【解決手段】磁性粒子上に形成された被検物質と被検物質に結合する標識物質とを含む複合体20を、流路と検出層とを含む検体カートリッジ200の流路中において磁石部80により移動させ、流路中の磁性粒子を撮像し、検出槽中の複合体20に含まれる標識物質の標識を測定する。
磁性粒子上に形成された被検物質と前記被検物質に結合する標識物質とを含む複合体を、流路と検出層とを含む検体カートリッジの前記流路中において磁石部により移動させ、
前記流路中の前記磁性粒子を撮像し、
前記検出槽中の前記複合体に含まれる前記標識物質の標識を測定する、分析方法。
撮像された画像データに基づいて、前記検体カートリッジ内の前記磁性粒子の状態として、前記磁性粒子が前記磁石部から所定の距離以上離れた場所に所定量以上残留しているか否か、または、前記磁性粒子が正常に撹拌されているか否かを取得する、請求項2に記載の分析方法。
撮像された前記検出槽の画像データに基づいて、前記検体カートリッジ内の前記磁性粒子の状態として、前記検出槽へ前記複合体が形成された前記磁性粒子が正常に移動されているか否かを取得する、請求項2または3に記載の分析方法。
撮像された前記検出槽の画像データから、前記検出槽内の前記磁性粒子の量を取得し、取得した前記磁性粒子の量に基づいて、前記標識物質の標識の測定結果を補正する、請求項4に記載の分析方法。
撮像された画像データの前記磁性粒子の量の変化に基づいて、前記磁石部により前記磁性粒子が正常に撹拌されているか否かを取得する、請求項2〜5のいずれか1項に記載の分析方法。
前記第1移動機構部は、前記磁石部および前記撮像部の両方を前記検体カートリッジの平板状の延びる方向と平行な方向に移動可能に支持する支持部を含む、請求項13に記載の分析装置。
前記磁石部を前記検体カートリッジの平板状の延びる方向と交差する方向に相対移動させる第2移動機構部をさらに備える、請求項12〜14のいずれか1項に記載の分析装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
(分析装置の概要)
図1を参照して、本実施形態による分析装置の概要について説明する。
【0013】
本実施形態による分析装置100は、流路と検出槽とを備える検体カートリッジ200を用いて検体に含まれる被検物質を分析する分析装置である。
図1に示すように、分析装置100は、測定部40と、撮像部50と、磁石部80とを備える。検体カートリッジ200と分析装置100とにより、分析システム300が構成されている。
【0014】
検体カートリッジ200には、患者から採取された組織や、患者から採取された体液・血液などの検体が注入される。検体が注入された検体カートリッジ200が、分析装置100にセットされる。検体カートリッジ200に注入された検体は、検体カートリッジ200が有する機能と分析装置100が有する機能とに基づいて、所定のアッセイ法によって分析される。
【0015】
検体カートリッジ200において、被検物質と磁性粒子とが結合されて複合体20とされる。複合体20は、検体カートリッジ200内において磁石部80により移動される。つまり、複合体20の磁性粒子が磁石部80の磁力により引き付けられる。そして、磁石部80が検体カートリッジ200に対して相対移動することにより、複合体20が検体カートリッジ200内の通路を移動する。
【0016】
測定部40は、検出槽中の磁性粒子上に形成された被検物質と被検物質に結合する標識物質とを含む複合体20に含まれる標識物質の標識を測定する。たとえば、測定部40は、複合体20に含まれる標識と、発光基質とが反応した蛍光物質の発光を測定する。
【0017】
撮像部50は、磁性粒子の状態を撮像する。撮像部50は、検体カートリッジ200内を移動する磁性粒子を撮像する。撮像部50は、検体カートリッジの少なくとも流路中の磁性粒子を撮像する。撮像部50は、検体カートリッジ200に対して水平方向(A方向)に相対移動可能である。つまり、撮像部50は、検体カートリッジ200の平板状の延びる方向と平行な方向において移動可能である。
【0018】
磁石部80は、磁性粒子と被検物質とが結合された複合体20を検体カートリッジ200内において移動させる。磁石部80は、検体カートリッジ200に対して水平方向(A方向)および鉛直方向(Z方向)に相対移動可能である。つまり、磁石部80は、検体カートリッジ200の平板状の延びる方向と平行な方向および垂直な方向に移動可能である。磁石部80は、上下方向(Z方向)に移動して、検体カートリッジ200内の磁性粒子を上下方向(Z方向)に引き付ける。磁石部80は、水平方向に移動して、検体カートリッジ200内の磁性粒子を流路に沿って移動させる。
【0019】
撮像部50は、磁石部80とともに、検体カートリッジ200に対して相対移動する。たとえば、撮像部50は、水平方向(A方向)において、磁石部80とともに、検体カートリッジ200に対して相対移動する。
【0020】
図1の構成例によれば、磁石部80の移動により、磁性粒子を検体カートリッジ200内において移動させることができる。また、撮像部50により検体カートリッジ200内の磁性粒子の状態を撮像することができるので、磁性粒子の移動を確認することができる。これにより、磁性粒子が検体カートリッジ200内を正常に移動しているか否かを確認することができる。たとえば、検体カートリッジ200の流路幅は細く、かつ、検体カートリッジ200内で洗浄、試薬混合、反応等の様々な工程を行う場合がある。このため、検体カートリッジ200内で反応を進めるために磁性粒子を移動させる際、磁性粒子が残留してしまう場合もあると考えられる。さらに、検体カートリッジ200では、少量の検体を用いて測定されるため、少しの磁性粒子の残留も測定結果に及ぼす影響は大きくなる。その結果、検体カートリッジ200内の流路に磁性粒子が残っていないかを撮像することは重要である。また、
図1の分析装置100では、撮像部50により撮像した画像データに基づいて、検体カートリッジ200内の磁性粒子の状態を取得することができるので、検体カートリッジ200内を磁性粒子を移動させる毎にセンサにより状態を検出する必要がない。これにより、センサを複数設ける必要がないので、部品点数が増加するのを抑制することができる。また、分析装置100の構成を簡素化することができるとともに、分析装置100が大型化するのを抑制することができる。また、複数のセンサをそれぞれメンテナンスする必要がないので、メンテナンスの作業負担を軽減することができる。また、撮像部50により撮像した画像データを取得することができるので、検体カートリッジ200内の磁性粒子の状態を確認して、詳細に解析するために画像データを用いることができる。
【0021】
(分析システムの構成例)
図2は、分析装置100の一構成例を示す外観図である。分析装置100は、複合体20に含まれる標識の発光に基づいて、検体中の被検物質の存在の有無や、検体中の被検物質の濃度を決定できる。分析装置100は、小型であり、たとえば医師が患者を診察する診察室のデスク上に設置可能なサイズである。
図2では、分析装置100のサイズは、たとえば、設置面積で150cm
2〜300cm
2程度である。分析装置100は、たとえば、検体カートリッジ200が挿入されるスロットを有し、スロットに挿入された検体カートリッジ200が装置内の保持部30にセットされる。分析装置100は、保持部30にセットされた検体カートリッジ200に対して分析処理を行う。
【0022】
図2の構成例では、分析装置100は、装置本体を収容する筐体110を備える。筐体110の側面には、スロットを露出させる開位置と、スロットを覆う閉位置とに開閉可能な蓋部111と、表示部112と、インジケータ113とがある。蓋部111を開放してスロット内に検体カートリッジ200が挿入され、蓋部111を閉じた状態で分析処理が実施される。表示部112は、たとえば液晶モニタなどにより構成され、分析結果などの所定の情報を表示できる。インジケータ113は、発光ダイオードなどのランプにより構成され、点灯状態や色などにより分析装置100の状態を表すことができる。また、表示部112には、エラーが発生した場合にエラー通知を表示することができる。また、インジケータ113の点灯、点滅によりエラーを通知してもよい。
【0023】
分析装置100は、図示したものに限られず、たとえば筐体110の上面に開閉蓋を設けて、蓋を開放した状態で装置内の保持部30に検体カートリッジ200などの検出部材が設置され、蓋を閉じた状態で分析処理を行う構成などであってもよい。
【0024】
(検体カートリッジの構成例)
