【解決手段】歯車減速機1は、回転軸90を中心に入力回転数で回転運動する入力シャフト11と、入力回転数よりも低い出力回転数で回転運動する出力部と、入力シャフトの外周部に固定する偏心体13と、外周に複数の外歯を備える複数の外歯歯車20と、外歯歯車を入力シャフトに対し回転可能に支持する複数の偏心体軸受30と、外歯と噛み合う複数の内歯を備える内歯歯車40と、軸方向に延びる複数のキャリアピン50と、複数の外歯歯車の軸方向の間に配置されるキャリア60と、キャリアと入力シャフトとの径方向の間に配置し、キャリアを入力シャフトに対し回転可能に支持するキャリア軸受33と、出力部とともに回転するフランジ70とを有する。複数のキャリアピンはキャリア及びフランジ、か、外歯歯車に固定する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、回転軸と平行な方向を「軸方向」、回転軸に直交する方向を「径方向」、回転軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。ただし、上記の「平行な方向」は、略平行な方向も含む。また、上記の「直交する方向」は、略直交する方向も含む。また、以下では、
図1の入力シャフト側を「軸方向前方」、
図1の出力シャフト側を「軸方向後方」と、それぞれ称する。ただし、これらの方向の定義により、本発明に係る歯車減速機の使用時の向きを限定する意図はない。
【0013】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る歯車減速機1を、回転軸90を含む平面で切断した縦断面図である。
図2および
図3は、
図1中のA−A位置から見た歯車減速機1の横断面図である。
図4は、
図1中のB−B位置から見た歯車減速機1の横断面図である。
【0014】
この歯車減速機1は、内接遊星式の減速機であって、第1回転数(入力回転数)の回転運動を第1回転数よりも低い第2回転数(出力回転数)の回転運動に変換する、偏心揺動型の歯車減速機である。歯車減速機1は、例えば、ロボット、工作機、X−Yテーブル、材料の切断装置、コンベアライン、ターンテーブル、圧延ローラなどの駆動機構に、組み込まれて使用される。ただし、本発明の減速機は、他の用途に使用されるものであってもよい。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の歯車減速機1は、入力シャフト11、出力シャフト12、偏心体13、複数の外歯歯車20、複数の偏心体軸受30、内歯歯車40、複数のキャリアピン50、キャリア60、キャリア軸受33、およびフランジ70を有する。
【0016】
入力シャフト11は、外部から入力される回転数である第1回転数で回転する円柱状の部材である。入力シャフト11は、回転軸90に沿って配置されている。入力シャフト11の軸方向前方の端部は、直接または他の動力伝達機構を介して、駆動源であるモータに接続される。モータを駆動させると、回転軸90を中心として、入力シャフト11が第1回転数で回転する。
【0017】
入力シャフト11の外周部には、偏心体13が固定されている。偏心体13は、第1偏心部131および第1偏心部131よりも軸方向後方に位置する第2偏心部132を有する。第1偏心部131は、回転軸90から外れた位置で回転軸90と平行に延びる第1回転軸91を中心とする、円筒状の外周面を有する。第2偏心部132も、回転軸90から外れた位置で回転軸90と平行に延びる第2回転軸92を中心とする、円筒状の外周面を有する。第1回転軸91と第2回転軸92とは、回転軸90を挟んで互いに反対側に位置する。すなわち、第1回転軸91と第2回転軸92とは、軸方向から見て、回転軸90を中心とした回転対称となるように位置する。また、入力シャフト11が回転すると、第1回転軸91および第2回転軸92の位置も、回転軸90を中心として回転する。
【0018】
出力シャフト12は、回転軸90を中心に第2回転数で回転運動する出力部である。出力シャフト12は、回転軸90に沿って、入力シャフト11より軸方向後方に配置される円柱状の部材である。
【0019】
外歯歯車20は、入力シャフト11の径方向外側に配置される。本実施形態では、歯車減速機1は、第1外歯歯車21および第2外歯歯車22の二つの外歯歯車20を有する。
【0020】
偏心体軸受30は、偏心体13の外周部に固定され、外歯歯車20を入力シャフト11に対して回転可能に支持する。本実施形態の偏心体軸受30には、球体を介して外歯歯車20と偏心体13とを回転させるボールベアリングが、使用されている。
