【解決手段】複数の支柱10と、単数又は複数の横木20と、分割式の継手装置30とを具備したフロント式擬木柵であって、分割式の継手装置30が受継手31と蓋継手35と、受継手31を支柱に固定する取着ボルト40と、横木20を抱持させた受継手31と蓋継手35の間を連結する連結ボルト45とを具備する。
所定の間隔を隔てて立設した複数の支柱と、隣り合う支柱の片側に横架した単数又は複数の横木と、隣り合う横木の端部を連結しつつ、支柱へ取り付ける分割式の継手装置とを具備したフロント式擬木柵であって、
前記分割式の継手装置が、横木の端部を載置可能で断面形状が略J字形を呈する受継手と、
受継手の開口部を封鎖可能で断面形状が略C字形を呈する蓋継手と、
受継手及び支柱を貫挿可能な全長を有する取着ボルトと、
横木を抱持させた受継手と蓋継手間を貫挿可能な全長を有する連結ボルトとを具備し、
受継手の内側から貫挿された前記取着ボルトを介して受継手が支柱に固定され、
前記連結ボルトを介して受継手と蓋継手間に隣り合う横木の端部が抱持されて連結されていることを特徴とする、
フロント式擬木柵。
前記受継手が横木の端部の底部を転動不能な状態で載置可能な皿部と、皿部の一端から上方へ延びる起立部とを有し、該起立部の中央に外方へ向けて突出する隆起部が形成され、該隆起部の側面に取着ボルト挿通用のボルト穴が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のフロント式擬木柵。
前記複数の横木と、該複数の横木の間に交差して枢支させた複数の縦桟とにより格子ユニットが構成され、前記継手装置を介して隣り合う格子ユニットから延びる横木の端部が連結されていることを特徴とする、請求項1に記載のフロント式擬木柵。
前記支柱、横木、又は縦桟が、芯管と、該芯管の表面を被覆した樹皮模様の被膜とにより構成されていることを特徴とする、請求項1,2又は4に記載のフロント式擬木柵。
前記支柱は先行して地中に打設された芯管と、該芯管の地上部に外装された筒状の被膜とにより構成される打込み式の支柱であることを特徴とする、請求項1又は5に記載のフロント式擬木柵。
【背景技術】
【0002】
硬質パイプの表面を樹皮模様の合成樹脂で被覆した擬木柵は周知である。
一般的な擬木柵は、隣り合う支柱間に横架させた横木の両端部を支柱の中心位置に連結していて、横木が支柱からはみ出ない構造となっている(特許文献1,2)。
また
図10に示すように隣り合う支柱70の片側に横木71を交差させて組み立てたフロント式擬木柵も知られている(特許文献3)。
このフロント式擬木柵では、支柱70を水平に貫通した固定ボルト73を介して円筒形の継手金具72が支柱70の側面に固定してある。
継手金具72は、横木71の端部を挿通可能な筒部72aと、筒部72aの中央背面に固着された固定ナット72bとを具備していて、支柱70の背面側から貫挿した固定ボルト73の先端を固定ナット72bに螺着することで筒部72aを固定している。
横木71を隣り合う支柱70間に架設するには、支柱70から離隔した状態の筒部72aの中程まで各横木71の端部を差し込んだ状態で、固定ボルト73と固定ナット72bを用いて筒部72aを支柱70に固定する。
最後に筒部72aと横木71の重合箇所を連結ボルト75とナット76を用いて固定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のフロント式擬木柵にはつぎのような解決すべき課題がある。
<1>継手金具72の筒部72aが円筒形を呈するため、柵の一端から延設方向へ向けて順番に横木71を横架しなければならず、横木71の組立効率が悪いだけでなく組付けに多くの時間と労力を要する。
<2>擬木柵の始端と終端の支柱70間に横木71を繋げて無端形状に組み立てる場合は、最終スパンの横木71の組付け作業が非常に面倒である。
具体的には、固定済みの複数スパンの筒部72aを暫定的に支柱70から取り外し、取り外した筒部72aの間に横木71を差し込んだ後に部72aを支柱70に再固定しなければならず、最終スパンの横木71の組付けに多くの時間と労力を要する。
<3>変形や損傷等により横木71を交換する場合には、少なくとも2スパンの継手金具72を取り外し、3〜4人の作業者が複数の横木71を手で支えながら横木71の撤去作業と組付け作業をしなければならず、横木71の交換作業に多くの時間と労力を要する。
<4>擬木柵の外観性をよくするため、継手金具72の背面側に固定ナット72bを溶接、カシメ等により固着しなければならず、継手金具72のコストアップの要因となっている。
