特開2017-214706(P2017-214706A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 林物産発明研究所の特許一覧

<>
  • 特開2017214706-堤防装置 図000003
  • 特開2017214706-堤防装置 図000004
  • 特開2017214706-堤防装置 図000005
  • 特開2017214706-堤防装置 図000006
  • 特開2017214706-堤防装置 図000007
  • 特開2017214706-堤防装置 図000008
  • 特開2017214706-堤防装置 図000009
  • 特開2017214706-堤防装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-214706(P2017-214706A)
(43)【公開日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】堤防装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/12 20060101AFI20171110BHJP
   E02B 7/44 20060101ALI20171110BHJP
【FI】
   E02B3/12
   E02B7/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-106998(P2016-106998)
(22)【出願日】2016年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA11
2D118FA01
2D118FA04
(57)【要約】
【課題】 嵩上げ幅を大きくでき、劣化に強く、眺望の良い堤防装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、U字溝10と、浮力により回転可能な堤防体30を有し、前記堤防体30の一端側が前記U字溝の一方の縁12に回転支持部材33により回転可能に取り付けられ、前記堤防体30の他端側が前記U字溝の他方の縁22に載置される堤防装置1とした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字溝と、
浮力により回転可能な堤防体を有し、
前記堤防体の一端側が前記U字溝の一方の縁に回転可能に取り付けられ、前記堤防体の他端側が前記U字溝の他方の縁に載置されることを特徴とする堤防装置。
【請求項2】
前記U字溝の前記一方の縁に段部が形成され、
前記堤防体が浮力により回転したときに、前記堤防体が前記段部により支持されることを特徴とする請求項1に記載の堤防装置。
【請求項3】
前記段部による段差を覆うカバーを更に有することを特徴とする請求項2に記載の堤防装置。
【請求項4】
前記堤防体が、第1堤防体と第2堤防体を有し、
前記第2堤防体は、浮力によって、前記第1堤防体に対して上方に移動可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の堤防装置。
【請求項5】
前記第2堤防体が、前記他端側の回転軸の周りで回転可能に前記第1堤防体に取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の堤防装置。
【請求項6】
前記第2堤防体が、前記第1堤防体に対してスライド可能に取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の堤防装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の浮力により嵩上げする(高さを上げる)ことができる堤防装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、津波の際の水の浮力で自動的に嵩上げできる堤防を開示する。この方式では、平時は堤防が低いため、一応の眺望を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】2008−274733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の堤防は、多くの欠点がある。例えば、多数の柱7が眺望の妨げになる。吹き曝しの構造であるため、蝶番4や浮力材5が劣化し易い。回転部分1が片持ち支持のため、機構部(蝶番4等)に過大な負荷が掛かりやすい。嵩上げを大きくするには、回転部分1を長くする必要があるが、それには材料工学等から限界がある。回転部分1が大きく張り出しているため見た目の威圧感・不安定感が強く、観光地や住宅地区等では受け入れ難い。
【0005】
本発明は、上記課題に対処した堤防装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、U字溝と、浮力により回転可能な堤防体を有し、前記堤防体の一端側が前記U字溝の一方の縁に回転可能に取り付けられ、前記堤防体の他端側が前記U字溝の他方の縁に載置されることを特徴とする堤防装置とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、堤防体がU字溝の両側の縁で両持ち支持される。よって、長い堤防体を使用でき、嵩上げ幅を大きくできる。堤防装置の上面を平坦にできるので、眺望が良く、周辺を公園や道路として利用するのに支障が無い。蝶番等を堤防体で覆うことができるので、環境からの劣化に強くなる。堤防体が浮力により回転したときに、段部の側壁により堤防体を支持する構造とすれば、柱7が不要であり、眺望が悪化しない。段部をカバーで覆えば段部の段差を無くすことができ、道路や公園として使用する際に好適である。カバーは、蝶番等の環境からの保護にも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1実施形態に係る堤防装置1の側面図を示す。
図2】堤防装置1の平面図を示す。
