【解決手段】センサ20Aは、リム12に取付可能な下側基板22と、下側基板22の上方に配置される上側基板26と、下側基板22の上面に取付けられる下側電極50と、下側電極50に対向して上側基板26の下面に取付けられる上側電極60とにより構成される電極対80と、電極対80の周囲に配置される基板スペーサ24とを備える。上側電極60及び下側電極50は感圧電極により構成される。基板スペーサ24は、上側基板26と下側基板22の間に配置される。センサ20Aは、下側電極50と上側電極60とが離間するように基板スペーサ24の内側に配置される電極スペーサ90A〜90Cを備える。電極対80の一方の縁部から電極スペーサ90Aまでの第1の距離及び電極対80の他方の縁部から電極スペーサ90Cまでの第2の距離の双方が、複数の電極間隔のいずれよりも短い。
前記3本以上の電極スペーサの少なくとも1本が前記第1の方向における前記電極対の一方の縁部から他方の縁部まで延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の感圧センサ。
前記3本以上の電極スペーサのすべてが前記電極対の前記第1の方向における一方の縁部から他方の縁部まで延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の感圧センサ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る把持検出装置の実施形態について
図1から
図18を参照して詳細に説明する。なお、
図1から
図18において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図18においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における把持検出装置1の構成を模式的に示す図である。
図1に示すように、把持検出装置1は、ステアリングホイール10のリム12に組み込まれた3つの感圧センサ20A,20B,20Cと、ステアリングホイール10のハブ14内に配置された把持検出部30と、それぞれの感圧センサ20A,20B,20Cと把持検出部30とを電気的に接続する接続配線部40とを備えている。それぞれの感圧センサ20A,20B,20Cは、ハブ14内の把持検出部30からステアリングホイール10のスポーク15の内部を通って延びる接続配線部40に接続される接続部21A,21B,21Cを有している。
【0016】
感圧センサ20Aは、リム12の左側の領域Hから上側の領域Jにわたって設けられており、感圧センサ20Bは、リム12の右側の領域Mから上側の領域Jにわたって設けられており、感圧センサ20Cは、リム12の下側の領域Kの部分に設けられている。以下では、これら3つの感圧センサ20A,20B,20Cのうち感圧センサ20Aを中心に説明するが、他の感圧センサ20B,20Cの構成は、以下に述べる感圧センサ20Aの構成と同様である。なお、感圧センサ20A,20B,20Cの位置や数は図示のものに限られるものではない。例えば、感圧センサの数を1つにしてもよく、あるいは2つにしてもよく、あるいは4つ以上にしてもよい。
【0017】
図2は、
図1のA−A線断面を模式的に示す図である。
図2における上側はリム12の表側(
図1の紙面表側)、下側はリム12の裏側(
図1の紙面裏側)を示している。
図2に示すように、リム12のコア16の外周面にはクッション材300が周設されている。感圧センサ20Aは、リム12のコア16の断面の外周面を略全面にわたり覆うようにこのようなクッション材300上に取り付けられている。なお、このようなクッション材300を例えばウレタンなどで構成してもよい。
【0018】
感圧センサ20Aの外周面上には、感圧センサ20Aによる凹凸を吸収してリム12の表面に凹凸が生じないようにするための緩衝材17が設けられている。この緩衝材17の外周面は、革などから構成されるスキン18により覆われており、運転者はこのスキン18の上からリム12を握って自動車を操縦する。
【0019】
図2に示すように、感圧センサ20Aは、クッション材300上に取り付けられた下側基板22と、下側基板22上に固定された基板スペーサ24と、基板スペーサ24上に固定された上側基板26と、下側基板22の上面に取り付けられた複数の下側電極50と、上側基板26の下面に取り付けられた複数の上側電極60と、互いに対向する下側電極50と上側電極60との間に配置される電極スペーサ90とを含んでいる。本実施形態において、互いに対向する下側電極50及び上側電極60は、電極スペーサ90により互いに離間されており、これらの下側電極50及び上側電極60により1つの電極対80が構成される。
