅方向の外側に位置する側壁と、該側壁の後端から前記幅方向の内側に延出した後壁とを有し、前記側壁と前記後壁との境界部分は、前記サイドフレームの角部をなし、前記幅方向における前記下部メンバフレームの前記端部は、前記下部メンバフレームの角部をなし、前記サイドフレームの角部に重ねられていると好適である。
【0012】
また、上記の車両用シートのシートフレームにおいて、前記車両用シートのシートクッションに対して前記車両用シートのシートバックが揺動する際の軸を備えており、前記軸は、前記サイドフレームを貫通した状態で前記サイドフレームに取り付けられ、前記穴には前記軸が通過し、前記穴のサイズが前記軸の外縁のサイズより大きいと好適である。
【0013】
また、上記の車両用シートのシートフレームにおいて、前記下部メンバフレームの外縁部には、前記幅方向と交差する方向に折れ曲がった折れ曲がり部が形成されており、該折れ曲がり部は、前記幅方向において前記穴よりも内側に位置していると好適である。
【0014】
また、上記の車両用シートのシートフレームにおいて、前記サイドフレームには、前記下部メンバフレームが取り付けられているメンバフレーム取り付け部が形成されており、前記穴は、前記幅方向において前記メンバフレーム取り付け部よりも外側に位置していると好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用シートのシートフレームによれば、リクライニング機構駆動用の回転軸との干渉を避けながら取り付けブラケットがサイドフレームに容易に接合される。
本発明の車両用シートのシートフレームによれば、取り付けブラケットを別部材で設ける構成と比較して、部品点数がより少なくなる。
本発明の車両用シートのシートフレームによれば、ボルト穴及び回転軸の各々の位置が変化し難くなるため、アクチュエータ固定用のボルトと上記回転軸との位置関係が安定するようになる。
本発明の車両用シートのシートフレームによれば、サイドフレームの側壁においてリクライニング機構が取り付けられている領域の外縁に応じて、取り付けブラケットが効率的にサイドフレームに接合される。
本発明の車両用シートのシートフレームによれば、取り付けブラケットの上方部及び下方部の各々がサイドフレームの側壁に対して良好に接合される。また、取り付けブラケットの上方部及び下方部の各々がサイドフレームの側壁に接合された状態が安定的に保持される。
本発明の車両用シートのシートフレームによれば、取り付けブラケットの剛性が向上する。
本発明の車両用シートのシートフレームによれば、アクチュエータとの干渉を抑えつつ、折れ曲がり部を形成することが可能となる。
本発明の車両用シートのシートフレームによれば、アームレストの回動時にサイドフレームに発生する荷重に対して、サイドフレームの剛性が向上する。
本発明の車両用シートのシートフレームによれば、車両用シートに後方からの衝突荷重が掛かった際に脆弱部が良好に変形するようになる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る車両用シートのシートフレームについて、
図1乃至14を参照しながら説明する。なお、
図2、4、5、6、7、8及び9では、シートフレームの構造を分かり易く図示する都合上、アクチュエータ及び固定用のボルトについて図示を省略している。また、説明の便宜上、
図2では後述のハイト調整機構4やスライドレール機構Rの図示を省略している。
【0018】
以下の説明において、前後方向とは、車両の進行方向に一致する方向のことである。また、幅方向とは、車両の横幅に沿う方向、より具体的には左右方向のことであり本発明の車両用シートの幅方向に相当する。また、上下方向とは、車両用シートの上下方向のことである。なお、以下の説明では、特に断る場合を除き、シート各部の位置や姿勢を通常時、すなわち乗員が着座している状態にあるときの内容にて説明することとする。
【0019】
先ず、本発明の一実施形態に係る車両用シート及びシートフレーム(以下、本シートS及び本フレームF)について基本構成を説明する。
本シートSは、基本構造の面では、公知の車両用シートと略同様であり、本実施形態では特に、後部座席の前に配置された前部座席として利用されるものである。但し、これに限定されるものではなく、本発明は、後部座席である車両用シートのシートフレームにも適用可能である。
【0020】
より具体的に説明すると、本シートSは、
図1に示すように、シートバックS1、シートクッションS2及びヘッドレストS3を主たる構成要素として有している。一方、本シートSの骨格をなす本フレームFは、
図2に示すように、シートバックS1が備えるシートバックフレームF1と、シートクッションS2が備えるシートクッションフレームF2とを備える。また、シートバックフレームF1の上部には、ヘッドレストS3の下部から延出したピラーS3aが差し込まれることでヘッドレストS3本体を支持するガイドステーfsが固定されている。
【0021】
また、本フレームFのうち、大部分は金属部材によって構成されており、フレームの構成部分同士を接合する方法として、溶接、特にレーザー溶接が用いられている。このレーザー溶接を用いて組み立てられたシートバックフレームF1及びシートクッションフレームF2は、
図2に示すように、それぞれ、矩形の枠型をなすように構築される。
【0022】
そして、シートクッションフレームF2の幅方向両端に備えられた側部フレーム1の後端部に、シートバックフレームF1の幅方向両端に備えられたサイドフレーム11の下端部が組み付けられている。本フレームFでは、サイドフレーム11の下端部が、
