【解決手段】被検物質の量に応じて発光するように調製された試料10からの光を検出し分析する分析方法であって、前記試料を収容する収容部材20を撮像し、前記試料からの光を光検出部40に向けて反射させる状態に反射部60の状態を切り替えて、前記試料からの光を光検出部によって検出し、前記光検出部により検出された光量に基づいて試料の分析結果を出力する。
前記収容部材から前記光検出部に向かう光を透過させる光透過状態と、前記収容部材から前記光検出部に向かう光を遮断する光遮断状態と、を切り替え可能に構成され、前記保持部によって保持された前記収容部材と前記光検出部との間に配置された光調整部をさらに備える、請求項10または11に記載の分析装置。
前記反射部は、前記試料の光が前記光検出部により検出される場合は、前記第1の状態に切り替えられ、前記試料の光が前記光検出部により検出されていない場合は、前記第2の状態に切り替えられ、
前記光調整部は、前記試料の光が前記光検出部により検出される場合は、前記光透過状態に切り替えられ、前記試料の光が前記光検出部により検出されていない場合は、前記光遮断状態に切り替えられる、請求項12または13に記載の分析装置。
前記反射部と前記光調整部とは、同一の回転軸に取り付けられており、前記回転軸の回転に伴って、前記反射部の状態および前記光調整部の状態が連動して切り替わる、請求項12〜15のいずれか1項に記載の分析装置。
前記光調整部は、貫通孔部を介して前記収容部材から前記光検出部に向かう光を透過させる第1光透過状態と、減光フィルタ部を介して前記収容部材から前記光検出部に向かう光を透過させる第2光透過状態とを含み、
前記反射部は、少なくとも前記光調整部が前記第1光透過状態の場合に前記第1の状態に切り替えられる、請求項17に記載の分析装置。
前記保持部は、被検物質を受け入れて標識物質と結合させることにより前記試料が調製されるカートリッジ型の収容部材を着脱可能に保持し、前記収容部材における試料が収容された検出槽を前記撮像部による撮像が可能な所定位置に配置するように構成されている、請求項10〜18のいずれか1項に記載の分析装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
(分析装置の概要)
図1を参照して、本実施形態による分析装置の概要について説明する。
【0013】
本実施形態による分析装置100は、被検物質の量に応じて発光するように調製された試料が収容される収容部材を保持して、試料から放出される光を検出して分析を行うための装置である。
【0014】
試料10は、被検物質の量に応じて発光するように調製され、発光する試料である。試料10は、たとえば化学発光または蛍光によって光を発生する。試料10は、たとえば被検物質と標識物質とを結合させることによって調製された試料であってよい。
【0015】
被検物質は、たとえば、抗原、抗体、または、その他のタンパク質のうち、1または複数である。標識物質は、被検物質と特異的に結合し、光を発生させる標識を含有する物質である。標識は、たとえば、酵素、蛍光物質などである。酵素としては、アルカリホスファターゼ(ALP)、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼなどが挙げられる。蛍光物質としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェリンなどが利用できる。
【0016】
標識物質が酵素を含む場合、標識物質の酵素に対する基質は、用いる酵素に応じて適宜公知の基質を選択すればよい。例えば、酵素としてアルカリホスファターゼを用いる場合の基質としてはCDP−Star(登録商標)、(4−クロロ−3−(メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリクシロ[3.3.1.13,7]デカン]−4−イル)フェニルリン酸2ナトリウム)、CSPD(登録商標)(3−(4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]−4−イル)フェニルリン酸2ナトリウム)などの化学発光基質;p−ニトロフェニルホスフェート、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)、4−ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(NBT)、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)などの発光基質;4−メチルウムベリフェニル・ホスフェート(4MUP)などの蛍光基質;5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)、5−ブロモ−6−クロロ−インドリルリン酸2ナトリウム、p−ニトロフェニルリンなどの発色基質などが利用できる。
【0017】
収容部材20は、試料10が光検出のために収容される部材である。収容部材20は、試料10を受け入れて、検出が行われる間、試料10を保持できる。収容部材20は、たとえば、試料10を収容するための使い捨ての試料容器である。収容部材20は、たとえば、試料10を収容するためのキュベットや、試料10を受け入れるウェル21が形成されたプレート(
図2(A)参照)などであってよい。収容部材20に調製済みの試料10が配置される以外に、収容部材20において、試料10を調製するための処理が実施されてもよい。その場合、分析装置100は、試料10を調製するための処理の一部または全部を行ってもよい。
【0018】
収容部材20において試料10を調製するための処理を行う場合、収容部材20は、たとえば、被検物質を含む検体を受け入れて試薬と混合させることにより試料を調製するためのカートリッジ(
図2(B)参照)でもよい。カートリッジは、たとえば、被検物質を移動させるマイクロ流路が形成されたμ−TAS(Micro-Total Analysis System)チップであってもよい。その場合、収容部材20(
図2(B)参照)は、被検物質を含む検体を受け入れる部分22a、調製された試料10が収容される部分22b、調製処理の過程で部分22aから部分22bに検体を移送する通路23などを含む。
【0019】
図1に示すように、分析装置100は、保持部30と、光検出部40と、撮像部50と、反射部60と、を備える。
【0020】
保持部30は、試料10が配置される収容部材20を保持する。
図1の構成例では、保持部30は、収容部材20の両側面を把持して保持する。この他、保持部30は、たとえば、上面上に載置された収容部材20を下側から支持する構成でもよい。保持部30は、たとえば、収容部材20に対応する形状の凹部内に差し込まれた収容部材20を保持する構成でもよい。収容部材20がプレートまたは板状のカートリッジである場合、分析装置100の内部に収容部材20を差し込まれまたは設置されることにより、収容部材20が保持部30により分析装置100に対して着脱可能に保持される。保持部30は、たとえば、収容部材20を所定位置101に保持する。