図3は、本実施形態の検体カートリッジ200の具体的な構成例を示す。検体カートリッジ200は、使い捨て可能なカートリッジであってよい。その場合、検体カートリッジ200はパッケージに収納された状態で保管され、パッケージから取り出されて使用される。検体カートリッジ200は、平板状に形成されていてる。
【0025】
検体カートリッジ200は、検体、試薬、洗浄液などの液体を配置するための複数の液体収容部210を有する。ここでは、検体が血液である例を示す。一部の試薬は、被検物質を含む物質と反応する磁性粒子を含む。検体カートリッジ200は、検出槽220と、液体反応部230とを有する。検体カートリッジ200は、磁性粒子と被検物質とが結合された複合体20が移動する通路を含む。検体カートリッジ200は、透明または半透明の材料により形成されている。これにより、検体カートリッジ200内を移動する磁性粒子を撮像部50により撮像することができる。
【0026】
検体は、検体カートリッジ200の血球分離部240に注入される。血球分離部240が封止された状態の検体カートリッジ200が、分析装置100に挿入される。血球分離部240は、注入された血液から血球成分を分離する。
【0027】
図3の構成例では、液体収容部210は、8つの液体収容部211、212、213、214、215、216、217および218を含む。各液体収容部211〜218、検出槽220、液体反応部230、および血球分離部240は、処理工程に沿った順番で並んでおり、液体または磁性粒子の移送経路に沿って通路部250を介して接続されている。
【0028】
検体カートリッジ200は、エアチャンバ260を有する。
図3の構成例では、エアチャンバ261、262および263の3つのエアチャンバ260が設けられている。エアチャンバ260から送出される空気により、検体カートリッジ200内の一部の液体が移送される。
【0029】
(分析装置の構成例)
図4〜
図6は、検体カートリッジ200を用いる分析装置100の具体的な構成例を示す。
【0030】
分析装置100は、保持部30と、測定部40と、撮像部50と、反射部60と、磁石部80とを備える。保持部30と、検出部40と、撮像部50と、反射部60と、磁石部80とは、筐体110内に収納されている。
図4〜
図6の構成例では、分析装置100は、さらに、プランジャユニット90を備える。
【0031】
保持部30は、分析装置100のスロット部分である開口部31(
図4参照)を介して挿入された検体カートリッジ200を所定位置に保持する。保持部30は、検体カートリッジ200を分析装置100の設置面と略平行な状態で保持する。なお、分析装置100の設置面は概ね水平に保たれていると見なしてよいので、本明細書では、分析装置100の設置面と平行な面あるいは方向を、水平面あるいは水平方向と言い換える。以降の説明では、便宜的に、水平面内における分析装置100の短手方向をX方向とし、長手方向をY方向とする。X方向およびY方向と直交する上下方向を、Z方向とする。
【0032】
図4〜
図6の構成例では、保持部30は、検体が注入されることにより試薬と検体とが混合されて複合体20が調製される検体カートリッジ200を着脱可能に保持する。保持部30は、検体カートリッジ200における検出槽220(
図3参照)を測定位置101に配置するように構成されている。これにより、検体が注入された検体カートリッジ200を保持部30に設置した状態で、複合体20の調製と、複合体20に含まれる標識に基づく光の検出とが分析装置100によって実施できるようになる。そのため、複合体20を事前に調製する必要がなく、ユーザにとっての利便性が向上する。
【0033】
保持部30は、基台114上に設置されており、検体カートリッジ200の周縁部を支持できる。保持部30は、撮像や光検出のため、検体カートリッジ200の上面側および下面側の一部を露出させるように形成されている。保持部30は、検体カートリッジ200を保持することが可能であれば、どのような構造でもよい。
【0034】
測定部40は、検体カートリッジ200内の測定位置101における複合体20に含まれる標識に基づく信号を測定する。具体的には、測定部40は、複合体20に含まれる標識の発光を測定する。たとえば、測定部40は、公知の光センサにより構成される。光センサは、たとえば、光電子増倍管、光電管、光ダイオードなどである。測定部40は、測定位置101の下方の受光位置102に固定的に配置されている。測定部40は、受光位置102を測定位置101側である上面側に有している。測定部40は、保持部30の下面側に形成された開口を介して、測定位置101から受光位置102に到達した光を検出する。測定部40は、ケース41内に収納されており、受光位置102を除いて遮光されている。
【0035】
図4〜
図6の構成例では、反射部60は、測定位置101に対して測定部40とは反対側の上方位置に配置されたミラー部材である。反射部60は、測定部40、検体カートリッジ200および撮像部50に対して相対移動する。反射部60は、測定位置101と撮像部50との間で、かつ、測定位置101を介して測定部40と対向する反射位置において反射状態となるように構成されている。また、反射部60は、測定位置101と撮像部50との間を遮らない退避位置において開放状態となるように構成されている。
【0036】
図4〜
図6の構成例では、分析装置100は、測定位置101と測定部40との間に配置された光調整部70(
図4および
図5参照)をさらに備える。光調整部70は、測定位置101から測定部40に向かう光を透過させる光透過状態と、測定位置101から測定部40に向かう光を遮断する光遮断状態と、を切り替え可能に構成されている。これにより、複合体20からの光を検出する時は、光調整部70を光透過状態にして光検出を行うことができ、検出時以外で必要に応じて光調整部70を光遮断状態にして測定部40への光を遮断できる。そのため、外部からの不必要な光が測定部40に入射することが抑制できるので、測定部40の検出感度をより向上させることができる。
【0037】
撮像部50は、磁性粒子の状態を撮像する。具体的には、撮像部50は、検体カートリッジ200内を移動する磁性粒子を撮像する。これにより、磁性粒子の移動を確認することができる。また、撮像部50は、検体カートリッジ200内の流路における液体の移動や、気泡の混入の状態を撮像する。撮像部50は、たとえば、公知の小型カメラにより構成される。小型カメラは、たとえば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサなどを含む。また、撮像部50は、たとえば、100度から130度程度の視野角を有する。また、撮像部50は、たとえば、半径20mmから50mm程度の撮像範囲を有する。また、撮像部50は、動画または静止画を撮像することができる。撮像部50は、検体カートリッジ200の一部を撮像可能な視野を有する。これにより、磁性粒子を含む領域の詳細な動画または静止画を取得することができる。撮像部50は、測定位置101の上方に配置されている。
図4に示すように、撮像部50は、保持部30の上方位置で、撮像方向を下方側に向けて設けられている。撮像部50は、X方向およびY方向に移動可能に構成されている。なお、検体カートリッジ200に対して撮像部50と反対側には、磁性粒子と識別可能な色の背景部103が配置されていてもよい。背景部103は、検体カートリッジ200に設けられていてもよいし、分析装置100の保持部30に設けられていてもよい。これにより、磁性粒子を撮像部50により鮮明に撮像することができる。また、磁性粒子が茶色の場合、背景部103の色は、白色、灰色、黒色の順で好ましい。
【0038】
また、撮像部50は、磁石部80とともに検体カートリッジ200に対して相対移動する。これにより、撮像部50を固定した場合に磁石部80の移動により死角となる部分が発生するのを抑制することができる。また、磁石部80により移動される磁性粒子を磁石部80の移動に沿って、撮像部50により撮像することができる。撮像部50は、検体カートリッジ200の平板形状の延びる方向と平行な方向(XY方向)において、磁石部80とともに、検体カートリッジ200に対して相対移動する。これにより、撮像部50の移動と磁石部80の水平方向の移動を共通の移動機構により行うことができるので、部品点数が増加するのを抑制することができるとともに、撮像部50および磁石部80の移動機構を簡素化することができる。
【0039】