【0020】
図3はリム12に組み込まれる前の感圧センサ20Aを示す平面図であり、
図4は底面図である。
図3及び
図4に示すように、上側基板26及び下側基板22は、同一の外形をしており、例えばポリイミドやポリエチレンテレフタート(PET)などの可撓性を有する樹脂から形成される。
図3及び
図4において、X方向(第1の方向)は、感圧センサ20Aをコア16の外周面に取り付けた際のリム12が延びる方向に垂直なリム断面(コア16の断面)の周方向R(
図2参照)に対応しており、Y方向(第2の方向)は、リム12(コア16)が延びる方向E(
図1参照)に対応している。以下、リム12(コア16)が延びる方向をリム延在方向E、リム断面の周方向をリム断面周方向Rということがある。
【0021】
図3に示すように、上側基板26は、Y方向に長い略矩形状の板材から構成されており、Y方向に沿って所定の間隔でX方向の両側に切り欠き70が形成されている。このような切り欠き70を形成することによって、上側基板26は、複数の略短冊状の基板片26AがY方向に連結された構造となっている。同様に、
図4に示すように、下側基板22は、Y方向に長い略矩形状の板材から構成されており、Y方向に沿って所定の間隔でX方向の両側に切り欠き71が形成されている。このような切り欠き71を形成することによって、下側基板22は、複数の略短冊状の基板片22AがY方向に連結された構造となっている。
【0022】
図5は
図3のB−B線断面図、
図6は
図5のC−C線断面図である。
図5及び
図6に示すように、上側基板26と下側基板22との間には基板スペーサ24が配置されている。ここで、
図7はこの基板スペーサ24の平面図である。
図7に示すように、基板スペーサ24は、上側基板26及び下側基板22と略同一の外形を有しており、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタート(PET)、又はポリエステルなどの可撓性に富んだ材料によって形成される。基板スペーサ24は、Y方向に長い略矩形状に形成されており、Y方向に沿って所定の間隔でX方向の両側に切り欠き72が形成されている。このような切り欠き72を形成することによって、基板スペーサ24は、複数の略短冊状の基板スペーサ片24AがY方向に連結された構造となっている。
【0023】
このように、感圧センサ20Aは、それぞれ略同一の外形を有する下側基板22と基板スペーサ24と上側基板26とが互いに重なった積層構造を有している。すなわち、
図5に示すように、下側基板22の上に基板スペーサ24が配置され、基板スペーサ24の上に上側基板26が配置された積層構造を有している。
【0024】
図8は、感圧センサ20Aをリム12のコア16に取り付けた状態を示す平面図であり、感圧センサ20Aがスキン18(
図2参照)で覆われる前の状態を示す図である。
図2及び
図8に示すように、感圧センサ20Aをリム12に取り付ける際には、これら可撓性に富んだ下側基板22、基板スペーサ24、及び上側基板26が、リム延在方向E及びリム断面周方向Rに対応して柔軟に変形する。
【0025】
ここで、
図5に示すように、下側基板22の1つの基板片22A、その上に配置された基板スペーサ片24A、この基板片22Aに形成された下側電極50、この基板スペーサ片24Aの上に配置された上側基板26の基板片26A、この基板片26Aに形成された上側電極60、及び下側電極50と上側電極60との間に配置された電極スペーサ90を1つのまとまりとして電極ユニット75ということとする。本実施形態において、それぞれの電極ユニット75はX方向に沿って配置された2つの電極対80を有している。そして、
図6に示すように、それぞれの電極対80に対して3本の電極スペーサ90A,90B,90Cが形成される。感圧センサ20Aは、このような複数の電極ユニット75(本実施形態では15個)がY方向に連結された構造を有している(
図3及び
図4参照)。
【0026】
なお、本実施形態において、電極ユニット75は2つの電極対80を含んでいるが(