【0021】
光検出部40は、保持部30によって保持された収容部材20に収容された試料10からの光を検出するように構成されている。収容部材20が保持部30により保持された状態で、収容部材20の試料10が、所定位置101に配置される。光検出部40は、所定位置101にある試料10から発生する光を受光できる所定の受光位置102に配置されている。試料10から発生する光のうち、受光位置102に到達した光が光検出部40により検出される。光検出部40は、光センサにより構成される。光センサは、たとえば、光電子増倍管、光電管、光ダイオードなどである。
【0022】
撮像部50は、保持部30によって保持された収容部材20に収容された試料10を撮像するように構成されている。収容部材20が保持部30により保持された状態では、撮像部50は、収容部材20に収容された試料10を撮像できる。試料10の撮像画像によって、収容部材20内の状態を確認することができるようになる。
【0023】
収容部材20内の状態は、たとえば分析精度に関わる試料10の状態である。試料10が適正な位置に配置されているか、試料10の量が適正か、あるいは、試料10の色などが適正か、などが、撮像画像に基づいて確認できる。収容部材20が内部で試料を移送できる構成の場合、光検出を行うための検出槽まで試料10が適切に移送されたかどうかが撮像画像に基づいて確認できる。試料10の撮像画像に基づいて、光検出部40による検出結果の信頼性が評価されてもよい。
【0024】
撮像部50は、たとえば静止画像を撮像可能なカメラや、動画像を撮像可能なビデオカメラなどにより構成される。撮像部50は、少なくとも所定の撮像位置103において、所定位置101に配置された収容部材20の試料10を撮像できる。撮像部50は、所定位置101以外の位置を撮像できてもよい。収容部材20が内部で試料を移送できる構成の場合、撮像部50は、試料の移送に伴って、収容部材20の所望の部分を撮像できるように構成されてもよい。そのため、撮像部50は、分析装置100内で固定されていてもよいが、分析装置100内で移動可能に設けられていてもよい。たとえば、
図1の構成例では、撮像部50は、保持部30によって保持された収容部材20と対向する位置に固定されている。
図1の構成例では、撮像部50は、収容部材20と対向する撮像位置103に固定的に設置され、収容部材20に収容された試料10を撮像できる。
【0025】
反射部60は、収容部材20に対して光検出部40とは反対側に配置されている。反射部60は、撮像部50により試料10を撮像する場合の撮像部50に到達する光の光路上に配置されている。反射部60は、光を反射できる。本実施形態では、反射部60は、反射状態P1と、非反射状態P2と、を切り替え可能に構成されている。
【0026】
反射状態P1は、
図1(A)に示すように、保持部30によって保持された収容部材20から撮像部50に向かう光を光検出部40に向けて反射させ、撮像部50による試料10の撮像を妨げる状態である。撮像部50は、反射部60が反射状態P1の場合、所定位置101の試料10を撮像できない。反射状態P1では、所定位置101の試料10から反射部60に向かう光が、光検出部40がある受光位置102に向けて反射される。そのため、反射状態P1では、試料10から光検出部40に向かう光のみならず、反射部60により反射されて光検出部40に向かう光が、光検出部40により検出される。反射光を光検出部40に到達させやすくするため、収容部材20のうち試料10が配置される部分は、透光性を有する。
【0027】
非反射状態P2は、
図1(B)に示すように、保持部30によって保持された収容部材20から撮像部50に向かう光を反射させず、撮像部50による試料10の撮像を妨げない状態である。撮像部50は、反射部60が非反射状態P2の場合、所定位置101の試料10を撮像できる。
【0028】
反射部60は、たとえば、光を反射させるミラーにより構成される。反射状態P1と非反射状態P2との切り替えは、たとえば、反射部60が移動することにより行われる。反射部60の移動は、ユーザが手動で実施してもよいが、アクチュエータにより反射部60が自動で移動されてもよい。撮像部50、収容部材20および光検出部40が、反射部60に対して移動してもよい。反射部60は、光を反射する状態と、光を透過する状態とに電気的に切り替え可能な、いわゆる調光ミラーデバイスなどによって構成されてもよい。この場合、反射部60と、撮像部50、収容部材20および光検出部40とを相対移動させる必要はない。
【0029】
次に、分析装置100による分析方法について説明する。
【0030】
分析装置100は、収容部材20に収容された試料10からの光を検出して分析を行う。また、分析装置100は、収容部材20に収容された試料10を撮像する。
【0031】
試料10を撮像する場合、非反射状態P2に反射部60を切り替えた状態で、撮像部50が、撮像位置103から所定位置101の試料10を撮像する。
【0032】
試料10からの光を検出する場合、反射状態P1に反射部60を切り替えた状態で、光検出部40が、受光位置102に到達した光を検出する。光検出部40は、検出した光の量である受光量に応じた電気信号を出力する。得られた電気信号を分析することにより、たとえば試料10中に含まれる所定成分の有無または含有量を取得できる。
【0033】
図1の構成例によれば、反射状態P1に反射部60を切り替えた状態で、光検出部40が試料10の光を検出することができるので、反射部60により反射された反射光であり光検出部40により検出される反射光の分だけ、光検出部40の受光量を増大させることができる。その結果、試料10からの光の検出感度を向上させることができる。また、反射部60を非反射状態P2に切り替えることができるので、反射部60を設けた構成においても、撮像部50が収容部材20に収容された試料10を撮像することができる。これらの結果、試料10からの光の検出感度を向上させつつ、必要に応じて収容部材20内の状態を確認できるようになる。
【0034】
(分析装置の構成例)
図3は、分析装置100の一構成例を示す外観図である。分析装置100は、試料10から検出された光量に基づいて、検体中の被検物質の存在の有無や、検体中の被検物質の濃度を決定できる。分析装置100は、小型であり、たとえば医師が患者を診察する診察室のデスク上に設置可能なサイズである。
図3では、分析装置100のサイズは、たとえば、設置面積で150cm
2〜300cm
2程度である。分析装置100は、たとえば、カートリッジ200が挿入されるスロットを有し、スロットに挿入されたカートリッジ200が装置内の保持部30にセットされる。分析装置100は、保持部30にセットされたカートリッジ200に対して分析処理を行う。カートリッジ200と分析装置100とにより、分析システム300が構成されている。
