特開2017-214652(P2017-214652A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-214652ガドリニウム線材、その製造方法、それを用いた金属被覆ガドリニウム線材、熱交換器及び磁気冷凍装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-214652(P2017-214652A)
(43)【公開日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】ガドリニウム線材、その製造方法、それを用いた金属被覆ガドリニウム線材、熱交換器及び磁気冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   C22C 28/00 20060101AFI20171110BHJP
   F25B 21/00 20060101ALI20171110BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20171110BHJP
【FI】
   C22C28/00 A
   F25B21/00 A
   F28F21/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-101666(P2017-101666)
(22)【出願日】2017年5月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-107556(P2016-107556)
(32)【優先日】2016年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
【住所又は居所】東京都江東区木場1丁目5番1号
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】野村 隆次郎
【住所又は居所】千葉県佐倉市六崎1440番地 株式会社フジクラ 佐倉事業所内
(72)【発明者】
【氏名】木嵜 剛志
【住所又は居所】千葉県佐倉市六崎1440番地 株式会社フジクラ 佐倉事業所内
(72)【発明者】
【氏名】上野 晃太
【住所又は居所】千葉県佐倉市六崎1440番地 株式会社フジクラ 佐倉事業所内
(72)【発明者】
【氏名】竹内 勝彦
【住所又は居所】千葉県佐倉市六崎1440番地 株式会社フジクラ 佐倉事業所内
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正裕
【住所又は居所】千葉県佐倉市六崎1440番地 株式会社フジクラ 佐倉事業所内
(72)【発明者】
【氏名】石川 幸毅
【住所又は居所】千葉県佐倉市六崎1440番地 株式会社フジクラ 佐倉事業所内
(57)【要約】
【課題】高強度であり、かつ、加工性に優れたガドリニウム線材を提供すること。
【解決手段】ガドリニウムを主成分として含むガドリニウム線材であって、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径が2μm以下であるガドリニウム線材を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガドリニウムを主成分として含むガドリニウム線材であって、
フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径が2μm以下であるガドリニウム線材。
【請求項2】
ガドリニウムを主成分として含むガドリニウム線材であって、
粒径が5μm以上である、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の存在密度が4.7×10−5個/μm以下であるガドリニウム線材。
【請求項3】
伸線材である請求項1または2に記載のガドリニウム線材。
【請求項4】
前記伸線材の直径が1mm以下である請求項3に記載のガドリニウム線材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のガドリニウム線材の外周にガドリニウム以外の金属を主成分とするクラッド層を設けたことを特徴とする金属被覆ガドリニウム線材。
【請求項6】
前記金属被覆ガドリニウム線材の、長さ方向と垂直な面の断面における、前記ガドリニウム線材の断面の面積が、前記ガドリニウム線材の断面の面積と前記クラッド層の断面の面積の合計に対して55〜99%である請求項5に記載の金属被覆ガドリニウム線材。
【請求項7】
前記クラッド層が、銅、アルミニウム、ニッケルおよび/またはこれらの合金である請求項5又は6に記載の金属被覆ガドリニウム線材。
【請求項8】
前記クラッド層が、カーボンナノチューブをさらに含有する請求項5〜7のいずれかに記載の金属被覆ガドリニウム線材。
【請求項9】
ガドリニウムを主成分として含むガドリニウム鋳造材を用意する工程と、
前記ガドリニウム鋳造材を熱間加工してガドリニウム線材とする工程を含むことを特徴とするガドリニウム線材の製造方法。
【請求項10】
前記熱間加工したガドリニウム線材を伸線加工する工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載のガドリニウム線材の製造方法。
【請求項11】
磁気冷凍材料で構成された複数の線材と、
複数の前記線材が充填されたケースとを備える熱交換器であって、
前記線材が、請求項1〜4のいずれかに記載のガドリニウム線材、または請求項5〜8のいずれかに記載の金属被覆ガドリニウム線材である熱交換器。
【請求項12】
請求項11に記載の熱交換器を備える磁気冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガドリニウムを主成分として含むガドリニウム線材、その製造方法、それを用いた金属被覆ガドリニウム線材、熱交換器及び磁気冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気熱量効果を利用した磁気冷凍技術が研究されている。有望な磁気冷凍技術の一つとして、AMR(Active Magnetic Refrigeration)サイクルが挙げられる。このような磁気冷凍技術において、高効率化、高出力化の方法として、磁気冷凍材料の表面積を増やすことで、磁気冷凍材料から冷媒への熱交換効率を高める方法や、冷媒の流路を確保することで圧損を低減する方法が有効である。このような磁気冷凍技術において用いられる、磁気冷凍材料は、通常は粒状であり、このような粒状の磁気冷凍材料を、筒状のケースに挿入することで熱交換器とし、このような熱交換器を用いた磁気冷凍装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。一方で、磁気冷凍材料としては、通常は粒状のものが用いられているが、これを円柱状に加工することで、高効率化、高出力化を図る方法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−77484号公報
【特許文献2】特開2013−64588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献2の技術によれば、磁気冷凍材料を円柱状に加工する技術が開示されているものの、さらなる高効率化、高出力化のためには、磁気冷凍材料の線径を小さく加工することなどが望まれている。その一方で、磁気冷凍材料としてのガドリニウムは、機械的強度が脆弱であり、線径の小さい線材(たとえば、線径が1mm未満である線材)に加工することが困難であった。
【0005】
本発明は、高強度であり、かつ、加工性に優れたガドリニウム線材を提供することを目的とする。また、本発明は、このようなガドリニウム線材の製造方法、このようなガドリニウム線材の外周に別の金属からなるクラッド層を設けた金属被覆ガドリニウム線材、ならびに、このようなガドリニウム線材および金属被覆ガドリニウム線材を用いた熱交換器および磁気冷凍装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の第1の観点に係るガドリニウム線材は、ガドリニウムを主成分として含むガドリニウム線材であって、
フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径が2μm以下であることを特徴とする。
【0007】
[2]本発明の第2の観点に係るガドリニウム線材は、ガドリニウムを主成分として含むガドリニウム線材であって、
粒径が5μm以上である、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の存在密度が4.7×10−5個/μm以下であることを特徴とする。
【0008】
[3]上記発明において、ガドリニウム線材が伸線材であるように構成することができる。