図3】水面が上昇した場合の堤防装置1を示す。
図4】堤防装置1の設置例を示す。
図5】本発明の他の実施形態の堤防装置1Aを示す。
図6】水位が上昇したときの堤防装置1Aを示す。
図7】本発明の更に他の実施形態の堤防装置1Bを示す。
図8】堤防装置1Bの堤防体30を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、堤防装置1の側面図を示し、図2は、堤防装置1の平面図を示す。図示のように、堤防装置1は、U字溝10と堤防体30を有する。
【0010】
U字溝10は、陸側に側壁11、蓋掛縁(上面)12及び段部13を有し、海側に側壁21、蓋掛縁(上面)22及び段部23を有する。U字溝10の底は、図示のように閉塞しても良いし、海側に抜ける通孔を設けても良い。通孔があれば、雨水を抜くことができ、水位が上がった際に通孔からU字溝10に海水が入り、堤防体30が円滑に上昇する。
【0011】
支持体14は、側壁11側に取り付けられている。支持体14は、コンクリートや鋼鉄等の硬質部材で構成できる。側壁11と支持体14は、別々の部材で構成しても良いが、単一の部材でもよい。
【0012】
カバー15は、段部13の上端に蝶番15aで回転可能に取り付けられている。カバー15は、鋼鉄等の板で構成できる。カバー15により段部13の段差が無くなる。
【0013】
堤防体30は、表面部材31と浮力体32を有する。表面部材31は、コンクリートや鋼鉄等で構成し得る。表面部材31は、中空箱状の部材としても良い。浮力体32は、堤防体30に浮力を与えるためのものであり、水よりも小さい比重を有する。浮力体32は、発泡スチロール、木材、空気、EPS等の低比重部材32aと、低比重部材32aを囲う金属等のケーシング32bで構成するとよい。これにより、低比重部材32aを劣化から保護できる。必ずしも堤防体30を別々の部材(表面部材31と浮力体32)で構成する必要はなく、一体の部材を使用してもよい。
【0014】
堤防体30の一端は、蝶番33を介して蓋掛縁11に取り付けられている。堤防体30の他端は、蓋掛縁22上に載置される。堤防体30は、U字溝10の長手方向(図2の上下方向)に複数配列される。堤防体30同士の間隔をなるべく開けずに密に配列される。
【0015】
図3は、津波等で水面が上昇した場合の堤防装置1を示す。図示のように、浮力により堤防体30が回転して起立・上昇する。これにより、堤防を嵩上げできる。図4(a)、(b)は、堤防装置1の設置例を示す。図の堤防装置1は、堤防2の天端2Aに設置されている。図1から判るように、堤防装置1を設けても、天端2Aに凹凸が殆ど生じない。図4(b)は、堤防体30が起立・上昇した状態である。
【0016】
本実施形態の堤防装置1では、水の浮力により堤防体30が回転して堤防2が嵩上される。このように、低コスト及び/又は簡単な工事で堤防2の嵩上げができる。堤防体30の両端をU字溝10の両側で支持するので、蝶番33等に負荷が掛からない。それ故、長い堤防体30が使用可能になり、嵩上げ幅を大きくできる。蝶番33や浮力体32が表面部材31及び/又はカバー15で覆われるので、劣化等に強い。天端2Aの表面に殆ど段差を生じないので、天端2Aを道路や公園等として利用し易い。堤防体30が起立したとき(図3)、堤防体30を段部13で支持するので、特許文献1の柱7は不要であり、眺望が良い。特許文献1の回転部分1のような張り出しが無いので、見た目の威圧感・不安定感が無い。
【0017】
図5は、他の実施形態の堤防装置1Aを示す。堤防装置1Aでは、表面部材31の先端に係止部材31aが設けられている。係止部材31aは、蓋掛縁22に係止するための部材である。係止部材31aは、鉄板等で構成できる。段部23の高さは、係止部材31aの厚みだけでよい。浮力体32は、蝶番32cで表面部材31の先端に回転可能に取り付けられている。堤防装置1Aでは、表面部材31が第1堤防体であり、浮力体32が第2堤防体である。
【0018】
図6は、水位が上昇したときの堤防装置1Aを示す。図示のように、水位が増すと、表面部材31が蝶番33で回転して起立し(図6(a))、更に水位が増すと、浮力体32が蝶番32cで回転して起立する(図6(b))。よって、嵩上げ幅を大きくすることができる。
【0019】
図7(a)は、更に他の実施形態の堤防装置1Bを示す。堤防装置1Bは、浮力体32が表面部材31に対してスライド可能に取り付けられている点が堤防装置1Aと異なる。図7(b)、(c)は、水位の上昇時に堤防体30が上昇する様子を示す。図8(a)は堤防体30の平面図(図7(b)の上から見た図)であり、図8(b)〜(d)は図7(b)のそれぞれX、Y、Z断面で堤防体30を見た図である。図8に示すように、表面部材31は、先端部にストッパ31bを有し、浮力体32は、基端部以外に凹部32dを有する。ストッパ31bと凹部32dは相補的な形状であり、相互にスライドできる。堤防装置1Bでは、表面部材31が第1堤防体であり、浮力体32が第2堤防体である。
【0020】
水位が増すと、図7(b)のように堤防体30が回転・起立し、更に水位が増すと、図7(c)のように浮力体32がスライドして堤防高さが更に上昇し、表面部材31のストッパ31bに浮力体32の下端(ケーシング32bの下端)が当たったところで停止する。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、嵩上げ可能な堤防として使用できる。図4のように、既存の堤防に設置してもよく、海や川沿いの道路や土手等に設置してもよい。
【符号の説明】
【0022】
1,1A,1B・・・堤防装置
2・・・堤防
10・・・U字溝
11・・・側壁
12・・・蓋掛縁
13・・・段部
14・・・支持体
15・・・カバー
21・・・側壁
22・・・蓋掛縁
23・・・段部
30・・・堤防体
31・・・表面部材
32・・・浮力体
32a・・・低比重部材
32b・・・ケーシング
32c・・・蝶番
33・・・蝶番
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8