特開2017-215085(P2017-215085A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-215085(P2017-215085A)
(43)【公開日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】ターボ冷凍機及びその起動制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/053 20060101AFI20171110BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20171110BHJP
   F04D 27/00 20060101ALI20171110BHJP
【FI】
   F25B1/053 N
   F25B1/00 304W
   F04D27/00 101F
   F25B1/00 341Q
   F25B1/00 361C
   F25B1/00 371B
   F25B1/00 371C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-108510(P2016-108510)
(22)【出願日】2016年5月31日
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】末光 亮介
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 泰士
【テーマコード(参考)】
3H021
【Fターム(参考)】
3H021BA02
3H021BA05
3H021BA06
3H021DA01
3H021EA16
(57)【要約】
【課題】油タンク内のフォーミングをより確実に抑制することができるターボ冷凍機を提供する。
【解決手段】冷媒を圧縮するターボ圧縮機3と、ターボ圧縮機3によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器5と、凝縮器5から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁7と、膨張弁7によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器9と、ターボ圧縮機3に供給する潤滑油を貯留する油タンク17と、油タンク17と蒸発器9とを接続する均圧管23と、起動を制御する制御部とを備え、制御部は、起動時に、油タンク17内の潤滑油に溶け込んだ冷媒が溶け出す冷媒溶け出し量を演算し、所定時間当たりの冷媒溶け出し量が所定値を超えた場合に、IGV13の開動作を制限することで油タンク17内の圧力低下速度を減少させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮するターボ圧縮機と、
該ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、
該凝縮器から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁と、
該膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記ターボ圧縮機に供給する潤滑油を貯留する油タンクと、
該油タンクと前記蒸発器とを接続する均圧管と、
起動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、起動時に、前記油タンク内の前記潤滑油に溶け込んだ冷媒が溶け出す冷媒溶け出し量を演算し、所定時間当たりの冷媒溶け出し量が所定値を超えた場合に、前記油タンク内の圧力低下速度を減少させることを特徴とするターボ冷凍機。
【請求項2】
前記ターボ圧縮機は、該ターボ圧縮機が吸入する冷媒流量を制御する吸入冷媒制御手段を備え、
前記制御部は、前記吸入冷媒制御手段によって吸入冷媒流量を減少させることによって、前記油タンク内の圧力低下速度を減少させることを特徴とする請求項1に記載のターボ冷凍機。
【請求項3】
前記油タンクは、温度センサ及び圧力センサを備え、
前記制御部には、温度及び圧力と前記潤滑油に対する冷媒溶解量との関係を示した冷媒溶解量情報が格納され、
前記制御部は、前記温度センサから得られた油タンク温度と、前記圧力センサから得られた油タンク圧力と、前記冷媒溶解量情報とに基づいて、前記冷媒溶け出し量を演算することを特徴とする請求項1又は2に記載のターボ冷凍機。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定時間当たりの冷媒溶け出し量が所定値以下となった場合に、前記油タンク内の圧力低下速度を増加させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のターボ冷凍機。