<5>継手金具72の他の固定構造として、支柱70と継手金具72の筒部72aの両部材を貫通可能な長尺の連結ボルト73を使用して継手金具72を固定することも可能であるが、継手金具72の正面にボルトヘッドが露出して擬木柵の外観を損ねる。
【0005】
本発明は既述した点に鑑みてなされたもので、その目的とするところはつぎのフロント式擬木柵を提供することにある。
<1>施工性をよくして工期の短縮が可能であること。
<2>横木の部分的交換を簡単かつ短時間に行えること。
<3>継手装置のコスト削減を図ること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定の間隔を隔てて立設した複数の支柱と、隣り合う支柱の片側に横架した単数又は複数の横木と、隣り合う横木の端部を連結しつつ、支柱へ取り付ける分割式の継手装置とを具備したフロント式擬木柵であって、前記分割式の継手装置が、横木の端部を載置可能で断面形状が略J字形を呈する受継手と、受継手の開口部を封鎖可能で断面形状が略C字形を呈する蓋継手と、受継手及び支柱を貫挿可能な全長を有する取着ボルトと、横木を抱持させた受継手と蓋継手間を貫挿可能な全長を有する連結ボルトとを具備し、受継手の内側から貫挿された前記取着ボルトを介して受継手が支柱に固定され、前記連結ボルトを介して受継手と蓋継手間に隣り合う横木の端部が抱持されて連結されている。
さらに本発明の他の形態において、前記受継手が横木の端部の底部を転動不能な状態で載置可能な皿部と、皿部の一端から上方へ延びる起立部とを有し、該起立部の中央に外方へ向けて突出する隆起部が形成され、該隆起部の側面に取着ボルト挿通用のボルト穴が形成されている。
さらに本発明の他の形態において、前記受継手と蓋継手には間隔を隔てて連結ボルト挿通用の長穴が形成されている。
さらに本発明の他の形態において、前記複数の横木と、該複数の横木の間に交差して枢支させた複数の縦桟とにより格子ユニットが構成され、前記継手装置を介して隣り合う格子ユニットから延びる横木の端部が連結されている。
さらに本発明の他の形態において、前記支柱、横木、又は縦桟が、芯管と、該芯管の表面を被覆した樹皮模様の被膜とにより構成されている。
さらに本発明の他の形態において、前記支柱は先行して地中に打設された芯管と、該芯管の地上部に外装された筒状の被膜とにより構成される打込み式の支柱である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は少なくとも次の一つの効果を得ることができる。
<1>分割式の継手装置を用いることで、横木を横架する順番の制約がなくなり、横木を任意位置の支柱間に横架することができる。
したがって、擬木柵の延設方向へ向けて順番に横木を架設する従来の擬木柵と比べてフロント式擬木柵の施工性がよくなると共に工期を大幅に短縮できる。
<2>分割式の継手装置を構成する略J字形を呈する受継手単独で横木の端部を載置可能であるため、支柱間に横木を効率よく横架できて大幅な工期短縮と省力化が図れる。
<3>横木を任意位置の支柱間に横架できるので、横木の部分的交換作業を簡単かつ短時間に行えるとともに、無端形状の擬木柵も効率よく製作することができる。
特に横木の交換作業を行う際には従来と比べて作業者の人数を大幅に削減できる。
<4>受継手の内側から取着ボルトを貫挿して支柱の背面側で固定できるので、受継手にナット要素を予め設けておく必要がない。
そのため、継手装置の低コスト化が可能となる。
<5>受継手を皿部と起立部とにより構成することで、受継手を支柱へ取付けできると共に、受継手に横木の端部を安定した姿勢で載置できる。
<6>受継手の起立部に隆起部を一体に成形することで、受継手の曲げ強度が高くなって横木の支持力が増す。
<7>擬木柵の製作後において、継手装置を正面から見たときに、取着ボルトが内部に隠れ、しかも受継手と蓋継手が同一曲率の湾曲面として形成されるので外観が綺麗である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明について説明する。
【0010】
<1>フロント式擬木柵の概要
図1(a)を参照して説明すると、本発明のフロント式擬木柵は、所定の間隔を隔てて立設した複数の支柱10と、隣り合う支柱10の片側に横架した単数又は複数の横木20と、隣り合う横木20の端部を連結しつつ、支柱10へ取り付ける分割式の継手装置30とを具備する。