【0021】
第1外歯歯車21は、第1偏心部131の外周面に、偏心体軸受30を介して、取り付けられている。したがって、第1外歯歯車21は、第1偏心部131の第1回転軸91を中心として、回転自在に支持される。第2外歯歯車22は、第1外歯歯車21よりも軸方向後方において、第2偏心部132の外周面に、偏心体軸受30を介して、取り付けられている。したがって、第2外歯歯車22は、第2偏心部132の第2回転軸92を中心として、回転自在に支持される。
【0022】
図2中に拡大して示したように、第1外歯歯車21は、その外周部に、径方向外側へ向けて突出する複数の外歯23を有する。また、隣り合う外歯23の間には、径方向内側へ向けて凹む外歯間溝24が設けられている。外歯23と外歯間溝24とは、第1回転軸91を中心として、周方向に交互に並んでいる。また、第2外歯歯車22も、第1外歯歯車21と同じように、外周部に複数の外歯23と複数の外歯間溝24とを有する。
【0023】
また、
図1および
図2に示すように、第1外歯歯車21は、複数(
図2の例では8つ)のピン孔25を有する。複数のピン孔25は、第1回転軸91を中心として、周方向に等間隔に並んでいる。各ピン孔25は、外歯23および外歯間溝24よりも径方向内側において、第1外歯歯車21を軸方向に貫通する。また、第2外歯歯車22も、第1外歯歯車21と同じように、複数のピン孔25を有する。
【0024】
内歯歯車40は、外歯歯車20の径方向外側に配置される略円筒状の部材である。
図1に示すように、本実施形態の歯車減速機1は、内歯歯車40の軸方向後方端部から、径方向内側に延びる後蓋部41を有する。内歯歯車40の軸方向後面の少なくとも一部は、後蓋部41により覆われる。また、本実施形態の歯車減速機1は、内歯歯車40の軸方向前方端部に固定された前蓋部42を有する。内歯歯車40の軸方向前面の少なくとも一部は、前蓋部42により覆われる。そして、入力シャフト11と前蓋部42との間には、軸受31が介在する。これにより、入力シャフト11は、前蓋部42に対して回転自在に支持される。なお、内歯歯車40および後蓋部41は、単一部材により構成されてもよく、別部材であってもよい。
【0025】
図2中に拡大して示したように、内歯歯車40は、その内周部に、径方向内側へ向けて突出する複数の内歯43を有する。また、隣り合う内歯43の間には、径方向外側へ向けて凹む内歯間溝44が設けられている。内歯43と内歯間溝44とは、回転軸90を中心として、周方向に交互に並んでいる。
【0026】
各外歯歯車21,22の複数の外歯23と、内歯歯車40の複数の内歯43とは、互いに噛み合う。すなわち、歯車減速機1の動作時には、内歯歯車40の内歯間溝44に各外歯歯車21,22の外歯23が嵌り、各外歯歯車21,22の外歯間溝24に内歯歯車40の内歯43が嵌りながら、各外歯歯車21,22が回転する。なお、内歯43は、内歯歯車40とは別部材であってもよい。すなわち、内歯歯車は、円環状の部材の内周部に別部材の内歯を設けることで、構成されてもよい。
【0027】
第1外歯歯車21および第2外歯歯車22は、入力シャフト11の動力によって回転軸90の周りを公転しながら、内歯歯車40の内歯43と噛み合うことによって自転する。ここで、内歯歯車40が有する内歯43の数は、第1外歯歯車21および第2外歯歯車22の各々が有する外歯23の数よりも、多い。このため、各外歯歯車21,22の1公転ごとに、内歯歯車40の同じ位置の内歯43に噛み合う外歯23の位置がずれる。これにより、第1外歯歯車21および第2外歯歯車22が、入力シャフト11の回転方向とは逆の方向へ、第1回転数よりも低い第2回転数で自転する。したがって、各外歯歯車21,22のピン孔25の位置も、第2回転数で回転する。
【0028】
第1外歯歯車21および第2外歯歯車22の各々が有する外歯23の数をNとし、内歯歯車40が有する内歯43の数をMとすると、歯車減速機1の減速比Pは、P=(第1回転数)/(第2回転数)=N/(M−N)となる。
図2の例では、N=58,M=60なので、この例における減速比は、P=29である。すなわち、第2回転数は、第1回転数の1/29の回転数となる。ただし、本発明における減速機構の減速比は、他の値であってもよい。
【0029】
図3は、
図1中のA−A位置から見た歯車減速機1の横断面図に、理解容易のために、第2外歯歯車22を破線で追加した図である。