図4に図示されたリクライニング機構3を介して側部フレーム1の後端部に組み付けられている。
【0023】
リクライニング機構3は、乗員が不図示の操作部を操作することにより作動し、シートクッションS2に対してシートバックS1を前方または後方に倒れるように揺動させるものである。本シートSでは、リクライニング機構3が、シートバックフレームF1の幅方向両端に設けられたサイドフレーム11の各々に対して個別に設けられ、各サイドフレーム11の外側面12aの下部にレーザー溶接にて取り付けられている。また、リクライニング機構3は、サイドフレーム11に溶接された側とは反対側の面で、側部フレーム1の内壁面の後端部に溶接されている。
【0024】
各リクライニング機構3の構造は、公知の構造であり、リクライニング機構本体3aと、リクライニング機構本体3aを貫通した状態で幅方向に延びた貫通軸3bとを備える。そして、貫通軸3bが回転することで、本体内部に設けられた不図示の駆動機構が作動する。この駆動機構の作動により、リクライニング機構本体3aのうち、サイドフレーム11に接合されている部分が、その反対側の部分、具体的にはシートクッションフレームF2の側部フレーム1に接合されている部分に対して貫通軸3b周りに相対回動する。これにより、リクライニング機構3が取り付けられたサイドフレーム11がシートクッションS2に対して貫通軸3b周りに相対回動するようになる。つまり、シートバックS1がシートクッションS2に対して貫通軸3b周りに揺動するようになる。
【0025】
ここで、貫通軸3bは、リクライニング機構3を駆動させるために回転する回転軸であるとともに、リクライニング機構3によりシートバックS1がシートクッションS2に対して揺動する際の揺動軸でもある。なお、本シートSにおいて、貫通軸3bは、一方のサイドフレーム11に取り付けられたリクライニング機構3と、他方のサイドフレーム11に取り付けられたリクライニング機構3との間で共有の軸となっている。すなわち、貫通軸3bは、一方のサイドフレーム11の側壁12を貫通して、幅方向に沿って他方のサイドフレーム11に向かい、同サイドフレーム11の側壁12を更に貫通している。
【0026】
そして、
図5に示すように、貫通軸3bの両端部の各々は、対応するリクライニング機構本体3aを貫通し、さらにまた、リクライニング機構本体3aの脇に位置するシートクッションフレームF2の側部フレーム1まで貫通している。つまり、本シートSにおいて、貫通軸3bは、幅方向においてサイドフレーム11の側壁12及び側部フレーム1を貫通した状態で回転自在に設けられている。換言すると、リクライニング機構3は、貫通軸3bがサイドフレーム11の側壁12を貫通した状態で当該側壁12に取り付けられている。
【0027】
なお、本シートSにおいて、貫通軸3bは、
図10に図示した他の部材としてのアクチュエータ50が付与する動力によって回転する。具体的に説明すると、上記の貫通軸3bは、アクチュエータ50が有する不図示の出力軸に形成された挿入孔に挿通され、かつ、出力軸と係合している。したがって、アクチュエータ50の出力軸が回転すると、当該出力軸に挿通された貫通軸3bが回転するようになる。この結果、貫通軸3bを介してアクチュエータ50の駆動力がリクライニング機構3に伝達され、最終的にリクライニング機構3が作動するようになる。
【0028】
本シートSにおいて、アクチュエータ50は、貫通軸3bのうち、サイドフレーム11の側壁12を貫通して側壁12の幅方向内側にある部分と係合した状態で、側壁12を介してリクライニング機構3とは反対側に配置されている。
なお、アクチュエータ50は、出力軸を回転させる際にアクチュエータ50自体がサイドフレーム11に対して回転するのを規制するために、サイドフレーム11にボルト止めされている。
【0029】
一方、シートクッションS2の下方位置には、本シートSを車体フロアに対して前後方向にスライド移動自在に設置するためのスライドレール機構Rが配置されている。そして、本シートSでは、上下方向においてシートクッションS2とスライドレール機構Rとの間に、シート高さを調整するためのハイト調整機構4が設けられている。このハイト調整機構4は、
図1に図示された操作レバー5を乗員が操作することにより作動する。
【0030】
具体的に説明すると、ハイト調整機構4は、操作レバー5が操作されることによって発生する駆動力を利用して、シートクッションフレームF2とスライドレール機構Rとの間を連結している回動リンク6を回動させることでシート高さを調整する。
【0031】
より詳しく説明すると、回動リンク6は、シートクッションフレームF2の前端部及び後端部の各々において幅方向両端に位置するように、計4個設けられている。各回動リンク6の一端部は、スライドレール機構Rのうち、アッパレールRuに上方へ突出するように設けられた支持部Rxに回動自在に支持されている。また、各回動リンク6の他端部は、シートクッションフレームF2の側部フレーム1に回動自在に取り付けられている。
【0032】
一方、回動リンク6中、幅方向一端側に位置する後方の回動リンク6にはセクターギア7aが形成されており、セクターギア7aにはピニオンギア7bが噛み合っている。このピニオンギア7bは、不図示の連結軸によって操作レバー5と連結されている。これにより、操作レバー5が操作されると、上記の連結軸と一体的にピニオンギア7bが回転し、ピニオンギア7bとセクターギア7aとの噛み合い位置が変化するようになる。これに伴い、セクターギア7aが形成された回動リンク6が回動し、当該回動リンク6に従動する形で他の回動リンク6も回動するようになる。この結果、シートクッションS2を含むシート本体が昇降し、シート高さが調整されることになる。
