特開2017-214449(P2017-214449A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017214449-ポリオレフィン系樹脂発泡シート 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-214449(P2017-214449A)
(43)【公開日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂発泡シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/12 20060101AFI20171110BHJP
   B65D 57/00 20060101ALI20171110BHJP
【FI】
   C08J9/12CES
   B65D57/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-107310(P2016-107310)
(22)【出願日】2016年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】落合 哲也
【テーマコード(参考)】
3E066
4F074
【Fターム(参考)】
3E066AA22
3E066BA01
3E066CA01
3E066HA05
3E066MA03
3E066NA30
4F074AA24A
4F074AA25B
4F074AA98
4F074AB03
4F074AB05
4F074AC36
4F074AE06
4F074AG06
4F074AG07
4F074BA37
4F074BA38
4F074BC02
4F074BC12
4F074CA22
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA08
4F074DA23
4F074DA24
(57)【要約】
【課題】透明電極付パネルの表面保護に適したポリオレフィン系樹脂発泡シートを提供すること。
【解決手段】所定の表面粗さと含水率とを有するポリオレフィン系樹脂発泡シートを提供する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂組成物によって形成され、透明電極付パネルの電極形成面に当接させて用いられるポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、
温度23℃、相対湿度65%における平衡含水率が0.15質量%以下で、前記電極形成面に当接される表面の算術平均粗さ(Ra)が27μm以下であるポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項2】
0.4mm以上3.0mm以下の平均厚みを有し、且つ、見掛け密度が0.04g/cm以上0.1g/cm以下の押出発泡シートとして形成され、押出方向(MD)及び幅方向(TD)での平均気泡径が何れも0.1mm以上2.0mm以下で、前記電極形成面に当接される表面の表面抵抗率が1×10Ω以上1×1013Ω以下である請求項1記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項3】
自然状態での厚みをt(mm)とし、
厚み方向に140gf/cmの圧縮荷重を加えた時の厚みをt(mm)とし、
前記圧縮荷重を加えた後、該圧縮荷重を除いた時の厚みをt(mm)とした際に、
下記(1)と下記(2)との両方を満足する請求項1又は2記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。

20% ≦ 〔(t−t)/t〕×100% ≦ 60% ・・・(1)
80% ≦ (t/t)×100% ・・・(2)
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂と、オレフィン系熱可塑性エラストマーとを含み、
ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系熱可塑性エラストマーとの合計に占める前記ポリオレフィン系樹脂の質量割合が75質量%以上95質量%以下である請求項1乃至3の何れか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項5】
気泡核剤である無機物粒子と、高分子型帯電防止剤と、を含み、
前記ポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレン系樹脂を含み、
前記ポリオレフィン系樹脂と前記オレフィン系熱可塑性エラストマーとの合計量を100質量部とした際に、前記無機物粒子を0.3質量部以上3質量部以下の割合で含み、且つ、前記高分子型帯電防止剤を2質量部以上8質量部以下の割合で含んでおり、
前記高分子型帯電防止剤の融点Td(℃)と前記ポリプロピレン系樹脂の融点Tp(℃)とが下記(3)の関係を満たす請求項4記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。