図3中に拡大して示したように、θは、第1外歯歯車21の中心である第1回転軸91と回転軸90とを結ぶ直線と、第2外歯歯車22の中心である第2回転軸92と回転軸90とを結ぶ直線と、によって形成される回転軸90を中心とする角度である。本実施形態では、外歯歯車20の数をN1として、θ=360°/N1の関係が満たされる。すなわち、本実施形態では、外歯歯車20の数は二つであるため、N1=2となり、θ=180°となる。また、外歯歯車20の数が、例えば、三つであれば、N1=3となり、θ=120°となる。
【0030】
フランジ70は、回転軸90に対して垂直に配置された、円環状の部位である。フランジ70は、第1外歯歯車21および第2外歯歯車22よりも、軸方向後方に配置されている。本実施形態では、フランジ70と出力シャフト12とが、単一の部材で形成されている。このため、フランジ70は、出力シャフト12とともに回転軸90を中心に回転する。ただし、フランジ70と出力シャフト12とは、互いに固定された別部材であってもよい。
【0031】
フランジ70の中心付近には、軸方向後方に凹む凹部71が設けられている。入力シャフト11の軸方向後方の端部は、凹部71内に配置される。そして、フランジ70と入力シャフト11との間には、軸受32が介在する。これにより、フランジ70は、入力シャフト11に対して、相対的に回転自在に支持される。また、入力シャフト11を軸受32によって支持することで、入力シャフト11の回転を安定させることができる。その結果、偏心体13および外歯歯車20の回転を安定化し、キャリアピン50に作用するモーメントを小さくすることができる。
【0032】
また、フランジ70には、複数のキャリアピン50を圧入するための複数(本実施形態では8つ)の被圧入孔72が、設けられている。複数の被圧入孔72は、回転軸90を中心として、周方向に等間隔に並んでいる。各被圧入孔72は、フランジ70を軸方向に貫通する。
【0033】
キャリア60は、回転軸90に対して垂直に配置された、円環状の部材である。キャリア60は、第1外歯歯車21と第2外歯歯車22との軸方向の間に配置されている。そして、キャリア60と入力シャフト11との径方向の間には、キャリア軸受33が介在する。これにより、キャリア60は、入力シャフト11に対して、相対的に回転自在に支持される。
【0034】
本実施形態のキャリア軸受33には、球体を介して外歯歯車20と偏心体13とを回転させるボールベアリングが、使用されている。また、本実施形態では、キャリア軸受33の内周面は、偏心体軸受30の内周面よりも、径方向外側に位置する。これにより、キャリア軸受33を軸方向から容易に組み込むことができる。その結果、歯車減速機を容易に組立てることができる。
【0035】
図1および
図4に示すように、本実施形態のキャリア60は、複数のキャリアピン50を挿入するための、複数(本実施形態では8つ)の固定用孔61が設けられている。複数の固定用孔61は、回転軸90を中心として、周方向に等間隔に並んでいる。固定用孔61は、キャリア60を軸方向に貫通する。
【0036】
複数のキャリアピン50は、第1外歯歯車21および第2外歯歯車22の複数のピン孔25を貫通して、軸方向に延びる円柱状の部材である。
図2に示すように、各ピン孔25を構成する面と、キャリアピン50の外周面との間には、隙間54が介在する。第1外歯歯車21および第2外歯歯車22が減速後の第2回転数で自転すると、当該動力が隙間54を介して各キャリアピン50に伝達する。
【0037】
複数のキャリアピン50の軸方向後方の端部は、フランジ70の被圧入孔72に挿入される。また、複数のキャリアピン50は、キャリア60の固定用孔61に圧入されることで、キャリア60とも固定される。このため、複数のキャリアピン50、フランジ70、キャリア60、および出力シャフト12は、回転軸90を中心として、第2回転数で回転する。なお、キャリア60および複数のキャリアピン50は、別部材であってもよく、単一部材であってもよい。キャリア60および複数のキャリアピン50が単一部材であれば、歯車減速機を構成するための部品点数を低減することができる。
【0038】
このように、本実施形態のキャリアピン50は、キャリア60およびフランジ70に固定される。すなわち、複数のキャリアピン50は、第1外歯歯車21および第2外歯歯車22の間に配置されるキャリア60によって支持される。このため、外歯歯車20の回転運動に伴いキャリアピン50に作用するモーメントを低減でき、キャリアピン50の撓みを抑制できる。その結果、外歯歯車の揺動運動を安定化でき、歯車減速機の効率の低下や、動作時のガタツキ、キャリアピンの磨耗等を抑えることができる。
【0039】