図5参照)、これに限られるものでなく、電極ユニット75が電極対を1つだけ含んでいてもよいし、あるいは電極対を3つ以上含んでいてもよい。また、本実施形態において、感圧センサ20AはY方向に15個の電極ユニット75が連結した構造を有しているが(
図3及び
図4参照)、電極ユニットの数は適宜変更できることはいうまでもない。
【0027】
図7に示すように、基板スペーサ24のそれぞれの基板スペーサ片24Aには、上側電極60及び下側電極50に対応して、2つの貫通孔25,25がX方向に沿って所定の間隔で形成されている。このような貫通孔25によって、各々の基板スペーサ片24Aには、X方向に延びる第1の部分24BとY方向に延びる第2の部分24Cとが形成される。
【0028】
図5及び
図6に示すように、この貫通孔25の内部には、互いに対向する下側電極50及び上側電極60(すなわち電極対80)が収容されている。より具体的には、各々の電極対80を構成する上側電極60及び下側電極50は、略長方形の同一の外形に形成されており、貫通孔25より少し小さな寸法を有している。このような構成により、電極対80を形成する下側電極50及び上側電極60が、互いに全面的に対向した状態で貫通孔25内に収容される。すなわち、それぞれの電極対80は、周囲を基板スペーサ片24Aの第1の部分24B及び第2の部分24Cに包囲された状態で貫通孔25内に収容されている。なお、本実施形態では、電極ユニット75を構成する電極対80が2つであることに対応して基板スペーサ片24Aに2つの貫通孔25が形成されているが、電極ユニット75を構成する電極対の数に応じて貫通孔25の数を変更し得ることはいうまでもない。
【0029】
このように、可撓性に富んだ材料からなる基板スペーサ24が、電極対80の周囲を囲むように電極ユニット75の縁部全体に渡って設けられているため(
図5から
図7参照)、リム12に感圧センサ20Aを取り付けた際には、基板スペーサ24がリム延在方向E及びリム断面周方向Rに沿って柔軟に変形して下側基板22と上側基板26との間に介在する(
図2及び
図8参照)。これにより、下側基板22と上側基板26とが意図せず接触してしまうことが防止される。
【0030】
図9は
図5のD−D線断面図、
図10は
図5のE−E線断面図である。
図9及び
図10に示すように、電極対80の周囲を囲む基板スペーサ24の内側には、上側電極60及び下側電極50(電極対80)のX方向に延びる細長い3本の電極スペーサ90A〜90Cが形成されている。これら電極スペーサ90A〜90Cは、Y方向における幅がX方向における長さに比べて極めて短い、概して直線状のスペーサとして形成されており、それぞれが、電極対80のX方向における一方の縁部から他方の縁部に渡ってX方向に沿って延びている。そして、
図6に示すように、このような電極スペーサ90A〜90Cが、下側電極50の上面50Aと上側電極60の下面60Aとを連結している。
【0031】
図9及び
図10に示すように、電極対80の−Y方向側の縁部近傍に電極スペーサ90Aが形成されており、+Y方向側の縁部近傍に電極スペーサ90Cが形成されており、Y方向の中央部近傍に電極スペーサ90Bが形成されている。より具体的には、−Y方向における縁部からの距離(第1の距離)がL1となる位置に電極スペーサ90Aが形成されており、+Y方向における縁部からの距離(第2の距離)がL1となる位置に電極スペーサ90Cが形成されており、電極スペーサ90A及び電極スペーサ90Cのそれぞれからの電極間隔がW1となる位置に電極スペーサ90Bが形成されている。
【0032】
また、
図9及び
図10に示すように、距離L1は電極間隔W1よりも短くなっている。すなわち、上述の第1の距離及び第2の距離の双方が、互いに隣接する電極スペーサの間(本実施形態では、電極スペーサ90Aと電極スペーサ90Bとの間及び電極スペーサ90Bと電極スペーサ90Cとの間)に形成される複数の電極間隔のいずれよりも短くなるように、3本の電極スペーサ90A〜90Cが電極対80の下側電極50と上側電極60との間に形成されている。
【0033】
ところで、本実施形態における下側電極50及び上側電極60は、押圧される力によって抵抗値が変化する感圧電極として構成されており、例えば銀をカーボンなどの感圧材料でコーティングすることにより形成される。このような感圧電極は、対向する2つの電極が接触したか否かのみを検出する接触型のセンサと異なり、抵抗値の変化により押圧される力を検出することができるため、それぞれの電極の面積を大きくすることができる。また、