【0035】
図3の構成例では、分析装置100は、装置本体を収容する筐体110を備える。筐体110の側面には、スロットを露出させる開位置と、スロットを覆う閉位置とに開閉可能な蓋部111と、表示部112と、インジケータ113とがある。蓋部111を開放してスロット内にカートリッジ200が挿入され、蓋部111を閉じた状態で分析処理が実施される。表示部112は、たとえば液晶モニタなどにより構成され、分析結果などの所定の情報を表示できる。インジケータ113は、発光ダイオードなどのランプにより構成され、点灯状態や色などにより分析装置100の状態を表すことができる。
【0036】
分析装置100は、図示したものに限られず、たとえば筐体110の上面に開閉蓋を設けて、蓋を開放した状態で装置内の保持部30にカートリッジ200などの収容部材20が設置され、蓋を閉じた状態で分析処理を行う構成などであってもよい。
【0037】
(カートリッジの構成例)
図4は、本実施形態の収容部材20としてのカートリッジ200の具体的な構成例を示す。カートリッジ200は、使い捨て可能なカートリッジであってよい。その場合、カートリッジ200はパッケージに収納された状態で保管され、パッケージから取り出されて使用される。
【0038】
カートリッジ200は、検体、試薬、洗浄液などの液体を配置するための複数の液体収容部210を有する。ここでは、検体が血液である例を示す。一部の試薬は、被検物質を含む物質と反応する磁性粒子を含む。カートリッジ200は、検出槽220と、液体反応部230とを有する。
【0039】
検体は、カートリッジ200の血球分離部240に注入される。血球分離部240が封止された状態のカートリッジ200が、分析装置100に挿入される。血球分離部240は、注入された血液から血球成分を分離する。
【0040】
図4の構成例では、液体収容部210は、8つの液体収容部211〜218を含む。各液体収容部211〜218、検出槽220、液体反応部230、および血球分離部240は、処理工程に沿った順番で並んでおり、液体または磁性粒子の移送経路に沿って通路部250を介して接続されている。
【0041】
カートリッジ200は、エアチャンバ260を有する。
図4の構成例では、エアチャンバ261〜263の3つのエアチャンバ260が設けられている。エアチャンバ260から送出される空気により、カートリッジ200内の一部の液体が移送される。
【0042】
(分析装置の構成例)
図5〜
図7は、カートリッジ200を収容部材20として用いる分析装置100の具体的な構成例を示す。
【0043】
分析装置100は、保持部30と、光検出部40と、撮像部50と、反射部60とを備える。保持部30と、光検出部40と、撮像部50と、反射部60とは、筐体110内に収納されている。
図5〜
図7の構成例では、分析装置100は、さらに、磁石ユニット80およびプランジャユニット90を備える。
【0044】
保持部30は、分析装置100のスロット部分である開口部31(
図5参照)を介して挿入されたカートリッジ200を所定位置101に保持する。保持部30は、カートリッジ200を分析装置100の設置面と略平行な状態で保持する。なお、分析装置100の設置面は概ね水平に保たれていると見なしてよいので、本明細書では、分析装置100の設置面と平行な面あるいは方向を、水平面あるいは水平方向と言い換える。以降の説明では、便宜的に、水平面内における分析装置100の短手方向をX方向とし、長手方向をY方向とする。X方向およびY方向と直交する上下方向を、Z方向とする。
【0045】
図5〜
図7の構成例では、保持部30は、被検物質を受け入れて標識物質と結合させることにより試料10が調製されるカートリッジ200を着脱可能に保持する。保持部30は、収容部材20における試料10が収容された検出槽220(
図4参照)を撮像部50による撮像が可能な所定位置101に配置するように構成されている。これにより、検体が注入されたカートリッジ200を保持部30に設置した状態で、試料10の調製と、試料10からの光の検出とが分析装置100によって実施できるようになる。そのため、試料10を事前に調製する必要がなく、ユーザにとっての利便性が向上する。
【0046】
保持部30は、基台114上に設置されており、カートリッジ200の周縁部を支持できる。保持部30は、撮像や光検出のため、カートリッジ200の上面側および下面側の一部を露出させるように形成されている。保持部30は、カートリッジ200を保持することが可能であれば、どのような構造でもよい。
【0047】
光検出部40は、所定位置101の下方の受光位置102に固定的に配置されている。光検出部40は、受光位置102を所定位置101側である上面側に有している。光検出部40は、保持部30の下面側に形成された開口を介して、所定位置101から受光位置102に到達した光を検出する。光検出部40は、ケース41内に収納されており、受光位置102を除いて遮光されている。
【0048】
図5〜
図7の構成例では、反射部60は、保持部30によって保持された収容部材20に対して光検出部40とは反対側の上方位置に配置されたミラー部材である。反射部60は、光検出部40、収容部材20および撮像部50に対して相対移動する。反射部60は、収容部材20と撮像部50との間で、かつ、収容部材20を介して光検出部40と対向する反射位置において反射状態P1となり、収容部材20から撮像部50に到達する光を遮らない退避位置において非反射状態P2となるように構成されている。これにより、反射部60と、光検出部40、収容部材20および撮像部50とを相対的に移動させるだけで、容易に、反射状態P1と非反射状態P2とが切り替えられる。なお、反射部60の詳細な構成については、後述する。
【0049】
図5〜
図7の構成例では、分析装置100は、保持部30によって保持された収容部材20と光検出部40との間に配置された光調整部70(
図5、
図6参照)をさらに備える。光調整部70は、収容部材20から光検出部40に向かう光を透過させる光透過状態と、収容部材20から光検出部40に向かう光を遮断する光遮断状態と、を切り替え可能に構成されている。これにより、試料10からの光を検出する時は、光調整部70を光透過状態にして光検出を行うことができ、検出時以外で必要に応じて光調整部70を光遮断状態にして光検出部40への光を遮断できる。そのため、外部からの不必要な光が光検出部40に入射することが抑制できるので、光検出部40の検出感度をより向上させることができる。
【0050】
撮像部50は、保持部30によって保持されたカートリッジ200の上方に配置されている。
図5に示すように、撮像部50は、保持部30の上方位置で、撮像方向を下方側に向けて設けられている。撮像部50は、X方向およびY方向に移動可能に構成されている。撮像部50は、少なくとも撮像位置103を含む範囲で水平方向に移動できる。