本発明は公知の擬木素材である支柱10と横木20との交差部の固定手段として、分割式の継手装置30を用いるものである。
【0011】
<2>支柱
支柱10は芯管11の表面を樹皮模様の被膜12で被覆した断面形状が円形又は角形を呈する柱体である。支柱10の下部はコンクリート基礎又は地山に埋設されている。
芯管11は鋼管、アルミ管、樹脂管、紙管等の硬質パイプであり、被膜12は硬質樹脂、軟質樹脂、コンクリート等を含む。
支柱10は
図1(a)に示すような建込み式の他に、
図1(b)に示すような先行して地中に打設した芯管11の地上部に筒状の被膜12を外装する打込み式であってもよい。
打込み式の場合、被膜12が5〜80mmの厚さを有し、釘、ビス、ボルト等ので固定具により被膜12を芯管11に固定する。
支柱10の本体には継手装置30の取付位置に合せて水平に向けて貫通孔13が穿設されている(
図3)。
【0012】
<3>横木
横木20は鋼管等の芯管21の表面を樹皮模様の被膜22で被覆した断面形状が円形又は角形を呈する柱体である。
芯管21は鋼管、アルミ管、樹脂管、紙管等の硬質パイプであり、被膜22は硬質樹脂、軟質樹脂、コンクリート等を含む。
横木20の端部近くには縦向きに貫通したボルト孔23が穿設されている(
図3)。
【0013】
<4>継手装置
図2〜4を参照して説明すると、分割式の継手装置30は、横木20の端部を安定姿勢で載置可能な断面略J字形を呈する受継手31と、受継手31の開口部を封鎖可能な断面略C字形を呈する蓋継手35と、受継手31を支柱10にボルト止めする取着ボルト40とナット41と、横木20と共に横木20を挟持する受継手31と蓋継手35間に貫挿して連結する連結ボルト45とナット46とを具備する。
本例では取着ボルト40及び連結ボルト45に角根丸頭ボルトを用いる形態について説明するが、公知のボルトを適用することも可能である。
取着ボルト40は受継手31及び支柱10を貫挿可能な全長を有し、連結ボルト45は横木20を抱持させた受継手31と蓋継手35間を貫挿可能な全長を有する。
【0014】
<4.1>受継手
図4を参照して説明すると、受継手31は一枚の帯板を円弧形の断面形状に成形した湾曲板であり、横木20の端部を安定した姿勢で載置可能な皿部31aと、皿部31aの一端から上方へ延びる起立部31bとを有する。
皿部31aは単独で横木20の底部を転動不能な状態で支持する部位である。
皿部31aの最下部には間隔を隔てて一対の長穴32,32が形成されている。
起立部31bの中央には外方へ向けて隆起部31cが一体に形成してあり、隆起部31cの平らな側面31dには取着ボルト40を挿通可能な角形のボルト穴33が形成されている。
隆起部31cは取着ボルト40の頭部40a全体を収容可能であり、プレス加工に簡易に形成できる。ボルト穴33は取着ボルト40の角根40bを嵌挿可能な寸法になっている。
起立部31bに隆起部31cを一体成形することで、受継手31の曲げ強度が高くなって、横木20の支持力が増す。
受継手31の内側から取着ボルト40を挿し込み、支柱10の背面側でナット41等で固定できるので、受継手31にナット要素を設ける必要がない。
そのため、継手装置30の低コスト化が可能となる。
【0015】
<4.2>蓋継手
蓋継手35は横木20の端部に被せる断面が円弧状を呈する湾曲板であり、一枚の帯板を円弧形の断面形状に成形して形成できる。
蓋継手35には受継手31の長穴32,32と対応した一対の長穴36,36が開設されている。
【0016】
<4.3>受継手と蓋継手を分離した理由
本発明では横木20の端部を受継手31と蓋継手35の二部材で挟持するようにした。
受継手31と蓋継手35を分離独立した部材で形成したのは、継手装置30の正面位置から横木20の端部を出し入れするためである。
【0017】
<4.4>受継手を皿部と起立部で形成した理由
受継手31に皿部31aと起立部31bとを形成したのは、起立部31bを通じて受継手31を支柱10に取り付けると共に、皿部31aのみで横木20の端部を落下させずに載置するようにするためである。
すなわち、
図5(a)の対比例1に示すように、一本の筒体を縦割して受継手31と蓋継手35を形成した場合、開口部を真横に向けた半筒状の受継手31を支柱10に取り付けできるものの、受継手31単独では横木20を載置できないといった不具合がある。
また
図5(b)の対比例2に示すように一本の筒体を横割(水平割)して受継手31と蓋継手35を形成した場合、開口部を真上に向けた半筒状の受継手31に横木20の端部を収容可能であるものの、半筒状の受継手31を支柱10に取り付けできないといった不具合がある。
