【解決手段】真空容器8と真空ポンプ9との間に配置され、操作流体により弁開度を調整する真空弁2において、ピストン25の凹溝26に装着されるパッキン27が、径方向内側に設けられた接触部271と、接触部271の径方向外側に設けられ、シリンダ20の内周面24に接する摺接部272とを有し、接触部271と摺接部272との間の肉厚が薄く設けられており、ピストン25が摺接部272を変形させながら動く場合に、摺接部272とシリンダ20との間に発生する摺動抵抗がゼロになり、操作流体の操作圧力に応じて弁開度を精密に調整できるようにする。
弁座を備えるボディと、前記弁座に当接又は離間する弁体と、前記ボディに連結され、操作流体が給排気されるシリンダと、前記シリンダに収容され、凹溝が前記シリンダの内周面側に開口するように環状に設けられたピストンと、環状に形成されて前記凹溝に装着されるパッキンと、前記ピストンと前記弁体とを連結するロッドとを備えており、真空容器と真空ポンプとの間に配置され、前記シリンダが前記操作流体を給排気されることにより前記ピストンに作用する操作圧力を制御され、前記弁体と前記弁座との間の距離である弁開度を調整する真空弁において、
前記パッキンは、
径方向内側に設けられた接触部と、
前記接触部の径方向外側に設けられた摺接部とを有し、
前記接触部と前記摺接部との間の肉厚が薄いこと、
前記ピストンが前記弁体の全閉から全開の位置に関わらず事前の移動方向に対して反対方向へ移動し始める場合に、前記摺接部が前記接触部に対して撓み変形すること
を特徴とする真空弁。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る真空弁及び真空圧力制御システムの実施形態について図面に基づいて説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る真空弁2の断面図である。
図7は、真空圧力制御システム1の概略構成図である。
図7に示す真空圧力制御システム1は、例えば半導体の蒸着プロセスを行う真空容器8の圧力を制御するのに使用される。真空圧力制御システム1は、真空容器8と真空ポンプ9との間に配置される真空弁2が、排気流量を微小制御した後、大流量制御することによって、真空容器8の圧力をパーティクルを巻き上げないように短時間で制御する。本実施形態は、主として、
図1に示す真空弁2のパッキン27により制御性の向上が図られ、
図7に示す真空圧力制御システム1の制御により真空弁2の応答性の向上が図られている。そこで、まず、真空弁2の概略構成、パッキン27の構成、真空弁2の動作、真空弁2の弁開度特性を調べる試験について説明し、真空弁2の特徴を明らかにする。その後、真空圧力制御システム1の全体構成、供給用電磁弁と排気用電磁弁の駆動方法、真空圧力制御システム1の動作、真空圧力制御システム1の分解能試験、真空圧力制御試験について説明し、真空圧力制御システム1の特徴を明らかにする。
【0026】
<真空弁の概略構成>
図1に示すように、真空弁2は、ボディ10にアクチュエータ38をボルトHで連結することにより外観が構成されている。真空弁2は、アクチュエータ38に供給される操作流体の操作圧力により弁開し、圧縮バネ33により弁閉状態に復帰する単動式のバルブである。
【0027】
ボディ10は、アクチュエータ38との間に弁室13が形成されている。ボディ10は、第1ポート形成部材11と第2ポート形成部材12が直交するように設けられ、第1ポート11aと第2ポート12aが弁室13を介して連通している。ボディ10には、第1ポート11aと弁室13が同軸上に設けられ、第1ポート11aと弁室13との間に設けられた弁孔10aの外周に沿って弁座14が平坦に形成されている。弁体15は、弁座14に当接又は離間するように弁室13に収容されている。
【0028】
アクチュエータ38は、ピストン25がシリンダ20に収容されている。シリンダ20は、筒状に設けられたシリンダ本体21の下端開口部がロッド保持部材22によって閉止されている。ロッド保持部材22は、ロッド30を支持するガイド部22aが弁室13内に突き出して配置されている。ロッド30の軸芯を出すために、ロッド30とガイド部22aとの間にシールパッキン36と軸受37が配置されている。このロッド30を介してピストン25と弁体15が連結されている。
【0029】
ピストン25は、略円柱形状をなし、ロッド30の上端部に結合されている。ピストン25は、ロッド30の上端部に円形の支持プレート252と、シール部材28と、取付リング253と、パッキン27と、ピストン本体251を積層配置し、第1取付ネジ31をロッド30の上端部に締結することにより組み立てられている。ピストン25の外周面25aには、凹溝26がシリンダ20の内周面24側に向かって開口するように環状に設けられ、この凹溝26に環状のパッキン27(後述)が装着されている。かかるピストン25によりシリンダ20のシリンダ室23が区画され、ピストン25の弁座側に操作室23aが形成されている。シリンダ20は、操作ポート34が連通路35を介して操作室23aに連通し、操作室23aに操作流体が給排気される。
【0030】