【0009】
[4]上記発明において伸線材の直径を1mm以下であるように構成することができる。
【0010】
[5] 本発明に係る金属被覆ガドリニウム線材は、上記本発明に係るガドリニウム線材の外周にガドリニウム以外の金属を主成分とするクラッド層を設けたことを特徴とする。
【0011】
[6]上記発明において、前記金属被覆ガドリニウム線材の、長さ方向と垂直な面の断面における、前記ガドリニウム線材の断面の面積が、ガドリニウム線材の断面の面積と前記クラッド層の断面の面積の合計に対して55〜99%とすることができる。
【0012】
[7]上記発明において、クラッド層が、銅、アルミニウム、ニッケルおよび/またはこれらの合金とすることができる。
【0013】
[8]上記発明において、クラッド層が、カーボンナノチューブをさらに含有することができる。
【0014】
[9]本発明に係るガドリニウム線材の製造方法は、ガドリニウムを主成分として含むガドリニウム鋳造材を用意する工程と、
ガドリニウム鋳造材を熱間加工してガドリニウム線材とする工程を含むことを特徴とする。
【0015】
[10]上記発明において、熱間加工したガドリニウム線材を伸線加工する工程をさらに含むように構成することができる。
【0016】
[11]本発明に係る熱交換器は、磁気冷凍材料で構成された複数の線材と、
複数の前記線材が充填されたケースとを備え、
前記線材が、上記本発明に係るガドリニウム線材、または上記本発明に係る金属被覆ガドリニウム線材であることを特徴とする。
【0017】
[12]本発明に係る磁気冷凍装置は、上記本発明に係る熱交換器を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高強度であり、かつ、加工性に優れたガドリニウム線材を提供することができる。また、本発明によれば、このようなガドリニウム線材の製造方法、このようなガドリニウム線材の外周に別の金属からなるクラッド層を設けた金属被覆ガドリニウム線材、ならびに、このようなガドリニウム線材および金属被覆ガドリニウム線材を用いて得られ、熱交換効率に優れた熱交換器および磁気冷凍装置を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(A)は、実施例1のガドリニウム線材の反射電子像、図1(B)は、図1(A)の反射電子像について二値化処理を行った後の二値化処理後の反射電子像である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るMCM熱交換器を備える磁気冷凍装置の全体構成を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るMCM熱交換器の構成を示す分解斜視図である。
図4図4(A)は、実施例1の伸線材の反射電子像、図4(B)は、図4(A)の反射電子像について二値化処理を行った後の二値化処理後の反射電子像である。
図5図5(A)は、実施例2のガドリニウム線材の反射電子像、図5(B)は、図5(A)の反射電子像について二値化処理を行った後の二値化処理後の反射電子像である。
図6図6(A)は、比較例1のガドリニウム線材の反射電子像、図6(B)は、図6(A)の反射電子像について二値化処理を行った後の二値化処理後の反射電子像である。
図7図7(A)は、比較例1の伸線材の反射電子像、図7(B)は、図7(A)の反射電子像について二値化処理を行った後の二値化処理後の反射電子像である。
図8図8(A)は、比較例2のガドリニウム線材の反射電子像、図8(B)は、図8(A)の反射電子像について二値化処理を行った後の二値化処理後の反射電子像である。
図9図9(A)は、比較例3のガドリニウム線材の反射電子像、図9(B)は、図9(A)の反射電子像について二値化処理を行った後の二値化処理後の反射電子像である。
図10図10は、実施例3の伸線材(金属被覆ガドリニウム線材)の断面の反射電子像である。
図11図11は、実施例4の伸線材(金属被覆ガドリニウム線材)の断面の反射電子像である。
図12図12は、実施例5の伸線材(金属被覆ガドリニウム線材)の断面の反射電子像である。
図13図13は、参考例1の伸線材(金属被覆ガドリニウム線材)の断面の反射電子像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<<第1実施形態に係るガドリニウム線材>>
以下、本発明の第1実施形態に係るガドリニウム線材について説明する。
【0021】
本発明の第1実施形態に係るガドリニウム線材は、ガドリニウムを主成分として含むガドリニウム線材であって、
フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径が2μm以下の範囲に制御されたものである。
【0022】
第1実施形態に係るガドリニウム線材は、ガドリニウム(Gd)を主成分として含むものであればよく、ガドリニウム合金であっても良い。第1実施形態に係るガドリニウム線材は、ガドリニウムを主成分として含むものであればよいが、ガドリニウム線材中における、ガドリニウムの含有割合は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上である。また、第1実施形態に係るガドリニウム線材が、主成分としてのガドリニウムを、ガドリニウム合金の形態で含有する場合には、ガドリニウム線材中における、ガドリニウムの含有割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。ガドリニウム合金としては、たとえば、ガドリニウムと希土類元素との合金が挙げられる。希土類元素としては、Y、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどが挙げられ、これらのなかでも、ガドリニウムと、Yとの合金である、Gd95などが挙げられる。
【0023】
また、第1実施形態に係るガドリニウム線材は、通常、少量の不可避的不純物を含むものである。このような不可避的不純物としては、炭素、酸素などの酸化物系不純物や、フッ素、塩素などのハロゲン系不純物や、タングステンなどのレアメタル系不純物などが挙げられる。
【0024】
このような状況において、本発明者は、ガドリニウムを主成分とした線材における、加工性および強度に着目し、鋭意検討を行ったところ、ガドリニウム線材に含まれる不純物、特に、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相が、亀裂の起点となることで線材の強度が低下するとともに、伸線加工(引抜加工)などの各種加工を行った際の加工性の低下につながることを見出したものである。
【0025】
そして、このような問題に対し、本発明者が更なる検討を行ったところ、このようなガドリニウムを主成分とした線材に不可避的に含まれる、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径を2μm以下に制御することで、このような問題を有効に解決できることを見出したものである。具体的には、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径を2μm以下とすることで、ガドリニウム線材を強度が高く、かつ、伸線加工(引抜加工)などの各種加工性に優れたものとすることができること、さらには、伸線加工により得られる伸線材についても、高い強度を有するものとすることができること、を見出したものである。
【0026】
なお、第1実施形態において、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相とは、フッ素原子および/または塩素原子が局在化した相(フッ素原子および/または塩素原子が多く含まれる相)であり、フッ素原子および/または塩素原子が、ガドリニウムのフッ化物および/または塩化物の形態として含まれているものの他、フッ素原子および/または塩素原子が、酸化物、窒化物等の形態で含まれているものなどいずれの形態であってもよい。
【0027】
フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相は、たとえば、EDS(Energy Dispersive Spectroscopy)分析による成分分析法などにより、ガドリニウム線材の任意の、線材長手方向に垂直な断面について、フッ素原子および/または塩素原子の検出強度を測定した場合に、測定した点におけるガドリニウム、フッ素、塩素、カルシウム、鉄、酸素、イットリウム、およびタングステン元素を合わせた原子濃度を100%とした時に、フッ素原子および/または塩素原子の検出濃度が1%以上となる程度にフッ素原子および/または塩素原子が局在化した相である。これらは、たとえば、ガドリニウム線材の任意の、線材長手方向に垂直な断面において、走査型電子顕微鏡(SEM)により反射電子像の測定を行うことで検出することができる。具体的には、走査型電子顕微鏡により得られた反射電子像について、画像解析を用いて、所定の閾値にて二値化を行うことで検出することができる。たとえば、図1(A)に、本発明の実施例に係るガドリニウム線材断面の反射電子像を、図1(B)に、図1(A)の反射電子像について、画像解析により二値化を行った後の反射電子像をそれぞれ示す。なお、図1(B)において、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相は、黒色で示される異相として検出される。なお、二値化に用いる所定の閾値としては、EDS(Energy Dispersive Spectroscopy)分析による成分分析法などにより検出される、ガドリニウム線材の任意の、線材長手方向に垂直な断面の測定範囲の測定した点におけるガドリニウム、フッ素、塩素、カルシウム、鉄、酸素、イットリウム、およびタングステン元素を合わせた原子濃度を100%とした時に、フッ素原子および/または塩素原子の検出濃度が1%以上となる程度にフッ素原子および/または塩素原子が局在化した相が検出されるような閾値に設定すればよい。
【0028】
あるいは、上記方法において、走査型電子顕微鏡により測定した二次電子像を併用することで、図1(B)中において、黒色で示される異相についてさらなる分析を行ってもよい。
【0029】
そして、このようにして検出されたフッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相について、粒径の測定を行い、得られた粒径の測定結果を算術平均することにより、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径を求めることができる。具体的には、ガドリニウム線材の、線材長手方向に垂直な断面の任意の5か所(N=5)について、256μm×166μmの視野範囲にて反射電子像の測定を行い、256μm×166μmの視野範囲について測定された5個の反射電子像を用いて、平均粒径を求める。なお、この際には、画像解析技術を用い、検出されたフッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相を同面積を有する円に近似することで、円相当径を求め、これを各偏析相の粒径とする。さらに、平均粒径の測定に際しては、測定誤差や、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相以外の異相の影響を取り除くという観点より、平均粒径を算出する際には、1μm以下の粒径の異相については、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相に該当しないものとして、平均粒径を求めることとする。
【0030】
あるいは、上述した線材長手方向に垂直な断面の任意の5か所について、測定を行う方法に代えて、ガドリニウム線材を任意の5か所において切断し、線材長手方向に垂直な任意の5断面を得て、得られた5断面(N=5)のそれぞれの断面について、256μm×166μmの視野範囲にて反射電子像の測定を行い、256μm×166μmの視野範囲について測定された5個の反射電子像を用いて、平均粒径を求める方法を採用してもよい。各切断面の測定範囲は、切断面の大きさが256μm×166μmの視野範囲での測定が可能な大きさである場合には、256μm×166μmの視野範囲において測定を行えばよいし、あるいは、256μm×166μmの視野範囲での測定ができない大きさである場合(切断面の大きさが、256μm×166μmに満たない場合)には、切断面全面について測定を行えばよい。特に、ガドリニウム線材の線径が小さい場合など、1つの断面において、256μm×166μmの視野範囲での測定ができない場合(切断面の大きさが、256μm×166μmに満たない場合)に、このような方法を採用することが望ましい。
【0031】
第1実施形態のガドリニウム線材において、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径は2μm以下であり、好ましくは1.8μm以下である。フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径が2μmを超えると、偏析相を起点に亀裂が発生しやすくなり、ガドリニウム線材の強度が低下、伸線加工(引抜加工)などの各種加工性が低下してしまうこととなる。一方、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径が2μm以下であると、ガドリニウム線材を強度が高く、かつ、伸線加工(引抜加工)などの各種加工性に優れたものとすることができる。
【0032】
第1実施形態のガドリニウム線材の製造方法としては、特に限定されないが、ガドリニウムを主成分として含む鋳造材から、所定径の丸棒材を切り出し、切り出した丸棒材を予熱した状態にて、10〜50%の減面率にて熱間スェージング加工を繰り返すことで、熱間スェージング加工後の最終的な減面率が、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上となるまで加工を行う方法が好ましい。この際の予熱温度は、好ましくは400℃以上であり、より好ましくは500℃以上であり、さらに好ましくは600℃以上である。第1実施形態によれば、このような繰り返しの熱間スェージング加工を経ることにより、ガドリニウムおよび/またはガドリニウム合金に含まれる、フッ素原子および/または塩素原子を多く含む相を微細化することができるものと考えられる。なお、第1実施形態においては、熱間スェージング加工を例示したが、熱間スェージング加工に特に限定されるものではなく、フッ素原子および/または塩素原子を多く含む相を好適に微細化できる方法であれば、他の熱間加工、たとえば、鍛造、圧延、押出などいずれの方法を用いてもよい。
【0033】
このようにして得られる第1実施形態のガドリニウム線材は、その線径は、好ましくは2〜10mmである。
【0034】
また、第1実施形態においては、このようにして得られる第1実施形態のガドリニウム線材についてダイスなどを用いて伸線加工(引抜加工)を行い、伸線材としてもよい。特に、第1実施形態のガドリニウム線材は、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径が2μm以下に制御されていることから、強度が高く、伸線加工(引抜加工)などの加工性に優れるため、伸線加工(引抜加工)を行うことで、伸線材を好適に得ることができる。この場合においては、得られる伸線材も、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径が2μm以下、より好ましくは1.8μm以下に制御されたものとなるため、同様に強度が高く加工性に優れたものである。
【0035】
このようにして得られる第1実施形態の伸線材は、上述した第1実施形態のガドリニウム線材を用いて得られるものであるため、その線径を、好ましくは0.1〜1.0mm、より好ましくは0.1〜0.5mmと細線化が可能であるため、強度が高く、加工性に優れていることに加え、表面積が比較的大きいものである。そのため、第1実施形態の伸線材は、磁気熱量効果を利用した磁気冷凍技術における、磁気冷凍材料として使用した場合に、冷媒への熱交換効率が高いため、このような磁気冷凍材料として好適である。
【0036】
<<第2実施形態に係るガドリニウム線材>>
次いで、本発明の第2実施形態に係るガドリニウム線材について説明する。
【0037】
本発明の第2実施形態に係るガドリニウム線材は、ガドリニウムを主成分として含むガドリニウム線材であって、
粒径が5μm以上である、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の存在密度が4.7×10−5個/μm以下である。
【0038】
第2実施形態に係るガドリニウム線材は、上述した第1実施形態と同様に、ガドリニウム(Gd)を主成分として含むものであればよく、ガドリニウム合金であっても良い。なお、第2実施形態に係るガドリニウム線材においても、ガドリニウムの含有割合、および、ガドリニウム合金の形態で含有する場合における、ガドリニウム合金の含有割合は、上記した第1実施形態に係るガドリニウム線材と同様の範囲とすることが好ましい。
【0039】
また、第2実施形態に係るガドリニウム線材も、通常、上述した第1実施形態と同様に、少量の不可避的不純物を含むものである。
【0040】