30℃ ≦ (Tp−Td) ≦ 60℃ ・・・(3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂発泡シートに関し、より詳しくは、透明電極付パネルの表面保護に用いられるポリオレフィン系樹脂発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス板や樹脂板の片面又は両面にITO(酸化インジウムスズ)などによって透明な電極パターンを形成した透明電極付パネルが液晶ディスプレイやプラズマディスプレイといったフラットパネルディスプレイ用の基板として広く用いられている。
この種の透明電極付パネルは、通常、フラットディスプレイの製造過程などにおいて単独で保管されてはおらず平置姿勢のものを複数枚積層して保管されている。
このような場合、透明電極付パネルを直接積層すると電極パターンに損傷を与えるおそれがあるため、「合紙」などと呼ばれるシートをパネル間に介挿させて透明電極付パネルの表面保護を図ることが従来行われている。
【0003】
そして、このような透明電極付パネルの表面保護に用いるシートとしては、軟質で且つ緩衝性に優れることから樹脂発泡シートが用いられている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−329999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように樹脂発泡シートを透明電極付パネルの表面保護に用いた場合でも透明電極が十分健全な状態に保たれないことがあり、従来の樹脂発泡シートは、透明電極付パネルの表面保護に十分適したものにはなっていないという問題を有している。
本発明は、このような問題を解決することを課題としており、透明電極付パネルの表面保護に適した樹脂発泡シートを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、前記のような用途においては一般的な樹脂発泡シートのなかでも比較的軟質性に優れたポリオレフィン系樹脂発泡シートを利用することが有利であることを見出した。また、本発明者は、透明電極が微量の水分によって悪影響を受ける場合があることを見出して本発明を完成させるに至ったものである。
【0007】
即ち、上記課題を解決すべく本発明は、ポリオレフィン系樹脂組成物によって形成され、透明電極付パネルの電極形成面に当接させて用いられるポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、温度23℃、相対湿度65%における平衡含水率が0.15質量%以下で、前記電極形成面に当接される表面の算術平均粗さ(Ra)が27μm以下であるポリオレフィン系樹脂発泡シートを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、平衡含水率の低いポリオレフィン系樹脂発泡シートで透明電極付パネルの電極形成面を保護することができる。
しかも、ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、電極形成面に当接される表面が平滑であるため透明電極付パネルへの密着性に優れる。
従って、本発明によれば、ポリオレフィン系樹脂発泡シートと透明電極付パネルとの界面に空気中から侵入した水分や、ポリオレフィン系樹脂発泡シートに含まれている水分などが透明電極に悪影響を与えるおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ポリオレフィン系樹脂発泡シートの一使用態様を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートの実施形態について説明する。
本実施形態のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、透明電極付パネルの表面保護に用いられ、前記透明電極付パネルの電極形成面に当接させて用いられるものである。
本実施形態のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、ポリオレフィン系樹脂組成物によって形成され、該ポリオレフィン系樹脂組成物が押出発泡されて形成された押出発泡シートである。
【0011】
図1に示すように本実施形態のポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、例えば、平置姿勢の透明電極付パネル2を複数枚上下方向に積層して積層体10を形成する際に積層方向(上下)に隣接する透明電極付パネル2の間に介装させて用いられる。
【0012】
ポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、厚みが厚い方が透明電極付パネル2どうしの接触をより確実に防止することができる。
ポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、単位面積当たりの質量が大きい方が優れた圧縮強度を発揮する。
そして、ポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、発泡倍率が高く、見掛け密度が小さい方が緩衝性に優れる。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、一方で厚みが薄い方が積層体10をコンパクトなものにすることができる。
そして、厚みが薄く且つクッション性に優れるポリオレフィン系樹脂発泡シート1を得る上においては、ポリオレフィン系樹脂発泡シート1の単位面積当たりの質量は、小さい方が好ましい。
【0014】
これらの観点から、本実施形態のポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、0.4mm以上3.0mm以下の平均厚みを有することが好ましく、0.5mm以上2.5mm以下の平均厚みを有することがより好ましい。
また、ポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、単位面積当たりの質量が15g/m以上110g/m以下であることが好ましく、20g/m以上100g/m以下であることがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂発泡シート1の見掛け密度は0.04g/cm以上0.1g/cm以下であることが好ましく、0.05g/cm以上0.1g/cm以下であることがより好ましく0.05g/cm以上0.09g/cm以下であることが特に好ましい。
【0015】
本実施形態のポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、温度23℃、相対湿度65%における平衡含水率が0.15質量%以下で、前記電極形成面に当接される表面の算術平均粗さ(Ra)が27μm以下であることが透明電極をより確実に保護する上において重要である。
ポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、平衡含水率が0.15質量%以下であることで、当該ポリオレフィン系樹脂発泡シート1に含まれている水分によって透明電極が悪影響を受けることを抑制することができる。
ポリオレフィン系樹脂発泡シート1の平衡含水率は、0.14質量%以下であることが好ましく、0.13質量%以下であることがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、算術平均粗さ(Ra)が27μm以下であることで電極形成面に対して優れた密着性を発揮する。
従って、ポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、算術平均粗さ(Ra)が27μm以下であることで空気中の水分が透明電極に接することを優れた密着性によって遮ることができる。
ポリオレフィン系樹脂発泡シート1の表面の算術平均粗さ(Ra)は、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、上記のような表面粗さに係る規定を両面において満足することが重要である。
なお、ポリオレフィン系樹脂発泡シート1の平衡含水率は、通常、0.01質量%以上であり、算術平均粗さ(Ra)は、通常、0.5μm以上である。
【0016】
ポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、厚み方向における圧縮歪み特性が特定の範囲内であることが好ましい。
具体的には、ポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、自然状態での厚みをt(mm)とし、厚み方向に140gf/cmの圧縮荷重を加えた時の厚みをt(mm)とし、前記圧縮荷重を加えた後、該圧縮荷重を除いた際の厚みをt(mm)とした際に下記(1)及び下記(2)の少なくとも一方を満足することが好ましく、両方を満足することがより好ましい。