弁体15は、円板形をなし、ロッド30の下端部に結合されている。弁体15は、ロッド30の下端部にベローズ19の下端プレート19bと弾性シール部材18と保持プレート17とを積層配置し、第2取付ネジ32をロッド30の下端部に締結することにより組み立てられている。弾性シール部材18は、下端プレート19bと保持プレート17との間に環状に設けられたアリ溝16に弾性変形可能に収容されている。弾性シール部材18は、弁体15の弁座側に位置する端面から突出し、弁座14と弁体15との間で押し潰される。
【0031】
圧縮バネ33は、ロッド保持部材22の段差部22bと弁体15との間に縮設され、弾性シール部材18を弁座14にシールさせるシール荷重を弁体15に付与する。ベローズ19は、圧縮バネ33を覆うように弁室13内に伸縮可能に配置され、弁室13を流れる流体がアクチュエータ38側に漏れたり、圧縮バネ33が発生するパーティクルが弁室13を流れる流体に混入したりすることを防いでいる。
【0032】
<パッキンの構成について>
図2は、
図1のA部拡大断面図である。
図3は、パッキン27の平面図である。
図4は、
図3のB−B断面図である。尚、
図2及び
図4は、説明の便宜上、図中一点鎖線で示す第1変形姿勢D1と第2変形姿勢D2に示す摺接部272の変形や、第1肉厚W1と第2肉厚W3との差が強調して記載されている。
図3に示すように、パッキン27は、ゴム又は樹脂等の弾性材料を環状に成形したものである。
図3及び
図4に示すように、パッキン27は、径方向内側に接触部271が設けられ、径方向外側に摺接部272が設けられている。
【0033】
図4に示すパッキン27は、内周部271aの内径が凹溝26の底面26cの直径より小さく、先端部272aの外径がシリンダ20の内周面24の内径より大きくされており、内周部271aから先端部272aまでの平均幅寸法W4が、底面26cから内周面24までの平均距離W5(
図2参照)より若干大きく設けられている。そのため、パッキン27は、
図2に示すようにピストン25の凹溝26に装着された場合に、径方向に圧縮されてピストン25とシリンダ20との間をシールする。
【0034】
図4に示すように、接触部271の軸線方向の平均第2肉厚W3は、凹溝26の軸線方向の溝幅(上内側面26aと下内側面26bとの間の距離)W2(
図2参照)とほぼ同じにされている。そのため、パッキン27は、
図2に示すようにピストン25の凹溝26に装着された場合に、軸線方向にがたつきにくい。
【0035】
図4に示すように、摺接部272は、軸線方向の平均第1肉厚W1が接触部271の第2肉厚W3(
図2に示す凹溝26の溝幅W2)より小さくされている。そのため、
図2に示すように、パッキン27は、ピストン25とシリンダ20との間に配置された場合に、凹溝26の下内側面26bと摺接部272との間に第1隙間S1が形成され、凹溝26の上内側面26aと摺接部272との間に第2隙間S2が形成される。これにより、摺接部272は、
図2の第1及び第2変形姿勢D1,D2に示すように、凹溝26内で変形できる。パッキン27は、接触部271と摺接部272との間の肉厚が薄く、摺接部272が接触部271に対して軸線方向に撓むように変形しやすい。すなわち、パッキン27には、凹部272bが、摺接部272の上下に位置する端面のそれぞれに、摺接部272と接触部271との接続部分に沿って環状に設けられ、摺接部272と接触部271との間に肉厚の薄い薄肉部273が設けられている。しかも、接触部271は、切欠溝271bが内周部271aの図中上側と図中下側に環状に設けられている。そのため、ピストン25が動き始める際に、パッキン27が先端部272aをシリンダ20に接触させる位置を変えないように変形しやすい。
【0036】
ここで、摺接部272の軸線方向への最大変形量、すなわち、摺接部272が第1変形姿勢D1から第2変形姿勢D2まで変形する変形量は、弁体15が弾性シール部材18を弁座14にシールさせる弁閉位置と弁体15が弾性シール部材18を弁座14から離間させる位置との間の距離以上にされている。例えば、本実施形態では、弁体15が弁閉位置から約50μm上昇すると、弾性シール部材18が弁座14から離間し、パッキン27は、摺接部272の第1変形姿勢D1から第2変形姿勢D2までの変形量も約50μmにされている。これにより、真空弁2は、摺接部272を変形させながらピストン25が動く変形領域において、弾性シール部材18が弁座14と弁体15との間で押し潰される潰し量を調整できるようになる。
【0037】
<真空弁の動作について>
図1に示す真空弁2は、操作流体が操作室23aから排気されている場合には、ピストン25が反弁座方向に加圧されない。そのため、真空弁2は、弁体15が圧縮バネ33のシール荷重により弾性シール部材18を弁座14にシールさせ、弁閉状態になる。
【0038】
真空弁2は、操作ポート34に操作流体が供給されると、操作室23aの操作圧力が上昇し、ピストン25に反弁座方向の荷重が作用する。ピストン25は、操作室23aの操作圧力が圧縮バネ33のバネ力より大きくなると、反弁座方向へ動こうとする。
【0039】