図8に示すように、感圧センサ20Aをリム延在方向Eに沿って巻き付けた際には、互いに隣接する電極ユニット75間に切り欠き70,71,72が形成されていることにより、リム延在方向Eにおいて互いに隣接する電極ユニット75同士が重なり合うことが防止される。このような構成により、感圧センサ20Aがコア16の外周面を覆う面積を無駄なく拡げることができる。すなわち、本実施形態によれば、感圧センサ20Aによって覆われるリム12の部分が無駄なく拡がるため、センサの検出範囲を効率的に拡げることができる。
【0034】
一方で、電極の面積を大きくすると、感圧センサをリム12に取り付けた際に、電極対がリム断面周方向Rに沿って大きく曲がるため、上側電極が下側電極に意図せず接触してしまうおそれがある(
図2参照)。上側電極が下側電極に意図せず接触した状態では、運転者がリム12を把持していない場合であっても、電極対80が常に導通した状態となるため、把持検出部30による正確な把持検出ができない。
【0035】
この点、感圧センサ20Aによれば、下側電極50と上側電極60との間に3本の電極スペーサ90A〜90Cが形成されており、これら電極スペーサ90A〜90Cのすべてが電極対80の+X方向の縁部から−X方向の縁部に渡って形成されているため、上側電極60は、X方向の全長に渡って電極スペーサ90A〜90Cによって下方からしっかりと支持された状態となっている。したがって、
図2に示すように感圧センサ20Aがリム断面周方向Rに沿って曲げられた場合でも、下側電極60と上側電極50とが意図せず接触してしまうことが抑制される。
【0036】
しかしながら、
図8に示すように、感圧センサ20Aをリム延在方向Eに沿ってリム12に巻き付けていくと、リム延在方向Eに対して感圧センサ20Aが引っ張られ、これに伴い基板スペーサ片24Aの第1の部分24B(
図7参照)がリム延在方向Eに対して引っ張られてしまうことにより、この基板スペーサ片24Aの第1の部分24Bが潰れるように変形してしまう。その結果、各々の電極対80のリム延在方向Eにおける(
図6に示すY方向における)縁部近傍において、下側電極50と上側電極60とが近接し、場合によっては意図せず接触してしまうおそれがある。
【0037】
発明者らは、上記問題を発見し、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、以下の知見を得た。すなわち、電極対80の間に3本以上の電極スペーサ(例えば、電極スペーサ90A〜90C)を形成する。そして、電極対80の−Y方向の縁部に隣接する電極スペーサ(例えば、電極スペーサ90A)から該縁部までの第1の距離と、+Y方向の縁部に隣接する電極スペーサ(例えば、電極スペーサ90C)から該縁部までの第2の距離との双方が、3本以上の電極スペーサの間に形成される複数の電極間隔のいずれよりも短くなるように、3本以上の電極スペーサを電極対80の間に形成する。発明者らは、このような構成によって、感圧センサ20Aをリム12に取り付けた場合でも、電極対80のリム延在方向Eにおける縁部近傍(
図6に示すY方向における縁部近傍)において下側電極50及び上側電極60が意図せず接触してしまうことを効果的に防止し得ることを見出した。
【0038】
ここで、本実施形態における感圧センサ20Aは、電極対80の−Y方向の縁部から電極スペーサ90Aまでの距離及び+Y方向の縁部から電極スペーサ90Cまでの距離(いずれもL1)が、電極間隔W1よりも短くなるように構成されている。したがって、感圧センサ20Aをリム12に取り付けた場合でも、電極対80の下側電極50及び上側電極60がリム延在方向Eにおける縁部近傍において意図せず接触してしまうことが効果的に防止される。
【0039】
また、上述したように、電極スペーサ90A〜90Cのすべてが電極対80のX方向の全長に渡って形成されているため、感圧センサ20Aがリム断面周方向Rに沿って曲げられた場合でも上側電極60が下側電極50に意図せず接触してしまうことが効果的に防止される。
【0040】
さらに、上述したように、下側基板22とリム12のコア16との間にはクッション材300(