20% ≦ 〔(t−t)/t〕×100% ≦ 60% ・・・(1)
80% ≦ (t/t)×100% ・・・(2)

なお、以下においては上記の「〔(t−t)/t〕×100%」で示される特性を「潰れ量」と称することがある。
また、以下においては上記の「(t/t)×100%」で示される特性を「圧縮復元率」と称することがある。
【0017】
ポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、気泡形状がある程度の範囲に調整されていることが好ましく、押出方向(MD)及び幅方向(TD)での平均気泡径が何れも0.1mm以上2.0mm以下であることが好ましい。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、透明電極付パネル2の表面から取り除く際に静電気を発生させないことが好ましい。
そのため、ポリオレフィン系樹脂発泡シート1は、透明電極付パネル2の電極形成面に当接される表面の表面抵抗率が1×10Ω以上1×1013Ω以下であることが好ましい。
上記のような好ましい特性をポリオレフィン系樹脂発泡シート1に対してより確実に発揮させ得る点において、ポリオレフィン系樹脂発泡シート1を構成するポリオレフィン系樹脂組成物は、所定の配合内容となっていることが好ましい。
【0019】
ポリオレフィン系樹脂組成物のべースポリマーとなるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)などのポリエチレン系樹脂;ホモポリプロピレン樹脂(ホモPP)、ランダムポリプロピレン樹脂(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン樹脂(ブロックPP)などのポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0020】
ポリオレフィン系樹脂発泡シート1を形成させるためのポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂発泡シートに良好なるコシ(曲げ)強度を与えることができる点においてポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
特に、ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、その主成分が、高溶融張力ポリプロピレン樹脂(HMS−PP)などと呼ばれるポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
このHMS−PPとしては、オレフィンブロックを導入させたポリプロピレン系ブロックコポリマーや、このようなポリマーに放射線や電子線などの活性エネルギー線による部分架橋、又は化学架橋による部分架橋が施されたものが好ましい。
また、HMS−PPとしては、例えば、230℃における溶融張力が5cN以上もの高い値を示すようなポリプロピレン系樹脂を採用することができる。
【0021】
なお、ポリプロピレン系樹脂の溶融張力は、下記要領で測定することができる。
即ち、ポリプロピレン系樹脂からなる試料を垂直に起立状態に配設された内径が15mmのシリンダー内に収容した上で230℃にて5分間に亘って加熱して溶融する。
しかる後、シリンダー内にその上部からピストンを挿入し、シリンダー内の溶融状態の試料をピストンでシリンダーの下端に設けたキャピラリー(ダイ径:2.095mm、ダイ長さ:8mm、流入角度:90°(コニカル))から押出速度0.0676mm/sの一定速度で押出して紐状体を得る。
そして、この押出された紐状体をキャピラリーの下方に配設した張力検出プーリーに通過させた後に巻取りロールを用いて巻取り、巻取りはじめの初速を3.447mm/sとし、その後に加速度を13.1mm/sとし、徐々に巻取り速度を大きくし、張力検出プーリーによって観察される張力が急激に低下した時の巻取り速度を「破断点速度」とし、この破断点速度が観察されるまでの間に観測された張力のうちの破断点速度直前の張力の極大値と極小値の相加平均値を溶融張力とする。
なお、溶融張力は、例えば、チアスト社から商品名「ツインボアキャピラリーレオメーターRheologic 5000T」にて市販されている試験機を用いて測定することができる。
【0022】
ポリオレフィン系樹脂組成物には、ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーなどのオレフィン系熱可塑性エラストマーを前記ポリオレフィン系樹脂とともに含有させることが好ましい。
より詳しくは、ポリオレフィン系樹脂発泡シート1を構成するポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂と、オレフィン系熱可塑性エラストマーとを含み、ポリオレフィン系樹脂と、オレフィン系熱可塑性エラストマーとの合計に占める前記ポリオレフィン系樹脂の質量割合が75質量%以上95質量%以下であり、前記オレフィン系熱可塑性エラストマーの質量割合が5質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂発泡シート1を構成するポリオレフィン系樹脂組成物は、上記のようなベースポリマーとともに発泡剤や気泡核剤といった発泡に寄与する成分や、帯電防止剤といった表面抵抗率の低減に寄与する成分を含有してもよい。
【0024】
前記発泡剤としては、イソブタン、ノルマルブタン、プロパン、ペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロペンタンなどの炭化水素、二酸化炭素、窒素などの無機ガスを挙げることができる。
なかでも、前記発泡剤としては、イソブタンとノルマルブタンとの混合ブタンが好ましい。