【0033】
なお、本シートSでは、操作レバー5がシートクッションS2の脇に位置するようにセットされており、さらに、シートクッションフレームF2の側部フレーム1と操作レバー5との間には、不図示のブレーキ機構が設けられている。このブレーキ機構は、ハイト調整機構4の非駆動時、すなわち、操作レバー5が操作されていない期間、操作レバー5とピニオンギア7bとを連結する連結軸に対して摩擦力を付与し、当該連結軸が意図せずに回転するのを規制してシート高さを保持するものである。
【0034】
次に、本フレームFのうち、シートバックフレームF1について詳細に説明する。
シートバックフレームF1は、
図2及び3に示すように、幅方向の両端部に配置されたサイドフレーム11と、サイドフレーム11の上端部同士を連結する上部フレーム21と、サイドフレーム11の下端部同士を連結する連絡フレームとしての下部メンバフレーム31とを有する。
【0035】
上部フレーム21は、
図2及び3に示すように、シートバックフレームF1の上端部をなす部分である。上部フレーム21は、両端部が下方に向かうように下向きU字状に折り曲げ加工された折り曲げ加工部22と、折り曲げ加工部22の一端部から他端部に向かって架け渡された上部メンバフレーム23とによって構成されている。
【0036】
折り曲げ加工部22は、金属製のパイプに対して折り曲げ加工を施すことによって形成されている。また、折り曲げ加工部22のうち、幅方向に沿って延出している部分には、前側に平面が形成されるように押し潰された領域が2カ所設けられている。この押し潰し領域は、折り曲げ加工部22において左右対称に設けられており、各押し潰し領域の前側に形成された平面には、前述のガイドステーfsがレーザー溶接にて固定されている。
【0037】
上部メンバフレーム23は、板金材を加工して形成されたものであり、上部メンバフレーム23の端部は、折り曲げ加工部22のうち、折れ曲がって下向きに延出した端部にあてがわれた状態でレーザー溶接されている。なお、上部メンバフレーム23において延出方向中央部に位置する領域には、矩形状の開口23aが一定間隔毎に複数個形成されている。
【0038】
サイドフレーム11は、シートバックフレームF1の幅方向両端部をなし、上下方向に延出した部分である。本シートSにおいて、各サイドフレーム11は、
図2に示すように、その上端部が下端部よりも幾分後方に位置するように略弓状に曲がっている。また、本シートSにおいて、各サイドフレーム11は、一部材から成形されており、具体的には一枚の板金材を加工することにより成形されている。
【0039】
各サイドフレーム11の構造についてより詳細に説明する。なお、幅方向両端部に配置されたサイドフレーム11は、互いに左右対称の構造となっているため、以下では、一方のサイドフレーム11の構造のみ説明することとする。
各サイドフレーム11は、
図8に示すように、幅方向外側に位置する側壁12と、側壁12の後端から幅方向内側に延出した後壁13とを有する。側壁12は、上下方向に略真っ直ぐに延出しており、側方から幅方向に沿って見ると、上端部が上方に向かうほど幅狭となるように尖った形状をなし、中央部が緩やかにカーブした形状をなし、下端部が半楕円状の形状をなしている。
【0040】
側壁12には、複数の穴が形成されており、そのうちの一つの穴12cは、側壁12の下端部に形成されており、同穴には、前述したリクライニング機構3を駆動させるための貫通軸3bが挿入される。また、他の穴は、貫通軸3bが挿入される穴12cよりも上方に位置し、前述したアクチュエータ50の回り止め用のボルト51が挿入されるボルト穴12dである。さらに、残りの穴のうちの一つは、シートバックフレームF1の組み立て時、特に、シートバックフレームF1を構成する部材間を溶接する際にサイドフレーム11を固定しておくための穴であり、同穴には、溶接時に不図示の固定用治具が挿入される。
【0041】
また、側壁12の側面のうち、幅方向において外側に位置する外側面12aには、前述したように、リクライニング機構3が取り付けられている。より具体的に説明すると、本シートSにおいて、リクライニング機構3は、側壁12の下端よりも若干上方に位置する部位にレーザー溶接にて取り付けられている。ここで、リクライニング機構3を側壁12の外側面12aにレーザー溶接にて取り付ける際には、側壁12の側面のうち、幅方向において外側面12aの裏側に位置する内側面12bにレーザーを照射する。このため、内側面12bには、溶接痕としての凹凸が形成されることとなる。
【0042】
なお、本シートSでは、リクライニング機構3のうち、サイドフレーム11の側壁12に接合される部分、より具体的には、リクライニング機構本体3aの中で側壁12と対向する部分が円状となっている。したがって、本シートSでは、各サイドフレーム11の側壁12においてリクライニング機構3が外側面12aに取り付けられている領域は、
図7に示すように、幅方向から見て円形の領域Mとなっている。なお、この円形の領域Mの中心位置に、前述の貫通軸3bが挿入される穴が形成されている。
【0043】
また、側壁12の前端部には、
図4及び8に示すように、幅方向内側に折れ曲がった側壁側フランジ14が形成されている。この側壁側フランジ14は、側壁側折れ曲がり部に相当し、側壁12を補強するために側壁12の上端から下端に亘って設けられている。ここで、側壁12の下端部は、前述したように半楕円形状をなしており、側壁12の下端部に設けられた側壁側フランジ14は、側壁12の下端部の外縁に沿って前方から後方に回り込むように円弧状に形成されている。
【0044】