図2参照)が配置されているため、感圧センサ20Aを曲げるために電極対80が上方から押されたような場合でも、このクッション材300によって押圧が吸収されることにより、電極対80の下側電極50と上側電極60とが意図せず接触してしまうことがさらに効果的に防止される。なお、必ずしもこのようなクッション材300を設ける必要はない。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、電極対80の下側電極50と上側電極60とは単にリム12に取り付けられただけでは互いに接触することがなく、上側基板26の外側から下側基板22に向けて力が加わり、上側基板26及び電極スペーサ90がコア16に向けて撓んで初めて、その部分の上側電極60が下側電極50に接触することとなる。したがって、上側電極60及び下側電極50の面積を大きくすることができ、検出範囲を拡げるとともに、電極の数を減らして配線を簡単な構成にすることができる。
【0042】
なお、上述の実施形態では第1の距離及び第2の距離を同一のL1とし、複数の電極間隔を同一のW1としたが、上記第1の距離と上記第2の距離との双方が、3本以上の電極スペーサの間に形成される複数の電極間隔のいずれよりも短くなっているのであれば、電極スペーサ同士の間隔を適宜変更することが可能である。
【0043】
例えば、
図11に示すように、上側電極60(電極対80)の−Y方向における縁部から電極スペーサ90Aまでの距離をL2とし、+Y方向における縁部から電極スペーサ90Cまでの距離をL2よりも長いL3とし、電極スペーサ90Cから電極スペーサ90Bまでの電極間隔をL3よりも長いW2とし、電極スペーサ90Bから電極スペーサ90Aまでの電極間隔をW2よりも長いW3としてもよい。
【0044】
また、電極スペーサの数は3本以上であれば適宜変更することができる。ただし、電極スペーサの数が過多の場合には、運転者がステアリングを把持した際に、その把持されたリム12の部分に電極スペーサ90が配置されている可能性が増大する。運転者がリム12を把持した部分に電極スペーサ90が配置されていると、この電極スペーサによって把持された部分の上側電極60が下側電極50に接触することが妨げられるため、「把持」が正確に検知されないおそれがある。また、電極スペーサ90の数が増えることにより製造コストが増大することも考えられる。したがって、このような観点を踏まえて電極スペーサの数を調整することが好ましい。例えば、電極対80の間に3〜5本の電極スペーサを形成することが好適な場合がある。
【0045】
また、上述した実施形態では、電極スペーサ90A〜90Cのすべてが電極対80の全長に渡って形成されているが、必ずしも電極スペーサ90A〜90Cを電極対80のX方向おける全長に渡って形成する必要はない。ただし、リム断面周方向Rに沿って感圧センサ20Aが曲げられた際に上側電極60が下側電極50に意図せず接触してしまうことを効果的に防止する観点から、電極スペーサ90A〜90Cのうち少なくとも1本が電極対80のX方向における全長に渡って形成されていることが好ましい。
【0046】
図12は、上側基板26を上側電極60及び配線とともに模式的に示す底面図である。
図12に示すように、それぞれの上側電極60には共通の配線62Aが接続されており、上側電極60は配線62Aを介して互いに接続される。また、感圧センサ20Aの接続部21Aに近い上側電極60AHには、接続部21Aに設けられた端子41まで延びる配線62Bが接続されている。したがって、すべての上側電極60は、1つの共通の配線(上側配線)62によって端子41に電気的に接続されている。この端子41が把持検出部30から延びる接続配線部40(
図1参照)の端子に接続されることによって、把持検出部30と上側電極60とが電気的に接続される。
【0047】
図12に示すように、本実施形態における上側電極60は、リム12に組み込まれた際に、リム12の上側の領域J(
図1参照)の表側に配置される5つの上側電極60AJと、リム12の上側の領域Jの裏側に配置される5つの上側電極60BJと、リム12の左側の領域H(
図1参照)の表側に配置される10個の上側電極60AHと、リム12の左側の領域Hの裏側に配置される10個の上側電極60BHとを含んでいる。
【0048】
図13は、下側基板22を下側電極50及び配線とともに模式的に示す平面図である。
図13に示すように、本実施形態における下側電極50は、リム12に組み込まれた際に、リム12の上側の領域J(
図1参照)の表側に配置される5つの下側電極50AJと、リム12の上側の領域Jの裏側に配置される5つの下側電極50BJと、リム12の左側の領域H(
図1参照)の表側に配置される10個の下側電極50AHと、リム12の左側の領域Hの裏側に配置される10個の下側電極50BHとを含んでいる。