そして、本発明者は、ガドリニウムを主成分とした線材に不可避的に含まれる、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相のうち、5μm以上の偏析相の存在密度(すなわち、単位面積当たりの存在個数)を所定以下とすることにより、ガドリニウム線材を強度が高く、かつ、伸線加工(引抜加工)などの各種加工性に優れたものとするものとすること、さらには、伸線加工により得られる伸線材についても、高い強度を有するものとすることができること、を見出したものである。具体的には、粒径が5μm以上である、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の存在密度(以下、適宜、「5μm以上の偏析相の存在密度」とする。)を4.7×10−5個/μm以下とするものである。
【0041】
なお、第2実施形態において、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相とは、フッ素原子および/または塩素原子が局在化した相であり、たとえば、上述した第1実施形態と同様に、フッ素原子および/または塩素原子が、ガドリニウムのフッ化物および/または塩化物の形態として含まれているものの他、フッ素原子および/または塩素原子が、酸化物、窒化物等の形態で含まれているものなどいずれの形態であってもよく、たとえば、走査型電子顕微鏡(SEM)により反射電子像の測定を行うことで検出することができる。あるいは、第1実施形態と同様に、走査型電子顕微鏡により測定した二次電子像を併用してもよい。
【0042】
そして、上述した第1実施形態と同様にして検出されたフッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相について、粒径の測定を行い、5μm以上となる偏析相の数をカウントし、5μm以上となる偏析相の数を、測定面積(単位:μm)で除することで、5μm以上の偏析相の存在密度を求めることができる。具体的には、ガドリニウム線材を任意の5か所において切断し、線材長手方向に垂直な任意の5断面を得て、得られた5断面(N=5)について、切断面の大きさに応じた視野範囲にて反射電子像の測定を行い、5μm以上となる偏析相の数をカウントし、これを測定面積(単位:μm)で除することで、5μm以上の偏析相の存在密度を求めることができる。なお、この際には、画像解析技術を用い、検出されたフッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相を同面積を有する円に近似し、円相当径を求め、これを各偏析相の粒径とする。また、各切断面の測定範囲は、切断面の大きさが256μm×166μmの視野範囲での測定が可能な大きさである場合には、256μm×166μmの視野範囲において測定を行えばよいし、あるいは、256μm×166μmの視野範囲での測定ができない大きさである場合(切断面の大きさが、256μm×166μmに満たない場合)には、切断面全面について測定を行えばよい。
【0043】
第2実施形態のガドリニウム線材において、5μm以上の偏析相の存在密度は、4.7×10−5個/μm以下であり、好ましくは3.0×10−5個/μm以下、より好ましくは2.7×10−5個/μm以下である。5μm以上の偏析相の存在密度が4.7×10−5個/μmを超えると、ガドリニウム線材の強度が低くなり、伸線加工(引抜加工)などの各種加工を行った際に、亀裂等が発生してしまうこととなる。一方、5μm以上の偏析相の存在密度が4.7×10−5個/μm以下であると、ガドリニウム線材を強度が高く、かつ、伸線加工(引抜加工)などの各種加工性に優れたものとすることができる。
【0044】
第2実施形態のガドリニウム線材の製造方法としては、特に限定されないが、上述した第1実施形態と同様に、ガドリニウムを主成分として含む鋳造材から、所定径の丸棒材を切り出し、切り出した丸棒材を予熱した状態にて、10〜50%の減面率にて熱間スェージング加工を繰り返すことで、熱間スェージング加工後の最終的な減面率が、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上となるまで加工を行う方法が好ましい。この際の予熱温度は、好ましくは400℃以上であり、より好ましくは500℃以上であり、さらに好ましくは600℃以上である。第2実施形態においても、このような繰り返しの熱間スェージング加工を経ることにより、ガドリニウムを主成分として含む線材に含まれる、フッ素原子および/または塩素原子を多く含む相を微細化することができるものと考えられる。なお、第2実施形態においては、熱間スェージング加工を例示したが、熱間スェージング加工に特に限定されるものではなく、フッ素原子および/または塩素原子を多く含む相を好適に微細化できる方法であれば、他の熱間加工、たとえば、鍛造、圧延、押出などいずれの方法を用いてもよい。
【0045】
このようにして得られる第2実施形態のガドリニウム線材は、その線径は、好ましくは2〜10mmである。
【0046】
また、第2実施形態においては、このようにして得られる第2実施形態のガドリニウム線材についてダイスなどを用いて伸線加工(引抜加工)を行い、伸線材としてもよい。特に、第2実施形態のガドリニウム線材は、5μm以上の偏析相の存在密度が4.7×10−5個/μm以下に制御され、強度が高く、伸線加工(引抜加工)などの加工性に優れるため、伸線加工(引抜加工)を行うことで、伸線材を好適に得ることができる。この場合においては、得られる伸線材も、粒径が5μm以上である、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の存在密度が4.7×10−5個/μm以下、好ましくは3.0×10−5個/μm以下、より好ましくは2.7×10−5個/μm以下に制御されたものとなるため、同様に強度が高く加工性に優れたものである。
【0047】
このようにして得られる第2実施形態の伸線材は、上述した第2実施形態のガドリニウム線材を用いて得られるものであるため、その線径を、好ましくは0.1〜1.0mm、より好ましくは0.1〜0.5mmと細線化が可能であるため、強度が高く、加工性に優れていることに加え、表面積が比較的大きいものである。そのため、第2実施形態の伸線材は、磁気熱量効果を利用した磁気冷凍技術における、磁気冷凍材料として使用した場合に、冷媒への熱交換効率が高いため、このような磁気冷凍材料として好適である。
【0048】
なお、第2実施形態のガドリニウム線材としては、5μm以上の偏析相の存在密度が上記範囲であることに代えて、あるいは、5μm以上の偏析相の存在密度が上記範囲であることに加えて、256μm×166μmの視野範囲において、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相のうち、5μm以上の偏析相の存在個数を2個以下に制御するような態様としてもよい。
【0049】
<<金属被覆ガドリニウム線材>>
本実施形態に係る金属被覆ガドリニウム線材は、上述した第1実施形態に係るガドリニウム線材、または第2実施形態に係るガドリニウム線材の外周にガドリニウム以外の金属を主成分とするクラッド層を形成したものである。
【0050】
本実施形態に係る金属被覆ガドリニウム線材によれば、第1実施形態に係るガドリニウム線材、または第2実施形態に係るガドリニウム線材の外周にガドリニウム以外の金属を主成分とするクラッド層を形成することにより、伸線材への加工性がより高められたものとすることができる。特に、ダイスなどを用いて伸線加工(引抜加工)する場合において、このようなクラッド層を形成するためのガドリニウム以外の金属として、ダイスに対して焼付きし難い金属を選択することにより、伸線加工を行う際に、ダイスなどに対する焼付きの発生を適切に防止することができ、これにより、伸線材への加工性を高めることができるものである。
【0051】
クラッド層を形成するための材料としては、ガドリニウム以外の金属を主成分とするものであればよく、特に限定されないが、伸線性、耐食性、熱伝導性のバランスに優れているという観点より、銅、アルミニウム、ニッケルおよび/またはこれらの合金が好ましく、銅または銅合金がより好ましい。特に、熱伝導性に関しては、芯線としてのガドリニウム線により発生した冷熱量を、金属被覆ガドリニウム線材の表面まで適切に伝えるという観点より、重要である。
【0052】
また、クラッド層の熱伝導性を補完するために、クラッド層中にカーボンナノチューブなどの炭素系材料を含有させてもよい。カーボンナノチューブとしては、グラフェンシートを筒形とした炭素系材料であればよく、単層ナノチューブ(SWNT)、多層ナノチューブ(MWNT)のいずれであってもよい。
【0053】
本実施形態の金属被覆ガドリニウム線材は、上述した第1実施形態に係るガドリニウム線材、または第2実施形態に係るガドリニウム線材の外周を、ガドリニウム以外の金属を主成分とするクラッド層で被覆することで得ることができる。
【0054】