【請求項5】
冷媒を圧縮するターボ圧縮機と、
該ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、
該凝縮器から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁と、
該膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記ターボ圧縮機に供給する潤滑油を貯留する油タンクと、
該油タンクと前記蒸発器とを接続する均圧管と、
を備えたターボ冷凍機の起動制御方法であって、
起動時に、前記油タンク内の前記潤滑油に溶け込んだ冷媒が溶け出す冷媒溶け出し量を演算し、所定時間当たりの冷媒溶け出し量が所定値を超えた場合に、前記油タンク内の圧力低下速度を減少させることを特徴とするターボ冷凍機の起動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ圧縮機に供給する潤滑油を貯留する油タンクを備えたターボ冷凍機及びその起動制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ターボ冷凍機に使用しているHFC冷媒は、GWP(Global Warming Potential:地球温暖化係数)が数百〜数千であり、環境への配慮からGWPが1桁のHFO冷媒への転換が必要である。これに対応するため、燃焼性のないHFO−1233zd(E)といった低圧冷媒をチラー用冷媒とすることがある。
ターボ冷凍機は、一般に、ターボ圧縮機に供給する潤滑油が貯留された油タンクを備えている。油タンクはターボ冷凍機の低圧側(蒸発器側)と均圧しているため、低圧冷媒を用いた場合、油タンク内の圧力が大気圧以下になると、ガス体積が大きくなる。つまり、低圧冷媒を用いた冷凍機では、油タンク内の潤滑油に溶け込んでいた同質量の冷媒が圧力低下して蒸発した場合、高圧冷媒を用いた冷媒機と比較して、蒸発する冷媒の体積が大きくなり、油タンクの潤滑油に泡立ちが生じるフォーミングが発生しやすくなる。特に、低圧側の圧力低下速度が大きい起動時は、油タンク内の潤滑油にフォーミングが発生しやすい。
【0003】
特許文献1には、ターボ圧縮機を起動させるときに、吸入容量制御部の開度を目標開度よりも小さな開度で起動した後、速やかに目標開度まで開けることで、目標開度未満である運転時間をできるだけ短くして冷媒の通過抵抗を小さくし、吸入容量制御部の下流側の圧力低下を抑制することによってフォーミングの発生を抑えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−186030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、同じ圧力低下速度でも圧力の値によって潤滑油に対する冷媒溶解量は異なるので、潤滑油からの冷媒溶け出し量は、油タンク内の圧力によって異なる。また、潤滑油に対する冷媒溶解量は温度にも依存する。したがって、油タンク内のフォーミングをより確実に抑制することが求められる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、油タンク内のフォーミングをより確実に抑制することができるターボ冷凍機及びその起動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のターボ冷凍機及びその起動制御方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるターボ冷凍機は、冷媒を圧縮するターボ圧縮機と、該ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、該凝縮器から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁と、該膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記ターボ圧縮機に供給する潤滑油を貯留する油タンクと、該油タンクと前記蒸発器とを接続する均圧管と、起動を制御する制御部とを備え、前記制御部は、起動時に、前記油タンク内の前記潤滑油に溶け込んだ冷媒が溶け出す冷媒溶け出し量を演算し、所定時間当たりの冷媒溶け出し量が所定値を超えた場合に、前記油タンク内の圧力低下速度を減少させることを特徴とする。
【0008】
起動時には、ターボ圧縮機が動作して蒸発器内の圧力が低下する。これに伴い、均圧管を介して接続された油タンク内の圧力も低下する。しかし、油タンク内の圧力低下速度が大きくなると、油タンク内の潤滑油に溶け込んだ冷媒が多く溶け出し、フォーミングが発生するおそれがある。