後壁13は、側壁12と交差した状態で側壁12の後端部と隣接しており、本シートSでは、後壁13と側壁12との間の角度が約90度となっている。換言すると、後壁13の幅方向の外側端部は、側壁12の後端部とともにサイドフレーム11の角部をなしている。
【0045】
また、後壁13の上端は、側壁12の上端よりも幾分下がった位置にあり、後壁13の下端は、側壁12の下端よりも幾分上がった位置にある。そして、後壁13の下端部には、
図3に示すように、当該部分よりも上方に位置する部分に比して幅方向内側への延出量が大きくなった略台形状のメンバフレーム取り付け部13aが形成されている。このメンバフレーム取り付け部13aに、後述する下部メンバフレーム31が取り付けられている。
【0046】
また、側壁12と後壁13との境界部分、すなわち、サイドフレーム11の角部には、側壁12及び後壁13の双方に跨って略水平となるように形成された長穴16が形成されている。この長穴16がサイドフレーム11の角部に形成されていることにより、例えば、本シートSを搭載する車両に対して後方からの衝突荷重が掛かった際にサイドフレーム11が後傾するように変形し易くなっている。つまり、上記の長穴16は、脆弱部に相当するものであり、後方からの衝突荷重が掛かった際にサイドフレーム11の中で最初に変形し(厳密には、上下方向に押し潰れるように変形し)、サイドフレーム11が変形する際の起点となる。
【0047】
さらに、後壁13の幅方向の内側端部には、
図4及び8に示すように、前側に折れ曲がった後壁側フランジ15が形成されている。この後壁側フランジ15は、後壁13を補強するために後壁13の上端から下方に向かって形成されており、前述のメンバフレーム取り付け部13aの上端部に亘っている。また、後壁13のうち、メンバフレーム取り付け部13aより下方に位置する領域にも、同様に後壁側フランジ15が形成されている。一方、メンバフレーム取り付け部13aの外縁部のうち、幅方向内側にある部分、及び、下端側にある部分には、下部メンバフレーム31との干渉を避ける目的から後壁側フランジ15が形成されていない。
【0048】
なお、
図4に示すように、後壁13の下端部に形成された後壁側フランジ15は、その幅方向外側端部にて、側壁12の下端部で後方に回り込むように形成された側壁側フランジ14と連続している。これにより、サイドフレーム11全体の剛性がより向上している。
【0049】
下部メンバフレーム31は、
図2及び
図9に示すように、上方から見たときに略U字状の部材であり、一枚の板金材を加工することにより成形されている。下部メンバフレーム31は、幅方向に沿って延出している第1延出部32と、第1延出部32の幅方向両端から前方に向かって延出した第2延出部33とを備えている。
【0050】
第1延出部32は、幅方向においてサイドフレーム11間に配置され、サイドフレーム11中の後壁13、特に前述したメンバフレーム取り付け部13aに取り付けられる部分である。より具体的に説明すると、第1延出部32の延出方向両端部の各々が、メンバフレーム取り付け部13aの前面に当接した状態で、レーザー溶接にてメンバフレーム取り付け部13aに取り付けられている。
【0051】
なお、本シートSでは、サイドフレーム11中、前述した長穴16が形成された部位よりも下方に位置する部位に下部メンバフレーム31が取り付けられている。すなわち、下部メンバフレーム31は、上下方向において長穴16を避けた位置でサイドフレーム11に取り付けられている。これにより、下部メンバフレーム31が取り付けられて剛性が向上するという効果が長穴16周りには及び難くなるので、後方からの衝突荷重が掛かった際には長穴16が変形し易くなる。
【0052】
また、
図6に示すように、第1延出部32の延出方向端部には、メンバフレーム取り付け部13aに取り付けられた際に当該メンバフレーム取り付け部13aに形成された貫通孔(不図示)と連通する穴32bが形成されている。この穴32bは、シートバックフレームF1の組み立て時、特に、シートバックフレームF1を構成する部材間を溶接する際に下部メンバフレーム31を固定しておくための穴であり、同穴32bには、溶接時に不図示の固定用治具が挿入される。
【0053】
第1延出部32の形状についてより詳しく説明すると、
図3を見て分かるように、延出方向の中央部では、第1延出部32の下端位置が、延出方向の端部における下端位置と比較して幾分上方に位置している。つまり、本シートSにおいて、第1延出部32は、その下端が延出方向中央部にて幾分嵩上げされた形状となっている。かかる形状をなした第1延出部32を備えることにより、本シートSが前部座席として利用され易くなる。
【0054】
分かり易く説明すると、前部座席において下部メンバフレーム31の下方に位置する空間には、後部座席の乗員の脚が入ることがある。このとき、下部メンバフレーム31のうち、乗員の脚の上方に位置する第1延出部32において、延出方向中央部の下端が延出方向端部の下端より上方に位置していれば、乗員の脚が下部メンバフレーム31と干渉してしまうのを抑制することが可能となる。
その一方で、第1延出部32の延出方向端部では、延出方向中央部に比して、上下に幅広となっており、これにより下部メンバフレーム31の剛性が確保されている。
【0055】
また、
図2に示すように、上下方向における第1延出部32の中央部には、前面から円弧状に隆起した隆起部32a(換言すると、後面が円弧状に窪んだ部分)が形成されている。この隆起部32aは、いわゆる補強用ビードであり、第1延出部32の延出方向に沿ってやや長めに形成されている。
【0056】
また、
図4や
