【解決手段】 金属酸化物(A)と(メタ)アクリレート(B)と光重合開始剤(C)とを含有する活性エネルギー線硬化性組成物(D)であって、(D)中での動的光散乱法によって測定された金属酸化物(A)のメジアン粒子径が5〜100nmであり、(D)の硬化物のガラス転移温度(Tg)が−30〜40℃であり、硬化物の全光線透過率が85%以上であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物を用いる。
金属酸化物(A)と(メタ)アクリレート(B)と光重合開始剤(C)とを含有する活性エネルギー線硬化性組成物(D)であって、(D)中での動的光散乱法によって測定された金属酸化物(A)のメジアン粒子径が5〜100nmであり、(D)の硬化物のガラス転移温度(Tg)が−30〜40℃であり、硬化物の全光線透過率が85%以上であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
金属アルコキシド(a1)がジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ハフニウムアルコキシド、亜鉛アルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ガリウムアルコキシド、インジウムアルコキシド、ゲルマニウムアルコキシドおよびスズアルコキシドからなる群から選ばれる1種以上である請求項6記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、金属酸化物(A)と(メタ)アクリレート(B)と光重合開始剤(C)とを含有する活性エネルギー線硬化性組成物(D)であって、(D)中での動的光散乱法によって測定された金属酸化物(A)のメジアン粒子径が5〜100nmであり、その活性エネルギー線硬化性組成物(D)の硬化物のガラス転移温度(Tg)が−30〜40℃であり、硬化物の全光線透過率が85%以上であることを特徴とする。
【0009】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸および/またはメタクリル酸」を、「(メタ)アクリル樹脂」とは「アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂」を、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基および/またはメタクリロイル基」を、「(メタ)アクリロイロキシ基」とは「アクリロイロキシ基および/またはメタクリロイロキシ基」を意味する。
【0010】
以下において、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の必須構成成分である(A)、(B)、(C)について順に説明する。
【0011】
本発明の必須成分である金属酸化物(A)としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウムおよびスズの酸化物が挙げられる。これらのうち好ましいのは、酸化ジルコニウムと酸化チタニウムであり、特に好ましいのは酸化ジルコニウムである。
【0012】
本発明の金属酸化物(A)は、の製造方法としては、金属アルコキシド(a1)と水との加水分解物を重縮合させた金属酸化物(A1)や、乾燥粉砕や湿式粉砕等の方法で(メタ)アクリレートや溶媒に分散させた金属酸化物(A2)などがある。
(A)は2種以上を併用してもよい。
【0013】
この目的で使用する金属アルコキシド(a1)としては、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、ハフニウムアルコキシド、亜鉛アルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ガリウムアルコキシド、インジウムアルコキシド、ゲルマニウムアルコキシド、スズアルコキシドなどが挙げられる。これらのうち好ましいのは、ジルコニウムアルコキシドとチタンアルコキシドであり、特に好ましいのはジルコニウムアルコキシドである。
【0014】
加水分解物を重縮合させる際の金属アルコキシド(a1)/水のモル比は2〜200である。2未満では硬化物の透明性が不十分であり、200を超えると屈折率が不十分となる。
【0015】
(a1)と水の反応における反応温度は、特に限定されないが、好ましくは50〜120℃である。また、反応時間は、特に限定されないが、好ましくは1〜20時間である。また、必要により触媒(例えば、p−トルエンスルホン酸などの酸、トリエチルアミンなどのアミン化合物)を用いてもよい
【0016】
金属酸化物(A)の含有量は、(A)と(B)の合計重量に基づいて、10〜90重量%であり、好ましくは20〜80重量%である。10重量%以上であると屈折率が十分であり、90重量%以下であると硬化物の透明性が十分である。
【0017】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に必須成分として含まれる(メタ)アクリレート(B)としては、公知の(メタ)アクリレートであれば、特に限定されずに用いられ、1官能(メタ)アクリレート(B1)、2官能(メタ)アクリレート(B2)、3官能(メタ)アクリレート(B3)及び4〜6官能(メタ)アクリレート(B4)等が挙げられる。
例えば2官能(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基の数が2個であることを意味し、以下同様の記載法を用いる。
【0018】