【0051】
図5および
図6に示すように、撮像部50が撮像位置103に位置する場合、光検出部40と撮像部50とは、収容部材20を介して互いに対向する位置に配置される。そして、反射部60は、撮像部50と収容部材20との間に配置され、光検出部40と対向する反射面61を有する。これにより、光検出部40と撮像部50と収容部材20とが、上下方向に直線上に並ぶ位置関係となるので、反射面61を形成した平板形状の光反射部60を撮像部50と収容部材20との間に配置するだけの単純な構成を採用できる。そのため、反射状態と非反射状態とを切り替え可能な反射部60を設ける場合でも装置構成が複雑化するのを抑制できる。
【0052】
撮像のため、分析装置100は、照明部51を備えている。照明部51は、たとえば、発光ダイオードなどにより構成される。照明部51は、たとえば、保持部30よりも上方の位置で、保持部30のY方向の両端近傍の位置に対で設けられる。各照明部51は、たとえば、X方向の中央付近に配置される。これにより、撮像部50の撮像視野は、Y方向の両側からの照明光によって照らされる。
【0053】
磁石ユニット80は、磁石81を含む。
図5の構成例では、磁石ユニット80は、2つの磁石81a、81bを有する。一方の磁石81aは、保持部30に対して上方(Z1側)に配置され、他方の磁石81bは、保持部30に対して下方(Z2側)に配置されている。磁石ユニット80は、磁石81aと磁石81bとを、上下方向に所定の間隔を隔てて保持している。
図6に示すように、磁石ユニット80は、X方向、Y方向およびZ方向の各方向に移動できる。なお、撮像部50は、磁石ユニット80と一体的に、X方向およびY方向に移動できる。磁石ユニット80は、撮像部50とは独立して、Z方向に移動できる。撮像部50は、Z方向には移動しない。
【0054】
磁石81aおよび磁石81bは、先細り形状を有し、先端部が着磁部になっている。磁石ユニット80の移動に伴って磁石81aがカートリッジ200の上面に近付くことにより、磁石81aが上方からカートリッジ200に磁力を作用させる。磁石ユニット80の移動に伴って磁石81bがカートリッジ200の下面に近付くことにより、磁石81bが下方からカートリッジ200に磁力を作用させる。保持部30は、少なくとも磁石81aおよび磁石81bが移動する範囲において、カートリッジ200の上面側および下面側を露出させている。
【0055】
磁石ユニット80は、磁石81aまたは磁石81bをカートリッジ200に近づけることにより、カートリッジ200内で磁性粒子を集める。磁石ユニット80は、磁石81aまたは磁石81bをカートリッジ200に近づけた状態で水平移動することにより、集めた磁性粒子を水平方向に移動させる。磁石ユニット80は、磁石81aおよび磁石81bがカートリッジ200に交互に近付くように上下に往復移動することにより、カートリッジ200内の磁性粒子を上下に移動させることができる。これにより、カートリッジ200内の液体と磁性粒子とが攪拌される。
【0056】
図5に示すように、プランジャユニット90は、保持部30の上面側に配置されている。プランジャユニット90は、プランジャ91と、プランジャ91を作動させる駆動部92とを含む。プランジャ91は、保持部30に保持されたカートリッジ200のエアチャンバ260(
図4参照)に対して上方に配置され、上下に移動できる。プランジャ91は、たとえばエアチャンバ260と同数設けられており、駆動部92によって、各プランジャ91が独立または連動して上下移動する。プランジャユニット90は、プランジャ91によって、カートリッジ200のエアチャンバ260を押し下げる。プランジャ91の押し下げによってエアチャンバ260から空気が送り出され、カートリッジ200内の一部または全部の液体が移送される。保持部30は、少なくとも磁石81aおよび磁石81bが移動する範囲において、カートリッジ200の上面側および下面側を露出させている。
【0057】
分析装置100は、装置の各部の制御を行うための制御部115と、光検出部40の出力信号を分析する分析部116とを備える。制御部115は、光検出部40と、撮像部50と、反射部60と、を制御して、撮像動作や光検出動作を制御する。分析部116は、光検出部40により検出された光量に基づいて分析を行う。分析装置100は、たとえば別体で設けられたコンピュータに光検出部40の検出結果を出力して、コンピュータにより分析を行ってもよい。
【0058】
制御部115は、たとえば、演算処理部、記憶部を含む。演算処理部は、たとえば、CPU(中央演算処理装置)、MPU(マイクロ演算処理装置)などにより構成される。記憶部は、たとえば、フラッシュメモリ、ハードディスクメモリなどにより構成される。分析部116は、たとえば、演算処理部、記憶部を含む。分析部116は、制御部115の演算処理部が記憶部に記憶された分析用のプログラムを実行することにより、分析部116として機能するように構成されていてもよい。この場合、制御部115と分析部116とが共通のハードウェアにより構成される。制御部115は、撮像部50により撮像された画像データに基づいて、検体カートリッジ200内の磁性粒子の状態を取得する。画像データは、撮像部50により撮像された画像の各画素におけるRGBの画素値情報を含む。また、制御部115は、撮像部50により撮像された画像データの色情報またはコントラスト情報に基づいて、磁性粒子を検出する。
【0059】
(撮像部および磁石ユニットの移動機構)
図5〜
図7の構成例における撮像部50および磁石ユニット80の移動機構について説明する。
図6に示すように、撮像部50は、内側移動体120に固定されている。具体的には、撮像部50は、内側移動体120の上部からX方向に延びるアーム121(
図5参照)の先端部に取り付けられている。磁石ユニット80は、内側移動体120に対して上下移動可能に取り付けられている。内側移動体120には、Z軸モータ122と、伝達機構とが設けられている。伝達機構は、
図6では、磁石ユニット80を移動させるZ方向のネジ送り機構123と、ネジ送り機構123にZ軸モータ122の駆動力を伝達するベルト−プーリ機構124との組み合わせにより構成されている。Z軸モータ122の回転により、磁石ユニット80が内側移動体120に対してZ方向に移動する。
【0060】
内側移動体120は、外側移動体125に、Y方向に移動可能に支持されている。外側移動体125には、Y軸モータ126と、伝達機構とが設けられている。伝達機構は、
図6では、内側移動体120を移動させるY方向のネジ送り機構127と、ネジ送り機構123にY軸モータ126の駆動力を伝達するベルト−プーリ機構128との組み合わせにより構成されている。Y軸モータ126の回転により、撮像部50および磁石ユニット80を含む内側移動体120が、外側移動体125に対してY方向に移動する。