本発明では、起動時に、所定時間当たりの冷媒溶け出し量が所定値を超えた場合に、フォーミングが発生するおそれがあると判断し、油タンク内の圧力低下速度を減少させることとした。これにより、油タンク内のフォーミングを抑制して、油タンク内の油面低下を防ぎ、ターボ圧縮機の潤滑不良を回避することができる。また、油タンクの油面が低下することがないので、所定の油面を回復するために潤滑油を追加する必要がなく、コストの上昇を抑えることができる。
【0009】
さらに、本発明のターボ冷凍機では、前記ターボ圧縮機は、該ターボ圧縮機が吸入する冷媒流量を制御する吸入冷媒制御手段を備え、前記制御部は、前記吸入冷媒制御手段によって吸入冷媒流量を減少させることによって、前記油タンク内の圧力低下速度を減少させることを特徴とする。
【0010】
油タンク内の圧力低下速度を減少させるには、ターボ圧縮機に設けられた吸入冷媒制御手段を制御することが好ましい。具体的には、起動時に、吸入冷媒制御手段は冷媒流量が増大する開方向に制御されるが、圧力低下速度が所定値を超えた場合には、吸入冷媒制御手段の開方向の動作を制限する。例えば、吸入冷媒制御手段の開動作を一時的に停止するか、開動作の速度を減少させる。
吸入冷媒制御手段としては、ターボ圧縮機の羽根車の上流側に設けられたインレットガイドベーン(IGV)が挙げられる。
なお、ターボ圧縮機の回転数を減少させるか、膨張弁の開度を開方向に制御することによって、圧力低下速度を減少させることもできる。
【0011】
さらに、本発明のターボ冷凍機では、前記油タンクは、温度センサ及び圧力センサを備え、前記制御部には、温度及び圧力と前記潤滑油に対する冷媒溶解量との関係を示した冷媒溶解量情報が格納され、前記制御部は、前記温度センサから得られた油タンク温度と、前記圧力センサから得られた油タンク圧力と、前記冷媒溶解量情報とに基づいて、前記冷媒溶け出し量を演算することを特徴とする。
【0012】
潤滑油に対する冷媒熔解量は、圧力と温度に依存する。そこで、圧力及び温度と冷媒溶解量との関係を示した冷媒溶解量情報を制御部に備えておき、油タンクの温度センサ及び圧力センサからの計測結果に基づいて、冷媒溶け出し量を演算することとした。これにより、所定時間毎に冷媒溶け出し量を得ることができ、確実にフォーミングの発生を抑えることができる。
【0013】
さらに、本発明のターボ冷凍機では、前記制御部は、前記所定時間当たりの冷媒溶け出し量が所定値以下となった場合に、前記油タンク内の圧力低下速度を増加させることを特徴とする。
【0014】
所定時間当たりの冷媒溶け出し量が所定値以下となった場合には、フォーミングの発生の可能性が低いと判断し、油タンク内の圧力低下速度を増加させることとした。これにより、通常の起動シーケンスに復帰させることで起動を早めることができる。
【0015】
また、本発明のターボ冷凍機の起動制御方法は、冷媒を圧縮するターボ圧縮機と、該ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、該凝縮器から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁と、該膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記ターボ圧縮機に供給する潤滑油を貯留する油タンクと、該油タンクと前記蒸発器とを接続する均圧管とを備えたターボ冷凍機の起動制御方法であって、起動時に、前記油タンク内の前記潤滑油に溶け込んだ冷媒が溶け出す冷媒溶け出し量を演算し、所定時間当たりの冷媒溶け出し量が所定値を超えた場合に、前記油タンク内の圧力低下速度を減少させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
油タンク内の潤滑油について、所定時間当たりの冷媒溶け出し量が所定値を超えた場合に、油タンク内の圧力低下速度を減少させることとしたので、油タンクのフォーミングを確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るターボ冷凍機を示した概略構成図である。
図2】圧力及び温度と冷媒溶解量との関係を示したグラフである。
図3】ターボ冷凍機の起動時における冷媒溶け出し量の時間変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1に示されているように、ターボ冷凍機1は、冷媒を圧縮するターボ圧縮機3と、ターボ圧縮機3によって圧縮された高温高圧のガス冷媒を凝縮する凝縮器5と、凝縮器5から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁7と、膨張弁7によって膨張された液冷媒を蒸発させる蒸発器9とを備えている。