【0049】
下側基板22には、これらの下側電極50に加えて、下側電極50に電気的に接続される5つの配線51〜55(下側配線)が形成されている。本実施形態においては、配線51は、リム12の領域Jの表側に配置される5つの下側電極50AJに接続されており、接続部21Aに設けられた端子42まで延びている。配線52は、リム12の領域Jの裏側に配置される5つの下側電極50BJに接続されており、接続部21Aに設けられた端子43まで延びている。配線53は、リム12の領域Hの表側に配置される5つの下側電極50AHに接続されており、接続部21Aに設けられた端子44まで延びている。配線54は、リム12の領域Hの表側に配置される5つの下側電極50AHに接続されており、接続部21Aに設けられた端子45まで延びている。配線55は、リム12の領域Hの裏側に配置される10個の下側電極50BHに接続されており、接続部21Aに設けられた端子46まで延びている。これらの端子42〜46が把持検出部30から延びる接続配線部40(
図1参照)の端子に接続されることによって、把持検出部30と下側電極50とが電気的に接続される。
【0050】
図14から
図16は、把持検出装置1の回路構成を模式的に示す図である。
図14から
図16では、理解を容易にするために、リム12の領域Jに配置される複数の電極ユニット75のうちの1つの電極ユニット75についての配線のみ図示し、他の電極ユニットについての配線は図示を省略する。
図14から
図16に示すように、把持検出部30は、検出回路32AJ,32BJと、これらの検出回路32AJ,32BJからの出力に基づいてステアリングホイール10のリム12の把持状態を判断する判断部34とを含んでいる。
【0051】
検出回路32AJは、上側電極60AJに接続される配線62と、下側電極50AJに接続される配線51との間に接続されており、配線62と配線51との間の導通を検出するものである。検出回路32BJは、上側電極60BJに接続される配線62と、下側電極50BJに接続される配線52との間に接続されており、配線62と配線52との間の導通を検出するものである。すなわち、検出回路32AJは、上側電極60AJと下側電極50AJとの間の接触及びその接触圧力を検出し、検出回路32BJは、上側電極60BJと下側電極50BJとの接触及びその接触圧力を検出する。
【0052】
運転者がステアリングホイール10のリム12を把持すると、その把持する力によって把持した部分の上側基板26がコア16側に押されて撓む。これに伴い、その部分の上側電極60が下側電極50に接触してこの電極対80が導通するとともに、接触圧力に応じた抵抗値の変化により電流が変化することとなる。検出回路32AJ,32BJは、このリム12の把持により生ずる電極対間の導通及び電流の変化(接触圧力の変化)を検出するものである。判断部34は、検出回路32AJ,32BJからの検出結果に応じて運転者がリム12を把持しているか否かを判断する。
【0053】
このとき、判断部34は、任意の基準に従ってリム12の把持状態を判断することができる。例えば、所定の閾値を超える電流が流れている検出回路が1個以上あるときに把持状態にあると判断してもよいし、所定の閾値を超える電流が流れている検出回路が所定の個数以上あるときに把持状態にあると判断してもよいし、所定の閾値を超える電流が流れている複数の検出回路が特定の位置関係にあるときに把持状態にあると判断してもよいし、その他様々な基準を設定することができる。本実施形態における判断部34は、リム12の表側の電極対80Aに対応する検出回路32AJと裏側の電極対80Bに対応する検出回路32BJの双方で流れる電流が所定の閾値を超えたときに把持状態にあると判断するものとする。
【0054】
図14は、運転者がステアリングホイール10のリム12を把持していない状態を示している。この状態では、電極対80A,80Bの双方において上側電極60が下側電極50から離間しているため、いずれの配線51,52も配線62と導通していない。したがって、把持検出部30の検出回路32AJ,32BJは電極対80A,80Bの導通を検出することはなく、検出回路32AJ,32BJからの出力を受けた判断部34は、運転者がリム12を把持していないと判断する。
【0055】