【0061】
外側移動体125は、基台114にX方向に移動可能に支持されている。基台114には、X軸モータ129と、ガイド軸130(
図7参照)と、図示しない伝達機構とがある。ガイド軸130は、外側移動体125のX方向移動を案内する。X軸モータ129の回転により、外側移動体125と、撮像部50および磁石ユニット80を含む内側移動体120とが、基台114に対してX方向に移動する。伝達機構およびモータの構成は、図示したものに限られない。例えば、Z軸モータ122の駆動力を伝達する機構124、Y軸モータ126の駆動力を伝達する機構として、ギアによる伝達機構であってもよい。
【0062】
(反射部および光調整部の構成)
図8〜
図12を参照して、反射部60および光調整部70の構成例を説明する。
【0063】
図8および
図9に示す構成例では、反射部60は、下面側に反射面61を有する板状部材である。光調整部70は、光を透過させる光透過部71と、光を透過させない光遮断部72とを含む板状部材である。
【0064】
光調整部70は、光検出部40、収容部材20および撮像部50に対して相対移動する。光調整部70は、保持部30によって保持された収容部材20と光検出部40との間に光透過部71が配置されることにより光透過状態Q1(
図10、
図11参照)に切り替えられ、収容部材20と光検出部40との間に光遮断部72が配置されることにより光遮断状態Q2(
図12参照)に切り替えられる。これにより、光調整部70と、光検出部40、収容部材20および撮像部50とを相対的に移動させるだけで、容易に、光透過状態Q1と光遮断状態Q2とを切り替えられる。
図8の構成例では、光調整部70が光検出部40、収容部材20および撮像部50に対して移動する。
【0065】
図8の構成例では、反射部60と光調整部70とは、同一の回転軸140に取り付けられており、回転軸140の回転に伴って、反射部60の状態および光調整部70の状態が連動して切り替わる。これにより、共通の回転軸140を回転させるだけで反射部60の状態切り替えと光調整部70の状態切り替えとを行うことができるので、装置構成を簡素化できる。また、反射部60の状態切り替えと光調整部70の状態切り替えとを個別に行う場合と異なり、確実に反射部60の状態と光調整部70の状態とを連動させて切り替えることができる。
【0066】
具体的には、
図9に示すように、回転軸140は、Z方向に延びるように設けられ、下端部が駆動源141に接続されている。駆動源141は、たとえばステッピングモータである。駆動源141により、回転軸140がZ方向の中心軸線周りに回転する。反射部60が、回転軸140の上部において、保持部30によって保持された収容部材20の上側に近接する位置に取り付けられている。これにより、反射状態P1において、試料10からの光をより多く光検出部40側に反射できる。光調整部70は、回転軸140において、光検出部40の受光位置102の上側に近接する位置に取り付けられている。これにより、光遮断状態Q2において、より確実に、光が光検出部40に入射することを抑制できる。反射部60および光調整部70は、回転軸140に固定されており、回転軸140と一体的に回転する。なお、駆動源141および回転軸140の一部は、光検出部40とともにケース41内に設置されている。
【0067】
図8の構成例では、光調整部70は、光透過度が異なる複数の光透過状態Q1に切り替え可能に構成されている。したがって、光調整部70は、光遮断状態も含めて3つ以上の状態に切り替えられる。これにより、試料10から生じる光量に応じて、光透過度を切り替えられるので、光量が少ない場合の検出感度を確保するだけでなく、光量が多い場合でも光検出部40の出力が飽和することを抑制できる。
【0068】
図8の構成例では、光調整部70は、貫通孔71aを介して収容部材20から光検出部40に向かう光を透過させる第1光透過状態Q1A(
図10参照)と、減光フィルタ部71bを介して収容部材20から光検出部40に向かう光を透過させる第2光透過状態Q1B(
図11参照)とを含む。また、反射部60は、少なくとも光調整部70が第1光透過状態Q1Aの場合に反射状態P1に切り替えられる。これにより、試料10から生じる光量が少ない場合、第1光透過状態Q1Aの光調整部70によって光量を低下させることなく、反射状態P1の反射部60によって検出可能な光量を増加させることができる。試料10から生じる光量が多い場合、第2光透過状態Q1Bの光調整部70によって容易に光量を低下させることができる。この結果、検出感度を向上させつつ、光量の検出レンジを十分に確保できる。
【0069】
なお、
図8の構成例では、反射部60は、光調整部70が光透過状態Q1の場合に反射状態P1に切り替えられる。つまり、第1光透過状態Q1A(
図10参照)の場合のみならず、第2光透過状態Q1Bの場合(
図11参照)も、反射部60は、反射状態P1となる。
【0070】
図8の構成例では、光調整部70は、貫通孔71aからなる光透過部71と、減光フィルタ部71bからなる光透過部71との、2つの光透過部71を備えている。光調整部70は、貫通孔71aと、減光フィルタ部71bと、光遮断部72とを含む。貫通孔71aと、減光フィルタ部71bと、光遮断部72とは、回転軸140からの径方向の距離が略等しく、回転方向に異なる位置に配置されている。回転軸140からの径方向の距離は、回転軸140から光検出部40の受光位置102までの距離と略等しい。
【0071】
これにより、光調整部70は、回転軸140の回転角度に応じて、光検出部40と収容部材20との間に貫通孔71aが配置される第1光透過状態Q1A(
図10参照)と、光検出部40と収容部材20との間に減光フィルタ部71bが配置される第2光透過状態Q1B(
図11参照)と、光検出部40と収容部材20との間に光遮断部72が配置される光遮断状態Q2(
図12参照)と、に切り替わる。
【0072】
貫通孔71aは、板状の光調整部70をZ方向に貫通し、平面視で光検出部40の開口部に対応させた内径を有する。減光フィルタ部71bは、光調整部70に形成された貫通孔に嵌め込まれており、入射した光の一部を透過する。減光フィルタ部71bは、平面視で光検出部40の開口部に対応させた外径に形成されている。貫通孔71aの光透過率を100%として、減光フィルタ部71bは、たとえば約3%の光透過率を有し、光遮断部72は約0%の光透過率を有する。言い換えると、光遮断部72は光を約100%遮断し、減光フィルタ部71bは光を約97%遮断し、貫通孔71aは、光を0%遮断する。光遮断部72は、光調整部70が光を透過しない材料により形成されることにより、板状の光調整部70の一部分によって構成された遮蔽板である。光遮断部72は、少なくとも受光位置102を覆うように、平面視で光検出部40の開口部よりも大きい。
【0073】
図8および