冷媒としては、HFO−1233zd(E)といった低圧冷媒が用いられている。
【0020】
ターボ圧縮機3は、遠心式圧縮機であり、インバータによって回転数制御された電動機11によって駆動されている。インバータは、制御部(図示せず)によってその出力が制御されている。ターボ圧縮機3の冷媒吸入口には、吸入冷媒流量を制御するインレットガイドベーン(吸入冷媒制御手段:以下「IGV」という。)13が設けられており、ターボ冷凍機1の容量制御が可能となっている。IGV13の開度制御は、制御部によって行われる。
【0021】
ターボ圧縮機3は、回転軸3b周りに回転する羽根車3aを備えている。回転軸3bには、増速歯車15を介して電動機11から回転動力が伝達される。回転軸3bは、軸受3cによって支持されている。
【0022】
凝縮器5は、シェルアンドチューブ型やプレート型等の熱交換器とされている。
凝縮器5には、冷媒を冷却するための冷却水が供給されるようになっている。凝縮器5に導かれる冷却水は、図示しない冷却塔や空気熱交換器において外部へと排熱された後に、再び凝縮器5へと導かれるようになっている。
【0023】
膨張弁7は、電動式とされており、制御部によって開度が任意に設定されるようになっている。
【0024】
蒸発器9は、シェルアンドチューブ型やプレート型等の熱交換器とされている。蒸発器9には、図示しない外部負荷へ供給される冷水が導かれるようになっている。冷水は、蒸発器9にて冷媒と熱交換することによって、定格温度(例えば7℃)まで冷却され、外部負荷へと送られる。
【0025】
ターボ圧縮機3の軸受3cや増速歯車15には、油タンク17から潤滑油が供給されるようになっている。潤滑油としては、例えば、粘度グレード100とされた鉱物油が用いられる。
油タンク17内には、図示しない油ポンプが設けられており、これにより、所定の流量にて油供給配管19を介して潤滑油が供給される。ターボ圧縮機3内で潤滑を終えた潤滑油は、油返送配管21を介して油タンク17内へと戻される。
【0026】
油タンク17と蒸発器9との間には、これらの間を連通する均圧管23が設けられており、油タンク17内の圧力と蒸発器9内の圧力が均圧されるようになっている。このようにし油タンク17内を低圧にすることで、潤滑油に対する冷媒溶け込み量を低く保つようになっている。
【0027】
油タンク17には、圧力センサ25と温度センサ27とが設けられている。圧力センサ25によって、油タンク17内の圧力を計測し、制御部へと計測結果を出力する。温度センサ27によって、油タンク17内の温度(具体的には潤滑油温度)を計測し、制御部へと計測結果を出力する。
【0028】
制御部は、ターボ冷凍機1の起動制御等のターボ冷凍機1の運転に関する制御を行い、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。
【0029】
制御部には、図2に示すような冷媒溶解量に関する冷媒溶解量情報が記憶領域に格納されている。なお、この冷媒溶解量情報の記述形式は、マップ形式でもよいし、近似式等を用いた関係式としてもよい。
【0030】
図2において、横軸は、潤滑油に対する冷媒の溶け込み量を示す冷媒溶解量であり、縦軸は圧力である。同図中に示された各曲線は、それぞれの温度における冷媒溶解量を示している。同図から分かるように、各曲線は上に凸の形状とされており、圧力が低いほど冷媒溶解量が小さく、また圧力が低い領域ほど冷媒溶解量の変化が大きい。さらに、同じ圧力で比較した場合、温度が高いほど冷媒溶解量が小さいことが分かる。
【0031】
制御部では、図2に示したような冷媒溶解量情報を用いて、各時刻における冷媒溶け出し量を演算する。ここで、冷媒溶け出し量とは、潤滑油に溶け込んでいた冷媒がガスとなり潤滑油から放出される量[重量%]を意味する。
【0032】
図2に例示されているように、温度センサ27で計測した油タンク17内の温度が40℃とされている場合、圧力センサ25で計測した10秒前の圧力P1から冷媒溶解量D1を得て、さらに圧力センサ25で計測した10秒後の圧力低下した圧力P2から冷媒溶解量D2を得た後に、これらの差分(D1−D2)から冷媒溶け出し量を演算する。このようにして、制御部では冷媒溶け出し量の演算が所定の時間間隔(図2の例では10秒間隔)で行われる。
【0033】
次に、上記構成のターボ冷凍機1の起動制御について説明する。
ターボ冷凍機1の起動前は、凝縮器5及び蒸発器9ともに環境温度近くの状態となっており、凝縮器5内の圧力と蒸発器9内の圧力は略同等となっている。この状態でターボ冷凍機1を起動すると、制御部の指令により、ターボ圧縮機3が回転し、IGV13を介して吸い込んだ冷媒がターボ圧縮機3から吐出される。ターボ圧縮機3から吐出された冷媒は、凝縮器5へと送られて、膨張弁7及び蒸発器9を通り再びターボ圧縮機3へと戻り循環する。ターボ圧縮機3は、制御部の指令によって徐々に昇速されていき、これに伴いIGV13も、全閉とされた状態から徐々に開方向に制御されていく。