すなわち、上記方法により得られた、芯線としての第1実施形態に係るガドリニウム線材、または第2実施形態に係るガドリニウム線材(以下、適宜、「ガドリニウム芯線」とする。)を、クラッド層を形成するための金属材料からなる管状部材中に挿入することで、ガドリニウム芯線の外周を、ガドリニウム以外の金属を主成分とするクラッド層で被覆してなる金属被覆ガドリニウム線材を得ることができる。なお、本実施形態においては、ガドリニウム芯線を、クラッド層を形成するための金属材料からなる管状部材中に挿入した後、これらを一体化させる処理を行ってもよい。また、ガドリニウム芯線を、管状部材中に挿入する際には、ガドリニウム芯線表面の酸化被膜、および管状部材の内壁面の酸化被膜をそれぞれ除去する処理を行った後、ガドリニウム芯線を、管状部材中に挿入することが好ましい。これらの酸化被膜を除去する方法としては特に限定されないが、たとえば、酸又はアルカリによる洗浄により除去する方法や機械研磨により除去する方法などが挙げられる。
【0055】
そして、本実施形態においては、このようにして得られる金属被覆ガドリニウム線材に対し、ダイスなどを用いた伸線加工(引抜加工)を行うことで、所望の線径を有する伸線材とすることができる。特に、クラッド層を形成するためのガドリニウム以外の金属として、ダイスに対して焼付きし難い金属を選択することにより、伸線加工を行う際に、ダイスなどに対する焼付きの発生を適切に防止することができ、これにより、これにより優れた加工性を実現することができるものである。しかも、本実施形態に係る金属被覆ガドリニウム線材は、芯線として、上述した第1実施形態に係るガドリニウム線材、または第2実施形態に係るガドリニウム線材を用いたものであり、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の微細構造が、上述した第1実施形態、第2実施形態にて説明したような構造となっているため、その強度が適切に高められたものである。
【0056】
そのため、本実施形態によれば、このような金属被覆ガドリニウム線材を伸線加工することにより得られる伸線材の線径を、好ましくは0.1〜1.0mm、より好ましくは0.1〜0.5mmと細線化された伸線材を得ることができ、これにより、磁気熱量効果を利用した磁気冷凍技術における、磁気冷凍材料として使用した場合に、冷媒への熱交換効率が高く、このような磁気冷凍材料として好適に用いることができるものである。
【0057】
また、本実施形態においては、このような所望の線径となるように伸線加工(引抜加工)を行った後の伸線材においては、長さ方向と垂直な面の断面における、ガドリニウム線の占める面積が、断面の面積に対して、55〜99%であることが好ましく、60〜95%であることがより好ましく、65〜95%であることがさらに好ましく、75〜95%であることが特に好ましい。
【0058】
これは、金属被覆ガドリニウム線は、金属を被覆していないガドリニウム線に比べて、所定の磁場を印加した際における表面温度変化が小さくなる。そして金属被覆ガドリニウム線の長手方向に垂直な断面において、ガドリニウム線の占める面積の低下、すなわち、クラッド層の占める面積の増加に比例して金属被覆ガドリニウム線の表面温度変化がより小さくなることが分かっている。そのため、金属被覆ガドリニウム線材として、十分な表面温度変化(冷熱量)を示し、これにより、磁気熱量効果を利用した磁気冷凍技術における、磁気冷凍材料として使用した場合に、冷媒への熱交換効率を高くしながら、クラッド層形成による加工性の効果を十分なものとするという観点より、断面積中における、ガドリニウム線の占める面積割合は上記範囲とすることが好ましい。なお、金属被覆ガドリニウム線材として、十分な表面温度変化(冷熱量)とは、金属を被覆していないガドリニウム線の表面温度変化に対して50%以上であることが好ましい。
【0059】
なお、本実施形態の金属被覆ガドリニウム線材においては、磁気熱量効果を利用した磁気冷凍技術に用いるという観点より、その両端面についても、ガドリニウム芯線が露出していないものとすることが好ましく、そのため、その両端面についても、クラッド層の形成に用いた金属材料にてめっきすることにより封止するか、あるいは、樹脂材料などで封止することが好ましい。ガドリニウム芯線が両端面において露出していると、ガドリニウム芯線とクラッド層との間のイオン化傾向差によっては、ガドリニウム芯線の腐食が起こってしまうおそれがあり、これに対し、両端面を封止することで、このような不具合を適切に防止することが可能となる。
【0060】
<<磁気冷凍装置>>
次いで、上述した第1実施形態および第2実施形態に係るガドリニウム線材、および金属被覆ガドリニウム線材が適用された磁気冷凍装置1について説明する。
図2は本発明の実施形態に係る第1および第2のMCM熱交換器10,20を備える磁気冷凍装置1の全体構成を示す図である。図3は本実施形態における第1および第2のMCM熱交換器10,20の構成を示す分解斜視図である。
【0061】
本実施形態における磁気冷凍装置1は、磁気熱量効果(Magnetocaloric effect)を利用したヒートポンプ装置であり、図2に示すように、第1および第2のMCM熱交換器10,20と、ピストン30と、永久磁石40と、低温側熱交換器50と、高温側熱交換器60と、ポンプ70と、配管81〜84と、切替弁90とを備えている。
【0062】
図3に示すように、第1のMCM熱交換器10は、複数の線状体12からなる集合体11と、当該集合体11が挿通されたケース13と、ケース13に接続された第1のアダプタ16および第2のアダプタ17とを備えている。なお、第1のMCM熱交換器10と第2のMCM熱交換器20とは、同様の構成であるため、以下に第1のMCM熱交換器10の構成についてのみ説明し、第2のMCM熱交換器20の構成についての説明は省略して第1のMCM熱交換器10の構成についての説明を援用する。また、図3では、第1のMCM熱交換器10を示し、第2のMCM熱交換器20については対応する符号を括弧付きで付すに止め、図示を省略する。
【0063】
線状体12は、磁気熱量効果を発現する磁気熱量効果材料(MCM:Magnetocaloric Effect Material)から構成された円形の断面形状を有する線材である。このMCMから構成される線状体12に磁場を印加すると、電子スピンが揃うことで磁気エントロピーが減少し、当該線状体12は発熱して温度が上昇する。一方、線状体12から磁場を除去すると、電子スピンが乱雑となり磁気エントロピーが増加し、当該線状体12は吸熱して温度が低下する。
【0064】
そして、本実施形態においては、この線状体12として、上述した第1実施形態、第2実施形態に係るガドリニウム線材、および金属被覆ガドリニウム線材から選択される少なくとも一種を使用する。
【0065】
集合体11は、相互に並列された複数の線状体12の束により構成されている。隣接する線状体12同士の側面は相互に接触し、その結果、これらの間に流路が形成されている。
【0066】
この線状体12の集合体11は、ケース13に挿通されている。図3に示すように、ケース13は、矩形筒状に構成されている。このケース13の軸方向の一端および他端には、第1の開口131および第2の開口132がそれぞれ形成されている。
【0067】
ケース13は、軸方向に対して直交する断面における断面形状がコ字状(U字状)の線状体収容部13Aと、矩形板状の蓋部13Bとを備えている。線状体収容部13Aは、ケース13の底部を構成する底部13Cと、ケース13の両側の側壁部を構成する一対の壁部13Dとを備えている。蓋部13Bの幅方向端部が、壁部13Dの上端に固定されることにより、線状体収容部13Aの上部が蓋部13Bにより閉塞されている。
【0068】
図3に示すように、ケース13の第1の開口131には第1のアダプタ16が接続されており、第2の開口132には第2のアダプタ17が接続されている。第1のアダプタ16は、第1の開口131との接続される側の反対側に、第1の連結口161を有している。この第1の連結口161は、第1の低温側配管81を介して、低温側熱交換器50に連通している。第2のアダプタ17も、第2の開口132と接続される側の反対側に、第2の連結口171を有している。この第2の連結口171は、第1の高温側配管83を介して、高温側熱交換器60に連通している。
【0069】
たとえば、図2に示すように、本実施形態における磁気冷凍装置1を用いた空気調和装置を冷房として機能させる場合には、低温側熱交換器50と室内の空気との間で熱交換を行うことで室内を冷やすと共に、高温側熱交換器60と室外との間で熱交換を行うことで室外に放熱する。一方、空気調和装置を暖房として機能させる場合は、高温側熱交換器60と室内の空気との間で熱交換を行うことで室内を暖めると共に、低温側熱交換器50と室外の空気との間で熱交換を行うことで室外から吸熱する。
【0070】
以上のように、二つの低温側配管81,82と二つの高温側配管83,84によって、4つのMCM熱交換器10,20,50,60を含む循環路が形成されており、ポンプ70によって当該循環路内に液体媒体が圧送される。液体媒体の具体例としては、水、不凍液、エタノール溶液、または、これらの混合物等の液体を例示することができる。