【0025】
前記気泡核剤としては、無機物粒子が挙げられる。
該無機物粒子は、一定以上の割合でポリオレフィン系樹脂発泡シートに含有させる方が、当該ポリオレフィン系樹脂発泡シートの発泡状態をコントロールし易くなる。
その一方で、無機物粒子は、少ない方が当該無機物粒子によって透明電極を傷付けてしまうおそれを低減させることができる。
このようなことから本実施形態のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、前記ポリオレフィン系樹脂と前記オレフィン系熱可塑性エラストマーとの合計量を100質量部とした際に前記無機物粒子の含有量が0.3質量部以上3質量部以下の割合となっていることが好ましい。
また、無機物粒子は、ある程度以上の大きさを有することが好ましい反面で透明電極を傷付けてしまうおそれを低減させることができる点においては平均粒子径が小さい方が好ましい。
このような点において無機物粒子は、平均粒子径が0.1μm以上15μm以下であることが好ましい。
なお、無機物粒子は、ある程度扁平状である方が透明電極を傷付けてしまうおそれが低い。
このことから無機物粒子は、比表面積が1m/g以上であることが好ましい。
なお、無機物粒子の比表面積は、25m/g以下であることが好ましく、15m/g以下であることがより好ましく、10m/g以下であることが特に好ましい。
【0026】
なお、本実施形態において無機物粒子の平均粒子径とは、レーザー回折法によって求められるメジアン径(D50)を意味する。
具体的には、平均粒子径は、株式会社島津製作所製SALD−2100粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
また、比表面積とはBET法によって求められる値を意味する。
具体的には、BET比表面積は、日本ベル社製BELSORP−miniII自動比表面積測定装置を用いて測定することができる。
なお、測定は、前処理として1Pa以下で130℃−3時間の加温脱気を試料に対して実施し、吸着ガスとして窒素ガスを使用する。
【0027】
本実施形態において気泡調整剤として用いられる該無機物粒子としては、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、及び、ガラスのいずれかで出来た粒子であることが好ましく、タルク粒子か又は炭酸カルシウム粒子であることが好ましい。
即ち、本実施形態のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、タルク粒子及び炭酸カルシウム粒子の内の少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0028】
前記帯電防止剤としては、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの表面にブリードアウトすることによって帯電防止性を発揮する界面活性剤などの低分子型帯電防止剤や極性基を有するポリマーなどからなる高分子型帯電防止剤が挙げられる。
本実施形態の帯電防止剤としては高分子型帯電防止剤が好ましい。
前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、高分子型帯電防止剤の含有量が多い方が優れた帯電防止性能を発揮させる上において有利である。
その一方でポリオレフィン系樹脂発泡シートは、高分子型帯電防止剤が少ない方がポリオレフィン系樹脂やオレフィン系熱可塑性エラストマーが有する優れた機械的性質をシート物性として発揮させ易い。
従って、本実施形態のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、前記ポリオレフィン系樹脂と前記オレフィン系熱可塑性エラストマーとの合計量を100質量部とした際に前記高分子型帯電防止剤を2質量部以上8質量部以下の割合で含有することが好ましい。
【0029】
前記高分子型帯電防止剤としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミド、エチレン−メタクリル酸共重合体などのアイオノマー、ポリエチレングリコールメタクリレート系共重合体等の第四級アンモニウム塩、特開2001−278985号公報に記載のオレフィン系ブロックと親水性ブロックとの共重合体等が挙げられる。
【0030】
これらのなかでは、オレフィン系ブロックと親水性ブロックとの共重合体が好ましく、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体(ポリエーテル系ブロックとポリオレフィン系ブロックとのブロック共重合体)を前記高分子型帯電防止剤としてポリオレフィン系樹脂組成物に含有させることが好ましい。
なお、高分子型帯電防止剤としては、2以上の物質の混合品であっても良く、帯電防止性能の更なる向上を目的とし、前記ブロック共重合体にポリアミドを混合したもの、又は、ポリアミド系ブロックをさらに共重合させたものであってもよい。
【0031】
前記高分子型帯電防止剤としては、ポリエーテル系ブロックと、プロピレンを70モル%以上含むオレフィン系ブロックとの共重合体を主成分とするものがより好ましい。
なお、高分子型帯電防止剤は、前記ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体が占める割合を70質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることがさらに好ましい。
ポリオレフィン系樹脂発泡シートを形成するポリオレフィン系樹脂組成物がポリプロピレン系樹脂を含有する場合、高分子型帯電防止剤の融点Td(℃)は、前記ポリプロピレン系樹脂の融点Tp(℃)と下記(3)の関係を満たすことが好ましい。