図6に示すように、第1延出部32の上端部には、前側に折れ曲がった第1延出部上側フランジ34が形成されている。この第1延出部上側フランジ34は、第1延出部32を補強するために第1延出部32の延出方向一端から他端に亘って形成されている。
【0057】
さらに、本シートSでは、
図6に示すように、第1延出部上側フランジ34のうち、第1延出部32の延出方向の端位置よりも若干中央寄りにある部位に、前述したメンバフレーム取り付け部13aの上端部に形成された後壁側フランジ15(特に、後壁側フランジ15の幅方向の内側端部)が当接している。つまり、本シートSでは、後壁側フランジ15と第1延出部上側フランジ34とがあたかも連続しているかのように、下部メンバフレーム31がメンバフレーム取り付け部13aに取り付けられている。これにより、下部メンバフレーム31とサイドフレーム11との一体化が強まり、サイドフレーム11において下部メンバフレーム31が取り付けられる部位周辺の剛性がより一層向上する。
【0058】
また、第1延出部32の下端部には、前側に折れ曲がった第1延出部下側フランジ35が第1延出部32の延出方向一端から他端に亘って形成されている。これにより、下部メンバフレーム31の剛性がより一層向上することになる。
【0059】
第2延出部33は、第1延出部32と交差した状態で第1延出部32の延出方向両端部と隣接しており、本シートSでは、第1延出部32と第2延出部33との間の角度が約90度となっている。換言すると、第2延出部33の後端部は、第1延出部32の延出方向端部とともに下部メンバフレーム31の角部をなしている。
【0060】
そして、本シートSでは、
図6に示す通り、下部メンバフレーム31の角部がサイドフレーム11の角部と重なるように下部メンバフレーム31が前述のメンバフレーム取り付け部13aに取り付けられている。つまり、第2延出部33は、幅方向においてサイドフレーム11の側壁12よりも内側に位置して側壁12と重ねられている。より具体的に説明すると、第2延出部33は、側壁12の内側面12bに当接した状態でレーザー溶接にて側壁12に取り付けられている。
【0061】
以上のように本シートSでは、サイドフレーム11の側壁12の内側面12bに当接した状態で下部メンバフレーム31の第2延出部33が配置されているため、サイドフレーム11の側壁12の剛性、特に幅方向に作用する荷重に対する剛性が向上し、サイドフレーム11の内倒れが抑制される。すなわち、サイドフレーム11の側壁12よりも内側に第2延出部33を重ねて配置することにより、サイドフレーム11の内倒れが抑制される程度に剛性を向上させることが可能となる。
【0062】
さらに、本シートSにおいて、第2延出部33は、
図11に示すように、アクチュエータ50をサイドフレーム11の側壁12の幅方向内側に取り付けるための取り付けブラケットとして機能する。つまり、本シートSでは、アクチュエータ50をサイドフレーム11の側壁12の内側面12bに取り付けるうえで、側壁12の幅方向内側に取り付けブラケットが接合されており、当該取り付けブラケットにアクチュエータ50が固定されている。具体的には、取り付けブラケットにボルト穴33aが形成されており、このボルト穴33aとサイドフレーム11の側壁12に形成されたボルト穴12dとが連通した状態で、両ボルト穴12d,33aにアクチュエータ50の回り止め用のボルト51が挿入される。
【0063】
そして、本シートSでは、下部メンバフレーム31の第2延出部33が上記の取り付けブラケットとしての機能を担っている。換言すると、本シートSにおいて、取り付けブラケットは、下部メンバフレーム31の両端部に配置され、下部メンバフレーム31と一体化している。このように下部メンバフレーム31の一部を取り付けブラケットとして利用することにより、取り付けブラケットを別部材で設ける構成と比較して、部品点数がより少なくなる。
【0064】
第2延出部33の形状についてより詳しく説明すると、
図6及び
図7に示すように、第2延出部33は、幅方向から見てC字状の形状となっている。つまり、本シートSに備えられた第2延出部33では、その中央部が円形状に打ち抜かれている。また、第2延出部33の前端部についても、その下側半分の領域が、円形状に打ち抜き部分に連続する状態で切り欠かれている。これらの打ち抜きや切り欠きが施されることにより、第2延出部33は、円形状の打ち抜き部分よりも上方に配置された上方部36と、円形状の打ち抜き部分よりも下側に配置された下方部37とを有する構成となっている。そして、上方部36及び下方部37は、いずれも、サイドフレーム11の側壁12の内側面12bに当接した状態で側壁12にレーザー溶接にて接合している。
【0065】
一方、第2延出部33において円形状に打ち抜かれた部分については、当然ながらサイドフレーム11の側壁12に接合されることがない。そして、本シートSでは、側壁12を挟んで上記円形状の打ち抜き部分とは反対側の位置にリクライニング機構3が配置されている。つまり、本シートSにおいて、サイドフレーム11の側壁12において上記の円形状の打ち抜き部分が位置する領域は、リクライニング機構3が外側面12aに取り付けられている領域に相当する。
【0066】
換言すると、本シートSでは、サイドフレーム11の側壁12において第2延出部33の上方部36及び下方部37が内側面12bに当接している領域が、リクライニング機構3が外側面12aに取り付けられている領域から外れていることとなる。これは、前述したように、側壁12においてリクライニング機構3が外側面に取り付けられている領域では、その内側面12bに、レーザー溶接時の溶接痕としての凹凸が形成されている場合がある。かかる凹凸が形成された部位を避けて第2延出部33を側壁12の内側面12bに取り付けるため、第2延出部33を含む下部メンバフレーム31が良好に取り付けられるようになる。