撮像のため、分析装置100は、照明部51を備えている。照明部51は、たとえば、発光ダイオードなどにより構成される。照明部51は、たとえば、保持部30よりも上方の位置で、保持部30のY方向の両端近傍の位置に対で設けられる。各照明部51は、たとえば、X方向の中央付近に配置される。これにより、撮像部50の撮像視野は、Y方向の両側からの照明光によって照らされる。
【0040】
図4〜
図6の構成例では、磁石部80は、磁性粒子と被検物質とが結合された複合体20を検体カートリッジ200内において移動させる。磁石部80は、検体カートリッジ200を挟むように一対の磁石部81aおよび81bが設けられている。一方の磁石部81aは、検体カートリッジ200および保持部30に対して上方(Z1側)に配置され、他方の磁石部81bは、検体カートリッジ200および保持部30に対して下方(Z2側)に配置されている。各磁石部80は、連結部82により支持されている。具体的には、一対の磁石部81aおよび81bは、連結部82により上下方向に所定の間隔を隔てて保持されている。
図5に示すように、磁石部80は、X方向、Y方向およびZ方向の各方向に移動できる。なお、撮像部50は、磁石部81aと一体的に、X方向およびY方向に移動できる。また、撮像部50は、磁石部81bと、測定位置101の周辺以外では、一体的にX方向およびY方向に移動できる。磁石部81bは、測定位置101の周辺では、測定部40のケース41に当接して移動が規制される。磁石部81bは、移動が規制されると、所定の回動軸を中心に回動されて、それ以上は測定位置101方向に進まない。磁石部81aおよび81bは、撮像部50とは独立して、Z方向に移動できる。撮像部50は、Z方向には移動しない。
【0041】
磁石部81aおよび81bは、先細り形状を有し、先端部が着磁部になっている。磁石部81aの下方向の移動により磁石部81aが検体カートリッジ200の上面に近付くことにより、磁石部81aが上方から検体カートリッジ200に磁力を作用させる。磁石部81bの上方向の移動により磁石部81bが検体カートリッジ200の下面に近付くことにより、磁石部81bが下方から検体カートリッジ200に磁力を作用させる。保持部30は、少なくとも磁石部81aおよび81bが移動する範囲において、検体カートリッジ200の上面側および下面側を露出させている。
【0042】
磁石部81aまたは81bを検体カートリッジ200に近づけることにより、検体カートリッジ200内で磁性粒子が集められる。磁石部81aまたは81bを検体カートリッジ200に近づけた状態で水平移動することにより、集められた磁性粒子が水平方向に移動される。磁石部81aおよび81bが検体カートリッジ200に交互に近付くように上下に往復移動することにより、検体カートリッジ200内の磁性粒子を上下に移動させることができる。これにより、検体カートリッジ200内の液体と磁性粒子とが攪拌される。
【0043】
図5に示すように、プランジャユニット90は、保持部30の上面側に配置されている。プランジャユニット90は、プランジャ91と、プランジャ91を作動させる駆動部92とを含む。プランジャ91は、保持部30に保持された検体カートリッジ200のエアチャンバ260(
図4参照)に対して上方に配置され、上下に移動できる。プランジャ91は、たとえばエアチャンバ260と同数設けられており、駆動部92によって、各プランジャ91が独立または連動して上下移動する。プランジャユニット90は、プランジャ91によって、検体カートリッジ200のエアチャンバ260を押し下げる。プランジャ91の押し下げによってエアチャンバ260から空気が送り出され、検体カートリッジ200内の一部または全部の液体が移送される。保持部30は、少なくとも磁石部81aおよび81bが移動する範囲において、検体カートリッジ200の上面側および下面側を露出させている。
【0044】
分析装置100は、装置の制御を行うための制御部115と、測定部40の出力信号を分析する分析部116とを備える。制御部115は、測定部40と、撮像部50と、反射部60と、を制御して、撮像動作や光検出動作を制御する。分析部116は、測定部40により検出された光量に基づいて分析を行う。分析装置100は、たとえば別体で設けられたコンピュータに測定部40の検出結果を出力して、コンピュータにより分析を行ってもよい。
【0045】
制御部115は、たとえば、演算処理部、記憶部を含む。演算処理部は、たとえば、CPU(中央演算処理装置)、MPU(マイクロ演算処理装置)などにより構成される。記憶部は、たとえば、フラッシュメモリ、ハードディスクメモリなどにより構成される。記憶部には、異常を検出する場合の閾値、異常を検出した場合の画像を取得したタイミングなどが記憶される。また、記憶部には、撮像部50に対する磁石部80の距離が記憶される。また、制御部115は、撮像部50により撮像された画像データに基づいて、検体カートリッジ200内の磁性粒子の状態を取得する。これにより、制御部115により検体カートリッジ200内の磁性粒子の状態を容易に取得することができるので、エラーの発生を測定途中に速やかにユーザに通知することができる。なお、画像データは、撮像部50により撮像された画像の各画素におけるRGBの画素値情報を含む。また、制御部115は、撮像部50により撮像された画像データの色情報またはコントラスト情報に基づいて、磁性粒子を検出する。これにより、色情報またはコントラスト情報に基づいて、撮像した画像から磁性粒子を容易に認識することができる。
【0046】
また、制御部115は、撮像部50により撮像された画像データに基づいて、流路を検出し、検出した流路内から磁性粒子を検出する。なお、流路は、検体カートリッジ200内の流体が通る通路であり、液体収容部211〜218、検出槽220、液体反応部230、および血球分離部240、通路部250を含む。これにより、画像データ中の流路外に磁性粒子があるか否かを解析しないので、流路外に磁性粒子を検出するという誤検出を抑制することができる。その結果、精度よく、磁性粒子を検出することができる。
【0047】
また、制御部115は、撮像部50により撮像された画像データに基づいて、検体カートリッジ200内の磁性粒子の状態として、磁性粒子が磁石部80から所定の距離以上離れた場所に所定量以上残留しているか否か、または、磁性粒子が正常に撹拌されているか否かを取得する。たとえば、制御部115は、記憶部に記憶された磁石部80と、撮像部50との距離に基づいて、画像データ中の磁石部80の位置を特定し、特定した磁石部80の位置と、画像データ中の磁性粒子の位置とに基づいて、磁性粒子と磁石部80との距離を取得する。また、制御部115は、画像データ中の磁石部80の位置と、画像データ中の磁性粒子の位置とに基づいて、磁性粒子と磁石部80との距離を取得する。また、磁石部80の位置は、磁石部80の先端の位置であってもよい。これにより、磁性粒子の残留の状態、磁性粒子の撹拌の状態を測定途中に検知しながら測定作業を行うことができるので、たとえば、磁性粒子の移動の状態、磁性粒子の残留の状態、磁性粒子の撹拌の状態などが適正でない場合に、動作をやり直すことにより、測定不良が生じるのを抑制することができる。また、たとえば、エラーを検知した場合、測定途中に測定作業を中断させることもできる。
【0048】
また、制御部115は、撮像部50により撮像された検出槽220の画像データに基づいて、検体カートリッジ200内の磁性粒子の状態として、検出槽220へ複合体20が形成された磁性粒子が正常に移動されているか否かを取得する。これにより、複合体20が測定位置101に正常に移動されたか否かを判断することができるので、複合体20を精度よく測定することができる。
【0049】
また、制御部115は、撮像部50により撮像された検出槽220の画像データから、検出槽220内の磁性粒子の量を取得し、取得した磁性粒子の量に基づいて、測定部40による測定結果を補正する。これにより、測定部40による測定と、撮像部50の撮像による磁性粒子の量との両方により、精度よく複合体20の濃度を取得することができる。
【0050】
また、制御部115は、撮像部50により撮像された画像データの磁性粒子の量の変化に基づいて、磁石部80により磁性粒子が正常に撹拌されているか否かを取得する。これにより、撹拌状態が良好であるか否かを測定途中に判断することができる。
【0051】
また、制御部115は、撮像部50により撮像された画像データに基づいて、検体カートリッジ200内の磁性粒子の状態として、磁石部80から所定の距離以下の距離の磁性粒子の量を測定し、磁性粒子が正常に移動されているか否かを取得する。つまり、制御部115は、磁石部80により移動される磁性粒子の量の増減を測定し、磁性粒子の移動の状態を取得する。