図2に示すパッキン27は、接触部271が凹溝26に装着され、ピストン25と一体的に反弁座方向へ動こうとする。一方、パッキン27は、摺接部272がシリンダ20の内周面24に接しており、摺接部272の先端部272aとシリンダ20の内周面24との間に静止摩擦力が発生する。パッキン27は、接触部271と摺接部272との間の肉厚が凹部272b,272bによって薄くされているので、摺接部272の薄肉部273が接触部271に対して軸線方向に撓み変形できる。そのため、摺接部272とシリンダ20との間に静止摩擦力が発生していても、ピストン25は、反弁座方向に加圧されると直ぐに摺接部272の薄肉部273を変形させながら反弁座方向へ動き始めることができる。この間、パッキン27の摺接部272とシリンダ20の内周面24との間の摺動抵抗がゼロになる。よって、真空弁2は、ピストン25がパッキン27の摺接部272を変形させながら動く変形領域において、弁開度を操作流体の操作圧力に応じて応答性良く制御できるので、例えば第1従来例のベロフラムを備える真空弁と同様の低ヒステリシス・高応答性を実現でき、制御性が良い。また、真空弁2は、接触部271と摺接部272の間の肉厚を薄くしたパッキン27をピストン25の凹溝26に装着するだけの構造なので、ベロフラムを備える第1従来例の真空弁より、小型化且つ安価にできる。また、真空弁2は、ピストン25がパッキン27を変形させながら動く領域において、弁開度と操作圧力とがリニアな関係になり、操作圧力のみで弁開度を調整できるので、弁開度をフィードバック制御するためのセンサを必要とせず、小型且つ安価に制御性を向上させることができる。
【0040】
しかも、真空弁2は、接触部271が凹溝26の底面26cと接する内周部271aの両側に切欠溝271b,271bを形成されているので、摺接部272の薄肉部273が変形する際に接触部271も変形する。よって、真空弁2は、ピストン25が操作圧力に応じてパッキン27を変形させながら円滑に動き、制御性が良い。
【0041】
真空弁2は、
図2の第1変形姿勢D1に示すように、摺接部272が凹溝26の弁座側に位置する下内側面26bに当接して変形を制限されると、ピストン25が、摺接部272をシリンダ20の内周面24に摺接させながら反弁座方向へ動き、弁開度を大きくする。この場合、摺接部272とシリンダ20の内周面24との間に摺動抵抗が発生する。しかし、この摺動抵抗は、ピストン25と弁体15が反弁座方向に大きく動いている最中に発生するため、弁開度を調整する上で問題になりにくい。
【0042】
真空弁2を弁閉する場合には、操作室23aから操作流体が排気される。ピストン25は、操作室23aの操作圧力が降下すると、圧縮バネ33のバネ力により弁座側へ動き始める。このとき、ピストン25は、パッキン27が
図2に示す第1変形姿勢D1から第2変形姿勢D2に変形させるように弁座方向へ動いた後、摺接部272をシリンダ20に摺接させながら弁座方向へ移動する。真空弁2は、ピストン25が弁体15の弾性シール部材18を弁座14にシールさせることにより、弁閉する。
【0043】
次に弁開する場合には、真空弁2は、ピストン25が摺接部272を
図2の第2変形姿勢D2から第1変形姿勢D1に変形させながら、摺接部272をシリンダ20に摺接させながら反弁座方向に動く。よって、真空弁2は、弁を開き始めるときの摺接部272の変形領域が広く、操作室23aの操作圧力に応じて弁開度を精密に調整できる範囲が広くなる。また、真空弁2は、弁体15の弁閉から弁開の位置にかかわらず、事前の移動方向に対して反対方向へ移動し始める場合に、摺接部272が接触部271に対して撓み変形する。
【0044】
ここで、
図7に示すように真空容器8と真空ポンプ9との間に配置される真空弁2は、通常、排気開始時に、排気ガスを微小流量に制御し、真空容器8の圧力がパーティクルを巻き上げない程度まで減圧されると、排気ガスを大流量に制御する。よって、真空容器8内でパーティクルを巻き上げないように真空容器8の圧力を制御するために、真空弁2は、弁閉に近い微小な弁開度を精密に調整することが重要である。本実施形態の真空弁2は、
図1に示すように、弁閉時に弾性シール部材18を弁体15と弁座14との間で押し潰して弁座14にシールさせており、弾性シール部材18の潰し量を緩和することで、真空容器8(
図7参照)内のガスが弾性シール部材18と弁座14との間から漏れ、真空ポンプ9(
図7参照)側へ微小流量で流れる。
図1に示す真空弁2は、パッキン27の摺接部272が凹溝26の内部で軸線方向に変形する最大変形量が、弁体15が弾性シール部材18を弁座14にシールさせる弁閉位置と弁体15が弾性シール部材18を弁座14から離間させる位置との間の距離以上であるので、ピストン25がパッキン27とシリンダ20との間で摺動抵抗を発生させずに動く変形領域において、弾性シール部材18の潰し量を調整できる。よって、本実施形態の真空弁2によれば、ピストン25が摺接部272を変形させながら動く変形領域で、弾性シール部材18の潰し量を変化させる微小な弁開度を操作圧力により精密に調整でき、制御性が良い。
【0045】
<真空弁の弁開度特性を調べる試験について>
発明者らは、真空弁2の実施例と比較例について弁開度特性を調べる試験を行った。実施例は、阪上製作所株式会社製が製造・販売するPSDパッキン(商品名)をピストンの凹溝に装着した真空弁である。比較例は、断面が円形状のOリングパッキンをピストンの凹溝に装着した真空弁である。実施例と比較例は、PSDパッキンとOリングパッキンを除き、同様に構成されている。試験では、実施例と比較例について、操作圧力を変化させて弁開度を測定した。
【0046】
図5は、実施例の弁開度特性を調べた結果を示し、縦軸に弁体の弁開度(mm)を示し、横軸に操作圧力(kPa)を示す。実施例は、操作圧力が約0.5kPa以上1.5kPa以下の範囲B1で、弁開度が0mmから約50μmまでリニアに増加している。操作圧力が1.5kPaを超える範囲B2では、操作圧力が約0.5kPa増加する毎に弁開度が約0.1mm増加し、弁開度が操作圧力に対して階段状に変化する(スティックスリップ現象)。