30℃ ≦ (Tp−Td) ≦ 60℃ ・・・(3)

上記の関係を満たすポリプロピレン系樹脂と高分子型帯電防止剤とを含むポリオレフィン系樹脂組成物は、押出発泡法によってポリオレフィン系樹脂発泡シートとする際に、当該ポリオレフィン系樹脂発泡シートの表面を平滑にさせ易いという利点を有する。
【0032】
本実施形態のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、前記に例示したポリオレフィン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、及び、高分子型帯電防止剤とは別のポリマーをその他の成分を含有させることができる。ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、さらに、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤などの添加剤をその他の成分を含有させることができる。
但し、これらの他の成分については、ポリオレフィン系樹脂発泡シートにおける含有量を5質量%以下に留めておくことが好ましく、3質量%以下とすることがより好ましく、実質的に含有させない状態(例えば、1質量%未満)にすることが特に好ましい。
【0033】
なお、カルボニル基を有するようなものをその他の成分として含有させると、透明電極付パネルの透明電極を腐食してしまうおそれを有することからこのような成分を含有させないことが好ましい。
このようなカルボニル基を有する成分が含まれているか否かについては、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの表面に対し、FT−IR ATRによる分析を行った際にカルボニル基に由来するピークが明瞭な形で見られないことで確認することができる。
具体的には、ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、透明電極付パネルの電極形成面に接する表面に対してFT−IR ATRを行った際にカルボニル基に特有の1700〜1725cm−1(C=O伸縮)に見られるピークの強度がアルキル由来の1450〜1460cm−1(C−H変角)に見られるピーク強度に対して1/2以下になっていることが好ましく1/3以下になっていることがより好ましく、1/5以下になっていることが特に好ましい。
【0034】
本実施形態のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、上記のようなポリオレフィン系樹脂組成物をサーキュラーダイなどを通じて押出発泡させて作製することができる。
【0035】
このような押出発泡において前記のような比表面積が大きく扁平な気泡調整剤は、その長手方向が押出方向となってポリオレフィン系樹脂発泡シートの表面に露出し難くなる。
従って、ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、押出発泡によって作製されることで無機物粒子が透明電極付パネルに悪影響を及ぼすことを抑制させることができる。
また、扁平な無機物粒子をその長さ方向がポリオレフィン系樹脂発泡シートの平面方向に並んだ状態にさせるためには、押出時において押出方向にせん断を加えるだけでなく周方向へも一定以上の延伸を加えることが好ましい。
即ち、サーキュラーダイから押出された円筒状発泡シートを切り開いてポリオレフィン系樹脂発泡シートを作製する際には、円筒状発泡シートを切り開く前に拡径する操作を行うことが好ましい。
但し、前記円筒状発泡シートの過度な拡径は、気泡膜の破れなどポリオレフィン系樹脂発泡シートの物性に悪影響を及ぼすおそれがある。
従って、円筒状発泡シートの拡径度合いは、サーキュラーダイの口径(スリット幅の中央を結んだ円の直径)に対して2.5倍以上5.0倍以下とすることが好ましい。
【0036】
このとき、押出発泡に供するポリオレフィン系樹脂組成物の配合内容によってポリオレフィン系樹脂発泡シートの平衡含水率を調整できる。
即ち、親水性の官能基を有するポリマーや添加剤を多く含むとポリオレフィン系樹脂発泡シートの平衡含水率が高くなり易いことから、親水性ポリマーを含む高分子型帯電防止剤や脂肪酸金属塩などの添加剤といった配合物のポリオレフィン系樹脂組成物における含有量は一定以下に抑制することが好ましい。
【0037】
また、このとき、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの表層部の発泡状態を調整することでポリオレフィン系樹脂発泡シートの表面粗さ(Ra)を調整することができる。
ポリオレフィン系樹脂発泡シートの表面粗さ(Ra)は、通常、表層部の気泡が粗い状態になるほど高い値となり易い。
従って、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの表面粗さ(Ra)は、発泡剤や気泡核剤の使用量や押出発泡時の冷却条件などによって調整することができる。
【0038】