【0052】
また、制御部115は、撮像部50により撮像された画像データに基づいて、検体カートリッジ200の流路または検出槽220への気泡の混入を検出する。これにより、流路内に気泡が混入したことを測定途中に判断することができる。
【0053】
また、制御部115は、取得した検体カートリッジ200内の磁性粒子の状態に基づいて、エラーを通知する。これにより、エラーの発生を測定途中に速やかにユーザに通知することができる。たとえば、制御部115は、検体カートリッジ200内の磁性粒子が磁石部80から所定の距離以上離れた場所に所定量以上残留している場合に、エラーが発生したとして、表示部112にエラー通知を表示する制御を行う。また、制御部115は、検体カートリッジ200内の磁性粒子が正常に撹拌されていない場合に、エラーが発生したとして、表示部112にエラー通知を表示する制御を行う。また、制御部115は、検出槽220へ複合体20が形成された磁性粒子が正常に移動されていない場合に、エラーが発生したとして、表示部112にエラー通知を表示する制御を行う。また、制御部115は、検体カートリッジ200の流路または検出槽220に気泡が混入している場合に、エラーが発生したとして、表示部112にエラー通知を表示する制御を行う。表示部112にエラー通知を表示する以外に、エラー通知は、音により通知してもよいし、音と表示との両方により通知してもよい。また、エラー通知は、外部のモニタなどにより通知してもよい。
【0054】
なお、制御部115は、分析装置100の外部に設けられていてもよい。たとえば、制御部115は、分析装置100に接続されたコンビュータにより構成されていてもよい。
【0055】
(撮像部および磁石部の移動機構)
図4〜
図6の構成例における撮像部50および磁石部80の移動機構について説明する。
図4〜
図6の構成例では、分析装置100は、撮像部50および磁石部80の両方を水平方向(XY方向)に移動させる第1移動機構部83をさらに備える。また、分析装置100は、磁石部80を鉛直方向(Z方向)に移動させる第2移動機構部84をさらに備える。
図5に示すように、撮像部50は、支持部120に固定されている。具体的には、撮像部50は、支持部120の上部からX方向に延びるアーム121(
図4参照)の先端部に取り付けられている。磁石部80は、支持部120に対して上下移動可能に取り付けられている。つまり、支持部120は、磁石部80および撮像部50の両方を平板状の検体カートリッジ200と平行な方向(XY方向)に相対移動可能に支持する。これにより、磁石部80および撮像部50の両方を、水平方向に容易に移動させることができる。支持部120には、第2移動機構部84として、Z軸モータ122と、伝達機構とが設けられている。伝達機構は、
図5の構成例では、磁石部80を移動させるZ方向のネジ送り機構123と、ネジ送り機構123にZ軸モータ122の駆動力を伝達するベルト・プーリ機構124との組み合わせにより構成されている。Z軸モータ122の回転により、磁石部80が支持部120に対してZ方向に移動する。
【0056】
支持部120は、移動体125に、Y方向に移動可能に支持されている。移動体125には、第1移動機構部83として、Y軸モータ126と、伝達機構とが設けられている。伝達機構は、
図5の構成例では、支持部120を移動させるY方向のネジ送り機構127と、ネジ送り機構127にY軸モータ126の駆動力を伝達するベルト・プーリ機構128との組み合わせにより構成されている。Y軸モータ126の回転により、撮像部50および磁石部80を支持する支持部120が、移動体125に対してY方向に移動する。
【0057】
移動体125は、基台114にX方向に移動可能に支持されている。基台114には、第1移動機構部83として、X軸モータ129と、ガイド軸130(
図6参照)と、図示しない伝達機構とがある。ガイド軸130は、移動体125のX方向移動を案内する。X軸モータ129の回転により、移動体125と、撮像部50および磁石部80を支持する支持部120とが、基台114に対してX方向に移動する。伝達機構およびモータの構成は、図示したものに限られない。
【0058】
図4〜
図6の構成例では、撮像部50および磁石部80が移動することにより、撮像部50および磁石部80が検体カートリッジ200に対して相対移動する。撮像部50および磁石部80が移動する構成以外に、検体カートリッジ200が移動することにより、撮像部50および磁石部80が検体カートリッジ200に対して相対移動してもよい。また、撮像部50および磁石部80と、検体カートリッジ200との両方が移動することにより、撮像部50および磁石部80が検体カートリッジ200に対して相対移動してもよい。
【0059】
(分析装置の動作説明)
図7は、本実施形態の分析装置100および検体カートリッジ200を用いて、所定のアッセイ法を実施する場合の動作例を示す。動作説明において、検体カートリッジ200の構成については
図3を参照するものとする。分析装置100の構成については
図4〜
図6を参照するものとする。分析装置100の各部の制御は、制御部115が行う。
【0060】
まず、ユーザにより、検体カートリッジ200が分析装置100のスロットに挿入される。検体カートリッジ200は、パッケージから開封され、患者から採取された検体が注入された後で、分析装置100のスロットに挿入されることにより、保持部30に保持される。検体中の被検物質は、たとえば、抗原を含む。一例として、抗原は、B型肝炎表面抗原(HBsAg)である。被検物質は、抗原、抗体、または、その他のタンパク質のうち、1または複数であってよい。
【0061】
検体カートリッジ200が保持部30にセットされると、撮像部50による検体カートリッジ200の撮像が可能となる。制御部115は、照明部51をオンにし、測定動作の進行過程を撮像部50により動画によって撮像する。なお、撮像部50により静止画を撮像してもよい。
【0062】
ステップS1において、検体が液体反応部230に送られる。制御部115がプランジャユニット90を制御して、エアチャンバ261を押し下げる。検体は、エアチャンバ261から送出された空気により、液体収容部211に収容されたR1試薬とともに通路部250を流れて、液体反応部230に押し出される。この際、撮像部50により、液体反応部230および通路部250を含む流路が撮像される。制御部115は、撮像画像に基づいて検体およびR1試薬が液体反応部230に到達したか否かを判断する。また、制御部115は、流路に気泡が混入しているか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図12を参照して後述する気泡の検出処理により気泡が混入しているか否かを判断する。
【0063】
R1試薬は、被検物質と結合する捕捉物質を含む。捕捉物質は、たとえば、被検物質と結合する抗体を含む。抗体は、たとえば、ビオチン結合抗HBsモノクローナル抗体である。被検物質とR1試薬とは、抗原抗体反応により結合する。
【0064】
ステップS2において、分析装置100は、液体収容部212に収容されたR2試薬に含まれる磁性粒子を、液体反応部230へ移送する。磁性粒子は、R2試薬の液体成分中に分散している。制御部115は、磁石部80を移動させて、磁力により、液体収容部212中の磁性粒子を集めて、液体反応部230へ移動させる。この際、撮像部50により、液体収容部212および液体反応部230を含む流路が撮像される。制御部115は、撮像画像に基づいて磁性粒子が液体反応部230に到達したか否かを判断する。また、制御部115は、流路に磁性粒子が残留しているか否か、および、流路に気泡が混入しているか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図12を参照して後述する気泡の検出処理により気泡が混入しているか否かを判断する。また、制御部115は、
図13を参照して後述する磁性粒子の残留検出処理により流路に磁性粒子が残留しているか否かを判断する。
【0065】