【0047】
図6は、比較例の弁開度特性を調べた結果を示し、縦軸に弁体の弁開度(mm)を示し、横軸に操作圧力(kPa)を示す。操作圧力が2kPa以下の範囲C1では、弁体15の弁開度が0mmである。そして、比較例は、操作圧力が2kPaになると、弁開度が一気に0.2mm増加する。その後、操作圧力が2kPaを超える範囲C2では、操作圧力が約1kPa増加する毎に弁開度が約0.2mm増加し、弁開度が操作圧力に対して階段状に変化する(スティックスリップ現象)。
【0048】
よって、実施例は、
図5の範囲B1に示すように、弁を開き始めるときに操作圧力と弁開度が比例するので、操作圧力だけで弁開度を制御できるが、比較例は、
図6に示すように、操作圧力と弁開度が比例しないので、操作圧力だけで弁開度を制御できない。よって、実施例は、弁を開き始める時の制御性が比較例より優れている。これは、比較例は、ピストンの弁座側に位置する端面に作用する操作圧力が、Oリングとシリンダとの間に発生する最大静止摩擦力以上にならないと、ピストンが動き始めないのに対し、実施例は、ピストンの弁座側に位置する端面に作用する操作圧力が、摺接部とシリンダとの間に発生する最大静止摩擦力より小さくても、ピストンが操作圧力に応じて摺接部を撓み変形させながら動くことができるという違いに起因すると考えられる。
【0049】
また、実施例は、
図5の範囲B2に示すように、摺接部とシリンダとの間に摺動摩擦が発生する場合に、不感帯B3を発生するが、その不感帯B3は、
図6に示す比較例の不感帯C3より狭い。よって、実施例は、摺動抵抗を発生する領域でも、比較例より、操作圧力の変動に対する弁開度の応答性が高く、制御性が優れている。これは、実施例のパッキンは比較例のOリングより反発力が小さく、実施例の方が比較例より摺動抵抗が小さくなるためと考えられる。
【0050】
<真空圧力制御システムの全体構成について>
図7に示すように、真空圧力制御システム1は、上述した真空弁2と、電空レギュレータ3と、コントローラ4とを備える。
【0051】
真空弁2は、真空容器8と真空ポンプ9との間に配置され、真空容器8と真空ポンプ9を接続する流路Lの遮断や、真空容器8から真空ポンプ9へ流れる排気ガスの流量制御を行う。真空弁2の側面には電空レギュレータ3が取り付けられている。
【0052】
コントローラ4は、周知のマイクロコンピュータであって、電源5から外部電力を供給されて駆動する。コントローラ4は、上位装置6、パソコン7、真空容器8の圧力を測定する真空圧力センサ8a(真空圧力測定手段の一例)等に接続される。また、コントローラ4は、ケーブル46を介して電空レギュレータ3に接続されている。コントローラ4は、真空圧力センサ8aが測定した真空圧力測定値と、上位装置6又はパソコン7から入力した真空容器8の真空圧力設定値との偏差に基づいて電空レギュレータ3に印加すべき指令電圧(操作圧力設定値の一例)を計算し、電空レギュレータ3に出力する。よって、真空容器8の真空圧力はフィードバック制御される。
【0053】
図8は、電空レギュレータ3の回路図である。電空レギュレータ3は、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eと緊急排気弁3fと操作指令部3jと操作圧力センサ3k(操作圧力測定手段の一例)を備える。電空レギュレータ3は、操作指令部3jが、周知のデューティ制御方式によりコントローラ4から入力した指令電圧に応じて供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eの開動作を制御し、真空弁2に供給する操作圧力を制御する。
【0054】
電空レギュレータ3は、第1ポート3aと第2ポート3bと第3ポート3cを備える。第1ポート3aは、操作流体を供給する供給源に接続される。第2ポート3bは大気開放される。第3ポート3cは真空弁2の操作ポート34(
図1参照)に接続される。
【0055】
図8に示すように、第1ポート3aと第2ポート3bとの間には、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eが直列に配置され、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eとの間に第3ポー3cが連通している。これにより、電空レギュレータ3は、供給用電磁弁3dが開き、排気用電磁弁3eを閉じることにより、第1ポート3aと第3ポート3cが連通する。また、電空レギュレータ3は、排気用電磁弁3eが開き、供給用電磁弁3dを閉じることにより、第3ポート3cと第2ポート3bが連通する。緊急排気弁3fは、緊急時に排気流量を増加させて真空弁2を瞬時に弁閉するために、排気用電磁弁3eに対して並列に設けられている。
【0056】
操作圧力センサ3kは、第3ポート3cに接続している。第3ポート3cは真空弁2の操作室23aに連通しており、操作圧力センサ3kは、真空弁2の現在の操作圧力を測定して操作圧力検出電圧(操作圧力測定値の一例)を出力する。
【0057】