特に、歯車減速機1の軽量化を考慮して、キャリアピン50を軽量な材料により構成する場合、キャリアピン50の剛性が低下することが想定される。しかしながら、本実施形態の歯車減速機1では、キャリアピン50をキャリア60で支持することで、キャリアピン50に作用するモーメントを抑制できる。その結果、キャリアピン50に樹脂材料等の剛性の低い材料を適用でき、歯車減速機1の軽量化を実現することができる。
【0040】
<2.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。以下では、種々の変形例について、上記の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0041】
図5は、変形例に係る歯車減速機1Aを、回転軸90Aを含む平面で切断した縦断面図である。
図6は、
図5中のC−C位置から見た歯車減速機1Aの横断面図である。この歯車減速機1Aは、モータの駆動力により入力シャフト11Aに付与された第1回転数の回転運動を、第1回転数よりも低い第2回転数の回転運動に変換する、偏心揺動型の歯車減速機である。歯車減速機1Aは、蓋部42Aおよびモータ80Aをさらに有する。
【0042】
蓋部42Aは、円板部421Aと円環部422Aとを有する。円板部421Aは、内歯歯車40Aの軸方向前方側の端部付近から径方向内側に延びる。円板部421Aは、キャリアピン50Aおよび外歯歯車20Aの軸方向前面の少なくとも一部を覆う。円環部422Aは、円板部421Aの外周部から軸方向前方へ向けて、回転軸90を中心とする円筒状に延びる。
【0043】
モータ80Aは、ロータマグネット81Aおよび電機子82Aを有する。ロータマグネット81Aは、円板部421Aよりも軸方向前方で、入力シャフト11Aの径方向外側に配置される。本実施形態では、ロータマグネット81Aは入力シャフト11Aの外周面に固定された接続部811Aを介して、入力シャフト11Aに固定されている。ただし、ロータマグネット81Aは、入力シャフト11Aの外周面に直接固定されるものであってもよい。ロータマグネット81Aは、入力シャフト11Aとともに回転軸90Aを中心に回転する。
【0044】
電機子82Aは、円環部422Aの内周部に固定され、ロータマグネット81Aと径方向に重なる。モータ80Aの駆動時には、図示を省略した外部電源から、電機子82Aに駆動電流が供給される。これにより、電機子82Aに磁束が生じる。そして、電機子82Aとロータマグネット81Aとの間の磁束が及ぼす作用により、周方向のトルクが発生する。その結果、回転軸90Aを中心として入力シャフト11Aが第1回転数で回転する。このようにすれば、モータを歯車減速機に組み込むことができ、歯車減速機を小型化できる。
【0045】
なお、
図5のモータ80Aは、ロータマグネット81Aが電機子82Aの径方向の内側に配置された、いわゆるインナーロータ型のモータである。しかしながら、モータは、ロータマグネットが、電機子の径方向の外側に配置された、いわゆるアウターロータ側のモータであってもよい。この場合、電機子は円環部の外周部に固定され、ロータマグネットは、接続部を介して、電機子の径方向外側面と対向するように配置されればよい。
【0046】
また、
図5および
図6に示すように、本実施形態の複数のキャリアピン50Aは、外歯歯車20Aのピン孔25Aに固定されている。そして、第1外歯歯車21Aに固定されているキャリアピン50Aと、第2外歯歯車22Aに固定されているキャリアピン50Aとは、別部材となっている。これにより、キャリアピン50Aの軸方向の長さを抑えることができ、歯車減速機を軽量化することができる。なお、本実施形態の複数のキャリアピンおよび外歯歯車は、単一部材により構成されてもよい。これにより、部品点数を減らして、歯車減速機を小型化および軽量化できる。
【0047】
また、
図5に示すように、複数のキャリアピン50Aは、フランジ70Aを軸方向に貫通する貫通孔72Aおよびキャリア60Aを軸方向に貫通する貫通孔61Aの内部に、隙間54Aを介して配置される。このような構造であっても、歯車減速機を構成することができる。
【0048】
また、本実施形態の偏心体13Aは、複数の部材から構成される。そして、複数の偏心体13Aは、複数の外歯歯車20Aと、入力シャフト11Aとの径方向の間に各々配置される。このようにすれば、入力シャフト11Aと、外歯歯車20Aとの間にのみ、偏心体13Aを配置することができる。したがって、偏心体の軸方向の幅を低減できる。その結果、歯車減速機をより小型化および軽量化できる。