このようにして得られる本実施形態のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、透明電極付パネルに擦り傷を形成させてしまったり、透明電極に化学変化を生じさせてしまったりするおそれが低く、フラットパネルディスプレイの生産における歩留まり向上の観点からも有効なものとなる。
【0039】
なお、本実施形態のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、図1に示すように2枚の透明電極付パネルの間に挟み込まれるような態様以外にも、例えば、透明電極付パネルを包み込む袋などとしても用いられ得るものである。
そして、上記例示はあくまで本発明の限定的な例示であり、本発明は上記例示に何等限定解釈されるべきものではない。
【実施例】
【0040】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂(HMS−PP、ボレアリス社製、商品名「WB140」、MFR=2.0g/10min、融点160℃)85質量部、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマー(サンアロマー社製、商品名「Q100F」、ランダムPPとエチレン−プロピレン共重合体ゴムとのブレンドポリマー、MFR=0.6g/10min)15質量部、高分子型帯電防止剤(三洋化成社製ポリエーテル−ポリプロピレンブロック共重合体「ペレクトロンLMP」、MFR=40g/10min、融点115℃)4.5質量部、気泡核剤として日東粉化社製タルクマスターバッチ(商品名「タルペット70P」、平均粒子径(D50)12μm、比表面積8.5m/g)のタルク粒子含有品、タルク純分70質量%)1.0質量部(タルク純分で0.7質量部)、及び、着色剤として緑色顔料マスターバッチ(ポリコール興業製、商品名「G64088」)1.2質量部をφ90mm−φ150mmのタンデム押出機の第一押出機(φ90mm)に供給し、押出機内で溶融した後、押出機途中から発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=95/5(モル比))を5質量部圧入し、混練した後、第二押出機(φ150mm)で発泡に適する温度域(161℃)まで冷却し、出口直径が96mm(スリットクリアランス0.45mm)のサーキュラーダイより大気中に押出発泡した。
押出発泡された円筒状発泡シートを直径が300mmの冷却マンドレル上を沿わせて冷却すると共に拡径し、拡径後の円筒状発泡シートを引取りつつ周方向の1点で押出方向に沿って切断し、これを開いて長尺帯状のポリプロピレン系樹脂発泡シート(ポリオレフィン系樹脂発泡シート)を得た。
なお、この帯状のポリプロピレン系樹脂発泡シートは、巻取り機にて巻き取り、400m分をロール状に巻き取った。
ポリプロピレン系樹脂発泡シートの単位面積当たりの質量は、80g/mであった。
次いで、ポリプロピレン系樹脂発泡シートをロール状のまま35℃に温調された部屋に約24時間放置し熟成させた。
その後、ロール状のポリプロピレン系樹脂発泡シートを巻き直し機にて3インチの紙管にロール状に巻き直し、約20℃の部屋に24時間放置し、実施例1のポリプロピレン系樹脂発泡シートとした。
このとき得られた実施例1のポリプロピレン系樹脂発泡シートは、厚み1.0mmであった。
なお、実施例1のポリプロピレン系樹脂発泡シートの物性等は、以下の方法に基づいて測定した。
【0041】
<厚み(平均厚み)>
ポリプロピレン系樹脂発泡シートの厚みについては、定圧厚み測定機(Teclock社製、型式「PC−440J」)を用いて測定した。
具体的には、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの厚みは、円筒状の重りを用いて直径3cmの円形状の面(面積:7.1cm)に、95gの荷重(自重を含む。)を当該ポリプロピレン系樹脂発泡シートにかけたときの厚みを定圧厚み測定機にて測定した。
なお、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの厚みは、幅方向に5cmごとに50点測定し、その測定値の算術平均値とした。
なお、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの幅が狭く、50点分の測定箇所を確保出来ない場合には、可能な限りの測定点数を確保した上で全ての測定値の算術平均値を平均厚みとした。
【0042】
<単位面積当たりの質量(坪量)>
ポリプロピレン系樹脂発泡シートの単位面積当たりの質量は、押出方向と直交する方向に沿った第1の線と、該第1の線に平行し且つ第1の線と押出方向に20cmの距離を隔てた第2の線との2本の線に沿ってポリプロピレン系樹脂発泡シートを切断して測定用試料を得、該測定用試料の質量:W(g)と面積:S(cm)とに基づき下記の式にて算出した。
なお、ポリプロピレン系樹脂発泡シートが20cmの幅で測定用試料を切取れる程の大きさにない場合には、可能な大きさに矩形状に切取って切片を得、その切片の質量W(g)と面積S(cm)から下記式にてポリプロピレン系樹脂発泡シートの単位面積当たりの質量を求めた。