1官能(メタ)アクリレート(B1)としては、炭素数2〜30のアルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、o−、m−又はp−フェニルフェノールのモノ(メタ)アクリレート、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモノ(メタ)アクリレート及びノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
(B1)のうち、屈折率の観点から好ましいのはフェノキシエチル(メタ)アクリレート、o−、m−又はp−フェニルフェノールのモノ(メタ)アクリレート、フルオレンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートである。
【0020】
2官能(メタ)アクリレート(B2)としては、炭素数2〜30の多価(好ましくは2〜8価)アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物、炭素数2〜30の多価(好ましくは2〜8価)アルコールのアルキレンオキサイド(アルキレン基の炭素数2〜4)1〜30モル付加物と(メタ)アクリル酸のエステル化物、OH基含有両末端エポキシアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、フルオレンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
(B2)のうち、屈折率の観点から好ましいのはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、フルオレンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートである。
【0022】
3官能(メタ)アクリレート(B3)としては、炭素数3〜30の3価以上(好ましくは3〜8価)アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えばグリセリンのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート]、および炭素数3〜30の3価以上(好ましくは3〜8価)のアルコールのアルキレンオキサイド(アルキレン基の炭素数2〜4)1〜30モル付加物と(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えばトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート]等が挙げられる。
【0023】
4〜6官能(メタ)アクリレート(B4)としては、炭素数5〜30の4価以上(好ましくは4〜8価)アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えばペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート];および炭素数5〜30の4価以上(好ましくは4〜8価)のアルコールのアルキレンオキサイド(アルキレン基の炭素数2〜4)1〜30モル付加物と(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えばジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレート]等が挙げられる。
【0024】
(B3)および(B4)のうち、傷回復性の観点から好ましいのは3〜8価のアルコールのアルキレンオキサイド(アルキレン基の炭素数2〜4)1〜30モル付加物と(メタ)アクリル酸のエステル化物である。
【0025】
本発明の(メタ)アクリレートモノマー(B)は、透明性の観点から、その分子内にオキシアルキレン基を有することが好ましい。オキシアルキレン基としてはオキシエチレン基とオキシプロピレン基が好ましい。
【0026】
本発明の(メタ)アクリレートモノマー(B)は、屈折率の観点から、その分子内に芳香環を有することが好ましい。芳香環を有する骨格としてはベンゼン環、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、ビスフェノール骨格が好ましい。
【0027】
(メタ)アクリレート(B)の含有量は、(A)と(B)の合計重量に基づいて、屈折率の観点から10〜90重量%であり、好ましくは20〜80重量%である。
【0028】
本発明の必須成分である光重合開始剤(C)としては、フォスフィンオキサイド系化合物(C1)、ベンゾイルホルメート系化合物(C2)、チオキサントン系化合物(C3)、オキシムエステル系化合物(C4)、ヒドロキシベンゾイル系化合物(C5)、ベンゾフェノン系化合物(C6)、ケタール系化合物(C7)、1,3−α−アミノアルキルフェノン系化合物(C8)などが挙げられる。
【0029】
フォスフィンオキサイド系化合物(C1)としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0030】
ベンゾイルホルメート系化合物(C2)としては、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
【0031】
チオキサントン系化合物(C3)としては、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0032】
オキシムエステル系化合物(C4)としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1(O−アセチルオキシム))等が挙げられる。
【0033】