図9の構成例では、反射部60は、収容部材20を介して光調整部70と対向するように配置されている。具体的には、反射部60は、光調整部70の貫通孔71aと対向する第1部分62と、減光フィルタ部71bと対向する第2部分63とを含む。第1部分62は、平面視で、貫通孔71aを覆うように貫通孔71aよりも大きく形成されている。第2部分63は、平面視で、減光フィルタ部71bを覆うように減光フィルタ部71bよりも大きく形成されている。反射部60は、光遮断部72と対向する位置には、設けられていない。
【0074】
このような構成により、
図8および
図9の構成例では、反射部60は、光調整部70が光透過状態Q1(
図10、
図11参照)にある場合は、反射状態P1となるように切り替えられ、光調整部70は、反射部60が非反射状態P2(
図12参照)にある場合は、光遮断状態Q2となるように切り替えられる。このような構成により、光調整部70が光透過状態Q1の時には、反射状態P1の反射部60が試料10からの光を反射して検出感度を向上させることができる。反射部60が非反射状態P2(
図12参照)の時には、光調整部70が光遮断状態Q2となるので、撮像部50による撮像中に、光検出部40に光が入り込むことを防いで検出感度に影響することを抑制できる。
【0075】
図10〜
図12では、反射部60は、試料10の光が光検出部40により検出される場合は、反射状態P1(
図10、
図11参照)に切り替えられ、試料10の光が光検出部40により検出されていない場合は、非反射状態P2(
図12参照)に切り替えられる。光調整部70は、試料10の光が光検出部40により検出される場合は、光透過状態Q1(
図10の状態Q1Aまたは
図11の状態Q1B)に切り替えられ、試料10の光が光検出部40により検出されていない場合は、光遮断状態Q2(
図12参照)に切り替えられる。これにより、光検出部40による光検出を行う場合には、試料10からの光を反射して検出感度を向上させることができる。光検出を行う場合以外は、光検出部40に光が入り込むことを防いで検出感度に影響することを抑制しつつ、必要に応じて撮像部50による試料10の撮像ができる。
【0076】
(分析装置の動作説明)
図13は、本実施形態の分析装置100およびカートリッジ200を用いて、所定のアッセイ法を実施する場合の動作例を示す。動作説明において、カートリッジ200の構成については
図4を参照するものとする。分析装置100の構成については
図5〜
図7を参照するものとする。反射部60および光調整部70の各状態については、
図10〜
図12を参照するものとする。分析装置100の各部の制御は、制御部115が行う。
【0077】
測定動作の開始時には、制御部115は、駆動源141により回転軸140を所定角度に回動させ、光調整部70を光遮断状態Q2(
図12参照)に切り替える。反射部60は、非反射状態P2となる。これにより、カートリッジ200の挿入時にも光検出部40に不要な光が入射することが抑制される。
【0078】
まず、ユーザにより、カートリッジ200が分析装置100のスロットに挿入される。カートリッジ200は、パッケージから開封され、患者から採取された検体が注入された後で、分析装置100のスロットに挿入されることにより、保持部30に保持される。検体中の被検物質は、たとえば、抗原を含む。一例として、抗原は、B型肝炎表面抗原(HBsAg)である。被検物質は、抗原、抗体、または、その他のタンパク質のうち、1または複数であってよい。
【0079】
カートリッジ200が保持部30にセットされると、撮像部50によるカートリッジ200の撮像が可能となる。制御部115は、照明部51をオンにし、測定動作の進行過程を撮像部50により撮像してもよい。光調整部70が光遮断状態Q2(
図12参照)に切り替えられているため、照明部51からの光が光検出部40に入射することが抑制される。
【0080】
ステップS1において、検体が液体反応部230に送られる。制御部115がプランジャユニット90を制御して、エアチャンバ261を押し下げる。検体は、エアチャンバ261から送出された空気により、液体収容部211に収容されたR1試薬とともに通路部250を流れて、液体反応部230に押し出される。撮像部50が液体反応部230を撮像する場合、撮像画像に基づいて検体およびR1試薬が液体反応部230に到達したか否かを判断できる。
【0081】
R1試薬は、被検物質と結合する捕捉物質を含む。捕捉物質は、たとえば、被検物質と結合する抗体を含む。抗体は、たとえば、ビオチン結合抗HBsモノクローナル抗体である。被検物質とR1試薬とは、抗原抗体反応により結合する。
【0082】
ステップS2において、分析装置100は、液体収容部212に収容されたR2試薬に含まれる磁性粒子を、液体反応部230へ移送する。磁性粒子は、R2試薬の液体成分中に分散している。制御部115は、磁石ユニット80を移動させて、磁石81aの磁力により、液体収容部212中の磁性粒子を集めて、液体反応部230へ移動させる。撮像部50が液体反応部230を撮像する場合、撮像画像に基づいて磁性粒子が液体反応部230に到達したか否かを判断できる。
【0083】
液体反応部230では、磁性粒子と抗原−抗体反応体との反応により、磁性粒子の結合体が生成される。すなわち、R1試薬の捕捉物質と結合した被検物質が、捕捉物質を介して磁性粒子と結合する。磁性粒子は、被検物質の担体となる。磁性粒子は、たとえば、表面がアビジンでコーティングされたストレプトアビジン結合磁性粒子である。
【0084】
ステップS3において、分析装置100は、磁石81aの磁力によって、磁性粒子の結合体を、R3試薬が収容された液体収容部213に移送する。撮像部50が液体収容部213を撮像する場合、撮像画像に基づいて磁性粒子の結合体が液体収容部213に到達したか否かを判断できる。
【0085】
R3試薬は、標識物質を含む。標識物質は、たとえば、標識抗体を含む。標識抗体は、たとえばALP標識抗HBsAgモノクローナル抗体である。R3試薬に含まれる標識抗体と磁性粒子の結合体とを反応させる。磁性粒子の結合体と標識抗体との反応により、免疫複合体が生成される。免疫複合体は、被検物質と、捕捉抗体と、標識抗体と、磁性粒子とを含む。
【0086】
ステップS4において、分析装置100は、磁石81aの磁力によって、免疫複合体を、液体収容部214〜216に順次移送する。各液体収容部214〜216は、洗浄液を収容している。制御部115は、各液体収容部214〜216において、合計3回、免疫複合体と未反応物質とを分離させる。すなわち、洗浄により未反応物質が除去される。撮像部50が液体収容部214〜216を撮像する場合、撮像画像に基づいて免疫複合体が各液体収容部214〜216に到達したか否かを判断できる。
【0087】
制御部115は、各液体収容部214〜216において、磁石ユニット80を上下に移動させて磁石81aと磁石81bとを交互に免疫複合体に近づけることにより、各液体収容部214〜216において免疫複合体を洗浄液中で攪拌する。これにより、未反応物質が免疫複合体から分離する。