単位面積当たりの質量(g/m)=W/S×10000
【0043】
<表面抵抗率>
ポリプロピレン系樹脂発泡シートの表面抵抗率は、JIS K6911−2006「熱硬化性プラスチック一般試験方法」記載の方法により測定した。
即ち、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの表面抵抗率は、試験装置((株)アドバンテスト製デジタル超高抵抗/微小電流計R8340及びレジスティビティ・チェンバR12702A)を使用し、試験片に約30Nの荷重にて電極を圧着させ、500Vで1分間充電後の抵抗値を測定し、次式により算出した。
なお、試験片は、通常、ポリプロピレン系樹脂発泡シートから「幅100mm×長さ100mm×厚み(ポリプロピレン系樹脂発泡シートの全厚み)」のものを切り出して作製した。
また、測定は、通常、温度20±2℃、湿度65±5%の雰囲気下に試験片を24時間以上置いた後に行い、試験環境として温度20±2℃、湿度65±5%の雰囲気下で行った。
さらに、測定は、通常、試験片の数を5個とし、試験片それぞれの表裏両面に対して実施し、合計10個の測定値が得られるように実施した。
ポリプロピレン系樹脂発泡シートの表面抵抗率は、原則的にこの10個全ての測定値の算術平均値とした。

ρs=π(D+d)/(D−d)×Rs

ρs:表面固有抵抗率(Ω/□)
D:表面の環状電極の内径(cm)(レジスティビティ・チェンバR12702Aでは、7cm。)
d:表面電極の内円の外径(cm)(レジスティビティ・チェンバR12702Aでは、5cm。)
Rs:表面抵抗(Ω)
【0044】
<表面粗さ>
表面粗さは、JIS B0601:2001に準じて測定した。
具体的には、表面粗さは、測定装置として(株)キーエンス製の「ダブルスキャン高精度レーザー測定器LT−9500、LT−9010M」を用い、データ処理ソフトとしてコムス(株)製の「非接触輪郭形状 粗さ測定システムMAP−2DS」を用いて測定を行った。
測定条件については、測定範囲を18000μm、測定ピッチを5μm、測定速度を1000μm/秒、評価長さを12.5mm、基準長さを2.5mm、光量を40に設定し、平均フィルターを2、ノイズフィルターを1とした。
試験片は、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの原反から幅100mm×長さ100mm×原反厚みのものを切り出して作製した。
試験片の数は5個とし、試験片それぞれの表裏両面の押出方向及び幅方向における表面粗さを測定した。
算術平均粗さ(Ra)は、平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、基準長さで平均した(n=20)。
【0045】
<MD方向の平均気泡径、及び、TD方向の平均気泡径>
ポリプロピレン系樹脂発泡シートのMD方向の平均気泡径、及び、TD方向の平均気泡径は、次の試験方法にて測定した。
まず、ポリプロピレン系樹脂発泡シートを幅方向中央部からMD方向(押出方向)に沿って切り出した断面、及び、ポリプロピレン系樹脂発泡シートをTD方向(押出方向に垂直な幅方向)に沿って切り出した断面を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製の「S−3000N」、又は、(株)日立ハイテクノロジーズ製の「S−3400N」)にて、18倍(場合により100倍)に拡大して撮影した。
次に、撮影した画像をA4用紙上に4画像ずつ印刷し、切断方向に平行な任意の一直線上(長さ60mm)にある気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出した。

平均弦長 t = 60/(気泡数×写真の倍率)

ただし、任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにした。接してしまう場合は気泡数に含めた。計測は各方向6ヶ所とした。
写真の倍率は写真上のスケールバーを株式会社ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」にて1/100mmまで計測し、次式により求めた。

写真倍率=写真上のスケールバーの長さの実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)

そして次式により各方向における気泡径(d)を算出した。

d(mm)=t/0.616

さらにそれらの算術平均を平均気泡径とした。
そして、MD方向に沿って切断した切断面の平均気泡径をDmとし、TD方向に沿って切断した切断面の平均気泡径をDtとした。
【0046】
<水分量測定>
ポリプロピレン系樹脂発泡シートは、水分量の測定に供する前に23℃65%RHの環境下で約24時間の状態調整を実施した。
即ち、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの平衡含水率は、上記のような条件で状態調整をした後に水分量を測定することによって求めた。
ポリプロピレン系樹脂発泡シートの水分量は、JIS K0068:2001(化学製品の水分測定方法)のカールフィッシャー滴定法(水分気化法)によって測定した。
具体的には、試料約100mgを(株)三菱化学アナリテック社製カールフィッシャー水分測定装置CA−200及び水分気化装置VA−236Sにセットして測定した。
測定時の陽極液、陰極液にはそれぞれ(株)エーピーアイ コーポレーション製アクアミクロンAX、アクアミクロンCXUを使用し、測定温度は128℃にし、キャリアガスはNを用い、流量は250ml/minで測定を行った。
試料の試験回数は2回で、それぞれの水分量から同時に測定したブランク容器の水分量(試験回数2回の平均値)を減算し、その値を試料中に含まれる水分量として試料中水分量(質量%)を求めた。
なお、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの水分量については、2回の測定値の算術平均値とした。
【0047】
<融点>
原料樹脂等の融点は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定した。
但し、測定方法及び温度条件に関しては以下の通りに実施した。
装置として、示差走査熱量計装置 DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー社製)を用い、アルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6.5mg充てんして、窒素ガス流量30mL/minの条件で、30℃から−60℃まで降温した後10分間保持し、−60℃から200℃まで昇温(1st Heating)して10分間保持した後、200℃から−60℃まで降温(Cooling)して10分間保持した後、−60℃から200℃まで昇温(2nd Heating)した時のDSC曲線を得た。
なお、全ての昇温及び降温は速度10℃/minで行い、基準物質としてアルミナを用いた。
融点とは、2nd Heating過程にみられる融解ピークのトップの温度を読みとった値である。
複数融解ピークが見られる場合は、最も高温側にあるものをその樹脂の融点とした。
【0048】
<潰れ量及び圧縮復元率測定>
潰れ量については、ポリプロピレン系樹脂発泡シートから10cm角のサンプルを幅方向に5点切り出し、卓上型厚み測定装置(テクロック社製「PC−440J」を用いて、無荷重の状態で厚み「t(mm)」を測定する。その後、140gf/cmの荷重をかけて厚み「t(mm)」を測定し、下記式で潰れ率を算出した。
測定は、n=5で行い、算術平均値をそのサンプルの潰れ率とした。