ヒドロキシベンゾイル系化合物(C5)としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等が挙げられる。
【0034】
ベンゾフェノン系化合物(C6)としては、ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0035】
ケタール系化合物(C7)としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0036】
1,3−α−アミノアルキルフェノン系化合物(C8)としては、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロ−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。
【0037】
これらの光重合開始剤(C)のうち、硬化性及び硬化物の着色の観点から好ましいのは、フォスフィンオキサイド系化合物(C1)および 1,3−α−アミノアルキルフェノン系化合物(C8)である。
【0038】
光重合開始剤(C)の含有量は、硬化性および透明性の観点から、(A)と(B)の合計重量に基づいて0.1〜10重量%であり、好ましくは0.2〜7重量%である。
【0039】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(D)中での動的光散乱法によって測定される金属酸化物(A)のメジアン粒子径は5〜100nmであり、好ましくは5〜90nmである。5nm未満では傷の回復性が悪く、100nmを超えると透明性が悪くなる。
このメジアン粒子径は、積算分布曲線における50%累積値に対応する粒子径(累積50%粒径)である。
測定原理として動的光散乱法で測定した値であり、例えば動的光散乱式粒子径分布測定器[商品名:ナノ粒子解析装置 nano Partica SZ−100、(株)堀場製作所製]を用いて測定することができる。
【0040】
なお、活性エネルギー線硬化性組成物(D)中での動的光散乱法によって測定される金属酸化物(A)のメジアン粒子径は、原料としての金属酸化物(A)自体の粒径とは無関係であり、(A)自体が小さな粒径であっても、(B)やその他の溶媒との相性に因っては100nmを超えることもあり得る。
特に、(D)中に含まれる溶媒、あるいは原料として使用する(A)の市販品が溶媒による溶液(分散液)である場合には、その溶媒の極性によっては、5nm以下の(A)を使用しても、例えば本命最初の比較例2のように、(D)中でのメジアン系が100nmを超えることがある。
【0041】
また、金属酸化物(A)として、(B)中で金属アルコキシド(a1)と水との加水分解反応させ、さらに重縮合物させて金属酸化物を得る方法で製造した活性エネルギー線硬化性組成物(D)は、小さなメジアン粒子が得られやすい点で好ましい。
【0042】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により種々の添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては、可塑剤、有機溶剤、分散剤、消泡剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、スリップ剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤及び紫外線吸収剤が挙げられる。
【0043】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(D)の硬化物のガラス転移温度(Tg)は−30℃〜40℃であり、好ましくは−20℃〜40℃、更に好ましくは−10℃〜40℃、特に好ましくは0℃〜40℃である。−30℃以下では密着性が悪くなり、40℃以上では傷の回復性が悪くなる。
【0044】
本発明における硬化物のTgは、以下の方法で測定することができる。
(1)試験片の作製方法
活性エネルギー線硬化性組成物を紫外線照射装置により紫外線を1000mJ/cm2照射して、硬化させて縦幅40mm、横幅5mm、厚み1mmのテストピースを作成する。
(2)Tgの測定方法
(1)で得られたテストピースを使用し、動的粘弾性測定(DMA)装置[型番「Rheogel−E4000」、(株)ユービーエム製]を用いて、下記条件で測定する。
周波数:10Hz
昇温速度:4℃/分
得られたスペクトルの貯蔵弾性率E’に対する損失弾性率E”の比(tanδ)の最大値の温度をガラス転移温度(Tg)とする。
【0045】
光学レンズ関連部品の用途として使用する場合、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(D)の25℃での屈折率は1.56〜1.65が好ましい。
【0046】
本発明における活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線及び可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化の観点から好ましいのは紫外線と電子線である。
【0047】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を紫外線により硬化させる場合は、種々の紫外線照射装置[例えば、紫外線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製]を使用できる。
使用するランプとしては、例えば高圧水銀灯及びメタルハライドランプ等が挙げられる。紫外線の照射量は、組成物の硬化性及び硬化物の可撓性の観点から好ましくは10〜10,000mJ/cm2、更に好ましくは100〜5,000mJ/cm2である。