ステップS3において、分析装置100は、液体反応部230内の液体を撹拌する。具体的には、磁石部80を周期的に上下方向に移動させて、磁性粒子を液体反応部230内において移動させる。これにより、液体反応部230内の液体が撹拌される。撹拌は、たとえば、2秒程度の周期で、200回から300回程度行われる。つまり、磁石部80は、2秒程度の周期で、200回から300回程度上下方向に往復移動する。この際、撮像部50により、液体反応部230が撮像される。制御部115は、撮像画像に基づいて撹拌が正常に行われたか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図16を参照して後述する磁性粒子の撹拌効率の定量化処理により撹拌が正常に行われたか否かを判断する。また、制御部115は、液体反応部230に気泡が混入しているか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図12を参照して後述する気泡の検出処理により気泡が混入しているか否かを判断する。
【0066】
液体反応部230では、磁性粒子と抗原−抗体反応体との反応により、磁性粒子の結合体が生成される。すなわち、R1試薬の捕捉物質と結合した被検物質が、捕捉物質を介して磁性粒子と結合する。磁性粒子は、被検物質の担体となる。磁性粒子は、たとえば、表面がアビジンでコーティングされたストレプトアビジン結合磁性粒子である。
【0067】
ステップS4において、分析装置100は、磁石部80の磁力によって、磁性粒子の結合体を、R3試薬が収容された液体収容部213に移送する。この際、撮像部50により、液体反応部230および液体収容部213を含む流路が撮像される。制御部115は、撮像画像に基づいて磁性粒子の結合体が液体収容部213に到達したか否かを判断する。また、制御部115は、流路に磁性粒子が残留しているか否か、および、流路に気泡が混入しているか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図12を参照して後述する気泡の検出処理により気泡が混入しているか否かを判断する。また、制御部115は、
図13を参照して後述する磁性粒子の残留検出処理により流路に磁性粒子が残留しているか否かを判断する。
【0068】
ステップS5において、分析装置100は、液体収容部213内の液体を撹拌する。具体的には、磁石部80を周期的に上下方向に移動させて、磁性粒子を液体収容部213内において移動させる。これにより、液体収容部213内の液体が撹拌される。撹拌は、たとえば、2秒程度の周期で、200回から300回程度行われる。つまり、磁石部80は、2秒程度の周期で、200回から300回程度上下方向に往復移動する。この際、撮像部50により、液体収容部213が撮像される。制御部115は、撮像画像に基づいて撹拌が正常に行われたか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図16を参照して後述する磁性粒子の撹拌効率の定量化処理により撹拌が正常に行われたか否かを判断する。また、制御部115は、液体反応部213に気泡が混入しているか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図12を参照して後述する気泡の検出処理により気泡が混入しているか否かを判断する。
【0069】
R3試薬は、標識物質を含む。R3試薬に含まれる標識抗体と磁性粒子の結合体とを反応させる。磁性粒子の結合体と標識抗体との反応により、免疫複合体が生成される。免疫複合体は、被検物質と、捕捉抗体と、標識抗体と、磁性粒子とを含む。
【0070】
ステップS6において、分析装置100は、磁石部80の磁力によって、免疫複合体を、液体収容部214に移送する。液体収容部214は、洗浄液を収容している。液体収容部214において、免疫複合体と未反応物質とを分離させる。すなわち、洗浄により未反応物質が除去される。この際、撮像部50により、液体収容部213および液体収容部214を含む流路が撮像される。制御部115は、撮像画像に基づいて磁性粒子の結合体が液体収容部214に到達したか否かを判断する。また、制御部115は、流路に磁性粒子が残留しているか否か、および、流路に気泡が混入しているか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図12を参照して後述する気泡の検出処理により気泡が混入しているか否かを判断する。また、制御部115は、
図13を参照して後述する磁性粒子の残留検出処理により流路に磁性粒子が残留しているか否かを判断する。
【0071】
ステップS7において、分析装置100は、液体収容部214内の液体を撹拌する。具体的には、磁石部80を周期的に上下方向に移動させて、磁性粒子を液体収容部214内において移動させる。これにより、液体収容部214内の液体が撹拌される。撹拌は、たとえば、2秒程度の周期で、200回から300回程度行われる。つまり、磁石部80は、2秒程度の周期で、200回から300回程度上下方向に往復移動する。この際、撮像部50により、液体収容部214が撮像される。制御部115は、撮像画像に基づいて撹拌が正常に行われたか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図16を参照して後述する磁性粒子の撹拌効率の定量化処理により撹拌が正常に行われたか否かを判断する。また、制御部115は、液体収容部214に気泡が混入しているか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図12を参照して後述する気泡の検出処理により気泡が混入しているか否かを判断する。
【0072】
ステップS8において、分析装置100は、磁石部80の磁力によって、免疫複合体を、液体収容部215に移送する。液体収容部215は、洗浄液を収容している。液体収容部215において、免疫複合体と未反応物質とを分離させる。すなわち、洗浄により未反応物質が除去される。この際、撮像部50により、液体収容部214および液体収容部215を含む流路が撮像される。制御部115は、撮像画像に基づいて磁性粒子の結合体が液体収容部215に到達したか否かを判断する。また、制御部115は、流路に磁性粒子が残留しているか否か、および、流路に気泡が混入しているか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図12を参照して後述する気泡の検出処理により気泡が混入しているか否かを判断する。また、制御部115は、
図13を参照して後述する磁性粒子の残留検出処理により流路に磁性粒子が残留しているか否かを判断する。
【0073】
ステップS9において、分析装置100は、液体収容部215内の液体を撹拌する。具体的には、磁石部80を周期的に上下方向に移動させて、磁性粒子を液体収容部215内において移動させる。これにより、液体収容部215内の液体が撹拌される。撹拌は、たとえば、2秒程度の周期で、200回から300回程度行われる。つまり、磁石部80は、2秒程度の周期で、200回から300回程度上下方向に往復移動する。この際、撮像部50により、液体収容部215が撮像される。制御部115は、撮像画像に基づいて撹拌が正常に行われたか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図16を参照して後述する磁性粒子の撹拌効率の定量化処理により撹拌が正常に行われたか否かを判断する。また、制御部115は、液体収容部215に気泡が混入しているか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図12を参照して後述する気泡の検出処理により気泡が混入しているか否かを判断する。
【0074】
ステップS10において、分析装置100は、磁石部80の磁力によって、免疫複合体を、液体収容部216に移送する。液体収容部216は、洗浄液を収容している。液体収容部216において、免疫複合体と未反応物質とを分離させる。すなわち、洗浄により未反応物質が除去される。この際、撮像部50により、液体収容部215および液体収容部216を含む流路が撮像される。制御部115は、撮像画像に基づいて磁性粒子の結合体が液体収容部216に到達したか否かを判断する。また、制御部115は、流路に磁性粒子が残留しているか否か、および、流路に気泡が混入しているか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図12を参照して後述する気泡の検出処理により気泡が混入しているか否かを判断する。また、制御部115は、
図13を参照して後述する磁性粒子の残留検出処理により流路に磁性粒子が残留しているか否かを判断する。
【0075】