潰れ量(%)=〔(t−t)/t〕×100%

圧縮復元率については、同上のサンプルから荷重を取り除いてから5分後の厚み「t(mm)」を読み取り、下記式から算出した。

圧縮復元率(%)=(t/t)×100%
【0049】
<ITO腐食、傷つき>
ITOに対する腐食性、傷付き性については、ポリプロピレン系樹脂発泡シートから10cm×10cmの切片を2枚切り出し、この2枚の切片の間にITO膜付ガラス(ジオマテック社製、製品番号「0002」)を挟みこみ、これに1kgの重りを乗せた状態で、60℃、95%RHの条件の高温高湿槽に投入し、300時間保持して評価することができる。
なお、腐食性の判定については、前記のようにして300時間保持した後のITO膜付ガラスのITO膜の腐食状況をマイクロスコープ(100倍)を使用し、付着物及びITOの傷つき等の状態観察を行い、下記の基準に基づいて行う。

◎:100μm以下のサイズの腐食や傷つきがガラス1枚当たり3個以下
○:100μm以下のサイズの腐食や傷つきがガラス1枚当たり4個〜20個
△:100μm以下のサイズの腐食や傷つきがガラス1枚当たり21以上、且つ、100μm以上の腐食なし
×:100μm以下のサイズの腐食や傷つきがガラス1枚当たり21以上、且つ、100μm以上の腐食1〜10個
××:100μm以下のサイズの腐食や傷つきがガラス1枚当たり21以上、且つ、100μm以上の腐食が11個以上
【0050】
<見掛け密度>
ポリプロピレン系樹脂発泡シートの見掛け密度はJIS K 7222−1999記載の試験方法に準拠して、下記のようにして測定した。
即ち、試料から10cm角の試験片を試料の元のセル構造を変えないように切断し、その質量及び各辺の寸法をノギスによって測定し、次式により算出した。

見掛け密度(g/cm)=試験片質量(g)/試験片体積(cm
【0051】
(実施例2〜6、比較例1〜3)
表に示すような配合で、表に示すような特性を有するポリプロピレン系樹脂発泡シートを実施例1と同様に作製し、実施例1と同様に評価した。
結果を表に示す。
TD−1:
ポリエーテル−ポリプロピレンブロック共重合体「ペレクトロンLMP」、MFR=40g/10min、融点115℃、三洋化成工業株式会社製

TD−2:
ポリエーテル−ポリプロピレンブロック共重合体「ペレスタット300」、MFR=30g/10min、融点135℃、三洋化成工業株式会社製

TD−3:
ポリエーテルポリエステルアミド-ポリオレフィン共重合体「IPE-107M」,MFR=8g/10min、融点156℃、イオンフェーズ社製

TD−4:ポリエーテル−ポリプロピレンブロック共重合体「IPE-fSTAT」,MFR=17g/10min、融点98℃、イオンフェーズ社製
【0052】
(参考例1、2)
気泡核剤をタルクに代えて重曹クエン酸系化学発泡剤(大日精化社製 「PO410K」)としたこと以外は、実施例1と同様にポリプロピレン系樹脂発泡シートを作製し、実施例1と同様に評価した。
その結果を、当該参考例と類似する配合の実施例の結果とともに下記表に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
上記の表に示した結果からも、本発明によれば透明電極付パネルの表面保護適したポリオレフィン系樹脂発泡シートを提供し得ることがわかる。
【符号の説明】
【0055】
1:ポリオレフィン系樹脂発泡シート
2:透明電極付パネル
図1