【0034】
このようにターボ冷凍機1が起動すると、蒸発器9内の圧力が徐々に減少していく。これに伴い、蒸発器9と均圧管23で接続された油タンク17内の圧力も減少していく。油タンク17内の圧力は圧力センサ25によって計測されて制御部へと送られ、油タンク17内の温度は温度センサ27によって計測されて制御部へと送られる。
【0035】
制御部では、得られた油タンク17内の圧力及び温度から、図2を用いて説明したように、冷媒溶け出し量が所定時間(例えば10秒)ごとに演算される。図3には、冷媒溶け出し量を各時刻で演算してプロットした例が示されている。同図に示されているように、起動初期は圧力低下速度が大きいので、冷媒溶け出し量が上昇傾向にあり、その後は圧力低下速度が小さくなるので、冷媒溶け出し量が減少傾向にある。
【0036】
制御部は、所定時間当たりの冷媒溶け出し量が所定値を超えた場合、例えば30秒にわたって冷媒溶け出し量が所定値を超えた場合に、図3に「ベーン開制限開始」と示しているように、IGV13の開動作を停止するように制御する。なお、IGV13の開動作を停止する代わりに、IGV13の開動作の速度を減少させるようにしてもよい。これにより、油タンク17内の圧力低下速度が減少または0となり、油タンク17のフォーミングを未然に防止する。
【0037】
IGV13開度を制限する制御の開始タイミングは、予備試験等によって油タンク17内でフォーミングが発生する条件を得ておき、この条件に到達しない所定時間当たりの冷媒溶け出し量を得ておくことによって決められる。
【0038】
制御部は、IGV13の開度を制限した後に、冷媒溶け出し量が減少し、所定時間当たりの冷媒溶け出し量が所定値以下となった場合、例えば30秒にわたって冷媒溶け出し量が所定値以下となった場合に、図3に「ベーン開制限解除」と示しているように、IGV13の開動作を通常の速度で再び行うように制御する。これにより、通常の起動シーケンスに復帰することで、IGV13の開動作が進行し、ターボ冷凍機1の起動動作が行われる。
【0039】
以上の通り、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
ターボ冷凍機1の起動時に、所定時間当たりの冷媒溶け出し量が所定値を超えた場合に、フォーミングが発生するおそれがあると判断し、IGV13の開動作を制限することによって油タンク17内の圧力低下速度を減少させることとした。これにより、油タンク17内のフォーミングを抑制して、油タンク17内の油面低下を防ぎ、ターボ圧縮機3の潤滑不良を回避することができる。また、油タンク17の油面が低下することがないので、所定の油面を回復するために潤滑油を追加する必要がなく、コストの上昇を抑えることができる。
【0040】
潤滑油に対する冷媒熔解量は、圧力と温度に依存する。そこで、圧力及び温度と冷媒溶解量との冷媒溶解量情報を制御部に備えておき、油タンク17の圧力センサ25及び温度センサ27からの計測結果に基づいて、冷媒溶け出し量を演算することとした。これにより、所定時間毎に冷媒溶け出し量を得ることができ、確実にフォーミングの発生を抑えることができる。
【0041】
所定時間当たりの冷媒溶け出し量が所定値以下となった場合には、フォーミングの発生の可能性が低いと判断し、油タンク17内の圧力低下速度を増加させることとした。これにより、通常の起動シーケンスに復帰させることでターボ冷凍機1の起動を早めることができる。
【0042】
なお、上述した実施形態では、IGV13の開動作を制限することで油タンク17内の圧力低下速度を減少させることとしたが、これに代えて、あるいはIGV13の開動作制限に加えて、ターボ圧縮機3の回転数を減少させるか、膨張弁7の開度を開方向に制御することによって、圧力低下速度を減少させることとしても良い。
【0043】
また、低圧冷媒の一例としてHFO−1233zd(E)を挙げて説明したが、他の低圧冷媒にも本発明を適用することができ、また、油タンク内のフォーミングのおそれがある場合には高圧冷媒に対しても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ターボ冷凍機
3 ターボ圧縮機
3a 羽根車
3b 回転軸
3c 軸受
5 凝縮器
7 膨張弁
9 蒸発器
11 電動機
13 IGV(インレットガイドベーン:吸入冷媒制御手段)
15 増速歯車
17 油タンク
19 油供給配管
21 油返送配管
23 均圧管
25 圧力センサ
27 温度センサ
図1
図2
図3