ステップS11において、分析装置100は、液体収容部216内の液体を撹拌する。具体的には、磁石部80を周期的に上下方向に移動させて、磁性粒子を液体収容部216内において移動させる。これにより、液体収容部216内の液体が撹拌される。撹拌は、たとえば、2秒程度の周期で、200回から300回程度行われる。つまり、磁石部80は、2秒程度の周期で、200回から300回程度上下方向に往復移動する。この際、撮像部50により、液体収容部216が撮像される。制御部115は、撮像画像に基づいて撹拌が正常に行われたか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図16を参照して後述する磁性粒子の撹拌効率の定量化処理により撹拌が正常に行われたか否かを判断する。また、制御部115は、液体収容部216に気泡が混入しているか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図12を参照して後述する気泡の検出処理により気泡が混入しているか否かを判断する。
【0076】
ステップS12において、分析装置100は、磁石部80の磁力によって、免疫複合体を液体収容部217に移送する。この際、撮像部50により、液体収容部216および液体収容部217を含む流路が撮像される。制御部115は、撮像画像に基づいて磁性粒子の結合体が液体収容部217に到達したか否かを判断する。また、制御部115は、流路に磁性粒子が残留しているか否か、および、流路に気泡が混入しているか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図12を参照して後述する気泡の検出処理により気泡が混入しているか否かを判断する。また、制御部115は、
図13を参照して後述する磁性粒子の残留検出処理により流路に磁性粒子が残留しているか否かを判断する。
【0077】
液体収容部217は、R4試薬を収容している。R4試薬は、免疫複合体の発光を促進する組成を有する。R4試薬は、たとえば、緩衝液である。免疫複合体は、液体収容部217で、R4試薬に含有される緩衝液と反応する。
【0078】
ステップS13において、分析装置100は、液体収容部217内の液体を撹拌する。具体的には、磁石部80を周期的に上下方向に移動させて、磁性粒子を液体収容部217内において移動させる。これにより、液体収容部217内の液体が撹拌される。撹拌は、たとえば、2秒程度の周期で、200回から300回程度行われる。つまり、磁石部80は、2秒程度の周期で、200回から300回程度上下方向に往復移動する。この際、撮像部50により、液体収容部217が撮像される。制御部115は、撮像画像に基づいて撹拌が正常に行われたか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図16を参照して後述する磁性粒子の撹拌効率の定量化処理により撹拌が正常に行われたか否かを判断する。また、制御部115は、液体収容部217に気泡が混入しているか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図12を参照して後述する気泡の検出処理により気泡が混入しているか否かを判断する。
【0079】
ステップS14において、分析装置100は、免疫複合体と緩衝液との混合液を検出槽220に移送する。制御部115が、プランジャユニット90を制御してエアチャンバ262を押し下げ、通路部250を介して免疫複合体と緩衝液との混合液を検出槽220に押し出す。なお、磁石部80の磁力によっても、免疫複合体を検出槽220に移送してもよい。この際、撮像部50により、液体収容部217および検出槽220を含む流路が撮像される。制御部115は、撮像画像に基づいて磁性粒子の結合体が検出槽220に到達したか否かを判断する。また、制御部115は、流路に磁性粒子が残留しているか否か、および、流路に気泡が混入しているか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図12を参照して後述する気泡の検出処理により気泡が混入しているか否かを判断する。また、制御部115は、
図13を参照して後述する磁性粒子の残留検出処理により流路に磁性粒子が残留しているか否かを判断する。
【0080】
ステップS15において、分析装置100は、液体収容部218に収容されたR5試薬を検出槽220に移送する。制御部115が、プランジャユニット90を制御してエアチャンバ263を押し下げ、液体収容部218を介してR5試薬を検出槽220に押し出す。この際、撮像部50により、液体収容部218および検出槽220を含む流路が撮像される。制御部115は、撮像画像に基づいて流路に気泡が混入しているか否かを判断する。具体的には、制御部115は、
図12を参照して後述する気泡の検出処理により気泡が混入しているか否かを判断する。また、制御部115は、撮像画像に基づいてR5試薬が検出槽220に到達したか否かを判断する。
【0081】
R5試薬は、たとえば、免疫複合体と反応して発光を促す基質を含んでいる。R5試薬は、検出槽220において、免疫複合体と緩衝液との混合液に添加される。発光基質と免疫複合体とが反応する。これにより、検出槽220において、光を発生する発光試料が調製される。
【0082】
また、制御部115は、撮像部50により測定位置101にある検出槽220を撮像する。制御部115は、発光試料の撮像画像に基づいて測定部40を用いた光検出動作を制御する。これにより、撮像画像に基づいて、発光試料が測定位置101に存在するか否か、発光試料の状態が適正か否かを判断できる。その結果、検体カートリッジ200内の発光試料の状態が適正でない場合などに、光検出動作を行うことなく処理を中止して、速やかにユーザに報知したり、発光試料の状態に応じて分析結果を補正したりすることができる。また、制御部115は、検出槽220に気泡が混入しているか否かを判断する。
【0083】
撮像画像における発光試料の状態が適正である場合には、制御部115は、後続の検出処理動作を実行する。また、たとえば、撮像画像に発光試料が写っていない場合、液体が検出槽220に到達していないと考えられるので、制御部115は後続の検出処理動作を実行せずに表示部112およびインジケータ113にエラーを表示する。また、たとえば、撮像画像における発光試料の状態が適正でない場合、制御部115は、後続の検出処理動作を実行するが、分析結果とともにエラーの可能性がある旨を表示部112に表示する。
【0084】
ステップS16において、分析装置100は、光検出処理を実施する。具体的には、免疫複合体の標識抗体と発光基質との反応により発生した光を測定部40により検出する。その後、測定動作が終了される。
【0085】
なお、磁性粒子としては、磁性を有する材料を基材として含み、通常の免疫測定に用いられる粒子であればよい。例えば、基材としてFe
2O
3および/またはFe
3O
4、コバルト、ニッケル、フィライト、マグネタイトなどを用いた磁性粒子が利用できる。磁性粒子は、被検物質と結合するための結合物質がコーティングされていてもよいし、磁性粒子と被検物質とを結合させるための捕捉物質を介して被検物質と結合してもよい。捕捉物質は、磁性粒子および被検物質と相互に結合する抗原または抗体などである。
【0086】
また、標識物質は、被検物質と抗原抗体反応により結合し、測定部40により測定可能な標識を含有する。標識物質は、免疫測定で用いられる公知の標識を含む抗体であれば、特に限定されない。捕捉物質を用いる場合、標識物質が捕捉物質と結合してもよい。標識物質に含まれる標識としては、たとえば、酵素、蛍光物質、放射性同位元素などである。酵素としては、アルカリホスファターゼ(ALP)、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼなどが挙げられる。蛍光物質としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェリンなどが利用できる。放射性同位元素としては、125I、14C、32Pなどが利用できる。
【0087】