【0048】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物を用いた光学レンズ等の製造方法は、特に限定されないが、微細な凹凸構造を有する平らな金型を用いて活性エネルギー線硬化性組成物を光硬化させ金型から離型することにより得ることができる。
【0049】
例えば本発明の組成物を予め20〜50℃に温調し、光学レンズ形状が得られる金型(型温は好ましくは20〜50℃、更に好ましくは25〜40℃)にディスペンサー等を用いて、硬化後の厚みが20〜150μmとなるように塗工または充填し、塗膜上から透明フィルムなどの透明基材を空気が入らないように加圧積層し、更に該透明基材上から活性エネルギー線を照射して該塗膜を硬化させた後に、型から離型し光学レンズシートを得る。
【0050】
上記の透明基材としては、メチルメタクリレート(共)重合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリトリアセチルセルロース及びポリシクロオレフィン等の樹脂からなるものが挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0052】
製造例1 [金属酸化物(A−1)の製造]
撹拌機、冷却管および温度計を備えた反応容器に、o−フェニルフェノキシエチルアクリレート[商品名:KOMERATE−A011、KPX Green Chemical製]70.0部、水0.01部およびトリエチルアミン 0.6部を仕込み30分間攪拌した後、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド[商品名:TBZR、日本曹達(株)製]30.0部を仕込み、65℃で2時間反応させた。その反応生成物をナスフラスコに移し、市販のKOMERATE−A011に含まれている少量の溶媒をエバポレーターで取り除き、金属酸化物(A−1)を得た。
【0053】
製造例2 [金属酸化物(A−2)の製造]
撹拌機、冷却管および温度計を備えた反応容器に、o−フェニルフェノキシエチルアクリレート55.5部、水0.01部およびトリエチルアミン 0.6部を仕込み30分間攪拌した後、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド24.5部を仕込み、65℃で2時間反応させた。さらに、安定化剤として1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)[商品名:CR−733S、大八化学工業(株)製]18.0部を仕込み、70℃で2時間反応させた。その反応生成物をナスフラスコに移し、エバポレーターで十分に溶媒を取り除き、金属酸化物(A−2)を得た。
【0054】
製造例3 [金属酸化物(A−3)の製造]
撹拌機、冷却管および温度計を備えた反応容器に、o−フェニルフェノキシエチルアクリレート70.0部、水0.01部およびトリエチルアミン 0.6部を仕込み30分間攪拌した後、チタニウムテトラ−n−ブトキシド[商品名:オルガチックス TA−21、マツモトファインケミカル(株)製]30.0部を仕込み、65℃で2時間反応させた。その反応生成物をナスフラスコに移し、エバポレーターで十分に溶媒を取り除き、金属酸化物(A−3)を得た。
【0055】
実施例1〜6及び比較例1〜3
表1に記載の各成分と配合量に従って、一括で配合し、ディスパーサーで均一になるまで混合攪拌し、実施例1〜6及び比較例1〜3の活性エネルギー線硬化性組成物を得た。 なお、使用原料に由来する有機溶媒を含有する実施例および比較例については、エバポレーターで十分に有機溶媒を揮発させた後に評価を行った。
【0056】
【表1】
【0057】
なお、表1中に記載した化合物の記号は、以下の化合物を表す。
(A−4):酸化ジルコニウム70%分散液[商品名「AX−ZP−153−A」、日本触媒(株)製]
(A−5):酸化ジルコニウム30%分散液[商品名「SZR−K」、堺化学工業(株)製、パンフレット記載の分散液の粒子径は4nm]
(A’−1):酸化ジルコニウム30%分散液[商品名「SZR−M」、堺化学工業(株)製、パンフレット記載の分散液の粒子径は3nm]
(B−1):エトキシ化o−フェニルフェノキシエチルアクリレート[KOMERATE−A011、KPX Green Chemical製]
(B−2):フェノキシエチルアクリレート[商品名「ライトアクリレート PO−A」、共栄社化学(株)製]
(B−3):エチレンオキサイド2モル付加フルオレンジアクリレート[商品名「EA−0200」、大阪ガスケミカル(株)製]
(B−4):エチレンオキサイド6モル付加フルオレンジアクリレート[商品名「KOMELATE−D064」、KPX(株)製]
(B−5):エチレンオキサイド10モル付加フルオレンジアクリレート[商品名「KOMELATE−D104」、KPX(株)製]
(B−6):エチレンオキサイド35モル付加ペンタエリスリトールテトラアクリレート[商品名「ATM−35E」、新中村化学工業(株)製]
【0058】
(C−1):2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド[商品名「ルシリンTPO」、BASF社製]
(C−2):ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド[商品名「イルガキュアー819」、BASF社製]
(C−3):2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン[商品名「イルガキュアー907」、BASF社製]