図15は、運転者の手がステアリングホイール10のリム12の表側に接触した状態を示している。この状態では、電極対80Aの上側電極60AJが下側電極50AJに接触している。これにより、把持検出部30の検出回路32AJが電極対80Aの導通を検出し、電極対80Aの接触圧力が所定の値以上になると(流れる電流が所定の閾値以上になると)、この検出結果(検出信号)が判断部34に送られる。このとき、リム12の裏側に対応する検出回路32BJが電極対80Bの導通を検出しておらず、「リム12の表側の電極対80Aに対応する検出回路32AJと裏側の電極対80Bに対応する検出回路32BJの双方で流れる電流が所定の閾値を超える」という把持状態の判定条件が満たされていないので、判断部34は、運転者がリム12を把持していないと判断する。
【0056】
図16は、運転者がステアリングホイール10のリム12を把持した状態を示している。この状態では、電極対80Aの上側電極60AJが下側電極50AJに接触し、電極対80Bの上側電極60BJが下側電極50BJに接触している。これにより、把持検出部30の検出回路32AJ,32BJが電極対80A,80Bの導通を検出し、電極対80A,80Bの接触圧力が所定の値以上になると(流れる電流が所定の閾値以上になると)、この検出結果(検出信号)が判断部34に送られる。このとき、リム12の表側の電極対80Aと裏側の電極対80Bの双方で流れる電流が所定の閾値を超えており、「リム12の表側の電極対80Aに対応する検出回路32AJと裏側の電極対80Bに対応する検出回路32BJの双方で流れる電流が所定の閾値を超える」という把持状態の判定条件が満たされることとなるので、判断部34は、運転者がリム12を把持していると判断し、外部のカーナビゲーションシステムや運転支援システム、ヒータ、エアバッグなどに制御信号を出力する。
【0057】
上述したように、本実施形態では、上側電極60及び下側電極50が感圧電極により構成されているため、単に電極50,60間の接触又は非接触による検出ではなく、電極50,60に作用する押圧力に基づく検出が可能となる。したがって、それぞれの電極50,60の面積を大きくしてもリム12の把持状態の検出が可能であり、広い検出範囲を確保できる。このように、それぞれの電極50,60の面積を大きくすることができるので、電極50,60の総数を減らすことができる。これに伴い、配線の数が減るため、感圧センサ20Aの回路構成を簡略化してコストを下げることができる。
【0058】
また、
図14から
図16に示した例では、リム12の表側の下側電極50AJと裏側の下側電極50BJとを異なるチャンネルの配線51と配線52で接続しているため、リム12の表側と裏側とで独立した検出が可能となる。したがって、例えば、上述の例のように、検出回路32AJと検出回路32BJの双方から判断部34に検出信号が送られたときにはじめて運転者がリム12を把持していると判断することで、運転者がリム12の表側と裏側をしっかりと把持したときにはじめて把持状態が検出されるように構成することができる。
【0059】
さらに、
図13に示すように、例えば、リム12が延びる方向に対応するY方向に沿って配置された下側電極50BJと下側電極50BHとを異なるチャンネルの配線52と配線55で接続しているため、Y方向における電極対80の位置に応じて独立した検出が可能となるので、より正確な把持検出が可能となる。
【0060】
上述した実施形態においては、上側電極60に接続される配線62(上側配線)を単一の共通配線とし、下側電極50に接続される配線51〜55(下側配線)を異なるチャンネルの配線としているが、これを逆にしてもよい。すなわち、上側電極60に接続される配線を異なるチャンネルの配線とし、下側電極50に接続される配線を単一の共通配線としてもよい。
【実施例】
【0061】
感圧センサをリムに取り付けた場合に電極対80を形成する下側電極50と上側電極60とが意図せず接触してしまう点に関して、複数の電極スペーサ90の本数及び位置が与える影響について検証するために、発明者らは以下の実験を実施した。具体的には、Y方向の長さがともに15mmとなるように同一寸法に形成された下側電極50及び上側電極60と、これらの間に所定の電極間隔Wを空けて形成された複数の電極スペーサとを含む電極対80を構成した上、この電極対80を直径25mmの円筒に巻き付けた場合に下側電極50及び上側電極60の間に生じる抵抗値を測定する実験を行った。ここで、抵抗値が高い程、センサが円筒に巻き付けられた際に電極対80の下側電極50と上側電極60とが互いに接触しにくいことを示す。