【0067】
ところで、本シートSでは、側壁12においてリクライニング機構3が外側面12aに取り付けられている領域が、前述したように、幅方向から見ると円形状になっている。一方、当該円形の領域Mに合わせるように、下部メンバフレーム31の第2延出部33の中央部が円形状に打ち抜かれている。そして、本シートSでは、上述した円形の領域Mの外縁と、第2延出部33における円形状の打ち抜き部分の内縁とが一致するように、第2延出部33が側壁12に接合されている。
【0068】
つまり、本シートSでは、側壁12において第2延出部33が内側面12bに当接している領域が、幅方向から見て、上述した円形の領域Mの外縁に沿っているC字状の領域となっている。より具体的に説明すると、第2延出部33の上方部36では、
図6及び7に示すように、その前後方向中央部分のうち、下側に位置する部分が半円状に切り欠かれている。そして、この切り欠きの縁と、上述した円形の領域Mの外縁の上方部分に沿うように第2延出部33が側壁12に取り付けられている。換言すると、上方部36は、第2延出部33のうち、上述した円形の領域Mよりも上方に配置された部分である。
【0069】
一方、第2延出部33の下方部37は、
図6及び7に示すように、前方に向かって円弧状に延出している。そして、当該下方部37が上述した円形の領域Mの外縁の下方部分に沿うように第2延出部33が側壁12に取り付けられている。換言すると、下方部37は、第2延出部33のうち、上述した円形の領域Mよりも下方に配置された部分であり、当該円形の領域Mの外縁に沿って円弧状に延出している。
【0070】
以上のように、本シートSでは、第2延出部33が、幅方向から見て、上述した円形の領域M(サイドフレーム11の側壁12においてリクライニング機構3が取り付けられている領域)の外縁に沿ったC字状の形状となっている。そして、当該円形の領域Mと第2延出部33における円形状の打ち抜き部分とが一致するように、第2延出部33が側壁12に接合されている。逆に言えば、第2延出部33を側壁12に接合させる際には、上述した円形の領域Mと第2延出部33における円形状の打ち抜き部分とを一致させればよい。これにより、サイドフレーム11の側壁12においてリクライニング機構3が取り付けられている部分を避けて下部メンバフレーム31を取り付ける作業が、容易に行われるようになる。
【0071】
特に、本シートSのシートバックフレームF1を組み立てる際には、先ず、サイドフレーム11の側壁12にリクライニング機構3をレーザー溶接にて取り付けておき、その後に下部メンバフレーム31をサイドフレーム11に取り付ける。このような組み立て手順にてシートバックフレームF1を組み立てるにあたり、上述した円形の領域Mと第2延出部33における円形状の打ち抜き部分とが一致していれば、サイドフレーム11の側壁12におけるリクライニング機構3の取り付け部分を避けて下部メンバフレーム31を取り付けることが、より容易になる。つまり、上記の組み立て手順にてシートバックフレームF1を組み立てる場合には、上述した円形の領域Mの外縁に沿うように第2延出部33の中央部を円状に打ち抜く構成がより効果的なものとなる。
【0072】
そして、上方部36及び下方部37の後端部同士が連結部40を介して連結している。連結部40は、側壁12においてリクライニング機構3が取り付けられている領域よりも後方に位置しており、当該領域の外縁に沿った形状をなしている。一方、上方部36及び下方部37の前端部同士が上下方向に離間している。
【0073】
以上のように、アクチュエータの取り付けブラケットとしての機能する第2延出部33の形状が、サイドフレーム11の側壁12においてリクライニング機構3が取り付けられている領域を避けた形状となっている。これにより、リクライニング機構3駆動用の回転軸、すなわち、貫通軸3bとの干渉を避けながら第2延出部33をサイドフレーム11の側壁12の内側面12bに接合させることが可能となる。さらに、第2延出部33の前端部が開口した形状となっているので、上記貫通軸3bとの干渉を避けながら第2延出部33を側壁12の内側面12bに容易に接合させることが可能となる。
【0074】
なお、前述したように、本シートSでは、第2延出部33が、幅方向から見て、サイドフレーム11の側壁12においてリクライニング機構3が取り付けられている領域の外縁に沿ったC字状の形状となっているので、第2延出部33を効率的に側壁12の内側面12bに接合させることが可能となる。
【0075】
また、本シートSでは、第2延出部33が側壁12に接合された状態において、第2延出部33の下方部37が、貫通軸3bの後方から貫通軸3bの前方に回り込むように円弧状に延出している。同様に、第2延出部33の上方部36も、貫通軸3bの後方から貫通軸3bの前方に至るように延出している。このような構成により、サイドフレーム11の側壁12におけるリクライニング機構3の取り付け部分を避けつつ、さらに貫通軸3bとの干渉を回避した状態で下部メンバフレーム31をサイドフレーム11の側壁12に取り付けることが可能となる。また、サイドフレーム11の側壁12のうち、下部メンバフレーム31を取り付けることによって剛性が向上した部分が、前後方向に沿って延びるため、幅方向に作用する荷重に対するサイドフレーム11の剛性が一層向上することになる。
【0076】
また、本シートSでは、前述したように、第2延出部33の上方部36及び下方部37がそれぞれサイドフレーム11の側壁12にレーザー溶接されている。そして、本シートSでは、