【0088】
ステップS5において、分析装置100は、磁石81aの磁力によって、免疫複合体を液体収容部217に移送する。撮像部50が液体収容部217を撮像する場合、撮像画像に基づいて洗浄後の免疫複合体が液体収容部217に到達したか否かを判断できる。
【0089】
液体収容部217は、R4試薬を収容している。R4試薬は、免疫複合体の発光を促進する組成を有する。R4試薬は、たとえば、緩衝液である。免疫複合体は、液体収容部217で、R4試薬に含有される緩衝液と反応する。
【0090】
ステップS6において、分析装置100は、免疫複合体と緩衝液との混合液を検出槽220に移送する。制御部115が、プランジャユニット90を制御してエアチャンバ262を押し下げ、通路部250を介して免疫複合体と緩衝液との混合液を検出槽220に押し出す。撮像部50が検出槽220を撮像する場合、撮像画像に基づいて免疫複合体と緩衝液との混合液が検出槽220に到達したか否かを判断できる。
【0091】
ステップS7において、分析装置100は、液体収容部218に収容されたR5試薬を検出槽220に移送する。制御部115が、プランジャユニット90を制御してエアチャンバ263を押し下げ、液体収容部218を介してR5試薬を検出槽220に押し出す。撮像部50が検出槽220を撮像する場合、撮像画像に基づいてR5試薬が検出槽220に到達したか否かを判断できる。
【0092】
R5試薬は、たとえば、免疫複合体と反応して発光を促す基質を含んでいる。R5試薬は、検出槽220において、免疫複合体と緩衝液との混合液に添加される。発光基質と免疫複合体とが反応する。これにより、検出槽220において、光を発生する試料10が調製される。
【0093】
ステップS8において、制御部115は、反射部60を非反射状態P2に切り替えた状態で、撮像部50により試料10を撮像する。ステップS9において、制御部115は、撮像画像に基づいて試料10の状態にエラーがあるか否かを判定する。エラーがなければ、ステップS10において、分析装置100は、光検出処理を実施する。エラーがある場合、制御部115は、後続の検出処理動作を実行せずに、ステップS11において表示部112およびインジケータ113にエラーを表示する。このように、制御部115は、試料10の撮像画像に基づいて光検出部40を用いた光検出動作を制御する。これにより、撮像画像に基づいて、試料10が検出槽220に存在するか否か、試料10の状態が適正か否かを判断できる。その結果、中の試料10の状態が適正でない場合などに、光検出動作を行うことなく処理を中止して、速やかにユーザに報知したり、試料10の状態に応じて分析結果を補正したりすることができる。
【0094】
撮像画像に基づくエラー判定において、制御部115は、たとえば
図18(A)に示すように、撮像画像405中の試料10の形状に基づいて、試料10が検出槽220に正常に到達したか否かを判定する。試料10の形状は、撮像画像405中の検出槽220において試料10が存在する液体部分の輪郭10aを検出することにより取得される。液体部分の輪郭10aは、公知のエッジ検出により検出できる。制御部115は、たとえば検出槽220の面積に対して試料10の輪郭10aに囲まれる領域の面積が許容範囲よりも小さい場合に、送液エラーであると判定する。したがって、送液エラーは、試料10が検出槽220に正常に到達していないことを表す。試料10の面積が許容範囲内であれば、制御部115は、試料10の送液が正常であると判定する。
【0095】
制御部115は、たとえば
図18(B)に示すように、撮像画像405中の試料10の形状に基づいて、検出槽220へ気泡が混入したか否かを判定する。制御部115は、エッジ検出により、検出槽220と試料10との間に気泡部分401が存在するか否かを判定する。制御部115は、たとえば気泡部分401の面積が許容範囲よりも大きい場合に、気泡混入エラーと判定する。制御部115は、気泡部分401が検出されない場合や、気泡部分401の面積が許容範囲内である場合、気泡混入に関して正常であると判定する。
【0096】
制御部115は、たとえば、
図18(C)に示すように、撮像画像405中において磁性粒子の凝集領域402が存在するか否かを判定する。磁性粒子は微小粒径を有するため、正常な分散状態では画像中でほとんど識別されないが、凝集するほど不透明な有色領域として写るようになる。制御部115は、試料10の輪郭10a内における色またはコントラストの変化に基づいて、試料10の内部に、磁性粒子が凝集した凝集領域402が存在するか否かを判定する。試料10の輪郭10a内に凝集領域402が存在する場合には、制御部115は、磁性粒子の凝集エラーと判定する。制御部115は、凝集領域402が検出されない場合、凝集の有無に関して正常であると判定する。
【0097】
なお、撮像画像405に基づいて試料10の状態にエラーが検出された場合であっても、制御部115は、たとえば後続の検出処理動作(ステップS10)を実行するが、分析結果とともにエラーの可能性がある旨を表示部112に表示するようにしてもよい。
【0098】
ステップS9においていずれのエラーも検出されなかった場合、ステップS10において、分析装置100は、光検出処理を実施する。すなわち、制御部115は、免疫複合体の標識抗体と発光基質との反応により発生した光を光検出部40により検出する。いずれかのエラーが検出された場合、ステップS11において、制御部115は、ステップS9において判定したエラー種別に応じて、表示部112およびインジケータ113に所定のエラー情報を表示する。
【0099】
次に、ステップS10における光検出部40を用いた光検出処理の詳細を説明する。
【0100】
図14のステップS21において、制御部115は、照明部51をオフにし、撮像部50による撮像を停止する。
【0101】
ステップS22において、制御部115は、駆動源141を制御して回転軸140を所定角度回動させることにより、光調整部70を第2光透過状態Q1Bに切り替える。反射部60は、第2部分63によって反射状態P1に切り替わる。
【0102】
ステップS23において、制御部115は、光検出部40を用いた検出光量のプレチェックを行う。すなわち、反射部60を反射状態P1に切り替え、光調整部70を第2光透過状態Q1Bに切り替えた状態で、一度、光検出が行われる。
【0103】
ステップS24において、制御部115は、光調整部70の状態を設定する。たとえば、制御部115は、プレチェックにおける検出光量が所定の閾値以上の場合、光調整部70を第2光透過状態Q1Bに設定する。この場合、反射部60および光調整部70は、プレチェックの状態のままとなる。たとえば、制御部115は、プレチェックにおける検出光量が所定の閾値未満の場合、駆動源141を制御して回転軸140を所定角度回動させることにより、光調整部70を第1光透過状態Q1Aに切り替える。すなわち、制御部115は、光調整部70を第1光透過状態Q1Aにするべく、回転軸140の回動角度を所定値に設定する。反射部60は、第1部分62によって反射状態P1が維持される。プレチェックにより、光検出部40の検出信号が飽和することを回避でき、適切な感度での光検出が可能となる。