操作指令部3jは、減算器3gと偏差増幅回路3hとPWM回路3iを備える。減算器3gは、コントローラ4から入力した指令電圧と、操作圧力センサ3kから入力した操作圧力検出電圧との偏差を求める。偏差増幅回路3hは、減算器3gから入力した偏差を増幅する。PWM回路3iは、偏差増幅回路3hで増幅された偏差に基づいて供給用電磁弁3dの開時間を制御する第1パルス信号と排気用電磁弁3eの開時間を制御する第2パルス信号とを生成し、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eにそれぞれ出力する。PWM回路3iは、140kHz以上170kHz以下の周波数で第1及び第2パルス信号を出力し、操作圧力を細かく制御する。
【0058】
かかる電空レギュレータ3は、供給用電磁弁3dの開時間を長くし、排気用電磁弁3eの開時間を短くすることによって、真空弁2に設けられた操作室23a(
図1参照)の操作圧力を上昇させ、真空弁2の弁開度を大きくすることができる。また、電空レギュレータ3は、供給用電磁弁3dの開時間を短くし、排気用電磁弁3eの開時間を長くすることによって、真空弁2に設けられた操作室23a(
図1参照)の操作圧力を降下させ、真空弁2の弁開度を小さくすることができる。
【0059】
<供給用電磁弁と排気用電磁弁の駆動方法について>
真空圧力制御システム1では、操作指令部3jが微小偏差制御と、供給開始制御と、安定制御により供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eを駆動させる。
【0060】
図9は、
図7に示す真空圧力制御システム1における微小偏差制御を示す模式図である。微小偏差制御とは、真空弁2の弁開度を微小増加させるように、供給用電磁弁3dを短い開時間T2で開閉し、排気用電磁弁3eを弁閉する制御をいう。
【0061】
図10は、
図7に示す真空圧力制御システム1における供給開始制御を示す模式図である。供給開始制御とは、真空弁2の弁開度を大増加させるように、供給用電磁弁3dを長い開時間T4で弁開し、排気用電磁弁3eを弁閉する制御をいう。
【0062】
図11は、
図7に示す真空圧力制御システム1における安定制御を示す模式図である。安定制御とは、真空弁2の弁開度を維持するために、真空圧力測定値と真空圧力設定値との偏差がない状態で、電空レギュレータ3の供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eを微小パルスで同時に開閉させ続ける制御をいう。
【0063】
<真空圧力制御システムの動作について>
例えば、真空容器8の圧力を大気圧から真空圧力設定値(例えば10
-5Pa)まで減圧する場合、
図7に示す真空圧力制御システム1は、微小偏差制御を行うことにより、真空弁2を微小な弁開度で弁開させ、弾性シール部材18の潰し量を緩和させる。これにより、真空容器8のガスがパーティクルを巻き上げないように微小流量で排気され始める。
【0064】
微小偏差制御について本実施形態のものと従来のものとを比較しながら説明する。本実施形態の微小偏差制御は、従来の微小偏差制御と、第1及び第2パルス信号の周波数が相違する。すなわち、
図12に示す従来の微小偏差制御では、100Hzの周波数で供給用電磁弁3dを短時間弁開させ、排気用電磁弁3eを弁閉していた。これに対して、
図9に示す本実施形態の微小偏差制御では、140kHz以上170kHz以下の周波数で供給用電磁弁3dを短時間弁開する一方、排気用電磁弁3eを弁閉する。つまり、本実施形態の真空圧力制御システム1は、従来の約1.5倍の周波数で供給用電磁弁3dを弁開する。そのため、
図9に示す本実施形態の第1パルス信号の周期T1が、
図12に示す従来の第1パルス信号の周期T11より短く、本実施形態の微小偏差制御の方が従来の微小偏差制御より真空弁2の操作圧力を細かく調整できる。本実施形態の真空弁2は、パッキン27の摺接部272を変形させながらピストン25が動く変形領域で操作圧力が細かく制御されるので、分解能が小さくなる。よって、本実施形態の真空圧力制御システム1によれば、コントローラ4が電空レギュレータ3に出力する指令電圧に応じて、真空弁2の弁開度を応答性良く調整できる。また、
図9に示す本実施形態の微小偏差制御は、周期T1が
図12に示す従来の微小偏差制御の周期T11より短いので、開時間T2が
図12に示す従来の開時間T12と同じでも、真空弁2の操作圧力を素早く操作圧力設定値に制御し、弁開度を微小調整できる。
【0065】
真空圧力制御システム1は、操作圧力センサ3kが検出する操作圧力が設定圧力に達すると、微小偏差制御状態から安定制御状態になり、弁開度を維持する。これにより、真空容器8は、ガスが微小流量で排気され、内部圧力がパーティクルを巻き上げないようにゆっくり降下する。
【0066】
安定制御について本実施形態のものと従来のものとを比較しながら説明する。本実施形態の安定制御は、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eの駆動方法が従来の安定制御と相違する。すなわち、
図13に示す従来の安定制御では、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eとを弁閉していた。そのため、従来の安定制御では、例えば、真空容器8の真空圧力が外乱により僅かに変動し、真空圧力の実測値と真空圧力の目標値との偏差が無い状態からある状態になり、コントローラ4の指令電圧が変化した場合に、供給用電磁弁3d(排気用電磁弁3e)が動き出すのに時間がかかる。そのため、従来の真空圧力制御システムでは、指令電圧に追従して真空弁2の弁開度を調整するのが困難だった。これに対して、