また、標識が酵素である場合、標識物質の酵素に対する基質は、用いる酵素に応じて適宜公知の基質を選択すればよい。例えば、酵素としてアルカリホスファターゼを用いる場合の基質としてはCDP−Star(登録商標)、(4−クロロ−3−(メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリクシロ[3.3.1.13,7]デカン]−4−イル)フェニルリン酸2ナトリウム)、CSPD(登録商標)(3−(4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]−4−イル)フェニルリン酸2ナトリウム)などの化学発光基質;p−ニトロフェニルホスフェート、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)、4−ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(NBT)、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)などの発光基質;4−メチルウムベリフェニル・ホスフェート(4MUP)などの蛍光基質;5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)、5−ブロモ−6−クロロ−インドリルリン酸2ナトリウム、p−ニトロフェニルリンなどの発色基質などが利用できる。
【0088】
(磁性粒子検出方法の説明)
撮像部50により撮像された画像データに基づいて、磁性粒子を検出する方法について説明する。
【0089】
磁性粒子を検出する目的として、洗浄を行う液体収容部内における磁性粒子の残留を検出すること、および、洗浄を行う液体収容部の上部における液体の形状の異常を検出することを例に説明する。磁性粒子の検出は、撮像画像から磁性粒子領域を解析的に求めることにより、異常検出を行う。
【0090】
洗浄を行う液体収容部内における磁性粒子の残留の検出について、
図8に示すように、洗浄を行う液体収容部内に磁性粒子が残留している場合、検出槽に到達しない磁性粒子が存在するため、測定値が低下する。また、洗浄を行う液体収容部の上部における液体の形状の異常の検出について、
図9(A)に示すように、洗浄を行う液体収容部の上部に形成される液体のの形状が略正円状となった場合が液体収容部の上部における液体の正常な形状であり、洗浄が十分に行われている状態を示す。一方、
図9(B)に示すように、洗浄を行う液体収容部の上部に形成される液体の形状が正円状とならず楕円形状となった場合は、液体収容部の上部における液体の異常な形状であり、洗浄が不十分な状態を示す。
【0091】
洗浄を行う液体収容部内における磁性粒子の残留を検出する場合、洗浄が終了した液体収容部または磁性粒子の移動後の経路上において、磁性粒子領域を求めることにより残留箇所・残留量の推定を行い、磁性粒子の残留異常が発生したか否かを判定する。
【0092】
洗浄を行う液体収容部の上部における液体の形状の異常を検出する場合、洗浄中の磁性粒子が液体収容部の上部に集磁されている際に、磁性粒子領域の面積から液体収容部の上部における液体の形状が正常であるか否かを判定する。
【0093】
磁性粒子領域の検出には、色情報を用いる。また、磁性粒子領域の色は磁性粒子の量によって変化するので、量が大きい領域においては磁性粒子自体の色が支配的であり、量が小さい領域においては、周辺からの散乱・反射光が支配的となる。また、非常に細かな磁性粒子が、一定空間内に存在する量により色が変化するので、色の変化は中間混色であると仮定する。そこで、磁性粒子の量に対する色の変化をHSL色空間で考えることができる。なお、HSL色空間は、色相Hと、色彩Sと、輝度Lとにより色を表す空間である。
【0094】
ここで、
図10に示すように、中間混色は、背景色(たとえば、白または黒)の成分と磁性粒子色の成分とからなるとする。磁性粒子の量が小さくなるにしたがって、HSL色空間上では磁性粒子色を起点とし、背景色(白または黒)に線形に近づいていく。この関係をカラーモデルとして用いる。
【0095】
磁性粒子のカラーモデルを用いて、撮像した画像の各画素に対して磁性粒子が存在しているか否かの判定を行う。磁性粒子色と背景色(白または黒)との中間混色による色変化は、HSL色空間上で混色されている二色間を結ぶ直線上にあるので、この直線上では色相Hは変化しない。また、白に近づくにしたがって、輝度Lは線形的に増加する。一方、黒に近づくにしたがって、輝度Lは線形的に減少する。ここで、磁性粒子が存在する領域を調べるためには、白・黒との混色により変化しない色相Hを用いる。解析対象の画素からRGB値を読み取りHSL値に変換し、求められた色相Hが磁性粒子の色相Hと類似していれば、解析対象の画素には磁性粒子が存在すると判定する。
【0096】
磁性粒子領域検出の手順について
図11を参照して説明する。
【0097】
ステップS21において、制御部115は、撮像された画像から、解析対象の画素を選択する。ステップS22において、制御部115は、選択した画素の画素値(RGB)をHSL値に変換する。ステップS23において、制御部115は、磁性粒子色の色彩Sに基づいて、選択した画素の色彩Sが所定値より低いか否かを判断する。選択した画素の色彩Sが所定値より低ければ、ステップS27に進み、選択した画素の色彩Sが所定値より低くなければ、ステップS24に進む。選択した画素の色彩Sが低い場合、色相Hの算出誤差は大きくなり、色相Hを用いて磁性粒子領域の判定を行うことは困難となる。そのため、選択した画素の色彩Sが低い場合は磁性粒子が無いものとして判定を行う。
【0098】
ステップS24において、制御部115は、選択した画素の輝度Lが所定の範囲外か否かを判断する。選択した画素の輝度Lが所定の範囲外であれば、ステップS27に進み、選択した画素の輝度Lが所定の範囲内であればステップS25に進む。選択した画素の輝度Lが、所定の範囲よりも低くまたは高くて所定の範囲外である場合、選択した画素の色相Hおよび色彩Sの算出誤差は大きくなり、色相Hを用いて磁性粒子領域の判定を行うことは困難となる。そのため、選択した画素の輝度Lが所定の範囲外である場合は磁性粒子が無いものとして判定を行う。
【0099】
ステップS25において、制御部115は、選択した画素の色相Hが磁性粒子の色相Hと類似しているか否かを判断する。選択した画素の色相Hが磁性粒子の色相Hと類似していなければ、ステップS27に進み、選択した画素の色相Hが磁性粒子の色相Hと類似していれば、ステップS26に進む。ステップS26において、制御部115は、選択した画素は、磁性粒子領域であると判断する。一方、ステップS27に進んだ場合、選択した画素は、磁性粒子領域ではないと判断する。
【0100】
ステップS28において、制御部115は、カラーモデル上の最近傍点を算出する。具体的には、色相Hについての次元を除外し、色彩Sおよび輝度Lの直交座標空間を用いて最近傍点が算出される。磁性粒子のカラーモデルである磁性粒子の色と、背景色である白色または黒色とまでを結ぶ直線が求められる。そして、選択した画素の輝度Lおよび色彩Sから、求めた直線までの直交座標系における距離が最小となる点が求められる。求めた点が、カラーモデルにより推定された磁性粒子領域の色とされる。ここで、カラーモデルは色彩Sが変化しないため、色彩Sの推定結果は実測の色彩Sにかかわらず一定となる。これにより、輝度Lの推定結果は実測の輝度Lと同値となる。
【0101】
ステップS29において、制御部115は、磁性粒子量を算出する。輝度Lは磁性粒子の量に伴い増加または減少するため、この輝度Lから磁性粒子の量が推定される。なお、輝度Lと磁性粒子の量の関係は非線形であると仮定する。その後、選択した画素についての処理が終了し、次の画素が選択される。画像上の必要な画素の全てにおいて、磁性粒子であるか否か、および、磁性粒子である場合の磁性粒子の量が算出されると、磁性粒子領域の検出が終了される。
【0102】
検出された画像上の磁性粒子から、磁性粒子の残留が検出される。具体的には、画像中の洗浄を行う液体収容部内に磁性粒子が検出された場合、磁性粒子の残留が検出されるとともに、残留した磁性粒子の領域および磁性粒子の量から残留した磁性粒子の量が算出される。また、測定上問題となる量の磁性粒子が残留した場合に、磁性粒子の残留異常として判定される。
【0103】
検出された画像上の磁性粒子から、洗浄を行う液体収容部の上部における液体の形状が検出される。具体的には、磁性粒子が液体収容部の上部における液体の上部に集中する時点の画像を取得し、磁性粒子領域が検出される。これにより、液体収容部の上部における液体の形状を明確に検出することができるので、液体収容部の上部における液体の異常の検出を確実に実施することができる。また、正円であるか否かの判定は、磁性粒子領域の面積を求めることにより判定される。
【0104】
(気泡の検出方法の説明)
図12を参照して、流路中の気泡の検出処理について説明する。
【0105】