【0071】
二つのMCM熱交換器10,20は、ピストン30の内部に収容されている。このピストン30は、アクチュエータ35によって、一対の永久磁石40の間を往復移動することが可能となっている。具体的には、このピストン30は、図2に示す位置から、図2中において一点鎖線で示す位置に移動可能となっており、これらの間を往復移動する。
【0072】
切替弁90は、第1の高温側配管83と第2の高温側配管84に設けられている。この切替弁90は、上述のピストン30の動作に連動して、ポンプ70により液体媒体の供給先を、第1のMCM熱交換器10、または、第2のMCM熱交換器20に切り替えると共に、高温側熱交換器60の接続先を、第2のMCM熱交換器20、または、第1のMCM熱交換器10に切り替える。
【0073】
そして、ピストン30を、図2中において一点鎖線で示す位置から、図2に示す位置に移動させると、第1のMCM熱交換器10の線状体12が消磁されて温度が低下する一方で、第2のMCM熱交換器20の線状体22が着磁されて温度が上昇する。
【0074】
これと同時に、切替弁90によって、ポンプ70→第1の高温側配管83→第1のMCM熱交換器10→第1の低温側配管81→低温側熱交換器50→第2の低温側配管82→第2のMCM熱交換器20→第2の高温側配管84→高温側熱交換器60→ポンプ70からなる経路(図2中、矢印で示す経路)が形成される。
【0075】
このため、消磁によって温度が低下した第1のMCM熱交換器10の線状体12によって液体媒体が冷却され、当該液体媒体が低温側熱交換器50に供給されて、当該低温側熱交換器50が冷却される。一方、着磁されて温度が上昇した第2のMCM熱交換器20の線状体22によって液体媒体が加熱され、当該液体媒体は高温側熱交換器60に供給されて、当該高温側熱交換器60が加熱される。
【0076】
次いで、ピストン30を、図2に示す位置から、図2中において一点鎖線で示す位置に移動させると、第1のMCM熱交換器10の線状体12が着磁されて温度が上昇する一方で、第2のMCM熱交換器20の線状体22が消磁されて温度が低下する。これと同時に、切替弁90によって、上記と同様の経路が形成され、これにより、低温側熱交換器50が冷却され、高温側熱交換器60が加熱される。
【0077】
そして、ピストン30が往復移動を繰り返し、第1および第2のMCM熱交換器10,20内の線状体12,22に対する磁場の印加・除去を繰り返すことにより、低温側熱交換器50の冷却と、高温側熱交換器60の加熱とが継続される。
【実施例】
【0078】
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0079】
<実施例1>
<ガドリニウム線材の製造>
市販のガドリニウム鋳造材(ガドリニウムを主成分として含む)から、φ12mm×120mmのガドリニウムの丸棒材を切出した。切出した丸棒材を500℃に予熱した状態で、減面率20%の熱間スェージング加工を10回繰り返し行うことで、丸棒材からの減面率が95.3%であるガドリニウム線材を製造した。なお、得られたガドリニウム線材の線径は2.6mmであった。
【0080】
<熱間スェージング加工後のガドリニウム線材についての、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定>
上記にて得られたガドリニウム線材を、任意の横断面(線材長手方向に垂直な断面)にて切断し、切断部分をエポキシ樹脂に埋め込み、機械研磨することにより断面を露出させることで、測定用サンプルを作製した。そして、得られた測定用サンプについて、走査電子顕微鏡(製品名「JSM−5610LV」、JEOL社製)にて、任意の5か所について反射電子像の撮影を行った。なお、この際の条件は、出力15kV、動作間距離20mm、スポットサイズ30mm、倍率500倍とした。そして、得られた5つの反射電子像を、1μm=5pixelsの解像度にて、1280×960pixelsの視野の画像として取得した。得られた反射電子像を図1(A)に示す。
【0081】
そして、得られた反射電子像について、画像サイズ1280×960pixelsのうち、ラベル部を除いた1280×830pixels=256μm×166μmの視野を解析対象として、画像解析ソフト(製品名「Image J 1.49ver.」、National Institute of Health製)を用いて、画像解析を行った。具体的には、画像解析ソフトにおいて、Image typeを8bitとして読み込み、5pixels/μmのscale設定にて解析を行った。なお、この際においては、画像解析ソフトの設定における、Threshold の閾値を、256階調に分けられた濃淡の下限を0、上限を30に設定することで、二値化処理を行った。なお、本実施例によれば、このような閾値を設定することで、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相を適切に検出することができるものである。得られた二値化処理後の反射電子像を図1(B)に示す。なお、図1(B)中、黒色部分が、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相が存在する部分である。
【0082】
次いで、得られた二値化処理後の反射電子像について、画像解析ソフトのAnalyze機能を使用し、検出されたフッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相について、画像上のpixel数から、同面積を有する円に近似することで、円相当径を求め、これをフッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の粒径とした。なお、この際には、画像解析ソフトのAnalyze機能のAnalyze particlesのsizeを1−Infinityとし、粒径が1μm以下の微細なものについては、測定誤差や、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相以外の異相の影響を取り除くという観点より、測定対象から除いた。さらに、画像解析に際しては、画像解析ソフトのオプションのExclude on edgeを用いて、反射電子像の縁部にまたがる粒子についても、測定対象から除いた。
【0083】
そして、上記測定を任意の5か所について得られた反射電子像に対して行い、得られたフッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の粒径から、その算術平均値を求めることで、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径を求めた。なお、実施例1における、5か所について得られた反射電子像における、平均粒径は、それぞれ、2.0μm、2.0μm、1.7μm、1.7μm、1.9μmであり、5か所について得られた反射電子像全てにおける平均値は1.9μmであった。
【0084】
また、上記とは別に、上記測定を任意の5か所について得られた反射電子像に対して行い、得られたフッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の粒径から、粒径が5μm以上である粒子の数をカウントすることで、256μm×166μmの視野範囲における、粒径が5μm以上である、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の存在個数を求めた。そして、粒径が5μm以上である、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の合計数(5か所について測定を行った際の合計数)を、測定範囲である256μm×166μm×5で除することにより求められた値、すなわち、5μm以上の偏析相の存在密度(粒径が5μm以上である、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の存在密度)は、2.5×10−5個/μmであった。なお、本実施例において、上記方法により検出されたフッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相について、EDS(Energy Dispersive Spectroscopy)分析による成分分析を行った結果、EDS分析からも、フッ素原子および/または塩素原子を含む相であることが確認された(後述する、実施例2、比較例1〜3においても同様。)。
【0085】
<伸線材の製造>
そして、上記にて得られた熱間スェージング加工後のガドリニウム線材(伸線前の線材)について、伸線後の目標線径を0.1mmとして、ダイスを用いた引抜加工を繰り返し行うことで、線径0.1mmの伸線材を得た。