図11に示す本実施形態の安定制御では、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eを同時に弁開する第1及び第2パルス信号を、操作指令部3jが供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eのそれぞれに微小パルスを出力し続ける。そのため、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eは、同じ周期T5,T7で同じ開時間T6,T8ずつ微小に弁が開閉される。これにより、真空弁2は、供給用電磁弁3dによる供給流量と排気用電磁弁3eによる排気流量とが相殺され、操作室23aの操作圧力が維持される。これによれば、例えば、真空容器8の真空圧力が外乱により僅かに変動し、真空圧力の実測値と真空圧力の目標値との偏差が無い状態からある状態になり、コントローラ4の指令電圧が変化した場合に、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eが直ちに指令電圧に従って開時間を調整される。そのため、本実施形態の真空圧力制御システム1は、指令電圧に追従して真空弁2の弁開度を調整できる。よって、本実施形態の真空圧力制御システム1は、従来と比べ、応答性の分解能が向上した状態で真空弁2の弁開度を調整できる。
【0067】
その後、例えば、真空容器8の圧力がパーティクルを巻き上げにくい低真空(例えば10
-3Pa)まで降下すると、真空圧力制御システム1は、供給開始制御を行う。この場合、電空レギュレータ3は、操作指令部3jが140kHz以上170kHz以下の周波数で供給用電磁弁3dに第1パルス信号を出力する。つまり、操作指令部3jは、
図10に示す第1パルス信号の周期T3が
図9に示す微小偏差制御の第1パルス信号の周期T1と同じで、
図10に示す開時間T4が
図9に示す微小偏差制御の開時間T2より長くされる。このとき、排気用電磁弁3eは、弁閉されている。これにより、真空弁2は、操作圧力が上昇し、弁開度が大きくなる。そのため、真空容器8は、ガスの排気流量が増加し、真空圧力設定値(例えば10
-5Pa)まで短時間で減圧される。
【0068】
尚、従来の真空圧力制御システムは、本実施形態の真空圧力制御システム1と同様に供給用電磁弁の開時間を長くして真空弁の弁開度を大きくするが、第1及び第2パルス信号の周波数が本実施形態より低い(例えば100kHz)。よって、本実施形態の真空圧力制御システム1は、従来と比べ、短時間で操作圧力を操作圧力設定値に制御し、弁開度を大きくできる。
【0069】
ここで、真空容器8はパーティクルを巻き上げない程度まで十分に減圧されているので、真空圧力制御システム1は、真空容器8から大流量排気する場合、真空容器8から微小排気する場合と比べ、真空弁2の弁開度を精密に制御する必要がない。そのため、真空弁2は、弁開度を大変位させる場合に摺動抵抗が発生しても、その摺動抵抗が真空容器8の圧力制御の問題にならない。
【0070】
その後、真空容器8の圧力が真空圧力設定値(例えば10
-5Pa)に達すると、真空圧力制御システム1のコントローラ4が真空弁2を弁閉するための指令電圧を出力する。電空レギュレータ3の操作指令部3jは、供給用電磁弁3dを弁閉し、排気用電磁弁3eを弁開する第1及び第2パルス信号を生成して、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eに出力する。これにより、電空レギュレータ3は、第2ポート3bと第3ポート3cが導通し、真空弁2の操作室23aから操作流体を大気に排出する。真空弁2は、操作室23aの圧力低下に従って圧縮バネ33のバネ力により弁体15がピストン25と一体的に弁座方向に押し下げられる。そして、真空弁2は、圧縮バネ33のシール荷重により弁体15の弾性シール部材18が弁座14に密着し、弁閉状態に戻る。その後、真空容器8で蒸着プロセスが完了すると、真空圧力制御システム1は、上記と同様にして真空容器8のガスを排気して真空容器8の圧力を制御する。
【0071】
<真空圧力制御システムの分解能試験について>
発明者らは、真空圧力制御システム1の実施例について分解能を調べる試験を行った。実施例は、阪上製作所株式会社が製造・販売するPSDパッキン(商品名)をピストンの凹溝に装着した単動式の真空弁を使用した。
【0072】
試験では、コントローラ4が出力する弁開動作用の指令電圧(V)を増加させることにより、操作圧力を上昇させ、リニアゲージにより真空弁2の弁開度を測定した。また、コントローラ4が出力する弁閉動作用の指令電圧(V)を増加させることにより、操作圧力を降下させ、リニアゲージにより真空弁2の弁開度を測定した。
図14は、
図7に示す真空圧力制御システム1の実施例に関する分解能試験の結果であって、変形領域E1を示す。
図15は、
図7に示す真空圧力制御システム1の実施例に関する分解能試験の結果であって、変形領域E1の一部と摺動領域E2を示す。
図14及び
図15は、共に、縦軸に弁開度(mm)を示し、横軸に指令電圧(V)を示す。尚、
図14は、弁開方向と弁閉方向の両方を示すが、