【0049】
図7は、他の変形例に係る歯車減速機1Bを、回転軸90Bを含む平面で切断した縦断面図である。この歯車減速機1Bは、入力軸11Cの回転運動を減速機1Cによって減速させて、第1回転数として入力シャフト11Bに伝達する複合減速機である。歯車減速機1Bは、入力軸11Cおよび減速機1Cをさらに有する。
【0050】
入力軸11Cは、入力シャフト11Bの前方に配置され、回転軸90Bに沿って延びる円柱状の部材である。入力軸11Cの軸方向前方の端部は、直接または他の動力伝達機構を介して、駆動源であるモータに接続される。モータを駆動させると、回転軸90Bを中心として入力軸11Cが回転する。
【0051】
減速機1Cは、入力軸11Cの回転運動を、ボール部材15Cの自転運動および公転運動に変換して、入力シャフト11Bに伝達する減速機である。ただし、減速機1Cは、内接遊星式等の他の方式を用いるものであってもよい。本実施形態の減速機1Cは、蓋部42C、ボール部材15C、固定リング16C、可動リング17C、ばね部材18C、およびキャリア部材19Cを有する。
【0052】
蓋部42Cは、円環部422Bの軸方向後端部付近から径方向内側に延びる部材である。減速機1Cの各構成部品および入力軸11Cの一部は、円環部422Bおよび蓋部42Cの内部に収容される。ボール部材15Cは、入力軸11Cの外周部に配置される球状部材である。ボール部材15Cは、入力軸11Cの外周部で、自転しつつ回転軸90Bを中心に公転する。
【0053】
固定リング16Cおよび可動リング17Cは、円環部422Bの内周部に配置された円環状の部材である。固定リング16Cは、円環部422Bの内周部に固定される。可動リング17Cは、固定リング16Cよりも軸方向前方に配置される。可動リング17Cは、軸方向に移動可能となっている。
【0054】
ばね部材18Cは、可動リング17Cを軸方向後方へ加圧する部材である。ばね部材18Cは、軸方向に伸縮する円環状の部材である。ばね部材18Cは、蓋部42Cと可動リング17Cとの間に、自然長よりも軸方向に圧縮された状態で配置される。このため、ばね部材18Cの反発力によって、可動リング17Cが、軸方向後方へ加圧される。固定リング16Cおよび可動リング17Cは、ボール部材15Cの外周面と接触する。このため、可動リング17Cが軸方向前方へ加圧されると、ボール部材15Cは径方向内側に向けて押圧力を受ける。
【0055】
キャリア部材19Cは、入力シャフト11Bと固定され、ボール部材15Cの公転に伴い、回転軸90Bを中心に回転する。ボール部材15Cが減速後の回転数で公転すると、それに伴い、キャリア部材19Cも、回転軸90を中心として、減速後の回転数で回転する。また、キャリア部材19Cが回転すると、キャリア部材19Cに固定された入力シャフト11Bも、回転軸90Bを中心として、減速後の回転数で回転する。これにより、入力軸11Cの回転運動は、入力軸11Cの回転数よりも低い回転数の回転運動に変換されて、第1回転数として入力シャフト11Bに出力される。このように、複合減速機を構成することで、歯車減速機の振動や騒音を低減することができる。
【0056】
また、上記の実施形態では、歯車減速機の有する外歯歯車の数は二つであった。しかしながら、歯車減速機の有する外歯歯車20の数は三つ以上であってもよい。そして、外歯歯車の数N1と、キャリアの数N2とは、N2=N1−1の関係を満たせばよい。これにより、外歯歯車の数が三つ以上ある場合であっても、キャリアピンを隣接する外歯歯車の間に配置されたキャリアによって支持できる。また、外歯歯車の数が三つ以上設けることで、キャリアピンに作用するモーメントをより小さくできる。なお、外歯歯車の数が三つ以上ある場合であっても、それぞれの外歯歯車の中心は、軸方向から見て、回転軸を中心とした回転対称となるように位置する。
【0057】
また、上記の実施形態では、各軸受には、ボールベアリングが使用されていた。しかしながら、各軸受には、ボールベアリングに代えて、すべり軸受や流体軸受等の他方式の軸受が、使用されていてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、出力部は出力シャフトにより構成されていた。しかしながら、出力部は、例えば、回転軸を中心に回転する円板部等であってもよく、出力シャフト以外によって構成されてもよい。
【0059】
また、歯車減速機の細部の形状については、本願の各図に示された形状と相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。