【0086】
<伸線材についての、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定>
そして、得られた伸線材に対して、上記と同様にして、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定(すなわち、偏析相の平均粒径、5μm以上の偏析相の存在密度の各測定)を行った。ただし、得られた伸線材は、線径が小さく、その断面積は256μm×166μmの視野範囲よりも小さかったため、伸線材を任意の5か所において切断し、線材長手方向に垂直な任意の5断面の全体について測定を行うことで、測定結果を得た。図4(A)に、実施例1の伸線材の反射電子像を、図4(B)に、実施例1の二値化処理後の伸線材の反射電子像をそれぞれ示す。
【0087】
<実施例2>
<ガドリニウム線材の製造>
減面率20%の熱間スェージング加工の繰り返し回数を、12回に変更した以外は、丸棒材からの減面率が97.2%であるガドリニウム線材を製造した。なお、得られたガドリニウム線材の線径は2mmであった。
【0088】
<熱間スェージング加工後のガドリニウム線材についての、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定>
そして、得られたガドリニウム線材について、上記実施例1と同様にして、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定を行った。その結果、実施例2における、5か所について得られた反射電子像における、平均粒径は、それぞれ、1.7μm、1.8μm、1.9μm、1.9μm、1.8μmであり、5か所について得られた反射電子像全てにおける平均値は1.8μmであった。また、5μm以上の偏析相の存在密度は、2.0×10−5個/μmであった。図5(A)に、実施例2のガドリウム線材の反射電子像を、図5(B)に、実施例2の二値化処理後の反射電子像をそれぞれ示す。
【0089】
<伸線材の製造>
そして、上記にて得られた熱間スェージング加工後のガドリニウム線材(伸線前の線材)について、伸線後の目標線径を0.1mmとして、ダイスを用いた引抜加工を繰り返し行うことで、線径0.1mmの伸線材を得た。
【0090】
<伸線材についての、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定>
そして、得られた伸線材に対して、上記と同様にして、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定(すなわち、偏析相の平均粒径、5μm以上の偏析相の存在密度の各測定)を行った。ただし、得られた伸線材は、線径が小さく、その断面積は256μm×166μmの視野範囲よりも小さかったため、伸線材を任意の5か所において切断し、線材長手方向に垂直な任意の5断面の全体について測定を行うことで、測定結果を得た。
【0091】
<比較例1>
<ガドリニウム線材の製造>
比較例1においては、市販のガドリニウム鋳造材から切出したφ12mm×120mmのガドリニウムの丸棒材を、そのままガドリニウム線材とした。
【0092】
<フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定>
そして、得られたガドリニウム線材について、上記実施例1と同様にして、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定を行った。その結果、比較例1における、5か所について得られた反射電子像における、平均粒径は、それぞれ、3.2μm、3.3μm、2.9μm、3.1μm、2.9μmであり、5か所について得られた反射電子像全てにおける平均値は3.1μmであった。また、5μm以上の偏析相の存在密度は、2.0×10−4個/μmであった。図6(A)に、比較例1のガドリウム線材の反射電子像を、図6(B)に、比較例1の二値化処理後の反射電子像をそれぞれ示す。
【0093】
<伸線材の製造>
そして、上記にて得られたガドリニウム線材(伸線前の線材)について、伸線後の目標線径を0.1mmとして、ダイスを用いた引抜加工を繰り返し行ったところ、線径9.6mmの伸線としたところで、これ以上伸線加工を行っても、連続して5回以上断線してしまい、線径9.6mmが伸線限界であり、これ以上線径の小さな伸線を得ることができなかった。
【0094】
<伸線材についての、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定>
そして、得られた伸線材に対して、上記と同様にして、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定(すなわち、偏析相の平均粒径、5μm以上の偏析相の存在密度の各測定)を行った。図7(A)に、比較例1の伸線材の反射電子像を、図7(B)に、比較例1の二値化処理後の伸線材の反射電子像をそれぞれ示す。
【0095】
<比較例2>
<ガドリニウム線材の製造>
減面率20%の熱間スェージング加工の繰り返し回数を、5回に変更した以外は、丸棒材からの減面率が73.8%であるガドリニウム線材を製造した。なお、得られたガドリニウム線材の線径は6.15mmであった。
【0096】
<熱間スェージング加工後のガドリニウム線材についての、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定>
そして、得られたガドリニウム線材について、上記実施例1と同様にして、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定を行った。その結果、比較例2における、5か所について得られた反射電子像における、平均粒径は、それぞれ、2.7μm、2.3μm、2.4μm、2.5μm、2.5μmであり、5か所について得られた反射電子像全てにおける平均値は2.5μmであった。また、5μm以上の偏析相の存在密度は、1.8×10−4個/μmであった。図8(A)に、比較例2のガドリウム線材の反射電子像を、図8(B)に、比較例2の二値化処理後の反射電子像をそれぞれ示す。
【0097】
<伸線材の製造>
そして、上記にて得られた熱間スェージング加工後のガドリニウム線材(伸線前の線材)について、伸線後の目標線径を0.1mmとして、ダイスを用いた引抜加工を繰り返し行ったところ、線径3.88mmの伸線としたところで、これ以上伸線加工を行っても、連続して5回以上断線してしまい、線径3.88mmが伸線限界であり、これ以上線径の小さな伸線を得ることができなかった。
【0098】
<伸線材についての、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定>
そして、得られた伸線材に対して、上記と同様にして、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定(すなわち、偏析相の平均粒径、5μm以上の偏析相の存在密度の各測定)を行った。
【0099】
<比較例3>
<ガドリニウム線材の製造>
減面率20%の熱間スェージング加工の繰り返し回数を、8回に変更した以外は、丸棒材からの減面率が88.6%であるガドリニウム線材を製造した。なお、得られたガドリニウム線材の線径は4.05mmであった。
【0100】
<熱間スェージング加工後のガドリニウム線材についての、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定>
そして、得られたガドリニウム線材について、上記実施例1と同様にして、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定を行った。その結果、比較例3における、5か所について得られた反射電子像における、平均粒径は、それぞれ、2.1μm、2.1μm、2.2μm、2.2μm、2.3μmであり、5か所について得られた反射電子像全てにおける平均値は2.2μmであった。また、5μm以上の偏析相の存在密度は、5.5×10−5個/μmであった。図9(A)に、比較例2のガドリウム線材の反射電子像を、図9(B)に、比較例2の二値化処理後の反射電子像をそれぞれ示す。
【0101】
<伸線材の製造>
そして、上記にて得られた熱間スェージング加工後のガドリニウム線材(伸線前の線材)について、伸線後の目標線径を0.1mmとして、ダイスを用いた引抜加工を繰り返し行ったところ、線径1.81mmの伸線としたところで、これ以上伸線加工を行っても、連続して5回以上断線してしまい、線径1.81mmが伸線限界であり、これ以上線径の小さな伸線を得ることができなかった。
【0102】
<伸線材についての、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定>