本発明では上記した不具合を解消し、支柱10への取付けと横木20の端部の載置を両立させるために、受継手31に皿部31aと起立部31bを連続的に形成したものである。
【0018】
[フロント式擬木柵の組立方法]
継手装置30を使用したフロント式擬木柵の組立方法について説明する。
説明に際し、複数の支柱10は予め立設されていることを前提とする。
【0019】
<1>受継手の取付け
図6は取着ボルト40を用いて受継手31を支柱10に取り付ける工程を示している。
受継手31の内側からボルト穴33を通じて取着ボルト40を差し込み、その軸部40cを支柱10の貫通孔13に挿通してワッシャ43を介してナット41で締め付けて、受継手31を支柱10に取り付ける。
取着ボルト40の頭部40aは隆起部31c内に収容されて起立部31bの内面側に突出しない。
受継手31が取着ボルト40を中心として回動自在であるから、擬木柵の設置地盤の傾斜に応じて受継手31の取付角度を変更できる。
【0020】
<2>横木の架設
本発明では以降に説明するように、隣り合う横木20の端部を受継手31に仮置きした後に蓋継手35を被せて固定することで横木20を架設する。
<2.1>横木の仮置き
図7を参照して説明すると、隣り合う支柱10に取り付けた上向きの受継手31の上面に横木20の端部を載置して架け渡す。一つの受継手31に対して左右2本の横木20の端部を載置する。
この際、横木20の端部は各受継手31に載置するだけであって、連結ボルト45は使用しない。
横木20の仮置き作業は横木20の両端部を各受継手31に載置するだけの簡単な作業であるから、1人の作業者で対応できる。
さらに横木20の仮置き作業は任意の位置で行えるので、擬木柵の延設方向へ向けて順番に架設する従来の組立方法と比べて効率よく短時間のうちに横木20を架設できる。
【0021】
<2.2>横木の固定
図7,8を参照して説明すると、受継手31に載置した左右2本の横木20の端部に跨って蓋継手35を被せる。
蓋継手35の長穴36、横木20の端部のボルト孔23、及び受継手31の長穴32の位置合わせを行い、蓋継手35の上方から下向きに連結ボルト45を挿し込む。
受継手31の下方でワッシャ47を介してナット46を螺着して、
図2,3に示すように横木20の端部を受継手31と蓋継手35で抱持して固定する。
尚、横木20の仮置き作業と固定作業を繰り返し行ってよいが、横木20の仮置き作業と固定作業を並行して行ってもよい。
フロント式擬木柵では任意の支柱10間に横木20を横架することができる。
擬木柵の製作後において、継手装置30を正面から見たときに、取着ボルト40が内部に隠れ、しかも受継手31と蓋継手35が同一曲率の湾曲面として形成されるので外観が綺麗である。
【0022】
<3>擬木柵が無端形状である場合
擬木柵を無端形状に組み立てる場合にも、横木20を片側から順番に延設する必要がなく、任意の位置から支柱10間に横木20を横架して製作できる。
【0023】
<4>横木を交換する場合
図8を参照して損傷等により横木20を交換する場合について説明する。
ナット46を取り外して連結ボルト45を抜き取り、2つの蓋継手35を取り外すことで横木20の両端部を開放する。この状態で横木20を取り外して新たな横木20と交換する。
このように横木20を交換するには、必要最小限の2つの蓋継手35を取り外すだけの簡単な作業であるので、1人の作業者でも短時間のうちに簡単に交換作業を行える。
【0024】
[他の実施形態]
図9を参照して隣り合う支柱10間に格子ユニット25を架設した他の擬木柵を説明する。
本例の擬木柵は所定の杆陷を隔てて立設した複数の支柱10と、上下2本の横木20,20の間に複数の縦桟24を交差させ、その交差部を枢支して構成する格子ユニット25と、隣り合う格子ユニット25から延びる横木20の端部を連結しつつ、支柱10へ取り付ける分割式の継手装置30とを具備する。
縦桟24は横木20と同様に、芯管の表面を樹皮模様の被膜で被覆した断面形状が円形又は角形を呈する柱体である。
格子ユニット25は上下の横木20,20と各縦桟24の端部近くの交差部をボルト、リベット、ピン等で連結して格子状に製作してある。横木20と縦桟24の各交差部を回動不能に剛結してもよいが、これらの交差部の接続角度が可変なように枢支してもよい。
本例では既述した継手装置30を介して格子ユニット25を吊り込んで隣り合う支柱10の間に架設することができる。