ステップS31において、制御部115は、撮像部50により撮像された画像中から流路を特定する。具体的には、制御部115は、撮像部50の位置と、検体カートリッジ200の流路の情報とに基づいて、画像における流路を特定する。ステップS32において、制御部115は、特定した流路のエッジを検出する。具体的には、制御部115は、撮像された画像中の流路の画素値の変化している部分を検出する。
【0106】
ステップS33において、制御部115は、検出した流路のエッジの長さを算出する。具体的には、制御部115は、エッジと特定した画像中の画素数を算出して、エッジの長さを算出する。
【0107】
ステップS34において、制御部115は、流路のエッジの長さは正常範囲以内であるか否かを判断する。正常範囲以内であれば、ステップS35に進み、正常範囲外であれば、ステップS36に進む。ステップS35において、制御部115は、流路に気泡が混入しておらず、正常であると判断する。なお、正常範囲とは、流路と流体との境界の長さに基づいて設定される。つまり、流路と流体との間には、エッジができるため、気泡が混入していない場合、流路と流体との境界の長さ分だけ、エッジが検出される。
【0108】
ステップS36において、制御部115は、エッジ長さが正常範囲よりも長いか否かを判断する。エッジ長さが正常範囲よりも短ければ、ステップS37に進み、エッジ長さが正常範囲よりも長ければ、ステップS38に進む。ステップS37において、制御部115は、流路に気泡が混入していると判断する。つまり、流路と、流体との間以外にエッジが有る場合、エッジ長さは正常範囲よりも長くなる。長い分のエッジは、流路中の液層と気層との境界である。
【0109】
ステップS38において、制御部115は、流路に液体が流れていないとして、液送異常と判断する。つまり、液が送られていない場合、流体の量が少ない分、流路と流体との境界のエッジが短くなる。
【0110】
(磁性粒子の残留検出方法の説明)
図13を参照して、流路中の磁性粒子の残留検出処理について説明する。
【0111】
ステップS41において、制御部115は、磁石80の先端から所定距離以上にある磁性粒子領域を特定する。ステップS42において、制御部115は、特定した磁性粒子領域の磁性粒子の量を算出する。具体的には、
図11に示す、磁性粒子領域検出の手順に基づいて、磁性粒子領域の磁性粒子の量が算出される。
【0112】
ステップS43において、制御部115は、磁性粒子の量が所定の値未満であるか否かを判断する。所定の値未満であれば、ステップS44に進み、所定の値以上であれば、ステップS45に進む。ステップS44において、制御部115は、磁性粒子の残留が少なく正常であると判断する。ステップS45において、制御部115は、磁性粒子の残留が多く異常であると判断する。
【0113】
(残留磁性粒子の定量化方法の説明)
撮像部50により撮像された画像データに基づいて、残留磁性粒子を定量化する方法について説明する。
図14を参照して、残留磁性粒子の定量化について説明する。
【0114】
ステップS51において、制御部115は、撮像された画像の正規化を行う。具体的には、画像のホワイトバランス、露光時間、撮影ブレ、歪曲収差などの正規化が行われる。つまり、撮影条件により変化する因子を補正し正規化を行う。たとえば、動画上では磁石が動き、画像が変化することでホワイトバランスや露光時間が変化する。そこで、動画上で画像が変化しない領域を取得し、この領域の色合いが変化しないように画像全体に補正をかけることで、ホワイトバランスおよび露光時間の正規化を行う。たとえば、領域の各チャネル(RGB)の中央値が128となるように、画像全体に補正値を乗算する。また、撮像ぶれについては、確立されている手振れ補正の技術を用いてもよい。撮像部50の歪曲収差については、確立されている歪曲収差の補正の技術を用いてもよい。
【0115】
ステップS52において、制御部115は、磁性粒子領域の検出を行う。たとえば、磁性粒子領域の検出は、
図11に示す磁性粒子領域検出方法を用いてもよい。
【0116】
ステップS53において、制御部115は、画像中の各画素における磁性粒子の量を算出する。たとえば、磁性粒子の量の算出は、
図11に示す磁性粒子の量の検出方法を用いてもよい。
【0117】
ステップS54において、制御部115は、磁性粒子の総量を算出する。具体的には、ステップS53において算出した磁性粒子領域の各画素について磁性粒子の量に基づいて、これらの総和を取得することにより、磁性粒子の総量が算出される。これにより、残留磁性粒子を定量的に算出することができる。
【0118】
(磁性粒子の撹拌効率の定量化方法の説明)
撮像部50により撮像された画像データに基づいて、磁性粒子の撹拌効率を定量化する方法について説明する。
【0119】
図15に示すように、磁石部80を検体カートリッジ200に対して上下に移動させることにより、検体カートリッジ200内の磁性粒子が、上方向および下方向に交互に引き付けられて、液体収容部が撹拌される。つまり、上側の磁石部80を検体カートリッジ200に近づけた場合、磁性粒子は、液体収容部内を上方向に移動する。この場合、下側の磁石部80は、検体カートリッジ200から遠ざかる。また、下側の磁石部80を検体カートリッジ200に近づけた場合、磁性粒子は、液体収容部内を下方向に移動する。この場合、上側の磁石部80は、検体カートリッジ200から遠ざかる。そして、磁性粒子の移動により、液体収容部内の液体が移動されて撹拌される。
【0120】
図16を参照して、磁性粒子の撹拌効率の定量化について説明する。
【0121】
ステップS61において、制御部115は、撮像された画像の正規化を行う。具体的には、
図14のステップS51と同様にして撮像された画像の正規化が行われる。
【0122】
ステップS62において、制御部115は、磁性粒子領域の検出を行う。たとえば、磁性粒子領域の検出は、
図11に示す磁性粒子領域検出方法を用いてもよい。
【0123】
ステップS63において、制御部115は、画像中の各画素における磁性粒子の量を算出する。たとえば、磁性粒子の量の算出は、
図11に示す磁性粒子の量の検出方法を用いてもよい。
【0124】
ステップS64において、制御部115は、磁性粒子の総量を算出する。具体的には、ステップS63において算出した磁性粒子領域の各画素について磁性粒子の量に基づいて、これらの総和を取得することにより、磁性粒子の総量を算出する。
【0125】
ステップS65において、制御部115は、動画の最後のフレームであるか否かを判断する。最後のフレームでなければ、ステップS61に戻り、最後のフレームであれば、ステップS66に進む。
【0126】
ステップS66において、制御部115は、時系列情報を各撹拌処理に分割する。具体的には、磁石部80を一往復させる1撹拌ごとに時系列情報を分割する。ステップS67において、制御部115は、1撹拌処理中の磁性粒子の移動量を取得する。具体的には、1撹拌中の磁性粒子量の最大値と最小値との差が算出され、その差が、移動量として取得される。
【0127】
ステップS68において、制御部115は、最後の撹拌処理か否かを判断する。最後の撹拌処理でなければ、ステップS67に戻り、最後の撹拌処理であれば、ステップS69に進む。ステップS69において、制御部115は、磁性粒子移動量の統計量を算出する。たとえば、統計量として、磁性粒子移動量の平均値、中央値などが算出される。磁性粒子移動量が大きければ、磁性粒子が多く移動していることを示しており、撹拌が良好に行われている状態を示す。一方、磁性粒子移動量が小さければ、磁性粒子の移動が少ないことを示しており、撹拌が良好ではない状態を示す。
【0128】
ステップS70において、制御部115は、撹拌効率を算出する。具体的には、磁性粒子移動量の統計量に基づいて、撹拌効率が算出される。
【0129】
なお、時系列情報の解析は、動画のフレーム毎に液体収容部上面の磁性粒子量を計算し、計測時間と結びつけて時系列情報としてもよい。たとえば、正常な場合、上側の磁石部80を検体カートリッジ200に近づけた場合に、液体収容部上面の磁性粒子の量が多くなる。一方、下側の磁石部80を検体カートリッジ200に近づけた場合に、液体収容部上面の磁性粒子の量が少なくなる。つまり、撹拌が正常である場合、磁石部80を上下方向に移動させる周期と、検出される磁性粒子の増減の周期とが連動する。これにより、磁石部の移動周期と、検出される磁性粒子の増減の周期とを比較することにより、磁性粒子の撹拌効率を定量化することができる。
【0130】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。