そして、得られた伸線材に対して、上記と同様にして、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定(すなわち、偏析相の平均粒径、5μm以上の偏析相の存在密度の各測定)を行った。
【0103】
【表1】
【0104】
<評価>
表1に、実施例1,2、比較例1〜3の結果をまとめて示す。なお、表1中において、伸線材の線径について、実施例1,2については、目標の線径である0.1mmまで伸線できたので、その値を示し、一方、比較例1〜3については、伸線限界時の線径を示した。
表1に示すように、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径、および5μm以上の偏析相の存在密度(粒径が5μm以上である、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の存在密度)が本発明所定の範囲にある場合には、ガドリニウム線材は、高強度であり、かつ、加工性に優れるため、目標の線径である0.1mmまで伸線することができ、これにより、表面積の大きな伸線材を得ることができ、しかも、得られる伸線材も、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径、および5μm以上の偏析相の存在密度が本発明所定の範囲にあり、高強度であり、加工性に優れるものであった(実施例1,2)。
一方、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径、および5μm以上の偏析相の存在密度(粒径が5μm以上である、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の存在密度)が本発明所定の範囲にないガドリニウム線材は、伸線後の目標線径である0.1mmまで伸線することができず、強度および加工性に劣るものであり、また、得られる伸線材も、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の平均粒径、および5μm以上の偏析相の存在密度が本発明所定の範囲になく、強度および加工性に劣るものであった(比較例1〜3)。
【0105】
<実施例3>
上記実施例1で得られた、熱間スェージング加工後の線径の2.6mmのガドリニウム線を芯線とし、これを、内径2.7mm、外径3.5mmのC1220の純銅からなる銅管内に挿入することにより、金属被覆ガドリニウム線材を得た。なお、この際においては、ガドリニウム線の表面については機械研磨により、銅管の内面については硝酸洗浄により、予め酸化被膜を除去したものを用いた。
【0106】
そして、得られた金属被覆ガドリニウム線材について、伸線後の目標線径を0.25mmとして、ダイスを用いた引抜加工を、1回当たりの減面率20%の条件にて、繰り返し行うことで、線径0.25mmの伸線材を得た。そして、得られた伸線材の断面について、反射電子像の測定を行い得られた反射電子像を用いて、伸線材の断面における、ガドリニウム線部分の割合を求めたところ、58%であった。実施例3において得られた伸線材の断面の反射電子像を、図10に示す。
【0107】
得られた伸線材について、上記と同様にして、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定(すなわち、偏析相の平均粒径、5μm以上の偏析相の存在密度の各測定)を行った。ただし、得られた伸線材は、線径が小さく、その断面積は256μm×166μmの視野範囲よりも小さかったため、伸線材を任意の5か所において切断し、線材長手方向に垂直な任意の5断面の全体について測定を行うことで、測定結果を得た。測定の結果、偏析相の平均粒径は1.5μmであり、5μm以上の偏析相の存在密度は0個/μmであった。
【0108】
次いで、得られた伸線材について、所定の磁場を印可した際の表面温度変化をサーモグラフィで測定し、測定の結果得られた表面温度変化を、実施例1で得られた純ガドリニウム線の表面温度変化を100%とした値にて求めたところ、実施例3の表面温度変化量は55%であった。
【0109】
<実施例4>
銅管として、内径2.7mm、外径3.2mmのC1220の純銅からなる銅管を使用した以外は、実施例3と同様にして、金属被覆ガドリニウム線材を得た。そして、得られた金属被覆ガドリニウム線材について、伸線後の目標線径を0.25mmとして、ダイスを用いた引抜加工を、1回当たりの減面率20%の条件にて、繰り返し行うことで、線径0.25mmの伸線材を得た。
【0110】
そして、実施例3と同様にして、得られた伸線材について評価を行ったところ、伸線材の断面における、ガドリニウム線部分の割合は68%であり、純ガドリニウム線の表面温度変化を100%とした場合における、表面温度変化量は69%であった。実施例4において得られた伸線材の断面の反射電子像を、図11に示す。
【0111】
また、得られた伸線材について、上記と同様にして、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定(すなわち、偏析相の平均粒径、5μm以上の偏析相の存在密度の各測定)を行った。ただし、得られた伸線材は、線径が小さく、その断面積は256μm×166μmの視野範囲よりも小さかったため、伸線材を任意の5か所において切断し、線材長手方向に垂直な任意の5断面の全体について測定を行うことで、測定結果を得た。測定の結果、偏析相の平均粒径は1.5μmであり、5μm以上の偏析相の存在密度は0個/μmであった。
【0112】
<実施例5>
銅管として、内径2.7mm、外径3.0mmのC1220の純銅からなる銅管を使用した以外は、実施例3と同様にして、金属被覆ガドリニウム線材を得た。そして、得られた金属被覆ガドリニウム線材について、伸線後の目標線径を0.25mmとして、ダイスを用いた引抜加工を、1回当たりの減面率20%の条件にて、繰り返し行うことで、線径0.25mmの伸線材を得た。
【0113】
そして、実施例3と同様にして、得られた伸線材について評価を行ったところ、伸線材の断面における、ガドリニウム線部分の割合は78%であり、純ガドリニウム線の表面温度変化を100%とした場合における、表面温度変化量は84%であった。実施例5において得られた伸線材の断面の反射電子像を、図12に示す。
【0114】
また、得られた伸線材について、上記と同様にして、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定(すなわち、偏析相の平均粒径、5μm以上の偏析相の存在密度の各測定)を行った。ただし、得られた伸線材は、線径が小さく、その断面積は256μm×166μmの視野範囲よりも小さかったため、伸線材を任意の5か所において切断し、線材長手方向に垂直な任意の5断面の全体について測定を行うことで、測定結果を得た。測定の結果、偏析相の平均粒径は1.5μmであり、5μm以上の偏析相の存在密度は0個/μmであった。
【0115】
<参考例1>
銅管として、内径2.7mm、外径3.9mmのC1220の純銅からなる銅管を使用した以外は、実施例3と同様にして、金属被覆ガドリニウム線材を得た。そして、得られた金属被覆ガドリニウム線材について、伸線後の目標線径を0.25mmとして、ダイスを用いた引抜加工を、1回当たりの減面率20%の条件にて、繰り返し行うことで、線径0.25mmの伸線材を得た。
【0116】
そして、実施例3と同様にして、得られた伸線材について評価を行ったところ、伸線材の断面における、ガドリニウム線部分の割合は47%であり、純ガドリニウム線の表面温度変化を100%とした場合における、表面温度変化量は44%であった。参考例1において得られた伸線材の断面の反射電子像を、図13に示す。
【0117】
また、得られた伸線材について、上記と同様にして、フッ素原子および/または塩素原子を含む偏析相の測定(すなわち、偏析相の平均粒径、5μm以上の偏析相の存在密度の各測定)を行った。ただし、得られた伸線材は、線径が小さく、その断面積は256μm×166μmの視野範囲よりも小さかったため、伸線材を任意の5か所において切断し、線材長手方向に垂直な任意の5断面の全体について測定を行うことで、測定結果を得た。測定の結果、偏析相の平均粒径は1.5μmであり、5μm以上の偏析相の存在密度は0個/μmであった。
【0118】
【表2】
【0119】
表2に、実施例3〜5、参考例1の結果をまとめて示す。表2より、本発明の金属被覆ガドリニウム線材によれば、線径が0.1〜1.0mmと細線化された伸線材を、優れた加工性にて得ることでき、しかも、得られる伸線材は、表面温度変化量も十分であり、磁気熱量効果を利用した磁気冷凍技術における、磁気冷凍材料として好適であるといえる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13