図15は、弁開方向のみを示す。
【0073】
図14に示すように、PSDパッキンを歪ませながら真空弁2が動作する変形領域(歪み範囲)E1内で弁開動作と弁閉動作を行う場合は、弁開方向でも弁閉方向でも、指令電圧と弁開度とがリニアな関係になり、弁開度変化の分解能が向上する。
【0074】
一方、
図15に示すように、PSDパッキンをシリンダに摺動させる摺動領域E2で真空弁が動作する場合は、PSDパッキンとシリンダの内周面との間に生じる摺動抵抗により、弁開度が指令電圧に対して階段状に変化する(スティックスリップ現象)。よって、摺動領域E2の分解能は変形領域E1の分解能より大きい。
【0075】
尚、Oリングパッキンをピストンの凹溝に装着した真空弁を使用する真空圧力制御システムは、真空弁の弁開度調整時に常に摺動抵抗を発生するので、
図15に示す摺動領域E2と同じようなスティックスリップ現象が発生し、分解能が大きくなる。
【0076】
よって、PSDパッキンを使用する真空弁は、変形領域E1における分解能が小さいので、弁閉に近い微小な弁開度を操作圧力により細かく制御できる。
【0077】
<真空圧力制御試験について>
発明者らは、本実施形態の真空圧力制御システムの実施例と比較例に関する真空圧力制御試験を行った。試験装置は、上流側から順にレギュレータ、マスフローコントローラ、開閉弁、タンク、電空レギュレータ付き真空弁、真空ポンプを直列に接続した。そして、タンクの圧力を測定する圧力センサと真空弁の電空レギュレータにコントローラを接続した。
【0078】
実施例は、阪上製作所株式会社が製造・製売するPSDパッキンをピストンに装着した真空弁を使用する。真空弁のオリフィス径は直径25mmとする。一方、比較例は、断面円形状のOリングパッキンをピストンに到着した真空弁を使用する。比較例の真空弁は、Oリングパッキン以外は実施例の真空弁と同様に構成されている。
【0079】
試験では、PID制御によりタンクの圧力を25Paから85Paに昇圧制御した。PID制御のパラメータは、ステップ応答法により、オーバーシュートを極力無くした最適波形になるよう調整した。具体的には、実施例は、比例制御パラメータを1.6、微分制御パラメータを0.07、積分制御パラメータを0.02とした。一方、比較例は、比例制御パラメータを0.4、微分制御パラメータを0.07、積分制御パラメータを0.0とした。
【0080】
真空圧力制御試験の結果を、
図16及び
図17に示す。
図16は、
図7に示す真空圧力制御システムの実施例に関する真空圧力制御試験の結果を示すグラフである。
図17は、
図7に示す真空圧力制御システムの比較例に関する真空圧力制御試験の結果を示すグラフである。
図16及び
図17は、左側縦軸にはタンクの圧力(Pa)を示し、右側縦軸には指令電圧(V)を示し、横軸には時間(sec)を示す。そして、
図16及び
図17は、図中実線がタンク圧力の変動を示す圧力波形を示し、図中点線が指令電圧の変動を示す指令波形を示す。
【0081】
図16のF1に示すように、実施例では、タンクの圧力が、オーバーシュートを発生することなく、25Paから85Paに到達した。そして、コントローラが電空レギュレータに弁開を指示する指令電圧を出力してからタンクの圧力が85Paに安定するまでの応答時間F2は、約3.5秒であった。
【0082】
図17のG1に示すように、比較例では、タンクの圧力が85Paに到達する付近で、オーバーシュートが発生した。そして、図中G3に示すように、指令波形には、オーバーシュートを収束させるために、発振(ハンチング)が発生した。コントローラが電空レギュレータに弁開を指示する指令電圧を出力してからタンクの圧力が85Paに安定するまでの応答時間G2は、約6秒であった。
【0083】
よって、実施例は、比較例と比べ、オーバーシュートが発生せず、応答時間F2が比較例の応答時間G2の60%に短縮できた。
【0084】
オーバーシュートを改善できた理由は、分解能の違いにあると考えられる。すなわち、比較例の真空弁は、Oリングパッキンをシリンダに摺接させながら弁開度を微小制御するため、分解能が大きい。よって、比較例は、指令電圧に応じて弁開度を精密に調整できず、真空圧力設定値(85Pa)付近でオーバーシュートが発生する。これに対して、実施例の真空弁は、パッキンの変形領域で摺動抵抗が発生しないので、分解能が小さい。よって、実施例は、指令電圧に応じて弁開度を精密に調整でき、オーバーシュートが発生しない。
【0085】
また、応答時間を短縮できた理由は、指令波形の違いにあると考えられる。すなわち、比較例は、
図17のG1に示すオーバーシュートをなくそうと、コントローラが応答性を上げるように指令電圧を調整しても、真空弁がその指令電圧に追従して弁開度を変化させることができないため、図中G3に示すように指令波形に発振(ハンチング)が発生し、応答時間が長くなる。これに対して、実施例は、指令電圧に追従して真空弁の弁開度を細やかに調整でき、オーバーシュートが発生しないので(
図16のF1参照)、指令波形にハンチングが発生せず、応答時間が短くなる。
【0086】
(第2実施形態)
続いて、本発明の真空弁及び真空圧力制御システムの第2実施形態について説明する。
図18は、本発明の第2実施形態に係る真空弁2Aのパッキン27A付近の拡大断面図である。