図7に示すように、上方部36と側壁12との溶接領域X1は、当該溶接領域X1の一部が貫通軸3bよりも前方に位置するように、前後方向に円弧状に延びている。同様に、下方部37と側壁12との溶接領域X2は、当該溶接領域X2の一部が貫通軸3bよりも後方に位置するように、前後方向に円弧状に延びている。
【0077】
以上のように、本シートSでは、各溶接領域X1,X2が前後方向において幾分の長さを有する領域となっているので、第2延出部33の上方部36及び下方部37の各々がサイドフレーム11の側壁12に対して良好に固定されている。さらに、各溶接領域X1,X2が前後方向に延びているので、前後方向に作用する荷重に対する強度を確保することが可能となる。これにより、前後方向の荷重がサイドフレーム11や下部メンバフレーム31に作用したとしても、溶接領域X1,X2における剥離を抑制して、下部メンバフレーム31の第2延出部33とサイドフレーム11の側壁12との接合状態を安定的に保持することが可能となる。
【0078】
なお、本シートSでは、上方部36と側壁12との溶接領域X1は、貫通軸3bを中心とした円周の約1/3に相当する円弧状の領域であり、下方部37と側壁12との溶接領域X2は、上記円周の約1/6に相当する円弧状の領域である。さらに、両溶接領域X1,X2は、互いに離間している。このように両溶接領域X1,X2が、貫通軸3bを中心として円周1周分に満たず、かつ、互いに離間している。このため、シートバックフレームF1の組み立て時には、貫通軸3bを中心とした円周1周分を連続してレーザー溶接する場合に比して、より容易に溶接作業が行われることになる。
【0079】
さらに、本シートSでは、
図7や
図11に示すように、上方部36の前端部にボルト穴33aが形成されている。このボルト穴33aは、アクチュエータ50を固定するために形成され、前述したように、アクチュエータ50の回り止め用のボルト51を挿入するための穴である。そして、本シートSでは、
図7に示すように、上方部36のうち、側壁12においてリクライニング機構3が取り付けられている領域とボルト穴33aとの間に位置する部位が側壁12に溶接されている。
【0080】
換言すると、本シートSでは、ボルト穴33aとリクライニング機構3駆動用の貫通軸3bとの間に、上方部36と側壁12との溶接領域X1が存在することになる。このように、ボルト穴33aと貫通軸3bの間に溶接領域X1が存在すれば、ボルト穴33a及び貫通軸3bの各々の位置が変化し難くなるため、アクチュエータ50固定用のボルト51と貫通軸3bとの位置関係が安定するようになる。この結果、アクチュエータ50が正常運転を維持できるような位置に安定的に配置されるようになる。
【0081】
ところで、
図4及び
図6に示す通り、第2延出部33の上方部36及び下方部37には、それぞれ、幅方向内側に折れ曲がったフランジが形成されている。具体的に説明すると、第2延出部33の上方部36には、上端部が幅方向内側に折れ曲がった第2延出部上側フランジ38が形成されている。この第2延出部上側フランジ38は、端部折れ曲がり部に相当し、第2延出部33を補強するために上方部36の前端から後端に亘って形成されている。
【0082】
以上のように、第2延出部33の上方部36の上端部に補強用のフランジ(第2延出部上側フランジ38)が形成されていることで下部メンバフレーム31自体の剛性が高まる結果、下部メンバフレーム31が取り付けられたサイドフレーム11についても剛性が向上することになる。
なお、
図4に示すように、第2延出部上側フランジ38は、その後端部にて、第1延出部32の上端部に形成された第1延出部上側フランジ34と連続している。これにより、下部メンバフレーム31全体の剛性がより向上している。
【0083】
また、第2延出部上側フランジ38とアクチュエータ50との干渉を回避するため、
図12に示すように、第2延出部上側フランジ38のうちの前端部が切り欠かれている。より具体的に説明すると、第2延出部上側フランジ38のうち、上方部36におけるボルト穴33aの形成部位と隣接する部分(以下、隣接部分38a)では、ボルト穴33aの形成部位と隣接しない部分(以下、非隣接部分38b)に比して、幅方向内側への延出量が短くなっている。隣接部分38aは、アクチュエータ50のうちのボルト51が取り付けられる部分周辺と対向するため、上述した構成により、アクチュエータ50との干渉を抑えながら第2延出部上側フランジ38を形成することが可能となる。
【0084】
一方、
図4及び
図6に示すように、第2延出部33の下方部37には、下端部が幅方向内側に折れ曲がった第2延出部下側フランジ39が形成されている。この第2延出部下側フランジ39は、端部折れ曲がり部に相当し、第2延出部33を補強するために下方部37の前端から後端に亘って形成されている。ここで、前述したように、下方部37は、貫通軸3bの後側から前側に回り込むように円弧状に延出しているため、第2延出部下側フランジ39も円弧状に延出している。
【0085】
そして、本シートSでは、
図6に示す通り、第2延出部33が側壁12に接合された状態において、第2延出部下側フランジ39の前端部が、前述したサイドフレーム11の側壁12に形成された側壁側フランジ14のうち、側壁12の下端位置で円弧状に延びている後端部と上下方向に重なっている。
【0086】