【0104】
ステップS25において、制御部115は、光検出部40による光検出を行う。光検出部40は、たとえば、受光位置102に入射した光子の数を計数し、検出結果を分析部116に出力する。分析部116は、光検出部40により検出された光量に基づいて、試料10の分析結果を出力する。分析部116は、たとえば、検出された光子数の検出値と標準曲線とを比較することにより、被検物質の有無を判定し、または被検物質の濃度などを定量する。
【0105】
このように、制御部115は、試料10の撮像後、反射部60を反射状態P1に切り替えた状態で、試料10からの光検出を行うように光検出部40を制御し、分析部116は、反射状態P1において光検出部40により検出された光量に基づいて、試料10の分析結果を出力する。これにより、反射部60による反射光も検出することにより高い感度で検出された光量に基づいて、より精度の高い分析結果が得られる。
【0106】
光検出が完了すると、ステップS26において、制御部115は、駆動源141を制御して回転軸140を所定角度回動させることにより、光調整部70を光遮断状態Q2に切り替える。このとき、反射部60は非反射状態P2に切り替わる。この結果、分析が終了したカートリッジ200が取り出される際にも、光検出部40に不要な光が入射することが抑制される。
【0107】
以上により、カートリッジ200を用いた分析装置100による測定動作が行われる。
【0108】
(分析装置の他の構成例)
次に、
図15〜
図17を参照して、分析装置の他の構成例について説明する。
【0109】
図15に示す構成例では、保持部30が、収容部材20を保持した状態で収容部材20を移動させることが可能である。
図15(A)は、平面視における保持部30の模式図である。保持部30は、円板形状に形成され、図示しない駆動源により中央の回転軸310周りに回転できる。これにより、保持部30は、保持部30上に載置された収容部材20を所定位置101に移動させる。保持部30は、複数の収容部材20を保持可能であり、載置された収容部材20を順次所定位置101に移動させる。これにより、複数の収容部材20に対して連続的に光検出を行うことができる。所定位置101において、反射部60および光調整部70が配置されている。
【0110】
図15(B)に示す構成例では、保持部30が、収容部材20を保持した状態で収容部材20を直線移動させることが可能である。
図15(B)は、平面視における保持部30の模式図である。保持部30は、たとえばベルトコンベアや直動機構などからなり、載置位置に載置された収容部材20を所定位置101まで移送できる。保持部30は、複数の収容部材20を保持可能であり、載置された収容部材20を順次所定位置101に移動させる。所定位置101において、反射部60および光調整部70が配置されている。
【0111】
図16には、反射部60または光調整部70の他の構成例を示している。
図8では、反射部60および光調整部70が概略で扇状形状に形成された例を示したが、
図16(A)のように、反射部60が矩形板状に形成されていてもよい。
図16(B)のように、光調整部70が矩形状の光透過部71および光遮断部72を含んでいてもよい。反射部60および光調整部70は、どのような形状を有していてもよい。
【0112】
図16(C)および(D)に示す構成例では、反射部60および光調整部70が、円板形状を有している。
図16(C)および(D)は、平面視における反射部60および光調整部70の模式図である。
図16(C)に示すように、反射部60は、たとえば、反射面61が形成された部分と、貫通孔320が形成された部分とを含んでいてもよい。反射部60は、収容部材20と撮像部50との間に貫通孔320を位置付けることにより、非反射状態P2となる。
【0113】
図16(D)に示すように、光調整部70は、たとえば、貫通孔71aおよび減光フィルタ部71b以外のフィルタ部を含んでいてもよい。光調整部70は、たとえば、所定波長の光のみを透過する光学バンドパスフィルタが設けられた波長フィルタ部330を含んでいてもよい。貫通孔71aおよび光遮断部72や、フィルタ部の形状は、特に限定されない。
図16(D)のように、フィルタ部の形状として、扇形状でも、円形状でも、これら以外の形状が採用されてもよい。
【0114】
図17(A)に示す構成例では、反射部60および光調整部70が、水平方向に直線移動できる。
図17(A)は、平面視における、反射部60および光調整部70と、光検出部40とを示した模式図である。反射部60および光調整部70は、光検出部40よりも上方位置に配置され、互いに上下に重なるように設けられている。反射部60および光調整部70は、水平方向に直線状に延びる軸340に取り付けられており、駆動源341によって水平方向に直線移動する。これにより、反射部60は、水平方向に直線移動することにより、所定位置101の収容部材20を介して光検出部40と対向する反射位置において反射状態P1となり、所定位置101の収容部材20と撮像部50との間を遮らない退避位置において非反射状態P2となる。同様に、光調整部70は、水平方向に直線移動して、所定位置101の収容部材20と光検出部40との間に光透過部71が配置される光透過状態Q1と、所定位置101の収容部材20と光検出部40との間に光遮断部72が配置される光遮断状態Q2とに切り替えられる。
【0115】
図17(B)に示す構成例では、反射部60が、水平方向に延びる回転軸350周りに、上下方向に回動できる。
図17(B)は、回転軸350が延びる方向から見た、反射部60と、光検出部40とを示した模式的な側面図である。反射部60は、回転軸350周りに回動して略水平状態となることにより、所定位置101の収容部材20を介して光検出部40と対向する反射位置に配置され、反射状態P1となる。反射部60は、回転軸350周りに回動して略垂直状態となることにより、所定位置101の収容部材20と撮像部50との間を遮らない退避位置に配置され、非反射状態P2となる。
【0116】
光調整部70も
図17(B)の光反射部60と同様に構成してよい。光調整部70は、略垂直状態となることにより、所定位置101の収容部材20から光検出部40に向かう光を透過させる光透過状態となる。光調整部70は、略水平状態となることにより、所定位置101の収容部材20から光検出部40に向かう光を遮断する光遮断状態となる。
【0117】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。