図13では、図面を見やすくするために、隙間S3やパッキン27Aの変形を誇張して記載している。真空弁2Aは、主に、パッキン27Aの形状が第1実施形態の真空弁2と相違する。そこで、ここでは、パッキン27Aを中心に説明し、第1実施形態と共通する構成には、図面と説明に第1実施形態と同じ符号を使用し、説明を適宜省略する。
【0087】
パッキン27Aは、摺接部272Aの第1肉厚W11と接触部271Aの第2肉厚W31が同じ寸法にされている。第1肉厚W11と第2肉厚W31は、凹溝26の溝幅W2より小さくされ、パッキン27Aが凹溝26に装着された場合に軸線方向(上下方向、又は、弁座方向と反弁座方向)に動く設計になっている。本実施形態では、第1肉厚W11と第2肉厚W31は、溝幅W2より0.2mm〜0.4mm程度小さくされている。真空弁2Aは、単動式シリンダ構造で使用される。そのため、パッキン27Aは、
図18に実線で記載するように、凹溝26の上内側面26aに押し付けられる。これにより、パッキン27Aは、凹溝26の軸線方向の中心位置より反弁座側(図中上側)にオフセットされ、凹溝26の下内側面26bとの間に隙間S3を形成する。この隙間S3の幅W41は、ピストン25が弾性シール部材18を弁座14にシールさせる位置から弾性シール部材18を弁座14から離間させる位置までの距離より大きい。本実施形態では、ピストン25が弾性シール部材18を弁座14にシールさせる位置から弾性シール部材18を弁座14から離間させる位置までの距離が5μm程度であるのに対し、隙間S3の幅W41は0.2mm〜0.4mm程度にされている。
【0088】
また、真空弁2Aは、第1実施形態のように圧縮バネ33をベローズ19内に配置せず、シリンダ20内に圧縮バネ41を配置している。圧縮バネ41は、ピストン25の反弁座側に縮設され、ピストン25を弁座方向に常時付勢する。そのため、真空弁2Aは、ピストン25が圧縮バネ41のバネ力と操作室23aの内圧とのバランスに応じてシリンダ20内を摺動することにより、弁開度を調整される。
【0089】
このような真空弁2Aは、例えば、真空容器8のガスを微小流量で排気させ始める場合、操作室23aに操作流体が供給される。操作室23aの内圧が圧縮バネ41のバネ力より大きくなると、ピストン25が反弁座方向(図中上方向)に加圧される。パッキン27Aは、操作室23aから隙間S3に流入した操作流体により上内側面26aに押し付けられ、ピストン25と一体的に反弁座方向(図中上方向)に移動しようとする。しかし、パッキン27Aは、摺接部272Aの先端部272aとシリンダ20の内周面24との間に静止摩擦力が発生する。パッキン27Aは、下内側面26bとの間に隙間S3が形成され、摺接部272Aが薄肉部273を介して接触部271Aに対して撓み変形できる(
図18の第3変形姿勢D3参照)。そのため、ピストン25は、反弁座方向に加圧されると直ぐに摺接部272Aを接触部271Aに対して撓み変形させながら反弁座方向(図中上方向)に動き始める(上昇し始める)。このような真空弁2Aは、ピストン25がパッキン27Aを変形させながら移動(上昇)する変形領域では、摺接部272Aとシリンダ20との間に発生する摺動抵抗がゼロであるので、第1実施形態と同様に弾性シール部材18の潰し量を操作圧力だけで精密に制御できる。よって、第2実施形態の真空弁2Aも、第1実施形態と同様に制御性を向上させることができる。また、真空弁2Aは、パッキン27Aを凹溝26に装着するだけの構造なので、第1実施形態と同様に小型且つ安価である。
【0090】
真空弁2Aは、真空容器8のガスを微小流量から大流量に切り換えて排気する場合、操作室23aの操作圧力が上昇する。ピストン25は、第3変形姿勢D3の摺接部272Aをシリンダ20に摺接させながら、弾性シール部材18を弁座14から離間させるように弁体15を反弁座方向に引き上げる。ピストン25は、摺動抵抗がゼロの状態で動き始めた後、摺動抵抗を発生しながら上昇するので、摺動抵抗が弁開度の調整に与える影響が小さい。
【0091】
真空容器8の真空圧力が真空圧力設定値になると、真空弁2Aは、操作室23aの操作流体が排気され、弁閉する。この場合、パッキン27Aは、摺接部272Aとシリンダ20との間に生じる静止摩擦力により、ピストン25の弁座方向への移動(下降)に従って摺接部272Aが
図18の実線に示すように変形し、接触部271Aと摺接部272Aが上内側面26aに押し付けられた状態に戻る。よって、真空弁2Aは、弁閉状態のときには、常に、パッキン27Aが上内側面26aに押し付けられた状態になり、弁開動作開始時の弁開度を安定して制御できる。
【0092】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
【0093】
例えば、接触部271は、断面T字形状に形成され、凹溝26の底面26cと上下内側面26a,26bに接するようにしても良い。また、接触部271と摺接部272を断面円形状に形成し、パッキン27の断面形状をだるま形状にしても良い。この場合、摺接部272の軸線方向の最大肉厚を凹溝26の軸線方向の溝幅W3より小さくし、摺接部272が接触部271に対して変形しやすくすると良い。
【0094】
コントローラ4は、各種パラメータの設定又は変更や真空弁2の弁開度調整をパソコン7から手動で行っても良い。
【0095】
コントローラ4は、電空レギュレータ3や上位装置6等と無線通信するようにしても良い。
【0096】
真空弁2は、複動式のバルブでも良い。