(D−1):ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート[商品名「イルガノックス1010」、BASF社製;酸化防止剤]
(D−2):2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニル, トオキシラン[(C10−C16 シュトシテC12−C13アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物[商品名「チヌビン400」、BASF社製;紫外線吸収剤]
(D−3):アルキレンオキサイド変性ポリジメチルシロキサン[商品名「BYK−302」、ビックケミー・ジャパン(株)製;スリップ剤]
【0059】
本発明及び比較のための活性エネルギー線硬化性組成物の粒子径、屈折率、硬化物のガラス転移温度、全光線透過率、傷の回復性、成形直後の密着性を下記の方法で測定した。
なお、使用原料に由来する有機溶媒を含有する実施例4と5および比較例2と3については、エバポレーターで十分にその有機溶媒を揮発させた後に評価を行った。
それらの結果を表1に示す。
【0060】
[硬化性組成物中の金属酸化物の粒子径の測定]
活性エネルギー線硬化性組成物溶液をメチルエチルケトンで10重量%に希釈した後、動的光散乱式粒子径分布測定器[商品名:ナノ粒子解析装置 nano Partica SZ−100、(株)堀場製作所製]を用いて粒子径を測定した。測定原理として動的光散乱法で測定し、測定されたメジアン径を金属酸化物の粒子径とした。
【0061】
[屈折率の評価]
活性エネルギー線硬化性組成物の屈折率を25℃の環境下で屈折率計[商品名:アッベ屈折率計4T、(株)アタゴ製]を用いて測定した。
なお、光学レンズ関連部品の用途として使用する場合、25℃での屈折率は1.56〜1.65が必要とされる。
【0062】
[硬化物のガラス転移温度の測定]
活性エネルギー線硬化性組成物を紫外線照射装置により紫外線を1000mJ/cm2照射して、硬化させて縦幅40mm、横幅5mm、厚み1mmのテストピースを作成した。
このテストピースを用いて、動的粘弾性装置[Rheogel−E4000、UBM社製]により、下記の条件で測定した。
周波数:10Hz
昇温速度:4℃/分
得られたスペクトルの貯蔵弾性率E’に対する損失弾性率E”の比(tanδ)の最大値の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0063】
[全光線透過率測定用と密着性評価用のテストピースの作成]
活性エネルギー線硬化性組成物をガラス板の片面に厚さが20μmになるようにアプリケーターで塗工した後、厚さ100μmのPETフィルム[商品名「コスモシャインA4300」東洋紡績(株)製]を樹脂側に貼り合わせ、ローラーを上から転がして空気を押し出した。
PETフィルム側から紫外線照射装置により、紫外線を400mJ/cm2照射して、硬化させた。PETフィルムに密着した硬化物をガラス板から剥離し、テストピースを作成した。
【0064】
[全光線透過率(硬化物の透明性)の評価]
前記テストピースを、JIS−K7105に準拠し、全光線透過率測定装置[商品名「haze−garddual」、BYK gardner(株)製]を用いて全光線透過率(%)を測定した。
なお、光学レンズ、光学レンズ用シート又はフィルム用途に使用する場合、全光線透過率は85%以上であることが必要である。
【0065】
[密着性の評価]
前記テストピースを23℃、相対湿度50%の環境下で24時間静置した後、JIS K5600−5−6に準拠し、1mm幅にカッターナイフで切込みを入れて碁盤目(10×10個)を作成し、該碁盤目上にセロハン粘着テープを貼り付け90度剥離を行い、PETフィルムからの硬化物の剥離状態を目視で観察し、評価した。
【0066】
下記の基準で判定した。
○:100個の碁盤目のうち90個以上が剥離せずに基材に残っている
△:100個の碁盤目のうち10〜89個が剥離せずに基材に残っている
×:100個の碁盤目のうち9個以下が剥離せずに基材に残っている
【0067】
[傷の回復性の評価]
(1)溝の深さが50μmでピッチ幅を20μmで平行線を刻んで微細に凹凸処理を施したステンレス製の金型を用意する。
(2)活性エネルギー線硬化性組成物をこの金型の片面に厚さが100μmになるようにアプリケーターで塗工した後、厚さ100μmのポリエステルフィルム[商品名「コスモシャインA4300」東洋紡績(株)製]を樹脂側に貼り合わせ、ローラーを上から転がして空気を押し出した。ポリエステルフィルム側から紫外線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製]により、紫外線を400mJ/cm2照射して、硬化させ、硬化膜を作成した。
(3)硬化膜の表面を、クロムキャップを装着した鉛筆でJIS K 5600−5−4に準拠して引っかき試験を行った。
(4)引っかき試験後の硬化膜の表面を目視で観察し、下記の基準で判定した。
○:引っかき傷が3秒以内で完全に消失している
△:引っかき傷が3秒経ってもその一部が残っている
×:引っかき傷が3秒経っても全て残っている
【0068】
表1の結果から、実施例1〜6の本発明の光学部品活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた硬化フィルムは、高い屈折率を有し、傷の回復性、密着性及び透明性のすべてに優れることがわかる。
一方、金属酸化物(A)を含まない比較例1は、硬化物の屈折率が不十分であった。また粒子径が100nmを超える金属酸化物を含む比較例2は硬化物の全光線透過率が低い。また硬化物のガラス転移温度が40℃を超える比較例3は傷の回復性が悪い。