【0062】
図17は、電極間隔Wが5mmとなるように複数の電極スペーサ90を形成した場合における抵抗値を示す図であり、
図18は、電極間隔Wが3mmとなるように複数の電極スペーサ90を形成した場合における抵抗値を示す図である。
【0063】
図17に示すように、電極間隔Wが5mmとなる実施例として、上記第1の距離が2mm、上記第2の距離が3mm、及び2つの電極間隔Wの双方が5mmとなるように3本の電極スペーサ90を形成した実施例1を用意した。また、実施例1の効果を検証するために、第1の距離が5mm、第2の距離が5mm、及び単一の電極間隔Wが5mmとなるように2本の電極スペーサ90を形成した比較例1と、第1の距離が7mm、第2の距離が3mm、及び単一の電極間隔Wが5mmとなるように2本の電極スペーサ90を形成した比較例2とを用意した。すなわち、
図17に示す測定実験では、第1の距離及び第2の距離の双方が2つの電極間隔Wのいずれよりも短くなっている実施例1と、第1の距離、第2の距離、及び電極間隔Wがすべて同一である比較例1と、第1の距離及び第2の距離のうち第1の距離が電極間隔Wよりも長くなっている比較例2とを用意した。
【0064】
これら実施例1、比較例1、及び比較例2における抵抗値を測定したところ、以下の結果を得た。すなわち、実施例1では10000kΩを大きく超える抵抗値を示したのに対し、比較例1はおよそ10000kΩ及び比較例2はおよそ1kΩの抵抗値しか示さなかった。換言すれば、第1の距離及び第2の距離の双方が2つの電極間隔Wのいずれよりも短くなっている実施例1における抵抗値は、比較例1及び比較例2における抵抗値に比べて顕著に大きな値を示した。
【0065】
次に、
図18に示すように、電極間隔が3mmとなる実施例として、第1の距離が1mm、第2の距離が2mm、及び4つの電極間隔Wがすべて3mmとなるように5本の電極スペーサ90を形成した実施例2を用意した。また、実施例2の効果を検証するために、第1の距離が3mm、第2の距離が3mm、及び3つの電極間隔Wがすべて3mmとなるように4本の電極スペーサ90を形成した比較例3と、第1の距離が5mm、第2の距離が1mm、及び3つの電極間隔Wがすべて3mmとなるように4本の電極スペーサ90を形成した比較例4とを用意した。すなわち、
図18に示す測定実験では、第1の距離及び第2の距離の双方が4つの電極間隔Wのいずれよりも短くなっている実施例2と、第1の距離、第2の距離、及び電極間隔Wがすべて同一である比較例3と、第1の距離及び第2の距離のうち第1の距離が電極間隔Wよりも長くなっている比較例4とを用意した。
【0066】
これら実施例2、比較例3、及び比較例4における抵抗値を測定したところ、以下の結果を得た。すなわち、実施例2では10000kΩを大きく超える抵抗値を示したのに対し、比較例3及び比較例4ともにおよそ10000kΩの抵抗値しか示さなかった。換言すれば、第1の距離及び第2の距離の双方が4つの電極間隔Wのいずれよりも短くなっている実施例2における抵抗値は、比較例3及び比較例4における抵抗値に比べて顕著に大きな値を示した。
【0067】
以上、
図17及び
図18の結果を検証すると、両者の間に電極スペーサの数の相違があるものの、第1の距離及び第2の距離の双方が複数の電極間隔Wのいずれよりも短くなっている実施例1(
図17)及び実施例2(
図18)における抵抗値は、ともに10000kΩを大きく超えており、比較例1ないし比較例4と比較して顕著に大きな値を示すことが判った。このことから、第1の距離及び第2の距離の双方を、電極間隔Wのいずれよりも短くすることにより、電極スペーサ90の本数の多寡に関らず、下側電極50と上側電極60との間に極めて大きな抵抗値が生じることが明らかとなった。換言すれば、電極スペーサ90の本数の多寡に関らず、第1の距離及び第2の距離の双方を、電極間隔Wのいずれよりも短くすることにより、電極対80における下側電極50と上側電極60とが顕著に接触しにくくなることが明らかとなった。
【0068】
さてこれまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいものであることは言うまでもない。
【0069】
なお、本明細書において使用した用語「下」及び「上」、その他の位置関係を示す用語は、図示した実施形態との関連において使用されているのであり、装置の相対的な位置関係によって変化するものである。