より具体的に説明すると、第2延出部33の下方部37は、第2延出部下側フランジ39が側壁側フランジ14に沿い、かつ、第2延出部下側フランジ39の前端部が側壁側フランジ14の後端部と重なるように延出している。つまり、本シートSでは、第2延出部下側フランジ39と側壁側フランジ14とがあたかも連続しているかのように、下部メンバフレーム31がサイドフレーム11に取り付けられている。これにより、下部メンバフレーム31とサイドフレーム11、特に側壁12の下端部との一体化が強まり、サイドフレーム11において下部メンバフレーム31が取り付けられる部位周辺の剛性がより一層向上する。
【0087】
さらに、
図4に示すように、第2延出部下側フランジ39は、その後端部にて、第1延出部32の下端部に形成された第1延出部下側フランジ35と連結している。これにより、下部メンバフレーム31全体の剛性がより一層向上している。
【0088】
以上の実施形態では、本発明に係る車両用シートのシートフレームの構成例について説明してきたが、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以上までに説明してきた部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0089】
以下、本発明の車両用シートのシートフレームの変形例について説明する。変形例に係る車両用シート(以下、変形例に係るシートHS)は、上述した実施形態に係る車両用シートと同様の構成に加え、
図13に示すように、シートバックS1の幅方向一端部にアームレストS4を備えている。アームレストS4は、シートバックS1に対して上下方向及び前後方向に回動可能であり、その回動軸であるアームレスト回動軸9は、
図14に示すように、サイドフレーム11の側壁12に支持されている。より具体的に説明すると、アームレスト回動軸9は、側壁12のうち、リクライニング機構3や下部メンバフレーム31が取り付けられている部分よりも上方に位置する部分に支持されている。
【0090】
ところで、アームレストS4が回動した場合、厳密には、前側に倒れる向きに回動した場合には、サイドフレーム11のうち、アームレスト回動軸9よりも前方に位置する部分に荷重が掛かる。このため、サイドフレーム11のうち、アームレスト回動軸9よりも前方に位置する部分については、それ以外の部分よりも剛性が高くなっていることが好ましい。このため、変形例に係るシートHSでは、
図14に示すように、下部メンバフレーム31の第2延出部33が有する上方部36に、アームレスト回動軸9に向かって上方に延出した追加延出部41が設けられている。
【0091】
追加延出部41は、延出部に相当し、アームレスト回動軸9よりも前方位置に設けられており、サイドフレーム11の側壁12の内側面12bに溶接にて接合されている。これにより、アームレストS4の回動時に発生する荷重に対して、サイドフレーム11、特に、アームレスト回動軸9よりも前方に位置する部分の剛性が向上する。
【0092】
なお、変形例に係るシートHSでは、上方部36のうち、ボルト穴33aの形成部位の直ぐ上に追加延出部41が設けられている。これにより、下部メンバフレーム31の第2延出部33に関して、アクチュエータ50に対する取り付け剛性を向上させることが可能となる。また、追加延出部41の上端は、アームレスト回動軸9の支持位置まで達しておらず、当該支持位置より幾分下方にある。
【0093】
また、前述したように、サイドフレーム11の側壁12には複数の穴が形成されているが、追加延出部41は、これらの穴を塞がないように当該穴を避けてサイドフレーム11に接合される。特に、サイドフレーム11の側壁12の後端部には、後方からの衝突荷重が掛かった際にサイドフレーム11を後傾させるために変形する脆弱部としての長穴16が形成されている。そして、追加延出部41は、
図14に示すように、上記の長穴16よりも前方位置に設けられている。このような位置関係であれば、追加延出部41を設けたとしても、その影響が長穴16まで及ぶことはなく、後方からの衝突荷重が掛かった際には長穴16が良好に変形するようになる。
【0094】
本発明は、以上までに説明してきた実施形態以外のケースにも適用可能である。例えば、上述の実施形態では、サイドフレーム11の側壁12において下部メンバフレーム31の第2延出部33が内側面12bに当接していることとした。一方、側壁12においてリクライニング機構3が外側面12aに取り付けられている領域は、幅方向から見て円形の領域Mになっていることとした。そして、側壁12において第2延出部33が内側面12bに当接している領域は、幅方向から見て、上述した円形の領域Mの外縁に沿っているC字状の領域となっていることとした。つまり、第2延出部33は、上述した円形の領域Mより上方に配置された上方部36と、円形の領域Mより下方に配置された下方部37とを有することとした。しかし、これに限定されるものではなく、第2延出部33が、上記の上方部36及び下方部37のうち、いずれか一方に相当する部分のみを有している構成であってもよい。
【0095】
また、上述の実施形態では、上方部36及び下方部37の各々に補強用のフランジ(第2延出部上側フランジ38、及び第2延出部下側フランジ39)が形成されていることとしたが、これに限定されるものではなく、補強用のフランジが形成されていない構成であってもよい。
【0096】
また、上述の実施形態では、本フレームFの構成部分同士を接合する方法としてレーザー溶接が用いられていることとしたが、これに限定されるものではなく、他の溶接(例えば、TIG溶接、MIG溶接、アーク溶接)が用いられることとしてもよい。
【0097】
また、上述の実施形態では、上方部36及び下方部37の前端部同士が離間し、後端部同士が連結していることとしたが、これに限定されるものではなく、上方部36及び下方部37の後端部同士が離間し、前端部同士が連結していることとしてもよい。